図1は本発明の第1の実施の形態の吸収性物品1を肌側表面から見た平面図、図2(A)は、図1に示す吸収性物品1をII−II線で切断した断面図、図2(B)は、吸収性物品1を吸収単体毎に分離して示した分離断面図である。
以下に説明する吸収性物品1は、パンティライナーとして下着のクロッチ部の内面に固定されて使用され、おりものや少量の経血などを吸収する目的で使用されるものである。しかし、本発明の吸収性物品は比較的量の多い経血を吸収する生理用品として使用されるものや、尿を吸収する目的で使用される尿吸収パッドとして構成することが可能である。
図1と図2(A)に示す吸収性物品1は、縦方向中心線Oyを境として左右対称形状である。また、横方向中心線Oxを境として前後に対称形状である。図2(A)は、吸収性物品1を横方向中心線Oxにおいて切断した断面図である。この吸収性物品1は、縦方向中心線Oyが通過する部分の寸法である縦寸法が、横方向中心線Oxが通過する部分の寸法である横寸法よりも大きい縦長形状であり、縦方向が身体の股間部において前後方向に向けられて装着される。
図1に示すように、吸収性物品1は、前方に向けて突曲線形状の前縁部2と、後方に向けて突曲線形状の後縁部3と、縦方向中心線に向けて横寸法が減少するように凹曲線形状に形成された右側縁部4および左側縁部5を有している。この吸収性物品1は装着時に肌に向く側が肌側表面6であり、下着などの着衣に向く側が着衣側表面7である。また吸収性物品1を構成する各シートは、肌側表面6に向く側が肌側であり、着衣側表面7に向く側が着衣側である。
図2(A)(B)に示すように、この吸収性物品1は、最下部吸収単体10と、この最下部吸収単体10の肌側に重ねられた上部吸収単体20とを有している。最下部吸収単体10は、表面シート11と中間シート12および物品裏面シート13が重ねられて構成されている。上部吸収単体20は表面シート21と中間シート22および裏面シート23が重ねられて構成されている。
最下部吸収単体10の平面形状は図1に示す吸収性物品1の全体の平面形状と同じであり、最下部吸収単体10を構成している表面シート11、中間シート12および物品裏面シート13の周縁部は、吸収性物品1の前記前縁部2と後縁部3および右側縁部4と左側縁部5の形状に一致している。上部吸収単体20の平面形状は図1に示す吸収性物品1の全体の平面形状と同じであり、上部吸収単体20を構成している表面シート21、中間シート22および裏面シート23の周縁部は、吸収性物品1の前記前縁部2と後縁部3および右側縁部4と左側縁部5の形状に一致している。
最下部吸収単体10では、表面シート11と中間シート12とが液の透過を妨げない量(例えば10g/m2)でスパイラルパターンなどで塗工されたゴム系のホットメルト型接着剤で接着されており、さらに表面シート11と中間シート12がラウンドシール14において一体に固定されている。ラウンドシール14では、表面シート11と中間シート12とが一緒に加熱されて加圧され、表面シート11と中間シート12の少なくとも一方に含まれている熱融着性繊維が溶融して、表面シート11と中間シート12とがしっかりと固定されている。
同様に、上部吸収単体20では、表面シート21と中間シート22とが液の透過を妨げない量で塗工されたホットメルト型接着剤で接着され、且つ中間シート22と裏面シート23がホットメルト型接着剤で接着されている。さらに表面シート21と中間シート22および裏面シート23がラウンドシール24において一体に固定されている。ラウンドシール24では、表面シート21と中間シート22および裏面シート23が一緒に加熱されて加圧され、表面シート21と中間シート22の少なくとも一方に含まれている熱融着性繊維および裏面シート23が溶融して、表面シート21と中間シート22および裏面シート23がしっかりと固定されている。
図1では、上部吸収単体20に形成されたラウンドシール24を実線で示している。このラウンドシール24は、上部吸収単体20の外周の全長に亙って形成されており、ラウンドシール24は、上部吸収単体20において、前縁部2と後縁部3および右側縁部4と左側縁部5から内側に距離を空けた位置に形成されている。同様に、最下部吸収単体10においても、ラウンドシール14が周囲全長にわたって形成され、このラウンドシール14は、上部吸収単体20のラウンドシール24と重なる位置で且つラウンドシール24と同じ幅寸法で形成されている。
さらに、最下部吸収単体10の表面シート11の肌側に上部吸収単体20が重ねられ、予め一体化された表面シート11および中間シート12と、予め一体化された上部吸収単体20とが、仮止めシール8によって分離可能に一時的に仮止め固定されている。仮止めシール8は、表面シート11の上に上部吸収単体20を重ね、物品裏面シート13を除く全ての層を加熱し加圧することで形成されている。図1では、前記仮止めシール8を破線で示している。ただし、図2(A)に示すように、吸収性物品1の肌側表面6には、仮止めシール8が形成されている領域が凹状に窪んでいる。
図1に示すように、仮止めシール8は、吸収性物品1の右側縁部4および左側縁部5に沿って形成されているが、前縁部2と後縁部3では、縦方向中心線Oyを中心とする左右の寸法W1の範囲で仮止めシール8が形成されておらず、W1の範囲が仮止めシール8の欠損部となっている。
図2(B)では、最下部吸収単体10に形成されたラウンドシール14の幅寸法、および上部吸収単体20に形成されたラウンドシール24の幅寸法をそれぞれWaで示し、仮止めシール8の幅寸法をWbで示している。図5は、ラウンドシール14,24と仮止めシール8を拡大して示す部分平面図であるが、この図5においても、ラウンドシール14,24の幅寸法をWaで示し、仮止めシール8の幅寸法をWbで示している。
ラウンドシール14,24の形成領域と仮止めシール8の形成領域は重なっており、仮止めシール8の幅寸法Wbは、ラウンドシール14,24の幅寸法Waよりも広くなっている。例えばラウンドシール14,24の幅寸法Waは2mm程度であり、仮止めシール8の幅寸法Wbは3mm程度である。
前記仮止めシール8における最下部吸収単体10と上部吸収単体20との接合強度は、最下部吸収単体10のラウンドシール14による表面シート11と中間シート12との接合強度よりも弱く、且つ仮止めシール8による接合強度は、上部吸収単体20のラウンドシール24による表面シート21と中間シート22および裏面シート23の各層間の接合強度よりも弱く設定されている。
図4は、前記仮止めシール8の加圧パターンの詳細を示している。なお、図5などではシールパターンを簡略化して示している。図4に示すように、仮止めシール8は、正方形の加圧部8aが、吸収性物品1の縦方向に対して45度の角度で傾いて形成され、この加圧部8aが45度の角度で列を成して互いに間隔を空けて並んでいる。仮止めシール8では、加圧部8aの部分で、表面シート11と中間シート12および上部吸収単体20とが加熱下において加圧されており、この加圧部8aが肌側表面において凹状に変形し、この加圧部8aの部分が、表面シート11と上部吸収単体20との接合部として機能している。
図5に示すように、最下部吸収単体10の表面シート11と中間シート12とを接合しているラウンドシール14、および上部吸収単体20において各層を固定している前記ラウンドシール24の加圧部14a,24aのパターンは、詳細には図示していないが、図4に示す加圧部8aのパターンと同じである。仮止めシール8の加圧部8aの寸法および配列間隔と、ラウンドシール14,24の加圧部14a,24aの寸法および配列間隔は、互いに同じでもよいし、互いに相違していてもよい。例えば加圧部8a、および加圧部14a,24aは1辺が0.2〜1mm程度であり、隣り合う加圧部の縁部間の間隔は0.2〜1mm程度である。
ラウンドシール14は、前記加圧部14aのパターンに対応する突起が形成されたロールと、周面が平滑なロールとの間に、表面シート11と裏面シート12とを挟み込んで加熱下で加圧することで形成され、ラウンドシール24は、前記加圧部24aのパターンに対応する突起が形成されたロールと、周面が平滑なロールとの間に、上部吸収単体20を挟み込んで加熱下で加圧することで形成される。同様に、仮止めシール8は、前記加圧部8aのパターンに対応する突起が形成されたロールと、周面が平滑なロールとの間に、表面シート11と裏面シート12および上部吸収単体20を挟み込み加熱下で加圧することで形成される。
ラウンドシール14を形成するときにロール間に挟まれる素材は表面シート11と中間シート12の2層のみであり、ラウンドシール24を形成するときにロール間に挟まれるのは上部吸収単体2を構成する3層の素材のみである。これに対し、仮止めシール8を形成するときにロール間に挟まれるのは、全部で5層である。さらに前述のように、ラウンドシール14,24の幅寸法Waは仮止めシール8の幅寸法Wbよりも短い。したがって、ラウンドシール14,24の加圧部14a,24aと、仮止めシール8の加圧部8aの大きさおよび間隔を同じとし、さらに加工時のロール間の挟持力および加熱温度を同じにすると、仮止めシール8の加圧部8aに与えられる圧縮圧力が、ラウンドシール14,24の加圧部14a,24aに与えられる圧縮圧力よりも弱くなる。
したがって、ラウンドシール14,24と仮止めシール8とを同じ条件で加工しても、ラウンドシール14による表面シート11と中間シート12との接合強度およびラウンドシール24による上部吸収単体20の層間の接合力を、仮止めシール8による表面シート11と裏面シート23との接合力よりも十分に大きく設定することが可能である。
また、最下部吸収単体10の肌側に位置する表面シート11と、上部吸収単体20の着衣側に位置する裏面シート23の、少なくとも一方が熱融着性素材を有し、また少なくとも一方に非融着性素材が含まれていることが好ましい。
表面シート11と裏面シート23は、前記仮止めシール8を形成する際に前記熱融着性素材が接着力を発揮して互いに接着接合されるが、この接着面に非融着性繊維が含まれていると、仮止めシール8によって表面シート11と裏面シート23とが過剰に強く融着接合されるのを抑制でき、上部吸収単体20を最下部吸収単体10から剥がしやすくなる。例えば、裏面シート23がポリエチレン樹脂フィルムなどの熱融着性樹脂で形成され、表面シート11が、コットンやパルプなどの天然繊維、あるいはレーヨンなどの再生セルロース繊維のような非融着性繊維のみで形成され、あるいは表面シート11が、前記非融着性繊維と熱融着性繊維とを混合することで形成される。この場合、前記非融着性繊維が、表面シート11に50質量%以上含まれ、残部が融着性繊維で構成されることが好ましい。
図2(A)に示すように、仮止めシール8は、右側縁部4と左側縁部5よりも内側に距離Wcだけ空けた位置に形成されている。すなわち、前記距離Wcの範囲には、ラウンドシール14,24および仮止めシール8のいずれも形成されていない。前記距離Wcは1mm以上が好ましく、さらに好ましくは2mm以上である。
図5に示すように、仮止めシール8がラウンドシール14,24よりも吸収性物品1の縁部(例えば右側縁部4)側へはみ出るように形成されていることが好ましい。この場合、吸収性物品1の縁部(例えば右側縁部4)から内側へ幅寸法Wcの範囲には、シール部が全く存在せず、さらにその内側の幅寸法Wdの範囲には、仮止めシール8のみが存在し、さらにその内側で、ラウンドシール14,24と仮止めシール8とが重複している。よって、縁部から幅寸法Wcの範囲が軟質で、さらにその内側に向かうにしたがって段階的に剛性が高くなっているので、縁部が身体の肌に触れたときに肌に違和感を与えにくくなる。
図1に示す仮止めシール8の欠損部の幅寸法W1は、5〜30mmであり、この欠損部において、最下部吸収単体10の表面シート11と、上部吸収単体20の裏面シート23との間に、指を挿入できるようになっている。
最下部吸収単体10を構成する表面シート11および中間シート12と、上部吸収単体20とが仮止めシール8で仮止めされた後に、最下部吸収単体10の中間シート12の着衣側表面に、物品裏面シート13がホットメルト型接着剤によって接着固定される。ホットメルト型接着剤による、中間シート12と物品裏面シート13との接合強度は、前記仮止めシール8による最下部吸収単体10と上部吸収単体20との接合強度よりも強く設定されている。
物品裏面シート13の着衣側表面には、位置決め固定手段として、感圧接着剤層が設けられ、さらに吸収性物品1の使用前には、前記感圧接着剤層を保護する離型シートが設けられている。感圧接着剤によって、物品裏面シート13と下着とを接着固定する際の固定強度は、前記仮止めシール8による最下部吸収単体10と上部吸収単体20との接合強度よりも強く設定されている。
また、物品裏面シート13と下着とを接着固定する際の固定強度は、最下部吸収単体10における表面シート11と中間シート12との接合強度、および中間シート12と物品裏面シート13との接合強度よりも弱く設定されている。
位置決め固定手段として物品裏面シート13の着衣側表面に設けられる感圧接着剤は、ホットメルト型であり、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体のいずれか一種が使用されあるいは二種以上が組み合わされて使用される。塗工パターンはストライプ状やドット状のように任意であるが、塗工量は10〜100g/m2の範囲である。下着に対する固着強度は1N/cm2以上であることが好ましい。
前記固着強度は、株式会社井元製作所製の「PICMA タックテスター IMC−1567」を測定装置として用い、物品裏面シート13と、前記測定装置との測定部とを接着し2秒間加圧後に測定した値である。
最下部吸収単体10の表面シート11と中間シート12は、少なくとも一方が親水性で液を吸収保持する機能を有している。同様に、上部吸収単体20の表面シート21と中間シート22は、少なくとも一方が親水性で液を吸収保持する機能を有している。
例えば、中間シート12と中間シート22は、液吸収機能を発揮するものであり、コットン、ウール、パルプなどの親水性の天然繊維で形成された不織布で、例えばスパンレース不織布である。あるいは、親水処理された合成樹脂繊維や、レーヨン繊維などの親水性の再生セルロース繊維を含むスパンレース不織布である。または、親水処理された合成樹脂繊維で形成されたスルーエア不織布を使用することができる。また、中間シート12と中間シート22として、パルプ繊維をエアーレイド法で積層し、バインダーでパルプ繊維どうしを接合した親水性のエアーレイド不織布、またはパルプ繊維の他に再生セルロース繊維や合成樹脂繊維を含んだエアーレイド不織布を使用することができる。さらに中間シート12と中間シート22に、高吸水性樹脂(SAP)を含ませることができる。
表面シート11,21は、中間シート12,22に液を透過させる機能を有するものが好ましく、親水性の不織布であるスパンレース不織布、またはスルーエア不織布を使用することができ、さらには多数の液透過孔を有する樹脂フィルムで形成することができる。
また、最下部吸収単体10を構成する表面シート11や、上部吸収単体20を構成する表面シート21を削除し、最下部吸収単体10を中間シート12と物品裏面シート13のみで形成し、上部吸収単体20を中間シート22と裏面シート23のみで構成することも可能である。
物品裏面シート13と裏面シート23は、液遮断性であり、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、セロファン樹脂フィルムなどで形成される。物品裏面シート13と裏面シート23は、多数の微細なフィラーを混入し延伸処理して、空気を通過させる微細な通気孔が形成された通気性で且つ液遮断性の樹脂フィルムで形成されることが好ましい。
また物品裏面シート13あるいは裏面シート23として、ポリプロピレン樹脂繊維で形成されたスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の3層の不織布が熱シールで接合されたSMS複合不織布を使用することができる。あるいは、SMS複合不織布/メルトブローン不織布/SMS複合不織布が積層されて熱シールされた複合不織布も使用できる。これら不織布は、目付けが15〜40g/m2の範囲のものが好ましい。さらに、前記不織布と樹脂フィルムのラミネート材で、物品裏面シート13あるいは裏面シート23を形成することもできる。
特に、上部吸収単体20は、その下に最下部吸収単体10が重ねられているため、下着の外部との間で通気性が阻害されやすく、夏季などの高温高湿の環境下で長期間装着していると蒸れる心配がある。そこで、上部吸収単体20に使用される裏面シート23は、通気性の良好な前記不織布を使用することが好ましい。また、前記不織布は樹脂フィルムに比べて軟質であるため、不織布である裏面シート23が吸収性物品1の中間に位置していても、吸収性物品1の全体に硬質感触が生じにくい。
表面シート11と中間シート12および物品裏面シート13とから構成される最下部吸収単体10と、表面シート21と中間シート22および裏面シート23とから構成される上部吸収単体20の特性は互いに異なっている。第1に、最下部吸収単体10と上部吸収単体20を互いに独立させて測定したときの、縦方向の曲げ剛性は、最下部吸収単体10が上部吸収単体20よりも高い。第2に、前記剛性差に加え、あるいは剛性差とは無関係に、最下部吸収単体10と上部吸収単体20を互いに独立させて測定したときの、厚み方向への加圧時の圧縮回復率は、最下部吸収単体10が上部吸収単体20よりも高い。
上記曲げ剛性は、(株)安田精機製作所製の製品番号311番のガーレー式柔軟度試験機を用いて測定することができる。最下部吸収単体10と上部吸収単体20を、それぞれラウンドシール14,24が形成されていない領域において、横方向中心線Oxに沿う方向の幅寸法が25mm、縦方向中心線Oyに沿う方向の長さ法が38mmとなるように切断した試料を作成し、縦方向が曲げ方向となるように前記試験機を用いて測定する。最下部吸収単体10のガーレー曲げ剛性値は、上部吸収単体20のガーレー曲げ剛性値よりも、幅25mm当たり、0.05mN以上高いことが好ましい。
最下部吸収単体10の曲げ剛性を、上部吸収単体20の曲げ剛性よりも高くするためには、最下部吸収単体10を構成する素材の目付け(坪量)を上部吸収単体20よりも高くすることで実現できる。あるいは、最下部吸収単体10と上部吸収単体20を構成する素材の目付けが同じであっても、最下部吸収単体10の厚みを、上部吸収単体20の厚みよりも大きくすることで、縦方向へ曲げたときの曲げ抵抗を大きくでき、最下部吸収単体20の曲げ剛性を、上部吸収単体20の曲げ剛性よりも高くできる。
厚みの差を設ける手段は、最下部吸収単体10の表面シート11と中間シート12の少なくとも一方が、合成樹脂繊維を含んだ不織布である場合に、最下部吸収単体10を構成する不織布を熱ローラに接触させて熱処理し、あるいは熱風を与えて熱処理して嵩を回復させることにより実現できる。あるいは、図2(B)に示すように、最下部吸収単体10の表面シート11と中間シート12の少なくとも一方(図2(A)では表面シート11)を、横方向断面で見たときに波状であり、波の頂部と底部が縦方向に平行に延びるように賦形したコルゲート加工を施すことによっても、最下部吸収単体10の厚みを、上部吸収単体20の厚みよりも大きくでき、その結果、最下部吸収単体10の曲げ剛性を高めることができる。
前記コルゲート加工は、周面に沿って凹凸が繰り返して形成されたギヤロールを一対設け、両ギヤロール間に不織布を挟み込むことにより実現できる。
図1および図2(A)(B)に示す第1の実施の形態の吸収性物品1では、最下部吸収単体10の中間シート12と、上部吸収単体20の中間シート22とが、同じ目付けで同じ繊維構成の不織布で形成されており、最下部吸収単体10の中間シート12のみを熱処理して嵩を回復させている。その結果、最下部吸収単体10の曲げ剛性を、上部吸収単体20の曲げ剛性よりも高くしている。また、最下部吸収単体10の表面シート11と上部吸収単体20の表面シート21は、同じ目付けで同じ繊維構成の不織布であり、双方ともにコルゲート加工している。
また、最下部吸収単体10の曲げ剛性を上部吸収単体20の曲げ剛性よりも高くする手段として、上部吸収単体20の裏面シート23よりも最下部吸収単体10の物品裏面シート13を剛性の高い素材で形成してもよい。例えば、裏面シート23を樹脂フィルムまたは不織布で形成し、物品裏面シート13を、不織布と樹脂フィルムとのラミネート材で形成する。
前記のように、最下部吸収単体10を構成する不織布を熱処理して嵩を回復させ、および/または最下部吸収単体10を構成する不織布にコルゲート加工を施すことによって、最下部吸収単体10を厚み方向へ加圧したときの圧縮回復率を上部吸収単体20の圧縮回復率よりも高くすることが可能である。
圧縮回復率はカトーテック(株)製の自動化圧縮試験機「KES FB3−AUTO−A」で測定することができる。その測定で得られる線図の概要を図11に示す。
前記自動化圧縮試験機に、表面シート11と中間シート12および物品裏面シート13とから成る最下部吸収単体10、または表面シート21と中間シート22および裏面シート23とから成る上部吸収単体20を個別に設置する。面積が2cm2の円形の加圧板により、サンプルに対して垂直方向へP0=49Pa(0.5g/cm2)の初期圧力を与え、このときの計測厚みを初期厚み寸法T0とする。前記初期圧力P0を起点として、前記圧縮圧力をPm=4900Pa(50g/cm2)まで圧縮速度50秒/1mmで直線的に高め、前記圧縮圧力Pmを与えたときの前記測定試料の加圧時厚みをTmとする。
圧縮仕事量WCは、前記のように加圧したときに得られる図11の(i)の曲線に対して、WC=∫P・dT(Pは圧力、Tは厚み)でT0→Tmの間で定積分を行った値(N・m/m2)である。圧縮回復仕事量WC´は、圧縮圧力をPmからP0に戻したときの(ii)の曲線に対して前記と同様の定積分を行った値(N・m/m2)である。圧縮回復率(RC値)は、WC´/WC×100(%)で求められる。
最下部吸収単体20の圧縮回復率(RC値)は40%以上が好ましく、さらに好ましくは50%以上である。なお、上限は100%である。
なお、最下部吸収単体20の圧縮回復率を上部吸収単体10よりも高くするために、最下部吸収単体20にスルーエア不織布のようにクッション性を有し嵩高の素材を複数枚重ねて使用することにより、前記のように必ずしも熱処理しなくてもよい。
この吸収性物品1を使用するときには、物品裏面シート13の着衣側表面に設けられた離型シートを剥離し、物品裏面シート13を感圧接着剤層を介して下着のクロッチ部に接着固定し、上部吸収単体20を膣口などの排泄部に当てる。上部吸収単体20がおりものや経血などの排泄液を吸収し、上部吸収単体20が汚れた時点で、図1に示す幅寸法W1の仮止めシール8の欠損部において、最下部吸収単体10の表面シート11と上部吸収単体20の裏面シート23との間に指を入れて、上部吸収単体20を持ち上げ、仮止めシール8における接合を外して、上部吸収単体20を最下部吸収単体10から分離させる。その後に、最下部吸収単体10の表面シート11を排泄部に当てて使用する。
上記のように、最下部吸収単体10の曲げ剛性を、上部吸収単体20の曲げ剛性よりも高くすることにより、上部吸収単体20を排泄部に当てて使用しているときに、身体の動きや下着の動きで上部吸収単体20に縒れや皺が生じたとしても、上部吸収単体20の変形に比べて最下部吸収単体10の変形を少なくできる。よって、排泄物を吸収して汚れた上部吸収単体20を剥離したときに最下部吸収単体10が平坦な状態を保ちやすくなる。
また、最下部吸収単体10は、熱処理で嵩が回復され、これに加えまたはこれに代えて表面シート11などにコルゲート加工が施されて、圧縮回復率が40%以上でさらに好ましくは50%以上となっている。最下部吸収単体10の圧縮回復率が上部吸収単体20の圧縮回復率よりも高いため、最下部吸収単体10と上部吸収単体20とが重ねられているときには、最下部吸収単体10が上部吸収単体20に押されて吸収性物品1の全体の厚み寸法がさほど大きくならない。また、汚れた上部吸収単体20を引き剥がすと、最下部吸収単体10の厚みが回復し、最下部吸収単体10のみを使用しているときに、排泄部への当接感触が軟質で良好となる。また厚みが回復した最下部吸収単体10によって、十分な液吸収能力を発揮できる。
また、仮止めシール8は、最下部吸収単体10において、表面シート11と中間シート12とが重ねられている領域、および上部吸収単体20において、表面シート21と中間シート22および裏面シート23が重ねられている領域に形成されている。そのため、上部吸収単体20を剥がすときには、表面シート21と中間シート22および裏面シート23が一緒に持ち上げられて最下部吸収単体10から分離されることになり、上部吸収単体20を剥がしやすい。また最下部吸収単体10では、仮止めシール8の部分で上部吸収単体20を引き剥がす力を、表面シート11と中間シート12および物品裏面シート13の3層の積層体で受け止めることができるため、最下部単体10に引き剥がし力が作用しても最下部吸収単体10に皺などが発生しにくい。
図3は本発明の第2の実施の形態の吸収性物品101を示すものであり、各吸収単体を分離した状態を示す分離断面図である。
この吸収性物品101は、着衣側表面7に最下部吸収単体110が設けられ、最下部吸収単体110の上に上部吸収単体120が重ねられ、さらに肌側表面6に最上部吸収単体130が設けられている。
最下部吸収単体110では、表面シート111と中間シート112とが重ねられて液の透過を妨げない量のホットメルト型接着剤で接着されているとともに、表面シート111と中間シート112がラウンドシール114において固定されている。上部吸収単体120は、表面シートが設けられておらず、中間シート122と裏面シート123とが積層され、ホットメルト型接着剤で接着されているとともに、ラウンドシール124で互いに固定されている。最上部吸収単体130も、中間シート132と裏面シート133とがホットメルト型接着剤で接着され、ラウンドシール134で固定されている。
なお、この実施の形態は、上部吸収単体120が、中間シート122と裏面シート123の2層構造であるため、この2層をホットメルト型接着剤でしっかりと固定しておくことにより、上部吸収単体120のラウンドシール124は必ずしも必要ではない。これは最上部吸収単体130においても同じであり、最上部吸収単体130のラウンドシール134は必ずしも必要ではない。
最下部吸収単体110の表面シート111および中間シート112と、上部吸収単体120とさらに最上部吸収単体130が重ねられ、図1に示したのと同じパターンの仮止めシール8によって、最下部吸収単体110と上部吸収単体120および最上部吸収単体130が分離可能に仮止めされている。この仮止めの後に、最下部吸収単体110の中間シート112に物品裏面シート113がホットメルト型接着剤で接着されている。
ラウンドシール114,124,134、および仮止めシール8のそれぞれの加圧部のパターン形状は第1の実施の形態と同じである。また、ラウンドシール114,124,134の幅寸法Waと仮止めシール8の幅寸法Wb、および縁部から仮止めシール8およびラウンドシールまでの距離Wcなどの好ましい範囲も、第1の実施の形態と同じである。
この実施の形態の吸収性物品101は、最上部吸収単体130を排泄部に当てて使用し、最上部吸収単体130が汚れたときには、最上部吸収単体130を剥がし、上部吸収単体120を排泄部に当てて使用できる。さらに上部吸収単体120が汚れたときには、この上部吸収単体120を剥がし、最下部吸収単体110を排泄部に当てて使用することができる。
各吸収単体を縦方向へ曲げたときの曲げ剛性は、最上部吸収単体130よりも最下部吸収単体110の方が大きい。また上部吸収単体120の曲げ剛性は、最上部吸収単体130よりも高く、最下部吸収単体110よりも低い。厚み方向へ加圧したときの圧縮回復率は、最上部吸収単体130よりも最下部吸収単体110の方が高く、上部吸収単体120の圧縮回復率は、最上部吸収単体130よりも高く、最下部吸収単体110よりも低い。
図3の実施の形態では、最上部吸収単体130の中間シート132と、上部吸収単体120の中間シート122が同じ目付けで同じ繊維構成の不織布である。ただし、上部吸収単体120の中間シート122にコルゲート加工が施され、上部吸収単体120の厚みが最上部吸収単体130の厚みよりも増加され、上部吸収単体120の曲げ剛性と圧縮回復率が共に、最上部吸収単体130よりも高くなっている。また、最下部吸収単体110では、中間シート112が熱処理されて嵩が回復され、表面シート111がコルゲート加工されており、最下部吸収単体110が最も厚みが大きくさらに目付けが最も大きく、最下部吸収単体110が、上部吸収単体120および最上部吸収単体130よりも、曲げ剛性と圧縮回復率が共に高く設定されている。
また、第1の実施の形態の吸収性物品1において、最下部吸収単体10と上部吸収単体20とを目視で区別できることが好ましい。第2の実施の形態の吸収性物品101においても、少なくとも最下部吸収単体110を、上部吸収単体120および最上部吸収単体130と目視で区別できるようにしておくことが好ましく、さらには、最下部吸収単体110、上部吸収単体120および最上部吸収単体130を目視で区別できるようにすることが好ましい。
吸収単体を目視で区別できるようにするには、各吸収単体毎に色を相違させることで実現できる。例えばいずれかの吸収単体を白色繊維で形成して肌側表面を白色とし、他の吸収単体を着色された繊維で形成し、肌側表面が白色以外の色を呈するようにしておく。例えば、最下部吸収単体10または110を構成する中間シート12,112、および/または表面シート11,111に消臭機能を発揮する機能剤としてカテキン類を含ませる場合には、カテキン類を含んでいることをイメージできるように緑色の顔料と共に用いることが好ましい。これにより最下部吸収単体10,110の肌側表面が薄い緑色を呈するようになる。このとき、上部吸収単体や最上部吸収単体を白色繊維で構成すると、使用中に最下部吸収単体10,110を使用しているか否かを目視で容易に識別できる。またカテキン類を含ませておくと、最も長い時間着用されている最下部吸収単体10,110が殺菌効果と消臭効果を発揮でき、長期間着用しても悪臭の生じるのを防止できる。なお、上部吸収単体20,120や最上部吸収単体130にもカテキン類を含ませることは可能である。
図6(A)(B)は、吸収単体を目視で区別できる第3の実施の形態を示す平面図であり、図6(A)は上部吸収単体220を肌側表面から示す平面図であり、図6(B)は最下部吸収単体210のみを肌側表面から示す平面図である。
図6(A)に示す上部吸収単体220は、周囲にラウンドシール224が形成され、且つ表面シート221にコルゲート加工が施されている。このコルゲート加工により、表面シート221は断面が波状に賦形され、波の頂部と底部が縦方向へ向けて平行に且つ直線的に延びている。図6(B)に示す最下部吸収単体210は、表面シート211に前記と同様のコルゲート加工が施され、さらに表面シート211に、リーフ模様のエンボス加工部215が形成されている。このように、最下部吸収単体210と上部吸収単体220とで、肌側表面に現れるエンボス模様を相違させることによって、最下部吸収単体210と上部吸収単体220とを目視で容易に区別できるようになる。
また、最下部吸収単体の表面シートにコルゲート加工を施し、上部吸収単体の表面シートにコルゲート加工を施さない構成にすると、コルゲート加工が存在しているか否かを目視で判別することにより、最下部吸収単体と上部吸収単体とを目視で容易に判別できる。また前述のように最下部吸収単体の表面シートにコルゲート加工を施すことにより、最下部吸収単体の曲げ剛性および圧縮回復率を、上部吸収単体よりも高くすることが可能である。
上記のように、最下部吸収単体と上部吸収単体とで、表面シートの素材を相違させ、または表面シートの構造を相違させることによっても、吸収単体を目視で区別できるようになる。
最下部吸収単体と上部吸収単体を肌側表面から見たときに区別できるようにしておくことにより、現在排泄部に当てている吸収単体を識別でき、上部吸収単体を使用しているときに誤って吸収性物品全体を廃棄してしまう不都合や、最下部吸収単体を使用しているときに、代わりの吸収性物品を用意せずに誤って吸収性物品を下着から外してしまうなどの不都合を防止できるようになる。
図7(A)は、本発明の第4の実施の形態の吸収性物品301を肌側表面6から見た平面図、図7(B)は、前記吸収性物品301から上部吸収単体320を剥がした状態、すなわち最下部吸収単体310を肌側から示す平面図である。図8は、図7(A)においてVIII−VIIIで切断した部分断面図である。図9は、仮止めシール8の形状を示す部分拡大平面図である。
図8の部分断面図に示すように、この吸収性物品301は、最下部吸収単体310と上部吸収単体320との2層で形成されている。
最下部吸収単体310は、表面シート311と第1の中間シート312と第2の中間シート313および物品裏面シート314とで形成されている。表面シート311は液透過機能を有し、第1の中間シート312と第2の中間シート313は液吸収保持機能を有している。あるいは中間シート312と313の一方が液吸収機能を有し、他方が嵩高で低密度でクッション機能を発揮するものであってもよい。物品裏面シート314は通気性で且つ液遮断性である。
最下部吸収単体310にはラウンドシールが形成されておらず、各層がホットメルト型接着剤で接着されている。表面シート311と第2の中間シート312との間、および第1の中間シート312と第2の中間シート313との間は、液の透過を妨げずしかも層間をしっかり接着できるように、ゴム系のホットメルト型接着剤がスパイラルパターンで10g/m2程度の塗工量で塗工されている。第2の中間シート313と物品裏面シート314とは、ホットメルト型接着剤でさらにしっかりと接着固定されている。
上記吸収単体320は、表面シート321、中間シート322および裏面シート323を有している。表面シート321は液透過性で、中間シート322が液吸収保持機能を有し、裏面シート323は、通気性で且つ液遮断性である。
上部吸収単体320にもラウンドシールが形成されておらず、表面シート321と中間シート322とが液の透過を妨げない塗工量のホットメルト型接着剤でしっかり固定されており、中間シート322と裏面シート323もホットメルト型接着剤でしっかりと接着固定されている。
図7(A)に示すように、最下部吸収単体310と上部吸収単体320は、仮止めシール8によって剥離可能に仮止めされている。仮止めシール8のパターンは図1に示す第1の実施の形態と同じであり、仮止めシール8の加圧部8aのパターンや、仮止めシール8の幅寸法Wbの好ましい範囲などは、第1の実施の形態と同じである。仮止めシール8による最下部吸収単体310と上部吸収単体320との接合強度は、最下部吸収単体310における各層間の接着強度および上部吸収単体320の各層間の接着強度よりも弱く設定されている。
図7(A)に示すように、仮止めシール8は、吸収性物品301の右側縁部4と左側縁部5に沿ってこれら縁部の全長にわたって延びており、仮止めシール8の各端部8bは、前縁部2と後縁部3の内側に位置している。そして、前縁部2の内側と後縁部3の内側では、前記端部8bと端部8bとの間が、仮止めシール8が途切れた欠損部となっている。この欠損部の幅寸法はW1であり、その好ましい範囲は前記第1の実施の形態と同じである。
図7(A)に示すように、前縁部2と後縁部3では、仮止めシール8の欠損部と仮止めシール8の一部を含む範囲(a)に、上部吸収単体320を部分的に加圧した圧縮部325が形成されている。図8に示すように、圧縮部325では、表面シート321と中間シート322および裏面シート323が一緒に圧縮されて、上部吸収単体320が部分的に薄く形成されている。前記圧縮部325は、前縁部2および後縁部3からの縦方向へLの範囲で形成されている。前記Lは特に規定されないが、例えば5mm〜30mm程度である。また、前縁部2と後縁部3に形成されるそれぞれの圧縮部325の前記長さLの合計(2×L)は、吸収性物品301の縦方向の長さ寸法の1/4以下であることが好ましく、さらに好ましくは1/5以下である。すなわち、前記圧縮部425は、吸収性物品301の中央領域まで延びていない。
この圧縮部325は、上部吸収単体320を構成する表面シート321と中間シート322および裏面シート323をホットメルト型接着剤で接着した後で、且つ仮止めシール8によって最下部吸収単体310と上部吸収単体320とを仮止めする前の工程で形成される。圧縮部325は、表面が平滑なロールで、または表面に細かなエンボスパターンが形成されたロールで、常温下でまたは加熱下で上部吸収単体320を加圧して形成される。
欠損部に前記圧縮部325が形成されていると、仮止めシール8が存在していなくても、上部吸収単体320を構成する表面シート321と中間シート322および裏面シート323が分離しにくくなり、仮止めシール8が形成されていない欠損部において、上部吸収単体320の層間の剥離が生じるのを防止できるようになる。
また、図8に示すように、仮止めシール8の欠損部では、上部吸収単体320の圧縮部325の下面と、最下部吸収単体310の表面シート311との間に、隙間が形成されやすくなる。よって、上部吸収単体320が汚れたときに、仮止めシール8の欠損部において、上部吸収単体320を指で掴んで剥がしやすくなる。
図7(A)に示すように、仮止めシール8の端部8bが、前縁部2と後縁部3の内側に位置している結果、吸収性物品301の各隅部9、すなわち右側縁部4と前縁部2との境界部、右側縁部4と後縁部3との境界部、左側縁部5と前縁部2との境界部、および左側縁部5と後縁部3との境界部のそれぞれに、仮止めシール8の一部が存在していることになる。各隅部9に仮止めシール8の一部が存在することによって、この吸収性物品301を着用しているときに、隅部9において不用意に上部吸収単体320が最下部吸収単体310から剥がれるのを防止しやすくなる。
吸収性物品301の前記各隅部9の内側では、仮止めシール8の一部が、隅部9の形状に沿うように、外側に凸側が向けられる湾曲形状部8cとなっている。仮止めシール8が前記湾曲形状部8cを有し、且つ端部8bが、前縁部2と後縁部3の内側に存在しているため、図9に示すように、前縁部2および後縁部3では、横方向の幅寸法W2の範囲で仮止めシール8が存在していることになる。前記W2は仮止めシール8の幅寸法Wbの2倍以上であることが好ましく、さらには3倍以上であることが好ましい。
この吸収性物品301を下着の内面に固定して着用しているときに、仮止めシール8の欠損部において、前縁部2または後縁部3に対して、図9に示す縦方向の剥離力F1が作用しても、前縁部2および後縁部3には、前記幅寸法W2の範囲で仮止めシール8が存在しているため、前記剥離力F1を幅寸法W2の範囲で受け止めることができる。よって、前記剥離力F1によって、上部吸収単体320が最下部吸収単体310から不用意に剥がれるのを防止しやすくなっている。
一方、上部吸収単体320がおりものや経血などで汚れたときに、前縁部2または後縁部3における仮止めシール8の欠損部において上部吸収体320を指で掴んで引き剥がすと、前縁部2または後縁部3において、上部吸収単体320に、図9の紙面に対して手前側に持ち上げる力が作用する。その結果、仮止めシール8の端部8bには、図9に示すように、仮止めシール8のパターン形状に沿う方向の力F2を与えることができる。よって、仮止めシール8に対して、端部8bから湾曲形状部8cに沿うように剥離力が伝播していくようになり、指に過大な抵抗を与えることなく上部吸収単体320を最下部吸収単体310から剥がせるようになる。
なお、前記圧縮部325は、前述した他の実施の形態においても適用することができ、また仮止めシール8に湾曲形状部8cが形成されていることによる利点も前記他の実施の形態において同じである。
図8に示すように、最下部吸収単体310の表面シート311と、上部吸収単体320の表面シート321は、共にコルゲート加工が施されて波状パターンに賦形されている。この吸収性物品301は、最下部吸収単体310が4層構造であり、上部吸収単体320は3層構造であるため、最下部吸収単体310の縦方向の曲げ剛性および圧縮回復率を、上部吸収単体320よりも高くできる。
また、図7(B)に示すように、最下部吸収単体310は、表面シート311に、リーフ模様のエンボス加工部315が点在して形成されており、最下部吸収単体310と上部吸収単体320とが目視で区別しやすくなっている。
図10は、本発明の第5の実施の形態の吸収性物品401を肌側表面6から見た平面図である。
この吸収性物品401は、前記各実施の形態と同様に、最下部吸収単体の上に少なくとも1つの上部吸収単体が重ねられている。最下部吸収単体と上部吸収単体はそれぞれ複数の層が重ねられて、各吸収単体毎に、各層がホットメルト型接着剤で接着されており、また必要に応じて吸収単体にラウンドシールが形成されている。
最下部吸収単体と上部吸収単体とは、仮止めシール8で仮止めされている。図10に示す吸収性物品401では、仮止めシール8が、前縁部2と後縁部3の内側の全長にわたって形成されており、右側縁部4の内側と左側縁部5の内側において、仮止めシール部8が途切れた欠損部が形成されている。
前記各実施の形態においては、少なくとも最下部吸収単体10,110,210,310に、前述したカテキン類などの消臭機能剤や、抗菌剤、香料などを含ませることが好ましい。ただし、上部吸収単体20,120,220,320や、最上部吸収単体130のそれぞれに前記機能剤を含ませてもよい。
前記機能剤としては、カテキン類などに代表される植物から抽出されたフェノール類や、活性炭、銅イオン、銀イオンなどの一種以上を使用することができる。前述のように、カテキン類を含ませる場合には、顔料を用いて吸収単体の肌側表面が緑色を呈するようにすることが好ましく、活性炭を使用する場合には、前記肌側表面に黒色を呈する顔料を使用することが好ましい。これら機能剤および顔料を含ませて着色した吸収単体と、白色の吸収単体を組み合わせることにより、前述のように、目視で、最下部吸収単体と上部吸収単体とを区別しやすくなる。また、カテキン類を加えた吸収単体の肌側表面に、図6(B)は図7(B)に示すリーフ模様のエンボス加工部215,315を形成しておくと、視覚的に殺菌、消臭効果のある吸収単体である視覚イメージを生じさせることができ、着用者に清潔感を与えることができる。
カテキン類は、茶葉から水や熱水で抽出された茶葉抽出物であり、微粉末の状態、微粒な多孔質物質に定着させた状態、またはマイクロカプセルに封入した状態で、中間シートや表面シートの繊維間に含ませる。
茶葉抽出物に含まれるカテキン類は、エピカテキン、エピカテキンガレード、エピカロカテキン、エピガロカテキンガレード、カテキンガレード、ガロカテキンガレードである。茶葉抽出物を使用する場合、エピガロカテキンガレードが茶葉抽出物中に、10質量%以上含まれていることが好ましく、さらに好ましくは30質量%以上である。
また、顔料としては、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系の顔料を用いることができ、または食品天然系色素である銅クロロフィル系の顔料も使用できる。顔料の色相としては、体液の中でのおりもの(無色〜薄褐色)および尿(薄黄色)に対して隠蔽効果を発揮でき、且つ茶抽出物でかつ天然素材であるカテキン類のイメージ効果を高めるために、色合いとしてのお茶の葉の緑色を考慮し、マンセル色相系の10YR〜10Gの間の色相が望ましい。好ましくは10Y〜10Gである。
茶葉抽出物は、例えば中間シートに含ませ、中間シートの質量に対して0.1〜1.0質量%の範囲で含められる。前記顔料は茶葉抽出物の質量を100としたときに10〜30の範囲の質量で含められる。茶葉抽出物を微粉末の状態で使用するには、微粉末は5μm以下の大きさであることが好ましく、さらに好ましくは2μm以下である。
(1)実施例1
図2(A)(B)に示すように、最下部吸収単体10と上部吸収単体20の2層構造の吸収性物品1を製造した。
最下部吸収単体10の表面シート11と上部吸収単体20の表面シート21を共に、レーヨン繊維が60質量%でポリエチレンテレフタレート繊維が40質量%のスパンレース不織布で形成した。目付けを35g/m2とした。コルゲート加工を施したものを表面シート11と表面シート21として使用した。
最下部吸収単体10の中間シート12と上部吸収単体20の中間シート22を共に、ポリエチレン繊維が50質量%でポリプロピレン繊維が50質量%のスルーエア不織布で形成した。ポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維は、共に繊度が2.2dtexで繊維長が40mmのものを使用し、目付けを25g/m2とした。ただし、最下部吸収単体10の中間シート12を構成する前記スルーエア不織布は、120℃の2つの熱ロールにS字状に当接させて熱処理し、嵩を回復させた。
熱処理した中間シート12の厚みは1.4mm、熱処理していない上部吸収単体20の中間シート22の厚みは0.5mmであった。熱処理した中間シート12を単体で測定したときの圧縮回復率(RC値)は53.83%であった。
最下部吸収単体10の物品裏面シート13および上部吸収単体20の裏面シート23を共に、坪量が35g/m2の通気性のポリエチレンフィルムで形成した。
図1および図2(A)(B)に示すように、最下部吸収単体10にラウンドシール14を形成し、上部吸収単体20にラウンドシール24を形成し、最下部吸収単体10と上部吸収単体20を仮止めする仮止めシール8を形成した。
最下部吸収単体10と上部吸収単体20は、同じ素材で形成されているが、最下部吸収単体10の中間シート12を熱処理して嵩回復させることで、最下部吸収単体10の厚みを上部吸収単体20よりも大きくでき、最下部吸収単体10の曲げ剛性および圧縮回復率を上部吸収単体20より大することが可能となった。
(2)実施例2
実施例1と同様に2層構造の吸収性物品を製造した。
最下部吸収単体10の表面シート11と中間シート12および物品裏面シート13として実施例1と同じものを用いた。
上部吸収単体20は、表面シート21を、ポリエチレン繊維が50質量%でポリプロピレン繊維が50質量%のスルーエア不織布で形成した。ポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維は、共に繊度が2.2dtexで繊維長が40mmのものを使用し、目付けを25g/m2とした。また嵩回復のための熱処理を施しておらずコルゲート可能も施していないものを使用した。
上部吸収単体20の中間シート12は、パルプをエアーレイド法で積層し、バインダーで繊維どうしを接着したエアーレイド不織布を使用した。目付けは35g/m2とした。上部吸収単体20の裏面シート23は、目付けが20g/m2のSMS複合不織布とした。
図1および図2(A)(B)に示すように、最下部吸収単体10にラウンドシール14を形成し、上部吸収単体20にラウンドシール24を形成し、最下部吸収単体10と上部吸収単体20を仮止めする仮止めシール8を形成した。
最下部吸収単体10を構成する素材の合計の目付け(坪量)を、上部吸収単体20よりも大きくすることで、最下部吸収単体10の曲げ剛性を、上部吸収単体20よりも高く設定できた。また、最下部吸収単体10は、熱処理で嵩回復した中間シート12を使用しており、圧縮回復率は、最下部吸収単体10が上部吸収単体20よりも高くなった。
(3)実施例3
実施例3として図3に示す3層構造の吸収性物品101を製造した。
最下部吸収単体110の、表面シート111と中間シート112は、実施例1の表面シート11および中間シート12と同じものを使用した。物品裏面シート113は、目付けが20g/m2のSMS複合不織布と、坪量20g/m2の通気性のポリエチレンフィルムとのラミネート材を使用した。
上部吸収単体120の中間シート122は、コットン繊維が60質量%でポリエチレンテレフタレート繊維が40質量%のスパンレース不織布で、コルゲート加工したものを使用した。裏面シート123は、坪量35g/m2の通気性のポリエチレンフィルムを用いた。
最上部吸収単体130の中間シート132は、コットン繊維のみで形成したスパンレース不織布であり、目付けが35g/m2でコルゲート加工していないものを使用した。裏面シート133は、坪量23g/m2の通気性のポリエチレンフィルムを使用した。
図3に示すように、最下部吸収単体110にラウンドシール114を形成し、上部吸収単体120にラウンドシール124を形成し、最上部吸収単体130にラウンドシール134を形成した。最下部吸収単体110と上部吸収単体120および最上部吸収単体130を仮止めする仮止めシール8を形成した。
目付けおよび坪量を、最上部吸収単体130、上部吸収単体120、最下部吸収単体110の順に大きく設定することで、曲げ剛性も前記の順に大きくなるように設定できた。また、上部吸収単体120の中間シート122はコルゲート加工されて厚みが増大しており、これにより曲げ剛性が高められ、且つ圧縮回復率が高められている。最下部吸収単体110は、中間シート112が熱処理で嵩を回復し、さらに表面シート111がコルゲート加工されて厚みが大きく設定されており、これにより曲げ剛性が高められるとともに、圧縮回復率も高くなっている。
(4)実施例4
図7ないし図9に示すように、各吸収単体にラウンドシールを形成しない吸収性物品を製造した。
図8に示したのと同様に、最下部吸収単体310を4層構造とした。表面シート311はレーヨン繊維が60質量%でポリエチレンテレフタレート繊維が40のスパンレース不織布であり、目付けを35g/m2とした。表面シート311はコルゲート加工されたものを使用した。第1の中間シート312は、レーヨン繊維が90質量%で親水処理したポリプロピレン繊維が10質量%のスパンレース不織布であり、目付けを30g/m2とした。第2の中間シート313は、親水処理したポリエチレン繊維が50質量%で親水処理したポリプロピレン繊維が50質量%のスルーエア不織布であり、目付けを30g/m2とした。物品裏面シート314は、坪量35g/m2の通気性のポリエチレンフィルムで形成した。
上部吸収単体320は、表面シート321と中間シート322と裏面シート323の3層構造とし、表面シート321を、最下部吸収単体310の表面シート311と同じもの、中間シート322と裏面シート323は、最下部吸収単体310の第1の中間シート312および物品裏面シート314と同じものとした。すなわち上部吸収単体320は、最下部吸収単体310の第2の中間シート313を除去したのと同じ構成とした。なお、最下部吸収単体310では、表面シート311と第1の中間シート312を重ねて、図7(B)に示すリーフ模様のエンボス加工部315を形成した。
そして、最下部吸収単体310と上部吸収単体320を重ねて仮止めシール8を形成した。
実施例4では、最下部吸収単体310が4層構造で上部吸収単体320が3層構造であるため、最下部吸収単体310の曲げ剛性を上部吸収単体320よりも高く設定できた。また圧縮回復率も、最下部吸収単体310を上部吸収単体320よりも高く設定できた。
最下部吸収単体310の第1の中間シート312と、上部吸収単体320の中間シート322に茶葉抽出物と緑色の顔料を含ませ、最下部吸収単体310では表面シート311を透視して緑色を目視でき、上部吸収単体320では、表面シート321を透視して緑色を透視できるようにした。
茶葉抽出物に含まれるカテキン類の成分比は、エピガロカテキンガレードを31.5質量%、エピガロカテキンを17.2質量%、ガロカテキンを17.2質量%、エピカテキンを5.9質量%、エピカテキンガレードを5.0質量%、カテキンガレードを2.8質量%、ガロカテキンガレードを1.9質量%とした。これらカテキン類を含む茶葉粉末を粒径2μm未満の微粉末にして用いた。茶葉粉末を第1の中間シート312と中間シート322のそれぞれの質量に対して0.38質量%含ませた。
また顔料として、緑色を呈する銅フタロシアニングリーンを用いた。顔料は、第1の中間シート312と中間シート322のそれぞれに含まれる茶葉抽出物の質量を100としたときに、質量が15の割合となるように含ませた。
第1の中間シート312および中間シート322の製造方法は、レーヨン繊維とポリプロピレン繊維を質量が90:10の比となるように混合して目付けが30g/m2のスパンレース不織布を形成し、このスパンレース不織布をドラム型染色機に入れ、分散剤としてノニオン−アニオン系界面活性剤を添加して攪拌し、茶葉抽出物と銅フタロシアニングリーンを添加して、繊維に茶葉抽出物を定着させるとともに、緑色に着色した。
(5)実施例5
最下部吸収単体を3層構造とし、上部吸収単体2を2層構造とし、上部吸収単体の肌側表面が白色を呈し、最下部吸収単体の肌側表面が緑色を呈する吸収性物品を製造した。
最下部吸収単体は、表面シートを実施例4の第1の中間シート312と同じもの、すなわち茶葉抽出物と緑色の顔料を含むスパンレース不織布で形成した。コルゲート加工を施さないものを使用した。最下部吸収単体の中間シートと物品裏面シートは、実施例1の最下部吸収単体に用いられている熱処理して嵩を回復させた中間シート12と物品裏面シート13と同じものを使用した。
上部吸収単体の表面シートは、親水処理したポリエチレン繊維が50質量%、親水処理したポリプロピレン繊維が50質量%で形成された目付けが25g/m2のスルーエア不織布とし、裏面シートを目付けが20g/m2のSMS複合不織布とした。
最下部吸収単体と上部吸収単体は、ラウンドシールを設けず、各層を接着したものを用いた。そして最下部吸収単体と上部吸収単体を重ねて仮止めシール8を形成した。
最下部吸収単体の曲げ剛性と圧縮回復率を、上部吸収単体よりも高く設定することができた。