従来より、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用される尿取りパッドなどのインナーパッドとして、前記簡易交換用としての使用態様と、前記補助吸収用としての使用態様の2通りがあることが知られている。前記簡易交換用としての使用態様では、頻繁に使い捨ておむつを交換する手間を軽減するとともに、おむつの購入費用を削減することなどを目的として、尿を吸収したインナーパッドのみを交換して使い捨ておむつを繰り返し使用できるように、吸収体に吸収された尿のアウター側への漏れを防止するため、インナーパッドの非肌側が不透液性のシート材で覆われている。この簡易交換用のインナーパッドは、昼間などパッドを頻繁に交換できるときに主に使用されている。
一方、前記補助吸収用としての使用態様では、使い捨ておむつなどのアウターの吸収能力を増大させることなどを目的として、使い捨ておむつの内面に積層して使用し、吸収体に吸収された尿が速やかに使い捨ておむつの吸収体に移行するように、インナーパッドの非肌側が透液性のシート材で覆われている。この補助吸収用のインナーパッドは、就寝時などパッドを長時間に亘って交換できないときに主に使用されている。
このように、前記簡易交換用としての使用態様ではアウターに尿が溢れ出ないことが要求される一方で、前記補助吸収用としての使用態様ではインナーパッド及びアウターの各吸収体の吸収性能を有効に活用するため、インナーパッドからアウター側に尿がスムーズに移行することが要求されている。このように、簡易交換用としての使用態様と補助吸収用としての使用態様とでは、相反する性能が要求されることとなる。
従来のインナーパッドでは、非肌側のシート材を不透液性とするか透液性とするかによって、何れか一方の機能を備えることしかできなかったため、使用者は各機能に応じたパッドを2種類用意しておかなければならなかった。
ところが近年では、このようなパッドにも幾多の改良が重ねられ、1つのパッドで簡易交換用としての使用態様と、補助吸収用としての使用態様とを選択可能としたものが提案されている。例えば、下記特許文献1では、内面側に液透過性のトップシートが、内部に前記トップシートを通過した液を吸収する吸収コアが、外面側に液不透過性のバックシートが設けられ、前記バックシートには、前記吸収コアを透過した液を通過させる開口部が形成されている吸収性物品が開示されている。
また、下記特許文献2では、内面側に液透過性のトップシートが、内部に前記トップシートを透過した液を吸収する吸収コアが設けられ、外面側に液透過性の外面シートが設けられて、前記吸収コアを通過した液を透過させる液透過領域が形成されており、前記外面側のほぼ全域を覆う液不透過性のバックシートが、前記外面シートに剥離可能に接合されている尿取りパッドが開示されている。
上記特許文献1に記載の吸収性物品では、開口部が形成されたバックシートの外側に、前記開口部を塞ぐための被覆シートが粘着剤層を介して接着されているが、簡易交換用としての使用態様においては、被覆シートの接着不良などにより、吸収体に吸収された尿が開口部を通じてアウターの使い捨ておむつ側に浸出するおそれがあった。また、バックシートの開口部を塞ぐための被覆シートが余分に必要となり、資材コストや製造コストが嵩む要因となっていた。更に、前記被覆シートを取り除いてバックシートの開口部を開口させた補助吸収用としての使用態様において、インナーパッドからアウターへの尿の移行が前記開口部を通じてしか行われないため、尿がスムーズに移行できない欠点があった。
また、上記特許文献2に記載の吸収性物品では、前記バックシートが粘着層及び接着層で外面シートの外面に接合され、前記接着層は、バックシートと外面シートとの間で所定の接着力を発揮でき、またバックシートを手の力で剥がすことができる程度の接着力を有するものであり、しかもバックシートを剥がしたときにほとんど粘着力を呈しないものとされているが、前記接着層の接着力が強すぎると、バックシートを取り外して使用する補助吸収用の使用態様においてバックシートを剥がす作業がしにくくなり、逆に弱すぎると、バックシートを付けたまま使用する簡易吸収用の使用態様において、使用中にバックシートが剥がれたり、この剥がれた箇所から尿が漏れ出たりするおそれがあった。
更に、上記特許文献1、2に記載の吸収性物品では、両側のフラップ部に平面的なギャザーが形成されるものの、肌当接面の両側部に肌側に起立した立体ギャザーが設けられていないため、特に簡易吸収用としての使用態様において表面を幅方向両側に伝う体液が両側部からアウターに漏れるおそれがあった。
そこで本発明の主たる課題は、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れを防止するとともに、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようにした吸収性物品を提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う透液性の第1バックシートと、前記第1バックシートの非肌側を覆う不透液性の第2バックシートとを備え、
前記第1バックシートの非肌側面に粘着剤層が形成されるとともに、この粘着剤層に前記第2バックシートが剥離可能に貼着され、かつ前記トップシート及び第1バックシートの両側部において、前記第2バックシートが前記トップシート及び第1バックシートの両側縁を回り込んで前記トップシートの肌側まで延在して配設されるとともに、この肌側に延在した前記第2バックシートから連続的に設けられたシート材によって、肌側面の両側部で肌側に突出する立体ギャザーが形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
上記請求項1記載の発明では、非肌側が前記不透液性の第2バックシートで覆われるとともに、肌側面の両側部で肌側に突出する立体ギャザーが形成された状態で、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、前記第2バックシートを取り除くとともに前記立体ギャザーも取り除いて、前記第1バックシートの非肌側面に形成された粘着剤層を露出させた状態で、前記アウターの内面に前記粘着剤層を貼着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。
前記簡易交換用としての使用態様においては、前記立体ギャザーによって尿が堰き止められるため、両側からのアウターへの尿漏れが確実に防止できるようになる。また、前記トップシート及び第1バックシートの両側部において、前記第2バックシートが前記トップシート及び第1バックシートの両側縁を回り込んでトップシートの肌側まで延在して配設されているため、この両側縁からの尿の漏れがなくなり、アウターに尿が浸出するのが防止できるようになる。
一方、前記補助吸収用としての使用態様においては、前記立体ギャザーを含めた第2バックシートを取り除く際、前記第2バックシートが前記粘着剤層を剥離可能に覆っているため、第2バックシートを容易に取り除くことができるとともに、不透液性の第2バックシートが完全に取り除かれ、非肌側の全面が透液性の第1バックシートによって覆われるため、アウターに尿がスムーズに移行できるようになる。
前記粘着剤層を形成する範囲としては、前記第1バックシートの液透過機能を損なわない程度の範囲とし、具体的には、第1バックシートの面積の50%以下、好ましくは10〜40%程度で形成するのがよい。また、前記粘着剤層は、吸収性物品の長手方向に沿って幅2〜30mmのものが幅方向にほぼ等間隔に複数本に亘って設けられたストライプ状に配置されるとともに、前後端部に、吸収性物品の幅方向に沿って幅2〜30mmのものが1本ずつ配置されている。前記粘着剤層の目付は、15〜30g/m2であるのが望ましい。
なお、前記立体ギャザーの高さは、装着した際にアウターのテープやパンツの立体ギャザーよりも低い方が良く、特に10〜40mmであることが望ましい。また、この立体ギャザーに配設される弾性伸縮部材のテンションについては、100〜300%(自然状態を0%として、この状態からの伸び率が2倍〜4倍)であるのが望ましい。
請求項2に係る本発明として、前記立体ギャザーを形成するシート材は、少なくとも長手方向の両端部が前記トップシートの肌側面に取り外し可能な状態で接合されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項2記載の発明においては、肌側に突出する立体ギャザーを形成するには、この立体ギャザーを形成するシート材の長手方向両端部をトップシート側に接合しなければならないところ、この接合部として機械的接合手段又は手で剥がすことが可能な程度の接着力を有する粘着接合手段などのような取り外し可能な状態で前記トップシートに接合可能なものを用いている。従って、補助吸収用としての使用態様において、前記立体ギャザーを含めた第2バックシートを簡単に取り外しできるようになる。
請求項3に係る本発明として、前記吸収体の側縁部を越えて側方に延在する前記トップシートと前記第1バックシートとにより前記吸収体の存在しないサイドフラップ部が形成されるとともに、このサイドフラップ部の長手方向中間部に長手方向に沿って弾性伸縮部材を配設した平面ギャザーが形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項3記載の発明では、前記サイドフラップ部に平面ギャザーを形成しているため、脚周りのフィット性が良好になり漏れが防止できるとともに、前記平面ギャザーをトップシートと第1バックシートとの積層部分によって形成しているため、前記簡易交換用としての使用態様と補助吸収用としての使用態様の両方において平面ギャザーとしての機能が発揮できるようにしている。
請求項4に係る本発明として、前記立体ギャザーは、前記第2バックシートによって形成されるか、前記第2バックシートの端部に接合されたギャザー不織布によって形成されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項4記載の発明では、肌側に延在させた第2バックシートによって前記立体ギャザーを形成してもよいし、第2バックシートの先端に接合した別体のギャザー不織布によって形成してもよいことを規定している。前記立体ギャザーを第2バックシートによって形成した場合には、立体ギャザーにおける不透液性が確保できるし、ギャザー不織布によって形成した場合には、任意の特性を有するギャザー不織布を用いることによって吸水性を有したり、肌当たりを柔軟にしたりすることなどが可能となる。
以上詳説のとおり本発明によれば、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れが防止できるとともに、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、インナーパッド1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(インナーパッド1の展開時の左右方向)を意味する。
本発明に係るインナーパッド1は、図1及び図2に示されるように、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウター30の内面に装着して使用されるものであり、具体的には尿取りパッドや失禁パッドなどとして知られるものである。
前記アウター30(使い捨ておむつ)は、図1及び図2に示されるように、不織布などからなる透液性トップシート31と、バックシート32との間に、綿状パルプ等からなる吸収体33を介在させた構造から成る。より具体的には、有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなり使用面側を覆う透液性トップシート31と、不織布からなりおむつの外面側を覆うとともに、おむつ両側部では後述のギャザーシート35とともにサイドフラップ部を構成するバックシート32と、前記透液性トップシート31とバックシート32との間に介在された、綿状パルプ等からなる、たとえば砂時計形状(または長方形状等)のある程度の剛性を有する吸収体33と、前記吸収体33とバックシート32との間に少なくとも吸収体33の全面積を覆うように配設されたポリエチレン等からなる防水フィルム34と、アウター30の両側部に肌側に起立する立体ギャザー36、36を形成するとともに、おむつ両側部では前記バックシート32とともにサイドフラップ部を構成するためのギャザーシート35とから主に構成されている。なお、前記吸収体33は、形状保持と透液性トップシート31を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞されているのが好ましい。
前記インナーパッド1は、図3及び図4に示されるように、綿状パルプ等からなり、たとえば長方形状のある程度の剛性を有するとともに、必要に応じてクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞された吸収体2と、前記吸収体2の肌側(表面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のトップシート3と、前記吸収体2の非肌側(裏面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性の第1バックシート4と、前記第1バックシート4の非肌側を覆うように配設されたポリエチレン等からなる不透液性の第2バックシート5とから主に構成されている。また、前記吸収体2の周囲において、その吸収体2の外縁よりも外側に延出しているトップシート3と第1バックシート4とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体2の存在しない外周フラップ部が形成されている。
前記インナーパッド1は、アウター30の前側領域から後側領域に亘る製品長とされるとともに、アウター30の立体ギャザー36、36間に配置可能であって、アウター30の吸収体33より小さな寸法幅で形成されている。
前記吸収体2は、図示例では平面形状を略長方形状として成形されたものが使用されている。この吸収体2は、形状保持とトップシート3を透過した体液の拡散性向上のために前記被包シートによって被包されているのが好ましい。
前記吸収体2の肌側(上層側)を覆う透液性のトップシート3としては、液を透過する性質を有し、例えば、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、ポイントボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性(=ソフト性)が高い点で優れている。また、トップシート3は、1枚のシートから成るものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせて得た積層シートから成るものであってもよい。透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
前記吸収体2の非肌側(下層側)を覆う透液性の第1バックシート4は、上記透液性のトップシート3と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。
前記第1バックシート4の非肌側(下層側)を覆う第2バックシート5は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。
前記第1バックシート4の非肌側面に適宜の塗布パターンによって粘着剤層6が形成されるとともに、この粘着剤層6に前記第2バックシート5が剥離可能に貼着されている。前記粘着剤層6は、後述する簡易交換用としての使用態様においては前記第2バックシート5に貼着するとともに、補助吸収用としての使用態様においてはアウター30の表面に接着してアウター30に対する位置ずれを防止している。
前記粘着剤層6を形成する範囲としては、前記第1バックシート4の液透過機能を損なわない程度の範囲とし、具体的には、第1バックシート4の面積の50%以下、好ましくは10〜40%程度で形成するのがよい。また、前記粘着剤層6は、インナーパッド1の長手方向に沿って幅2〜30mmで形成されたものが幅方向にほぼ等間隔に複数本に亘って設けられたストライプ状に配置されるとともに、前後端部にそれぞれ、インナーパッド1の幅方向に沿って幅2〜30mmで形成されたものが1本ずつ配置されている。前記粘着剤層6の目付は、15〜30g/m2であるのが望ましい。
前記粘着剤層6を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
前記第2バックシート5は、少なくとも前記粘着剤層6に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を渡航するかスプレー塗布し離型処理したプラスチックシートなどを用いるのが好ましい。なお、特別に離型処理を施さなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。
図示しないが、後述する簡易交換用としての使用態様においてアウター30とのズレ止めを図るため、前記第2バックシート5の外面(非肌面)にも適宜のパターンでズレ止め用の粘着剤層が形成され、個装状態でこの粘着剤層が剥離材によって剥離可能に覆われている。
本インナーパッド1では、図4に示されるように、前記トップシート3及び第1バックシート4の両側部において、前記第2バックシート5がトップシート3及び第1バックシート4の両側縁を回り込んでトップシート3の肌側まで延在して配設されるとともに、この肌側に延在した前記第2バックシート5から連続的に設けられたシート材によって、肌側面の両側部で肌側に突出する立体ギャザーBS、BSが形成されている。図4に示される例では、トップシート3の肌側まで延在した第2バックシート5の内方側端部がほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本又は複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材7が配設され、かつこのトップシート3の肌側まで延在した第2バックシート5の前後端部が、図3及び図5に示されるように、トップシート3の肌側面(上面)に対して手で容易に取り外し可能な状態で接合された簡易取り外し式接合手段8によってトップシート3に接合されることによって、長手方向中間部がインナーパッド1の側縁部を起立基端として内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが形成されている。前記立体ギャザーBS、BSが形成された状態でアウター30に装着することにより、図2に示されるように、アウター30の立体ギャザー36、36とともに二重のギャザーが設けられるようになる。
前記立体ギャザーBSの高さは、装着した際にアウターのテープやパンツの立体ギャザーよりも低い方が良く、特に、インナーパッド1の自然状態で、トップシート3の表面の垂線に対してトップシート3の表面から立体ギャザーBS先端までの長さによって規定される立体ギャザーBSの高さが10〜40mmであることが望ましい。また、前記糸状弾性伸縮部材7のテンションは、100〜300%(自然状態を0%として、この状態からの伸び率が2倍〜4倍)であるのが望ましい。
以上の構成からなる本インナーパッド1では、図3及び図4に示されるように、非肌側が不透液性の第2バックシート5で覆われた状態で、アウター30の内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、図6〜図8に示されるように、前記第2バックシート5を取り除くとともに前記立体ギャザーBSも取り除いて、前記第1バックシート4の非肌側面に形成された粘着剤層6を露出させた状態で、前記粘着剤層6をアウター30の内面に貼着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。
前記簡易交換用としての使用態様においては、前記立体ギャザーBSによって尿が堰き止められるため、両側からアウター30への尿漏れが確実に防止できるようになる。また、インナーパッド1の非肌側が不透液性の第2バックシート5によって完全に覆われるとともに、トップシート3及び第1バックシート4の両側部において、第2バックシート5が前記トップシート3及び第1バックシート4の両側縁を回り込んでトップシート3の肌側まで延在して配設されているため、非肌側面及び両側縁からの尿の漏れがなくなり、アウター30に尿が浸出するのが防止できるようになる。従って、アウター30を汚さずに済むため、インナーパッド1を交換するだけでアウター30を繰り返し使用できるようになる。
また、前記補助吸収用としての使用態様においては、前記立体ギャザーBSを含めた第2バックシート5を取り除く際、トップシート3の肌側まで延在した第2バックシート5の前後端部が前記簡易取り外し式接合手段8によってトップシート3に接合されるとともに、前記第2バックシート5が前記粘着剤層6を剥離可能に覆っているため、第2バックシート5を容易に取り除くことができるとともに、不透液性の第2バックシートが完全に取り除かれるため、非肌側の全面が透液性の第1バックシート4のみによって覆われ、アウター30への尿の移行がスムーズに行われ、インナーパッド1とアウター30が備える各吸収体の吸収性能を有効に活用できるようになる。
さらに、本インナーパッド1では、第2バックシート5に開口などが形成されていないため、この開口を塞ぐシート材を別途設ける必要が無く、資材コスト及び製造コストの上昇を抑えることができるようになる。
前記インナーパッド1の構造について更に詳細に説明すると、前記簡易取り外し式接合手段8は、トップシート3に対して装着中の身体の動きなどによってずれたり外れたりすることはないけれども、補助吸収用として使用する際、第2バックシート5を取り除くのに手で容易に剥がすことができる程度の接合力を有するものであり、例えば、フック要素を備えた機械的接合手段(ファスニングテープ)や、手で剥がすことが可能な程度の接着力を有し、かつ剥がした後にトップシート3側にほとんど粘着力が残らない粘着接合手段とすることが可能である。
前記簡易取り外し式接合手段8は、図3に示される例では、肌側に延在させた第2バックシート5の前後端部のみに設けられているが、図9に示されるように、立体ギャザーBSの起立を損なわない範囲で、長手方向中間部の概ね吸収体2の側縁位置からトップシート3の側端までの領域に長手方向に沿って設けるようにしても構わない。この場合、立体ギャザーBSが吸収体2の側縁位置を起立基端として肌側に突出するようになる。
また、本インナーパッド1の他の形態例として、図10及び図11に示されるように、吸収体2の側縁部を越えて側方に延在するトップシート3と第1バックシート4とにより吸収体2の存在しないサイドフラップ部9、9が形成されるとともに、このサイドフラップ部9の長手方向中間部に長手方向に沿って1本又は複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材10、10を配設して平面ギャザーHS、HSを形成することができる。このようにサイドフラップ部9に平面ギャザーHSを形成することによって、脚周りのフィット性が良好になり漏れが防止できるとともに、前記平面ギャザーHSをトップシート3と第1バックシート4との積層部分に形成することによって、前記サイドフラップ部9が第2バックシート5によって覆われた状態で使用する簡易交換用としての使用態様と、前記第2バックシート5を取り除いた状態で使用する補助吸収用としての使用態様とのいずれにおいても、平面ギャザーHSとしての機能が発揮できるようになる。なお、前記平面ギャザーHSを形成したインナーパッド1は、図1に示されるような立体ギャザー36が形成されたアウター30より、むしろこのような立体ギャザーが備えられないアウターに装着する場合の方が有効である。
前記平面ギャザーHSは、インナーパッド1の長手方向の中間部、特に立体ギャザーBSが形成される長手範囲内、すなわち前後端部に設けられた簡易取り外し式接合手段8、8の間に形成するのが好ましい。これにより、平面ギャザーHSが股間部の脚周りにフィットしやすくなる。
前記第2バックシート5は、前記平面ギャザーHSにおいて、前記簡易取り外し式接合手段8と同様の手段によって、前記トップシート3及び第1バックシート4の両方又はいずれか一方に接合してもよいし、接合しなくてもよい。どちらかというと、接合しない方がギャザーとしての機能が発揮しやすいので好ましい。
前記粘着剤層6は、図7に示されるように、第1バックシート4の液透過機能を損なわない程度の範囲に塗布されている。具体的には、第1バックシート4の面積の50%以下、好ましくは10%〜40%程度の面積で形成するのがよい。
また、前記粘着剤層6は、吸収体2のほぼ周縁に沿って連続する周縁粘着剤層6Aを有するように形成するのが好ましい。前記周縁粘着剤層6Aを設けることによって、簡易交換用としての使用態様において、第1バックシート4と第2バックシート5との間を尿が拡散して外部に漏れるのが防止できるようになる。図7に示される例では、前後端部にそれぞれ幅方向に沿う粘着剤層6、6が設けられるとともに、前後端部がこれらの粘着剤層6、6に接続するように長手方向に沿う5本の粘着剤層6、6…が幅方向にほぼ等間隔に配列されている。サイドフラップ部9に前記平面ギャザーHSを形成する場合、長手方向に沿う粘着剤層6、6…は、平面ギャザーの機能を損なわないように、吸収体2が介在する本体部分に配置し、サイドフラップ部9には配置しないのが好ましい。一方、前後端部の幅方向に沿う粘着剤層6、6は、サイドフラップ部9の前後端部のめくれなどを防止するため、左右端縁まで連続して配置するのが好ましい。
前記立体ギャザーBSは、上述の通り、図4に示されるように、肌側に延在させた第2バックシート5によって形成することができるし、図12示されるように、肌側に延在させた第2バックシート5の端部に別体のギャザー不織布11を接合し、このギャザー不織布11によって形成することもできる。前記立体ギャザーBSを第2バックシート5によって形成した場合には、立体ギャザーBSにおける不透液性が確保できるし、別体のギャザー不織布11によって形成した場合には、任意の特性を有する前記ギャザー不織布11を用いることによって、吸水性を有したり、肌当たりを柔軟にしたりすることなどが可能となる。また、図示しないが、第2バックシート5を立体ギャザーBSの先端まで延在させた上で、立体ギャザーBS部分において第2バックシート5の肌当接面及び非肌当接面の両方又は肌当接面のみに、肌当たりを良くすることなどを目的として不織布を積層状態で接合するようにしてもよい。