しかしながら、上記特許文献1に記載の吸収性物品では、液不透過性のバックシートに予め液を通過させる開口部が形成されているため、吸収性物品の製造工程において、バックシートに開口部を形成する工程が余計に必要になるとともに、バックシートと吸収体とを接合する際に前記開口部を避けて接着剤を塗布しなければならないため、接着剤の塗布範囲が制限されるという、製造工程上の制約があった。
また、上記特許文献2に記載の吸収性物品では、バックシートに線状の引裂線を形成する分離手段として、ミシン目状の切り込み線などが挙げられているが、簡易交換用としての使用態様において、このミシン目を通じて吸収体に吸収された尿がアウターの使い捨ておむつ側に浸出するおそれがあった。
そこで本発明の主たる課題は、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れ出しを防止するとともに、製造工程が簡略化できるようにした吸収性物品を提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う防水シートとを備え、
前記防水シートの少なくとも着用者の体液排出部を含む領域に、前記吸収体側に固定されない開口予定部分が設けられ、かつ前記防水シートの非肌側に、粘着剤層を介して前記開口予定部分より広い領域を覆うとともに、前記開口予定部分より外側の領域では前記粘着剤層を剥離可能に覆い、前記開口予定部分では前記粘着剤層に剥離不能に接合された被覆シートが配設され、前記被覆シートの剥離により、前記防水シートが前記開口予定部分の周囲に沿って引き裂かれ、開口が形成されるようにしたことを特徴とする吸収性物品が提供される。
上記請求項1記載の発明では、非肌側が前記防水シートで覆われるとともに、前記防水シートの非肌側に粘着剤層を介して前記開口予定部分より広い領域を覆う被覆シートが配設された状態で、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、前記被覆シートの剥離により、前記防水シートが前記開口予定部分の周囲に沿って引き裂かれ、防水シートに開口を形成した状態で、使い捨ておおむつなどのアウターの内面に装着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。
前記簡易交換用としての使用態様においては、前記防水シートの非肌側に開口予定部分より広い領域を覆う被覆シートが粘着剤層を介して配設されるため、防水シートに開口予定部分の周囲に沿ってミシン目等の引裂線を形成した場合でも、この引裂線から浸出した尿がアウターに漏れ出すのが防止できるようになる。
また、補助吸収用としての使用態様においては、前記被覆シートを剥離することにより、防水シートが前記開口予定部分の周囲に沿って引き裂かれ、開口が形成されるため、この開口を通じてアウターへの尿の移行がスムーズに行われるようになる。
また、本吸収性物品では、防水シートに予め開口を設けずに、補助吸収用として使用するときに前記被覆シートを剥離することによって開口を形成するようにしているため、防水シートに開口を設ける製造工程を省くことができ、製造工程が簡略化できるようになる。
請求項2に係る本発明として、前記開口予定部分の周囲に沿って引裂線が形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項2記載の発明は、補助吸収用として使用するため被覆シートを剥離する際、前記開口予定部分の周囲に沿った防水シートの引き裂きを容易化するための第1の手段であり、前記開口予定部分の周囲に沿ってミシン目等の引裂線を形成するようにしたものである。これにより、前記引裂線に沿って防水シートを容易に引き裂くことができるようになる。なお、前述の通り、簡易交換用としての使用態様では、前記引裂線の外面側が粘着剤層を介して被覆シートによって覆われているため、引裂線から浸み出した尿がアウターに漏れることはない。
請求項3に係る本発明として、前記開口予定部分より外側の前記防水シートが前記吸収体側に固定されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項3記載の発明は、補助吸収用として使用するため被覆シートを剥離する際、前記開口予定部分の周囲に沿った防水シートの引き裂きを容易化するための第2の手段であり、防水シートを前記開口予定部分で吸収体側に固定せず、開口予定部分より外側において吸収体側に固定するようにしたものである。これによって、防水シートが吸収体側に固定される領域と固定されない領域との境界線に沿って防水シートを容易に引き裂くことができるようになる。
請求項4に係る本発明として、前記被覆シートと前記開口予定部分の防水シートとの接合強度は、前記開口予定部分の周囲に沿う防水シートの引裂強度より大きく設定されている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項4記載の発明では、前記被覆シートと前記開口予定部分の防水シートとの接合強度を、前記開口予定部分の周囲に沿う防水シートの引裂強度より大きくすることにより、補助吸収用として使用するため被覆シートを剥離する際、被覆シートと防水シートとの接合が剥離することなく、防水シートが開口予定部分の周囲に沿って引き裂かれるようになり、防水シートに開口がスムーズに形成できるようになる。
請求項5に係る本発明として、前記被覆シートは、前記開口予定部分より外側の当接面に剥離処理が施され、前記開口予定部分との当接面には剥離処理が施されていない請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項5記載の発明では、防水シートの非肌側に粘着剤層を介して配設された被覆シートが、開口予定部分より外側の領域で前記粘着剤層を剥離可能に覆い、開口予定部分で前記粘着剤層に剥離不能に接合されるようにするため、開口予定部分より外側の当接面に剥離処理を施し、開口予定部分との当接面には剥離処理を施さないようにしている。
請求項6に係る本発明として、前記粘着剤層は、前記被覆シートのほぼ全面に設けられるか、前記開口予定部分の周囲において内外方向に間隔をあけた中央部と外周部とにそれぞれ設けられている請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項6記載の発明では、被覆シートのほぼ全面に前記粘着剤層を設けることによって、開口予定部分の全面が前記粘着剤層で覆われるため、開口予定部分の周囲に沿って防水シートを引き裂きやすくなる。一方、前記粘着剤層を開口予定部分の周囲に沿って内外方向に間隔をあけた中央部と外周部とにそれぞれ設けることによって、例えば開口予定部分の周囲に沿ってミシン目等の引裂線を形成したとき、粘着剤層によって引裂線が引き裂きにくくなるのが防止できるようになる。
請求項7に係る本発明として、前記防水シートの非肌側に、前記開口予定部分と一致する開口部が形成されたバックシートが接合されるとともに、前記被覆シートが前記バックシートの開口部を通して前記防水シートの開口予定部分と剥離不能に接合されている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項7記載の発明では、防水シートの非肌側に、開口予定部分と一致する開口部が形成されたバックシートを接合し、このバックシートの開口部を通して被覆シートを防水シートの開口予定部分と剥離不能に接合しているため、開口予定部分より外側の防水シートが前記バックシートによって補強され、防水シートが開口予定部分の周囲に沿って引き裂きやすくなる。
以上詳説のとおり本発明によれば、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れ出しが防止できるとともに、製造が簡略化できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、インナーパッド1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(インナーパッド1の展開時の左右方向)を意味する。
本発明に係るインナーパッド1は、図1及び図2に示されるように、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウター30の内面に装着して使用されるものであり、具体的には尿取りパッドや失禁パッドなどとして知られるものである。
前記アウター30(使い捨ておむつ)は、図1及び図2に示されるように、不織布などからなる透液性トップシート31と、バックシート32との間に、綿状パルプ等からなる吸収体33を介在させた構造から成る。より具体的には、有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなり使用面側を覆う透液性トップシート31と、不織布からなりおむつの外面側を覆うとともに、おむつ両側部では後述のギャザーシート35とともにサイドフラップ部を構成するバックシート32と、前記透液性トップシート31とバックシート32との間に介在された、綿状パルプ等からなる、たとえば砂時計形状(または長方形状等)のある程度の剛性を有する吸収体33と、前記吸収体33とバックシート32との間に少なくとも吸収体33の全面積を覆うように配設されたポリエチレン等からなる防水フィルム34と、アウター30の両側部に肌側に起立する立体ギャザー36、36を形成するとともに、おむつ両側部では前記バックシート32とともにサイドフラップ部を構成するためのギャザーシート35とから主に構成されている。なお、前記吸収体33は、形状保持と透液性トップシート31を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞されているのが好ましい。
前記インナーパッド1は、図3及び図4に示されるように、綿状パルプ等からなり、たとえば略砂時計状のある程度の剛性を有するとともに、必要に応じてクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞された吸収体2と、前記吸収体2の肌側(表面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のトップシート3と、前記吸収体2の非肌側を覆うように配設されたポリエチレン等からなる不透液性の防水シート4とから主に構成されている。また、前記吸収体2の周囲において、その吸収体2の外縁よりも外側に延出しているトップシート3と防水シート4とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体2の存在しない外周フラップ部が形成されている。
前記インナーパッド1は、アウター30の前側領域から後側領域に亘る製品長とされるとともに、アウター30の立体ギャザー36、36間に配置可能であって、アウター30の吸収体33より小さな寸法幅で形成されている。
前記吸収体2は、たとえばフラッフ状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体2を囲繞するクレープ紙を設ける場合には、結果的にトップシート3と吸収体2との間にクレープ紙が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
前記吸収体2は、図示例では平面形状を略砂時計状として成形されたものが使用され、股下部では吸収体の幅寸法を狭めることにより股間部への当たりを弱くし着用者にゴワ付き感を与えないようにしているが、略長方形状として成形されたものを使用してもよい。この吸収体2は、形状保持とトップシート3を透過した体液の拡散性向上のために前記被包シートによって被包されているのが好ましい。
前記吸収体2の肌側(上層側)を覆う透液性のトップシート3としては、液を透過する性質を有し、例えば、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、ポイントボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性(=ソフト性)が高い点で優れている。また、トップシート3は、1枚のシートから成るものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせて得た積層シートから成るものであってもよい。透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
前記吸収体2の非肌側(下層側)を覆う防水シート4は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。前記防水シート4の外縁は、インナーパッド1の外縁とほぼ一致している。
本インナーパッド1においては、前記防水シート4の少なくとも着用者の排尿口部Hを含む領域に、前記吸収体2側に固定されない開口予定部分10が設けられ、かつ前記防水シート4の非肌側に、被覆シート固定用粘着剤層13を介して前記開口予定部分10より広い領域を覆うとともに、前記開口予定部分10より外側の領域では前記被覆シート固定用粘着剤層13を剥離可能に覆い、前記開口予定部分10では前記被覆シート固定用粘着剤層13に剥離不能に接合された被覆シート11が配設されている。そして、前記被覆シート11の剥離により、前記防水シート4が前記開口予定部分10の周囲に沿って引き裂かれ、防水シート4に開口14が形成されるようにしている。
本インナーパッド1では、図3及び図4に示されるように、非肌側が防水シート4で覆われるとともに、防水シート4の非肌側に前記被覆シート固定用粘着剤層13を介して開口予定部分10より広い領域を覆う被覆シート11が配設された状態で、アウター30の内面に装着して使用する簡易交換用としての使用態様と、図5〜図7に示されるように、前記被覆シート11の剥離により、前記防水シート4が開口予定部分10の周囲に沿って引き裂かれ、防水シート4に開口14を形成した状態で、アウター30の内面に装着して使用する補助吸収用としての使用態様とが選択可能となっている。
前記開口予定部分10は、前記防水シート4において、少なくとも着用者の排尿口部Hを含む領域、好ましくは着用者の排尿口部Hより広い縦長の領域に設けられた、前記吸収体4側に固定されない部分のことであり、防水シート4の幅方向及び長手方向の中間部に略矩形状、円形状、楕円形状等の外形で形成された部分である。前記開口予定部分10の外縁は必ずしも明確である必要はないが、後述するように開口予定部分10の周囲に沿って防水シート4に引裂線15が形成される場合には、この引裂線15が開口予定部分10の外縁であり、防水シート4が前記開口予定部分10より外側において防水シート固定用粘着剤層12により吸収体2側に固定される場合には、この防水シート固定用粘着剤層12の内縁又はこれより内側の近傍に沿った位置が開口予定部分10の外縁である。また、後述するように、被覆シート11のほぼ全面に被覆シート固定用粘着剤層13が設けられた場合において、被覆シート11に剥離処理を施した外周部分と、剥離処理を施さない中央部分との境界を開口予定部分10の外縁と定義することも可能である。
前記開口予定部分10を画成する第1の手段として、図3に示されるように、前記開口予定部分10の周囲に沿って引裂線15を形成することができる。これにより、前記引裂線15に沿って防水シート4を容易に引き裂くことができるようになる。前記引裂線15は、ミシン目、スリット、切り込み線、圧縮線などの公知の技術で形成される線状弱化領域であり、特に、タイ:カット=1〜5mm:2〜5mmのミシン目であることが好ましい。前記引裂線15は、防水シート4の長手方向及び幅方向の中間部に閉合するパターンで形成されている。前記引裂線15を形成する場合、前記引裂線15の線上及びその近傍において、防水シート4と被覆シート11とを接合する被覆シート固定用粘着剤層13や防水シート4を吸収体2側に固定する防水シート固定用粘着剤層12を設けてもよいが、設けない方が引裂線15での引き裂きが容易となるため好ましい。
前記開口予定部分10を画成する第2の手段としては、図8に示されるように、前記防水シート4を前記開口予定部分10より外側において防水シート固定用粘着剤層12によって吸収体2側に固定することによって形成することができる。これによって、防水シート4が吸収体2側に固定される領域と固定されない領域との境界線に沿って防水シート4を容易に引き裂くことができるようになる。前記防水シート固定用粘着剤層12は、開口予定部分10の近傍では周囲に沿って連続して形成するのが好ましく、それ以外の領域では連続的又は間欠的に形成することができる。
前記防水シート固定用粘着剤層12を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
前記開口予定部分10は、図3に示されるように、防水シート4の中央部に1箇所設けるのが好ましいが、インナーパッド1の長手方向及び幅方向のいずれか一方又は両方に離間する2箇所以上に設けることも可能である。前記開口予定部分10の大きさとしては、長手方向の寸法が30〜500mm、幅方向の寸法が10〜100mmとするのが好ましい。
前記被覆シート11としては、上記防水シート4と同様に、液不透過性の性質を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。前記被覆シート11は、防水シート4より引裂強度が大きなものを用いるのが好ましい。これにより、被覆シート11を剥離する際、被覆シート11が引き裂かれることなく、防水シート4を確実に引き裂くことができるようになる。
前記被覆シート11は、図3及び図9に示されるように、前記開口予定部分10より広い領域を覆う大きさで形成されている。つまり、開口予定部分10との当接面の周囲により外側に延在する外周延在部11bを有するように形成されている。この外周延在部11bの幅としては、防水シート4にミシン目等の引裂線15を設けた場合、この引裂線15から浸出した尿を十分に堰き止めることができる幅で設けられ、具体的には5〜15mm程度とするのが好ましい。前記被覆シート11の形状は、開口予定部分10より外側に延在する外周延在部11bが開口予定部分10の全周に亘ってほぼ等幅に形成されるように、開口予定部分10と相似形をなすように形成するのが好ましい。また、前記被覆シート11は、インナーパッド1の長手方向の一方側端に、一部が外方側に延出する摘み部11aを設けるのが好ましい。図示例では、前記摘み部11aに被覆シート固定用粘着剤層13が介在しないようにしているが、この摘み部11aにも被覆シート固定用粘着剤層13を介在し、摘み部11aが被覆シート固定用粘着剤層13を剥離可能に覆うようにしてもよい。
前記被覆シート11は、図9に示されるように、被覆シート固定用粘着剤層13を介して防水シート4の非肌側に設けられ、前記開口予定部分10より外側の領域では前記被覆シート固定用粘着剤層13を剥離可能に覆い、前記開口予定部分10では前記被覆シート固定用粘着剤層13に剥離不能に接合されている。このように構成するには、前記被覆シート11として被覆シート固定用粘着剤層13に対して剥離不能に接合する性質を有する素材を用いた上で、前記開口予定部分10より外側の外周延在部11bに剥離処理が施され、前記開口予定部分10との当接面となる中央部分には前記剥離処理が施されないようにすることができる。前記剥離処理は、前記開口予定部分10より外側に配置された被覆シート固定用粘着剤層13に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布することによって行うことができる。なお、特別に剥離処理をしなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。また、前記剥離処理は、被覆シート11を構成するシート材に直接施してもよいし、剥離処理が施された別体のシート材又は実質的に粘着力の低下を招かない素材を被覆シート11の所定の領域に貼着することにより成してもよい。
前記被覆シート固定用粘着剤層13を形成する粘着剤としては、上記防水シート固定用粘着剤層12と同様に、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
前記被覆シート11と前記開口予定部分10の防水シート4との接合強度は、前記開口予定部分10の周囲に沿って防水シート4を引き裂いたときの引裂強度より大きく設定するのが好ましい。これにより、補助吸収用として使用するため剥離シート11を剥離したとき、剥離シート11と防水シート4との接合が剥離することなく防水シート4が開口予定部分10の周囲に沿って引き裂かれるようになり、防水シート4に開口14がスムーズに形成できるようになる。
前記被覆シート11と前記開口予定部分10の防水シート4との接合強度は、50〜250gf/25mm、好ましくは90〜190gf/25mm程度とするのがよい。前記接合強度は、接着剤を用いる場合には接着剤の種類とその塗布量により調整することができる。前記接合強度(180度剥離強度)の測定は、引張試験機(例えばSHIMADZU社製のAOUTGRAPHAGS−G100N)を用いて測定することができる。測定方法は、25mm×130mmに裁断した試料を作成し、あらかじめ長手方向5cmを剥がして引き剥がし口を形成しておき、20℃条件下において、チャック間50mm、引張速度300mm/minの条件で、前述の引き剥がし口から30mmの長さを引張試験機にて剥離して測定する。試料は長手方向が製品タテ方向となるものと、長手方向が製品ヨコ方向となるものの二種類を作成し、それぞれについて測定した値を平均して測定値とする。
前記防水シート4は、JIS L1096に準じた引裂試験で測定した引裂強度が10〜50gf/30mm程度のものを使用するのが好ましい。なお、引裂試験は同JISに規定されるA−1法(シングルタング法)とされる。このA−1法(シングルタング法)は、10cm×25cmの試験片を縦方向及び横方向にそれぞれ3枚採取し、短辺の中央の辺に直角に10cmの切れ目を入れた後、幅5cm以上のクランプを持つ引張試験機を用いて、試験片のつかみ間の距離を10cmとし、各舌片を上下のクランプと直角に挟む。引張速度は10cm/minとし、縦方向及び横方向に引き裂くときの最大荷重(N)を測るものである。
前記被覆シート固定用粘着剤層13の目付としては、15〜30g/m2程度とするのがよい。15g/m2未満では、防水シート4に引裂線15を設けた場合この引裂線15から浸出した尿を堰き止める効果が低くなる。
前記被覆シート固定用粘着剤層13の形成パターンとしては、図9に示されるように、前記摘み部11aを除く被覆シート11の全面に設けることができる。このパターンでは、被覆シート11の開口予定部分10に対応する中央部から外周延在部分にかけて被覆シート固定用粘着剤層13が連続的に設けられるようになる。これにより、開口予定部分10の全面が被覆シート固定用粘着剤層13で覆われるため、開口予定部分10の周囲に沿って防水シート4を引き裂きやすくなる効果がある。
また、前記被覆シート固定用粘着剤層13の形成パターンの変形例としては、図10に示されるように、開口予定部分10の周囲において内外方向に間隔をあけた中央部13aと外周部13bとにそれぞれ設けたパターンとすることも可能である。このパターンでは、例えば開口予定部分10の周囲に沿ってミシン目等の引裂線15を形成したとき、仮にこの引裂線15に重ねて粘着剤層を設けた場合には粘着剤層の粘着力によって引裂線15で引き裂きにくくなる問題が解消できるようになる。中央部13aと外周部13bとの離間幅は、1〜10mm程度とするのがよい。
前記被覆シート11を剥離するには、図7に示されるように、摘み部11aを指で摘んで、端部から徐々に外方側にめくり上げるようにする。これにより、被覆シート11の開口予定部分10に対応する領域より外側の外周延在部分では、被覆シート11が被覆シート固定用粘着剤層13から剥離し、被覆シート11の開口予定部分10に対応する中央部分では、前記被覆シート固定用粘着剤層13によって被覆シート11に剥離不能に接合された開口予定部分10の防水シート4が引き裂かれて、被覆シート11とともに取り除かれるようになる。これによって、防水シート4に開口14が形成されるとともに、その開口14の周囲に被覆シート固定用粘着剤層13の外周部分が残るようになる。この被覆シート固定用粘着剤層13の外周部分は、アウター30に装着する際のズレ止め粘着剤層として利用することができる。
ところで、前記開口予定部分10の形状は、図3に示されるように、略矩形状としてもよいし、図11に示されるように、(A)円形、(B)楕円形、(C)菱形、(D)多角形などで形成することもできる。長手方向端部からの引裂を容易にするため、縦長の形状で形成するのが好ましく、引き裂き開始端の形状が狭くなった(B)楕円形や(C)菱形が寄り好ましい。
以上の構成からなる本インナーパッド1においては、前記被覆シート11を剥離せずにアウター30に装着する簡易交換用としての使用態様において、前記開口予定部分10より広い領域が被覆シート固定用粘着剤層13によって覆われているため、開口予定部分10の周囲に沿って防水シート4にミシン目等の引裂線15を形成した場合に、この引裂線15から尿が浸出しても、前記被覆シート固定用粘着剤層13によって堰き止められるのでアウター30に尿が漏れ出すのが防止できるようになる。
また、補助吸収用としての使用態様においては、前記被覆シート11を剥離することにより、防水シート4が開口予定部分10の周囲に沿って引き裂かれ、開口14が形成されるため、この開口14を通ってアウター30に尿がスムーズに移行できるようになる。
更に、本インナーパッド1では、防水シート4に予め開口を設けず、補助吸収用として使用する場合に被覆シート11を剥離することにより開口14を形成するようにしているため、予め防水シート4に開口を設ける製造工程を省くことができ、製造工程が簡略化できるようになる。
次いで、前記インナーパッド1の変形例について説明すると、図12に示されるように、防水シート4の非肌側に、前記開口予定部分10と一致する開口部17が形成されたバックシート16が接合されるとともに、前記被覆シート11がバックシート16の開口部17を通して防水シート4の開口予定部分10と剥離不能に接合されるようにすることができる。前記防水シート4にバックシート16を接合することによって、開口予定部分10より外側の防水シート4が前記バックシート16によって補強され、防水シート4が開口予定部分10の周囲に沿って引き裂きやすくなる。前記バックシート16としては、上記トップシート3と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどを用いてもよいし、上記防水シート4と同様に、プラスチックフィルムやラミネート不織布などを用いてもよい。前記防水シート4とバックシート16とは、特にバックシート16の開口部17の周囲に沿って連続した接合部によって接合され、それ以外の領域でもほぼ全面に亘って接合されるようにするのが好ましい。前記被覆シート固定用粘着剤層13の外周部分は前記バックシート16に設けられ、前記被覆シート11によって剥離可能に覆われている。