JP5033463B2 - 印刷物の製造方法、及びその印刷物の製造方法で利用する有機溶剤性印刷インキ組成物 - Google Patents

印刷物の製造方法、及びその印刷物の製造方法で利用する有機溶剤性印刷インキ組成物 Download PDF

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Description

本発明は印刷物の製造方法等に関し、より詳しくは、酢酸エチルを含有する有機溶剤性インキ組成物の印刷の際に蒸発する有機溶剤を回収し、酢酸エチルを抽出して再利用する印刷物の製造方法等に関する。
最近、環境問題への対応は社会的責任として、全産業・全業種をあげて取り組むべきビジネステーマであり、もちろんプラスチックフィルム印刷の分野も同様である。プラスチックフィルムに対する印刷には、印刷適性上の制約から、一般に有機溶剤を多く含むインキが利用され、また、印刷物も、役割を終えた後はほとんどが廃棄される。そのため、インキ、印刷物共に、環境に与える負荷は高い。そこで、インキや印刷物のメーカーでは、有機溶剤及び廃棄物の排出量の削減や簡便な処理方法の開発等により、環境負荷の低減に取り組んでいる。
この様な取り組みの一つに、インキ中に含まれる有機溶剤の中で、より環境負荷の高いものを選択的に削減しようという試みがある。例えば、従来、インキ中に含まれていた、芳香族系やケトン系等の環境負荷の高い有機溶剤について、まず、環境負荷の最も高い芳香族系溶剤、次いでケトン系溶剤の順で含有量を減量するといった段階を踏んで、インキの開発が継続して行われてきた。更に最近では、置き換える有機溶剤の種類や組成比率はもとより、バインダー樹脂、添加剤等のインキ材料全体についても見直しが行われている。その結果として、芳香族系やケトン系溶剤をほとんど又は全く含まない、エステル−アルコール系インキが実用化されている。
一方、印刷会社でも環境問題の対応として、インキ中の有機溶剤を大気中に排出しないという気運が高くなっている。更に、有機溶剤を回収して、インキ成分として再利用できれば、環境問題の他にも、資源の節約につながることになる。ところが、インキ組成物では印刷適性や乾燥性等の多くの性能を満足するために、極性や蒸発速度の異なる多種の有機溶剤を、バランスよく配合する必要がある。特に芳香族系やケトン系の有機溶剤が利用されている時は、エステル系やアルコール系等も含めて、より多種の有機溶剤が併用されている。そして、この様な多種の有機溶剤を含むインキでは、回収される溶剤の組成がインキ中の組成と同一となることはほとんどないため、そのままインキ中に添加すると、前記の溶剤バランスが崩れて、印刷適性や乾燥性が不良になる等の問題が発生する。
印刷物にとって、良好な印刷品質が求められることは改めていう必要はないが、とりわけ食品包装における印刷品質は重要であり、外装の印刷の良し悪しによって、売上自体が左右される。その最も顕著な例が、最近、見かける機会が多くなっている高品質ブランドのプレミアム食品の外装であり、一般の商品とは一線を画す、高級感に溢れる印刷物が用いられている。これは、消費者が印刷物のイメージをそのまま食品の品質として捉えている証であり、外装でどれだけ高級な雰囲気を抱かせることができるかが、消費者の購買意欲に直結する。もちろん、一般の商品についても、程度の差はあるにせよ同様で、この分野における印刷品質の低下は極めて深刻な問題となる。したがって、回収した有機溶剤を利用しても、印刷適性の低下につながる様では意味がないといえるのである。
ところで、回収した有機溶剤は、インキの希釈以外にもいろいろな利用方法が考えられる。本願出願人は、例えばラミネート用接着剤の溶剤として、酢酸エチル等の単一系溶剤が利用される場合、ラミネート工程で蒸発する酢酸エチルを回収して再利用する方法を積極的に提案してきたが、インキの回収溶剤中に酢酸エチルが含まれているときは、それをラミネート用接着剤の溶剤として利用することもできる。そこで、印刷とラミネートの両方の作業工程を行って印刷物を製造している場合には、インキの溶剤として酢酸エチルを積極的に利用し、更に印刷終了後、回収した酢酸エチルを今度はラミネート用接着剤の溶剤として再利用するのが、回収した有機溶剤の有効な利用方法と考えられる。
このとき、インキ中に含まれる有機溶剤が酢酸エチルだけであれば、そのまま再利用が可能となるが、先に記載したとおり、インキ中には多種の有機溶剤をバランスよく配合する必要があり、酢酸エチル単独で良好な印刷適性を有するインキを得ることはできない。現在の状況では、エステル−アルコール系のインキがこの目的に最も適していると考えられるが、それでも、印刷中に蒸発する有機溶剤としてアルコール成分も含まれることになる。ラミネート用接着剤の中にはアルコールと反応して失効するものが多い。また、低沸点のアルコールが蒸発する際に、雰囲気中の水分が凝縮して印刷面を白化させる現象(ブラッシングと呼ばれている)が起こり易くなる。この様な理由から、回収した有機溶剤をそのままラミネート用接着剤の溶剤として再利用することができず、酢酸エチルを抽出して使用することが望まれる。
以上の様に、酢酸エチルを含有するインキの印刷の際に蒸発した有機溶剤を回収し、その回収した有機溶剤を、酢酸エチルが単独使用されている分野で再利用しようとすると、どうしても回収した溶剤から酢酸エチルのみを抽出することが必要となる。そして、そのためにエステル−アルコール系のインキが最も有利であるが、これまで、インキのアルコール系溶剤としては、乾燥性や経済性の面から、イソプロピルアルコールが主に利用されてきた。しかし、イソプロピルアルコールと酢酸エチルとの組み合わせでは、両者の沸点が近いばかりか、好ましいインキ性能の得られる組成比率が共沸混合物の組成比率に近いことから、酢酸エチルのみを抽出することが困難となる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、酢酸エチルを再利用することにより省資源化が図れる分野を対象として、インキの溶剤として積極的に酢酸エチルを利用しながら、良好な印刷適性を有する印刷インキを設計し、更に印刷中に蒸発する有機溶剤を回収し、その中から酢酸エチルを抽出して再利用できる印刷物の製造方法を提供することである。
本願出願人は、酢酸エチルを含有するエステル−アルコール系インキの印刷適性と、回収される有機溶剤からの酢酸エチルの抽出の可否について検討した結果、酢酸エチルを主成分とするエステル系溶剤とn−プロピルアルコールを主成分とするアルコール系溶剤とを利用し、更にそれらが特定の組成比率となる印刷インキを利用することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、(1)酢酸エチルを主たる成分とするエステル系溶剤と、n−プロピルアルコールを主たる成分とするアルコール系溶剤とを、質量比率として1.00≦エステル系溶剤/アルコール系溶剤<8.95の範囲で含有する有機溶剤性印刷インキ組成物を印刷する工程と、該インキ組成物の印刷に伴って蒸発する有機溶剤を回収する工程とを有する印刷物の製造方法であって、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して、印刷物の製造の中で再利用することを特徴とする印刷物の製造方法に関する。
また、(2)更にラミネート工程を有し、回収した有機溶剤から抽出した酢酸エチルを、ラミネート用接着剤の溶剤として再利用する上記(1)に記載の印刷物の製造方法に関する。
また、本発明は、(3)ラミネート工程で蒸発する酢酸エチルと、上記印刷に伴って蒸発する有機溶剤をあわせて回収し、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して再利用する上記(2)に記載の印刷物の製造方法に関する。
また、本発明は、(4)上記蒸発する有機溶剤をまず吸着剤に吸着させ、次いで加熱により吸着剤から気化・脱着させた該有機溶剤を、不活性ガスを用いて処理槽内に送り込み、更に分留により酢酸エチルを抽出して再利用する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の印刷物の製造方法に関する。
下、更に本発明を詳細に説明する。
本発明は、酢酸エチルを含有する有機溶剤性印刷インキ組成物を印刷し、その際に蒸発する有機溶剤を回収装置等を利用して回収し、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して再利用することを特徴とする印刷物の製造方法である。
環境問題に対する意識が高まる中、大気中への有機溶剤の排出を抑制するために、印刷の際に蒸発する溶剤を回収する装置の導入が検討されてきた。しかし、従来の印刷インキ組成物は数多くの種類の有機溶剤を含有し、回収した有機溶剤の組成比率がインキ中の組成比率と異なるため、印刷インキ中に添加・混合して再利用するといった印刷システムの実現は困難であった。
本発明は、印刷時に回収した有機溶剤の再利用方法として、これまでの観点を根本から変えたものであり、酢酸エチルを再利用することにより省資源化が図れる分野を対象として、印刷インキの有機溶剤に積極的に酢酸エチルを利用し、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して再利用する印刷物の製造方法を提供するものである。
これらの技術について、個々にその特徴を説明する。
本発明の印刷物の製造方法では、先ず、有機溶剤性印刷インキ組成物を印刷する工程が行われる。
上記有機溶剤性印刷インキ組成物としては、酢酸エチルを主たる成分とするエステル系溶剤と、n−プロピルアルコールを主たる成分とするアルコール系溶剤とを特定組成で含み、更に、顔料、バインダー樹脂、他の有機溶剤等を含むもの等が用いられる。
以下、有機溶剤性印刷インキ組成物中のこれらの成分について具体的に述べる。
1.有機溶剤性印刷インキ組成物
<顔料>
顔料としては印刷インキで一般的に用いられている各種無機顔料、有機顔料等が使用できる。無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。有機溶剤性印刷インキ組成物における、これら顔料の含有量は無機顔料では1〜60質量%、有機顔料では0.5〜30質量%が好適である。
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂としては印刷インキで一般的に用いられているものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂等を挙げることができる。
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂が好適に使用できる。
まず、有機ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が、単独又は2種以上混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
高分子ジオール化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等アルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して使用できる。これらの高分子ジオール化合物は、数平均分子量が300〜6,000のものが好ましい。更に前記高分子ジオール化合物に加えて、1,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して併用することができる。
なお、本明細書では、数平均分子量、質量平均分子量はカラムクロマトグラフィー法によって測定することができる。一例としては、Water 2690(ウォーターズ社製)で、PLgel 5μ MIXED−D(Polymer Laboratories社製)を使用して行い、ポリスチレン換算の数平均分子量、質量平均分子量として求めることができる。
本発明の特徴であるエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤系では、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物を利用する方が、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、必要性能に合わせて幅広くインキの設計が可能となる点で好ましい。また、高分子ジオール化合物の数平均分子量が3000以上になると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、インキを印刷した時に耐ブロッキング性等が低い時等は、他の硬質の樹脂と併用することが好ましい場合がある。
また、前記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物の使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1〜3.0:1、より好ましくは1.3:1〜2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、インキを印刷した時に耐ブロッキング性等が低い時等は、他の硬質の樹脂と併用することが好ましい場合がある。
鎖伸長剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N′−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が例示できる。
更に、ポリウレタン樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン類を併用することができる。
反応停止剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の反応停止剤が利用可能であり、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、エタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
本発明では、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。ポリウレタン樹脂としては、質量平均分子量が5000〜20万のものが好ましい。質量平均分子量が上記範囲未満では、皮膜凝集力が低下し、耐摩性、耐熱水性等の耐性に問題が生じる傾向があり、一方上記範囲を超えると、溶解性が低下し、印刷適性に問題が生じる傾向がある。
なお、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせによって、接着性や印刷物の耐ブロッキング性を調節することが可能である。
(セルロース系樹脂)
セルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の低級アシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロース等の低級アルキル基置換体を挙げることができる。
これらセルロース誘導体の分子量や水酸基に対する置換度等は、通常のインキ組成物や塗料で使用される範囲のものが、本発明でも支障なく利用でき、水酸基の置換度は、概ね、1.3〜2.7程度のものが好ましい。また、耐熱性の面からはニトロ基置換体の使用が有利であり、接着性の面からは低級アシル基置換体及び低級アルキル基置換体が有利であるため、目的に応じて適宜選択して使用する事が好ましい。
(その他の樹脂)
更にアクリル樹脂、ポリアミド樹脂や粘着性樹脂等を補助的に添加することができる。
特にアクリル系樹脂としては、質量平均分子量30,000〜100,000、水酸基価20〜110、ガラス転移温度(以下、Tgという)が−35〜100℃の範囲にあるアクリル系樹脂が好適に使用される。Tgが40℃以下であると、柔軟なアクリル樹脂となり、一方、Tgが60℃以上になると硬質のアクリル樹脂となる傾向があるり、インキの接着性や耐ブロッキング性等の必要性能に応じて、使い分けることが好ましい。
上記アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)を求める方法はいろいろあるが、簡易的には次式のwoodの近似式によって求めることができる。
1/Tg=(W1/T1)+(W2/T2)+(W3/T3)+・・・・・・
(式中、Tgはアクリル系樹脂のガラス転移温度(絶対温度)を示し、W1、W2、W3・・・・はアクリル系樹脂中における単量体の重量分率を示し、T1、T2、T3・・・・はその単量体からなる単一重合体のガラス転移温度(絶対温度)を示す)
また、ポリアミド樹脂としては、重合脂肪酸を主とした酸成分と、脂肪族、脂環族、芳香族のアミン成分とを反応させて得られる、下記のエステル系溶剤とアルコール系溶剤の使用比率で溶解可能なポリアミド樹脂が好適に使用される。
その他の粘着性樹脂としては、ダイマー酸系樹脂、コーパル樹脂、ダンマー樹脂等が利用できる。
<有機溶剤>
上記有機溶剤性印刷インキ組成物は、有機溶剤成分として、エステル系溶剤とアルコール系溶剤とを含有するものである。本発明では、酢酸エチルを主たる成分とするエステル系溶剤及びn−プロピルアルコールを主たる成分とするアルコール系溶剤を併用しているため、印刷中に蒸発する有機溶剤を回収し、回収溶剤から酢酸エチルを良好に抽出できる。よって、酢酸エチルの再利用が可能である。また、上記のような溶剤を印刷インキに用いているため、印刷適性も良好である。
ここで、エステル系溶剤としては酢酸エチルを主成分とするものであり、全量を酢酸エチルとしても良いが、酢酸エチル以外の他のエステル系溶剤を併用してもよい。上記他のエステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸i−プロピル、酢酸n−プロピル、酢酸i−ブチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、等を挙げることができる。なかでも、インキの乾燥性等の点から酢酸プロピルや酢酸ブチル等を併用することが好ましい。
上記酢酸エチルの含有量は、上記エステル系溶剤100質量%中70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。これにより、本発明の目的を良好に達成できる。
一方、アルコール系溶剤は、インキの乾燥性や酢酸エチルの抽出の容易性等から、全量をn−プロピルアルコールとしても良いが、酢酸エチルの抽出を妨げない範囲であれば他のアルコール系溶剤を併用可能である。例えば、インキ性能に応じて、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;グリセリン等の多価アルコール等も併用できる。これらの併用するアルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましく、更にn−プロピルアルコールより高沸点のアルコールが、酢酸エチルの抽出に有利である点でより好ましい。
上記n−プロピルアルコールの含有量は、上記アルコール系溶剤100質量%中65質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。これにより、本発明の目的を良好に達成できる。
そして、エステル系溶剤とアルコール系溶剤の比率は、質量比で、
1.00≦エステル系溶剤/アルコール系溶剤<8.95
となる量である。アルコール系溶剤の使用比率が上記範囲より高くなると、インキ中でのバインダー樹脂の溶解性の不良に伴う保存安定性の低下や、アルコールの回収性の低い回収装置を利用した時の大気中に排出される有機溶剤量が増加するといった問題が生じ、一方、上記範囲より低くなると、印刷適性が低下する等の問題が生じる。なお、エステル系溶剤とアルコール系溶剤のより好ましい比率の範囲は、質量比で、
2.00≦エステル系溶剤/アルコール系溶剤≦5.67
となる量である。
<添加剤>
上記有機溶剤性印刷インキ組成物は、更に粘着付与剤、架橋剤、滑剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加することができる。
以上の材料から有機溶剤性印刷インキ組成物を設計する場合、通常、有機溶剤性印刷インキが印刷される用途に必要な性能を満足することを目的として、適宜組み合わせられるが、代表的な用途である表刷り印刷と裏刷り印刷での組み合わせを以下に例示する。
(表刷り印刷インキ組成物)
プラスチックフィルムにインキを印刷し、包装袋を製造する際に印刷面が袋の表の面になるような分野の印刷物(表刷り印刷物)においては、光沢、耐ブロッキング性、耐熱性等が要求される。そこで、表刷り印刷インキのバインダー樹脂としては、硬度があり光沢の付与等が可能なセルロース樹脂に、接着性等の付与が可能な軟質のポリウレタン樹脂や軟質のアクリル樹脂を組み合わせて利用することが好ましい。この場合、併用比率は、セルロース系樹脂:(ポリウレタン樹脂又はアクリル樹脂)が5:95〜95:5の質量比率となる量である。そして、得られるインキ組成物の耐熱性の面から、セルロース系樹脂としてニトロセルロースが、プラスチックフィルムに対する接着性の面から、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が好適である。更にインキ組成物中における両方の樹脂を合わせた含有量は、1〜30質量%が適量である。
また、顔料の含有量としては、比重の大きい無機顔料の場合は0.5〜70質量%、比重の小さい有機顔料の場合は0.1〜40質量%程度が適量である。更に有機溶剤の含有量としては、28〜95質量%程度が適量である。
(裏刷り印刷インキ用組成物)
プラスチックフィルムにインキを印刷し、印刷面を別のプラスチック材料(シーラント)でラミネートし、包装袋を製造する際にラミネート面を貼り合わせるような分野の印刷物(裏刷り印刷物)においては、ラミネート強度(シーラントとの接着性)やボイル・レトルト適性等が要求される。そこで、裏刷り印刷インキのバインダー樹脂としては、接着性等の付与が可能な軟質〜硬質のポリウレタン樹脂を主体として、必要に応じてセルロース系樹脂等を補助的に併用することが好ましい。
有機溶剤性印刷インキ組成物における、これらバインダー樹脂の含有量は1〜30質量%が好適である。また、顔料の含有量としては、比重の大きい無機顔料の場合は0.5〜70質量%、比重の小さい有機顔料の場合は0.1〜40質量%程度が適量である。更に有機溶剤の含有量としては、28〜95質量%程度が適量である。
2.印刷方法及び基材
次に、上記印刷する工程について、上記有機溶剤性印刷インキ組成物を印刷する方法、印刷する基材について述べる。
上記のインキ組成物を印刷する方法としては、一般的な印刷方法を特に限定されることなく適用でき、例えば、グラビア或いはフレキソ印刷方式が利用できる。また、印刷用基材としては、特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルフィルム、ナイロン、ビニロンといった各種印刷用プラスチックフィルムを対象とするものである。もちろん、本発明の主旨からして、通常のフィルムであっても、熱収縮フィルムであってもよく、印刷後にラミネートや収縮処理等の後加工を行うこともできる。
本発明の印刷物の製造方法では、上記印刷する工程の後、上記有機溶剤性印刷インキ組成物の印刷に伴って蒸発する有機溶剤を回収する工程が行われ、更に、回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出する工程が行われる。
以下、有機溶剤の回収方法、酢酸エチルの抽出方法について述べる。
3.溶剤の回収及び酢酸エチルの抽出方法
印刷の際にインキから蒸発する溶剤蒸気は、雰囲気の空気と一緒に吸気ダクト等で吸引して、溶剤の回収装置に送り、回収装置で再び溶剤を液化させて回収する。
ここで蒸発した有機溶剤を回収する方法としては、冷却法、圧縮法、吸着・脱着法のいずれでもよいが、簡便な冷却法と回収率の高い吸着・脱着法の利用が好適である。
冷却法は、蒸発した有機溶剤(溶剤蒸気)を含む空気を、直接、冷却媒体で冷却した管中を通過させる方法、又は処理槽に導入して冷却する方法等により溶剤蒸気を凝縮させ、液化した溶剤を回収する方法であり、管壁や処理槽内を5℃程度まで冷却して溶剤を回収することが好ましい。
また、圧縮法は、処理槽内で溶剤の蒸気圧以上に加圧して溶剤蒸気を凝縮させ、液化した溶剤を回収する方法である。
また、吸着・脱着法は溶剤蒸気を一旦、吸着剤に吸着させて予備濃縮を行ってから、不活性ガスを用いて高温で離脱させ、冷却により凝縮させ液化した溶剤を回収する方法である。この方法で溶剤蒸気を吸着させる材料は、比表面積が大きくなるように、粒子状、繊維状或いはハニカム状にした活性炭等が用いられる。そして、一定の期間、溶剤蒸気を吸着させ、その後、窒素等の不活性ガスを送風しながら、ヒーターで直接吸着剤を加熱するか、又は加熱した窒素等の不活性ガスを送風して、吸着した有機溶剤を再び気化させて処理槽内に導入し、比較的高濃度の溶剤蒸気を含む不活性ガスを、前記の冷却法と同じ処理をして溶剤を回収する。この様な吸着・脱着法を利用した溶剤回収装置としては、例えば、特開平05−31322号、特開平07−68127号等で開示されている溶剤回収装置が利用できる。
冷却法や圧縮法では空気中に含まれる溶剤蒸気濃度が低い場合、大容量の処理槽と、冷却や圧縮のための多大なエネルギーが必要となり、非効率的になるという欠点がある。それに対して、吸着・脱着法は溶剤蒸気の予備濃縮を行ってから、回収の処理をするために効率の面では好適である。
なお、これらの方法では、溶剤蒸気を吸引する際、同時に吸引される空気中に水蒸気が含まれ、冷却により凝縮して水となる。そこで、回収した溶剤中に水分が含まれるのが好ましくない場合は、予め、水蒸気を吸着するシリカゲル、塩化リチウム、塩化カルシウム等の乾燥剤を通して、水分を除くことが好ましい。
この様な方法で回収した有機溶剤からの酢酸エチルを抽出するには、有機溶剤の沸点の差により分離する通常の蒸留法が利用できる。ここで、インキ中に含まれる、酢酸エチル以外の有機溶剤の沸点が、酢酸エチルの沸点と比較して、全て低いか或いは全て高いものであって、更にその沸点の温度差が大きい場合は、回収した混合有機溶剤に対して一回の蒸留操作で高純度の酢酸エチルを抽出することが可能である。しかしながら、酢酸エチルの沸点より低い有機溶剤と高い有機溶剤を含む場合や酢酸エチルの沸点に近い有機溶剤が多量に含まれている場合は、再利用の時に他の有機溶剤の含有による不都合が生じなくなるまで(例えば、アルコールとの反応により失効する恐れのあるラミネート接着剤の溶剤とする時は、アルコール成分の含有量が十分に少なくなるまで)、多数回の蒸留や精密分留等の操作により酢酸エチルの純度を高くすることが必要である。
なお、回収した溶剤から酢酸エチルを抽出して利用する場合、印刷の際に蒸発する溶剤の他に、下記のラミネート工程においても、蒸発する酢酸エチル溶剤を回収して利用することもある。この場合、回収装置を複数備えたところでは、印刷の際に蒸発する溶剤と、ラミネート工程において蒸発する酢酸エチルを別々の装置で回収し、印刷の際に蒸発した溶剤のみから酢酸エチルを抽出するほうが効率的である。一方、一つの溶剤の回収装置で、印刷の際に蒸発する溶剤と、ラミネート工程で蒸発する酢酸エチルとをあわせて回収し、酢酸エチルを抽出する操作を行っても、本発明の主旨に含まれるものとして、全く差し支えない。
本発明の印刷物の製造方法では、上記抽出する工程の後、抽出した酢酸エチルを印刷物の製造の中で再利用する。
以下、酢酸エチルの抽出方法の再利用方法について述べる。
4.抽出した酢酸エチルの再利用方法
酢酸エチルは速乾性で、インキの各種バインダー樹脂やラミネート用接着剤に対しても良好な溶解性を有するという特徴がある。したがって、印刷工程においては、例えば、抽出した酢酸エチルを印刷版や各種ローラー、また、ドクターブレード等の洗浄に利用すると、すぐに次の作業に移ることができるという利点がある。この場合は、n−プロピルアルコールその他の有機溶剤が少しばかり混入していても、特に不都合は生じないといえる。
更に、ラミネート工程をあわせて行っているところでは、抽出した酢酸エチルをこの工程で利用することができる。例えば、印刷物の印刷面に、接着剤を用いて、シーラントとなるプラスチックフィルムを貼り合せることにより、印刷物をラミネート加工するドライラミネート工程において、上記の抽出した酢酸エチルを接着剤の溶剤として利用することは、本発明のより好ましい実施態様である。
通常、ドライラミネート用接着剤としては、ポリオール系の主剤とイソシアネート系の硬化剤とを組み合わせた、2液タイプのものがよく利用されている。その際、適度な蒸発速度であり、反応性の官能基を有さないという理由で、接着剤の溶剤として酢酸エチルが利用される。ここで、上記の方法で抽出した酢酸エチル中に、イソシアネート基と反応性のあるアルコール成分が多く混入されていると、硬化剤がアルコール成分と反応して失効し、十分な接着性が得られない可能性がある。また、低沸点のアルコールが蒸発乾燥する際に、雰囲気中の水分が凝縮してブラッシングが起こりやすくなる。したがって、これらの問題を引き起こさないためには、蒸留法により酢酸エチルを抽出するときに、アルコール成分を極力含まないことが必要であり、アルコールの主成分をn−プロピルアルコールとする本発明の方法は有効である。
なお、本発明において、抽出した酢酸エチルを印刷物の製造のために利用する場合、印刷の際に回収した有機溶剤から抽出した酢酸エチルを、次工程のラミネートで利用することはもちろんのこと、全く別の印刷物の製造工程で利用する方法であっても良い。
本発明の印刷物の製造方法では、まず、良好な印刷適性を有するインキを利用することにより、美粧印刷物が得られるものであり、更に、印刷時に蒸発する有機溶剤を回収して、大気中への有機溶剤の排出を抑えることができる。更に、いろいろな用途で利用可能な酢酸エチルを、インキ溶剤として積極的に利用することにより、回収した溶剤から抽出して再利用できるという点から省資源の面でも有効であり、社会的に極めて高い意義を持つ印刷物の製造方法である。
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
〔実施例及び比較例〕
(有機溶剤性印刷用インキ組成物の製造)
ポリウレタン樹脂ワニス製造例1
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105度で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル518質量部、n−プロピルアルコール91質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン1.1質量部を加えて反応停止させ、重量平均分子量29,000のポリウレタン樹脂ワニスA(固形分30質量%)を得た。
ポリウレタン樹脂ワニス製造例2
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105度で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル518質量部、イソプロピルアルコール91質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン1.1質量部を加えて反応停止させ、重量平均分子量29,000のポリウレタン樹脂ワニスB(固形分30質量%)を得た。
ニトロセルロースワニス製造例
ニトロセルロース(1/4H、旭化成(株)製)30質量部を、酢酸エチル70質量部に混合溶解させて、ニトロセルロースワニス(固形分30質量%)を得た。
有機溶剤性印刷用インキ組成物製造例
顔料30重量部とポリウレタン樹脂ワニスA30質量部の混合物を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、更に表1の配合にしたがって残余の溶剤を添加混合し、実施インキ1〜7、比較インキ1〜4を調製した。また、顔料30重量部とポリウレタン樹脂ワニスB30質量部の混合物を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、更に表1の配合にしたがって残余の溶剤を添加混合し、比較インキ5を調製した。また、顔料30重量部とポリウレタン樹脂ワニスA12質量部、ニトロセルロースワニス18質量部の混合物を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、更に表1の配合にしたがって残余の溶剤を添加混合し、実施インキ8、比較インキ6、7を調製した。なお、顔料としては酸化チタン(商品名:タイピュアR−960、デュポン(株)製)を用いた。
(インキの保存安定性試験)
実施インキ1〜8、比較インキ1〜7の各々をガラス瓶に採取し、40℃の雰囲気温度で14日間保存した時の顔料の沈降の有無から、インキの保存安定性を評価した。
A:沈降が見られず、インキの保存安定性は良好である。
B:沈降が見られ、インキの保存安定性は不良である。
(印刷適性試験)
実施インキ1〜8、比較インキ1〜7の各々100質量部に対して、同一溶剤組成からなる希釈溶剤を50質量部添加して希釈した。そして、全ベタの版深度5μmの印刷版を備えたグラビア校正機((株)東谷製作所製)にて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(商品名:パイレン P−2160、厚さ25μm、東洋紡績(株)製、以後、OPPフィルムと記載)の処理面に、印刷速度100m/分で30分間印刷を行った。印刷終了時の印刷部分における、版にインキが詰まったことに起因するカスレの面積の割合から印刷適性を評価した。
A:カスレの面積が0%(カスレが全くみられない)である。
B:カスレの面積が10%未満である(ただし、Aの条件を除く)。
C:カスレの面積が10%以上、30%未満である。
D:カスレの面積が30%以上、50%未満である。
E:カスレの面積が50%以上である。
(印刷時の有機溶剤の回収試験)
回収試験1
印刷適性試験と同じグラビア校正機及びOPPフィルムを用いて以下の試験を行った。
インキの保存安定性及び印刷適性が良好であった実施インキ1〜8、比較インキ5の各々の100質量部に対して、同一溶剤組成からなる希釈溶剤を50質量部添加して希釈し、全ベタの版深度30μmの印刷版を備えたグラビア校正機にてOPPフィルムの処理面に、印刷速度100m/分で30分間印刷した。この印刷においては乾燥装置の空気噴出し口における空気の温度を120℃に設定し、乾燥ボックス及び巻き取り部までをほぼフィルムで覆った。更に印刷の間に、フィルムで覆った中の有機溶剤蒸気を含む空気を吸引しながら、まず、シリカゲルの充填した管、続いて5℃の冷却水で管壁を冷却した管に導入することにより、有機溶剤を凝縮させて回収した。この操作によって回収した有機溶剤(以下、単に回収溶剤とも言う)の回収率は15〜18質量%であった。
回収試験2
印刷適性試験と同じグラビア校正機及びOPPフィルムを用いて以下の試験を行った。
インキの保存安定性及び印刷適性が良好であった実施インキ1〜8、比較インキ5の各々の100質量部に対して、同一溶剤組成からなる希釈溶剤を50質量部添加して希釈し、全ベタの版深度30μmの印刷版を備えたグラビア校正機にてOPPフィルムの処理面に、印刷速度100m/分で30分間印刷した。この印刷においては乾燥装置の空気噴出し口における空気の温度を120℃に設定し、乾燥ボックス及び巻き取り部までをほぼフィルムで覆った。更に印刷の間に、フィルムで覆った中の有機溶剤蒸気を含む空気を吸引しながら、活性炭(クレハ球状活性炭 G−BAC クレハ社製)を充填した管に導入して溶剤蒸気を吸着させた。
上記の操作により溶剤蒸気を吸着させた活性炭を充填した管に、120℃に加熱した窒素ガスを流入して、溶剤を活性炭から脱着させ、更に、溶剤蒸気を含む窒素ガスを5℃に冷却した冷却槽内で冷却することにより、有機溶剤を凝縮させて回収した。この操作によって回収した有機溶剤(以下、単に回収溶剤とも言う)の回収率は23〜29質量%であった。
なお、回収試験1及び2において、有機溶剤の回収率は以下の式から計算した。
回収率(%)=
回収した有機溶剤の質量〔g〕×100/(印刷によって消費したインキの消費量〔g〕×インキ中に含まれる有機溶剤の質量比率)
(酢酸エチルの抽出試験)
実施インキ1〜8の上記の回収試験1及び2による回収溶剤をそれぞれ、蒸留管を備えた蒸留フラスコに仕込み、酢酸エチルの沸点まで加熱して蒸留操作を行った。今回、試験インキの溶剤として用いた、酢酸エチル以外の材料は全て酢酸エチルより高い沸点を有するものである。蒸留により採取された溶剤の組成をガスクロマトグラフィー法で分析した結果、実施インキ1〜6、8の溶剤組成では、この蒸留操作でほぼ酢酸エチルのみが単離可能と判断されるものであった。また、実施インキ7の溶剤組成では、この蒸留操作で酢酸エチルに対してわずかにイソプロピルアルコールが混入する結果であったが、ラミネート用接着剤の溶剤として利用しても全く問題のない、96質量%以上の純度を有するものであった。それに対して、比較インキ5の上記の回収試験1及び2による回収溶剤を、蒸留管を備えた蒸留フラスコに仕込み加熱した結果、共沸が起こり、酢酸エチルの単離はできなかった(酢酸エチルの純度が低かった)。
なお、上記の溶剤の組成のガスクロマトグラフィー法による分析は、以下の装置と方法により行った。
機種: HP―6890 (ヒューレットパッカード社製)
カラム: DB−1 (J&W社製)
検出器: FID
温度: カラム50−110℃、気化室 120℃、検出器 230℃
流量: ヘリウム 3ml/min、水素 30ml/min、空気 400ml/min
今回の試験は簡易的に効果を確認するための試験であるが、実施例と比較例の結果は、本発明の印刷物の製造方法が、良好な印刷物が得られると共に、有機溶剤の放出を抑え、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して再利用することができることを示すものである。したがって、本発明の印刷物の製造方法を利用すると、美粧印刷物が得られると共に、環境対応に優れ、更に省資源にもつながるという高い効果が得られるといえる。
Figure 0005033463
本発明の印刷物の製造方法は、各種印刷物の製造に適用することができ、抽出した酢酸エチルの再利用が可能である。

Claims (4)

  1. 酢酸エチルを主たる成分とするエステル系溶剤と、n−プロピルアルコールを主たる成分とするアルコール系溶剤とを、質量比率として1.00≦エステル系溶剤/アルコール系溶剤<8.95の範囲で含有する有機溶剤性印刷インキ組成物を印刷する工程と、
    該インキ組成物の印刷に伴って蒸発する有機溶剤を回収する工程と
    を有する印刷物の製造方法であって、
    更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して、印刷物の製造の中で再利用する
    ことを特徴とする印刷物の製造方法。
  2. 更にラミネート工程を有し、回収した有機溶剤から抽出した酢酸エチルを、ラミネート用接着剤の溶剤として再利用する請求項1に記載の印刷物の製造方法。
  3. ラミネート工程で蒸発する酢酸エチルと、前記印刷に伴って蒸発する有機溶剤をあわせて回収し、更に回収した有機溶剤から酢酸エチルを抽出して再利用する請求項2に記載の印刷物の製造方法。
  4. 前記蒸発する有機溶剤をまず吸着剤に吸着させ、次いで加熱により吸着剤から気化・脱着させた該有機溶剤を、不活性ガスを用いて処理槽内に送り込み、更に分留により酢酸エチルを抽出して再利用する請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物の製造方法。
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