以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
本発明に係る男性用吸収性物品1は、図1及び図2に示されるように、2つの吸収要素10、11を備えている。前記吸収要素10、11はそれぞれ、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿や汗などの体液を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4の少なくとも肌側面及び非肌側面を覆うクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しないフラップ部Fが形成されている。
以下、さらに前記男性用吸収性物品1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および体液を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した体液の逆戻りを防止するために被包シート5によって覆われるのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の5〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が5%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
前記吸収体4の少なくとも肌側面及び非肌側面は、クレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で覆われている。前記被包シート5で吸収体4を覆う方法としては、公知の方法を採用できるが、(1)図3(A)に示されるように、裁断前の連続した吸収体の両面にそれぞれ裁断前の連続した被包シートを積層し、これらの積層体を一体的に所定形状にくり抜く形態、(2)同図3(B)に示されるように、所定の平面形状に積繊した吸収体4の両面にそれぞれ吸収体4より大きな平面形状を有する被包シート5を積層するとともに、吸収体4の外側に延在した部分で被包シート5、5同士を接合し、その周囲を所定形状にくり抜く形態、(3)同図3(C)に示されるように、1枚の被包シート5で吸収体4の側縁を巻き込んで額巻き状に囲繞する形態のいずれかとすることができる。前記吸収体4の平面形状が円形状や逆三角形状などの場合には、上記(1)又は(2)の形態が採用でき、前記吸収体4の平面形状が四角形状などの場合には、上記(3)の形態を採用することもできる。
本例のように、吸収体4を覆う被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになる。前記被包シート5がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート5によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
前記吸収体4及び被包シート5のいずれか一方又は両方は、白色以外の色、好ましくは黒色や灰色など、比較的暗い、明度が小さな色を有しているのが好ましい。本発明は男性用吸収性物品に関するものなので、比較的暗い色を用いることにより男性用として落ち着いた印象を与えるとともに、暗い色の下着に装着したときに目立ちにくくなり、かつ排尿の跡も目立ちにくくなる。着色方法は特に限定されず、適宜の染色方法、或いは着色原料を用いることができる。また、吸収体4及び被包シート5のいずれか一方又は両方に活性炭を含有することにより、着色を施してもよい。これにより、活性炭による消臭効果も付加できるようになる。
前記2つの吸収要素10、11は、各部材の素材繊維などが異なるものを使用してもよいが、各部材が同一の構成を有するものを使用するのが望ましい。
以上の構成からなる吸収要素10、11はそれぞれ、図1、図2及び図4に示されるように、透液性表面シート3、3同士が対面して配置されるとともに、外周に沿う一部に該吸収要素10、11同士を接合する接合部12が設けられている。また、少なくとも一方の吸収要素10に、前記接合部12の内側に沿って易引裂部13が設けられている。
このように構成された男性用吸収性物品1を使用するに際しては、図5及び図6に示されるように、前記接合部12を基端として、一方の吸収要素10を上側に折り返して使用する軽失禁ライナーや失禁パッドなどの尿取りパッドとしての使用態様と、図7に示されるように、前記易引裂部13から引き裂いて2つの吸収要素10、11を分離して使用する脇部の汗取りパッドとしての使用態様とが選択可能となっている。
このように、本男性用吸収性物品1は、1つの吸収性物品で、尿取りパッド又は汗取りパッドとして使用できる多用途品であるため、尿取りパッドを購入するという意識が薄れ、尿取りパッドの専用品と比較して、購入時の抵抗感が軽減できるようになる。
また、本男性用吸収性物品1は、尿取りパッドとしての使用態様と、汗取りパッドとしての使用態様とで、一体化された2つの吸収要素10、11を拡げて用いるか、分離して用いるかによって、使用時のサイズが異なるため、それぞれの使用態様に応じて身体にフィットして、尿漏れや装着時の違和感が生じなくなる。
更に、本男性用吸収性物品1は、使用前では、前記2つの吸収要素10、11が前記接合部12で接合されて一体化されており、使用態様に応じて、一体化された状態や、分離した状態にできるため、使用態様を考慮して持ち運ぶ数量を調整するなどの手間を省くことができ、使用前の一体化された男性用吸収性物品1を1つ持ち運べばいずれの使用態様にも対応できるので、男性用吸収性物品の携帯性にも優れるようになる。
前記尿取りパッドとして使用するに当たって、男性用吸収性物品1を装着する向きは、図1に示されるように、2つの吸収要素10、11が積層された男性用吸収性物品1の接合部12を上側に向けて配置した状態で、図5に示されるように、上層側の吸収要素10を、前記接合部12を基端として上側に折り返すことにより、表面に露出した各吸収要素10、11の透液性表面シート3、3を肌側に向けて配置するとともに、前記吸収要素10の折り返しによる吸収体4の重なり部分が折り返し部より上側に形成されるようにした上下方向の向きで配置するのが好ましい。このように、前記吸収要素10の折り返しによる吸収体4の重なり部分が折り返し部より上側に形成された向きで配置することにより、吸収体4の重なり部分が股間部に位置して装着感が悪化するのが防止できる。一方、これとは逆に、前記吸収要素10の折り返しによる吸収体4の重なり部分が折り返し部より下側に形成される向きで配置することにより、折り返し部分の吸収要素10、11間に上側が開口したポケットが形成されるような配置にしてもよい。これにより、体液が前記ポケットに流入して吸収されることにより、下側からの漏れがより確実に防止できるようになる。
また、脇部の汗取りパッドとして使用するに当たって、前記易引裂部13から引き裂いて分離した各吸収要素10、11を装着する向きは、透液性表面シート3を肌側に向けて配置するとともに、前記接合部12が設けられた上下方向の端部側を袖側又は胴体側に向けて配置する。これにより、後段で詳述するように、両側部に設けられた弾性伸縮部材14の伸縮力により、各吸収要素10、11が脇部の肌面にフィットしやすくなる。
前記接合部12としては、ヒートシールや超音波シール、ホットメルト接着剤等の接合手段によって構成することができる。
前記接合部12は、吸収体4が介在しない前記フラップ部Fに設けるのが好ましい。図4に示されるように、吸収体4の上側端縁から法線方向外側への離隔幅Aは5mm以上、好ましくは5〜10mmの位置に設けるのがよい。これにより、図7に示されるように、2つの吸収要素10、11を分離して使用する使用態様において、フラップ部Fより吸収体4が存在する部分の厚みが相対的に厚いため、接合部12が肌面と接触しにくくなり、接合部12が肌に当たって装着感が低下するのが防止できる。
前記接合部12の幅Bとしては、接合部12における接合強度を確保するため、3〜10mm、好ましくは5〜8mmとするのがよい。図示例では、前記接合部12の外縁は、吸収要素10、11の外縁とほぼ一致しているが、吸収要素10、11の外縁より内側に位置するようにしてもよい。
前記接合部12は、図4に示されるように、各吸収要素10、11の上下方向の一方側端縁(上側端縁)に沿って形成されている。より具体的には、各吸収要素10、11の上下方向の上側端縁に沿ってこの上側端縁の全長に亘って形成されるとともに、両端部が各吸収要素10、11の両側縁の上側部分に延在して形成されている。
前記接合部12は、図5に示されるように、一方の吸収要素10を折り返して使用する使用態様において、この折り返し部で2つの吸収要素10、11の吸収体4、4同士が厚み方向に重なり代を有するように、平面視で前記折り返し部の折り返し線が延びる方向(幅方向)に対して、該接合部12の両端縁12a、12aが吸収体4と重なる位置まで延在しているのが好ましい。すなわち、図4に示されるように、前記接合部12が吸収要素10、11の上側端縁から幅方向の両端縁まで延在して形成されているのが好ましい。これによって、図5に示されるように、上側の吸収要素10の吸収体4と下側の吸収要素11の吸収体4とが上下方向に対して隙間なく連続的に設けられるようになり、尿取りパッドとして使用したときにこの部分からの尿漏れが確実に防止できるようになる。
前記吸収体4、4同士の重なり代の幅Eとしては、接合部12が設けられる側の端縁の形状によっても異なるが、3〜30mm、好ましくは5〜25mmとするのがよい。
次いで前記易引裂部13について詳細に説明すると、前記易引裂部13は、少なくとも一方の吸収要素10において、前記接合部12の内側に沿って設けられている。前記易引裂部13は、前記接合部12とは重ならない位置であって、前記接合部12の内側縁から所定の離隔幅を有する位置に、前記接合部12の内側縁とほぼ平行して設けられている。
前記易引裂部13は、少なくとも一方の吸収要素10のフラップ部Fにおいて前記透液性表面シート3及び不透液性裏面シート2に対して一体的に形成されている。また、前記吸収要素10の幅方向に対しては、吸収要素10の両端縁間を貫くように幅方向の全長に亘って設けられている。
前記易引裂部13は、前記フラップ部Fにおいて吸収体4と接合部12との間に設けられている。前記易引裂部13は、吸収体4の上側端縁から法線方向外側への離隔幅Cが、3mm以上、好ましくは3〜4.5mm程度とするのがよい。
前記易引裂部13としては、ミシン目や凹溝によって構成してもよいし、円形や楕円形等の貫通孔を所定の間隔を空けて複数設けたものによって構成してもよく、前記透液性表面シート3及び不透液性裏面シート2を一体的に引き裂き容易に形成されたものであれば特に制限なく用いることができる。
前記易引裂部13を一方の吸収要素10のみに設けることにより、前記易引裂部13から引き裂いたとき、図7に示されるように、吸収要素10の易引裂部13より外側の部分は、前記接合部12によって他方の吸収要素11に接合された状態としてもよい。また、前記易引裂部13を2つの吸収要素10、11の両方に設けることにより、前記易引裂部13で引き裂いたとき、易引裂部13より外側の接合部12が、2つの吸収要素10、11から完全に取り外されるようにしてもよい。後者の場合には、脇部の汗取りパッドとしての使用態様において、接合部12が身体に接触することがなく、装着感をより一層向上させることができるようになる。
ところで、前記2つの吸収要素10、11は、ほぼ一致する平面形状で形成するのが好ましい。これにより、分離して脇部の汗取りパッドとして使用する際、左右の吸収要素10、11がほぼ同じ形状で形成されるとともに、図1、図2に示されるように、2つの吸収要素10、11が積層された状態で、平面形状が一致して未使用の男性用吸収性物品1を携帯する際に便利になる。
図1に示される例では、各吸収要素10、11の平面形状は、上下方向の両端縁が外方側に膨出する円弧状に形成され、幅方向の両端縁がほぼ直線状に形成された略小判形を成している。これにより、図5に示されるように、尿取りパッドとして使用する際に、一方の吸収要素10を折り返すことにより、縦長の小判形となり、股間部に装着しやすい形状になるとともに、図7に示されるように、脇部の汗取りパッドとして使用する際に、各吸収要素10、11が左右の脇部にフィットしやすい形状になる。
一方、図8に示されるように、前記吸収要素10、11は、種々の平面形状で形成することができる。例えば、(A)円形又は楕円形、(B)長方形又は正方形、(C)三角形、(D)台形などとすることができる。前記吸収要素10、11の平面形状は、幅方向に対称な形状で形成されている。また、図1及び図8(A)、(B)に示されるように、上下方向に対称な形状で形成するのが好ましい。図8(C)、(D)に示されるように、上下非対称な形状とした場合には、2つの吸収要素10、11を分離して汗取りパッドとして使用する際に、脇部へのフィット性が低下するおそれがある。
図4に示されるように、前記吸収要素10、11はそれぞれ、前記一方の吸収要素10を折り返す際の折り返し方向(上下方向)の両側部にそれぞれ、前記折り返し方向(上下方向)に沿って1又は複数条の、図示例では1条の弾性伸縮部材14が両端又は適宜の位置が固定された伸張状態で配置されるのが好ましい。これにより、図5及び図6に示されるように、一方の吸収要素10を折り返して使用する尿取りパッドとしての使用態様において、前記弾性伸縮部材14、14の収縮力によって、各吸収要素10、11の中央部が不透液性裏面シート2側に突出するカップ状に変形しやすくなるため、股間部へのフィット性が向上できる。また、図7に示されるように、2つの吸収要素10、11を分離して使用する汗取りパッドとしての使用態様において、上下方向の両端をそれぞれ袖側、胴体側に向けて配置することにより、弾性伸縮部材14、14の伸縮によって脇部へのフィット性が向上できる。
前記弾性伸縮部材14は、各吸収要素10、11の上下方向中央部に、長さ15〜20mmの範囲に配置するのが好ましい。固定時の伸長率は、110〜150%が好ましい。なお、前記「伸長率」は自然長を100%としたときの値を意味する。
前記弾性伸縮部材14は、図示例のように、吸収体4が介在しないフラップ部Fにおいて、透液性表面シート3と不透液性裏面シート3との間に配置してもよいし、図示しないが、前記吸収体4が介在する部分の両側部において、前記不透液性裏面シート2と吸収体4との間に配置してもよい。また、これら両方の位置に配置する複数条としてもよい。
図9に示されるように、前記吸収要素10、11はそれぞれ、不透液性裏面シート2の外面側であって、一方の吸収要素10を折り返す際の折り返し方向(上下方向)の両端部にそれぞれ、前記折り返し方向と直交する方向(幅方向)に沿う粘着剤層15が設けられるとともに、これら粘着剤層15、15…が図示されない剥離材によって覆われるようにするのが好ましい。前記粘着剤層15を設けることにより、この粘着剤層15を衣服に貼着して男性用吸収性物品1のズレが防止できる。なお、前記男性用吸収性物品1を衣服に固定する際には、前記剥離材を剥離して粘着剤層15を露出させた状態で使用する。
前記粘着剤層15を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
図10に示されるように、一方の吸収要素10を折り返して使用する尿取りパッドとしての使用態様において、折り返される吸収要素10の折り返し基端側に配置された粘着剤層15を、折り返し部分の不透液性裏面シート2に貼着することにより、折り返し状態が保持できるようにしてもよい。
前記粘着剤層15の平面形状は、図9に示される例では、幅方向に長い長方形状で形成されているが、特にこれに限定されるものではなく、種々の形状で形成することができる。例えば、図11に示されるように、吸収要素10、11の外形線にほぼ沿う三日月形や円弧線状に形成することも可能である。三日月形や円弧線状に形成することにより、前記弾性伸縮部材14の収縮力によってカップ状に形成された各吸収要素10、11がカップ状の変形状態を保持したまま衣服に貼着しやすくなる。いずれにしても、各吸収要素10、11の上下方向両端部において幅方向に延びる形状で形成することにより、いずれの使用態様においても、衣服との貼着面積が増大し、身体の動きに追随しやすくなるため好ましい。
前記粘着剤層15の外方側端縁は、各吸収要素10、11の外縁から法線方向内側への距離Dが、15〜20mm程度の位置に配置するのが好ましい。これにより、各吸収要素10、11によって男性用吸収性物品1が確実に衣服に固定できるようになる。
図12及び図13に示されるように、前記吸収要素10、11はそれぞれ、前記透液性表面シート3側の面であって、前記一方の吸収要素10を折り返す際の折り返し方向(上下方向)の両端部にそれぞれ、前記折り返し方向と直交する方向(幅方向)に沿って、前記不透液性裏面シート2側に窪むエンボス溝16を設けるのが好ましい。前記エンボス溝16を設けることにより、特に、一方の吸収要素10を折り返して使用する尿取りパッドとしての使用態様において、尿がエンボス溝16で塞き止められ、各吸収要素10、11の上下端部からの漏れが防止できるようになる。
前記エンボス溝16は、吸収体4に透液性表面シート3を積層した状態で、透液性表面シート3の外面側からの圧搾により、透液性表面シート3及び吸収体4を一体的に窪ませた窪み部である。
前記エンボス溝16の平面形状は、特に限定されない。例えば、図12に示されるように、幅方向に沿って延びる直線で形成してもよいし、図13に示されるように、略幅方向に沿って延びるとともに、上下方向端縁の外形線に沿って外方側に膨出する湾曲線で形成してもよい。好ましくは後者の湾曲線で形成した方が、尿の拡散を抑制しやすく、より確実に漏れが防止できるようになる。
前記エンボス溝16の底部には、圧搾深さを深くした高圧搾部(図示せず)を適宜のパターンで付与することができる。