JP5029982B2 - 塩化鉄水溶液の精製法 - Google Patents
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より詳細には、塩化鉄水溶液中に不純物として存在するマンガンを分離し、浄水処理の凝集剤もしくはエッチング液として使用することのできるものとする、塩化鉄水溶液の精製法に関するもので、化学品製造技術に属するものである。
特に、上水のための浄水処理施設の凝集沈殿工程において、従来、広く用いられてきたアルミニウム系の無機凝集剤(PAC、硫酸ばんど)の問題点、すなわち、残留アルミニウムの問題点を解消するものとして注目を浴びてきている。
例えば、JIS規格の38%濃度の塩化第2鉄水溶液には、マンガンが400〜1,000mg/lと高濃度に存在する。
このような塩化鉄水溶液を浄水処理の凝集剤として使用すると、処理により得られた水中にはマンガンが多量に含まれることとなり、飲料水の水質基準である0.05mg/l以下を満足させることが難しく、それら塩化鉄水溶液で処理された水が飲料水として不適となることがある。
そのため、浄水処理の凝集剤として使用される塩化鉄水溶液としては、不純物のマンガンが分離除去され精製されたものが望まれている。
このエッチング液は使用により能力が低下すると、再生処理が施され、循環使用されている。
この塩化鉄水溶液の再生処理においては、金属鉄と塩素ガスを用いた金属析出法が採用されている。
しかしながら、その方法ではマンガンは除去されず、エッチング液の循環使用により、液中のマンガン濃度が徐々に上昇して、エッチング液中の濃度が一定量を越えるような場合もあり、そのようなエッチング液の再生処理においても、マンガンの除去が望まれている。
浄水処理に用いられる塩化鉄水溶液からのマンガン除去方法として、特開2001−187391号公報(特許文献1)においては、第2鉄塩水溶液に過マンガン酸カリウムを添加し、第2鉄塩水溶液中に存在するマンガンを酸化して、固相として析出させる方法が提案されている。
特開2002−79003号公報(特許文献2)には、アルカリ剤と過マンガン酸イオン、過硫酸イオン及び過塩素酸イオンの群の中から選ばれる酸化剤を添加して、マンガンを除去する方法が提案されている。
そこで、発明者も種々検討を行ったところ、酸化剤を用いる塩化鉄水溶液中の不純物マンガンの除去は、通常は、非常に効率よく行えた。
しかしながら、溶液の種類によっては、除去の効率が著しく悪く、種類によっては、殆ど精製できないものがあることを見出した。
その結果、塩化鉄水溶液中のマンガンの濃度が低いものに酸化剤を添加しても、マンガンの析出が認められず、あるいは析出の効率が著しく悪いことを見出した。
塩化鉄水溶液中に不純物として存在するマンガンを、酸化剤を用いて分離除去するに際し、
前記塩化鉄水溶液に微量の水溶性マンガン塩を添加し、不純物のマンガンを析出除去すること
を特徴とする塩化鉄水溶液の精製法である。
請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法において、
前記水溶性マンガン塩の添加は、
その添加により、塩化鉄水溶液中のマンガン濃度を150ppm以上とするものであること
を特徴とするものである。
請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法において、
前記水溶性マンガン塩は、
塩化マンガンであること
を特徴とするものである。
請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法において、
前記マンガンの分離除去は、
温度15℃〜50℃の温度範囲下に行なわれるものであること
を特徴とするものである。
請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法において、
前記マンガンの分離除去に際し、
予め塩化鉄水溶液中の塩酸を除去すること
を特徴とするものである。
請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法において、
前記酸化剤は、
オゾンであること
を特徴とするものである。
そのため、前記塩化鉄水溶液に、本来除去すべきマンガンを含む化合物である水溶性マンガン塩を添加して、塩化鉄水溶液のマンガン濃度を150ppm以上、さらには200ppm以上としてから、マンガンを除去するものである。
この中では、凝集剤として、また、エッチング剤として用いられる、塩化第2鉄水溶液の精製(マンガンの除去)に特に有効なものである。
これらの塩化鉄水溶液としては、工業的に用いられるものに適用され、通常、その濃度は20〜60質量%である。
その中でも、塩化鉄水溶液に新しいイオン種を与えない塩化マンガンが、この発明にとり好ましい。
塩化鉄水溶液のマンガン濃度を、一定値以上に設定することによって、塩化鉄水溶液中のマンガンを効率的に、かつ1ppm以下に低減することができる。
なお、濃度が250ppm以上になるように添加しても、添加のわりに効果が向上するわけでなく、除去に必要な酸化剤の量が増えるおそれがあるため、マンガン濃度を1000ppm以上にするのは避けるのが望ましい。
前記マンガン含有スラリーとしては、発生したマンガンを沈殿させて、あるいは必要に応じて濾過して得られた水分40〜50%の泥漿体が、そのまま使用でき、添加量としては、0.01〜2質量%である。
例えば、塩酸濃度5%では、6時間、酸化剤(オゾン)を添加しても、実質的なマンガンの析出は認められないので、予め鉄材やアルカリなどを塩化鉄水溶液に加えて、塩酸濃度を、好ましくは0.3質量%以下に、低下させておくのが望ましい。
フラスコに工業用塩化第2鉄水溶液(塩化第2鉄濃度:40.4質量%)1,000gを入れ、試薬のMnCl2・4H2Oを0.36g加え、不純物としてのマンガン約100ppmの、試験液を作成した。
このフラスコの試験液を液温約25℃、攪拌200rpmの条件下にオゾン濃度約4%の空気を1リットル/分の割合で、通気管を通して供給して反応させ、マンガンを析出させた。
反応開始前および反応開始後、一定時間毎にサンプリングした反応液のマンガン濃度を測定した結果を表1に示した。
表1に認められるように6時間反応させても、マンガン濃度の低下は僅かであり(98ppm→79ppm)、マンガンを除去するという目的を達成し得ないものであった。
比較例1で調整した試験液に、
マンガン濃度が約200ppm(実施例1)
300ppm(実施例2)
500ppm(実施例3)
900ppm(実施例4)
になるように、試薬のMnCl2・4H2Oを加え、比較例1と同様にして試験した結果を表1に示した。
実施例2(300ppm)では、50分経過後急速にマンガン濃度が減少し、6時間後に1ppmとなった。
実施例3(500ppm)では、20分経過後急速にマンガン濃度が減少し、6時間後に1ppmとなった。
実施例4(900ppm)では、10分経過後急速にマンガン濃度が減少し、6時間後に1ppmとなり、この発明の有効性を示した。
比較例1で調整した試験液に、実施例4で発生した析出物を濾過して得られたマンガン含有スラリー(固形分約50%)を1g(参考例1)、10g(参考例2)を加えて、比較例1と同様にして試験した結果を表2に示した。
スラリーを10g加えた参考例2は、マンガンの濃度が約110ppmであるにもかかわらず、1時間半後には10ppm以下に、3時間後に1ppm以下となり、析出物のスラリーは、水溶性マンガン塩よりも、マンガンの析出に優れた効果を発揮するものであることが認められた。
Claims (6)
- 塩化鉄水溶液中に不純物として存在するマンガンを、酸化剤を用いて分離除去するに際し、
前記塩化鉄水溶液に微量の水溶性マンガン塩を添加し、不純物のマンガンを析出除去すること
を特徴とする塩化鉄水溶液の精製法。 - 前記水溶性マンガン塩の添加は、
その添加により、塩化鉄水溶液中のマンガン濃度を150ppm以上とするものであること
を特徴とする請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法。 - 前記水溶性マンガン塩は、
塩化マンガンであること
を特徴とする請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法。 - 前記マンガンの分離除去は、
15℃〜50℃の温度範囲下に行なわれるものであること
を特徴とする請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法。 - 前記マンガンの分離除去に際し、
塩化鉄水溶液中の塩酸を予め除去すること
を特徴とする請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法。 - 前記酸化剤は、
オゾンであること
を特徴とする請求項1に記載の塩化鉄水溶液の精製法。
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