JP5867862B2 - 電磁シールド性と導電性に優れた樹脂塗装金属板 - Google Patents

電磁シールド性と導電性に優れた樹脂塗装金属板 Download PDF

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Description

本発明は、電磁シールド性と導電性に優れた樹脂塗装金属板に関するものである。本発明の樹脂塗装金属板は、例えば、接触圧力が5〜15g/mm2程度の軽接触圧下(軽圧力下)でも良好な導電性を発揮し得る。そのため、例えば、電子・電気・光学機器等(以下、電子機器で代表させる場合がある。)における筐体等の構成素材に好適に用いられる。
電子機器分野の最近の動向として、情報処理・伝達能力の高速化、記録容量の増大等更なる高性能化が進んでおり、電子機器から漏洩する電磁波は増加する傾向にある。特に電気・電子機器の筐体に金属板を用いた場合には、機器内部で発生した電磁波は筐体内面で反射を繰り返す間に筐体寸法で決まる特定周波数域にエネルギーが集積し、強い電磁波となって外部に漏洩することがある。漏洩電磁波が増加すると、その電子機器の周辺に配置された精密機械等の誤作動を招くことになる。また漏洩電磁波の強度が強すぎると電気用品安全法などによる規制値内に収まらない場合が生じ、電気・電子機器の出荷ができなくなるという問題が生じる。そのため、電子機器などの筐体には電磁波シールド性に優れていることが要求される。電磁波シールド性とは、電子機器の内部・外部を問わず、電磁波の漏洩を防止する特性を意味する。
電子機器筐体の電磁波シールド性を高めるため、例えば、電気亜鉛めっき鋼板などのような導電性に優れた鋼板の使用が推奨されている。これにより、例えば、金属板同士の隙間から漏れる電磁波を減衰することはできるが、例えば、空気穴や配線穴からの電磁波の漏洩を有効に防止することはできないといった問題がある。
そこで、金属粉を含有する樹脂皮膜をめっき鋼板上に形成して筐体内部での電磁波吸収性を高めて電磁波シールド性を向上させる技術が提案されている。例えば特許文献1には、Crを5〜35質量%含むFe基合金からなる軟磁性粉末を樹脂に分散させた樹脂シートが、少なくとも鋼板の裏面(筐体を構成する内部側面)に所定の厚さで被覆された樹脂シート付き金属板が開示されている。これにより、筐体内部に発生した電磁波が上記の金属板に多重反射するなどして吸収されるため、最終的に、空気穴などから筐体外部へ漏洩する電磁波の減衰効果が発揮されると考えられる。
一方、電気・電子機器に用いる金属板には導電性が必要とされている。これは、金属板を通したアースの確保や、金属板同士、あるいは筐体と金属板との接合部における電磁波の漏洩を防止するためである。しかし、金属板表面を樹脂皮膜で被覆した場合、樹脂皮膜の導電性が低く、アースの確保などの上記金属板の要求特性を満足させることができない。同様の問題は例えば上記特許文献1のように軟磁性粉末を含有させた樹脂シートを用いた場合にも生じていた。
このような問題を解決する技術として、本発明者らは電磁波吸収添加剤であるパーマロイやセンダストなどの磁性金属粉末と、添加剤であるNiなどの導電性付与剤を樹脂皮膜に含有させた樹脂塗装鋼板を提案している(特許文献2)。
ところが近年、電子機器の高性能化に伴い、電磁波シールド性向上に対する要求は益々高まっている。更にコスト削減を目的としてガスケットや銅ばね等の電磁波シールド対策部品を省略・簡略化することができ、軽接触圧下でも優れた導電性が発揮され、電磁波シールド性が高められた樹脂塗装金属板の提供が強く望まれている。
例えば特許文献3には所定の粒状Niを含有させた樹脂皮膜を有する表面処理金属板が提案されている。この技術は、耐酸化性、および導電性に優れた粒状Niを用いることで、皮膜形成後も導電性の低下を抑制し、優れた電磁波シールド性を有する樹脂塗装鋼板を提供するものである。
また本発明者らは、軽接触圧下(10〜12g/mm2)でも優れた導電性を発揮する樹脂塗装金属板として、樹脂皮膜の形状を制御すると共に、樹脂皮膜のガラス転移点(Tg)を60℃以下に制御した樹脂塗装鋼板を提案している(特許文献4)。
特開2000−200990号公報 特開2006−161129号公報 特開2009−299186号公報 特開2007−331218号公報
本発明者らが更に研究を進めた結果、導電性向上効果のあるNiを添加した場合(上記特許文献2、特許文献3)、鋼板のネジ接合部分のように樹脂塗装金属板と筐体との接触圧力の高い部分(たとえば250〜500g/mm2程度)においては優れた導電性を示すものの、ネジ非接合部分(ネジ接合部分とネジ接合部分の間)のように樹脂塗装金属板と筐体との接触圧力の低い部分(軽接触圧力下:例えば5〜15g/mm2程度)では、十分な導電性が得られないことがわかった。また特許文献4では樹脂皮膜自体を改善することによって軽接触圧下での導電性向上を図っているが、導電性の更なる向上が求められていた。
特に近年、コストダウンを図るために金属板と筐体とを接合するネジ等の部品数の削減が求められており、従来よりも更に軽接触圧力下での導電性を高めることが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽接触圧下でも良好な導電性と電磁波シールド性を発揮し得る樹脂塗装金属板を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明は、金属板の表面に、樹脂皮膜が被覆された樹脂塗装金属板であって、前記樹脂皮膜は、平均アスペクト比が3以上の扁平状の金属粉、およびチタン系セラミックスを含有していると共に、前記樹脂皮膜のTgが10℃以下であることに要旨を有する。
本発明においては、前記扁平状の金属粉は、磁性金属粉であることが好ましい。また前記チタン系セラミックスは、チタンカーバイド、チタンナイトライド、およびチタンカーボナイトライドよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の樹脂塗装金属板は、上記のように構成されているため、例えば、軽接触圧下での導電性が高く、また良好な電磁波シールド性を有する樹脂塗装金属板を提供することができた。
よって、本発明の樹脂塗装金属板は、電子機器の筺体の構成部材等に有用である。特に、樹脂塗装金属板の接合部における接触圧力が5〜15g/mm2と小さい場合に好適である。
樹脂塗装金属板の導電性の測定方法を説明するための図である。 塗装鋼板における電磁波吸収性能の評価方法を説明する図である。 入力された電磁波が筐体の共振周波数で反射量が少なくなる状態を説明する図である。 電磁波吸収性を測定したときの状態を模式的に示した説明図である。 電磁波吸収性を測定するための筐体を構成するSUS製フレーム(枠体)を示す説明図である。 フレームの左右側面部分に配置されるSUS板の形状を示す説明図である。 フレームの上面部分および底面部分に配置されるSUS板の形状を示す説明図である。
本発明者らは、前述した特許文献4を提案した後も、電磁波シールド性に優れ、しかも軽接触圧下での導電性も良好な樹脂塗装金属板を提供するため、磁性金属粉などの金属粉を含有させた樹脂塗装金属板を中心に、引き続き検討を行なってきた。磁性金属粉が電磁波シールド性に優れていることは知られていたが、更に本発明者らは、球状の磁性金属粉よりも扁平状の磁性金属粉は、電磁波シールド性に優れていることを明らかにしている(特許文献2の表2に記載のNo.21、34)。しかしながら扁平状の磁性金属粉を含有させただけでは軽接触圧下での抵抗値が高く、導電性に劣ることがわかった(後記実施例No.2−1〜2−3、No.10−1〜10−3参照)。その理由は、扁平状の磁性金属粉は樹脂皮膜の面方向と平行な方向に配向しやすいため、厚さ方向の導通が低く、特に軽接触圧下では樹脂皮膜厚さ方向の導電性向上にほとんど影響しないと考えられる。
本発明者らは樹脂皮膜中に扁平状の磁性金属粉を特許文献2や3にも記載され、代表的な導電性付与剤であるNiとを含有させた樹脂塗装金属板の軽接触圧下での抵抗値について調べた。その結果、扁平状金属粉にNiを更に含有させたとしても、軽接触圧下では必要とされるレベルの導電性が得られないことがわかった(後記実施例No.11−1〜11−3参照)。
そこで本発明者らは更に検討を重ねた結果、Niの代わりにチタン系セラミックスを樹脂皮膜に含有させると、軽接触圧下でも導電性が高められ、しかも高い電磁波シールド性を有する樹脂塗装金属板を提供できることを見出した。更に樹脂皮膜を構成する樹脂についても検討した結果、軽接触圧下での導電性を一層高める観点からは、ガラス転移点(Tg)が10℃以下と非常に低い樹脂の使用が有効であることがわかった。ガラス転移点については、前述した特許文献4にもTgが60℃以下の樹脂皮膜により導電性が高められることが開示されているが、本発明では上記特許文献4で実際に実験を行った樹脂皮膜のTg(10〜60℃)よりもTgが更に低い樹脂皮膜の使用が導電性の向上に有用であることを突き止めた点に技術的意義を有している。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
以下、本発明の樹脂塗装金属板について説明する。
本明細書において、「電磁波シールド性」とは、電子機器の内部・外部を問わず、電磁波の漏洩を防止する特性を意味する。
本明細書において、「電磁波吸収性」とは、電磁波シールド性という特性を高めるために、金属板(原板)などに要求される特性を意味する。電磁波吸収性に優れた金属板は、例えば、空気穴や配線穴からの漏洩電磁波を減少できるため、電磁波シールド性の向上効果を有する。すなわち、筐体内に電磁波放射源が内蔵されている場合に、この電磁波放射源から発信された電磁波は、筐体内を複数回反射した後に空気穴等から外部に漏洩するが、このとき、反射時に電磁波が吸収(減衰)されていれば、多重反射によって高い電磁波シールド効果が発揮されることになる。この電磁波吸収(減衰)効果を素材鋼板単独のものと比較した場合に、電界強度の減少値が大きいほど、電磁波吸収性に優れている。具体的に「電磁波吸収性に優れている」とは、後記する実施例に詳述するように電磁波減衰値を評価したときに、0.3dB以上(好ましくは0.5dB以上、更に好ましくは1.0dB以上)であることを意味する。
また本明細書において、「導電性」とは、金属板表面に形成した樹脂皮膜の導電性を意味する。導電性に優れた金属板は、金属板接合部からの電磁波の漏洩を防止できるため、電磁波シールド性の向上効果を有する。具体的に「導電性に優れている」とは、後記する実施例に詳述するように7g/mm2程度の軽接触圧下で導電性を評価したときに、抵抗値が200Ω以下であることを意味する。
上述したように本発明の樹脂塗装金属板は、樹脂皮膜中に電磁波シールド向上添加剤として平均アスペクト比が3以上の扁平状の金属粉と、主に軽接触圧下での導電性向上添加剤としてチタン系セラミックスとを含有すると共に、樹脂皮膜のTgを10℃以下とした点に特徴を有する。
(扁平状金属粉)
扁平状金属粉は、樹脂皮膜に含有させることにより、筐体内部で発生した電磁波が多重反射して、最終的に空気穴などから筐体外部に漏洩する電磁波を減衰させ、その結果、電磁波シールド性を向上させる効果を有する。
電磁波シールド性向上効果を示す扁平状金属粉には、磁性を有する金属粉のほか、磁性を有しない金属粉も包含される。磁性金属粉としては、例えば、パーマロイ(Ni−Fe系合金でNi含有量が35%以上のもの)やセンダスト(Si−Al−Fe系合金)などの合金粉が挙げられる。一方、磁性を有しない金属粉としては、例えば、AlやCuなどの金属単体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明では扁平状金属粉の平均アスペクト比を3以上とする。平均アスペクト比が3未満だと十分な電磁波シールド性が得られない。好ましい平均アスペクト比は3.2以上、より好ましくは3.5以上である。アスペクト比は大きいほど、電磁波シールド性を向上できるため、特に上限は限定されない。しかしながら平均アスペクト比を大きくし過ぎると扁平状金属粉の生産コストが上昇すると共に、塗装性が悪化することから、上限は好ましくはおおむね100以下、より好ましくは50以下である。
扁平状金属粉の平均アスペクト比は、扁平状の長径と厚みとの比(長径/厚み)の平均である。長径は、扁平形状金属粉において、最も径が長くなる部分の長さである。厚みは、長径(水平方向)対して扁平状金属粉の垂直方向(幅方向)の長さである。
扁平状金属粉のアスペクト比は、50個の粉末粒子をSEM観察し、市販の画像解析装置を用いて粒子長の長径と厚みを測定することにより求められる平均値である。
本発明で用いられる扁平状金属粉の長径は上記平均アスペクト比を満足すればよく、特に限定されないが、上記電磁波シールド性向上効果を十分に発揮させるには、扁平状金属粉の好ましい平均長径は3μm以上、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは4.5μm以上である。一方、扁平状金属粉の長径が大き過ぎると、樹脂皮膜の表面平滑性が低下して外観性が低下したり、樹脂皮膜の厚さを薄くした場合に樹脂皮膜に破断などが生じる原因となり、樹脂皮膜が破断すると樹脂皮膜による効果が低下する場合がある。平均長径は好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
なお、上述した好ましい平均アスペクト比を満足する扁平状金属粉は市販品や市販品を加工したものを使用してもよい。例えば、パーマロイ(78%Ni)[日本アトマイズ加工社製SFR−PC78、平均粒径5.7μm]、パーマロイ(45%Ni)[日本アトマイズ加工社製SFR−PB45、平均粒径5.8μm]、パーマロイ(78%Ni)[三菱製鋼社製、平均粒径7μm]、センダスト[日本アトマイズ加工社製SFR−FeSiAl(84.5−10−5.5)、平均粒径6.9μm]など公知の材料を加工して上記平均アスペクト比を有する扁平状金属粉を製造すればよい。加工方法としては、各種公知の方法を用いることができ、特に限定されず、代表的にはアトライター加工が挙げられる。
樹脂皮膜中の扁平状金属粉の含有量は、十分な電磁波シールド性を発揮する観点からは多くすることが望ましい。一方、扁平状金属粉の含有量が多くなりすぎると加工性が低下するほか、樹脂皮膜と金属板との密着性や金属板の耐食性が低下するようになり、電子機器部材用金属板に一般に要求される他の特性に悪影響を及ぼす恐れがある。扁平状金属粉の好ましい含有量は、おおむね、20質量%以上、60質量%以下であり、より好ましい含有量は、おおむね、30質量%以上、50質量%以下である。
(チタン系セラミックス)
チタン系セラミックスは、軽接触圧下での樹脂皮膜厚み方向の導電性を向上させる効果を有する。このような効果は汎用のNiでは見られず、本発明者らによって見出されたものである。またチタン系セラミックスは、誘電性にも優れているため、電磁波シールド性を向上させる効果も有する。
チタン系セラミックスとしては、導電性を有するものであればよく、例えばチタンカーバイド(TiC)、チタンナイトライド(TiN)、チタンカーボナイトライド(TiC−TiN)などのチタン系セラミックスが例示される。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましいチタン系セラミックスはチタンカーボナイトライドである。なお、本発明の上記チタン系セラミックスからは導電性を有さないチタン系セラミックス、例えばチタン酸バリウムは除く趣旨である。
チタン系セラミックスの形状については特に限定されず、例えばほぼ球状、あるいは楕円状などでもよい。またチタン系セラミックスの平均粒径については特に限定されず、おおむね0.1〜10μm程度であることが好ましい。チタン系セラミックスの平均粒径は大きくなるほど導電性向上効果も高くなるため、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上である。一方、導電性向上効果を高める観点からは平均粒径の上限は特に限定されないが、平均粒径が大きくなりすぎると、樹脂皮膜の膜厚によっては、チタン系セラミックスによって樹脂皮膜の表面平滑性が低下して外観が悪くなったり、扁平状金属粉の分散を阻害することがあるため、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。チタン系セラミックスの平均粒径は上記扁平状金属粉と同様にしてSEM観察で測定することができる。
チタン系セラミックスは市販品を用いることができ、例えば新日本金属社製のチタンカーボナイトライド粉、チタンカーバイド粉、チタンナイトライド粉が例示される。
樹脂皮膜中のチタン系セラミックスの含有量は特に限定されないが、導電性を高める観点からは10質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。一方、チタン系セラミックスの含有量が多くなりすぎると、皮膜の靭性が低下することがあるため、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
なお、扁平金属粉とチタン系セラミックスの混合比率は特に限定されず、夫々が上記所定の好ましい含有量の範囲内に制御されていればよいが、例えば用途に応じ電磁波シールド性と導電性のバランスを考慮して扁平金属粉とチタン系セラミックスの混合比率を適宜調整してもよい。扁平金属粉の混合比率を高めると、電磁波シールド性を高めることができる。一方、チタン系セラミックスの混合比率を高めると導電性を高めることができる。扁平金属粉とチタン系セラミックスの混合比率は、例えば扁平金属粉:チタン系セラミックス=0.5:1〜4:1程度が好ましく、より好ましくは0.75:1〜3:1程度である。
また樹脂皮膜中の扁平金属粉とチタン系セラミックスの合計含有量は特に限定されず、夫々が上記所定の好ましい範囲内で含有していればよい。電磁波シールド性を高める観点からは、扁平金属粉とチタン系セラミックスの合計含有量は40質量%以上、より好ましくは50質量%以上とすることが望ましい。一方、皮膜の靭性を確保の観点から、合計含有量はおおむね80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以下である。
(樹脂皮膜)
本発明の金属板に形成される樹脂皮膜のTgは10℃以下、好ましくは5℃以下である。Tgが10℃以下と非常に低い樹脂皮膜の使用により、樹脂皮膜の変形能が一層向上し、接触圧力が低くても樹脂皮膜が変形し、樹脂皮膜中の上記扁平状金属粉やチタン系セラミックスの接触が促進されるため、導電性が一層向上する。Tgは低いほど導電性向上効果も高くなるが、Tgが低すぎると樹脂が軟らかすぎて耐疵付き性が低下するなど、樹脂皮膜に一般的に要求される特性に劣るため、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−10℃以上である。
ここで、樹脂皮膜のTgとは、樹脂皮膜全体のTgを意味する。樹脂皮膜には、樹脂皮膜を構成するベース樹脂や架橋剤のほか、防錆剤や艶消し剤、顔料などの公知の添加剤が含まれ得るが、Tgは、防錆剤などの無機化合物の影響を受けないため、樹脂皮膜のTgは、実質的に、使用するベース樹脂および架橋剤の種類および添加量によって決定される。
したがって、樹脂皮膜のTgを制御するためには、主成分であるベース樹脂および架橋剤の種類に応じ、配合量を適切に調節して行えばよい。樹脂皮膜のTgは、ベース樹脂のTgに大きく支配される。また、樹脂皮膜のTgは、ベース樹脂の含有量が架橋剤に比べて多い程、低下する傾向にあり、逆に、ベース樹脂の含有量が架橋剤に比べて少ない程、上昇する傾向にある。樹脂皮膜のTg制御に当たっては、上記の点を考慮し、まず、目標とするTgと近接するTgを有するベース樹脂を選択し、当該ベース樹脂を架橋剤と配合し、樹脂皮膜のTgを所定範囲に制御すればよい。なお、樹脂と架橋剤の比率は、加工性等と耐久性とのバランスの観点から、乾燥後の樹脂皮膜中に架橋剤(反応後)が5〜30質量%となるように、配合することが好ましい。
本発明におけるTgの測定は、金属板から樹脂皮膜を削り取って、示差走査熱量計(DSC)で、窒素雰囲気下、温度範囲−100℃〜180℃、昇温速度20℃/minで行う。
樹脂皮膜を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、およびこれら樹脂の混合物または変性した樹脂などが挙げられる。なお、本発明の樹脂塗装金属板は、主に、電子機器の筐体に使用され、曲げ加工性、皮膜密着性、耐食性などの特性が更に要求されることを考慮すると、ポリエステル樹脂若しくは変性ポリエステル樹脂(例えば、ポリエステル樹脂にエポキシ樹脂を加えて変性させた樹脂)であることが好ましい。有機溶剤可溶型のポリエステル樹脂としては、後記する実施例でも使用している東洋紡績社製の「バイロン(登録商標)」シリーズが、豊富な種類のものを入手することができる点で好適である。
ベース樹脂には、架橋剤等を添加することができる。こうした架橋剤としては、例えばメラミン系化合物やイソシアネート系化合物が挙げられ、これら1種または2種を0.5〜20質量%の範囲で添加することが好ましい。例えばベース樹脂としてポリエステル系樹脂を用いる場合、メラミン樹脂等で架橋してもよい。メラミン樹脂としては、長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司製の「スミマール」シリーズや、三井サイテック社製の「サイメル(登録商標)」シリーズがある。また樹脂皮膜は、架橋剤のほか、公知の添加剤(例えば、防錆剤、艶消し剤、顔料など)を含有してもよい。
樹脂皮膜の厚さは、扁平状金属粉やチタン系セラミックスの含有量、樹脂の種類などによって電磁波シールド性や導電性も異なるため、所望の効果が得られる膜厚とすればよい。樹脂皮膜が薄すぎると所望とする電磁波シールド性が得られないほか、扁平状金属粉やチタン系セラミックスが樹脂皮膜上に現れるため、外観が悪化し、また扁平状金属粉やチタン系セラミックスが脱落するなどの問題が生じる恐れがある。一方、樹脂皮膜が厚すぎると導電性が低下する恐れがある。樹脂皮膜の厚さはおおむね、3.0〜25μm程度であることが好ましい。より好ましい厚さは、おおむね、5μm以上、20μm以下である。
樹脂皮膜の厚さは、皮膜重量から比重換算する方法によって測定しても良いし、あるいは、樹脂皮膜の断面を顕微鏡観察(SEM写真観察)して測定してもよい。
(金属板)
本発明の樹脂塗装金属板に用いられる金属板(原板)は、特に限定されず、冷延鋼板、熱延鋼板、電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、亜鉛と鉄族元素(Fe,Co,Ni)との合金めっき鋼板[特に、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)]、5%Al−Znめっき鋼板、55%Al−Znめっき鋼板、Al等の各種めっき鋼板、ステンレス鋼板等の鋼板類や、公知の金属板等を全て適用することができる。なかでも、亜鉛と鉄族元素(Fe,Co,Ni)との合金めっき鋼板が好ましい。また、これらの合金めっき鋼板の中でも、亜鉛と鉄とを合金化しためっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)がさらに好適である。鉄は電磁波吸収性に優れ、めっき中の鉄が電磁波の吸収に寄与するため、GA鋼板を原板として用いることで、より高い電磁波シールド性を発揮することができる。
成型性を確保するという観点からすれば、Fe、Ni、Co含有量は、いずれも5〜20質量%程度に制御することが好ましい。溶融めっき法の詳細なめっき条件は特に限定されず、合金化に通常用いられている方法を採用することができる。めっきの付着量は、電磁波吸収性を考慮すると少ない方が良く、例えば、片面当たり、50g/m2以下であることが好ましく、40g/m2以下であることがより好ましく、35g/m2以下であることがさらに好ましく、30g/m2以下であることが最も好ましい。めっき付着量の下限は、電磁波吸収性の観点からは特に限定されないが、耐食性等を考慮すると、片面当たり5g/m2以上であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましい。
金属板は、耐食性向上、樹脂皮膜との密着性向上などを目的として、クロメート処理やリン酸塩処理等の表面処理(下地処理)が施されていてもよい。あるいは、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよく、いずれの下地処理が施された金属板も本発明の範囲内に包含される。
また、ノンクロメート処理する方法は特に限定されず、通常、使用される公知の下地処理を行えば良い。具体的には、リン酸塩系、シリカ系、チタン系、ジルコニウム系等の下地処理を、単独で、若しくは併用して行うことが推奨される。
本発明の樹脂塗装金属板は、金属板(上記下地処理したものも含む)の表面に、上記のような各種添加剤を含む樹脂皮膜が被覆されたものであるが、必要に応じて、耐疵付き性や耐指紋性などの付与を目的として、上記樹脂皮膜の表面に、更に別の樹脂皮膜を施した積層の皮膜構造としても良い。
次に、本発明の樹脂塗装金属板を製造する方法を説明する。
本発明の樹脂塗装金属板は、扁平状金属粉、チタン系セラミックス、ベース樹脂および架橋剤のほか、必要に応じて種々の添加剤を含む塗料を、公知の塗装方法で金属板の表面に塗布し、焼き付けを行うことによって導電性樹脂皮膜を形成することによって得られる。
本発明の樹脂塗装金属板を製造するには、樹脂皮膜の原料組成物を調製し、これを金属板に塗布・乾燥する方法を採用するのが好ましい。原料組成物は、扁平状金属粉、チタン系セラミックス、ベース樹脂および架橋剤のほか、必要により添加される後記公知の各種添加剤等を、有機溶剤等で希釈して塗工に適した粘度にしたものを用いる。有機溶剤としては特に限定されないが、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。原料組成物の固形分濃度は10〜50質量%程度が好ましい。
上記原料組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、艶消し剤、体質顔料、防錆剤、沈降防止剤、ワックス等、樹脂塗装金属板分野で用いられる各種公知の添加剤を添加してもよい。また、カーボンブラック等の放熱性付与のための添加剤を添加してもよい。
上記原料組成物を金属板に塗布する方法は特に限定されず、バーコーター法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等が採用可能である。塗布後には乾燥を行うが、架橋剤添加系においては、架橋剤が反応し得る温度で加熱乾燥を行うことが好ましい。具体的には、100〜250℃で、1〜5分程度加熱乾燥を行うとよい。
なお、金属板には、耐食性向上、樹脂皮膜との密着性向上等を目的として、予めクロメート処理やリン酸塩処理等の公知の表面処理(下地処理)を施しておいてもよい。あるいは、環境汚染等を考慮して、ノンクロメート処理した金属板を使用してもよい。
本発明の樹脂塗装金属板は、上記したように扁平状金属粉とチタン系セラミックスを含有する樹脂皮膜(Tg=10℃以下)が金属板上に積層されたものであり、例えば電子機器の筺体として用いる場合には、この樹脂皮膜が筺体内側になるように用いる。必要に応じて、耐疵付き性や耐指紋性等を高めるため、上記樹脂皮膜の表面に、更に別の樹脂皮膜(上塗り層)を施してもよい。ただし、上塗り層は、導電性粒子の露出を妨げて導電性を低下させることのない薄膜であることが重要であり、具体的には0.2〜1.5μm、より好ましくは0.4〜1.2μm程度とする。
上記の樹脂皮膜は、少なくとも、金属板の裏面(電子機器の筐体からみて内側)に設けられていれば良い。樹脂被覆面と電磁波放射源とを対向させることで、電磁波放射源から発生した電磁波が吸収されるか、少なくとも低減される。
本発明の樹脂塗装金属板が適用される電子機器部材としては、例えば、閉じられた空間に半導体素子を内蔵する電子機器部材であって、該電子機器部材は、その外壁の全部または一部が上記電子機器部材用塗装体で構成されている電子機器部材も包含される。上記電子機器部材としては、CD、LD、DVD、CD−ROM、CD−RAM、PDP、LCD等の情報記録製品;パソコン、カーナビ、カーAV等の電気・電子・通信関連製品;プロジェクター、テレビ、ビデオ、ゲーム機等のAV機器;コピー機、プリンター等;エアコン室外機等の電源ボックスカバー、制御ボックスカバー、自動販売機、冷蔵庫等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(金属板)
金属板として両面にめっきを施しためっき鋼板(板厚はすべて0.8mm)を用いた。各めっき鋼板には下地処理(ノンクロメート皮膜処理、日本パーカライジング社製「CTE−203」、付着量100mg/m2)を施してから、樹脂皮膜を形成した。
・GA(合金化溶融亜鉛めっき鋼板):
片面のめっき付着量:30g/m2
めっき中のFe量:10.3質量%
・EG(電気亜鉛めっき鋼板)
片面のめっき付着量:20g/m2
(ベース樹脂)
・ベース樹脂A:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)500」
Tg:4℃(カタログ値)
分子量(Mn):23×103
・ベース樹脂B:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)GK780」
Tg:36℃(カタログ値)
分子量(Mn):11×103
・ベース樹脂C:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)550」(Tg:−15℃)と「バイロン(登録商標)500」(Tg:4℃)を質量比2:8の割合で混合したもの
Tg:0℃
分子量(Mn):24×103
・ベース樹脂D:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)500」(Tg:4℃)と「バイロン(登録商標)GK130」(Tg:15℃)を質量比45:55の割合で混合したもの
Tg:10℃
分子量(Mn):14×103
・ベース樹脂E:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)GK130」
Tg:15℃(カタログ値)
分子量(Mn):7×103
・ベース樹脂F:有機溶剤可溶型ポリエステル樹脂
東洋紡績社製「バイロン(登録商標)GK140」
Tg:20℃(カタログ値)
分子量(Mn):13×103
(架橋剤)
架橋剤:メラミン樹脂
長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司製「スミマールM−40ST」
固形分:80質量%
(添加物1:金属粉)
・扁平状金属粉A:三菱製鋼株式会社製パーマロイ(Ni:78%、平均粒径:7μm、平均アスペクト比:1.7)粒子をアトライター加工し、平均アスペクト比:3.8(長径の平均粒子長さ:9.6μm、厚さ:2.5μm)としたものを用いた。
・扁平状金属粉B:三菱製鋼株式会社製パーマロイ(Ni:78%、平均粒径:7μm、平均アスペクト比:1.7)粒子をアトライター加工し、平均アスペクト比:6.8(長径の平均粒子長さ:11.6μm、厚さ:1.7μm)としたものを用いた
・粒状金属粉:三菱製鋼株式会社製パーマロイ(Ni:78%、平均粒径:7μm、平均アスペクト比:1.7)
(添加物2:チタン系セラミックス、粒状金属粉、またはNi)
・チタン系セラミックスA:日本新金属社製チタンカーボナイトライド粉(TiC−TiN)
TiC:TiN比=1:1
平均粒径:1.3μm
・チタン系セラミックスB:日本新金属社製チタンカーバイド粉(TiC)
平均粒径:1.7μm
・チタン系セラミックスC:日本新金属社製チタンナイトライド粉(TiN)
平均粒径:1.4μm
・粒状金属粉:三菱製鋼株式会社製パーマロイ(球状)
Ni:78質量%
平均粒径:7μm
平均アスペクト比:1.7
・球状Ni:日本アトマイズ加工社製「SFR-Ni」(球状ニッケル粉)
平均粒径:5μm
(塗装樹脂)
・樹脂A:上記ベース樹脂Aと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
・樹脂B:上記ベース樹脂Bと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
・樹脂C:上記ベース樹脂Cと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
・樹脂D:上記ベース樹脂Dと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
・樹脂E:上記ベース樹脂Eと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
・樹脂F:上記ベース樹脂Fと上記架橋剤を質量比(ドライ)100:20で混合したもの
(塗料組成)
上記塗装樹脂に、上記添加物1(金属粉)と上記添加物2(チタン系セラミックスなど)を表に示す所定量を添加した。この添加物1と添加物2の合計固形分が50質量%となるように、キシレンとシクロヘキサノンとの混合溶剤(キシレン:シクロヘキサノン=1:1)で希釈した原料組成物を調製した。
(樹脂塗装金属板の作製)
ノンクロメート皮膜処理後の各めっき鋼板に、表に示した皮膜厚t(μm)となるように樹脂皮膜用原料組成物(上記塗料組成)を、バーコーターで塗工し、熱風乾燥炉内にて到達板温230℃で約60秒間焼き付けして、樹脂塗装金属板を作製した。皮膜厚は、皮膜の質量を測定し、比重換算で算出した。
(導電性の評価:抵抗値の測定)
テスター(カスタム社製アナログテスタCX−250)を用い、以下のようにして、樹脂塗装金属板の表面の電気抵抗を測定した。図1に示すように、2本の端子を樹脂皮膜との角度が45°になるように持ち、30mm/秒の平均速度で樹脂皮膜表面を軽くなぞる。測定長さは100mmとした。測定時の圧力は、端子の自重(7g)のみとなるように、軽接触圧下で行った。測定開始から1秒間以上経過して測定値(抵抗値)が安定したところで、抵抗値を読み取った。この操作を測定場所を変えて合計20回行い、その平均値を抵抗値とした。この抵抗値が200Ωを超えるもの(表中、200〜)は導電性に劣ると評価した。なお、表中、「100〜200」は「100超〜200以下」の意味であり、同様に「200〜300」は「200超〜300以下」、「300〜500」は「300超〜500以下」、「500〜1000」は「500超〜1000以下」、「1000〜2000」は「1000超〜2000以下」、「>2000」は「2000超」の意味である。
(電磁波吸収性の評価:電磁波減衰値の測定)
図2は、樹脂塗装金属板の電磁波吸収性を評価する方法を説明する図である。図2に示すように、直方体形状の筐体1内には、高周波ループアンテナ5が設置され、磁界結合されるように構成されている。高周波ループアンテナ5は、コネクタ(図示せず)を介して同軸ケーブル6の一端に接続され、同軸ケーブル6の他端はネットワークアナライザ7に接続されている。ネットワークアナライザ7では、周波数を掃引しながら電磁波を発生し、同軸ケーブル6、高周波ループアンテナ5を経由して筐体1内に入力(高周波入力波:矢印B)するようにされている。筐体1の共振周波数では、入力された電磁波が蓄積されるために、反射量が少なくなる特性が観察される(図3参照)。そして、矢印Cで表される高周波反射波は、観察値としてネットワークアナライザ7に入力(高周波反射波:矢印C)される。
このとき、筐体1における下記(1)式で求められるQ値を計測すれば、筐体1内で蓄積されるエネルギーの大きさが分かる。尚、下記(1)式から求められるQ値は、アドミタンス軌道が満足する条件から、求まる周波数差Δfと共振周波数frから計算されるものである(例えば、中島将光著、「森北電気工学シリーズ3 マイクロ波工学 −基礎と原理−」森北出版株式会社発行、第159〜163頁)。
Q値=fr/Δf‥‥(1)
上記(1)式から求められるQ値が小さくなるほど、筐体1内で蓄積されるエネルギーが減ることを意味する。従って、Q値が小さくなる程、筐体1から内部に反射される電磁界レベルも減ることになる。
このときの様子を模式的に図4に示すが、この図は、Ez=0、TE011という最も低い周波数の共振モードでの電磁界分布を図示したものであり、図中、Eは高周波磁界、Fは高周波電界を夫々示している。上記Ezはz方向の電界強度を意味し、TE011は、共振モードの電磁界分布の姿態を示している。このTEは、z方向に波が進むとして、その横方向に電界が存在することを意味している。添字「011」は、x、y、z方向に対して、y及びz方向には電界の強度分布が1つあり、x方向には電界の強度分布が変化しないことを示している(例えば、上記文献第141〜144頁参照)。
また、図4に示した電磁界分布は、以下の式で表せる。
z=H011・cos(ky・y)・sin(kz・z)
y=(−kz・ky/kc 2)・H011・sin(ky・y)・cos(kz・z)
x=(−jωμky/kc 2)・H011・sin(ky・y)・sin(kz・z)
ここで、ky=π/b、kz=π/c、kc=kyである。b、cは図4の直方体(筐体1)のy、z方向の長さ、jは虚数、ωは各周波数、μは空気の透磁率を夫々示す。
本発明者らは、サンプル鋼板の内面に占める割合を100%近くまで(即ち、筐体内面の全面まで)高めることのできる筐体を作製した。図5はこの筐体を構成するSUS製フレーム(枠体)を示す説明図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は左側面図を夫々示している。尚、このフレームは上下左右が対象となるように構成されており、従って底面図は平面図[図5(a)]と、背面図は正面図[図5(b)]と、右側面図は左側面図[図5(c)]と、夫々同一に現れるものである。
図5に示したフレームに、図6、図7に示すSUS板を貼りつけて(取り付けネジ)、筐体(240×180×90mm)とした。尚、図6(a)はフレームの正面・背面部分に配置されるSUS鋼板(2枚)、図6(b)はフレームの左右側面部分に配置されるSUS板(2枚)、図7(a)は上面部分に配置されるSUS板、図7(b)は底面部分に配置されるSUS板を、夫々示している。サンプル鋼板は、図6(a)、図6(b)、図7(a)の内側の線に合致する形状のものを貼り付けた。
上記のような構成によって、筐体を作製すればその内面が100%に近い割合までサンプル鋼板で占めることができる。また、取り付けネジは、そのピッチを20〜40mmとし、接触抵抗を低減しているので、多数個のネジ止めを要するものである。ネジ止めは、トルクを管理することによって、Q値測定の再現性を高めることができる。こうした筐体を用いてQ値を測定し(前記図2)、下記の式によって電磁波吸収性を算出した。
サンプル鋼板の電子波吸収性(dB)=10×log10([EG]/[A])
但し、[EG]:基板となる電気亜鉛めっき鋼板のQ値
[A] :サンプル鋼板のQ値
上記方法によって算出された値(dB)が高いほど電磁波吸収性に優れていると評価される。本実施例では、上記のようにして算出された値が、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)の場合では3.3dB以上のものを電磁波吸収性に優れる(合格)と評価し、電気亜鉛めっき鋼板(EG)の場合は0.3dB以上のものを電磁波吸収性に優れる(合格)と評価した。
これらの結果から次のように考察できる。まず、本発明では金属板(原板)としてEGとGAを使用しているが、金属板の種類による影響はなく、いずれも同様の傾向を示した。
本発明の規定を満足する扁平金属粉とチタン系セラミックスを含有し、且つTgが10℃以下の樹脂塗装金属板(No.1−1〜1−3、3−1〜3−3、4、5、7、9−1〜9−3、12−1〜12−4、13−1〜13−4、14〜16)は、導電性と電磁波吸収性に優れており、高い電磁波シールド性を示した。なお、No.1−1、3−1、4のなど電磁波減衰値が1dB以下となっている理由は以下のように考えられる。No.1−1と3−1では、膜厚が薄くなると共に、膜厚方向の抵抗値が下がったため、電磁波の膜厚方向の導通性が向上し、電磁波が膜厚方向に減衰した結果であると考えられる。またNo.4では膜厚はNo.5等と同じであるが、添加物2(チタン系セラミックス)の種類が異なり、No.4では導電性の高いチタン系セラミックスBを用いているため、膜厚方向の導通性が向上し、電磁波が膜厚方向に減衰した結果であると考えられる。電磁波シールド性が導電性と電磁波吸収性によって総合的に得られる結果であることを考慮すると、他の実施例と比べて遜色のない電磁波シールド性を有している。
一方、本発明の規定を満足しない樹脂塗装金属板では軽接触圧下での導電性および/または電磁波吸収性が不十分であった。
すなわち、添加物1について、扁平状金属粉に替えて粒状金属粉を用いたNo.6は、電磁波減衰値が低く、電磁波シールド性が劣っていた。
添加物2について、チタン系セラミックスを含有しないNo.2−1〜2−3(金属板としてEGを使用)、10−1〜10−3(金属板としてGAを使用)は、いずれも抵抗値が高く、軽接触圧下での導電性が劣っていた。
添加物2として、球状Niを用いたNo.11−1〜11−3(EGを使用)は、抵抗値が高く、軽接触圧下での導電性が劣っていた。
また、樹脂のTgが10℃を超えるNo.8(EGを使用)、17、18(GAを使用)は、抵抗値が高く、軽接触圧下での導電性が劣っていた。
また、No.12−5、13−5(EGを使用)は、抵抗値が高く、軽接触圧下での導電性が低くなっているが、これは膜厚を厚くし過ぎたため、抵抗値が増大したと考えられる。なお、同等の膜厚を有する本発明の規定を満足しない例と比べると抵抗値は優れている。
上記実験結果について詳細に検討すると、以下のように考察できる。
まず、金属粉(添加物1)の種類以外は同一条件であるNo.1−2、6、7を比べると、平均アスペクト比3以上の扁平金属粉を用いたNo.1−2と7は、平均アスペクト比3未満の粒状金属粉を用いたNo.6と比べて電磁波吸収性に優れていた。またNo.1−2よりも平均アスペクト比が大きいNo.7はより優れた電磁波吸収性を示した。いずれの場合も抵抗値は同程度であった。このことからも金属粉の平均アスペクト比が電磁波シールド性向上に大きく寄与していることがわかる。
また扁平状金属粉B(添加物1)の含有量以外は同一条件であるNo.12−1〜12−5とNo.13−1〜13−5を比べると、樹脂皮膜の膜厚が同じ場合、扁平金属粉Bの含有量を多くすると電磁波吸収性は高くなるものの、導電性には影響がないことが示されている。このことから、扁平状金属粉の含有量が電磁波シールド性向上に寄与していることがわかる。
次に、チタン系セラミックスなど添加物2の種類以外は同一条件であるNo.1−2、4、5を比べると、チタン系セラミックスを用いたNo.1−2、4、5はいずれも軽接触圧下での導電性に優れていた。このことから、チタン系セラミックスは軽接触圧下での導電性向上に寄与していることがわかる。
また、チタン系セラミックス(添加物2)の添加の有無以外は同一条件であるNo.2−1〜2−3とNo.3−1〜3−3とを比べると、樹脂皮膜の膜厚が同じ場合、電磁波吸収性はほぼ同等であったが、チタン系セラミックスを含有していないNo.2−1〜2−3は軽接触圧下での導電性に著しく劣っていた。このことから、チタン系セラミックスは扁平状金属粉添加による電磁波吸収性向上効果に影響することなく、軽接触圧下での導電性向上に寄与していることがわかる。
次に、樹脂皮膜のTg以外は同一条件であるNo.1−2と8を比べると、Tgが10℃以下であるNo.1−2は軽接触圧下での導電性に優れていたが、Tgが10℃を超えるNo.8(Tg=36℃)は軽接触圧下での導電性が低かった。同様にTgの異なるNo.14〜18を比べても、Tgが10℃以下であるNo.14〜16は軽接触圧下での導電性に優れていたが、Tgが10℃を超える例(No.17、18)では軽接触圧下での導電性が低かった。このことから、軽接触圧下では樹脂皮膜のTgが低い方が導電性向上に寄与していることがわかる。
また本発明の規定を満足し、樹脂皮膜の膜厚以外は同一条件であるNo.1−1〜1−3、No.3−1〜3−3、No.12−1〜12−5、13−1〜13−5(EGを使用)、9−1〜9−3(GAを使用)を比べると、膜厚が増大するにしたがって電磁波吸収性が高くなる傾向を示した。一方、軽接触圧下での導電性は膜厚が増大してもほぼ一定であるが、膜厚が厚くなりすぎると軽接触圧下での導電性が低下した(No.12−5、13−5)。このことから、樹脂皮膜の膜厚は所定の範囲内であれば軽接触圧下での導電性を低下させずに電磁波吸収性向上に寄与していることがわかる。
次に金属板の種類以外は同一条件であるNo.1−1〜1−3(EG)とNo.9−1〜9−3(GA)とを比べると、EGよりもGAの方が高い電磁波吸収性を有することがわかる。
1 筐体
5 高周波ループアンテナ
6 同軸ケーブル
7 ネットワークアナライザ

Claims (4)

  1. 電子機器の筺体の構成部材に用いられ、金属板の表面樹脂皮膜が被覆された、電磁シールド性と導電性に優れた樹脂塗装金属板であって、
    前記樹脂皮膜は、平均アスペクト比が3以上の扁平状の金属粉、およびチタン系セラミックスを含有していると共に、
    前記樹脂皮膜のTgが10℃以下であり、
    前記樹脂塗装金属板と前記筐体との接合部における接触圧力が5〜15g/mm 2 での導電性に優れることを特徴とす樹脂塗装金属板。
  2. 前記樹脂皮膜はNiを含有しないものである請求項1に記載の樹脂塗装金属板。
  3. 前記扁平状の金属粉は、磁性金属粉である請求項1または2に記載の樹脂塗装金属板。
  4. 前記チタン系セラミックスは、チタンカーバイド、チタンナイトライド、およびチタンカーボナイトライドよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂塗装金属板。
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