JP5029974B2 - 金属多孔体及びそれを用いた電池用電極、並びに金属多孔体の製造方法 - Google Patents

金属多孔体及びそれを用いた電池用電極、並びに金属多孔体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電池用電極やフィルター等に用いられる金属多孔体及びその製造方法に関する。
従来、金属多孔体は、耐熱性を必要とするフィルターや、電池用電極板、更には、触媒担持体、金属複合材等、様々な用途に利用されている。金属多孔体の製造方法として、発泡樹脂等に導電性処理を施した後、メッキ法による手段と粉末金属をスラリーにして発泡樹脂等に付着させ、焼結する方法が古くから知られている。
焼結する方法では樹脂芯体を除去すると同時に熱硬化性樹脂を炭化し、また、金属酸化物をこの炭素分で還元すると共に金属成分の一部を炭化する第1熱処理と、その後1100℃以上1350℃以下の高温に加熱することにより、強固な発泡金属構造とする焼結体を形成する第2熱処理とにより成る2段階工程で焼成を行なう方法が可能である(例えば特許文献1)。
また金属粉末とセラミックス粉末を含むスラリーを焼失性発泡部材に塗布し、その後還元性ガスに水蒸気/又は炭酸ガスを含有させた還元性雰囲気中で樹脂分を焼失させる第一工程、さらに還元性雰囲気中で焼成する第二工程による製造が可能である(例えば特許文献2)。
特開2001−226723号公報 特開平10−046268号公報
しかし、特許文献1に記載の方法ではメッキ法で得られた金属多孔体を処理する場合、脱炭を行う第一工程と還元を行う二工程ともに還元雰囲気とする必要が有り、還元ガスの使用量が多くなりコスト的に不利となる。また特許文献2に記載の方法では発泡樹脂等に導電処理を施す際にカーボンブラック、黒鉛などの材料を用いる場合は金属多孔体内に炭素が残留する結果、金属多孔体内の電気抵抗が高いことで電池の内部抵抗が高くなり放電特性(高率放電時の電圧・利用率)が悪化し、また、サイクル特性(繰り返し充放電後の容量維持率)も悪化する傾向にある。また電極作製工程での集電用リードのスポット溶接性や超音波溶接のリード溶接性が低下する傾向にある。
そこで本発明は、金属多孔体内に残留する炭素を低減し金属多孔体の品質を大幅に向上させることを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、前記特許文献1又は2等の方法で得られた金属多孔体において、金属多孔体内に炭素が残留するのは、炭素の酸化還元条件と金属めっき層の酸化還元条件とが異なり、酸化性雰囲気と水素等の還元性雰囲気組成比率を制御しても炭素の酸化還元に必要な還元剤が金属多孔体付近や金属めっき層内に供給されにくいためであることを見出した。そして、更なる探求を重ねた結果、樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理した後金属めっきを施し、少なくとも、樹脂多孔体を酸化性高温雰囲気で燃焼除去し、その後、金属めっき層を還元性高温雰囲気中で還元することにより作製されるシート状金属多孔体において、還元性雰囲気中にH2Oを添加することで金属多孔体の品質を大幅に向上させることができることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に記載するとおりのものである。
(1)樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理を施した後、金属めっきを施し、少なくとも樹脂多孔体を除去するために酸化性雰囲気下で加熱する第一工程と、これに続く還元性雰囲気下で加熱する第二工程とを含む熱処理が加えられたシート状金属多孔体であって、
該還元性雰囲気が前記第二工程の熱処理室に別々に供給される、水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを主成分とする第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを添加した第2の還元性ガスからなり、
前記第二工程において、
第2の還元性ガスが、前記第二工程の熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に投入される側の開口部近傍に投入され、
第1の還元性ガスが、前記第二工程の熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に排出される側の開口部近傍に投入された
ことを特徴とするシート状金属多孔体。
(2)前記第二工程において、
第1の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の上面側から投入され、
第2の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の下面側から投入された
ことを特徴とする上記(1)に記載のシート状金属多孔体。
(3)前記第二工程において、
第2の還元性ガス中に添加されるH2O量が、還元処理を行なう前記シート状金属多孔体の面積を基準として、0.01L/m2以上、0.10L/m2以下である
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のシート状金属多孔体。
(4)前記導電化処理が樹脂多孔体の表面にカーボン塗料を塗布することによりなされたことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシート状金属多孔体。
(5)樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理した後金属めっきを施し、少なくとも樹脂多孔体を除去し、その後、金属めっきを還元することにより作製する金属多孔体の製造方法であって、
前記金属めっき後に、樹脂多孔体を除去するため酸化性雰囲気下で加熱する第一工程と、
これに続く、水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを主成分とする第1の還元性ガスを熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に排出される側の開口部近傍に投入し、第1の還元性ガスにH2Oを添加した第2の還元性ガスを、熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に投入される側の開口部近傍に投入して熱処理を施す第二工程と
を含むことを特徴とするシート状金属多孔体の製造方法。
(6)前記酸化性雰囲気下で加熱する第一工程を600℃以上で行い、前記第二工程を750℃以上で行うことを特徴とする上記(5)に記載のシート状金属多孔体の製造方法。
(7)前記第二工程において、
第1の還元性ガスを、処理されるシート状金属多孔体の上面側から投入し、
第2の還元性ガスを、処理されるシート状金属多孔体の下面側から投入する
ことを特徴とする上記(5)又は(6)に記載のシート状金属多孔体の製造方法。
(8)前記還元性雰囲気中へのH2Oの添加量が0.01L/m2以上、0.10L/m2以下であることを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれかに記載のシート状金属多孔体の製造方法。
(9)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシート状金属多孔体に活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極基板。
本発明により、金属多孔体内の残留炭素量を低減させることができる。このため本発明のシート状金属多孔体を、例えば、電池用電極として用いた場合には、電極作製工程での集電用リードをスポット溶接や超音波溶接する時のリード溶接性の向上や電池の内部抵抗を低減でき、その結果、放電特性及びサイクル特性の良好な電池を得ることができる。
本発明のシート状金属多孔体は、樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理した後、金属めっきを施し、樹脂多孔体を除去し、その後、金属めっき層を還元することにより作製する金属多孔体の製造する方法であって前記電気めっき後に600℃程度以上の大気等の酸化性雰囲気下と水素等の還元性雰囲気中750℃程度以上で加熱し、水素ガス又は水素と不活性ガスとの混合ガスを主成分とする還元性雰囲気中にH2Oを添加することで樹脂多孔体と導電被覆層を除去することによって製造され、金属多孔体内の残留炭素量が大幅に低減されている。
以下、本発明のシート状金属多孔体における各構成要素について具体的に説明する。
(樹脂多孔体)
本発明における樹脂多孔体としては樹脂発泡体、不織布、フェルト、織布などが用いられるが必要に応じてこれらを組み合わせて用いることもできる。また、素材としては特に限定されるものではないが、金属をめっきした後焼却処理により除去できるものが好ましい。また、樹脂多孔体の取扱い上、特にシート状のものにおいては剛性が高いと折れるので柔軟性のある素材であることが好ましい。
本発明においては、樹脂多孔体として樹脂発泡体を用いることが好ましい。樹脂発泡体は、多孔性のものであればよく公知又は市販のものを使用でき、例えば、発泡ウレタン、発泡スチレン等が挙げられる。これらの中でも、特に多孔度が大きい観点から、発泡ウレタンが好ましい。発泡状樹脂の厚み、多孔度、平均孔径は限定的でなく、用途に応じて適宜に設定することができる。
(導電化処理)
導電化処理の方法は、樹脂多孔体の表面に導電被覆層を設けることができる方法であれば特に限定されない。導電被覆層を構成する材料としては、例えば、ニッケル、チタン、ステンレススチール等の金属の他、カーボンブラック等の非晶質炭素、黒鉛等のカーボン粉末が挙げられる。これらの中でも特にカーボン粉末が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。なお、金属以外の非晶質炭素等を用いた場合には、後述する樹脂多孔体除去処理において当該導電被覆層も除去される。
導電処理の具体例としては、例えば、ニッケルを用いる場合は、無電解めっき処理、スパッタリング処理等が好ましく挙げられる。また、チタン、ステンレススチール等の金属、カーボンブラック、黒鉛などの材料を用いる場合は、これら材料の微粉末にバインダを加えて得られる混合物を、樹脂多孔体表面に塗着する処理が好ましく挙げられる。
ニッケルを用いた無電解めっき処理としては、例えば、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを含有した硫酸ニッケル水溶液等の公知の無電解ニッケルめっき浴に発泡状樹脂を浸漬すればよい。必要に応じて、めっき浴浸漬前に、発泡状樹脂を微量のパラジウムイオンを含む活性化液(カニゼン社製の洗浄液)等に浸漬してもよい。
ニッケルを用いたスパッタリング処理としては、例えば、基板ホルダーに樹脂多孔体を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(ニッケル)との問に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをニッケルに衝突させて、吹き飛ばしたニッケル粒子を樹脂多孔体表面に堆積すればよい。
(電気めっき処理)
上記した無電解めっき処理及び/又はスパッタリング処理によってめっき膜の厚みを増していけば電気めっき処理の必要性はないが、生産性、コストの観点から、上記したような、まず樹脂多孔体を導電化処理し、次いで電気めっき法により電気めっき層を形成する方法を採用することが好ましい。
電気めっき処理は、常法に従って行えばよい。例えばニッケルめっきの場合には、めっき浴としては、公知又は市販のものを使用することができ、例えば、ワット浴、塩化浴、スルファミン酸浴等が挙げられる。前記の無電解メッキやスパッタリング等により表面に導電被覆層が形成された樹脂多孔体をメッキ浴に浸し、樹脂多孔体を陰極に、めっき金属の対極板を陽極に接続して直流或いはパルス断続電流を通電させることにより、導電被覆層上に、さらに電気メッキ被覆を形成することができる。導電被覆層及び電気めっき層の目付量(付着量)は特に制限されない。
導電被覆層は樹脂多孔体表面に連続的に形成されていればよく、電気めっき層は導電被覆層が露出しない程度に当該導電被覆層上に形成されていればよい。導電被覆層の目付量は限定的でなく、通常5〜15g/m2程度、好ましくは7〜10g/m2程度とすればよい。電気めっき層の目付量は限定的でなく、通常150〜500g/m2程度、好ましくは200〜450g/m2程度とすればよい。これら導電被覆層、電気めっき層の目付量の合計量としては、好ましくは200g/m2以上500g/m2以下である。合計量がこの範囲を下回ると、金属多孔体の強度が低下するおそれがある。また、合計量がこの範囲を上回ると、コスト的に不利となる。
(樹脂多孔体除去処理)
電気めっき後に600℃程度以上800℃以下、好ましくは600〜700℃の大気等の酸化性雰囲気で予め樹脂多孔体を除去する。その後、還元性雰囲気中750℃以上、好ましくは高い温度が望ましいが、コスト的に不利となることや還元炉の炉体材質の面から1000℃以下で加熱する。
第1の還元性ガスは水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを主成分とするガスを、必要に応じて組成を変えて用いる。なお、当該混合ガスを主成分とするとは第1の還元性ガスに占める水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスの割合が50体積%以上であることを意味する。
第1の還元性ガスに水素ガスを加えることで酸化還元性の効率が良くなる。不活性ガスとしては、N2、アルゴン、ヘリウム、等を好ましく用いることができる。また、原料ガスとしてアンモニアガスを用いてこれを分解させることによって得られるH2とN2の混合ガスであるアンモニア分解ガスを第1の還元性ガスとして用いても良い。
第2の還元性ガスは、第1の還元性ガスに脱炭性を発揮するH2O(水蒸気)を添加して用いる。H2O(水蒸気)は、金属多孔体内の炭素と、下記(1),(2),(3)の反応を行ない、炭素がCOガスあるいはCO2ガスとなって消失するため、残留炭素の少ない多孔金属が得られる。
C+H2O → H2+CO (1)
C+2H2O → 2H2 +CO2 (2)
C+CO2 → 2CO (3)
前記還元性雰囲気は水素ガス又は水素と不活性ガスとの混合ガスを主成分とする第1の還元性ガスと、これにH2Oを添加した第2の還元性ガスを、連続的に還元処理を行う前記第二工程の熱処理室内に投入することで形成される。そして、この第1の還元性ガスを第二工程の熱処理室(熱処理槽)において金属多孔体が連続的に排出される側の開口部近傍で投入し、第2の還元性ガスを第二工程の熱処理室において該シート状金属多孔体が連続的に投入される側の開口部近傍に投入することで還元処理がなされる。当該還元処理を経ることにより、金属多孔体内に残留する炭素量を低減させることができる。
還元性ガス中に添加されるH2O量は、シート状金属多孔体の面積を基準として、0.01L/m2以上、0.10L/m2以下、好ましくは0.02L/m2以上、0.05L/m2以下とする。投入量がこの範囲を下回ると、処理速度の低下するおそれがある。また、処理量がこの範囲を上回ると、結露するおそれがある。
前記熱処理槽内において、第1の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の上面側から投入され、第2の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の下面側から投入されることが好ましい。これにより金属多孔体内に残留する炭素量をより低減させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明のシート状金属多孔体はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
<樹脂多孔体−導電化処理>
樹脂多孔体シートとして1.5mm厚のポリウレタンシートを用いて、粒径0.01〜0.2μmの非晶性炭素であるカーボンブラック100gを0.5Lの10%アクリル酸エステル系樹脂水溶液に分散し、この比率で粘着塗料を作製した。次に樹脂多孔シートを前記塗料に連続的に漬け、ロールで絞った後乾燥させることによって導電化処理を施し、樹脂多孔体シート表面に導電被覆層を形成した。
<電気めっき処理>
導電化処理を施した樹脂多孔シートに、ニッケルを電気めっきにより500g/m2付着させ、電気めっき層を形成した。
<樹脂多孔体の除去>
次いで、上記により得られた導電被覆層/電気めっき層を形成した樹脂多孔体から樹脂成分を除去するため、700℃の大気の酸化性雰囲気下で加熱する第一工程を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、1000℃のH2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。これによりニッケルを還元するとともにアニールしてシート状の金属多孔体を得た。還元性ガスを導入する箇所は、投入側、排出側、金属多孔体の上面側、下側と、下記表1の組み合わせのように変更した。H2Oの添加量は0.10L/m2とした。
大気等の酸化性雰囲気下で加熱する第一工程の加熱炉、H2とN2の混合気体を用いた還元性雰囲気で加熱する第二加熱炉は高さ1.2m、幅1.5mのマッフル炉(第二工程の熱処理室)を使用し、各全長8000mm、スピードは900mm/minに設定した。還元性雰囲気ガスの投入位置は投入側が第二加熱炉4000mm間とし、排出側は第二加熱炉と冷却の間より投入した。
[比較例1]
実施例1と同様の方法で電気めっきまで実施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。比較例として、従来の方法、すなわち、700℃の酸化性雰囲気下でウレタンとカーボンを燃焼除去し、次いで1000℃の水素雰囲気で加熱してニッケルを還元するとともにアニールして、金属多孔体を得た。
[比較例2]
実施例1と同様の方法で電気めっきまで施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。その後、700℃の大気の酸化性雰囲気下で前記工程一を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、1000℃のH2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。第1の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。第2の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。H2Oの添加量は0.10L/m2とした。
[比較例3]
実施例1と同様の方法で電気めっきまで施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。その後、700℃の大気の酸化性雰囲気下で前記工程一を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、1000℃のH2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。第1の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。第2の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の下側から導入した。H2Oの添加量は0.10L/m2とした。
<実施例2>
実施例1と同様の方法で電気めっきまで実施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。その後、500、600、650、700、750℃の大気の酸化性雰囲気下で前記第一工程を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、1000℃のH2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。これによりニッケルを還元するとともにアニールしてシート状の金属多孔体を得た。
第1の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。また、第2の還元性ガスは、金属多孔体の投入側で、かつ、金属多孔体の下側から導入した。H2Oの添加量は0.05L/m2とした。
<実施例3>
実施例1同様の方法で電気めっきまで実施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。その後、700℃の大気の酸化性雰囲気下で前記第一工程を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、H2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。これによりニッケルを還元するとともにアニールしてシート状の金属多孔体を得た。還元性ガスの温度は、下記表3のように、800、900、1000、1100℃と変更した。
第1の還元性ガスは、金属多孔体の排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。また、第2の還元性ガスは、金属多孔体の投入側で、かつ、金属多孔体の下側から導入した。H2Oの添加量は0.05L/m2とした。
<評価方法>
<残留炭素量、外観の観察>
上記で得られたシート状の金属多孔体の外観状態を観察した。残留炭素量は燃焼容量法にて測定した。
<超音波振動試験>
次にシート状の金属多孔体を0.3mmに圧延した。その後、10mm×7mm角の超音波ホーンにて超音波溶接機を使用しリード部溶接はせずシート状の金属多孔体に超音波振動を与え溶接性の代用強度とした。ホーンと台座のクリアランスを0.2mm、ホーンの寸法10mm×7mmに対し格子状に1.5mm角の24ヶの穴が空いた台座を使用した。圧力0.2MPa、周波数20kHzの条件とした。
各条件に対し9点の超音波試験を実施し、各10mm×7mm角内にある金属多孔体の貫通穴数を目視で数え、9点の平均値としている。
実施例1〜3の結果を表1〜3に示す。
Figure 0005029974
Figure 0005029974
Figure 0005029974
表1の結果から、投入されたH2Oが冷却側に流れたり、シート状金属多孔体と反応せず金属多孔体投入側の開口部から炉外へ排出されてしまう場合には、H2O+C→CO+H2の反応が円滑に進行しないため、残留炭素量が多くなってしまうことが分かる。また、従来の方法による比較例1では残留炭素が高く、外観でも樹脂多孔体類が炭化したススの付着が見られたのと黄色く変色していた。
金属多孔体の上側よりH2Oを投入する実施例1−1、比較例2では上記比較例1と同様に黄色く変色した。さらに、比較例2ではマッフル炉内で結露を生じた。また、金属多孔体の排出側、下側よりH2Oを投入する比較例3ではマッフル炉内で結露を生じた。また残留炭素量が多いと結晶粒界に炭素が偏析し、結晶粒の成長を阻害し脆くなるため超音波振動による試験では貫通穴が発生した。
比較例2及び3のようにマッフル炉内で結露が生じた場合には、マッフル炉の炉壁に結露した水分が水滴となって金属多孔体の上に落ちることにより、金属多孔体にしみ、又は斑点状の変色が発生し、外観不良となった。
金属多孔体の下側、投入側よりH2Oを投入する実施例1−2では残留炭素量は低く、外観も良好な金属多孔体を得ることができた。
表2、3の結果から大気等の酸化性雰囲気下で加熱する第一工程は600℃以上、次いで水素等の還元性雰囲気中で加熱する第二工程は800℃以上で良好な金属多孔体を得ることができた。
<実施例4>
実施例1同様の方法で電気めっきまで実施し、樹脂多孔体表面に導電被覆層/電気めっき層を形成した。その後、700℃の大気の酸化性雰囲気下で第一工程を行った。
続いて、第二工程の熱処理室に、1000℃のH2とN2の混合気体(アンモニア分解ガス)を用いた第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを混合した第2の還元性ガスとからなる還元性雰囲気を形成し、当該第二工程の熱処理室中に前記金属多孔体を導入した。これによりニッケルを還元するとともにアニールしてシート状の金属多孔体を得た。
第1の還元性ガスは、金属多孔体の炉内からの排出側で、かつ金属多孔体の上側から導入した。また、第2の還元性ガスは、金属多孔体の炉内への投入側で、かつ、金属多孔体の下面側から導入した。第2の還元性ガスにおけるH2Oの添加量を0.001、0.01、0.02、0.10、0.15L/m2と変更した。
比較例として、比較例1で作成した金属多孔体を使用した。
<電池の作製>
上記で得た金属多孔体に、主たる成分として水酸化ニッケルと水酸化コバルトを含むニッケル水素電池用の正極活物質合剤を充填し、電極表面を平滑化して乾燥させ、その後ローラープレスを用いて厚さ約0.5mmのニッケル水素電池用正極を作製した。集電用のリード部は接続する部分を予め潰してペーストが入らないようにし超音波溶接にて行った。
次に、負極として公知の水素吸蔵合金負極、セパレータとして親水化処理したPP不織布、電解液として30wt%の水酸化カリウム水溶液に30g/Lの水酸化リチウムを溶解したものを用いて密閉型円筒電池を作成した。
<評価方法>
上記で得られた電池内での金属多孔体とリード部溶接部の亀裂発生状態を調べるために、電池作製後に正極を取り出し、超音波洗浄機を用いて、活物質を取り除いて、実体顕微鏡により亀裂発生状態を確認した。
上記で得られた電池の放電特性とサイクル特性を調べるため、初期に低電流で数サイクル充放電した後、次のようにして放電特性とサイクル特性を調べた。
放電特性は、充電を1Cで電池容量の120%まで行った後、放電を1C、10Cの放電率で行ってそのときの作動電圧と容量利用率を調べた。サイクル特性は、充電を1Cで電池容量の120%まで行い、放電は1Cで放電終止電圧は0.8Vの充放電を繰り返し、600サイクル後の容量維持率を調べた。容量維持率は、放電特性の試験で得た1Cの利用率を基準として計算した。
結果を表4に示す。
Figure 0005029974
(評価結果)
下記表4に示されるように、水素等の還元性雰囲気中にH2Oを添加して製作したシート状金属多孔体は、比較例に比べるとH2O添加に伴いリード溶接部の亀裂の減少、電池の放電特性及びサイクル特性が向上していることが確認できた。
2Oを0.10L/m2まで添加するとリード溶接部の亀裂、電池の放電特性及びサイクル特性は問題無いが還元性雰囲気内(マッフル炉内)で結露が発生した。
本発明の金属多孔体は残留炭素量が低減している。このため、リード溶接部の亀裂を減少できるので電池用電極として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理を施した後、金属めっきを施し、少なくとも、樹脂多孔体を除去するために酸化性雰囲気下で加熱する第一工程と、これに続く還元性雰囲気下で加熱する第二工程とを含む熱処理が加えられたシート状金属多孔体であって、
    該還元性雰囲気が前記第二工程の熱処理室に別々に供給される、水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを主成分とする第1の還元性ガスと、該第1の還元性ガスにH2Oを添加した第2の還元性ガスからなり、
    前記第二工程において、
    第2の還元性ガスが、前記第二工程の熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に投入される側の開口部近傍に投入され、
    第1の還元性ガスが、前記第二工程の熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に排出される側の開口部近傍に投入された
    ことを特徴とするシート状金属多孔体。
  2. 前記第二工程において、
    第1の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の上面側から投入され、
    第2の還元性ガスが、処理されるシート状金属多孔体の下面側から投入された
    ことを特徴とする請求項1に記載のシート状金属多孔体。
  3. 前記第二工程において、
    第2の還元性ガス中に添加されるH2O量が、還元処理を行なう前記シート状金属多孔体の面積を基準として、0.01L/m2以上、0.10L/m2以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状金属多孔体。
  4. 前記導電化処理が、樹脂多孔体の表面にカーボン塗料を塗布することによりなされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシート状金属多孔体。
  5. 樹脂多孔体を骨格としてこれに導電化処理した後金属めっきを施し、少なくとも樹脂多孔体を除去し、その後、金属めっきを還元することにより作製する金属多孔体の製造方法であって、
    前記金属めっき後に、樹脂多孔体を除去するため酸化性雰囲気下で加熱する第一工程と、
    これに続く、水素ガス又は水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを主成分とする第1の還元性ガスを、熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に排出される側の開口部近傍に投入し、第1の還元性ガスにH2Oを添加した第2の還元性ガスを、熱処理室のシート状金属多孔体が連続的に投入される側の開口部近傍に投入して熱処理を施す第二工程と
    を含むことを特徴とするシート状金属多孔体の製造方法。
  6. 前記酸化性雰囲気下で加熱する第一工程を600℃以上で行い、前記第二工程を750℃以上で行うことを特徴とする請求項5に記載のシート状金属多孔体の製造方法。
  7. 前記第二工程において、
    第1の還元性ガスを、処理されるシート状金属多孔体の上面側から投入し、
    第2の還元性ガスを、処理されるシート状金属多孔体の下面側から投入する
    ことを特徴とする請求項5又は6に記載のシート状金属多孔体の製造方法。
  8. 前記還元性雰囲気中へのH2Oの添加量が0.01L/m2以上、0.10L/m2以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のシート状金属多孔体の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載のシート状金属多孔体に活物質を充填してなることを特徴とする電池用電極基板。
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