JP5040189B2 - 異形管の曲げ加工方法および加工された自動車用部品 - Google Patents

異形管の曲げ加工方法および加工された自動車用部品 Download PDF

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Description

本発明は、異形管の曲げ加工方法およびそれで加工された自動車用部品に関し、さらに詳しくは高強度のテーパ形状の被加工管であっても、曲げ加工限界を大幅に向上させることができる異形管の曲げ加工方法、およびこの加工法により得られた自動車用部品に関するものである。
近年、自動車業界においては、地球環境への配慮とともに車体に対する安全性の要求が高まり、自動車部品の軽量化および高強度化に対する要請がますます厳しくなっており、燃費向上や衝突安全性の向上といった観点から、自動車用部品の開発が進められている。このような要請に対応するため、従来とは全く異なる強度レベルからなる高張力鋼板、例えば、引張強さが590MPa以上、780MPa以上、または900MPa以上という高強度の素材が広く用いられるようになっている。
一方、これらの素材の高強度化とともに、従来の自動車用部品の構造を見直すことも行われている。例えば、特許文献1には、センターピラーを対象にして部品構造を見直す提案が示されている。具体的には、車体のセンターピラー部は、上端側が小径、下端側が大径であり、上端側から下端側へ向かい外周形状(断面)が漸次変化する細長の形状をなしていることから、通常のプレス品のスポット溶接による組み立て構造を、テーパ形状の異形管を用いた閉断面構造に変更することにしている。
従来から用いられていた開断面構造の部品を閉断面にすることにより、部品全体としての剛性や衝突特性が大幅に向上させることができる。また、特許文献1に開示される例によれば、通常のストレート管の形状に替えて、断面形状が長手方向に変化するテーパ形状の異形管を素材に用いることにより、部品の製造工程を簡略化できるとともに、剛性を高め必要な部品強度を確保できることから、自動車用部品の装着スペースや重量を減少させることができるとしている。
ところで、上述の通り、製造工程上のメリットを有する異形管であっても、多様な自動車用部品に適用しようとすると、所定形状の異形管に曲げ加工を施すことが必要になる。また、曲げ加工を施した異形管をハイドロフォームの素材として用いることによって、さらに適用範囲を拡大することが可能になり、優れた性能を有する自動車用部品を得ることができる。
このような異形管の曲げ加工技術の開発要求に対して、特許文献2には、テーパ管の如き棒状素材の曲げ加工方法として、素材と同一の半円形の溝を有し、かつこの溝が周上除々に半径を変え、素材と接触する部分の半径が素材の半径と常に等しくなるように成形されているローラとダイスとによって、テーパ形状の棒状素材を挟み、ローラを回転させながらダイスに沿わせて曲げ変形を行う方法が開示されている。
また、特許文献3には、テーパ管を所定の形状に折り曲げるための曲げ金型と、この曲げ金型に添設したテーパ管を回転ベースにより曲げ金型に沿って加圧しつつ回動するロールガイドとを設けて、このロールガイドの凹溝曲面を曲げ加工後のテーパ管の形状に略同じ曲面により形成し、これらの曲げ金型とロールガイドとによって曲げ加工するテーパ管の曲げ加工装置が提案されている。
特開2001−321842号公報 特開昭49−52165号公報 特開2001−47141号公報
前述の通り、自動車用部品の加工技術の多様化にともなう、テーパ形状の異形管の曲げ加工技術の開発要求に対応し、異形管の加工方法や加工装置が提案されている。しかし、特許文献2、3で提案されているのは、いずれも街路灯等に使用されるテーパ丸管の曲げ加工であり、それほどの加工精度や加工限界が要求される技術ではなく、いわゆる押し付け曲げ加工に基づく加工方法や加工装置である。
図1は、特許文献2、3で提案される押し付け曲げ加工の内容を説明する図である。同(a)はローラ2とダイス3との間の溝空間にテーパ丸管(異形管)1を挿入した状態を示し、(b)は曲げ加工の進行状態を示し、(c)は曲げ加工が終了した状態を示している。しかし、押し付け曲げ加工は、単に素管をダイス型に押し付けながら成型する方法であるため、曲げ内周側に座屈が生じ易く、薄肉の異形管の曲げ加工に適用するのは困難である。
特に、自動車車体の軽量化に対応するため、引張強さが580MPa級を超えるような高強度の異形管を曲げ加工する場合には、押し付け曲げ加工では特に曲げ内周側にしわの発生が顕著となり、曲げ成形法として採用することができないという問題がある。
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、異形管の曲げ加工に際して、自動車用部品の加工技術の多様化にともない、高強度の異形管を成形加工する場合であっても、作業能率に優れた異形管の曲げ加工方法、およびこの加工法により得られた自動車用部品を提供することを目的としている。
本発明者らは、前述の課題を達成するため、管の曲げ加工限界について各種の曲げ加工方法に基づいて検討を加えた。曲げ加工限界には管の肉厚/外径(t/D)または矩形断面などの異形管の場合は肉厚/曲げ平面内の製品の幅(t/W)、および曲げ半径/外径比(R/D)または異形管の場合は曲げ半径/曲げ平面内の製品の幅(R/W)、そして異形管の材質が大きく影響を与えることになり、当然のことながら高強度の薄肉管の曲げ加工限界は著しく低下する。
図2は、異形管の曲げ加工方法によって加工された自動車の骨格部品の補強材(リインフォース)の外観正面構成および断面構成を示す図である。通常、高強度の異形管1を用いて曲げ加工を行う場合には、その加工限界の要因となるのは、曲げ外周側のA部での引張応力による破断(割れ発生)、曲げ内周側のB部での圧縮応力による座屈(しわ発生)、さらに偏平などにみられる断面形状の変形発生である。
特に、高強度の薄肉異形管では、曲げ内周側のB部での圧縮応力による座屈(しわ発生)が問題になる場合が多い。このような観点から、薄肉管の曲げ加工を検討した結果、曲げ加工限界について引曲げ加工が他の曲げ加工方法に比べ優れる。すなわち、引曲げ加工は被加工材の両端をクランプ等により保持し、ダイス型を回転させながら引張応力を付与しつつ成形する方法であり、管が引張られながら曲げ加工が施されることから、曲げ内周側での圧縮応力による座屈が発生しにくく、曲げ半径も小さくできることによる。
さらに、異形管の曲げ加工で発生する曲げ内周側のB部での圧縮応力による座屈(しわ発生)を防止するには、異形管の曲げ加工の内周側に尖り部を形成させつつ曲げ加工を行うことが有効になる。座屈(しわ発生)を防止するため尖り部を形成させつつ曲げ加工を行う場合には、引曲げ加工に限定されないが、引曲げ加工と組み合わせることによって、両者が発揮する座屈防止の作用が相まって、一層、有効に座屈発生を防止することができる。
異形管の曲げ加工を行う場合には、管端部を例えばクランプ等により保持しながら曲げ加工を行うが、クランプ力が足りないと、被加工部材が保持できず、加工中にすべり、金型から抜けるおそれがある。また、薄肉管の場合には、内面の保持工具がないとクランプで被加工材そのものが、潰れてしまう場合がある。厚肉管の場合にはクランプによる潰れの危険性は少ないが、薄肉でも厚肉でも加工中に材料が滑らないように、一定以上の保持力が必要である。すなわち、内面に保持工具を挿入することによって、内面からの摩擦力が期待できるため、比較的大きなクランプ力を得ることができる。
さらに、内面の保持工具をテーパ状にしておけば、テーパ状の斜面ですべりが防止できるので、比較的小さな部分をクランプするだけでよいが、この保持工具を内面に装着するためやや煩雑な構成と操作が必要になる。より現実的な方法としては、テーパ素管の両端のうち、外径若しくは周長が漸次減少する側の管端部(以下、本明細書では「小周長側端部」という)または外径若しくは周長が漸次増加する側の管端部(以下、本明細書では「大周長側端部」という)を加工端とする場合には、加工端に平行部を設け、内面に円筒工具(以下、単に「中子」という)を装着してクランプを行い曲げ加工を行うことにより、材料がすべらず良好な曲げ加工ができる。さらに、中子を保持工具として用いれば、テーパ素管の管端から中子を挿入することができ、作業能率を落とすことなく曲げ加工を行うことができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(5)の異形管の曲げ加工方法、および(6)の自動車用部品を要旨としている。
(1)軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管の両端のうち、加工端となる小周長側端部の内面に保持工具を装着して加工を行う引張曲げ加工方法であって、当該異形管の加工端およびその対極の送り端からなる両端を保持し、前記異形管をその曲げ加工後の形状と略同一の孔型を有する回転曲げダイスに嵌合させ、前記小周長側端部の内面に保持工具を装着して保持する際に、前記保持工具の先端側が前記小周長側端部の内径より小径の円柱であり、後端側が前記小周長側端部の内径より大径の円錐体であり、前記円柱の左右にスリットが刻まれ、前記回転曲げダイスに設けられた金型クランプと締め付けダイの内面にもスリットが刻まれ、異形管の加工端が前記金型クランプと前記締め付けダイとにクランプされた後、前記スリットにストッパーを挿入し、前記保持工具を掛止し、前記異形管の加工端を前記回転曲げダイスの回転に同調して移動させるとともに、前記異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって前記異形管に引張り応力を付与した状態とし、かつ、当該異形管の座屈を防止するように前記引張応力を制御することを特徴とする異形管の曲げ加工方法である。
(2)軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管の両端のうち、加工端となる小周長側端部の内面に保持工具を装着して加工を行う引張曲げ加工方法であって、当該異形管の加工端およびその対極の送り端からなる両端を保持し、前記異形管をその曲げ加工後の形状と略同一の孔型を有する回転曲げダイスに嵌合させつつ、前記異形管の曲げ加工の内周側の一部または全部に尖り部を形成させ、前記小周長側端部の内面に保持工具を装着して保持する際に、前記保持工具の先端側が前記小周長側端部の内径より小径の円柱であり、後端側が前記小周長側端部の内径より大径の円錐体であり、前記円柱の左右にスリットが刻まれ、前記回転曲げダイスに設けられた金型クランプと締め付けダイの内面にもスリットが刻まれ、異形管の加工端が前記金型クランプと前記締め付けダイとにクランプされた後、前記スリットにストッパーを挿入し、前記保持工具を掛止し、前記異形管の加工端を前記回転曲げダイスの回転に同調して移動させるとともに、前記異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって前記異形管に引張り応力を付与した状態とし、かつ、当該異形管の座屈を防止するように前記引張応力を制御することを特徴とする異形管の曲げ加工方法である。
(3)上記(1)、(2)の異形管の曲げ加工方法では、前記引張り応力が、曲げ加工される異形管の機械的な特性と異形管の形状と曲げ半径に応じて制御されることが望ましい。
(4)上記(1)〜(3)の異形管の曲げ加工方法では、前記回転曲げダイスと、異形管の形状と略同一の孔型を有する孔型ガイドとで前記異形管を挟持して曲げ加工を行うのが望ましい。
(5)上記(1)〜(4)の異形管の曲げ加工方法では、前記異形管の両端のうち、加工端となる小周長側端部の内面に保持工具を装着して曲げ加工を行うことにより、加工端の移動時、または送り端の移動時のすべりを防止することができる。さらに、前記異形管の内面に芯金を装着して内面を拘束しつつ、曲げ加工を行うのが望ましい。
(6)上記(1)〜(5)の異形管の曲げ加工方法によって加工され、ブレーキペダルおよびシートフレームなどの車体基材、またはリインフォースなどの車体骨格部材に用いられることを特徴とする自動車用部品である。
本発明で規定する「異形管」とは、断面形状が軸方向に変化することにより、軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少するテーパ丸管、テーパ角管、およびこれらの組み合わせからなるテーパ管を意味する。
本発明の異形管の曲げ加工方法によれば、高強度のテーパ形状の被加工管であっても、曲げ内周側で発生する座屈を抑制し、曲げ加工限界を大幅に向上させることができるとともに、曲げ精度に優れ、加工欠陥の少ない自動車用部品を曲げ成形できる。これにより、一層、車体の軽量化とともにコスト低減が図れ、益々高度化する自動車用部品に対する要求レベルにも対応することができる。
本発明の異形管の曲げ加工方法の具体的な内容を(曲げ加工の装置構成)、(引張応力の制御)、(尖り部の形成)および(端部保持、クランプ方法)に区分して説明する。
(曲げ加工の装置構成)
図3は、本発明の曲げ加工方法を実施するための装置構成を示す図であり、(a)は曲げ加工前に異形管をセットした状態を示し、(b)は曲げ加工が進行している状態を示している。図3(a)に示すように、異形管1の先端側にセットされる加工端は、小周長側端部からなり、回転曲げダイス3に設けられた金型クランプ4と締め付けダイ5とでクランプされる。
一方、異形管1の後端側となる送り端は、大周長側端部からなり、図示されない送り装置に接続されたロッド7に取り付けられた保持装置6と後端クランプダイ8とに挟み込まれた状態で加工装置にセットされる。
図3に示す加工装置では、異形管1の側面は、別の送り装置(図示せず)に接続されたロッド10に接続された孔型ガイド9に保持されている。孔型ガイド9は、回転曲げダイス3に油圧などで押し付けられながら、送られる。孔型ガイド9は、異形管1の曲げ加工部を外周側から保持することによって、曲げ外周側での加工形状の変形を防止することができる。孔型ガイド9は異形管の送り速度と同じ速度を採用する場合には、孔型ガイド9と保持装置6とを一体構造することができる。
このとき、孔型ガイド9は回転曲げダイス3へ押し付けられるが、リリーフ弁などの器具を用いてこのときの押し付け力が一定になるように制御を行えば、単一半径R管の曲げだけではなく、複雑な形状の曲げを行うことも可能になる。
図4は、本発明が採用する加工装置の回転曲げダイス、締め付けダイおよび孔型ガイドの構成を示す斜視図であり、(a)は回転曲げダイスの構成、(b)は締め付けダイの構成、(c)孔型ガイドの構成をそれぞれ示している。回転曲げダイス3には金型クランプ4が設けられており、これらの内周面には異形管の曲げ加工後の形状と略同一の孔型3aが設けられている。また、締め付けダイ5には異形管の先端部の形状と略同一の孔型5aが設けられ、金型クランプ4とで異形管1の加工端を挟み込む。さらに、孔型ガイド9には異形管の形状と略同一の孔型9aが設けられている。
図4に示す構成からなる金型クランプ4および締め付けダイ5でクランプされた異形管1は、図3(b)に示すように、回転曲げダイス3により加工端が回転され、曲げ加工に進行する。すなわち、異形管1を孔型3aを有する回転曲げダイス3に嵌合させつつ、異形管1の加工端を回転曲げダイス3の回転にともなって移動させ、曲げ加工が進むにつれて、異形管1の曲げ内周部が回転曲げダイス3の孔型3aに拘束され製品形状に保持される。
後述するように、異形管の曲げ加工に際し、曲げ内周側に尖り部を形成させつつ加工を行うためには、図4(a)に示す回転曲げダイス3の孔型3aに所定寸法の凹み部を設けて、異形管の加工面を孔型3aに拘束させた状態で回転曲げダイスの回転に同調して移動させることが必要になる。
(引張応力の制御)
本発明の曲げ加工方法は、異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって前記異形管に引張り応力を付与した状態とし、かつ、当該異形管の座屈を防止するように前記引張応力を制御することを特徴としている。
すなわち、例えば、薄肉管の曲げ加工を行う場合に、被加工材の両端をクランプ等によって保持し、送り端を加工端の移動速度より遅く移動させことにより引張応力を付与しつつ成形することにより、管が引張られながら曲げ加工が施されることから、曲げ内周側での圧縮応力による座屈が発生しにくく、曲げ半径も小さくできる。このとき、曲げ内周側に発生する座屈を防止するのに最適な引張応力は、当該異形管自体の機械的な特性、肉厚、製品幅等の異形管側の因子および曲げ半径に依存する。
図5は、製品厚みが一定の矩形断面の異形管を曲げ加工する場合に内周側に現れる座屈のしやすさを説明する図であり、いずれも内面に芯金を入れない場合の説明図である。図5(a)は全長に亘り一定の曲げ半径Rと曲げ平面内の製品幅W0、W1との関係、(b)は曲げ半径R、R0と曲げ平面内の製品幅W0、W1との関係、(c)は曲げ半径Rと曲げ平面内の製品幅W0、W1と製品肉厚t0、t1との関係を示している。
まず、図5(a)において、製品肉厚は全長に亘りt1である。小周長側端部におけるR/W0の関係と大周長側端部におけるR/W1の関係を比較すると、R/W0>R/W1の関係から大周長側端部で座屈を生じやすいことから引張応力を高める必要がある。
次に、図5(b)において、基準となる曲げ半径をRとし、先端部の曲げ半径をR0と変化させると(R>R0)、小周長側端部におけるR0/W0が大きくなることから、図5(a)に示した場合に比較して、曲げ半径が小さくなると座屈を生じやすいことになる。小周長側端部におけるR0/W0の関係に応じて、内周側の座屈を防止するためには図5(a)に示した場合より、小周長側端部に付加する引張応力を高めることが必要になる。
図5(c)は、詳細には、2枚に板を溶接したいわゆるテーラードブランクや素材の圧延時に板厚差を形成せしめた、所謂テーラードロールドブランクなどを素材としてテーパ管を製造し、基準となる製品肉厚をt1とし、先端部の肉厚をt0 (t0<t1)に変化させた構成を示す図である。図5(c)に示す構成には、薄肉化にともなって座屈が生じやすいことから、図5(a)に示した場合より小周長側端部におけるt0/W0の関係に応じて、一層、小周長側端部に付加する引張応力を高める必要がある。
また、内面に芯金を挿入した場合には、極端に内周側の座屈が発生しにくくなるが、テーパ管の形状に適合する芯金が複雑であること、作業性や設備のメインテナンスが煩雑になること等の要因があり、芯金を挿入せずに曲げ加工が行うことが望ましい。
ところが、内面に芯金を挿入した場合であっても、異形管を曲げ加工における座屈のしやすさは、相対的ではあるが前述と同様の特性を示す。したがって、製品の要求精度や形状に応じて、内面に芯金を挿入して異形管に曲げ加工を施すのがよい。すなわち、曲げ半径Rが小さいほど、製品幅Wが大きいほど、肉厚tが薄いほど、内周側に座屈が生じやすくなることから、適正な引張り力を付与することにより、曲げ加工での内周側の圧縮力を緩和し、座屈防止が可能になる。
さらに、本発明の曲げ加工方法では、座屈を防止するための引張応力は、上述した座屈因子に加え、異形管の曲げ加工部位における断面積(略、周長と製品肉厚の積)に応じて変動することも考慮する必要がある。このため、回転曲げダイスとの嵌合によって形成される異形管の断面積に応じて付与される引張応力を制御することも必要になる。
このように、引張曲げ加工の過程において、異形管の肉厚、製品幅、曲げ半径さらに異形管の断面積に応じて引張応力を制御することにより、有効に曲げ内周側に発生する座屈を防止することが可能になり、特に薄肉異形管における曲げ加工限界を大幅に改善することができる。
このように、引張曲げ加工の過程において、異形管の座屈特性、さらに異形管の断面積に応じて引張応力を制御することにより、有効に曲げ内周側に発生する座屈を防止することが可能になり、特に薄肉異形管における曲げ加工限界を大幅に改善することができる。
図6は、本発明の曲げ加工方法に適用できる引張応力の制御装置の構成例を示す図である。同図では、異形管1の引張曲げ加工が進行している状態を示しており、異形管1の先端側にセットされる加工端は、小周長側端部からなり、回転曲げダイス3に設けられた金型クランプ4と締め付けダイ5とでクランプされる。
一方、異形管1の後端側となる送り端は、大周長側端部からなり、ロッド7に取り付けられた保持装置6と後端クランプダイ8とに挟み込まれた状態で曲げ加工装置にセットされる。図示する孔型ガイド9は、保持装置6と一体に構成されている。前記ロッド7は応力制御装置13に連結されている。
応力制御装置13は、油圧ポンプに接続された油圧シリンダー14で構成されており、異形管1の曲げ加工部に引張応力を付与する必要がある場合には、切替弁の作動により流量調節弁を通じて作動油が油圧シリンダーの上部14aに供給される。このとき、応力制御装置13はリリーフ弁を設定できる構成とし、一定の引張応力を付与した状態で曲げ加工を行うことができる。
一方、異形管1の曲げ加工部に圧縮応力を付与する必要がある場合には、切替弁の作動により流量調節弁を通じて作動油が油圧シリンダーの下部14bに供給される。図6に示す応力制御装置13では、さらに慣用される油圧制御手段を用いることにより、異形管の曲げ加工部の肉厚、製品幅、曲げ半径、また断面積に応じて引張応力を制御することができる。
(尖り部の形成)
本発明の曲げ加工方法は、異形管の送り端を加工端の移動速度と同じ速度で移動させ、前記回転曲げダイスに嵌合させる際に、前記異形管の曲げ加工の内周側の一部または全部に尖り部を形成させることを特徴としている。このとき、曲げ加工は引張応力を付加しない状態、または圧縮応力を付加しない状態といえる。
前述の通り、異形管の曲げ加工において加工限界の要因となるのは曲げ内周側に発生する座屈であるが、異形管の曲げ加工の内周側に尖り部を形成させつつ曲げ加工を行うことにより、曲げ加工は引張応力を付加しない状態、または圧縮応力を付加しない状態に拘わらず、曲げ内周側に発生する座屈の有効な防止対策となる。
図7は、本発明の曲げ加工方法によって曲げ内周側に尖り部が形成されたリインフォースの外観構成を示す図であり、(a)は外観正面図であり、(b)は曲げ内周側を示す平面図であり、(c)は平面図のX−X矢視による断面図である。同図に示すように、座屈か発生し易い曲げ内周側のB部に尖り部1aを形成することにより、曲げ内周側に発生し易い座屈を防止することができる。曲げ内周側に尖り部1aを形成するには、前記図4(a)に示す回転曲げダイス3の孔型3aに所定寸法の凹み部を設けて、異形管1を孔型3aを有する回転曲げダイス3に嵌合させつつ曲げ加工が行われる。
曲げ内周側における座屈発生は、図7(c)に示すように、異形管1の曲げ加工の内周側に形成された尖り部1aの尖り量δの影響を受ける。例えば、尖り量δを1mmから3mmに増加し、尖り角度を増加させることにより、内周側の座屈発生の防止は有効になる。
さらに、本発明の曲げ加工方法では、異形管の曲げ加工の内周側に尖り部を形成させつつ、異形管の加工端を前記回転曲げダイスの回転に同調して移動させるとともに、異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって引張応力を付与した状態で曲げ加工を行うことを特徴としている。
すなわち、異形管の曲げ加工の内周側に尖り部を形成させつつ、引張曲げ加工を行うことにより、引張曲げ加工による座屈防止作用と尖り部形成よる座屈防止作用とが相まって、曲げ内周側に発生する座屈の有効な防止手段となる。
さらに望ましくは、本発明の曲げ加工方法では、例えば、薄肉管の曲げ加工を行うために引張応力を付与しつつ成形する場合に、異形管の曲げ加工部の肉厚、製品幅、曲げ半径、または断面積に応じて、異形管に付与される引張応力を制御するとともに、曲げ加工の内周側に尖り部を形成させつつ曲げ加工を行うことができる。それぞれが発揮する座屈防止の作用によって、一層、有効に座屈発生を防止することができる。
(端部保持、クランプ方法)
異形管の引張曲げ加工の際し、その両端をクランプするのにともない小周長側端部ですべりが発生し、曲げ加工部に充分な引張応力を付与することができない事態が発生する。これに対し、本発明の曲げ加工方法では、引張応力を付与するに際し、実操業を想定した場合により実現可能な対策として、小周長側端部に塑性変形を与えることよって管端部で発生するすべりを防止する手段の他に、小周長側端部の内面に保持工具を装着することよって管端部で発生するすべりを防止する手段を採用できる。
図8は、本発明が採用する保持工具とその装着要領の1例を説明する斜視図である。本発明の引張曲げ加工方法では、異形管1に挿入してその内面から小周長側端部を保持する保持工具11を用いることができる。図8に示す保持工具11の先端側は小周長側端部の内径より小径の円柱であり、後端側は円錐状に拡がり小周長側端部の内径より大径となっており、小周長側端部の内径より小径となる円柱部の左右にはスリット11sが刻まれている。
このように保持工具11を構成することによって、異形管1の内面に挿入された保持工具11により小周長側端部をその内面から保持することができる。図8では、保持工具11は円柱状で構成される場合を示したが、異形管の形状に応じて、他に角柱状、多角柱状にすることができる。
前記図3に示す装置構成で曲げ加工を行う場合は、回転曲げダイスに設けられた金型クランプ4と締め付けダイ5の内面にもスリット4s、5sが刻まれており、異形管1の加工端が金型クランプ4と締め付けダイ5とにクランプされた後、保持工具11を掛止するため、これらのスリット4s、5s、11sにストッパー12が挿入される。この状態で曲げ加工部に引張応力が作用しても、ストッパー12で掛止され保持工具11で支持されて、小周長側端部はすべりを発生することなく引張曲げ加工が行われる。
しかも、異形管1の小周長側端部に要するクランプ長さは、保持具11を用いることにより、ストレート管を引張曲げ加工する場合に必要とするクランプ長さをより短くすることができる。
図9は、本発明が採用する保持工具とその装着要領のその他の例を説明する斜視図である。前記図8に示すように、内面の保持工具をテーパ状にしておけば、テーパ状の斜面ですべりが防止できるため比較的小さな部分をクランプすればよい。しかし、この保持工具を内面に装着するためやや煩雑な構成と装着操作が必要になる。
このため、図9に示すように、より現実的な方法としてテーパ素管1の両端のうち、小周長側端部または大周長側端部を加工端とする場合には、加工端に平行部1bを設け、内面に円筒状の中子15を装着する。そして、曲げ加工にともなって、平行部1bをクランプすることにより、テーパ素管1の加工端がすべらず良好な曲げ加工ができる。さらに、中子15を保持工具として用いれば、テーパ素管1の管端から中子を挿入することができ、作業能率を落とすことなく曲げ加工を行うことができる。
図10は、本発明が採用する芯金の断面構成を示す図である。本発明の引張曲げ加工方法では、図10に示すような異形管の内面形状に略一致した曲げに追従可能な芯金16を用いることによって、異形管の内面を拘束しつつ引張曲げ加工を行うことができる。このため、芯金16の追従作用により曲げ加工限界を大幅に拡大することが可能になる。
さらに、本発明に適用できる芯金は、図10に示す構造の芯金16に限定されず、例えば、ウレタンゴムや複層にした弾性体を異形管の内面形状に略一致した形状に加工し、それを芯金として用いることもできる。
本発明の引張曲げ加工方法では、高強度で、かつ成形加工後の曲げ精度に優れることから、自動車用部品を曲げ成形に最適であり、例えば、前記図2に示すレインフォースの他にも、ブレーキペダルおよびシートフレームなどの車体基材としても適用することができる。
本発明の曲げ加工方法による効果を確認するため、表1に示す特性の薄鋼板を用いて、供試用の異形管として2種類のテーパ管を作製した。薄鋼板Bはテーラード鋼板とし、先端板厚を0.8mm、後端板厚を1.4mmとした。
Figure 0005040189
(実施例1)
表1に示す薄鋼板Aを用いて、UO成形ののちレーザ溶接を行い、小周長側端部がφ26mm、大周長側端部がφ48mmで、管長さが420mmのテーパ管を作製した。これらのテーパ管を高さ25mmの矩形断面(コーナR約6mm)を有する角管のテーパ管に成形し曲げの素材(以下、「テーパ管A」という)とした。 得られたテーパ管Aを用いて、表2に示す各条件で前記図2に示す車体骨格部材のリインフォースの曲げ加工を実施し、曲げ加工後の表面状況を目視観察した。リインフォースの内周側に尖り部を形成する場合にはその尖り量δは3mmとした。目視観察の結果を表3に示す。
Figure 0005040189
Figure 0005040189
表3に示す結果から、本発明法によれば従来法(押し付け曲げ加工)では困難であった異形管の曲げ加工であっても、座屈を発生させることなく、良好な加工精度で曲げ成形が可能になることが分かる。
このとき同時に、前記図8に示す内面保持工具や前記図9に示す中子を用いる曲げ加工を実施したが、いずれの場合にも材料すべりや潰れを全く防止し、良好な加工精度を得られることを確認した。さらに、前記図10に示す芯金を用いることで、さらに高精度の寸法精度を確保できることが分かった。
(実施例2)
表1に示す薄鋼板Bを用いて、UO成形ののちレーザ溶接を行い、小周長側端部がφ22mm、大周長側端部がφ51mmで、管長さが440mmのテーパ管を作製した。これらのテーパ管を高さ20mmの矩形断面(コーナR約5mm)を有する角管のテーパ管に成形し曲げの素材(以下、「テーパ管B」という)とした。テーパ管Bはテーラード鋼板を用い、前記図5(c)に示すように、先端(細径部)板厚t0を0.8mm、後端(大径部)板厚t1を1.4mmとしている。
得られたテーパ管Bを用いて、前記図5(a)に示すレインフォースの曲げ加工を実施し、引張応力を制御する場合(試験No.7、本発明例)と引張応力を制御しない場合(試験No.6、比較例)の曲げ加工後の表面状況を目視観察した。このときの基準曲げ半径Rを160mmとし、先端部のクランプ長は40mm、後端部のクランプ長は60mmとしている。
Figure 0005040189
引張応力を制御する場合(試験No.7、本発明例)では、先端部は小さい張力(約0.5tonf)からスタートし、後部側に進むにつれ座屈を発生させない大きな張力(約10tonf)を高めるように制御した。一方、引張応力を制御しない場合(試験No.6、比較例)では、後部側が座屈を発生させない大きな張力(約10tonf)を先端側から後端側に至るまで一定値で付与した。その結果、先端側の外周側の潰れが大きくなり、製品として不良判定であった。
本発明の異形管の曲げ加工方法によれば、高強度のテーパ形状の被加工管であっても、薄肉または厚肉の肉厚寸法に拘わらず、曲げ内周側で発生する座屈を抑制し、曲げ加工限界を大幅に向上させることができるとともに、曲げ精度に優れ、加工欠陥の少ない自動車用部品を曲げ成形できる。これにより、一層、車体の軽量化とともにコスト低減が図れ、益々高度化する自動車用部品に対する要求レベルにも対応することができるので、自動車用部品の加工技術として広く適用できる。
先行技術である押し付け曲げ加工の内容を説明する図であり、(a)はローラとダイスとの間の溝空間にテーパ丸管(異形管)を挿入した状態を示し、(b)は曲げ加工の進行状態を示し、(c)は曲げ加工が終了した状態を示している。 異形管の曲げ加工方法によって加工された自動車の骨格部品の補強材(リインフォース)の外観正面構成および断面構成を示す図である。 本発明の曲げ加工方法を実施するための装置構成を示す図であり、(a)は曲げ加工前に異形管をセットした状態を示し、(b)は曲げ加工が進行している状態を示している。 本発明が採用する加工装置の回転曲げダイス、締め付けダイおよび孔型ガイドの構成を示す斜視図であり、(a)は回転曲げダイスの構成、(b)は締め付けダイの構成、(c)孔型ガイドの構成をそれぞれ示している。 製品厚みが一定の矩形断面の異形管を曲げ加工する場合に内周側に現れる座屈のしやすさを説明する図であり、(a)は全長に亘り一定の曲げ半径Rと曲げ平面内の製品幅W0、W1との関係、(b)は曲げ半径R、R0と曲げ平面内の製品幅W0、W1との関係、(c)は曲げ半径Rと曲げ平面内の製品幅W0、W1と製品肉厚t0、t1との関係を示している。 本発明の曲げ加工方法に適用できる引張応力の制御装置の構成例を示す図である。 本発明の曲げ加工方法によって曲げ内周側に尖り部が形成されたリインフォースの外観構成を示す図であり、(a)は外観正面図であり、(b)は曲げ内周側を示す平面図であり、(c)は平面図のX−X矢視による断面図である。 本発明が採用する保持工具とその装着要領の1例を説明する斜視図である。 本発明が採用する保持工具とその装着要領のその他の例を説明する斜視図である。 本発明が採用する芯金の断面構成を示す図である。
符号の説明
1:異形管、テーパ管、 2:ロール
3:ダイス、回転曲げダイス、 4:金型クランプ
5、締め付けダイ、 6:保持装置
7:ロッド、 8:後端クランプダイ
9:孔型ガイド、 10:ロッド
11:保持工具、 12:ストッパー
13:応力制御装置、 14:油圧シリンダー
15:中子、 16:芯金
1a:尖り部、 1b:平行部

Claims (6)

  1. 軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管の両端のうち、加工端となる小周長側端部の内面に保持工具を装着して加工を行う引張曲げ加工方法であって、
    当該異形管の加工端およびその対極の送り端からなる両端を保持し、前記異形管をその曲げ加工後の形状と略同一の孔型を有する回転曲げダイスに嵌合させ、
    前記小周長側端部の内面に保持工具を装着して保持する際に、前記保持工具の先端側が前記小周長側端部の内径より小径の円柱であり、後端側が前記小周長側端部の内径より大径の円錐体であり、前記円柱の左右にスリットが刻まれ、前記回転曲げダイスに設けられた金型クランプと締め付けダイの内面にもスリットが刻まれ、異形管の加工端が前記金型クランプと前記締め付けダイとにクランプされた後、前記スリットにストッパーを挿入し、前記保持工具を掛止し、
    前記異形管の加工端を前記回転曲げダイスの回転に同調して移動させるとともに、前記異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって前記異形管に引張り応力を付与した状態とし、
    かつ、当該異形管の座屈を防止するように前記引張応力を制御することを特徴とする異形管の曲げ加工方法。
  2. 軸方向の一方から他方にかけて周長が漸次増加または減少する異形管の両端のうち、加工端となる小周長側端部の内面に保持工具を装着して加工を行う引張曲げ加工方法であって、
    当該異形管の加工端およびその対極の送り端からなる両端を保持し、前記異形管をその曲げ加工後の形状と略同一の孔型を有する回転曲げダイスに嵌合させつつ、前記異形管の曲げ加工の内周側の一部または全部に尖り部を形成させ、
    前記小周長側端部の内面に保持工具を装着して保持する際に、前記保持工具の先端側が前記小周長側端部の内径より小径の円柱であり、後端側が前記小周長側端部の内径より大径の円錐体であり、前記円柱の左右にスリットが刻まれ、前記回転曲げダイスに設けられた金型クランプと締め付けダイの内面にもスリットが刻まれ、異形管の加工端が前記金型クランプと前記締め付けダイとにクランプされた後、前記スリットにストッパーを挿入し、前記保持工具を掛止し、
    前記異形管の加工端を前記回転曲げダイスの回転に同調して移動させるとともに、前記異形管の送り端を加工端の移動速度より遅く移動させ、または移動させることなく保持することによって前記異形管に引張り応力を付与した状態とし、
    かつ、当該異形管の座屈を防止するように前記引張応力を制御することを特徴とする異形管の曲げ加工方法。
  3. 前記引張り応力が、曲げ加工される異形管の機械的な特性と異形管の形状と曲げ半径に応じて制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の異形管の曲げ加工方法。
  4. 前記回転曲げダイスと、異形管の形状と略同一の孔型を有する孔型ガイドとで前記異形管を挟持して曲げ加工を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の異形管の曲げ加工方法。
  5. 前記異形管の内面に芯金を装着して内面を拘束しつつ、曲げ加工を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の異形管の曲げ加工方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の曲げ加工方法によって加工され、ブレーキペダルおよびシートフレームなどの車体基材、またはリインフォースなどの車体骨格部材に用いられることを特徴とする自動車用部品。
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