以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものである。
<吸収性物品の基本構造>
まず、本発明の一形態による吸収性物品の基本的な構造を、生理用ナプキンの例に基づき説明する。図1に、吸収性物品1の部分破断平面図を示す。図1に示すように、吸収性物品1は、裏面シート2と、表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有している。吸収性物品1の装着時には、表面シート3側が肌に触れる側(肌側又は表面側)となり、裏面シート2側が下着に固定される側(下着側又は裏面側)となる。吸収性物品1の表面シート3側の両方の側部には、吸収体4の幅方向の両縁部と平面視で重なるように、長手方向に延びるサイド不織布7、7が設けられていてもよい。
図1に示すように、吸収性物品1は、長手方向D1に所定の長さを有し、長手方向D1に直交する幅方向D2に所定の幅を有する、全体として長手方向に細長い形状を有していてよい。吸収性物品1の幅は、図示の例では略一定となっているが、長手方向にわたって変化していてもよい。図2Aに示すように、吸収性物品1は、長手方向D1に延びる中心線に対して略線対称の形状を有することができる。また、吸収性物品1の構成(吸収体4の厚みや密度等を含む)は、上記中心線に対して略線対称であってもよいし、非対称であってもよい。
吸収性物品1の長手方向D1の長さ(全長)は、特に限定されないが、150~450mm程度とすることができる。幅方向D2の長さ(幅)も、特に限定されないが、50~200mm程度とすることができる。
図示の例による吸収性物品1には設けられていないが、吸収性物品には、長手方向D1中央付近で両側方から延びる、いわゆるウィングが設けられていてもよい。このようなウィングは、装着時に裏面側へと折り込まれて下着に装着し、吸収性物品1をより確実に下着に固定するためのものである。
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
吸収体4の厚みは、0.3~30mm程度、好ましくは1.0~15mmの程度とすることができる。吸収体4は全体として、全面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口に対応する領域及びその近傍の領域を膨出させた構造とすることもできる。
吸収体4は、その形状保持等のために、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート5によって包まれていてもよい。被包シート5によって吸収体4が包まれていることによって、吸収体4のよれや割れを防止することができる。被包シート5としては、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。着色された被包シート5を用いた場合、被包シート5の色は、表面シート3側からも薄い色として反映され得る。そのため、排出された体液の色を、その反映された被包シート5の色に紛れさせて目立たなくすることができる。被包シート5は、例えば、体液の色の補色に着色することができる。例えば、経血の吸収を目的として構成された吸収性物品(生理用ナプキン等)においては、被包シートを、赤色の補色である緑色に着色することができる。
サイド不織布7としては、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適宜の撥水処理又は親水処理を施した不織布素材を用いることができる。その不織布素材は、例えば、天然繊維、合成繊維又は再生繊維等であってよい。サイド不織布7の撥水処理には、シリコーン系、パラフィン系等の撥水剤を用いることができる。
吸収性物品1の長手方向の端縁部では、裏面シート2と表面シート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収性物品1の両側方の端縁部では、サイド不織布7、7と裏面シート2とが上記接着手段の少なくとも1つによって接合されている。
なお、吸収性物品1には、表面シート3側から裏面シート2側に窪む圧搾溝(フィットエンボスともいう)が形成されていてもよい。圧搾溝は、吸収体4の上に表面シート3を積層させて得られた積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。例えば、積層体の表面シート3側に凸状ロールが、吸収体4側に平坦なロールがそれぞれ配置されるようにして、両ロールによって加圧することができる。
図1に示すように、吸収性物品1の裏面シート2側には、ズレ止め材9を設けることができる。ズレ止め材9は、吸収性物品1を下着に装着して使用している間、吸収性物品1を下着からズレることを抑制するための要素である。よって、図示のように、裏面シート2に、長手方向D1及び幅方向D2の端縁部以外の領域に少なくとも形成されていることが好ましい。裏面シート2側のズレ止め材9には、ズレ止め材9を少なくとも部分的に覆い、且つズレ止め材9に対して容易に剥離可能な剥離シート(後述)が設けられていてよい。
<第1実施形態>
図2Aに、図1に示した吸収性物品1Aを裏面シート側(下着側又は裏面側)から見た平面図を示す。図2Aに示すように、吸収性物品1Aは、裏面シート2側に、ズレ止め材9を備えている。また、吸収性物品1Aは、ズレ止め材9を部分的に覆う剥離シート30Aをさらに備えている。
ズレ止め材に用いられる素材としては、使用時(装着時)に吸収性物品1Aを下着に対するズレを抑制することができ、且つ使用後には、吸収性物品1Aを下着から容易に取り外すことのできるものであれば、特に限定されない。ズレ止め材9は、粘着性又は非粘着性の層として形成することができる。粘着剤層(粘着部)としては、例えば、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤及びこれらの組合せを主成分とするものが好適に使用される。
スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体が好ましい。また、粘着付与剤及び可塑剤としては、常温で固体のものを用いることができる。粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステル等のポリマー可塑剤が挙げられる。
非粘着性の層(非粘着部)として形成されるズレ止め材9の材料としては、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン-イソプレンゴム等をベースポリマーとする材料を単独で又は組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シリコーンゴムあるいはSIS、SBSの水添タイプエラストマーが好ましい。
上記のズレ止め材9を裏面シート2へ設ける方法としては、特に限定されないが、例えば、ホットメルトコーターを用いた溶融塗工等が挙げられる。
また、非粘着性のズレ止め材9として、メカニカルファスナーのフック材を用いることもできる。フックの形状としては、下着に係止されるものであれば特に制限はなく、鈎状、キノコ状等、各種公知の形状のものを用いることができる。
図1及び図2Aの例では、ズレ止め材9は、長手方向D1及び幅方向D2の端縁部以外の領域に、長手方向D1及び幅方向D2の中央部分を含む1つの領域として形成されている。しかし、ズレ止め材9の配置は、図示のものに限られず、吸収性物品の構造及び使用目的等に応じて、後述(図5A及び図5B)のようにズレ止め材9の配置領域が分割されていてもよい。また、ズレ止め材9は、長手方向D1及び/又は幅方向D2の端縁部にも設けられていてもよい。
図2Aに示すように、本形態による吸収性物品1Aは、ズレ止め材9に重ねられた剥離シート30Aをさらに備えている。剥離シート30Aは、ズレ止め材9を部分的に覆っており、使用時に使用者の動作によって剥がして取り去ることができるものである。図示の形態では、剥離シート30Aに開口32、32が形成されており、この開口32、32を通してズレ止め材9が部分的に露出している。そして、この剥離シート30Aを剥がすことによって、裏面シート2側のズレ止め性を変更することができる。
ここで、上記「ズレ止め性」は、吸収性物品の使用時に下着に装着した時に、その下着に対する吸収性物品のズレを抑制する能力を指す。そして、裏面シート側での「ズレ止め性」は、ズレ止め材の露出面積を変えることで変更することができるし、露出させるズレ止め材の材料を変える等して、単位面積当たりのズレ止め性を変えることで変更することができる。「ズレ止め性」は、例えば、ズレ止め材が粘着部からなる場合には、粘着性を指し得る。吸収性物品の裏面シート側の粘着性は、粘着材料の面積の大きさ、及び粘着部の単位面積当たりの粘着力によって決まる。
以下、図2A、図2B、及び図3(a)~(c)を参照しながら、本形態による吸収性物品の構成及び使用例について、より詳細に説明する。図2Bは、本形態による吸収性物品1Aの剥離シート30Aが剥がされている状態を示す図であり、図3(a)~(c)は、図2AのI-I線断面図であり、吸収性物品1Aの剥離シート30Aが剥がされる工程を順に示す図である。
上述のように、図2A及び図3(a)に示す剥離シート30Aが設けられている状態(第1状態と呼ぶ)では、ズレ止め材9の一部が露出している。この第1状態では、ズレ止め材9全体のうち、開口32、32から露出した部分のみがズレ止め機能を発揮し、剥離シート30Aによって覆われた部分はズレ止め材として機能しない。よって、この第1状態では、吸収性物品1Aに含まれるズレ止め材9の一部は利用されるが全部は利用されないので、ズレ止め性の比較的小さい状態となっている。使用者は、第1状態(図2A及び図3(a))で吸収性物品1Aの裏面シート2側を下着に装着して使用することによって、裏面シート2側のズレ止め性が過度に大きくなることを防ぐことができる。
図2B及び図3(b)は、剥離シート30Aが剥がされている途中の状態を示す図である。また、図3(c)は、剥離シート30Aが剥がされた後の状態を示す図である。図3(c)に示すように、剥離シート30Aを剥がした後には、第1状態では露出していなかったズレ止め材9の部分を露出させることができる。よって、剥離シート30Aを剥がした状態(第2状態と呼ぶ)では、ズレ止め材9の露出面積を第1状態より増やすことができる。つまり、この第2状態は、第1状態よりズレ止め性が大きい状態となっている。使用者は、第2状態(図3(c))で吸収性物品1Aの裏面シート2側を下着に装着して使用することによって、裏面シート2側のズレ止め性を高めることができる。
このように、本形態によれば、剥離シート30Aを剥がすという簡単な動作によって、使用者は、下着の種類(下着の、吸収性物品が取り付けられる部分の素材の種類)に応じて、第1状態及び第2状態のいずれにするかを選択し、裏面シート2側に所望のズレ止め性を容易に作り出すことができる。
一般に、生理用ショーツ等と呼ばれる専用下着には、少なくともクロッチ部分に防液性シート等の特別な素材が配置されている一方、通常の下着は、クロッチ部等にも他の部分と同様の編物や織物等の生地が用いられている。このように、使用する下着によって、吸収性物品が装着される面の素材が異なるため、下着によっては吸収性物品の従来のズレ止め材が適さない場合がある。例えば、ズレ止め材が粘着部からなる場合、通常の下着では、生地の構成や繊維材料によっては、下着に対するズレ止め材の粘着力が過度に大きくなる傾向がある。そのため、使用後に吸収性物品を剥がしにくくなることがある。また、長時間の使用後等に、ズレ止め材の一部が下着の素材表面に残ってしまう現象(糊残り)が生じることもある。しかしながら、ズレ止め材を通常の下着に適合するように構成した場合には、専用下着に対して十分な粘着力が得られない場合がある。
これに対し、本形態によれば、専用下着及び通常の下着のいずれを使用した場合にも、適応できる吸収性物品を提供することができる。例えば、通常の下着を使用する場合、使用者は、剥離シート30Aを剥がさずに、ズレ止め材9の一部が剥離シート30Aで覆われていて、露出しているズレ止め材9が少ない第1状態(図2A及び図3(a))で吸収性物品1Aを使用することができる。これにより、ズレ止め材9が粘着部からなるのであれば、吸収性物品1Aの裏面シート2側が、比較的弱い、通常の下着に対して最適化された粘着力を有するようになるので、使用後に吸収性物品を剥がしにくくなる等の上記の不都合を回避することができる。一方、クロッチ部分等に特殊な素材が配置された専用下着を使用する場合、使用者は、剥離シート30Aを剥がすだけで、ズレ止め材9の露出面積が増えた第2状態(図3(c))を作り出し、この状態で吸収性物品1Aを使用することができる。これにより、吸収性物品1Aの裏面シート2側が、比較的強い、専用下着に対して最適化された粘着力を有するようになるので、吸収性物品1Aの専用下着への着脱を良好に行うことができる。
また、通常の下着生地に用いられている繊維の材料によっては、繊維が布から抜けてズレ止め材の表面に残りやすいものもある。そのような下着では、使用者が、吸収性物品の装着位置を直すために吸収性物品を下着から一旦取り外すと、ズレ止め材が粘着部からなっている場合、ズレ止め材に繊維が付着してズレ止め材の粘着力が落ちてしまうことがある。そのため、吸収性物品を再装着しても、ズレ止め材のズレ止め性が顕著に落ちてしまうことがある。そのような場合、吸収性物品1Aを通常の下着に対して、剥離シート30Aが剥がされていない第1状態(図2A及び図3(a))で当初使用していたのであれば、再装着の際に、剥離シート30Aを剥がして第2状態(図2B及び図3(b)及び(c))とすることで清浄なズレ止め材9を露出させて、裏面シート2側の粘着力を高めた状態で吸収性物品1Aを使用することができる。
剥離シート30Aの素材は、上記第1状態(図2A及び図3(a))での吸収性物品の使用においてもズレ止め材との一体性を維持でき、且つ上記第2状態(図2B及び図3(b)及び(c))を得るために人の通常の力でズレ止め材9から容易に剥がすことができるものであれば、特に限定されない。ズレ止め材9が粘着部である場合、剥離シート30は、ズレ止め材9に対向する側に離型処理が施されたものとすることができる。離形処理は、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、又は四フッ化エチレン系樹脂等の離型処理液を、紙製又はプラスチック製の基材シートに塗工又はスプレー塗布することによって行うことができる。
また、ズレ止め材9が非粘着部である場合、上記第1状態(図2A及び図3(a))での吸収性物品の使用において、ズレ止め材9と剥離シート30Aとの一体性を維持できるよう、ズレ止め材9と剥離シート30Aとが接する領域には、剥離シート30Aに粘着材を配置しておくことが好ましい。その場合、粘着材によるズレ止め材9と剥離シート30Aとの粘着性は、人の通常の力で剥離シート30Aを容易に剥がすことができる程度の粘着性とする。
図示の形態では、剥離シート30Aには、長手方向D1に沿って延びる細長い2つの開口32、32が形成されている。これにより、剥離シート30Aが剥がされていない上記第1状態では、長手方向D1に連続して延びるズレ止め材9が露出し、ズレ止め機能を発揮することができる。よって、剥離シート30Aが剥がされていない第1状態で、吸収性物品1Aを長手方向D1に沿って下着に固定することができる。しかし、ズレ止め材を部分的に覆い且つ部分的に露出させるものであれば、開口の形状及び数等は、図示のものに限られない。
図2A及び図2Bに示す形態では、開口32の幅は、2~20mmであると好ましく、5~16mmであるとより好ましい。
図4に、第1実施形態の変形例を示す。図4に示す例でも、剥離シート30Aに複数の開口32、32、…が形成されている。本例は、開口の形状及び数が異なる点で、図2A等に示された形態と相違している。本例の開口32、32、…は、図2Aに示された開口32、32と同様の幅を有しているが、長手方向D1に連続しておらず、間欠している。これにより、剥離シート30Aが剥がされていない第1状態で、裏面シート2にわたってより均一なズレ止め性(粘着力)を得ることができる。
図4に示す本例のように、長手方向D1及び幅方向D2で見てそれぞれ複数の開口が形成されている剥離シート30Aの場合、開口の形状を、円形、楕円形、四角形以外の多角形等とすることができる。
また、図2Aに示す例のように開口が長方形等の細長形状である場合、長手方向D1から所定の角度をなして細長形状の開口が形成されていてもよい。
なお、本明細書において、開口とは、剥離シートが存在せず、連続した縁部によって周囲が取り囲まれた領域を意味する。このような開口に代えて、剥離シート30Aには、切欠き(縁部を含む領域が取り去られてできた領域)が形成されていてもよい。切欠きが設けられている場合でも、ズレ止め材を部分的に露出させることで、上記同様の効果を得ることができる。
剥離シート30A全体の面積に対して、開口及び/又は切欠きが形成されている領域の面積の合計の割合は、吸収性物品の用途やズレ止め材9の特性等にもよるが、20~80%とすることができ、40~60%であると好ましい。
剥離シート30Aは、分割された複数枚のシートとして構成することもできる。しかし、図示の形態のように、連続した一枚のシートであることが好ましい。これにより、使用者が上述の第2状態(剥離シート30Aが剥がされた状態)での吸収性物品の使用を所望した場合、剥離シート30Aを一回の工程で剥がすことができ、第1状態から第2状態への移行にかかる手間を小さくすることができる。
以上説明したズレ止め材9は、吸収性物品1Aの周縁部を除いた中央の領域にわたる1つのズレ止め材9として形成されている。しかし、ズレ止め材9の配置は図示のものに限られず、例えば、図5Aに示すように、長手方向D1に直線的に延在する細長形状のズレ止め材が複数(図示の例では5つ)配置されていてもよい。ズレ止め材9が細長形状の複数のズレ止め材からなっている場合、その数は2~7程度であってよい。また、細長形状のズレ止め材は、必ずしも直線的に延在する必要はなく、湾曲して、例えば波形を描くように延在していてもよい。さらに、ズレ止め材は、長手方向D1に沿って連続でなくともよく、長手方向D1に不連続に設けられていてもよい。
ズレ止め材9が複数のズレ止め材部分を含む場合、ズレ止め材9は、ズレ止め性が比較的弱い第1部分9aと、比較的強い第2部分9bとを有していてよい。図示の例では、これらの第1部分9a及び第2部分9bは、幅方向D2に交互に並んでいる。このようなズレ止め性が異なる複数の部分は、各部分に異なるズレ止め材の材料を用いることによって形成することができる。
図5B及び図6を参照して、図5Aの吸収性物品1Aがさらに剥離シート30Aを備えた形態の構成及び機能について説明する。図5Bは、吸収性物品1Aの裏面シート2側から見た平面図である。また、図6は、図5BのII-II線断面図であり、剥離シート30Aが剥がされる工程を順に示す図である。
剥離シート30Aは、図2A等を参照して上述したものと同様の構成を有し、長手方向D1に延びる細長形状の開口32、32が形成されている。本例では、剥離シート30Aの開口32、32からそれぞれ、上述のズレ止め材9の第1部分9a、9aが露出しており、第2部分9b、9b、9bは、剥離シート30Aによって覆われている。これにより、ズレ止め性が比較的弱い第1状態を作り出すことができる(図5B及び図6(a))。そして、第1状態からさらに、下着の種類に応じて裏面シート2側のズレ止め性を変更したい場合には、使用者は、剥離シート30Aを剥がすことができる(図6(b))。これにより、ズレ止め性が高められた第2状態を作り出すことができる(図6(c))。
本例では、ズレ止め材9のうち第1部分9aのズレ止め性と第2部分9bのズレ止め性とは異なっており、剥離シート30Aを剥がすことによって、露出する面積の比率が変化する。より具体的には、剥離シート30Aが剥がされていない第1状態では、第1部分9aの面積比率は100%であり、第2部分9bの面積比率は0%となっている。一方、剥離シート30Aが剥がされた後の第2状態では、本例では第1部分9a及び第2部分9bがそれぞれ同じ平面形状及び大きさとすると、第1部分9aの面積比率は40%、第2部分9bの面積比率は60%となる。
本例では、剥離シート30Aが剥がされていない第1状態で露出するズレ止め材9の第1部分9aのズレ止め性は、剥離シート30Aが剥がされて第2状態で露出する第2部分9bよりも小さくなっている。そのため、第1状態において、ズレ止め性が比較的弱い第1部分9aの露出面積比率を大きくすることで、より弱いズレ止め性を得ることができる一方、第2状態において第2部分9bの露出面積比率を大きくすることで、より強いズレ止め性を得ることができる。このように、ズレ止め材9がズレ止め性の異なる少なくとも2つの部分を有することで、複数のズレ止め材が同じズレ止め性を有する場合と比較して、第1状態における裏面シート2側のズレ止め性と、第2状態とのズレ止め性との差をより顕著にすることができる。
例えば、ズレ止め材が粘着部からなる場合、第1部分9aが通常の下着に対してより適した粘着性を有し、第2部分9bが専用下着に対してより適した粘着性を有するように構成することができる。そして、上述のように、剥離シート30Aを剥がす前の第1状態で第1部分9aの露出面積の比率が大きく、剥離シート30Aを剥がした後の第2状態で第2部分9bの露出面積の比率が大きくなるようにすることで、通常の下着及び専用下着のいずれかを使用するかに応じて、最適化された粘着性を裏面シート2側に形成することができる。
なお、本形態による吸収性物品1Aが包装シートによって包装されて包装吸収性物品とする場合、図2Aに示す状態で、すなわちズレ止め材9が部分的に露出した状態で、裏面シート2側を対向させて包装シート上に載置し、吸収性物品1Aと包装シートとをともに、例えば、表面シート3側が内側となるよう三つ折り又は四つ折りに折り畳むことができる。その場合、露出したズレ止め材9が包装シートに接触することになるので、包装シートの内面(吸収性物品1Aに対向する面)には、離形処理が施されていることが好ましい。離形処理としては、上述の離形シートに施されるものと同様の処理とすることができる。また、離型シート30Aに重ねて、離型シート30Aの開口を通して露出したズレ止め材9の部分を覆う別のシートを配置した上で、吸収性物品1Aを包装シートによって包装することもできる。
<第2実施形態>
図7に、本発明による第2実施形態による吸収性物品1Bを裏面シート2側から見た平面図を示す。また、図8に、図7のIII-III線断面図を示す。図8は、本形態による吸収性物品1Bの使用例を示す図である。
本形態では、第1実施形態(図2A等)で用いられていた剥離シート30Aに代えて、剥離シート30Bが設けられている点で、第1実施形態と相違する。第2実施形態の剥離シート30B以外の基本的な構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
図7及び図8(a)に示すように、本例による剥離シート30Bは、第1実施形態における剥離シート30A(図2A等)とは異なり、開口のない、連続してズレ止め材9を覆うシートである。この剥離シート30Bでは、第1実施形態における剥離シート30Aの開口32、32に対応する領域が、離脱可能な部分35、35となっている。この離脱可能な部分35、35は、例えば、図7に示すように、ミシン目36、36でそれぞれ囲まれている部分とすることができる。
使用者が吸収性物品1Bを使用する際には、ミシン目36、36を切り離すことによって、剥離シート30Bから離脱可能な部分35、35を除去することができる(図8(b))。これにより、剥離シート30Bに開口が形成され、ズレ止め材9を部分的に露出させることができる。離脱可能な部分が除去された後の剥離シート30Bに形成された開口32a、32a(図8(c))は、第1実施形態における剥離シート30Aの開口32、32(図2A等)と同様に機能することができる。すなわち、剥離シート30Bに形成された開口32a、32aから露出したズレ止め材9が機能し、剥離シート30Bによって覆われたままの部分はズレ止め材として機能しないので、ズレ止め性の比較的小さい第1状態を作り出すことができる。使用者は、この第1状態(図8(c))で吸収性物品1Bの裏面シート2側を下着に装着して使用することによって、裏面シート2側のズレ止め性が過度に大きくなることを防ぐことができる。
また、第1状態(図7及び図8(c))から、さらに剥離シート30Bを剥がすことによって(図8(d))、ズレ止め材9の露出面積を増やした第2状態(図8(e))を作り出すことができる。このような第2状態で吸収性物品1Bの裏面シート2側を下着に装着して使用することによって、裏面シート2側のズレ止め性を高めることができる。
なお、本実施形態の場合には、使用者が当初から高いズレ止め性を所望している場合には、離脱可能な部分35、35を除去せずに、剥離シート30Bを剥がして第2状態を作り出すこともできる。
図示の形態では、離脱可能な部分35、35は、ミシン目36、36によって囲まれた部分として形成されているが、開裂可能な線に囲まれた部分であれば、その形成方法は限定されない。例えば、ミシン目に代えて、厚みを小さくして応力を集中しやすくした線状部分を作り、離脱可能な部分とすることもできる。
また、離脱可能な部分35、35を使用者が手で除去する場合には、離脱可能な部分35、35の裏面側にそれぞれ、使用者が掴みやすいようにするためのタブ等を形成しておいてもよい。
離脱可能な部分35、35の形状及び数は、第1実施形態で説明した剥離シート30Aの開口32、32と同様である。
次に、図9A、図9B、及び図10を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。図9Aには、吸収性物品1の裏面シート2側にさらに包装シート(外側シート)10が重ねられている状態で示されている。図9Bは、本例による吸収性物品1の包装シート10が剥がされている状態を示す図であり、図10(a)~(e)は、図9AのIV-IV線断面図であり、包装シート10、及び続いて剥離シート30Bが剥がされる工程を順に示す図である。
本例の剥離シート30Bの構成は、図5及び図6を参照して説明した剥離シート30Bと同様であるが、本例では、離脱可能な部分35、35が包装シート10に接着されているという点で(図9B及び図10(a))、上述の構成とは相違する。よって、離脱可能な部分35、35は、包装シート10が剥がされる時に剥離シート30Bから取り除かれる(図9B及び図10(b))。これにより、包装シート10が剥がされた後には、剥離シート30Bに、離脱可能な部分に対応する開口32a、32aが形成される。このように、本例では、使用者が離脱可能な部分35、35を手で取り除くという作業が不要になり、包装シート10を吸収性物品1Bから剥がすという簡単な動作によって、剥離シート30Bから離脱可能な部分35、35を除去することができる。これにより、剥離シート30Bがズレ止め材9を部分的に覆い且つ部分的に露出させている、比較的ズレ止め性の弱い上述の第1状態(図10(c))を作り出すことができる。すなわち、包装シートにより包装された吸収性物品を開封する時に第1状態を作り出すことができる。
さらに、使用される下着に応じて、剥離シート30Bを剥がすことができる(図10(d))。そして、剥離シート30Bが剥がされた後は、ズレ止め材9をより多く露出させた、ズレ止め性が高い第2状態(図10(e))とすることができる。
包装シート10としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のフィルムや、不織布、ラミネート不織布(ポリラミ不織布を含む)、紙等を用いることができる。印刷によるデザイン等を重視するのであればフィルムが好ましく、風合いやソフト感等を重視するのであれば不織布等が好ましい。
図11に、第2実施形態による吸収性物品1Bの変形例を示す。図11に示す例では、ズレ止め材及び剥離シートの構成が異なっている点で、上述の図5~図10を参照して説明した吸収性物品と相違する。本例では、ズレ止め材9は、5つのズレ止め材部分91、92、93、94、95からなっており、剥離シート30B'は、5つの離脱可能な部分351、352、353、354、355を有している。離脱可能な部分351、352、353、354、355は、それぞれ複数のズレ止め材部分91、92、93、94、95を覆うように形成されている。すなわち、離脱可能な部分351、352、353、354、355を除去することで、それぞれズレ止め材部分91、92、93、94、95が露出するようになっている。
本例の吸収性物品1Bを使用する場合、使用者は、使用する下着に応じて、離脱可能な部分351、352、353、354、355の少なくとも1つ以上を除去することができる。例えば、使用者は、幅方向D2中央の離脱可能な部分353のみを取り除いて、ズレ止め材部分93のみを露出させて、吸収性物品1Bを下着に取り付けることができる。その際に使用者が、裏面シート2側のズレ止め性が低いと感じた場合には、一旦吸収性物品1Bを下着から取り外し、さらに離脱可能な部分351、355を取り除いて、ズレ止め材部分93に加えてズレ止め材部分91、95を露出させて、吸収性物品1Bを再装着することができる。或いは、使用者は、次回に同じ下着を使用する時に、離脱可能な部分351、353、355を除去してズレ止め材部分91、93、95を露出させて、使用することができる。これにより、ズレ止め性を高めた状態で吸収性物品1Bを使用することができる。
なお、上述のように離脱可能な部分351、353、355を除去するというのは単なる例であり、使用者は、所望のズレ止め性に応じて、複数の離脱可能な部分のうち任意の部分を除去することができる。例えば、幅方向D2中央付近のズレ止め性を高めたい場合等には、離脱可能な部分351に加えて離脱可能な部分352、354を取り除いて、ズレ止め材部分93に加えてズレ止め材部分92、94を露出させることができる。
また、離脱可能な部分が、長手方向D1の中央付近と両端部付近とでそれぞれ独立して形成されている場合には、ズレ止め性を高めたい領域の離脱可能な部分を除去することで、下着の種類に応じた使用者の所望のズレ止め性を得ることができる。
このように、使用者は、ズレ止め材9の露出面積を使用する下着に応じて、場合によっては複数回にわたり変更することができ、裏面シート2側のズレ止め性を自ら調整することができる。
また、本例でも、図5A等に示したように、ズレ止め材を、ズレ止め性(例えば、単位面積当たりの粘着力)が異なる複数のズレ止め材部分から構成してもよい。そして、除去すべき離脱可能な部分を使用者が選択することで、ズレ止め材9の露出面積のみならず、単位面積当たりのズレ止め性(粘着力等)が異なる状態を作り出すことができる。
このように、本例による吸収性物品1Bを用いた場合でも、使用者は、下着に応じて剥離シート30Bを剥がすかどうかを選択し、所望の最適化されたズレ止め性を得ることができる。
以上説明した個々の特徴は、任意に組み合わせて実施することもできる。例えば、第1実施形態における剥離シート30Aの一部に、第2実施形態で説明した離脱可能な部分を追加で形成することもできる。これにより、剥離シート30Aの開口32によって露出したズレ止め材9のみではズレ止め性が十分でないと感じた使用者は、離脱可能な部分を追加的に除去して、裏面シート2側における所望のズレ止め性を得ることができる。
また、本発明の実施形態は、以上の述べたいずれかの吸収性物品と、この吸収性物品を包装した包装シートとを備えた包装吸収性物品とすることができる。
さらに、以上の説明では生理用ナプキンを例に挙げたが、本実施形態は、生理用ナプキンの他、おりものシート(パンティライナー)、失禁用吸水パッド、パッドタイプのおむつ等においても利用することができる。