以下、さらに詳しく本発明のナノファイバー不織布について説明をする。
本発明のナノファイバー不織布は、数平均による単繊維繊度が1×10-8〜4×10-4dtexであり、単繊維繊度1×10-8〜4×10-4dtexの単繊維繊度比率の和が60%以上の範囲である熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーと単繊維繊度が8×10-4dtexを超える他の繊維からなるものである。
そして、本発明では、このナノファイバーの単繊維繊度の平均値とばらつきの二つの要件が特に重要なものである。なお、本発明でいうナノファイバーとは、前述したように、単繊維繊度が、1×10-8〜8×10-4dtex(ナイロン6(比重1.14g/cm3 )では単繊維直径が1〜299nm)の範囲内にある繊維のことをいい、形態的には、単繊維がバラバラに分散したもの、単繊維が部分的に結合しているもの、複数の単繊維が凝集した集合体(例えば束状のもの)などの形態を呈するものであってもよく、すなわち、いわゆる繊維状の形態であればよく、その長短や断面形状などにはこだわらないものである。
本発明において、ナノファイバーの単繊維繊度の平均値とばらつきは、ナノファイバーを含む不織布の横断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、同一横断面内で無作為に抽出した50本以上の単繊維直径を測定するが、これを3カ所以上で行い、少なくとも合計150本以上の単繊維直径を測定することにより求めるものである。このときに、8×10-4dtex(ナイロン6の場合は、単繊維直径で299nm相当)を超える他の繊維は除き、それ未満の単繊維直径のものだけ(すなわち、ナノファイバーだけ)を測定するものである。また、不織布を構成するナノファイバーが異形横断面繊維の場合、まず、単繊維の断面積を測定し、その面積を仮に断面が円の場合の面積とする。その面積から直径を算出することによって当該異形断面繊維の単繊維直径を求めることができる。
ここで、単繊維繊度の平均値は、以下のようにして求める。まず、単繊維直径をnm単位で小数点の1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その単繊維直径から単繊維繊度を算出し、それの単純な平均値を求める。これを「数平均による単繊維繊度」と本発明ではいうものである。
ここで、本発明のナノファイバー不織布の構造例について説明するため、そのナノファイバーの繊維横断面の写真を図1に示した。かかる図1に示したように、本発明の不織布を構成するナノファイバーは、ほぼ全部がほぼ100nm以下の単繊維直径を示しながら、単繊維直径10nm前後から100nm付近のレベルまで分布しているものである。
そして、本発明では、数平均による単繊維繊度が1×10-8〜4×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜211nm相当)であることが重要である。
これは、従来の海島複合紡糸による不織布の構成単繊維に比べて、1/10〜1/1000という細さであり、本発明によれば、従来の不織布とは全く異なる質感を持ったもの、あるいは従来よりもはるかにハードディスクの平滑性を向上し得る研磨布を構成できる不織布を得ることができるようになる。
数平均による単繊維繊度は、好ましくは1×10-8〜2×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜149nm相当)を満足すること、より好ましくは1×10-8〜1×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜106nm相当)を満足すること、さらに、より好ましくは8×10-6〜6×10-5dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で30〜82nm相当)を満足することである。
また、本発明において、不織布を構成するナノファイバー(ナイロン6の場合、単繊維直径が、299nm未満のもの)の単繊維繊度ばらつきは、次のようにして評価するものである。すなわち、不織布中のナノファイバーそれぞれの単繊維繊度をdti とし、その総和を総繊度(dt1 +dt2 +…+dtn )とする。また、同じ単繊維繊度(上述のように、単繊維直径をnm単位で小数点の1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入して得られる単繊維直径から、単繊維繊度を算出したもの)を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とする。
これは、不織布中に含まれるナノファイバー全体に対する各単繊維繊度成分の重量分率(体積分率)に相当し、この値が大きい単繊維繊度成分がナノファイバー不織布の性質に対する寄与が大きいことになるものである。
本発明では、繊度比率の60%以上が1×10-8〜4×10-4dtex(単繊維直径で1〜211nm相当)の範囲内に入るものであることが重要である。すなわち、これは、単繊維繊度が、4×10-4dtexより大きいナノファイバーの存在がゼロに近いことを意味するものである。これにより、ナノファイバー不織布の機能を十分に発揮できるとともに、製品の品質安定性も良好とすることができ、さらに、前述のハードディスク用の表面研磨布に用いた場合、繊度ばらつきが非常に小さいため、砥粒を均一に坦持することが可能となり、結果的にハードディスク表面の平滑性を飛躍的に向上することができるようになる。好ましくは、繊度比率の60%以上が1×10-8〜2×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜149nm相当)、より好ましくは、繊度比率の60%以上が1×10-8〜1×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜106nm相当)、さらにより好ましくは、1×10-8〜6×10-5dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で1〜82n相当)の範囲内にあるものである。さらに好ましくは、繊度比率の75%以上が8×10-6〜6×10-5dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で30〜82nm相当)の範囲である。
本発明でいう熱可塑性ポリマーとは、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等が挙げられるが、ポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高いものが多く、より好ましい。ポリマーの融点が165℃以上であるとナノファイバーの耐熱性が良好であり好ましい。例えば、該融点はポリ乳酸(PLA)は170℃、PETは255℃、N6は220℃である。このような熱可塑性ポリマーの中でも、本発明では、特にポリアミドを用途の点等から採用するものである。また、ポリマーには、粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加物を含有させていてもよい。また、ポリマーの性質が損なわれない範囲で他の成分が共重合されていてもよい。
本発明でいう不織布とは、乾式あるいは湿式法、その他方法により得られるもの全てを指し、不織布の形成手法自体は公知の技術でも採用することができる。
また、本発明の不織布の構成としては、ナノファイバーだけでなく、単繊維繊度が8×10-4dtex(ナイロン6の場合、単繊維直径で299nm相当)を超える他の繊維も含んでなっていることが重要である。
すなわち、不織布中にナノファイバーよりも直径が大きい他の繊維が存在することにより、ナノファイバー単独ではなし得なかった効果の発現が期待できる。例えば、ナノファイバー単独では強度が弱いために実使用に耐え得ることができないが、他の繊維を混用することにより、ナノファイバーの高表面積による吸着効果などを生かしつつ構造体としての力学的強度を向上させることができ、補強効果が得られるのである。
また、ナノファイバー単独では、高次加工を施した際には、吸水膨潤などにより寸法変化を起こしてしまう場合があるが、他の繊維を混用することにより、寸法安定性を付与することができる。
また、ナノファイバー単独で不織布とした場合には、複数のナノファイバー間で作り出される空隙(目開き)が極端に小さくなり、一般的に、それにより圧力損失が高くなって、液体や気体の透過度が落ちてしまうが、他の繊維を混用することにより、ナノファイバーより単繊維直径が大きい他の繊維間で作り出される空隙が大きくなり、結果として見かけ密度が小さくなり、ろ過フィルターやエアフィルターなどのフィルター用途での要求特性である低圧力損失を達成することができる。
以上のような効果を良好に発現させるために、他の繊維を混用することが重要であり、かつ、より好ましい他の繊維の単繊維繊度は、0.01〜30dtexの範囲内にあることである。
また、繊度ばらつきを表すもう一つの指標として、不織布中のナノファイバーがどれくらいの単繊維直径差を有してナノファイバー集団を構成しているかという要素があり、特に、該不織布中のナノファイバーの単繊維直径差が30nmの幅に入る単繊維の繊度比率なるパラメータに着目すると有効であり、すなわち、該パラメータは、中心繊度付近へのばらつきの集中度を意味しており、この単繊維繊度比率が高いほどばらつきが小さいことを意味している。本発明者らの各種知見によれば、本発明の不織布において、単繊維直径差が30nm以内の範囲に入る単繊維繊度比率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。なお、このときの単繊維直径の求め方も、上述のように、単繊維直径をnm単位で小数点の1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入して得るものである。
本発明の不織布の構造としては、積層型、貼り合せ型、混合型のうち少なくとも1つの構造体からなることが好ましい。
ここでいう積層型とは、その他の繊維からなる不織布や織編物、シート状物などにナノファイバーを積層する、あるいはナノファイバーのみからなる不織布や織編物、シート状物にその他の繊維を積層することを指す。積層方法としては、例えば、他の繊維からなる不織布上にナノファイバーを湿式抄紙法やエアレイド法によって積層する方法あるいはナノファイバーからなる不織布上に、上述の方法で他の繊維を積層する方法など、種々の方法を採用することができる。
また、ここでいう貼り合せ型とは、ナノファイバーのみからなる不織布と他の繊維からなる不織布や織編物、シート状物を常法により別々に作製し重ね合わせて貼り合わせる、あるいは他の繊維からなる不織布とナノファイバーのみからなる不織布や織編物、シート状物を貼り合せることを指す。貼り合せ方法としては、例えば、ナノファイバーからなる不織布と他の繊維からなる不織布をバインダーで接着する方法やニードルパンチや高圧水流による絡合方法、あらかじめナノファイバーあるいは他の繊維からなる不織布に別の熱融着繊維を混ぜておいて加熱ロールにて熱融着させる方法、あるいは他の繊維からなる不織布にメルトブロー法やスパンボンド法でナノファイバー前駆体であるポリマーアロイ繊維を直接貼り合せた後にナノアロイ繊維から海成分を溶出除去する方法、またはナノファイバー不織布にメルトブロー法やスパンボンド法で他の繊維を直接貼り合せる等、種々の方法を採用することができる。
また、ここでいう混合型とは、ナノファイバーと他の繊維が混合し合って不織布が形成されていることを指す。混合方法としては、例えば、ナノファイバーと他の繊維を混綿してからニードルパンチや高圧水流により絡合させる方法や混合抄紙する方法など種々の方法を採用することができる。
本発明においては、上述のように、不織布の構造を積層型、貼り合せ型、あるいは混合型にすることにより、それぞれの用途に適合した不織布を設計でき、さらにナノファイバー単独では得られなかった寸法安定性、強力の向上、圧力損失の低下などの効果を得ることができる。
さらに、本発明では不織布の構造だけでなく、ナノファイバーを構成する基質と、他の繊維を構成する基質の組み合わせを目的に応じて適宜選択することが好ましい。
例えば、ナノファイバーと他の繊維の基質を同一にした場合には、薬剤などに対する化学的親和性が同じであるため、機能加工をした場合に、より均一に薬剤を添着することができる。また、基質が同一であるために、分子間力によってナノファイバーと他の繊維の接着性が高まり、不織布の強力がより向上するだけでなく、不織布中からのナノファイバーの脱落などを防ぐことができる。
一方、例えば、ナノファイバーと他の繊維の基質を異なるものにした場合には、前述とは別の効果の発現が期待できる。例えば、ナノファイバーの基質として疎水性のもの、他の繊維の基質として親水性のものを使い、貼り合せ型の不織布とした場合に、ナノファイバー側から入った液体の水は通さないものの、水蒸気は透過し、他の繊維側に水蒸気が到達した場合に水蒸気を捕捉して水蒸気を凝縮するような透湿保水性のシートを得ることができる。
また、ナノファイバーと他の繊維を用いて混合型の不織布として、血液や混合ガスを不織布に通した場合に、ナノファイバーと親和性が良いものだけを選択的に吸着して分離するような高性能分離フィルターとすることもできる。あるいは、任意の溶媒に対してナノファイバーは難溶性、他の繊維は易溶性として、積層型の不織布とした場合に、他の繊維が不要になった時点で溶媒を流してナノファイバー側を溶出除去してしまうといった特殊な不織布とすることも可能である。基質の組み合わせは、上述の例に限られるものではないが、このように基質を目的に応じて適宜選択することで高機能かつ高性能な不織布を得ることができる。
本発明の不織布の見かけ密度は0.01〜1.0g/cm3 であることが好ましい。0.01g/cm3 未満であると圧力損失は小さくなるが、ポリマー基質によっては不織布としての強度が不足する場合がある。1.0g/cm3 を超える場合には圧力損失が高くなり、例えばフィルター用途などに用いた場合に不都合が生じる場合がある。好ましくは0.05〜0.4g/cm3 であり、さらに好ましくは0.1〜0.3g/cm3 である。
また、本発明の不織布は、引っ張り強力が0.1N/cm以上であることが好ましい。0.1N/cm未満であると用途によっては要求される強度が不足する場合がある。好ましくは10N/cm以上、より好ましくは50N/cm以上である。また、上限は特に限定されるものではないが、通常200N/cm以下となる。
さらに、本発明の不織布は、引き裂き強力が0.1N以上であることが好ましい。引き裂き強力が0.1N未満であると、例えばフィルター用途などに適用した場合に破れが起こる等の不都合が生じる場合がある。また、不織布を生産する際の工程通過性の低下が懸念され、安定した生産を妨げる場合がある。好ましくは3N以上、より好ましくは5N以上である。また、上限は特に限定されるものではないが、本発明者らの各種知見によれば100N以下である。
本発明の不織布の通気量は、0.24cc/cm2 /sec以上であることが好ましい。不織布の通気量が0.24cc/cm2 /sec未満であると、圧力損失が高くなり、例えば気体の透過性が要求される用途においては不都合が生じる場合がある。より好ましい通気量は30cc/cm2 /sec以上であり、さらに好ましくは100cc/cm2 /sec以上である。通気量の上限は特に限定はされないが、1000cc/cm2 /sec程度である。
本発明の不織布中に含まれるナノファイバーは、単繊維直径が従来の超極細糸の1/10〜1/1000以下であるため、比表面積が飛躍的に大きくなるという特徴がある。このため、通常の超極細糸を用いた不織布の程度では見られなかった特有の性質を示す。
例えば、本発明のナノファイバー不織布は優れた吸着・吸収特性を示すため、さまざまな機能性薬剤を坦持することができる。
ここで言う機能性薬剤とは、不織布の機能を向上し得る物質のことを言い、例えば、吸湿剤、保湿剤、難燃剤、撥水剤、保冷剤、保温剤、平滑剤、ポリフェノールやアミノ酸、タンパク質、カプサイシン、ビタミン類等の健康・美容促進のための薬剤や、水虫等の皮膚疾患の薬剤などを挙げることができる。また、消毒剤、抗炎症剤、鎮痛剤等の医薬品なども挙げることができる。さらには、ポリアミンや光触媒ナノ粒子というような有害物質の吸着・分解を促進する薬剤を挙げることもできる。
機能性薬剤の担持方法については、特に制限はなく、浴中処理やコーティング等により後加工でナノファイバー不織布に担持させてもよいし、機能性薬剤そのものを直接ナノファイバー不織布に担持させてもよいし、機能性薬剤の前駆体物質をナノファイバー不織布に担持させた後、その前駆体物質を所望の機能性薬剤に変換することもできる。
また、本発明のナノファイバー不織布は、さまざまな機能性分子を取り込むだけでなく、徐放性にも優れている。このため、機能性分子や薬の優れた徐放性基材としたり、ドラッグデリバリーシステム等にも応用できる可能性がある。
本発明のナノファイバー不織布に用いるポリマーアロイ繊維の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のような方法を採用することができる。
すなわち、溶剤に対する溶解性の異なる2種以上のポリマーをポリマーアロイ溶融体となし、これを紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施しポリマーアロイ繊維を得た後、常法により不織布化する。そして、易溶解性ポリマーを溶剤で除去することによりナノファイバー不織布を得ることができる。
ここで、ナノファイバー不織布の前駆体であるポリマーアロイ繊維中で易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが島(ドメイン)となし、その島サイズを制御することが重要である。ここで、島サイズとは、ポリマーアロイ繊維の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、直径換算で評価したものである。前駆体中での島サイズによりナノファイバーの直径がほぼ決定されるため、島サイズの分布はナノファイバーの直径分布に準じて設計される。このため、アロイ化するポリマーの混練が非常に重要であり、混練押出機や静止混練器等によって高混練することが好ましい。なお、単純なチップブレンド(例えば、特開平10−53967号公報)では、混練が不足するため、数十nmサイズで島を分散させることは困難である。
また、島を数十nmサイズで超微分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要である。
島ドメイン(ナノファイバー断面)を円形に近づけるためには、島ポリマーと海ポリマーは非相溶であることが好ましい。しかしながら、単なる非相溶ポリマーの組み合わせでは島ポリマーを十分に超微分散化させることが難しい。このため、組み合わせるポリマーの相溶性を最適化することが好ましいが、このための指標の一つが溶解度パラメーター(SP値)である。ここで、SP値(溶解度パラメーター)とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2 で定義される物質の凝集力を反映するパラメーターであり、SP値(溶解度パラメーター)が近いものどおしでは相溶性が良いポリマーアロイが得られる可能性がある。
SP値(溶解度パラメーター)は、種々のポリマーで知られているが、例えば「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ)等に記載されている。2つのポリマーのSP値(溶解度パラメーター)の差が1〜9(MJ/m3 )1/2 であると、非相溶化による島ドメインの円形化と超微分散化が両立させやすく好ましい。例えば、N6とPETはSP値(溶解度パラメーター)の差が6(MJ/m3 )1/2 程度であり、好ましい例であって、本発明ではこのSP値(溶解度パラメーター)の差が1〜6(MJ/m3 )1/2 の範囲のものを使用することが重要である。ちなみに、N6とPEはSP値(溶解度パラメーター)の差が11(MJ/m3 )1/2 程度であり、好ましくなく、本発明に含まれない例として挙げられる。
さらに、溶融粘度も重要であり、島成分を形成するポリマーの溶融粘度を、海成分のそれに比べて低く設定すると剪断力による島成分ポリマーの変形が起こりやすいため、島成分ポリマーの微分散化が進みやすくナノファイバー化の観点からは好ましい。ただし、島成分ポリマーを過度に低粘度にすると海化しやすくなり、繊維全体に対するブレンド比を高くできないため、島成分ポリマーの粘度は海成分ポリマー粘度の1/10以上とすることが好ましい。
以上により、本発明のナノファイバー繊維からなる不織布を製造するのに好適に用いることのできる本発明のポリマーアロイ繊維からなる不織布は、少なくとも2種の溶解性の異なる有機ポリマーからなる海島構造繊維であって、島成分が難溶解性ポリマー、海成分が易溶解性ポリマーからなり、島ドメインの数平均直径が1〜200nmであり、島ドメインの60%以上が直径1〜200nmのサイズであることを特徴とするものである。
ここにおいて、溶解性が異なるとは、溶剤に対する溶解性の違いのことを指す。溶剤とはアルカリ溶液や酸性溶液、また有機溶媒、さらには超臨界流体等を挙げることができる。具体的な例を挙げれば、例えば、島成分がナイロン、海成分がポリエステルであれば、アルカリ溶液に対しては、ナイロンが難溶解性ポリマー、ポリエステルが易溶解性ポリマーとなる。
本発明において、前述のポリマーアロイ繊維は、ナノファイバーの前駆体としてだけでなく、性質の異なるポリマーがナノサイズで均一に分散されているため、ポリマーアロイ繊維としても非常に有用である。
例えば、ポリエステルにナイロンがナノサイズで均一に分散したポリマーアロイ繊維に制電剤を付与すると、ポリマーアロイ繊維中に均一分散したナイロン部分に高濃度で制電剤が濃縮され、ポリエステルに高い制電性を付与できるなど、特異的な効果が得られる場合がある。
島ドメインの数平均直径は、好ましくは1〜150nmを満足すること、また、好ましくは島ドメインの60%以上が直径1〜150nmのサイズであることを満足することである。
本発明によって得られるナノファイバーからなる不織布および/またはポリマーアロイ繊維不織布は、インテリア製品(カーテン、カーペット、マット、壁紙、家具など)、車輌内装製品(マット、カーシート、天井材など)、生活資材(ワイピングクロス、化粧用品、健康用品、玩具など)などの生活用途や、環境・産業資材用途(建材、研磨布、フィルター、有害物質除去製品など)やIT部品用途(センサー部品、電池部品、ロボット部品など)や、メディカル用途(血液フィルター、体外循環カラム、スキャフォールド(scaffold)、絆創膏(wound dressing, bandage)、人工血管、薬剤徐放体など)などに好適なものである。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は、以下の方法を用いた。
A.ポリマーの溶融粘度
東洋精機キャピログラフ1Bによりポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
B.融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
C.口金吐出孔での剪断応力
口金孔壁とポリマーとの間の剪断応力はハーゲンポワズユの式(剪断応力(dyne/cm2 )=R×P/2L)から計算する。ここでR:口金吐出孔の半径(cm)、P:口金吐出孔での圧力損失(dyne/cm2 )、L:口金吐出孔長(cm)である。またP=(8LηQ/πR4 )であり、η:ポリマー粘度(poise)、Q:吐出量(cm3 /sec)、π:円周率である。また、CGS単位系の1dyne/cm2 はSI単位系では0.1Paとなる。
D.ポリマーアロイ繊維のウースター斑(U%)
ツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分でノーマルモードで測定を行った。
E.TEMによる不織布横断面観察
不織布をエポキシ樹脂で包埋し、横断面方向に超薄切片を切り出して透過型電子顕微鏡(TEM)で不織布横断面を観察した。また、必要に応じ金属染色を施した。
TEM装置 : 日立製作所社製H−7100FA型
F.ナノファイバーの数平均による単繊維繊度、直径
単繊維繊度の平均値は、以下のようにして求める。すなわち、TEMによる不織布横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて単繊維直径および繊度を計算した。
単繊維直径φ(単位:nm)と単繊維繊度d(単位:dtex(繊維10000mの重量(g)))との間には、次の式が成立する。
d=(π/4)×φ2 ×ρ×10-8
ここで、ρ(g/cm3 )はそのポリマー固有の比重(例えば、ナイロン6:1.14、PP:0.91)。このようにして求めた値の単純な平均値を求めた。これを「数平均による単繊維繊度」とした。このとき、単繊維繊度が0.83×10-3dtex以上であってナノファイバーと言えない他の繊維は除いて求めた。また、平均に用いるナノファイバー数は同一横断面内で無作為に抽出した50本以上の単繊維直径を測定し、これを3カ所以上で行い、合計150本以上の単繊維直径を用いて計算した。
G.ナノファイバーの単繊維繊度ばらつき
ナノファイバーの単繊維繊度ばらつきは、以下のようにして評価する。すなわち、上記数平均による単繊維繊度を求める際に使用したデータを用い、ナノファイバーそれぞれの単繊維繊度をdtiとし、その総和を総繊度(dt1+dt2+…+dtn)とする。また、同じ単繊維繊度を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総繊度で割ったものをその単繊維繊度の繊度比率とする。
H.ナノファイバーの直径ばらつき幅
ナノファイバーの直径ばらつき幅は、以下のようにして評価する。すなわち、ナノファイバーの単繊維直径の中心値付近で単繊維直径差が30nm以内の範囲に入る単繊維の繊度比率で評価する。これは、中心繊度付近へのばらつきの集中度を意味しており、この繊度比率が高いほどばらつきが小さいことを意味している。これも上記数平均による単繊維繊度を求める際に使用したデータを用いた。
I.SEM観察
繊維に白金−パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡で観察した。
SEM装置:日立製作所社製S−4000型
J.力学特性
試料繊維10mを不織布中から採取し、その重量をn数=5回として測定し、これの平均値から繊度(dtex)を求めた。そして、室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に、破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
K.見かけ密度
JIS L1096 8.4.2(1999)によって不織布の目付を測定し、次いで、その厚みを測定して、それから得られる見かけ密度の平均値をもって見かけ密度とした。なお、厚みの測定には、ダイヤルシックネスゲージ((株)尾崎製作所製、商品名“ピーコックH”)を用い、サンプルを10点測定して、その平均値を用いた。
L.引っ張り強力
JIS L1096 8.12.1(1999)により、不織布から幅5cm、長さ20cmのサンプルを採取し、つかみ間隔10cmで定速伸長型引張試験機にて、引張速度10cm/分にて伸長させて測定した。得られた値から幅1cm当たりの荷重を引っ張り強力(単位;N/cm)とした。
M.引き裂き強力
不織布の引き裂き強力は、JIS L 1096 8.15.1(1999)のD法(ペンジュラム法)に基づいて測定した。
N.通気量の測定
不織布の通気量は、大栄科学精器製作所製の織物通気度試験機を用いて、試験する不織布に合わせて適宜ノズル径を変更して測定した。測定値は不織布両面の圧力差が12.7m/m(水柱)となるときの垂直型気圧計の目盛りを読み、ノズル径と気圧計の関係表より求めた。
実施例1
溶融粘度53Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec-1)、融点220℃のN(ナイロン)6(20重量%)と溶融粘度310Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec-1)、融点225℃のイソフタル酸を8mol%、ビスフェノールAを4mol%共重合した融点225℃の共重合PET(80重量%)を、2軸押し出し混練機で260℃で混練してポリマーアロイチップを得た。なお、この共重合PETの262℃、1216sec-1での溶融粘度は180Pa・sであった。
このときの混練条件は、次のとおりである。ポリマー供給は、N6と共重合PETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。
スクリューは、その直径37mm、有効長さ1670mm、L/D=45.1のものを用いた。混練機温度は、260℃とした。
溶融紡糸に用いた溶融紡糸装置のモデル図を図10に示した。同図において、1はホッパー、2は溶融部、3はスピンブロック、4は紡糸パック、5は口金、6はチムニー、7は溶融吐出された糸条、8は集束給油ガイド、9は第1引き取りローラー、10は第2引き取りローラー、11は巻き取り糸である。上述のポリマーアロイを275℃の溶融部2で溶融し、紡糸温度280℃のスピンブロック3に導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度262℃とした口金5から溶融紡糸した。
このとき、口金としては図11に示したように吐出孔上部に直径0.3mmの計量部12を備えた、吐出孔径14が0.7mm、吐出孔長13が1.75mmのものを用いた。そして、このときの単孔あたりの吐出量は2.9g/分とした。このときの口金孔壁とポリマーの間の剪断応力は0.13MPa(ポリマーアロイの粘度は105Pa・s、262℃、剪断速度1248sec-1)と十分低いものであった。さらに、口金下面から冷却開始点(チムニー6の上端部)までの距離は9cmであった。
吐出された糸条は、図10に示したように、チムニー部で20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、口金5から1.8m下方に設置した給油ガイド8で給油された後、非加熱の第1引き取りローラー9および第2引き取りローラー10を介して900m/分で巻き取った。
そして、これを図12に概略モデルを示した延伸装置を用いて、第1ホットローラー17の温度を90℃、第2ホットローラー18の温度を130℃として延伸熱処理した。このとき、第1ホットローラー17と第2ホットローラー18間の延伸倍率を3.2倍とした。図12において、15は未延伸糸、16はフィードローラー、19は室温の第3ローラー、20は延伸糸である。
得られたポリマーアロイ繊維は、120dtex、12フィラメント、強度4.0cN/dtex、伸度35%、U%=1.7%の優れた特性を示した。
また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、図2に示したように、共重合PETが海成分(色が薄い部分)、N6が島成分(色が濃い部分)の海島構造を有し、島N6の数平均による直径は53nmであり、N6が超微分散化したナノファイバーの前駆体であるポリマーアロイ繊維が得られた。このポリマーアロイ繊維に捲縮付与およびカットを行いカット長51mmのポリマーアロイ原綿(A)を得た。
他の繊維として、海成分にアルカリ可溶型共重合ポリエステル樹脂60重量%、島成分にN6樹脂40重量%を用い、溶融紡糸で島成分を100島とし、5.3dtexの高分子配列体複合繊維(以後複合繊維)を作成後、2.5倍延伸して2.1dtexの複合繊維を得た。
この複合繊維の強度は、2.6cN/dtex、伸度は35%であった。また、島成分の極細繊維となる部分の平均単繊維繊度をTEM写真から解析したところ、0.02dtexに相当するものであった。この繊維に捲縮付与およびカットを行い、カット長51mmの複合原綿(B)を得た。
上記ポリマーアロイ原綿(A)と複合原綿(B)を重量比でA/B=50/50として混綿し、カーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施して目付500g/m2 のポリマーアロイ原綿と複合原綿からなる混合型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
この不織布中のナノファイバーのみをTEM写真から解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は56nm(3×10-5dtex)と従来にない細さであり、また単繊維繊度が1×10-8〜1×10-4dtexの繊度比率は99%であり、特に単繊維直径で55〜84nmの間の単繊維繊度比率は70%であり、単繊維繊度のばらつきはごく小さいものであった。この結果を表1に示した。
また、ナノファイバーの単繊維直径および単繊維繊度のヒストグラムを図3、4に示すが、このとき、単繊維直径で10nm刻みで本数(頻度)および繊度比率を数えた。単繊維直径で10nm刻みとは、例えば単繊維直径55〜64nmのものは単繊維直径60nm、また糸直径75〜84nmのものは単繊維直径80nmとして数えたことを意味している。
次に、この不織布にポリビニルアルコールを不織布中の繊維に対して固形分で20重量%となるように付与した。
さらに、この不織布にDMF系のポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンを固形分として不織布中の繊維に対して固形分で30重量%となるように含浸し、湿式凝固して目付390g/m2 のN6ナノファイバーと極細N6繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の見かけ密度は0.13g/cm3、引っ張り強度は52N/cm、引き裂き強力は6N、通気量は30.1cc/cm2 /secであった。この結果を表2に示した。
実施例2、3
実施例1で得られたポリマーアロイ原綿(A)と複合原綿(B)の重量比を実施例2ではA/B=25/75、実施例3ではA/B=75/25とした以外は実施例1と同様にしてN6ナノファイバーと極細N6繊維からなる混合型不織布を得た。
得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力は、それぞれ表2に示した通りであった。
実施例4
実施例1で得られたポリマーアロイ原綿(A)をカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを500本/cm2 のパンチ密度で施して目付450g/m2 のポリマーアロイ原綿からなる不織布を得た。
他の繊維として、単繊維繊度が1.9dtexのPP原綿にカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを500本/cm2 のパンチ密度で施して、目付240g/m2 のPP不織布を得た。上記で得られたポリマーアロイ原綿からなる不織布とPP不織布を1枚ずつ重ねて、さらにニードルパンチを500本/m2 のパンチ密度で施し、目付700g/m2 のポリマーアロイ原綿とPP不織布からなる貼り合せ型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解により除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
次に、この不織布を0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で表裏ともに10MPaで処理して絡合を行い、目付350g/m2 のN6ナノファイバーとPP不織布からなる貼り合せ型不織布を得た。得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例5
実施例1で得られたポリマーアロイ原綿(A)をカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを350本/cm2 のパンチ密度で施して目付300g/m2 のポリマーアロイ原綿からなる不織布を得た。
他の繊維として、実施例1で得られた複合原綿(B)をカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを300本/cm2 のパンチ密度で施して目付250g/m2 の複合原綿からなる不織布を得た。上記で得られたポリマーアロイ原綿からなる不織布を間にして複合原綿からなる不織布で上下から挟み込み、さらにニードルパンチを500本/cm2 のパンチ密度で施し、目付830g/m2 のポリマーアロイ原綿と複合原綿からなる3層貼り合せ型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより該不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
次に、この不織布を0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で表裏ともに10MPaで処理して絡合を行い、目付290g/m2 のN6ナノファイバーと極細N6繊維からなる3層貼り合せ型不織布を得た。得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例6
実施例1で得られたポリマーアロイ繊維を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することでポリマーアロイ繊維中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥し、2mm長に切断して、N6ナノファイバーのカット繊維を得た。
タッピースタンダードナイヤガラ試験ビータ(東洋精機製)に水23Lと前述したカット繊維30gを仕込み、5分間予備叩解し、その後、余分な水を切って繊維を回収した。この繊維の重量は250gであり、その含水率は88%であった。含水状態の繊維250gをそのまま自動式PFIミル(熊谷理機製)に仕込み、回転数1500回転、クリアランス0.2mmで6分間叩解した。ファイバーミキサーMX−X103(ナショナル製)に叩解した繊維4.2g、分散剤としてシャロールAN−103P(第一工業製薬製)を0.5g、水500gを仕込み、5分間撹拌してN6ナノファイバーの水分散体を得た。別途、実施例1で得られた複合繊維を先ほどのポリマーアロイ繊維と同様にして2mmにカットし、アルカリ脱海、予備叩解、叩解、ファイバーミキサーによる撹拌を経て極細N6繊維の水分散体を得た。上記で得られたN6ナノファイバーの水分散体250g、極細N6繊維の水分散体250g、水20Lをセミオートマチック角型シートマシン(熊谷理機製)に仕込み、No.2定性用ろ紙(アドバンテック製)の上に抄紙し、そのまま高温用回転型乾燥機(熊谷理機製)を用いて110℃で乾燥して、ろ紙から繊維シート部分をはがしてN6ナノファイバーと極細N6繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の表面をTEMで観察したところ、図5のように極細繊維の周りにナノファイバーが分散した構造であった。得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例7
実施例6で得られたN6ナノファイバーの水分散体500gと水20Lをセミオートマチック角型シートマシンに仕込み、実施例4で得られたPP不織布上に実施例6と同様に抄紙して、N6ナノファイバーとPP不織布からなる積層型不織布を得た。この不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例8(参考例1)
溶融粘度120Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点225℃のPBTと2エチルヘキシルアクリレートを22%共重合したポリエスチレン(co−PS)PBTの含有率を20重量%とし、混練温度を240℃として実施例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。
これを溶融温度260℃、紡糸温度260℃(口金面温度245℃)、単孔吐出量1.0g/分、紡糸速度1200m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度100℃、延伸倍率を2.49倍とし、熱セット温度115℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は161dtex、36フィラメントであり、強度1.4cN/dtex、伸度33%、U%=2.0%であった。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、co−PSが海、PBTが島の海島構造を示し、PBTの数平均による直径は45nmであり、PBTがナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。このポリマーアロイ繊維に捲縮付与およびカットを行いカット長51mmのポリマーアロイ原綿(C)を得た。
海成分にポリスチレン樹脂55重量%、島成分にPET樹脂45重量%を用い、溶融紡糸で島成分を36島とし、9.9dtexの高分子配列体複合繊維を作成後、3.5倍延伸して2.8dtexの複合繊維を得た。この繊維に捲縮付与およびカットを行いカット長51mmの複合原綿(D)を得た。
上記ポリマーアロイ原綿(C)と複合原綿(D)を重量比でA/B=50/50として混綿し、カーディングおよびラッピングを施し、さらに、ニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施し、目付500g/m2 のポリマーアロイ原綿と複合原綿からなる混合型不織布を得た。この不織布を、トリクレンに浸漬することにより、海成分であるポリスチレン樹脂およびco−PSの99%以上を溶出した。
この不織布からナノファイバーのみを抜き取り、実施例1と同様にして解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は50nm(3×10-5dtex)と従来にない細さであり、また単繊維繊度のばらつきもごく小さいものであった。
次に、この不織布にポリビニルアルコールを不織布中の繊維に対して固形分で20重量%となるように付与した。
さらに、この不織布にDMF系のポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンを固形分として不織布中の繊維に対して固形分で30重量%となるように含浸し、湿式凝固して目付は220g/m2 のPBTナノファイバーと極細PET繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例9
溶融粘度500Pa・s(262℃、剪断速度121.6sec-1)、融点220℃のN6(40重量%)として実施例1と同様に溶融紡糸を行った。このときの口金口壁とポリマーの間の剪断応力は0.1Mpa(ポリマーアロイの粘度は200Pa・s、262℃、剪断速度416sec-1)とし、実施例1と同様にポリマーアロイ繊維を得た。得られたポリマーアロイ繊維は126dtex、36フィラメント、強度4.2cN/dtex、伸度38%、U%=1.8%の優れた特性を示した。
また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、実施例1と同様に共重合PETが海、N6が島の海島構造を示し、島N6の数平均による直径は80nmであり、N6が超微分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。このポリマーアロイ繊維に捲縮付与およびカットを行い、カット長51mmのポリマーアロイ原綿(E)を得た。
上記ポリマーアロイ原綿(E)と実施例1で得られた複合原綿(B)を重量比でA/B=10/90として混綿し、カーディングおよびラッピングを施した後、さらにニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施し、目付450g/m2 のポリマーアロイ原綿と複合原綿からなる混合型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより、不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
この不織布からナノファイバーのみを抜き取り解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は84nm(6×10-5dtex)と従来にない細さであり、単繊維繊度のばらつきはごく小さいものであった。その結果を表1に示した。
次に、この不織布にポリビニルアルコールを不織布中の繊維に対して固形分で20重量%となるように付与した。
さらに、この不織布にDMF系のポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンを固形分として不織布中の繊維に対して固形分で30重量%となるように含浸し、湿式凝固して目付は240g/m2 のN6ナノファイバーと極細N6繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の見かけ密度は、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例10
実施例1で用いたN6と重量平均分子量12万、溶融粘度30Pa・s(240℃、剪断速度2432sec-1)、融点170℃のポリL乳酸(光学純度99.5%以上)を用い、N6の含有率を20重量%とし、混練温度を220℃として実施例1と同様に溶融混連し、ポリマーアロイチップを得た。
ここで、ポリL乳酸の重量平均分子量は以下のようにして求めた。すなわち、試料のクロロホルム溶液にTHF(テトラヒドロフラン)を混合し、測定溶液とした。これをWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)Waters2690を用いて25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。なお、実施例1で用いたN6の剪断速度2432sec-1での溶融粘度は57Pa・sであった。また、このポリL乳酸の215℃、剪断速度1216sec-1での溶融粘度は86Pa・sであった。得られたポリマーアロイチップを用いて、溶融温度230℃、紡糸温度230℃(口金面温度215℃)、紡糸速度3200m/分として実施例1と同様に溶融紡糸して未延伸糸を得た。
得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率を1.5倍、熱セット温度130℃として実施例1と同様に延伸熱処理し、ポリマーアロイ繊維を得た。このポリマーアロイ繊維は70dtex、36フィラメントであり、強度3.4cN/dtex、伸度38%、U%=0.7%であった。得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリL乳酸が海、N6が島の海島構造を示し、島成分であるN6の数平均による直径は55nmであり、N6がナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維であった。
得られたポリマーアロイ繊維を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することによりポリマーアロイ繊維中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥し、2mm長に切断して、N6ナノファイバーのカット繊維を得た。タッピースタンダードナイヤガラ試験ビータ(東洋精機製)に水23Lと先ほど得られたカット繊維30gを仕込み、5分間予備叩解し、その後、余分な水を切って繊維を回収した。この繊維の重量は250gであり、その含水率は88%であった。含水状態の繊維250gをそのまま自動式PFIミル(熊谷理機製)に仕込み、回転数1500回転、クリアランス0.2mmで6分間叩解した。ファイバーミキサーMX−X103(ナショナル製)に叩解した繊維8.4g、分散剤としてシャロールAN−103P(第一工業製薬製)を1.0g、水500gを仕込み、5分間撹拌してN6ナノファイバーの水分散体を得た。
上記で得られたN6ナノファイバーの水分散体250gと、実施例6で得られた極細N6繊維の水分散体250g、水20Lをセミオートマチック角型シートマシン(熊谷理機製)に仕込み、No.2定性用ろ紙(アドバンテック製)の上に抄紙し、そのまま高温用回転型乾燥機(熊谷理機製)を用いて110℃で乾燥して、ろ紙から繊維シート部分をはがして、N6ナノファイバーと極細N6繊維からなる混合型不織布を得た。この不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表2に示した通りであった。
実施例11(参考例2)
図14に概略を示したスパンボンド不織布装置を用いて、まず実施例4で得られた目付240g/m2 のPP不織布を捕集装置28の上に置いて、実施例8と同様のポリマーの組み合わせで、PP不織布上に直接糸条を捕集して、ポリマーアロイスパンボンドとPP不織布からなる貼り合せ型不織布を得た。図14において、1はホッパー、3はスピンブロック、4は紡糸パック、5は口金、6はチムニー、7は吐出された糸条、24はチップ軽量装置、25はイジェクター、26は開繊板、27は開繊された糸条、28は捕集装置である。このとき、2軸押し出し機23での溶融温度は260℃、紡糸温度は260℃、口金面温度は245℃とした。また、口金は実施例8で用いたものと同スペックで単孔吐出量は1.0g/分、口金下面から冷却開始までの距離は12cmとした。
得られた貼り合わせ型不織布をトリクレンに浸浸することにより、海成分であるco−PSの99%以上を溶出して、PBTナノファイバーとPP不織布からなる貼り合わせ型不織布を得た。これのナノファイバー単繊維直径の数平均は50nm(2×10-5dtex)、単繊維繊度が1×10-7〜1×10-4dtexの範囲にある単繊維の繊度比率が98%以上であり、単繊維直径が45〜74nmの範囲にある単繊維の繊度比率が70%であった。
比較例1
溶融粘度150Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点220℃のN6と溶融粘度145Pa・s(262℃、121.6sec-1)、融点105℃のPEとをN6のブレンド比率を20重量%となるようにそれぞれのポリマーを計量しながら2軸押し出し機に導く構造の図13にモデルを示した紡糸装置を用い、2軸押し出し機21の温度を260℃として溶融した後、口金孔数12、吐出孔径0.30mm、吐出孔長0.5mmのずん胴口金として実施例1と同様に溶融紡糸を行った。図13において、21は2軸押出混練機であり、22はチップ軽量装置である。
ただし、N6とPEのブレンド斑が大きく、口金下で大きなバラスが発生しただけでなく、曳糸性にも乏しく、安定して糸を巻き取ることはできなかったが、少量の未延伸糸を得て、実施例1と同様に延伸・熱処理を行い、82dtex、12フィラメントの延伸糸を得た。このときの延伸倍率は2.0倍とした。この繊維に捲縮付与およびカットを行いカット長51mmのN6とPEからなる原綿を得た。
上記原綿に、カーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを2000本/cm2 のパンチ密度で施して目付500g/m2 の不織布を得た。この不織布を85℃のトルエンにより1時間以上浸漬することで不織布中のPEの99%以上を溶出除去し、目付が110g/m2 の極細N6糸からなる不織布を得た。
得られた不織布から極細N6糸を引き出して解析した結果、単繊維直径が100nm〜1μm(単繊維繊度9×10-5〜9×10-3dtex)の超極細糸が生成していることを確認した。
この不織布の数平均による単繊維繊度は1×10-3dtex(単繊維直径384μm)と大きいものであり、単繊維繊度ばらつきも大きいものであった。図6は横軸に島ドメイン直径、縦軸に存在頻度(個数)を示したものであり、図7は横軸に島ドメイン直径、縦軸に面積比率(%)を示したものである。
比較例2
特公昭60−28922号公報の第11図に記載されている紡糸パックおよび口金を用いて、溶融粘度100Pa・s(290℃、121.6sec-1)、ビカット軟化温度107℃のPSを海成分に、溶融粘度180Pa・s(290℃、121.6sec-1)、融点255℃のPETを島成分に用い、特開昭53−6872号公報の実施例1記載のように海島複合繊維糸を得た。このとき、海島複合繊維糸の島成分はPSとPETの2:1(重量比)のブレンドポリマーを用い、海成分としてはPSを用いた(海島複合比は重量比で1:1)。具体的には、該特公昭60−28922号公報の第11図において、A成分をPET、B成分およびC成分をPSとした。
そして、これを比較例1と同様にカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを2000本/cm2 のパンチ密度で施して目付500g/m2 の不織布を得た。この不織布をトリクレンに浸浸して、PSを99%以上除去して目付が100g/m2 のPET極細糸からなる不織布を得た。得られた不織布から極細PET糸を引き出し解析した結果、最小で単繊維直径100nm程度の単繊維もごく微量存在したが、PS中へのPETの分散が悪いため、これの数平均による単繊維繊度は1×10-3dtex(単繊維直径326nm)と大きいものであり、極細PET糸の単繊維繊度ばらつきも大きなものであった。
図8は、得られた不織布について、横軸に島ドメイン直径、縦軸に存在頻度(個数)を示したものであり、図9は横軸に島ドメイン直径、縦軸に面積比率(%)を示したものである。
実施例12、比較例3
実施例12では、実施例1で得られたナノファイバー不織布を用いて、比較例3では比較例1で得られた極細N6繊維不織布を用いて、それぞれ2分割するように切断した後、表面をJIS#240、#350、#500番のサンドペーパーでバフイングした。
さらに、これを隙間が1.0mmの表面温度150℃の上下2本のフッ素加工した加熱ローラーでニップし、0.7kg/cm2 の圧力でプレスした後、表面温度15℃の冷却ローラーで急冷し表面を平滑化した研磨布を得た。
これらの研磨布を以下の方法で評価した結果を表5に示した。
この結果、従来の極細N6糸を用いた比較例3のものに比べ、実施例12のものでは、被研磨物の平滑性が高く、また欠点であるスクラッチ数も少なく、優れた研磨特性を示した。
<研磨評価:ハードディスクのテキスチャリング>
被研磨物:市販アルミニウム板にNi−Pメッキ後ポリッシュ加工した基板
(平均表面粗さ=0.28nm)
研磨条件:以下の条件で、該基板をテキスチャー装置に取り付け、研磨を行った。
砥粒 :平均粒径0.1μmダイヤモンドの遊離砥粒スラリー
滴下速度 :4.5ml/分
回転数 :1000rpm
テープ速度:6cm/分
研磨条件 :振幅1mm−横方向振動300回/分
評価枚数 :該基板30枚/水準
<被研磨物の平均表面粗さRa>
温度20℃、相対湿度50%のクリーン室に設置された防音装置付きのVeeco社製原糸間力顕微鏡(AFM)を用いて基板30枚/水準の表面粗さを測定し、その平均表面粗さRaを求める。測定範囲は各基板のディスク中心を基準とし半径の中央点2カ所を対称に選定し、各点5μm×5μmの広さで測定を行う。
<スクラッチ数>
ZYGO社製干渉型顕微鏡で表面観察し、各サンプルの表面スクラッチ数(X)を測定する。スクラッチは0.1μm×100μm以上の大きさのものをカウントする。これを基板30枚/水準測定し、傷の数による点数yからスクラッチ数βを定義する。
X≦4のとき:y=X
X≧5のとき:y=5
β=Σyi (i=1〜30)
ここで、Σyiはサンプル30枚分のスクラッチ総数である。
実施例13(参考例3)
実施例8で得られた不織布を直径4.7cmの円形に切断したものを5枚重ねて円形のフィルターカラム(有効直径4.2cm)に充填して、白血球除去用のカラムを作製した。このカラムに牛血を2ml/分の流速で90分間通液したところ、目詰まりすることはなく、十分な通液性を有する体外循環用カラムを得ることができた。
実施例14
実施例6で得られた不織布を用いて貼布材基布を作製した。
これに抗炎症剤としてのサリチル酸メチルを含有する薬剤を塗布したところ、薬剤の吸尽性は良好であり、しかも優れた粘着性を示す貼布材とすることができた。
実施例15
実施例1で得られたポリマーアロイ原綿(A)のみを用いて、実施例1と同様にしてカーディングおよびラッピングを施し、さらにニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施して目付500g/m2 のN6と共重合PETからなるポリマーアロイ繊維不織布を得た。
なお、得られたポリマーアロイ繊維不織布の横断面をTEMで観察したところ、図2と同様に、共重合PETが海成分、N6が島成分の海島構造を示し、島ドメインの数平均直径やばらつきは表6に示したとおりであった。
この不織布に制電剤として三洋化成工業社製、商品名“サンスタットES−15(アニオン活性剤)”の20%水溶液を用い、pHコントロールによって酸性条件下で不織布に含浸させ、98℃で1時間処理を行った後、50℃で不織布を乾燥させた。
得られた不織布をJIS L1094“織物及び編物の帯電性試験方法”の摩擦耐電圧測定に準拠して測定したところ、摩擦耐電圧の値は12Vであり、制電性に優れる不織布であることがわかった。
以上のように、実施例15では、ポリマーアロイ繊維中のナノオーダーに微分散化したN6部分に制電剤が高濃度で濃縮されるため、全体としてはポリエステル繊維ではあるが、高い制電性を付与することが可能となる。
実施例16(参考例4)
溶融粘度300Pa・s(220℃、121.6sec-1)、融点162℃のPP(20重量%)と実施例10のポリL乳酸(80重量%)とし、混練温度を220℃として実施例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。
これを溶融温度220℃、紡糸温度220℃(口金面温度205℃)、単孔吐出量2.0g/分、紡糸速度1200m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を延伸温度90℃、延伸倍率を2.0倍とし、熱セット温度130℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は101dtex、12フィラメントであり、強度2.0cN/dtex、伸度47%であった。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、ポリL乳酸が海、PPが島の海島構造を示し、PPの数平均による直径は150nmであり、PPがナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。このポリマーアロイ繊維に捲縮付与およびカットを行い、カット長51mmのポリマーアロイ原綿(F)を得た。
他の繊維として、単繊維繊度が1.9dtex、カット長38mmのPP原綿(G)を準備し、上記ポリマーアロイ原綿(F)とPP原綿(G)を重量比でF/G=50/50として混綿し、カーディングおよびラッピングを施した後、さらにニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施し、目付500g/m2 のポリマーアロイ原綿とPP原綿からなる混合型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより、不織布中のポリL乳酸成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
この不織布からナノファイバーのみを抜き取り解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は154nm(2×10-4dtex)と従来にない細さであり、単繊維繊度のばらつきはごく小さいものであった。その結果を表7に示した。
次に、この不織布にポリビニルアルコールを不織布中の繊維に対して固形分で20重量%となるように付与した。
さらに、この不織布にDMF系のポリエステル−ポリエーテル系ポリウレタンを固形分として不織布中の繊維に対して固形分で30重量%となるように含浸し、湿式凝固して目付は390g/m2 のPPナノファイバーとPP繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の見かけ密度は、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表8に示した通りであった。
実施例17(参考例5)
溶融粘度280Pa・s(300℃、1216sec-1)のPETを80重量%、溶融粘度160Pa・s(300℃、1216sec-1)のPPSを20重量%として、混練温度を300℃として実施例1と同様に溶融混練し、ポリマーアロイチップを得た。ここで、PPSは直鎖型で分子鎖末端がカルシウムイオンで置換されたものを用いた。また、ここで用いたPETを300℃で5分間保持したときの重量減少率は1%であった。
これを溶融温度315℃、紡糸温度315℃(口金面温度292℃)、吐出孔径14が0.6mm、単孔吐出量1.1g/分、紡糸速度1000m/分で実施例1と同様に溶融紡糸を行った。このときの紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。得られた未延伸糸を延伸温度100℃、延伸倍率を3.3倍とし、熱セット温度130℃として実施例1と同様に延伸熱処理した。得られた延伸糸は400dtex、240フィラメントであり、強度4.4cN/dtex、伸度27%、U%=1.3%の優れた特性を示した。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEMで観察したところ、PETが海、PPSが島の海島構造を示し、PPSの数平均による直径は65nmであり、PPSがナノサイズで均一分散化したポリマーアロイ繊維が得られた。このポリマーアロイ繊維に捲縮付与およびカットを行いカット長51mmのポリマーアロイ原綿(H)を得た。
他の繊維として、重量平均分子量5万のPPSを紡糸温度320℃で溶融紡糸し、引き取り速度800m/分で紡糸し未延伸糸糸条を得、これを合糸した。そして100℃、3.2倍でスチーム延伸を施し、単繊維繊度1dtex(繊維直径12μm)、トウ繊度10万dtexのPPSトウを得た。このPPSトウに捲縮付与およびカットを行いカット長51mmのPPS原綿(I)を得た。
上記ポリマーアロイ原綿(H)とPPS原綿(I)を重量比でH/I=50/50として混綿し、カーディングおよびラッピングを施した後、さらにニードルパンチを1500本/cm2 のパンチ密度で施し、目付500g/m2 のポリマーアロイ原綿とPPS原綿からなる混合型不織布を得た。
この不織布を98℃、10%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」5%owfを併用してアルカリ加水分解処理し、不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
この不織布からナノファイバーのみを抜き取り解析した結果、ナノファイバーの数平均による単繊維直径は60nm(4×10-5dtex)と従来にない細さであり、単繊維繊度のばらつきはごく小さいものであった。その結果を表7に示した。
次に、この不織布を120℃のローラーで熱圧着し、目付300g/m2 のPPSナノファイバーとPPS繊維からなる混合型不織布を得た。
この不織布の見かけ密度は、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表8に示した通りであった。
実施例18
実施例4の他の繊維を綿(micronaire繊度が4.3で平均繊維長が1.1インチのアメリカ綿)とした以外は実施例4と同様にして目付700g/m2 のポリマーアロイ原綿と綿原綿からなる貼り合せ型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解により除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
次に、この不織布を0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で表裏ともに10MPaで処理して絡合を行い、目付340g/m2 のN6ナノファイバーと綿繊維からなる貼り合せ型不織布を得た。得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表8に示した通りであった。
実施例19
実施例4の他の繊維を東レ株式会社製ナイロン6原綿(単繊維度2d、繊維長51mm)とした以外は実施例4と同様にして目付700g/m2 のポリマーアロイ原綿とナイロン6原綿からなる貼り合せ型不織布を得た。
この不織布を95℃の5%水酸化ナトリウム水溶液にて1時間浸漬することにより不織布中のポリエステル成分の99%以上を加水分解により除去し、酢酸で中和後、水洗、乾燥した。
次に、この不織布を0.1mmの孔径で、0.6mm間隔のノズルヘッドからなるウォータージェットパンチにて、1m/分の処理速度で表裏ともに10MPaで処理して絡合を行い、目付350g/m2 のN6ナノファイバーとN6極細繊維からなる貼り合せ型不織布を得た。得られた不織布の見かけ密度、引っ張り強度、引き裂き強力、通気量は表8に示した通りであった。
実施例20、21
実施例20では実施例18、実施例21では実施例19で得られたナノファイバー貼り合わせ型不織布を5cm四方の大きさに切り、クレンジングウォーター(「ホワイトクレンジングウォーター」コーセーコスメポート(株)製)を含浸させたものを作製した。これを用いて化粧を施した30人に対して化粧の拭き取りテストを行ったところ、ナノファイバー単独不織布に比べてナノファイバー貼り合わせ型不織布は強度、寸法安定性優れるため、良好な手持感と使いやすさを有し、毛穴などきめ細かい部分の化粧をきれいに拭き取るができる化粧落としに優れた不織布であることがわかった。