JP5031146B2 - エチレン・プロピレン系共重合ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はEPゴム組成物に関する。より詳しくは、フロンガスに対してガスバリア性を有するゴム成形品として使用可能なEPゴム組成物において、全ゴム成分(ゴムポリマー)中、EPゴムを少なくとも60質量%以上含有するゴムポリマーをベースとする有機過酸化物加硫(架橋)系のEPゴム組成物に関する。
【0002】
以下、本発明のEPゴム組成物からなるゴム成形品を、冷凍機システムに封入されたフロン冷媒のガスバリア性を確保するためのシール材料として使用する場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、その他、ダイヤフラム、ホース等のゴム成形品にも本発明のEPゴム組成物は適用可能である。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球環境保護の観点から、各種化学物質に関する使用規制・排出規制が検討され、実施されつつある。カーエアコン等の冷凍機システムに使用される冷凍サイクル用冷媒に関しても、例外ではない。
【0004】
現在、冷凍サイクル用冷媒として、「フロンR-134a」、 「フロンR-12」等の冷媒ガスが用いられている。フロンR-12(CFC類)、フロンR-134a(HFC類)共に温室効果ガスとされており、今後規制が強化されると思われる。
【0005】
特に、オゾン破壊の要因となる塩素成分を含むCFCは、すでに削減規制の対象となっている。CFC類の強化規制は、1989年7月から順次進められ、2000年1月から生産量及び使用量を1986年実績に対して0%にするよう(必要不可欠な分野での使用を除く)に削減規制している。国内における冷凍サイクル用冷媒は、「フロンR-134a (C2H2F4) 」(HFC類)が主に使用されている。
【0006】
上記冷媒ガス削減計画や、エアコンサイクルの長寿命化要求に伴い、冷凍機システムにおいて、上記冷媒を外部へ洩らさないよう、耐ガスバリア性シール材の検討がなされている。そして、上記冷媒用のシール部品(Oリング、パッキン等)としては、一般的にNBR系(主には水素化NBR)材料が用いられている。
【0007】
例えば、水素化NBRとEPゴムとからなる有機過酸化物加硫系のゴム組成物としては、特開平9−77911号に記載されたゴム組成物が公知である。該公報に記載されたゴム組成物からなるゴム成形品は、「フロンR-12」と「フロンR-134a」の両冷媒に対し、高温条件においてもブリスターを生じないとされている。
【0008】
ここで、ブリスターとは、シール材(ゴム材料)の内部に吸収されたフロンが高温下で急に揮発しようとした際に、シール材(ゴム材料)の表面等に生じる膨れ・亀裂等のことをいう。
【0009】
上記公報に記載された水素化NBR組成物におけるゴムポリマーは、水素化NBRを55質量%以上含有するものである。すなわち、EPゴムの配合比が少なく、水素化NBRリッチな組成とされている。
【0010】
そして、従来は「フロンR-134a」に対するガスバリア性の評価としてゴム膜に対象ガスを吹き当て透過する量を測定する方法にて材料選定がなされていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、冷凍サイクルに「フロンR-134a」を封入した際の(実機モデル)のシール部品のフロンガス透過量を測定すると、実験段階の結果とは異なり、EPゴム成形品がNBRゴム成形品よりもガスバリア性が優れており、ブリスターの発生も抑えられることが確認できた。
【0012】
本発明は、フロンに対して、よりガスバリア性を有し、かつブリスターの発生がほとんどない、優れたゴム成形品を得ることのできるEPゴム組成物を提供することを課題とする。
【0013】
さらに、鉱物油に対する膨潤性が小さく、ゴム成形品(加硫物)の圧縮永久歪特性が良好なゴム成形品を得ることのできるEPゴム組成物を提供することを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記構成により、上記課題を解決するものである。
【0015】
フロンガスに対してガスバリア性を有するゴム成形品として使用可能なEPゴム組成物において、EPゴム組成物が、全ゴム成分中、EPゴムを少なくとも60質量%以上含有するゴムポリマーをベースとする有機過酸化物加硫(架橋)系であって、該EPゴムのムーニー粘度(ML1+4 100℃)が約50以上、望ましくは、約55以上であることを特徴とする。ゴム加硫物の良好な圧縮永久歪特性を確保し、かつ鉱物油に対する膨潤を抑制することができる。
【0016】
上記構成において、EPゴムが第3成分としてジシクロペンタジエン(DCPD)又はエチリデンノルボルネン(ENB)を少なくとも5質量%以上含有するEPDMであればさらに望ましい。
【0017】
さらに上記構成において、ゴムポリマーにNBR系ゴムを、水素化NBR/EPゴム=10/90〜40/60、望ましくは20/80〜40/60の質量比で含有させることもできる。フロンR-12に対するガスバリア性を向上させることができ、鉱物油に対する膨潤も抑制できるためである。
【0018】
また、上記構成において、EPゴム組成物からなるゴム成形品(加硫物)の圧縮永久歪率が40%以下に調整されてなることが望ましい。ゴム成形品のシール寿命性が良好となるためである。
【0019】
そして、上記構成のEPゴム組成物には、さらに板状充填剤を含有することができる。板状充填剤の存在により、フロンガス透過量の抑制が可能となる。
【0020】
そして、上記EPゴム組成物は、フロン冷媒用シール材の成形材料として好適に適用可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るEPゴム組成物を、冷凍機の冷媒配管の継手(ジョイント)に設けられたOリングに適応した場合について説明を行う。
【0022】
図1に、本発明のEPゴム組成物からなるOリングを使用した冷凍機12を示す。
【0023】
上記冷凍機12は、冷媒ガス14を圧縮する圧縮器16、圧縮された冷媒ガス14を液化させ、液化冷媒14aとなす凝縮器18、液化冷媒14aを減圧、噴霧する減圧弁20、液化冷媒14aを蒸発させ冷媒ガスとなし、その気化熱で空気22を冷やす蒸発器24及びそれらを結びつける冷媒配管26からなる。
【0024】
また、上記冷媒配管26と圧縮器16、凝縮器18、減圧弁20、蒸発器24はそれぞれ図2に示す継手28により連結されている。
【0025】
図2における上記冷媒配管の継手28は、雄型ジョイント30と雌型ジョイント32とからなり、両者の間にOリング34が介設されてなる。また、上記雄型ジョイントの外周には上記Oリング34を固定するための固定溝36が設けてある。
【0026】
上記雌型ジョイント32に上記雄型ジョイントが挿入されることによりOリング34は圧縮され、両者の間がシールされることとなる。これらの外周にはナットが配設され、該ナット38が両者を固定する。
【0027】
そして、上記Oリング34は、フロンガスに対してガスバリア性を有する。そして、全ゴム成分中、EPゴムを少なくとも60質量%以上含有するゴムポリマーをベースとする有機過酸化物加硫系のEPゴム組成物からなる。上記ゴムポリマーは、EPゴムを少なくとも60質量%以上含有するものであればよく、EPゴム100%(即ちEPゴム単独使用)を含むものである。
【0028】
EPゴムを少なくとも60質量%以上含有するゴムポリマーを使用するのは、EPゴムが少な過ぎると、フロンR-134aに対するガスバリア性が低下するためである。また、圧縮永久歪率も大きくなり、Oリングのシール寿命性に影響を与えるからである。なお、ゴム成形品の圧縮永久歪率は40%以下に調整されるとシール寿命性が良好となる。
【0029】
EPゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、その他の第3成分を含有するエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)のいずれをも使用することができる。
【0030】
中でも、通常市販されているエチレンユニット量約60〜80%のEPゴムを好適に使用可能である。ゴム特性に優れ、成形品に発生するブリスターをより抑制することができるためである。
【0031】
上記のうち、特に第3成分として、ジシクロペンタジエン(DCPD)又はエチリデンノルボルネン(ENB)を含有するEPDMを使用することがOリングのシール寿命性等に優れ望ましい。
【0032】
第3成分(DCPD、ENB)のEPDMへの含有量は、EPDMに対して少なくとも約5質量%以上、望ましくは約5.5質量%以上とする。第3成分の含有量が少な過ぎると、冷媒としてフロンR-12を使用した際に、Oリングにブリスターが発生し易くなる。
【0033】
現在市販されているEPDMとしては、第3成分の含有量は約9質量%が上限値である。本発明者らは、第3成分の含有量が約5質量%〜約9質量%までのEPDMは本発明に使用可能であることを確認しているが、今後第3成分の含有量が9%以上のEPDMが市販された場合も、本発明のEPゴムとして使用可能であると推測される。
【0034】
そしてさらに、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が約55以上のEPゴムを使用することが望ましい。Oリングとして良好な圧縮永久歪特性を確保でき、シール寿命も伸ばすことができるためである。
【0035】
ムーニー粘度が低すぎると、Oリングがシステムに投入された潤滑油(鉱物油)と接触した際、著しく膨潤し、シール材のはみ出しなどによりシール寿命性能が低下する可能性がある。
【0036】
現在市販されているEPゴムとしては、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)は約105が上限値である。本発明者らは、ムーニー粘度が約50〜105までのEPゴムは本発明に使用可能であることを確認しているが、ムーニー粘度が約105以上のEPゴムが市販された場合も、本発明のEPゴムとして使用可能であると推測される。
【0037】
そして、上記ゴムポリマーには、EPゴム以外の成分として、NBR系ゴムが含有されていることが望ましい。すなわち、上記Oリングは、EPゴムと、NBR系ゴムとからなるゴムポリマーを有機過酸化物で架橋して得られた成形品により構成されることがより望ましい。NBR系ゴムとしては、NBR、水素化NBRのいずれでもよく、両者を混合して使用することもできる。
【0038】
NBRとしては、アクリロニトリルとブタジエンの共重合ゴム、好ましくは30〜50%のアクリロニトリルと70〜50%のブタジエンとの共重合ゴムを使用可能である。
【0039】
そして、水素化NBRとしては、上記NBRを水素添加し、分子主鎖中の炭素−炭素二重結合量を50%以下(水素化度50%超)、望ましくは30%以下(水素化度70%超)、更に望ましくは10%以下(水素化度90%超)にしたものが一般に用いられる。具体的には、日本ゼオン製品ゼットポールなどの市販品をそのまま使用することができる。
【0040】
そして、上記EPゴム、水素化NBRからなるゴムポリマーの質量比は、水素化NBR/EPゴム=約10/90〜40/60、望ましくは約20/80〜40/60とする。すなわち、本発明は冷凍機システムにおけるフロンガス透過量を低下させる手法として、EPゴム組成物にEPゴムを公知技術とは異なった割合で混入させるものである。
【0041】
なお、国内において、フロンR-134a冷凍機用システムに投入される潤滑油としては通常鉱物油ではなく、ポリアルキレングリコール(PAG)系のオイルが使用されている。PAGは、EPゴム材料と接触してもゴムの物性に与える影響は小さい。しかし、システム出荷後に誤ってPAG系以外のオイル(特に鉱物油系)が使用されることも考えられ、上記の如く、鉱物油に対するゴム材料の膨潤性も考慮する必要があるのである。
【0042】
また、稀ではあるが、特に海外において誤って冷凍機システムにフロンR-12が使用された場合、高温時の発泡性が懸念される。NBR系ゴムが少ないと、フロンR-12に対するガスバリア性が低下し、また、鉱物油に対する膨潤も顕著となる。逆にEPゴムが少な過ぎると、フロンR-134aに対するガスバリア性が低下し、さらに圧縮永久歪も大きくなり、Oリングのシール寿命性に影響を与える。
【0043】
これらのゴムポリマーは、一般にゴムポリマー100質量部あたり約1〜10質量部、好ましくは約2〜8質量部用いられる有機過酸化物によって架橋される。有機過酸化物としては、例えばジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1−ジ(第3ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n−ブチル−4,4−ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレートなどが用いられる。
【0044】
ゴム組成物中には、以上の必須成分以外に、それぞれのゴムの配合剤として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルトリメリテートなどの多官能性化合物;カーボンブラック、シリカ、タルク、マイカ、クレー、グラファイト、炭酸カルシウムなどの充填剤;ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックスなどの加工助剤;酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、エポキシ樹脂などの受酸剤;さらには老化防止剤、可塑剤などのゴム工業で一般的に使用されている配合剤が必要に応じて適宜添加されて用いられる。上記各種添加剤の添加量は、慣用の配合とすればよい。
【0045】
上記充填剤としては、非配向性(無定形状、球状、立方体状等)、一軸配向性(紡錘状、針状、柱状、繊維状等)、二軸配向性(板状等:リン片状、薄片状を含む)と、各種の粒子形状のものが存在するが、特に二軸配向性である板状(扁平状)充填剤を含有することが望ましい。板状充填剤を選択することにより、フロンガス透過量をより抑制することが可能となる。これは、ゴム成形品とした際、フロンガスのゴム中での拡散を迂回させることができるためだと考えられる。
【0046】
上記板状充填剤としては、例えばタルク、マイカ、グラファイト等を例示することができる。なお、板状充填剤は平均粒径が約0.1〜100μm、望ましくは1〜10μmがよい。平均粒径が大きすぎるとフロンガス透過量低減効果が見られず、逆に小さすぎると混練時の充填剤の分散性が悪化する。
【0047】
板状充填剤の配合量としては、ゴムポリマー100質量部に対して約30〜150質量部とする。配合量が少なすぎるとフロンガス透過性の低減効果が低くなり、逆に多すぎるとシール材としての加工性に劣る。
【0048】
また、ムーニー粘度が55以上のEPゴムを使用したOリングは、通常、伸長率が低く、伸長状態での組付けた際の破断(切れ)が懸念される。そのため、本発明のゴム配合剤においては、上記板状充填剤と併用して補強性充填剤(補強剤)を添加し、伸長率を維持することが望ましい。
【0049】
上記補強性充填剤(補強剤)としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム等を好適に使用できる。上記補強性充填剤は、単独で使用しても2種類以上を選択して使用してもよい。微粉末状態で添加され、配合量は、前記ゴムポリマー100質量部に対して約1〜80質量部、望ましくは約10〜70質量部とする。
【0050】
例えば、シリカとしては、無水けい酸、含水けい酸、けい酸カルシウム、けい酸アルミニウムのいずれをも使用することができる。
【0051】
上記の如く、板状充填剤と補強性充填剤との併用により、板状充填剤のフロンガス透過性の低減効果と、補強性充填剤の補強効果が付与され、よりシール材に好適に適用可能なゴム組成物を得ることができる。
【0052】
ゴム組成物の調製は、インターミックス、ニーダ、バンバリーミキサなどの混練機、あるいはオープンロールなどを用いて混練することによって行われる。加硫は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレスなどを用い、一般に150〜200℃で約3〜60分間程度加熱することによって行われ、必要に応じて約120〜200℃で約1〜24時間加熱する二次加硫が行われる。
【0053】
上記調製によって得られたEPゴム加硫物の硬度は、デュロメーター硬さ試験(JIS K 6253:タイプA) で硬さ70以上、望ましくは72以上であれば、フロン冷媒用Oリングとしての使用に耐え得るものとなる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、上記構成により、従来は必須成分であったゴムポリマーにおける水素化NBRの配合量を公知技術に比して減少可能とし、EPゴムを主成分とするゴム組成物を提供可能となった。そのため、高価な水素化NBRの使用をより抑えることができた。すなわち、結果的にEPゴム組成物中の水素化NBRの含有量が低くなるため、EPゴム組成物におけるコスト高を解決することができ、経済的である。
【0055】
そして、上記の如く、本発明に係るEPゴム組成物を使用したOリングを適用した冷凍機には、冷媒としてフロンR-12、フロンR-134aのいずれをも使用することができる。よって、冷媒の種類に応じたシール材を組付けて製作するという面倒をなくすことができる。さらには、冷凍機システム潤滑油として、鉱物油が使用された場合にも対応できる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために比較例とともに行った実施例について説明を行う。まず、各実施例、比較例においては下記製品を使用した。
【0057】
水素化NBR…「Zpol 2010」:日本ゼオン社製
EPDM1…「EPT 4070H」: 三井化学社製((ML1+4 (100 ℃):69、エチリデンノルボルネン:8.0wt%)
EPDM2…「EPT 3045H」: 三井化学社製((ML1+4 (100 ℃):40、エチリデンノルボルネン:4.5wt%)
EPDM3…「EP 75F」:JSR社製((ML1+4 (100 ℃):85、ジシクロペンタジエン:7.8wt%)
EPDM4…「EPT 1070H」:三井化学社製((ML1+4 (100 ℃):67、ジシクロペンタジエン:4.0wt%)
有機過酸化物…「パーブチルP(100%)」:日本油脂社製
カーボンブラック(補強性充填剤)…「シーストS」:東海カーボン社製
シリカ(補強性充填剤)…「ニプシルVN3 」:日本シリカ工業社製タルク(板状充填剤)…「ミストロン850JS」:日本ミストロン社製
老化防止剤…「ノクラックCD」:大内新興化工業社製
シランカップリング剤「A−172」:日本ユニカー社製。
【0058】
上記各資材を配合して、ニーダ及びロールで混練した後、180℃、5分のプレス加硫(一次加硫)を行う。その後、160℃、5.5時間のオーブン加硫(二次加硫)を行い、線径φ2.4mmのOリングを得た。
【0059】
なお、この際の各実施例・比較例の基本配合を下記に示す。
【0060】
EPゴム組成物基本配合
ゴムポリマー 100質量%
有機過酸化物 4質量%
カーボンブラック 40質量%
シリカ 21質量%(実施例7以外に配合)
タルク 70質量%(実施例7のみに配合)
老化防止剤 1質量%
シランカップリング剤 1質量%
(ゴムポリマーの配合は、各実施例・比較例により異なる。)。
【0061】
ゴム組成物の種類・配合を変化させて得られた、各実施例、比較例におけるNBRゴム組成物について、それぞれの物性評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1は、ゴムポリマーとしてEPDMを単独使用し、EPDMの種類を変化させて各物性を評価したものである。本発明で規定するムーニー粘度および第3成分含有量の要件を満たすEPDMを使用した実施例1・2は、フロンR-134aおよびフロンR-12の双方に対するブリスターの発生が抑えられ、ガスバリア性にも優れることが分かる。水素化NBR単独使用の比較例1は、フロンR-134aに対してブリスターの発生があり、本発明で規定するムーニー粘度および第3成分含有量の要件を満たさない比較例3、第3成分含有量の要件を満たさない比較例4は、フロンR-12に対してブリスターの発生があった。本発明のムーニー粘度および第3成分で規定するEPDMはガスバリア性に優れていることが分かる。
【0064】
【表2】
【0065】
表2は、EPゴムと水素化NBRとの配合比を変化させて各物性を評価したものである。実施例3〜5の範囲内においては、フロンR-12、フロンR-134aの両冷媒でもブリスターの発生が見られないことが分かる。また、鉱物油に対する膨潤性も目標値(体積変化率50%以下)であることが分かる。
【0066】
さらに、「フロンR-134a」透過量に関しても水素化NBR単独使用の比較例1と比較すると、明らかに減少している。
【0067】
そして、水素化NBRの配合量が多い比較例1・2・5は、圧縮永久歪率(目標値40%以下)が相対的に高く、シール寿命性に悪影響を及ぼすと考えられる。さらにフロンR-134aに対してブリスターが見られることがわかる。
【0068】
また、水素化NBRを配合しない実施例1・2は、鉱物油に対する膨潤性がやや著しいことが分かる。
【0069】
なお、各実施例におけるゴム成形品の伸び、引張強さは、水素化NBR単独の場合(比較例1)ほど良好ではないが、EPゴムシール材として適用可能な範囲であることが確認できる。
【0070】
【表3】
【0071】
表3は、EPDMの種類を変化させて各物性を評価したものである。第3成分(ジエン:エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン)の含有量が少ないEPDMを使用した比較例6・7は、フロンR-12に対してブリスターが見られることが分かる。
【0072】
また、ムーニー粘度の低いEPDMを使用した比較例6は、他の例と比較して圧縮永久歪率が大きく、よりシール寿命性に劣ることが分かる。この結果から、EPゴムとしては、ムーニー粘度が55以上、第3成分含有率5質量%以上であると各物性が良好であることが支持される。
【0073】
【表4】
【0074】
表4は、充填剤の形状の違いによる各物性の影響を評価したものである。板状(二軸配向性)の充填剤(タルク)を使用した実施例7は、球状(非配向性)のシリカを含有する実施例5と比較して、鉱物油及び非鉱物油に対する膨潤がより抑制され、さらに耐フロンガス透過性にも優れることが分かる。なお、圧縮永久歪は実施例5ほど良好ではないが、シール材として十分適応可能な範囲内であることが確認できる。
【0075】
なお、各表における物性値は、下記試験方法を使用して測定したものである。
【0076】
硬さ…JIS K 6253におけるデュロメーター硬さ(タイプA)試験により求めた。
【0077】
引張強さ…JIS K 6251における引張強さ試験により求めた。
【0078】
伸び…JIS K 6251における引張切断時伸び試験により求めた。
【0079】
耐油性試験…JIS K 6258における浸漬試験を行い、体積変化率を求めた。浸漬条件は、150℃×70hとした。
【0080】
圧縮永久歪…線径φ2.4mmのOリングを使用して、JIS K 6262における圧縮永久歪試験に準じて求めた。圧縮条件は150℃×70h、圧縮率は25%とした。
【0081】
ブリスター性…試験用液体(フロン)にOリングを40℃×24h浸漬した後、150℃×1h熱処理を行い、ブリスターが発生するかを評価した。
【0082】
フロンガス透過量…実機評価で、40℃における単位時間および単位面積あたりのガス透過量を求めた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のEPゴム組成物からなるOリングを適用可能な冷凍機の構成概略図。
【図2】 図1における冷凍機の、冷媒配管の継手の断面説明図。
【符号の説明】
12:冷凍機
16:圧縮器
18:凝縮器
24:蒸発器
26:冷媒配管
28:継手
34:Oリング
Claims (4)
- フロンガスに対してガスバリア性を有するゴム成形品として使用可能なエチレン・プロピレン系共重合ゴム(以下「EPゴム」と略す。)組成物において、
前記EPゴム組成物が、全ゴム成分(ゴムポリマー)中、EPゴムを60質量%以上含有するゴムポリマーをベースとする有機過酸化物加硫(架橋)系であり、
前記EPゴムが、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が55以上であるとともに、第3成分としてジシクロペンタジエン(DCPD)又はエチリデンノルボルネン(ENB)を少なくとも5質量%以上含有し、さらに、
前記ゴムポリマーが前記EPゴムと水素化NBRとからなり、水素化NBR/EPゴム=10/90〜40/60の質量比で含有する、
ことを特徴とするEPゴム組成物。 - 前記ゴムポリマーが前記EPゴムと水素化NBRとからなり、水素化NBR/EPゴム=20/80〜40/60の質量比で含有することを特徴とする請求項1記載のEPゴム組成物。
- さらに板状充填剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のEPゴム組成物。
- 請求項1、2又は3記載のEPゴム組成物からなることを特徴とするフロン冷媒用シール材。
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