JP5030166B2 - レーザー脱離イオン化質量分析に使用される試料支持用基板の試験方法 - Google Patents

レーザー脱離イオン化質量分析に使用される試料支持用基板の試験方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板及び試料を支持する基板の物質の試験方法に関する。
レーザーをイオン化に用いる質量分析法は、例えばサンプルの分子量や原子量等の測定や分子構造解析や成分分析等、化学工業、臨床、バイオ技術などの分野で利用されており、その手段として、MALDI-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法)を含むLDI-MS(レーザーイオン化質量分析法)等がある。
MALDI-MSでは、サンプルプレート上に試料溶液を滴下して溶媒を蒸発させたものにレーザーを照射してイオンを発生させ電場または磁場で空間的または時間的に質量/電荷比ごとに分別してその量を反映する電気信号を測定する。
MALDI-MSは、高感度な分析法として優れているが、レーザーパルスごとに発生するイオンの量が変動することが多いためにデータの再現性の確保が難しくその有用性に限界があるとされてきた。
一つの原因は、イオンの発生する場所の電場をそろえるために基板上の試料の厚さが薄くなりがちであることと、試料を基板表面に均一に付着させるために基板表面に細かい凸凹を設けることが多いことにある。そのためレーザーがしばしば試料を透過して基板に届き、基板と試料との界面からイオンを発生させ、それが試料そのものからのイオンと混じることが起こる。
二つの異なる環境から発生するイオンが混じりしかもその割合が試料の厚さの分布とレーザー照射による蒸発によって変動するために観測されるイオンの量の変動が大きくなると考えられる。その結果として試料由来のイオンのほかに望ましくないイオンつまりバックグラウンドノイズが増えることになる。
バックグラウンドノイズを減らす手段としては、次のような技術が知られている。
(1)静電シャッターを有する飛行時間型質量分析装置と分析方法において、発生したイオンのうち分析器に導入するものを空間的または時間的に選別することにより望ましくないイオンを取り除くことが知られている(特許文献1参照)。また、磁場型質量分析装置において、同様に望ましくないイオンを取り除くことが知られている(特許文献2参照)。
(2)データベースを作成する方法および多型遺伝的マーカーを同定するためのデータベースの発明において、測定されたスペクトルに数学的な処理を施して望ましくないイオンの信号つまりノイズを除去することが知られている(特許文献3参照)。
(3)レーザーイオン化質量分析用イオン化基板及びレーザーイオン化質量分析装置において、基板の材質を望ましくないイオンが発生しにくいものにすることが知られている(特許文献4、5参照)。
特開平05−062643号公報 特開2001−057174号公報 特開2004−158005号公報 特開2006−201042号公報 特開2006−329977号公報
しかし、上記(1)に示すような、分析器に導入するイオンを選別する方法は、必要なイオンに空間的または時間的に近いバックグラウンドイオンのノイズ除去に対しては有効性が低い。
また、上記(2)に示すような、すでに測定されたスペクトルに数学的な処理を施す方法は、基板へのレーザー光到達の有無は考慮していないためノイズを予め含んでいるスペクトルを対象とせざるを得ず、バックグラウンドノイズの除去には限界がある。
さらに、上記(3)に示すような、基板の材料から発生するイオンが少ない方法は、基板へレーザーが到達すれば試料と基板の界面において試料由来のバックグラウンドのイオンが発生する可能性があり、基板材料由来のイオンが観測できないために却ってレーザー光の基板への到達の有無を考慮することができないという困難がある。
本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的とするものであり、パルスレーザー光と基板の表面または試料と基板の界面との相互作用により発生するイオン(指標イオン)の信号を利用してパルス毎のスペクトルに分類または演算などの操作を施し、望ましい信号の抽出や望ましくないバックグラウンドノイズの除去を行うようにしたレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板を実現すること、及び試料を支持する基板のための物質を試験する方法を提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するために、基板の上にスペクトル解析を行う対象である試料を支持し、レーザーを照射し発生するイオンに基づいてレーザーイオン化質量分析を行うレーザーイオン化質量分析方法であって、前記レーザーと基板表面、又は前記レーザーと基板及び試料の界面の相互作用からイオンを発生させ、該イオンを指標イオンとしてその信号を利用し、レーザーイオン化質量分析方法におけるノイズとなる信号を明確にして、ノイズに影響されないスペクトルの解析を行うことを特徴とするレーザーイオン化質量分析方法を提供する。
前記基板は、インジウム製の基板を用いることにより、前記指標イオンとして、インジウム金属に由来するイオンを発生させることが好ましい。
複数のパルスを照射して得られる複数のスペクトルを、各々の中の前記指標イオンの信号の強度が任意に定めた基準値よりも小さい強度を有するスペクトルのグループとその他のスペクトルのグループに分けて、それぞれのグループで積算乃至平均化することで、ノイズとなる信号を明確にすることが好ましい。
前記スペクトル中の前記指標イオンに対応する信号の強度と他の信号の強度とのレーザーパルスに渡る相関を、統計又は演算操作により求めることが好ましい。
本発明は上記課題を解決するために、試料にレーザーを照射し発生するイオンに基づいてレーザーイオン化質量分析を行うレーザーイオン化質量分析装置において基板の上にスペクトル解析を行う対象である試料を支持するための基板であって、前記基板は、レーザーを照射すると表面からイオンが発生し易い材料で形成されており、該イオンを指標イオンとしてその信号を利用し、レーザーイオン化質量分析方法におけるノイズとなる信号を明確にして、ノイズに影響されないスペクトルの解析を行うことを特徴とするレーザーイオン化質量分析装置において基板の上にスペクトル解析を行う対象である試料を支持するための基板を提供する。
基板の上に複数の種類の塩を溶質とする溶液が一様に塗布されたもので、該基板が様々な強度のレーザー光で照射されたときに、前記溶液の成分の一価正イオンが観測されるときにはいつも前記基板の物質のイオンが観測されるようにしてもよい。
前記複数の種類の塩が、臭化リチウム、臭化セシウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム及び臭化テトラヘキシルアンモニウムであるようにすると好ましい。
前記基板の物質から発生するイオンの質量/電荷比が予め知られていることが好ましい。
前記基板の物質がインジウムであることが好ましい。
本発明は上記課題を解決するために、レーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する基板を試験する方法であって、前記基板の物質で前記基板を調製し、複数の異なる塩を溶質として含む溶液を一様に試験基板に塗布し乾燥し、様々な強度のレーザー光で前記基板を照射し、前記基板から発生するイオンを観察し、前記溶液の成分の一価正イオンが観測されるときにはいつも前記基板の物質のイオンが観測されるならば、該基板がレーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する基板として使用できると判断することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する基板を試験する方法を提供する。
前記複数の異なる塩が臭化リチウム、臭化セシウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、及び臭化テトラヘキシルアンモニウムであることが好ましい。
前記レーザー脱離イオン化質量分析を行うレーザー脱離イオン化質量分析装置において、スペクトルの解析に供せられる試料を支持することが好ましい。
本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板により、指標イオンとその信号の基準値を設定することにより自動または手動で望ましいピークの抽出または望ましくないバックグラウンドノイズの除去を行うことが可能になる。また、スペクトルの質の改善により得られる情報が増加し解析の効率が増大する。
本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板を実施するための最良の形態を実施例に基づいて図面を参照して、以下に説明する。
図1は、本発明のレーザーイオン化質量分析方法を実施するレーザーイオン化質量分析装置1の概要を説明するための図である。パルスレーザー2から照射されたレーザー光(気体窒素レーザー、YAGレーザー)は、基板3の表面に置かれた試料(サンプル)4に照射され、イオンを発生する。イオンは、イオン加速電極5により、適宜、加速されたのち殆ど電場のない空間を飛行しながら質量/電荷比(質量の値を電荷の値で割ったもの。通常、「質量電荷比」ともいう。)により時間的に分離されてイオン検出器6に到達し、計測・制御装置7において、検出イオン強度(発生するイオンの量)に応じた電流値に換えられる。
このようなレーザーイオン化質量分析装置1を使用したレーザーイオン化質量分析方法では、基板3に支持した試料4にパルス状のレーザー光を照射し、その照射により試料から生じるイオンの強度を電流値として計測し、m/z(質量/電荷比)に対する電流の分布を示すスペクトルを得て、このスペクトルにおけるピークにより、試料4の構造解析を行う。通常は同じ基板3と試料4に対して複数のレーザーパルスの照射を行い、その各々から得られるスペクトルの全部を積算または平均して解析に供するスペクトルを形成する。
ところで、試料4の形状(薄い、凹凸形状等)によっては、試料4を透過したレーザー光は、基板3の表面(より正確な表現としては「試料と基板の界面」)に到達し、基板3からイオンを発生させる。このような基板3から発生するイオンは、試料4のイオンともに計測されるので、ノイズとなる。
従来は、基板3からのイオンの発生を少なくしてノイズを抑えるために、基板3の材料としては、レーザー光が照射されても、極力イオンの発生が少ない材料が使用されていた。例えば、ステンレススチールや金である。
しかしながら、本発明は従来の発想とは全く逆であり、むしろ、ノイズの発生し易く、予めその材料から発生するイオンのm/zが把握されている材料を基板3として用いた。例えば、インジウムから発生する主なイオンは、m/zが115であることが知られており、レーザー光を照射すると、イオンを発生し易い材料であるので、このインジウムの層を基板3表面に形成する又は基板3をイオンの発生し易いインジウム材料で形成することを特徴とする。
このように、イオンの発生し易いインジウム材料の層を基板3表面に形成する、又は基板3をイオンの発生し易いインジウム材料で形成すると、試料4を透過したパルス状のレーザービームが基板3表面を十分に強く照射することがあれば、多量のイオンが生じ、m/zとイオン電流のスペクトルにおいて、予め把握されているm/z=115において、強いピークが生じるので、これが検出されれば同じスペクトル中に観測される他の信号にノイズが混在している可能性があることが明確に把握できる。
従って、そのレーザーパルスのスペクトルを積算(平均)スペクトルの形成に用いなければ、明確なノイズを除去したスペクトルによって、試料4の構造をより明確に解析できる。また、m/zの電流強度について任意に定めた基準値を超えたものを積算(平均)スペクトルの形成から除外することによりノイズを低減したものを解析に用いることも出来る。
本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析装置1は上記のとおりであり、また本発明の方法に用いる基板3は、その表面にインジウム材料のイオンの発生し易い材料の層が形成されているものである、又は基板3自体をイオンの発生し易い材料で形成されたものである。
インジウムの他にイオンの発生し易い材料としては、アルミニウム、銅、銀、マグネシウム、亜鉛、ゲルマニウム、スズ、鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カドミウム、水銀、ガリウム、タリウム、アンチモン、ビスマス、セレン、テルルとこれらの元素のいずれかを含む合金等がある。
本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析装置1は上記のとおりであるが、計測データを次のとおり処理すると、よりノイズとなる信号を明確にして分離可能である。即ち、イオンの発生し易い材料、例えば、インジウムにレーザー光を照射して生じるインジウムイオンを指標イオンとする。
そして、このインジウムを表面に形成した基板3に試料4を付着させて、複数のパルスを照射して複数のスペクトルを得る。そして、上記指標イオンの強度より大きい強度を有するスペクトルグループと小さい強度を有するスペクトルグループに分けて、それぞれのグループで積算乃至平均化することで、ノイズとなる信号を明確にする。
以上説明した本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板の実施例を以下に説明する。この実施例では、基台を銅として、その表面にレーザー光を照射するイオンとなりやすいインジウムの層を基板として形成するものである。以下、順を追って、具体的に説明する。
(1)銅の平板を基台として、この基台の表面に、金属インジウムを圧着し平らな表面の基板に成形する。
(2)このインジウムの基板表面を、耐水ペーパーでこすり細かい凹凸をつける。このように凹凸を形成する理由は、後に滴下する試料の溶液を均一に付着させるためである。
(3)このように形成した基板を、試料とは別のイオンを発生させる可能性のある有機物を取り除くために、アセトン中で超音波洗浄をして脱脂して、乾燥させる。
(4)その上に、臭化テトラアルキルアンモニウム(3種)と臭化リチウムと臭化セシウムの水エタノール混合溶液をN-(4-メトキシベンジリデン)-4-ブチルアニリン(MBBA)エタノール溶液に混合して成る試料を滴下し揮発成分を蒸発させる。
(5)このようにして準備した試料の付着した基板を、レーザーイオン化質量分析装置に設置し、パルスレーザー光を複数回、照射し、発生したイオンを測定し、パルス毎のスペクトルを保存する。
(6)指標イオンとして、インジウムイオンのm/z=115とした。
(7)レーザーイオン化質量分析装置において、複数回のパルス照射で得られた各スペクトルについて、まず指標イオンの信号の強度を求め、その中心値を基準値とした。次に各レーザーパルスに対応するスペクトルを指標イオンの信号の強度が基準値未満のもの(図2参照)と、基準値以上のもの(図3参照)に分けて、各々の中で平均を求める。
(8)こうして求めた二つの平均スペクトルを比較すると、〇印の試料由来の信号の平均強度がほとんど同じであるのに対し、◇印のピーク(図3)の信号の強度は指標イオンの信号の強度に連動して、図2では弱くあるいは全く見えないが、図3では明確に増加していることが分かる。
これにより◇印のピークのイオンはテトラアルキルアンモニウムイオンよりもレーザーの基板照射により発生したインジウムイオンとの関連が強いことが分かり、試料表面ではなく基板と試料の界面から発生したものと判断できる。したがってこの◇印のイオンは試料のスペクトルの解析において考慮から除くことが出来る。また、図2はそれ自身がバックグランドノイズが殆ど除かれた平均スペクトルである。
(9)これは、二つの平均スペクトルの差、即ち、「図3のスペクトル」−「図2のスペクトル」の差をとることにより、図4に示すように、強調させることが出来、一層ノイズの検出が容易になる。
(10)またインジウムイオンのピーク中の1つのm/z点の信号の強度とスペクトルの他の全てのm/z点の信号の強度のレーザーパルス全部に渡る相関係数を求めたもの(図5)を見れば、インジウムイオンに連動しない試料のアルキルアンモニウムイオンのピークは殆ど消え、図3、4に現れていたインジウムイオンに連動するノイズのイオンのピーク(◇印)が正の相関係数のピークとなってここに現れ、更に質量スペクトルの中では強度が弱くて定かではなかったイオンのピーク(▽印)もこの中では鮮明に見ることができる。
ここで、「自己のイオンの発生しやすい基板」の定義について、下記のとおり説明する。測定に用いるときと同じ表面状態の基板の表面上に試験液を1 mm2あたり80 nlの割合で一様に塗布して乾燥させたものを作製する。
この試験液の組成は以下の通りである。
溶媒:エタノール水混合溶液(エタノール:水=98:2(重量比))。
溶質:各2.8 x 10-3 mol/lの濃度の臭化リチウム、臭化セシウム、および各3.9 x 10-3 mol/lの濃度の臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム。
以上5種類すべての溶質を一緒に溶媒に溶解させて混合溶液としたものを試験液とする。
基板表面の明瞭に試料が付着している部分を実際の測定に用いるときと同じ波長のパルスレーザー光で照射する。レーザー照射領域の移動を行い初回のパルスで発生したイオンのみを観測する。
このときレーザー強度を全くイオンが観測されないほど小さいところから徐々に増していったときに試料の成分の一価正イオン(リチウムイオン、セシウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン)のどれかが観測されるときには必ず基板の物質の予め知られたイオンが観測される場合に、この基板を「自己のイオンの発生しやすい基板」と定義する。
なお、レーザー光強度は、実際はスペクトルを見ながらレーザー光強度の設定を上下させて測定する。この場合、観測するイオンは初回のレーザーパルスから得られるものだけなのでレーザー照射履歴の効果はないと考えられる。また、基板の物質の予め知られたイオンは、「基板の不純物のイオンではない」という意味を含む。
以上のように「自己のイオンの発生しやすい基板」を定義付けした上で、試料として3種類の基板(ステンレススチール基板、金基板、インジウム基板)を作成し、「自己のイオンが発生しやすい基板」であるか否かの確認の試験を行った。この試験の手順と結果を以下に説明する。
試験対象とした3種類の基板のそれぞれの作製と表面の調製法は、上記実施例(段落0034、0035参照)と同じである。3種類の基板のそれぞれ表面を耐水ペーパーでこすり細かい凹凸をつけ、試料とは別のイオンを発生させる可能性のある有機物を取り除くために、アセトン中で超音波洗浄をして脱脂して、乾燥させる。
このようにして用意した基板の上に上記試験液を一様に滴下して乾燥させ、基板をレーザーイオン化質量分析装置に設置し、定義付けに示すような手順で観測を行った。
(ステンレススチール基板)
図6は、ステンレススチール基板についての試験結果を示す図である。この試験におけるレーザー強度の設定値(相対値)はa) 1.14、b)1、c) 0.77である。c)ではイオンが全く観測されない。 b)ではリチウムイオン(Li)が観測されるがステンレススチールの主な成分である鉄(m/z 56)、ニッケル(m/z 58)、クロム(m/z 52)のイオンは観測されない。
図6のa)ではリチウムイオンに加えてセシウムイオン(Cs)、テトラブチルアンモニウムイオン(TBA)、テトラペンチルアンモニウムイオン(TPA)、テトラヘキシルアンモニウムイオン(THA)も観測されるが鉄、ニッケル、クロムのイオンは観測されない。
なお、*印は基板にも試料にも関係しない不純物に由来するイオンを示す。このことから、ここで用いたステンレススチールの基板(特にb)の場合)は「自己のイオンが発生しやすい基板」ではないといえる。
(金基板)
図7は、金基板についての試験結果を示す図である。この試験におけるレーザー強度の設定値(相対値)は、a)1.14、b)1、c) 0.77である。
図7のc)ではイオンが全く観測されない。b)ではリチウムイオンが観測されるが基板の成分である金イオン(Au)は観測されない。a)ではリチウムイオンに加えてセシウムイオンと弱いながら金イオンが観測される。このことから、ここで用いた金の基板(特にb)の場合は「自己のイオンが発生しやすい基板」ではないといえる。
なお、a)及びb)について、m/zが115の位置に、*印のインジウムと見られるイオンが観測されているが、これは用いた金材料に含まれる微量の不純物と考えられる。各基板の調製は汚染が起こらないように材料ごとに分けて行った。
(インジウム基板)
図8は、インジウム基板についての試験結果を示す図である。レーザー強度の設定値(相対値)は、a)1.14、b)1、c)0.46である。
図8のc)ではイオンが全く観測されない。b)では試料のセシウムイオンと共に基板の成分であるインジウムイオン(In)が観測される。a)では試料のイオン全て(リチウムイオン、セシウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン)がインジウムイオンと共に観測される。
他のスペクトルでも試料のイオンが観測されるときは必ずインジウムのイオンが観測される。したがって、ここで用いたインジウムの基板は「自己のイオンが発生しやすい基板」であるといえる。
なお、図6〜8のそれぞれにおいて、a)はb)及びc)よりもノイズが大きいように見えるが、これはイオン信号の強度に合わせて測定器のレンジを切り替えているためである。実際は、検出器の信号を2分割して測定器のレンジの異なる2つのチャンネルに入力して同時に測定・記録する。つまりレンジが大きいほどAD変換によるノイズが大きくなるためである。
以上、本発明に係るレーザーイオン化質量分析法及びレーザーイオン化質量分析に使用される試料支持用基板を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく、特許請求の範囲記載の技術的事項の範囲内で、いろいろな実施例があることは言うまでもない。
本発明は、以上のような構成であるから、環境技術、各種製品の製造技術などにおける分析業務で使用されれば、取得される情報量の増加により分析の質の向上とスループットの増大が期待できる。
本発明に係る方法で使用するレーザーイオン化質量分析装置の概要を説明する図である。 本発明に係る方法において、複数回のパルス照射で得られた各スペクトルについて、指標イオンの信号の強度が基準値未満のスペクトルの平均を示し、矢印は指標イオンのピーク、〇印はテトラアルキルアンモニウムイオンのピークを表す。 本発明に係る方法において、指標イオンの信号の強度が基準値以上のスペクトルの平均を示し、◇印は指標イオンに連動するバックグラウンドノイズのイオンのピークを表す。 図3のスペクトルから図2のスペクトルを差し引いたものである。 指標イオンのピーク中の1つのm/zの点の信号の強度と他の全てのm/z点の信号の強度のレーザーパルス全部に渡る相関を示す図である。見やすくするために移動平均操作を施してある。▽印はピーク図3では明確でなかったバックグラウンドノイズのイオンのピークを表す。 a)、b)およびc)は、本発明に係る方法においてステンレススチールの基板に試験液を塗布し乾燥させたものを異なるレーザー強度で照射したときの観察の結果の図である。 a)、b)およびc)は、本発明に係る方法において金の基板に試験液を塗布し乾燥させたものを異なるレーザー強度で照射したときの観察の結果の図である。 a)、b)およびc)は、本発明に係る方法においてインジウムの基板に試験液を塗布し乾燥させたものを異なるレーザー強度で照射したときの観察の結果の図である。
符号の説明
1 レーザーイオン化質量分析装置
2 パルスレーザー
3 基板
4 試料(サンプル)
5 イオン加速電極
6 イオン検出器
7 計測・制御装置

Claims (1)

  1. レーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する表面にインジウムを有する基板を試験する方法であって、
    複数の異なる塩である臭化リチウム、臭化セシウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム溶質として含む溶液を一様に前記表面にインジウムを有する基板に塗布し乾燥し、
    様々な強度のレーザー光で前記表面にインジウムを有する基板を照射し、
    前記表面にインジウムを有する基板から発生するイオンを観察し、
    前記溶液の成分の一価正イオンが観測されるときにはいつも前記表面にインジウムを有する基板の物質のインジウムイオンが観測されるならば、前記表面にインジウムを有する基板がレーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する基板として使用できると判断することを特徴とするレーザー脱離イオン化質量分析において試料を支持する基板を試験する方法。
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