JP5036363B2 - 導電性樹脂塗装金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、オーディオビジュアル(AV)機器、パーソナルコンピュータ周辺機器、インターネット接続機器、車載用情報端末等の電子機器用筺体の構成素材として有用な導電性に優れた樹脂塗装金属板に関するものである。
電子機器分野の最近の動向として、情報処理・伝達能力の高速化、記録容量の増大等さらなる高性能化が進んでおり、電子機器から漏洩する電磁波は増加する傾向にある。漏洩電磁波が増加すると、その電子機器の周辺に配置された精密機械等の誤作動を招くことになるため、対策が必要となっており、電磁波のシールド性(導電性)を高めてその漏洩を防ぐべく、電子機器メーカはより導電性の高い金属板を求める状況にある。また、コストダウンの観点から、金属板を接合する際のネジ等の部品をできるだけ減らすことも要求されており、金属板同士の接合部における接触圧力(10〜12gf/mm2程度の軽接触圧力下)でも良好な導電性を発揮する金属板が望まれている。
従来から、樹脂塗装金属板に導電性を付与するには、樹脂皮膜中に導電性粒子を含有させる方法が知られている。例えば、本願出願人による特許文献1には、リン化鉄に代表される導電性粒子を含有する樹脂層を備えた樹脂被覆金属板が示されているが、この発明では、導電性粒子は溶接性確保のために添加されており、リン化鉄では最近のハイレベルな導電性要求を満足するには不充分である。また、粒径の制御も、硬いリン化鉄を備える皮膜の剥離防止のために検討された結果である。すなわち、特許文献1では、金属板同士の接合部における接触圧力が小さくても良好な導電性を発揮するという課題に対しては、検討が不足していた。
一方、特許文献2には、導電性粒子の個数分布の最頻値を0.05〜1.0μmと小さく設定した被覆金属板が示されている。これは、粒径の小さい粒子を比較的多量に被覆層中に含有させることで、膜厚が厚くなっても溶接性のために必要な通電パスを確保するという技術思想に基づくものであり、この特許文献2においても、軽接触圧力下での導電性について検討されていない。
特開2006−161129号公報 特開2004−183080号公報(請求項1、0016等)
電子機器用の金属板は、上記のように軽接触圧下での優れた導電性が求められるが、同時に、従来と同様の加工性も求められる。特に、加工の際に導電性粒子が皮膜から脱落して、電子機器の基盤に落ち、ショートして電子機器の故障の原因になることがあるからである。
本発明では、上記従来技術を考慮して、加工性に優れ、かつ、接触圧力が小さくても良好な導電性を発揮することのできる樹脂塗装金属板の提供を課題として掲げた。
本発明は、金属板の表面に、導電性粒子を含有する導電性樹脂皮膜が被覆された導電性樹脂塗装金属板であって、導電性粒子が導電性樹脂皮膜中20〜70質量%の範囲で含まれており、導電性粒子の累積50%体積平均粒子径d50(μm)と導電性樹脂皮膜の厚さt(μm)とが下記式(1)を満足し、累積84%体積平均粒子径d84(μm)、累積16%体積平均粒子径d16(μm)および前記d50が下記式(2)を満足するところに特徴を有する。
0.8≦d50/t≦2.0 (1)
(d84−d16)/d50≦1.0 (2)
上記導電性粒子が磁性金属粉末であるとより好ましく、カルボニル鉄粉である態様がさらに好ましい。
本発明の導電性樹脂塗装金属板は、平均粒径d50と膜厚tとの関係を規定すると共に、シャープな粒度分布を有する導電性粒子を用いることで、金属板同士を接合する際の接触圧力が小さくても良好な導電性を発揮することができた。
よって、本発明の導電性樹脂塗装金属板は、電子機器の筺体の構成部材等に有用であり、特に、金属板同士の接合部における接触圧力が小さい場合に好適である。
本発明に係る導電性樹脂塗装金属板の樹脂皮膜には、導電性粒子が20〜70質量%の範囲で含まれている。20質量%未満では十分な導電性が発現せず、70質量%を超えると皮膜中のマトリックス樹脂の量が相対的に減少して、加工時に皮膜に亀裂が入りやすくなるため好ましくない。導電性粒子量は、30〜60質量%がより好ましく、35〜55質量%がより好ましい。
本発明で用い得る導電性粒子としては、金属粒子か、無機または有機ポリマー粒子表面に金属等の導電性層を設けたもの等が挙げられる。金属粒子としては、磁性粉、ニッケル等が、導電性、耐食性の観点から好ましく用いられる。金属板に、さらに電磁波シールド性能を付与する必要性がある場合には、良好な導電性を有し、かつ、電磁波吸収性を兼備する磁性金属粉末を、導電性粒子として用いるとよい。このような磁性金属粉末としては、カルボニル鉄粉、パーマロイ(Ni−Fe系合金でNi含有量が35質量%以上のもの)やセンダスト(Si−Al−Fe系合金)等が好適である。
軽接触圧力下でも高い導電性を発現させるためには、導電性粒子の累積50%体積平均粒子径d50(μm)と導電性樹脂皮膜の厚さt(μm)とが下記式(1)を満足し、かつ、累積84%体積平均粒子径d84(μm)、累積16%体積平均粒子径d16(μm)および前記d50が下記式(2)を満足しなければならない。
0.8≦d50/t≦2.0 (1)
(d84−d16)/d50≦1.0 (2)
式(1)は、換言すれば、導電性粒子の累積50%体積平均粒子径d50(μm)が、導電性樹脂皮膜の厚さt(μm)の0.8倍〜2.0倍の範囲内にあることを示している。d50/tが0.8より小さいと、導電性粒子が樹脂皮膜中に埋もれてしまい、皮膜表面より上に露出する粒子の割合が少なくなって導電性に劣るため、好ましくない。一方、2.0を超えると、皮膜厚より大きい粒子の割合が多くなって、金属板加工時等に粒子が脱落するおそれがあり好ましくない。d50/tのより好ましい下限は0.9、さらに好ましい下限は1.0である。より好ましい上限は1.8であり、さらに好ましい上限は1.6である。なお、樹脂皮膜の厚さについては後述する。
本発明での粒子径は、例えば、Leeds&Northrup社製のマイクロトラック粒度分布測定装置等で、レーザー回折法(散乱式)により測定される粒子径である。そして、一つの粉体の集団を仮定し、その粉体の集団の全体積を100%として、体積基準で粒子径を累積(積算)カーブで表したときに、体積分率が16%のときの粒子径を累積16%体積平均粒子径d16、体積分率が50%のときの粒子径を累積50%体積平均粒子径d50、体積分率が84%のときの粒子径を累積84%体積平均粒子径d84という。
式(2)の左辺は、体積平均粒子径に相当するd50に対して、どの程度粒径がばらついているのかの指標になる値であり、左辺の値が小さいほど粒度分布が狭く、左辺の値が大きいほど粒度分布が広い。本発明では、(2)式の左辺の値の上限を1.0と定めた。この上限値を超えると、本発明で目的とするハイレベルな導電性を発現することができないからである。より好ましい上限は0.85、さらに好ましい上限は0.75である。
本発明者等が、電子機器用途で要求される軽接触での導電性と導電性粒子の粒度分布との関係を調査したところ、d50が同じであっても、粒度分布が広い導電性粒子に比べ、粒度分布が狭い導電性粒子を使用した方が、導電性に著しく優れることが見出された。その理由として以下のことが考えられる。粒度分布が広い導電性粒子は、粒子径の比較的大きい粒子と比較的小さい粒子とが混在している。そして、粒子径が大きい導電性粒子は樹脂皮膜よりも上に突出して通電点となるため、ある程度の導電性は得られる。しかし、小さい粒子は、それがたとえ皮膜厚との関係で十分通電点となり得ても、金属板同士の軽接触の際に、粒子径の大きい粒子が物理的に邪魔をするため、通電点とはなり得ない。このため、同じd50である導電性粒子であっても、粒度分布が広い場合は、結果的に通電点となり得る導電性粒子の絶対数が少なくなり、優れた導電性が得られないものと考えられる。つまり、粒子径の大きい導電性粒子は通電点となるが、それよりも粒子径が小さい導電性粒子の配合効果を消失させてしまうというマイナスの作用があるものと考えられる。また、粒子径が皮膜厚よりも小さい導電性粒子が含まれるような場合は、金属板同士の軽接触下では、粒子が皮膜を超えて露出できないため、全く導電性に寄与せず、さらにマイナス要因となる。
一方、粒度分布が狭い(シャープ)な場合は、どの粒子も大体同じ粒径であるので、皮膜表面から同程度露出し、他の粒子が通電点となるのを物理的に阻害することがなく、配合した導電性粒子の大部分が通電点として機能する。このため、非常に優れた導電性を示すようになったものと考えられる。
用いる導電性粒子の粒度分布を狭くするためには、篩やメッシュで分級すればよいが、篩方式では小さ過ぎる粒子の除去が不可能である上に、製品歩留まりが悪くなり、コスト高となる。小さ過ぎる粒子を排除することのできる分級法として、例えば気流分級法等もあるが、このような分級を行うと、製品歩留まりがさらに悪くなり、かなりコスト高となる。前記した導電性粒子のうちのカルボニル鉄粉は、他の導電性粒子に比べて粒度分布がシャープなものを入手することができる。従って、分級工程を省略または簡略化でき、コスト低減に寄与するため、好適である。
樹脂皮膜厚さtは10μm以下とする。10μmを超えると導電性が低下する上に、コスト的な観点からも好ましくない。tは、2〜9μmがより好ましく、3〜8μmがさらに好ましい。tは、皮膜質量から比重換算する方法によって測定しても良いし、あるいは、樹脂皮膜の断面を顕微鏡観察(SEM写真観察)して測定してもよい。
次に樹脂皮膜の主たる成分であるマトリックス樹脂について説明する。本発明の樹脂塗装金属板は、上記導電性粒子がマトリックス樹脂中に分散されてなる樹脂皮膜が金属板の表面に形成されたものである。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、およびこれら樹脂の混合物または変性した樹脂等が挙げられる。
本発明の樹脂塗装金属板は、主に電子機器の筐体に使用されるため、曲げ加工性、皮膜密着性、耐食性等の特性も良好である必要があることを考慮すると、有機溶剤可溶型(非晶性)のポリエステル樹脂が好ましい。有機溶剤可溶型のポリエステル樹脂としては、東洋紡績社製の「バイロン(登録商標)」シリーズが、豊富な種類のものを入手することができる点で好適である。ポリエステル樹脂は、メラミン樹脂等で架橋してもよい。メラミン樹脂としては、住友化学社製の「スミマール(登録商標)」シリーズや、三井サイテック社製の「サイメル(登録商標)」シリーズがある。架橋剤は、乾燥後の樹脂皮膜中に架橋剤(反応後)が質量で0.5〜30%(より好ましくは5〜25%)となるように、配合することが好ましい。
本発明の樹脂塗装金属板の原板としては、アルミニウム板、銅板、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等が用い得る。なかでも、亜鉛と鉄族元素(Fe,Co,Ni)との合金めっき鋼板が好ましい。これらの合金めっき鋼板は、金属板として硬度の高いものであるので、樹脂塗装金属板に加えられた圧力を金属板の変形で緩和するのではなく、樹脂皮膜が緩和しようとして変形するため、導電性粒子の接触確率が一層向上する。また、合金めっき鋼板の中でも、亜鉛と鉄とを合金化しためっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)がさらに好適である。鉄は電磁波吸収性に優れ、めっき中の鉄が電磁波の吸収に寄与するため、GA鋼板を原板として用いることで、より高い電磁波シールド性を発揮することができる。
成型性を確保するという観点からすれば、Fe、Ni、Co含有量は、いずれも5〜20質量%程度に制御することが好ましい。溶融めっき法の詳細なめっき条件は特に限定されず、合金化に通常用いられている方法を採用することができる。めっきの付着量は、電磁波吸収性を考慮すると少ない方が良く、例えば、50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下であることがより好ましく、35g/m2以下であることがさらに好ましく、30g/m2以下であることが最も好ましい。めっき付着量の下限は、電磁波吸収性の観点からは特に限定されないが、耐食性等を考慮すると、5g/m2であることが好ましく、10g/m2であることがより好ましい。
本発明の樹脂塗装金属板を製造するには、樹脂皮膜の原料組成物を調製し、これを金属板に塗布・乾燥する方法を採用するのが好ましい。原料組成物は、マトリックス樹脂、必要により添加される架橋剤等を、有機溶剤等で希釈して塗工に適した粘度にしたものを用いる。有機溶剤としては特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。塗工適性を考慮すると、原料組成物は、その粘度がフォードカップNo.4で30〜100秒程度になるように調整するか、または固形分濃度を5〜45%程度に調整することが推奨される。
上記原料組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、体質顔料、防錆剤、沈降防止剤、ワックス等、樹脂塗装金属板分野で用いられる各種公知の添加剤を添加してもよい。また、カーボンブラック等の放熱性付与のための添加剤を添加してもよい。
上記原料組成物を金属板に塗布する方法は特に限定されず、バーコーター法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等が採用可能である。塗布後には乾燥を行うが、架橋剤添加系においては、架橋剤が反応し得る温度で加熱乾燥を行うことが好ましい。具体的には、100〜250℃で、1〜5分程度加熱乾燥を行うとよい。
なお、金属板には、耐食性向上、樹脂皮膜との密着性向上等を目的として、予めクロメート処理やリン酸塩処理等の公知の表面処理(下地処理)を施しておいてもよい。あるいは、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの下地処理が施された金属板も本発明の範囲内に包含される。
また、ノンクロメート処理する方法は特に限定されず、例えば、リン酸塩系、シリカ系、チタン系、ジルコニウム系等の公知の下地処理を、単独で、若しくは併用して行うことができる。下地処理を行う場合は、下地処理によって導電性が低下する点を考慮して、付着量を300mg/m2以下に抑制することが好ましい。この下地処理膜にも、必要に応じて、防錆剤や、樹脂塗装金属板分野で用いられる各種公知の添加剤を添加してもよい。
本発明の樹脂塗装金属板は、上記したように導電性粒子を含有する樹脂皮膜が金属板上に下地処理を介してまたは介さずに積層されたものであり、例えば電子機器の筺体として用いる場合には、この樹脂皮膜が筺体内側になるように用いる。必要に応じて、耐疵付き性や耐指紋性等を高めるため、上記樹脂皮膜の表面に、さらに別の樹脂皮膜(上塗り層)を施してもよい。ただし、上塗り層は、導電性粒子の露出を妨げて導電性を低下させることのない薄膜であることが重要であり、具体的には0.2〜1.5μm、より好ましくは0.4〜1.2μm程度とする。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更実施は本発明に含まれる。なお以下特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
〔金属板〕
用いた金属板とその略称を以下に示す。なお、めっきは金属板の両面に行った。また、めっき鋼板には、日本パーカライジング社製の「CTE−213」を用いた下地処理を付着量100mg/m2となるように行った。
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板…板厚;0.8mm、めっき付着量;片面30g/m2ずつ、めっき中のFe量;10.3%
EG:電気亜鉛めっき鋼板…板厚;0.8mm、めっき付着量;片面20g/m2ずつ
〔マトリックス樹脂〕
マトリックス樹脂としては、東洋紡績社製の有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂「バイロン(登録商標)650」を用いた。カタログ値のTgは10℃、分子量(Mn)は23×104である。
〔架橋剤〕
メラミン樹脂(「スミマール(登録商標)M−40ST」:住友化学社製:固形分80%)を用いた。
〔導電性粒子〕
・カルボニル鉄粉(BASF社製:Carbonyl Iron Powder EL:d50=5.6μm:表ではFe(CO)5と略記)
・Fe−Ni合金磁性粉(三菱製鋼製パーマロイ:78Ni−1Mo−FP;d50=7.6μm;表ではFe−Niと省略)
・ニッケル粉(日興リカ社製「CNS−10」;d50=6.3μm;表ではNiと省略)
・りん化鉄(福田金属箔工業社製「P−Fe−350」をd50が3.1μmとなるように粉砕機で粉砕し、分級したもの)
上記導電性粒子は、適宜粉砕した後、篩で分級し、粒度分布(d16,d84)の異なる粒子を作製して用いた。なお、これらの導電性粒子のd16,d50,d84は、Leeds&Northrup社製のマイクロトラックFRA9220(測定範囲0.12〜704μm)を用いて、純水中に粒子を分散させて、レーザー回折法(散乱式)により測定した体積平均粒子径(μm)である。
〔樹脂皮膜用原料組成物の調製〕
上記ポリエステル樹脂と上記架橋剤(固形分80%)を質量比(ドライ)100:20で混合してマトリックス樹脂とし、表1〜表3に示した粒度分布を有する導電性粒子を表1〜表3に示した量となるように添加した。この原料組成物の粘度が30〜100秒(フォードカップNo.4)程度となるように、キシレン/シクロヘキサノン混合溶剤(キシレン:シクロヘキサノン=1:1)で希釈して、ハンドホモジナイザで10000rpmで10分撹拌し、原料組成物を調製した。
〔樹脂塗装金属板の作製〕
樹脂皮膜用原料組成物を、表1〜表3に示した皮膜厚t(μm)となるように表1〜表3に示した各種金属板にバーコートで塗工し、熱風乾燥炉内にて到達板温230℃で約60秒間焼き付けして、樹脂塗装金属板を作製した。皮膜厚t(μm)は、皮膜の質量を測定し、比重換算で算出した値である。
〔導電性の測定および評価基準〕
テスター[(株)カスタム製アナログテスタCX−250]を用い、以下のようにして、樹脂塗装金属板の表面の電気抵抗を測定した。図1に示すように、2本の端子を樹脂皮膜との角度が45°になるように持ち、30mm/秒の平均速度で樹脂皮膜表面を軽くなぞる。測定長さは100mmとした。測定時の圧力は、端子の自重(7g)のみとなるように、軽接触下で行った。測定開始から1秒間以上経過して測定値(抵抗値)が安定したところで、抵抗値を読み取った。この操作を測定場所を変えて合計20回行い、その平均値を抵抗値とした。この抵抗値が100Ωを超えていたら導電性が悪いとして×とし、50Ω超〜100Ωを○、50Ω以下を◎とした。
〔曲げ加工性〕
JIS K5600−5−1の耐屈曲性試験に記載のタイプ2の試験装置を用いて、0T曲げ(180゜曲げ)を行い、曲げた後の樹脂皮膜(曲げ後は樹脂皮膜が曲げ部外側にある)にセロハンテープ(ニチバン社製;「セロテープ(登録商標)CT405AP−24」)を貼り付けてから、手で剥がし、皮膜の剥離状態を目視で観察し、剥離があれば×、なければ○とした。
実験1
導電性粒子として前記式(2)の左辺が0.63であるカルボニル鉄粉Fe(CO)5を用い、添加量と特性の関係、およびd50/tと特性の関係を検討した。測定結果を表1に示した。式(2)を満足するFe(CO)5の場合、20〜70質量%の添加量であれば、導電性と加工性の両立が図れることがわかった。また、導電性粒子のd50と皮膜厚tとの関係においては、d50/tが小さすぎるNo.13,14では導電性が低下した。d50/tが2を超えるNo.15では、加工性が劣っていた。
GAにかえてEGを用いたときも(No.16)実用上問題のない導電性と加工性を示すことがわかった。
実験2
導電性粒子として前記式(2)の左辺が0.87であるパーマロイ(Fe−Ni)を用いて、添加量と特性の関係を検討した。測定結果を表2に示した。式(2)を満足するFe−Niの場合、20〜70質量%の添加量であれば、導電性と加工性の両立が図れることがわかった。
実験3
導電性粒子として前記式(2)の左辺が0.59であるパーマロイ(Fe−Ni)を用いて、添加量と特性の関係を検討した。測定結果を表3に示した。実験2と同様の結果が得られた。
実験4
前記式(2)の左辺が1を超えるパーマロイ(Fe−Ni)を用いた結果を表4に示した。式(2)を満足しないため、導電性に劣るものとなった。一方、式(2)を満足するNiでは導電性と加工性の両立が図れることがわかったが、そもそも導電性が低く、導電性粒子とは言い難いりん化鉄では、導電性に劣る結果となった。
本発明の樹脂塗装金属板は、電子機器の筺体の構成部材として有用である。上記電子機器としては、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションシステム、カーオーディオビジュアル機器等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のオーディオビジュアル機器等が挙げられる。さらに、コピー機、プリンター等の複写機の構成部材として、また、エアコン室外機等の電源ボックスカバーや制御ボックスカバーとして、さらには、自動販売機や冷蔵庫等の構成部材として用いることができる。
樹脂塗装金属板の導電性の測定方法の説明図である。

Claims (3)

  1. 金属板の表面に、導電性粒子を含有する導電性樹脂皮膜が被覆された導電性樹脂塗装金属板であって、
    導電性樹脂塗装金属板の表面の電気抵抗値が100Ω以下であり、
    導電性粒子が導電性樹脂皮膜中20〜70質量%の範囲で含まれており、
    導電性粒子の累積50%体積平均粒子径d50(μm)と導電性樹脂皮膜の厚さt(μm)とが下記式(1)を満足し、
    累積84%体積平均粒子径d84(μm)、累積16%体積平均粒子径d16(μm)および前記d50が下記式(2)を満足することを特徴とする導電性樹脂塗装金属板。
    0.8≦d50/t≦2.0 (1)
    (d84−d16)/d50≦0.87 (2)
  2. 上記導電性粒子が、磁性金属粉末である請求項1に記載の導電性樹脂塗装金属板。
  3. 上記磁性金属粉末が、カルボニル鉄粉またはNi含有量が35質量%以上であるNi−Fe系合金である請求項2に記載の導電性樹脂塗装金属板。
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