JP5027448B2 - 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置 - Google Patents

積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5027448B2
JP5027448B2 JP2006152289A JP2006152289A JP5027448B2 JP 5027448 B2 JP5027448 B2 JP 5027448B2 JP 2006152289 A JP2006152289 A JP 2006152289A JP 2006152289 A JP2006152289 A JP 2006152289A JP 5027448 B2 JP5027448 B2 JP 5027448B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal
metal layer
filling
layer
piezoelectric element
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006152289A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007027692A (ja
Inventor
健 岡村
正喜 寺園
智裕 川元
成信 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kyocera Corp
Original Assignee
Kyocera Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP2006152289A priority Critical patent/JP5027448B2/ja
Application filed by Kyocera Corp filed Critical Kyocera Corp
Priority to PCT/JP2006/312046 priority patent/WO2006135013A1/ja
Priority to CN201210155477.8A priority patent/CN102651448B/zh
Priority to EP06766780.8A priority patent/EP1898476B1/en
Priority to US11/917,747 priority patent/US8441174B2/en
Priority to CN200680021047XA priority patent/CN101238598B/zh
Publication of JP2007027692A publication Critical patent/JP2007027692A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5027448B2 publication Critical patent/JP5027448B2/ja
Priority to US13/728,212 priority patent/US20130168465A1/en
Priority to US13/728,184 priority patent/US8648517B2/en
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Fuel-Injection Apparatus (AREA)

Description

本発明は、積層型圧電素子(以下、単に「素子」ということもある)および噴射装置に関し、特に、高電圧・高圧力下において長期間連続駆動させるのに適した積層型圧電素子および噴射装置に関する。
従来より、積層型圧電素子を用いたものとして、圧電体層と金属層を交互に積層した圧電アクチュエータがある。一般に、圧電アクチュエータは、同時焼成タイプと、1つの圧電体からなる圧電磁器と板状体の金属層とを交互に積層したスタックタイプとの2種類に分類される。これらのうち、低電圧化及び製造コスト低減の観点から、同時焼成タイプの圧電アクチュエータが多く採用されている。同時焼成タイプの圧電アクチュエータは、薄層化が簡単であり、小型化および耐久性にも優れる。
図9(a)は、従来の積層型圧電素子を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。図10は、従来の積層型圧電素子における積層構造を示す部分拡大断面図である。図9に示すように、この積層型圧電素子は、積層体103と、互いに対向する側面に形成された一対の外部電極105とから構成されている。積層体103は、圧電体層101と金属層102とが交互に積層されてなる。積層体103の積層方向における両端面には、不活性層104がそれぞれ積層されている。金属層102は、圧電体層101の主面全体には形成されておらず、いわゆる部分電極構造となっている。この部分電極構造の金属層102は、一層おきに積層体103の異なる側面に露出するように積層されており、一対の外部電極105に、それぞれ一層おきに接続されている。
従来の積層型圧電素子の製造方法としては、以下の通りである。すなわち、まず、金属ペーストが、圧電体層101の原料を含むセラミックグリーンシートに、図9(b)に示すような所定の金属層構造となるパターンで印刷される。ついで、金属ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層して積層成形体を作製し、これを焼成して積層体103を得る。その後、積層体103の対向する側面に金属ペーストを塗布した後、焼成して一対の外部電極105を形成し、図9(a)に示す積層型圧電素子を得る(例えば、特許文献1参照)。
ここで、金属層102としては、一般に銀とパラジウムの合金を用いることが多い。また、圧電体層101と金属層102を同時焼成するために、金属層102の金属組成は、銀70質量%、パラジウム30質量%に設定されることが多い(例えば、特許文献2参照)。このように、銀のみからなる金属層ではなく、銀−パラジウム合金からなる金属層102を用いるのは、以下の理由からである。
すなわち、金属層102を、パラジウムを含まない銀のみの組成にすると、対向する金属層102間に電位差を与えたときに、対向する金属層102において正極から負極へと、金属層102中の銀イオンが素子表面を伝わって移動する、いわゆるイオンマイグレーション現象が生じるからである。この現象は、高温高湿の雰囲気中において、著しく発生する傾向にある。
一方、従来から、金属充填率が略同一な金属層102を形成することを目的に、金属成分比や金属濃度を略同一に調製した金属ペーストが用いられている。この金属ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷する際には、メッシュ密度やレジスト厚みがほぼ同一条件に設定されて積層体103が作製される。この金属ペーストで形成された金属層102は、図10に示すように、空隙(ボイド)102’が略均一に形成される。
また、セラミックグリーンシートを押圧積層した際には、金属層102が部分電極構造となっているので、金属層102が重なり合う部分と重なり合わない部分とで押圧状態が異なる。その結果、金属層102の同一面内においても、金属層密度が不均一になることがあるので、金属層102を形成する部分のセラミックシートに凹部を形成し、金属充填率を均一にする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ところで、上記積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極105にリード線(不図示)を半田により接続固定し、外部電極105間に所定の電位をかけて駆動させる。このような用途で使用される積層型圧電素子は、近時、小型化が進められると同時に、大きな圧力下において大きな変位量を確保することが求められている。したがって、前記積層型圧電素子には、より高い電界(電圧)が印加されると共に、長時間連続駆動させる過酷な条件下でも使用できることが要求されている。
上記要求、すなわち高電圧・高圧力下において長期間連続駆動させるという要求に対応するために、特許文献4では、圧電体層101の厚みを変化させた層を設けた素子が記載されている。すなわち、厚みが異なることで他の層と変位量が変化することを利用し、応力緩和を図っている。
また、同時焼成タイプの積層型圧電素子では、すべての圧電体に均一に電圧が印加されるように、均一な金属層を形成することが試みられてきた。特に、各金属層の導電率を均一にすることや、圧電体に接する部分の表面積を均一にするために、金属層の金属組成を均一にすることが試みられてきた。
しかしながら、コンデンサ等の通常の積層型電子部品と異なり、積層型圧電素子は、駆動時に素子自体が連続的に寸法変化を起こす。したがって、全ての圧電体が金属層を介して密着して駆動すると、積層型圧電素子は一体として駆動変形をすることになる。そのため、圧縮時には広がり、伸びた時にはくびれる素子中央部の外周部分に、素子の変形による応力が集中することになる。このような積層型圧電素子を、高電圧・高圧力下において長期間連続駆動させた場合には、前記理由から圧電体層と金属層との界面(積層界面)においてデラミネーション(層間剥離)が生じることがあった。特に、圧電変位する活性層と、圧電変位しない不活性層との界面に応力が集中し、この界面がデラミネーションの起点となっていた。
また、各圧電体層の変位挙動が一致する共振現象が発生してうなり音が発生したり、駆動周波数の整数倍の高調波信号が発生してノイズ成分が生じることがあった。
また、連続的に寸法変化を起こす積層型圧電素子を長時間駆動すると、素子温度が上昇し、この素子温度上昇分のエネルギーが放熱量を上回ると、加速的に素子温度が上昇するいわゆる熱暴走現象が生じ、温度上昇に伴い圧電体の変位量が低下し、さらには圧電体材料のキュリー点以上に圧電体層が高温になることで圧電体の変位量が急激に低下するという問題があった。したがって、素子温度の上昇を抑制するために、比抵抗の小さい金属層が求められていた。
さらに、圧電体の変位量は環境温度によって変化する特徴を有するので、従来の積層型圧電素子を、燃料噴射装置等の駆動素子に利用されるアクチュエータとして用いた場合には、素子温度の上昇によって圧電体の変位量が変化することがある。
上記問題の改善方法として、特許文献4に示すような方法がなされたが、高電圧・高圧力下において、長期間連続駆動させるという過酷な条件下では、改善が十分とは言えず、素子中央部の外周に応力が集中し、クラックが生じたり、剥がれたりして、変位量が変化することがあった。
特開昭61−133715号公報 実開平1−130568号公報 特開平10−199750号公報 特開昭60−86880号公報
本発明の課題は、高電圧・高圧力下において大きい変位量を有し、かつ長期間連続駆動させた場合でも前記変位量の変化を抑制することができる耐久性に優れた積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、積層型圧電素子における複数の金属層が、積層方向に隣り合う両側の金属層と異なる特定の金属充填率を有する金属層を複数含んでいる場合には、素子に加わる応力を分散させることができるので、大きな変位量が得られ、共振現象を抑制することができ、高電圧・高圧力下において長期間連続駆動させた場合であっても、変位量の変化を抑制し、かつ積層部分のデラミネーションを抑制することができ、耐久性に優れた積層型圧電素子を得ることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の積層型圧電素子は、以下の構成からなる。
(1)複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い低充填金属層を複数含んでいることを特徴とする積層型圧電素子。
(2)複数の前記低充填金属層は、該低充填金属層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されている前記(1)記載の積層型圧電素子。
(3)複数の前記低充填金属層が積層方向に規則的に配設されている前記(1)又は(2)記載の積層型圧電素子。
(4)前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い高充填金属層を複数含んでいる前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(5)複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い高充填金属層を複数含んでいることを特徴とする積層型圧電素子。
(6)複数の前記高充填金属層は、該高充填金属層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されている前記(5)記載の積層型圧電素子。
(7)複数の前記高充填金属層が積層方向に規則的に配設されている前記(5)又は(6)記載の積層型圧電素子。
(8)前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い低充填金属層を複数含んでいる前記(5)〜(7)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(9)前記低充填金属層に対して積層方向に隣り合う金属層が前記高充填金属層である前記(4)又は(8)記載の積層型圧電素子。
(10)前記低充填金属層に対して積層方向に隣り合う両側の金属層が前記高充填金属層である前記(4)又は(8)記載の積層型圧電素子。
(11)前記高充填金属層が金属の充填率のピークであり、該高充填金属層から積層方向に2層以上の金属層にわたって金属の充填率が漸次減少する傾斜領域を有している前記(4)〜(10)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(12)前記低充填金属層は、空隙を介して互いに離隔した状態で配設された複数の部分金属層で構成されている前記(1)〜(4),(8)〜(10)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(13)前記複数の金属層のうち、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い金属層を低充填金属層とし、金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い金属層を高充填金属層とし、前記低充填金属層及び高充填金属層を除く他の金属層における金属の充填率をXとし、前記低充填金属層における金属の充填率をYとするとき、充填率の比(Y/X)が0.1〜0.9の範囲にある前記(1)〜(12)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(14)前記複数の金属層のうち、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い金属層を低充填金属層とし、金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い金属層を高充填金属層とし、前記低充填金属層及び高充填金属層を除く他の金属層における金属の充填率をXとし、前記高充填金属層における金属の充填率をZとするとき、充填率の比(Z/X)が1.05〜2の範囲にある前記(1)〜(13)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(15)前記金属層が周期律表第8〜11族元素から選ばれる金属を主成分とし、前記金属層中の周期律表第8〜10族元素の含有量をM1(質量%)とし、周期律表第11族元素の含有量をM2(質量%)とするとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100の関係を満足する前記(1)〜(14)のいずれかに記載の積層型圧電素子。
(16)前記金属層中の周期律表第8〜10族元素がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsから選ばれる少なくとも1種であり、前記周期律表第11族元素がCu、Ag及びAuから選ばれる少なくとも1種である前記(15)記載の積層型圧電素子。
(17)前記金属層がCuを主成分とする前記(1)〜(15)のいずれかに記載の積層型圧電素子
(18)複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、積層方向の両端には、圧電体で構成された不活性層が形成されており、前記不活性層に隣接する金属層は、該金属層における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層における金属の充填率よりも高い高充填金属層であることを特徴とする積層型圧電素子。
19)噴出孔を有する容器と、該容器内に収納される前記(1)〜(18)のいずれかに記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に充填された液体が、前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出させるように構成されたことを特徴とする噴射装置。
本発明の積層型圧電素子によれば、複数の金属層が、積層方向に隣り合う両側の金属層と異なる特定の金属充填率を有する金属層を複数含んでいるので、変位の異なる金属層が素子内に配置されることになる。すなわち、低充填金属層の周辺における圧電体層は変位が小さくなり、高充填金属層の周辺における圧電体層は変位が大きくなり、素子内に変位の異なる箇所が分散する。このように変位の異なる金属層を素子内に分散して配置すると、応力集中による素子変形の抑圧が緩和されるので、圧電素子全体の変位量を大きくすることができる。しかも、圧電素子の変形による応力集中を抑制することができるので、高電圧・高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、積層部分に生じるデラミネーションを抑制することができる。さらに、所定の金属層を複数配置することで、圧電素子の変位(寸法変化)が揃った場合に生じる共振現象を抑制することができるので、うなり音発生を防止することができると共に、高調波信号の発生を防止することができ、制御信号のノイズを抑止することができる。
特に、前記(4),(8)〜(11)記載の積層型圧電素子によれば、素子変形による応力を金属充填率の高い高充填金属層周辺に集中させると共に、変位が小さく金属充填率の低い低充填金属層周辺の圧電体層を応力緩和層として作用させることができるので、応力集中による素子変形の抑圧を、より緩和することができる。
前記(15)記載の積層型圧電素子によれば、金属層が周期律表第8〜11族元素から選ばれる金属を主成分とし、前記金属層中の周期律表第8〜10族元素と、周期律表第11族元素との含有量が、所定の関係を満足するので、圧電体層と金属層とを同時焼成することが可能となり、その結果、圧電体層と金属層との界面(積層界面)が強固に結合してデラミネーションをより抑制することができる。しかも、素子が変位して金属層に応力が加わっても、金属層自体が伸縮できるので、応力が一点に集中することがなく、耐久性に優れる。
本発明の積層型圧電素子は、連続駆動させても所望の変位量が実効的に変化しないため、耐久性に優れた高信頼性の噴射装置を提供することができる。
<積層型圧電素子>
以下、本発明の積層型圧電素子の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、本実施形態の積層型圧電素子を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。図2は、本実施形態にかかる積層型圧電素子の積層構造を示す部分拡大断面図である。図3は、本実施形態にかかる高充填金属層を示す部分拡大断面図である。図4は、本実施形態にかかる積層型圧電素子の他の積層構造を示す部分拡大断面図である。図5は、本実施形態にかかる積層型圧電素子の他の積層構造を示す部分拡大断面図である。図6は、本実施形態にかかる圧電体層の空隙を説明するための概略説明図である。
図1に示すように、本実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層11と複数の金属層12とを交互に積層してなる積層体13を有し、該積層体13の対向する側面に一対の外部電極15が配設されている(一方の外部電極は不図示)。
金属層12は、図1(b)に示すように、圧電体層11の主面全体には形成されておらず、いわゆる部分電極構造となっている。この部分電極構造の複数の金属層12は、一層おきに積層体13の対向する側面にそれぞれ露出するように配置されている。これにより、金属層12は、一層おきに、一対の外部電極15に電気的に接続されている。なお、一対の外部電極15は、隣設する側面に形成してもよい。
積層体13の積層方向の両端側には、図1(a)に示すように、圧電体層で形成された不活性層14が積層されている。この積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、一対の外部電極15にリード線を半田によりそれぞれ接続固定し、リード線を外部電圧供給部に接続すればよい。この外部電圧供給部からリード線を通じて隣り合う金属層12間に所定の電圧を印加することにより、各圧電体層11が逆圧電効果によって変位する。これは、金属層12を後述する銀−パラジウム合金等の金属材料で形成しているので、金属層12を通じて各圧電体11に所定の電圧を印加すると、圧電体11を逆圧電効果による変位を起こさせる作用を有する。
一方、不活性層14は、一方の主面側に金属層12が配置されているのみであり、他方の主面側には金属層12が配置されていないので、電圧を印加しても変位が生じない。
ここで、本実施形態にかかる複数の金属層12は、図2に示すように、該金属層12を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層(金属層12a)よりも低い低充填金属層12bを複数含んでいる。これにより、低充填金属層12b周辺の圧電体層は変位が小さくなり、低充填金属層12bよりも金属充填率の大きい金属層12a周辺の圧電体層は変位が大きくなる。したがって、変位の異なる金属層が素子内に分散して配置されることになるので、圧電素子全体の変位量を大きくすることができると共に、高電圧・高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、積層部分に生じるデラミネーションを抑制することができる。また、共振現象を抑制することができるので、うなり音発生を防止することができる。さらに、高調波信号の発生を防止することができるので、制御信号のノイズを抑止することもできる。
複数の圧電体層11のうち駆動変形する箇所は、金属層12に挟持された部分である。したがって、複数の金属層12のうち圧電体層11を介して重なりあう部分に、低充填金属層12bを形成するのが好ましい。これにより、圧電素子の変位(寸法変化)が揃った場合に生じる共振現象を確実に抑制することができる。
複数の低充填金属層12bは、該低充填金属層12b以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されているのが好ましい。本実施形態の他の金属層としては、図2に示す金属層12aと、図3に示す後述する高充填金属層12cである。ここで、低充填金属層12bは、他の金属層(金属層12a,高充填金属層12c)よりも金属の充填率が低い。したがって、低充填金属層12bは、他の金属層よりも柔軟性に優れるので、駆動中に応力が加わると変形して該応力を緩和することができる(応力緩和効果)。すなわち、低充填金属層12bは、応力緩和層として作用する。
特に、本実施形態では、この複数の低充填金属層12bが積層方向に規則的に配設されているのが好ましい。これは、素子全体に加わる応力を分散させるには、規則的に応力緩和層を配置させることが効果的であるからである。また、積層体13は、少なくとも3層以上の圧電体層11を積層して構成されていると共に、低充填金属層12bが所定の順序で繰り返し配置されている部分を有することが好ましい。
前記複数の低充填金属層12bが積層方向に規則的に配置されているとは、低充填金属層12b間に存在する他の金属層(金属層12a,高充填金属層12c)の層数が、いずれの低充填金属層12b間においても同じである場合はもちろんのこと、積層方向において応力がほぼ均一に分散される程度に、低充填金属層12b間に存在する他の金属層12の層数が近似している場合も含む概念である。具体的には、低充填金属層12b間に存在する他の金属層12の層数は、各層数の平均値に対して±20%の範囲内、好ましくは各層数の平均値に対して±10%の範囲内、より好ましくはすべて同数であるのがよい。
前記他の金属層である金属層12aは、金属の充填率が低充填金属層12bの充填率よりも高い金属層である。この金属層12aは、主たる金属層であり、該主たる金属層とは、金属層12中において同等の金属充填率を有する金属層が最も多い金属層のことを意味する。この主たる金属層である金属層12aは、全金属層の平均の金属充填率に近いものから順に全金属層数の1/3以上の層数を占めるのが好ましい。これは、主たる金属層12aに求められる機能が、積層型圧電素子を駆動する電極として安定に機能することであり、そのためには、素子に印加された電圧を各圧電体層11に均一に加えて圧電変位を均一に行うことが求められるからである。したがって、主たる金属層12aが、全金属層の平均の金属充填率に近いものから順に全金属層数の1/3以上であると、素子に印加された電圧が各圧電体層11に均一に加わるため、圧電体層11が不均一に駆動変形することなく、素子が均一に駆動変形して、耐久性のある素子となる。さらに、主たる金属層12aに接する圧電体層11は、応力が集中することがないので変位量が大きくなり、低充填金属層12bに接する圧電体層11は応力緩和層となるので、素子の駆動変位を維持すると共に、素子の応力一点集中を避けることができ、その結果、変位量が大きくなると共に、耐久性に優れる。
変位の位相をそろえて応答速度を速くするためには、主たる金属層12aが、全金属層の平均の金属充填率に近いものから順に全金属層数の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは90〜99%であるのがよい。なお、90%以上では、変位位相がそろいさらに高速の応答速度が得られるが、99%を超えると位相が完全にそろうことで、素子がうなり音を発するため、好ましくない。
なお、金属層12の総層数は、用途に応じて任意に選定されるものであり、特に限定されるものではないが、通常、2〜10000層、好ましくは5〜1000層である。
複数の金属層12中において、主たる金属層12aの層数が最も多いことが好ましい。これにより、素子に印加された電圧が各圧電体層11に均一に加わるために、圧電体層11が不均一に駆動変形することがなく、さらに変位の位相がそろうことで、素子が均一に駆動変形して、応答速度が速いだけでなく、耐久性のある積層型圧電素子になる。
主たる金属層12aが、金属層12中で最も高い金属充填率の金属層と、最も低い金属充填率の金属層以外の金属層であることが好ましい。これは、駆動中の積層型圧電素子の応力が、最も高い金属充填率の金属層12の近傍にある圧電体層11に印加されるため、主たる金属層12aが、最も高い金属充填率の金属層以外であれば、金属層12aに接する圧電体層11との間が強固に密着した耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。さらに、低い金属充填率の金属層12に接する圧電体層11の素子変位が弱いため、主たる金属層12aが、最も低い金属充填率の金属層以外であれば、積層型圧電体素子の変位が小さくなることもない。すなわち、主たる金属層12aを、全ての金属層12の中で、最も高い金属充填率の金属層と最も低い充填率の金属層以外のものとすることで、駆動変位を大きく、耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。
さらに、金属層12の金属充填率を変化させることで、圧電体層11の変位の大きさを制御できるので、圧電体層11の厚みを変える必要もなく、量産性に優れる。また、主たる金属層12aは、略同一な金属充填率で構成されているのが好ましい。これにより、さらに変位が大きくなり、応答性が速く耐久性も向上する。
複数の金属層12は、図3に示すように、該金属層12を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層(金属層12a)よりも高い高充填金属層12cを複数含んでいるのが好ましい。これは、図6に示すように、金属充填率の高い高充填金属層12cは、金属層のなかに空隙(ボイド)12c’等の金属の充填されていない欠陥部分が少ないため、該金属層12cに接した圧電体層11は、素子に電圧が印加された際には、変位の大きい箇所になる。そのため、素子を駆動させた場合には、変位の大きい箇所になるので、応力が集中する(応力集中効果)。このような電極層を素子内に配置することで、素子の一点に応力が集中することなく、応力を分散させることができる。そのため、耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子になる。
高充填金属層12cは、金属の充填率が低充填金属層12b及び主たる金属層12aの充填率よりも高い金属層である。すなわち、主たる金属層12a、低充填金属層12b及び高充填金属層12cの金属の充填率は、高充填金属層12c>主たる金属層12a>低充填金属層12bの関係である。これにより、主たる金属層12aが全ての金属層12の中で、最も高い金属充填率の金属層と、最も低い充填率の金属層以外の金属層となるので、駆動変位が大きく、耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。また、変位の異なる金属層12が素子内に確実に配置されることになる。すなわち、低充填金属層12bの周辺における圧電体層11は変位が小さくなり、高充填金属層12cの周辺における圧電体層11は変位が大きくなる。その結果、変位の異なる金属層を素子内に配置することによる効果をより効率よく奏することができる。
具体的には、低充填金属層12b及び高充填金属層12cを除く他の金属層(すなわち主たる金属層12a)における金属の充填率をXとし、低充填金属層12bにおける金属の充填率をYとするとき、充填率の比(Y/X)が0.1〜0.9、好ましくは0.3〜0.9、より好ましくは0.5〜0.8の範囲にあるのがよい。これにより、低充填金属層12bの応力緩和効果が発生すると共に、素子形状が保たれる。特に、前記比(Y/X)が0.3〜0.9であると、低充填金属層12bに隣接する圧電体層11も変位駆動するため、素子の変位が大きく耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。さらに、前記比(Y/X)が0.5〜0.8であると、より素子の変位が大きく、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。前記X及びYの具体的な値は、金属層12の組成等により任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、Xは45〜90%、好ましくは55〜85%、より好ましくは60〜80%、Yは3〜60%、好ましくは20〜60%、より好ましくは30〜50%であるのがよく、X及びYがこの範囲内で前記比(Y/X)を満たすのが好ましい。
一方、前記比(Y/X)が0.1よりも小さくなると、圧電体層11と金属層とが密着しにくくなるので、積層体にデラミネーションが生じるおそれがあり、0.9よりも大きくなると、低充填金属層12bの応力緩和効果が低くなるおそれがあり、素子の一点に応力が集中する箇所が現れ、素子の耐久性が低下するおそれがある。
また、低充填金属層12b及び高充填金属層12cを除く他の金属層(すなわち主たる金属層12a)における金属の充填率をXとし、高充填金属層12cにおける金属の充填率をZとするとき、充填率の比(Z/X)が1.05〜2、好ましくは1.05〜1.5、より好ましくは1.1〜1.2の範囲にあるのがよい。これにより、高充填金属層12cの応力集中効果が発生すると共に、素子形状が保たれる。特に、前記比(Z/X)が1.05〜1.5であると、高充填金属層12cに隣接する圧電体層11と主たる金属層12aに隣接する圧電体層11もほぼ同様に変位駆動するため、素子の変位が大きくそろった耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。また、前記比(Z/X)が1.1〜1.2であると、より素子の変位が大きく、耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。前記X及びZの具体的な値は、前記比(Y/X)におけるX及びYと同様に、金属層12の組成等により任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、Xは45〜90%、好ましくは55〜85%、より好ましくは60〜80%、Zは60〜100%、好ましくは70〜100%、より好ましくは72〜95%であるのがよい。
一方、前記比(Z/X)が2よりも大きくなると、高充填金属層12cにのみ応力が集中して、高充填金属層12cと圧電体層11との界面がはがれて、積層体にデラミネーションが生じるおそれがあり、1.05よりも小さくなると、高充填金属層12cの応力集中効果が低くなるおそれがあり、素子の一点に応力が集中する箇所が現れ、素子の耐久性が低下するおそれがある。
金属層12を構成する金属の前記充填率は、積層型圧電素子を積層方向に切断した面で測定して得られた値である。具体的には、その切断面において、金属層12を走査型電子顕微鏡(SEM)や金属顕微鏡等で観察すると、金属成分だけでなく、ボイドや、セラミック成分等の金属以外の要素で構成されているのがわかる。そこで、任意の金属層1層の断面において、金属のみで構成された部分の面積を測定し、該金属のみで構成された部分の面積の総和をその金属層の総面積で除したものを金属充填率とする。この金属充填率を、金属層12a、低充填金属層12b及び高充填金属層12cのそれぞれについて測定することにより、各層を区別することができる。
本実施形態では、図4に示すように、主たる金属層12aよりも金属充填率の高い高充填金属層12cと、主たる金属層12aよりも金属充填率の低い低充填金属層12bとが,少なくとも1層の圧電体層11を挟んで対向配置されていることが好ましい。これにより、素子駆動中の応力を、金属充填率の高い高充填金属層12cに集中させて素子に加わる応力を分散し、さらに、応力を集める金属層の隣に応力緩和層となる金属充填率の低い低充填金属層12bを配置することで、素子に加わる応力を効率よく分散緩和することができる。
特に、図5に示すように、低充填金属層12bに対して積層方向に隣り合う両側の金属層が高充填金属層12cであるのが好ましい。これにより、素子駆動中の応力を金属充填率の高い高充填金属層12cに集中させて素子に加わる応力を分散し、さらに応力を集める金属層の隣に応力緩和層となる金属充填率の低い低充填金属層12bを配置することで、素子に加わる応力を分散緩和することができる。また、応力を集める層である高充填金属層12cで、応力緩和層である低充填金属層12bを挟持すると、応力を低充填金属層12b中に閉じ込め、素子全体の応力を分散緩和することができる。その結果、該素子を圧電アクチュエータに用いた場合には、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。なお、挟持される低充填金属層12bの層数は少ない方が応力を閉じ込める効果をより奏することができるので、該層数は1層が最適である。
また、積層体13の積層方向に、低充填金属層12b、高充填金属層12c、主たる金属層12aの順序で間に圧電体層11をそれぞれ介して配置され、かつ主たる金属層12aが金属充填率の高い順に積層されていることが好ましい。これにより、素子駆動中の応力を、高充填金属層12cに集中させることで、素子に加わる応力を分散させ、さらに、応力を集める金属層の隣に応力緩和層となる低充填金属層12bを配置させることで、素子に加わる応力を分散緩和させることができるだけでなく、主たる金属層12aを金属充填率の高い順に配置することで、高充填金属層12cに集まった応力を徐々に分散させることができると共に、金属充填率を高くすることで、隣接する圧電体層11の変位量を大きくすることができるので、変位が大きく耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電体素子とすることができる。
高充填金属層12cが金属の充填率のピークであり、該高充填金属層12cから積層方向に2層以上、好ましくは2〜5層以上の金属層にわたって金属の充填率が漸次減少する傾斜領域を有しているのが好ましい。これにより、素子駆動中の応力は、金属充填率の高い高充填金属層12cに集中するが、所定の傾斜領域を有すると、該高充填金属層12cに集まった応力を徐々に分散させることができる。
金属層12は、図6に示すように、所定の空隙(ボイド)12a’, 12b’, 12c’を有しているのが好ましい。これは、金属層12に金属成分以外の絶縁物質が含有すると、素子を駆動した際には、圧電体層11に電圧を印加できない部分が生じるので、圧電変位を大きくすることができず、駆動時の応力が該金属層12に集中して破壊の起点となるおそれがあるからである。金属層12が所定の空隙(ボイド)を有していると、金属部分に応力が加わった際に、空隙(ボイド)の部分があることで、金属が変形して応力を分散緩和することができる。また、金属層12に接する圧電体層11が、圧電変位する際には、空隙(ボイド)の部分があることで、圧電体層11を部分的にクランプすることになり、全面でクランプするときよりも圧電体層11が束縛される力が小さくなって変位しやすくなり、変位量を大きくすることができる。その結果、素子の変位がより大きく耐久性の高い積層型圧電体素子とすることができる。
特に、主たる金属層12aに空隙(ボイド)12a’を設け、該金属層12aの断面における全断面積に対する空隙(ボイド)12a’の占める面積比(ボイド率)が5〜70%、好ましくは7〜70%、より好ましくは10〜60%であるのがよい。これにより、変位量が大きくなるので、変位量に優れた積層型圧電素子を得ることができる。特に、前記ボイド率が7〜70%または10〜60%であると、圧電体層11をよりスムーズに変形できるとともに、金属層12の導電性を充分に有しているため、積層型圧電素子の変位量を増大することができる。
一方、前記ボイド率が5%より少ないと、圧電体層11が電圧を印加されて変形する際に金属層12から束縛を受け、圧電体層11の変形が抑制され、積層型圧電素子の変形量が小さくなり、発生する内部応力も大きくなるため、耐久性にも悪い影響を与えるおそれがある。また、前記ボイド率が70%より大きいと、電極部分に極端に細い部分が生じる為、金属層12自体の強度が低下し、金属層12にクラックが生じやすくなり、断線等を生じるおそれがあるので好ましくない。
金属層12の面積に対する前記ボイドの占める割合(ボイド率)は、積層型圧電素子を積層方向に切断した面で測定して得られた値である。具体的には、その切断面において、金属層12の部分に存在する空隙(ボイド)の面積を測定し、そのボイドの面積の総和を金属層12の面積で除した値を100倍した値である。
上記空隙(ボイド)を有する金属層12は、主に金属と空隙(ボイド)とから構成されている。このように金属層12が構成されると、金属もボイドもどちらも応力に対して変形可能であるため、さらに耐久性の高い積層型圧電素子とすることができる。
特に、低充填金属層12bが、主に金属とボイドから構成されていると、さらに耐久性の高い積層型圧電素子とすることができる。すなわち、低充填金属層12bは、図6に示すように、空隙(ボイド)12b’を介して互いに離隔した状態で配設された複数の部分金属層で構成されているのが好ましい。これにより、低充填金属層12bに接する圧電体層11が、金属層のなかでも空隙(ボイド)12b’等の金属の充填されていない部分に接すると、その部分の圧電体は素子に電圧が印加されても変位しない上、駆動中に応力が加わると変形して応力を緩和することができる(応力緩和効果)。すなわち、部分金属層で構成されている低充填金属層12bは、応力緩和層として作用する。したがって、その金属層に接する圧電体層11は駆動変位が小さくなり、素子の応力が一点に集中するのを避けることができる。その結果、耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子とすることができる。
具体的には、低充填金属層12bの断面における全断面積に対する空隙(ボイド)12b’の占める面積比(ボイド率)は20〜90%であることが好ましい。これにより、さらに変位量が大きくなり、変位量に優れた積層型圧電素子を得ることができる。
金属層12は、周期律表第8〜11族元素から選ばれる金属を主成分とするのが好ましい。これは、上記の金属組成物は高い耐熱性を有するため、焼成温度の高い圧電体層11と金属層12を同時焼成することが可能となるからである。そのため、外部電極15の焼結温度を圧電体層11の焼結温度より低温で作製することが出来るので、圧電体層11と外部電極15との間の激しい相互拡散を抑制することができる。
さらに、金属層12中の周期律表第8〜10族元素の含有量をM1(質量%)とし、周期律表第11族元素の含有量をM2(質量%)とするとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100の関係を満足する金属を主成分とするのが好ましい。これは、周期律表第8〜10族元素の含有量であるM1が15質量%を超えると、比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合には、金属層12が発熱し、該発熱が温度依存性を有する圧電体層11に作用して変位特性を減少させてしまうため、積層型圧電素子の変位量が小さくなる場合があるからである。さらに、外部電極15を形成した際には、外部電極15と金属層12とが相互拡散して接合するが、M1が15質量%を超えると、外部電極15中に金属層成分が拡散した箇所の硬度が高くなるため、駆動時に寸法変化する積層型圧電素子においては、耐久性が低下するおそれがあるからである。
特に、金属層12中の11族元素の圧電体層11へのイオンマイグレーションを抑制するため、M1を0.001質量%以上15質量%以下とするのが好ましい。積層型圧電素子の耐久性を向上させる上で、M1を0.1質量%以上10質量%以下とするのが好ましい。熱伝導に優れより高い耐久性を必要とする場合には、M1を0.5質量%以上9.5質量%以下とするのが好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には、M1を2質量%以上8質量%以下とするのが好ましい。
一方、11族元素の含有量であるM2が85質量%未満になると、金属層12の比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合には、金属層12が発熱する場合があるので好ましくない。特に、金属層12中の11族元素の圧電体層11へのイオンマイグレーションを抑制するため、M2を85質量%以上99.999質量%以下とするのが好ましい。積層型圧電素子の耐久性を向上させるという上で、M2を90質量%以上99.9質量%以下とするのが好ましい。より高い耐久性を必要とする場合には、M2を90.5質量%以上99.5質量%以下とするのが好ましく、さらに高い耐久性を求める場合には、M2を92質量%以上98質量%以下とするのが好ましい。
特に、低充填金属層12bが応力を緩和する際、印加された応力を緩和するということは、加わった運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、応力を開放することになり、応力緩和部分が熱をもつことになる。圧電体は温度が上昇すると、圧電変位の力が小さくなり、ひとたびキュリー点まで温度が上昇すると冷却しても分極の効果が無くなり圧電変位の力が大きく損なわれる。そこで、低充填金属層12bが、ヒートシンクの役割を果たすことができれば、応力緩和部分から素子の外側へ熱を散逸することが可能となる。
ここで、本発明の組成の金属を用いることで熱の散逸効果が大きくなり、応力緩和効果を、長期間、高い耐久性を持って維持することが可能となる。特に、熱伝導の高い銀が高濃度に含まれる組成では、もっとも熱の散逸効果も大きく、さらに、酸化しても、熱の伝導度は衰えず、しかも、電気伝導特性も衰えることが無いので極めて高い耐久性の応力緩和層とすることができる。
金属層12中の金属成分の質量%を示す8〜10族元素のM1、11族元素のM2は、それぞれEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法で特定することができる。
金属層12中の金属成分は、8〜10族元素の金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osから選ばれる少なくとも1種以上であり、11族元素の金属がCu,Ag、Auから選ばれる少なくとも1種以上であるのが好ましい。例示したこれらの金属は、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成である。
上記で例示した金属層12中の金属成分のうち、8〜10族元素の金属がPt、Pdから選ばれる少なくとも1種以上であり、11族元素の金属がAg、Auから選ばれる少なくとも1種以上であるのが好ましい。これにより、耐熱性に優れ、比抵抗の小さな金属層12を形成できる可能性がある。
特に、金属層12中の金属成分は、8〜10族元素の金属がNiであるのが好ましい。これにより、耐熱性に優れた金属層12を形成できる可能性がある。また、11族元素の金属がCuであるのが好ましい。これにより、硬度の低い熱伝導性に優れた金属層12を形成できる可能性がある。
特に、Cuであれば熱伝導特性が高いだけでなく、応力が一方方向から加わった場合、応力が印加された一方向に結晶方向が配向する特徴があるので破断することない強靭な応力緩和効果を発生する。さらに同時焼成して素子を作成するとCu表面に対腐食性の強いCuOの被覆層を形成するので耐久性の強い素子とすることができる(通常のCu金属では、表面が次第にCu2Oの皮膜ができてその後空気中の水分と結合して緑青を形成して腐食する)。
また、金属層12は、上記金属を主成分とする合金であることが好ましい。該合金としては、例えば、銀−パラジウム合金(銀70〜99.999質量%−パラジウム0.001〜30質量%)等の全率固溶する合金が任意の組成比率で焼成温度を制御できるので好ましい。また、金属層12中に上記した金属組成物とともに、酸化物、窒化物または炭化物を添加することが好ましい。これにより、金属層12の強度が増し、積層型圧電素子の耐久性が向上する。特に酸化物は圧電体層11と相互拡散して金属層12と圧電体層11との密着強度を高めるのでより好ましい。
前記酸化物としては、圧電体層11との密着強度が高いことから、PbZrO3−PbTiO3からなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。なお、添加された酸化物等の含有量は、積層型圧電素子の断面SEM像における金属層中の組成の面積比から算出できる。
前記無機組成物(すなわち金属組成物とともに添加する酸化物、窒化物または炭化物)が金属に対して50体積%以下であることが好ましい。これにより、金属層12と圧電体層11との間の接合強度を圧電体層11の強度より小さく出来、さらに好ましくは30体積%以下にすることで積層型圧電素子の耐久性を向上するこができる。
また、金属層12を構成する金属層12a,低充填金属層12b及び高充填金属層12cの各厚みは、金属層12の組成等により任意に選定すればよく、特に限定されるものではないが、通常、金属層12aの厚みは0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度、低充填金属層12bの厚みは0.05〜100μm、好ましくは0.1〜10μm程度、より好ましくは0.5〜5μm程度、高充填金属層12cの厚みは0.1〜200μm、好ましくは0.5〜15μm程度、より好ましくは1〜10μm程度であるのがよい。
圧電体層11は、ペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。これは、圧電体層11が、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)を代表とするペロブスカイト型圧電セラミックス材料等で形成されると、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いことから、変位量を大きくすることができ、さらに、圧電体層11と金属層12を同時に焼成することもできる。上記に示した圧電体層11としては、圧電歪み定数d33が比較的高いPbZrO3−PbTiO3からなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
また、金属層12を積層体13の側面に露出させることが好ましい。これは、金属層12が素子側面で露出していない部分では、駆動時に変位できないことから、駆動時に変位する領域が素子内部に閉じ込められていることになる。このため、変位時の応力が前記境界に集中しやすくなり、耐久性に問題が生じるので好ましくないからである。
積層体13は多角形柱状体であることが好ましい。これは、積層体13が円柱状体であると、真円にしなければ中心軸がぶれてしまうため、高精度の円を作成して積みあげなければならず、同時焼成による量産型の製法を用いるのが困難となるからである。また、略円形状の積層体を積層後、あるいは焼成後に外周を研磨して円柱状にしても、金属層12の中心軸を高精度にそろえることが困難になる。これに対して、積層体13が多角形柱状体であれば、基準線を決定した圧電体層11に金属層12を形成することができ、さらに基準線に沿って積層することができるので、駆動の軸である中心軸を量産型の製法を用いて形成することができるため、耐久性の高い素子とすることができる。
また、上記した通り、本実施形態の積層型圧電素子の側面に端部が露出する金属層12と端部が露出しない金属層12とが交互に構成されているが、前記端部が露出していない金属層12と外部電極15間の圧電体層11に溝が形成されており、この溝内に、圧電体層11よりもヤング率の低い絶縁体が形成されていることが好ましい。これにより、駆動中の変位によって生じる応力を緩和することができるので、積層型圧電素子を連続駆動させても、金属層12の発熱を抑制することができる。
次に、本発明の他の積層型圧電素子にかかる一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図7は、本実施形態の積層型圧電素子の積層構造を示す部分拡大断面図である。なお、図7においては、前述した図1〜図6の構成と同一または同等な部分には同一の符号を付して説明は省略する。図7に示すように、この実施形態の積層型圧電素子は、上記で説明した実施形態と同様に、複数の圧電体層11と複数の金属層12とが交互に積層された積層型圧電素子である。
ここで、複数の金属層12は、該金属層12を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層(金属層12a)よりも高い高充填金属層12cを複数含んでいる。このような構成であっても、高充填金属層12c周辺の圧電体層11は変位が大きくなり、高充填金属層12cよりも金属充填率の小さい主たる金属層12a周辺の圧電体層11は変位が小さくなり、変位の異なる金属層を素子内に配置する構成となるので、上記で説明した実施形態と同様の効果を奏することができる。
本実施形態にかかる複数の高充填金属層12cは、上記で説明した実施形態と同様に、該高充填金属層12c以外の他の金属層(すなわち主たる金属層12a,低充填金属層12b)を複数層挟んでそれぞれ配設されているのが好ましい。また、複数の高充填金属層12cが、積層方向に規則的に配設されているのが好ましい。さらに、複数の金属層12は、該金属層12を構成する金属の充填率が、積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い低充填金属層12bを複数含んでいるのが好ましい。
上記した以外の構成は、上記で説明した実施形態と同様であるので、説明は省略する。
次に、本発明のさらに他の積層型圧電素子にかかる一実施形態について説明する。この実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層11と複数の金属層12とが交互に積層された積層型圧電素子において、積層方向の両端には、圧電体で構成された不活性層14が形成されており、該不活性層14に隣接する金属層11は、該金属層11における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも低い低充填金属層(低充填金属層12b)である。これにより、素子の応力が一点に集中するのを避けることができる。この理由としては、以下の理由が推察される。
すなわち、電圧印加しても、全く電極に挟まれていない不活性層は駆動変形することがないので、不活性層14に隣接する金属層12を境として、駆動変形する部分と、駆動変形しない部分が接しているため、この境界部分に応力が集中する。このとき、金属層12が同じ金属の充填率であると、応力はこの境界部分に一点集中するので、積層型圧電素子を高電圧・高圧力下において長時間連続運転させた場合には、デラミネーションが生じるおそれがあった。
そこで、不活性層14に隣接する金属層11における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも低くなると、低充填金属層12bは、他の金属層よりも柔軟性に優れるので、素子を駆動して圧電体層11が変形した際には、低充填金属層12b自体が変形して応力を緩和することができる(応力緩和効果)。さらに、低充填金属層12bに接する不活性層14は圧電材料で形成されていることから、応力印加により変形して応力を緩和することができる。すなわち、低充填金属層12bと不活性層14が応力緩和効果の相乗作用を生み出す。その上、低充填金属層12b自体が変形するので、低充填金属層12bと隣り合う金属層12に挟まれた圧電体層11は、電圧印加による駆動変形と応力印加による変形とが共存するが、応力を緩和するために低充填金属層12b自体が変形するので、応力印加による変形が支配的になり、応力緩和のために変形する。したがって、駆動変位が小さくなり、素子の応力が一点に集中するのを避けることができる。
さらに、低充填金属層12bに対して積層方向に隣り合う金属層が高充填金属層12cであるのが好ましい。これにより、素子駆動中の応力を高充填金属層12cに集中させて素子に加わる応力を端部に分散し、さらに応力を集める金属層の隣に応力緩和層となる低充填金属層12bを配置することで、素子に加わる応力を端部に分散緩和することができる。また、応力を集める層である高充填金属層12cと不活性層14とで、応力緩和層である低充填金属層12bを挟持すると、応力を低充填金属層12b中に閉じ込め、素子全体の応力を分散緩和することができる。その結果、該素子を圧電アクチュエータに用いた場合には、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。
特に、従来、積層数が例えば50層よりも少ない低い積層数の積層型圧電体素子を形成する場合には、不活性層14近傍の圧電体層11の金属充填率を不活性層14に近づくにつれて増加させて、変形量を抑止して境界部分に応力が集中することを抑えていた。このため、圧電体層11を形成するために、数種類の金属充填率の圧電シートを準備して積層することになり、コストの高い物となっていたが、不活性層14に隣接する金属層11のみの金属の充填率を積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも低い低充填金属層(低充填金属層12b)とすることで、低コストで高い耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。さらに、両端部の不活性層14に隣接する金属層11における金属の充填率を積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも低い低充填金属層(低充填金属層12b)とすることで、さらに低コストで高い耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。
一方、積層数が多い積層型圧電体素子においては、さらに、積層方向に隣り合う両側の金属層(金属層12a)よりも金属の充填率が低い低充填金属層12bを複数含むことにより、低充填金属層12b周辺における圧電体層は、圧電体変位の局所的な応力を低充填金属層が容易に変形することで吸収することができるので、周辺の圧電体層は変位が小さくなり、変位の異なる金属層が素子内に分散して配置されることになる。このため、高電圧・高圧力下で長期間連続駆動させた場合であっても、応力集中による素子変形の抑圧が緩和されるので、積層部分に生じるデラミネーションを抑制することができる。また、共振現象を抑制することができるので、うなり音発生を防止することができる。さらに、高調波信号の発生を防止することができるので、制御信号のノイズを抑止することもでき、圧電アクチュエータとして用いた場合には、誤作動を防止することができる。
なお、上記した以外の構成は、上記で説明した実施形態と同様であるので、説明は省略する。
次に、本発明のさらに他の積層型圧電素子にかかる一実施形態について説明する。この実施形態の積層型圧電素子は、複数の圧電体層11と複数の金属層12とが交互に積層された積層型圧電素子において、積層方向の両端には、圧電体で構成された不活性層14が形成されており、該不活性層14に隣接する金属層11は、該金属層11における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも高い高充填金属層(高充填金属層12c)である。これにより、耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子になる。この理由としては、以下の理由が推察される。
すなわち、電圧印加しても、全く電極に挟まれていない不活性層は駆動変形することがないので、不活性層14に隣接する金属層12を境として、駆動変形する部分と、駆動変形しない部分が接しているために、この境界部分に応力が集中する。このとき、金属層12が同じ金属の充填率であると、応力はこの境界部分に一点集中するので、積層型圧電素子を高電圧・高圧力下において長時間連続運転させた場合には、デラミネーションが生じるおそれがあった。
そこで、不活性層14に隣接する金属層11における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも高くなると、素子を駆動して圧電体層11が変形した際には、高充填金属層12cは、該高充填金属層12cに接する圧電体層11とともに高充填金属層12cに接する不活性層14をも拘束する力が強いことから、圧電体変位の局所的な応力を高充填金属層が変形することなくはね返すので、該高充填金属層12cに接する圧電体層11は、より強い変位を行うので、素子の圧電変位量を増大することができる。
さらに、素子を駆動した際には、前記理由から高充填金属層12c自体は変形しないので、素子全体に加わる応力が高充填金属層12c近傍に集中する(応力集中効果)。したがって、このような高充填金属層12cを素子駆動部分の端部に配置すると、素子の駆動部分に応力が集中することなく、応力を素子の端部に分散することができ、耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子になる。
特に、従来、積層数が例えば50層よりも少ない低い積層数の積層型圧電体素子を形成する場合には、不活性層14近傍の圧電体層11の金属充填率を不活性層14に近づくにつれて増加させて、変形量を抑止して境界部分に応力が集中することを抑えていた。このため、圧電体層11を形成するために、数種類の圧電シートを準備して積層することになり、コストの高い物となっていたが、不活性層14に隣接する金属層11における金属の充填率のみを積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも高い高充填金属層(高充填金属層12c)とすることで、低コストで高い駆動力と高い耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。さらに、両端部の不活性層14に隣接する金属層11における金属の充填率を積層方向に隣り合う金属層11における金属の充填率よりも低い低充填金属層(高充填金属層12b)とすることで、さらに低コストで高い耐久性のある積層型圧電素子とすることができる。
なお、上記した以外の構成は、上記で説明した実施形態と同様であるので、説明は省略する。
<製造方法>
次に、上記で説明した実施形態にかかる積層型圧電素子の製法について説明する。
まず、PbZrO3−PbTiO3等からなるペロブスカイト型酸化物の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電体層11となるセラミックグリーンシートを複数作製する。
次に、例えば銀−パラジウム合金等の金属層12を構成する金属粉末に、アクリルビーズ等の乾燥時には接着固定され、焼成時には揮発する有機物を含有させて、バインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。
ここで、前記有機物と金属粉末との比を変えることで、金属層12の金属含有率を変化させることができる。すなわち、前記有機物は焼成時において揮発するので、金属層12中に空隙(ボイド)が形成される。したがって、前記有機物が少ない場合には、金属充填率は高くなり、前記有機物が多くなると金属含有率は低くなる。具体的な各金属層12a〜12cにおける有機物の含有量としては、金属層12aは、金属粉末100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部、低充填金属層12bは、金属粉末100質量部に対して0.1〜50質量部、好ましくは2〜10質量部、高充填金属層12cは、金属粉末100質量部に対して0〜5質量部、好ましくは0〜2質量部であるのがよい。
前記有機物としては、焼成時に良好な熱分解挙動を示すものであればよく、特に制限さるものではないが、前記で例示したアクリルビーズの他、アクリル系,α−メチルスチレン系等の樹脂ビーズが好ましい。アクリルビーズ及び樹脂ビーズは、中空構造であってもよい。アクリルビーズ及び樹脂ビーズの平均粒径は0.01〜3μm程度が好ましい。
また、アクリルビーズ等の有機物をバインダー及び可塑剤等を添加混合してアクリルビーズペーストを作製し、銀−パラジウム等の金属層12を構成する金属粉末に、バインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製して、前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって、アクリルビーズペーストと導電性ペーストを積層印刷してもよい。これにより、さらに量産性に優れた印刷が可能となる。
そして、導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、重石をのせた状態でこの積層体について所定の温度で脱バインダーを行った後、金属層にボイドができるように重石をのせずに焼成することによって積層体13が作製される。焼成温度は、900〜1200℃、好ましくは900〜1000℃であることが好ましい。これは、焼成温度が900℃以下では、焼成温度が低いため焼成が不十分となり、緻密な圧電体を作製することが困難になる。また、焼成温度が1200℃を超えると、金属層と圧電体との接合強度が大きくなるからである。
このとき、不活性層14を構成するグリーンシート中に、銀−パラジウム等の金属層12を構成する金属粉末を添加したり、不活性層14の部分のグリーンシートを積層する際に、銀−パラジウム等の金属層12を構成する金属粉末及び無機化合物とバインダーと可塑剤からなるスラリーをグリーンシート上に印刷することで、不活性層14とその他の部分の焼結時の収縮挙動ならびに収縮率を一致させることができるので、緻密な積層体13を形成することができる。
なお、積層体13は、上記製法によって作製されるものに限定されるものではなく、複数の圧電体層11と複数の金属層12とを交互に積層してなる積層体13を作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
その後、積層型圧電素子の側面に端部が露出する金属層12と端部が露出しない金属層12とを交互に形成して、端部が露出していない金属層12と外部電極15間の圧電体部分に溝を形成して、この溝内に、圧電体層11よりもヤング率の低い、樹脂またはゴム等の絶縁体を形成する。ここで、前記溝は内部ダイシング装置等で積層体13の側面に形成される。
次に、ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cm3に制御する。ついで、このシートを、柱状積層体13の外部電極形成面に転写し、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ積層体13の焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行うことにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極15を形成することができる。
このとき、外部電極15を構成するペーストを多層のシートに積層してから焼付けを行っても、1層ごとに積層しては焼付けを行っても良いが、多層のシートに積層してから一度に焼付けを行うほうが量産性に優れている。そして、層ごとにガラス成分を変える場合には、シートごとにガラス成分の量を変えたものを用いればよいが、最も圧電体層11に接した面にごく薄くガラスリッチな層を構成したい場合には、積層体13に、スクリーン印刷等の方法で、ガラスリッチなペーストを印刷した上で、多層のシートを積層すればよい。このとき、印刷の代わりに5μm以下のシートを用いても良い。
なお、前記銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を有効的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と金属層12を拡散接合させ、また、外部電極15中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極15と柱状の積層体13側面とを部分的に接合させるという点から、500〜800℃が望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜800℃が望ましい。
一方、焼き付け温度が800℃より高い場合には、銀ガラス導電性ペーストの銀粉末の焼結が進みすぎ、有効的な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができず、外部電極15が緻密になりすぎてしまい、結果として外部電極15のヤング率が高くなりすぎ駆動時の応力を十分に吸収することができずに外部電極15が断線してしまう可能性がある。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行った方がよい。また、焼き付け温度が500℃よりも低い場合には、金属層12端部と外部電極15の間で十分に拡散接合がなされないために、ネック部が形成されず、駆動時に金属層12と外部電極15の間でスパークを起こしてしまう可能性がある。
次に、外部電極15を形成した積層体13をシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、積層体13の溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から積層体13を引き上げ、積層体13の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び積層体13の側面にコーティングした前記シリコーンゴムを硬化させることにより、積層型圧電素子を得る。
この積層型圧電素子を圧電アクチュエータに用いる場合には、外部電極15にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極15に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、積層体13を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を利用した圧電アクチュエータが得られる。
この圧電アクチュエータのリード線を外部の電圧供給部に接続し、リード線及び外部電極15を介して金属層12に電圧を印加させれば、各圧電体層11は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。また、この圧電アクチュエータは、本発明の積層型圧電素子を備えているので、高電圧・高圧力下において大きい変位量を有し、かつ長期間連続駆動させた場合でも前記変位量の変化を抑制することができる。本発明における高電圧・高圧力下とは、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子)に、室温で0〜+300Vの交流電圧を1〜300Hzの周波数で印加することを意味する。
さらに、外部電極15の外面に、金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板が埋設された導電性接着剤からなる導電性補助部材を形成してもよい。この場合には、外部電極15の外面に導電性補助部材を設けることによりアクチュエータに大電流を投入し、高速で駆動させる場合においても、大電流を導電性補助部材に流すことができ、外部電極15に流れる電流を低減できるという理由から、外部電極15が局所発熱を起こし断線することを防ぐことができ、耐久性を大幅に向上させることができる。さらに、導電性接着剤中に金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板を埋設しているため、前記導電性接着剤に亀裂が生じるのを防ぐことができる。金属のメッシュとは、金属線を編み込んだものであり、メッシュ状の金属板とは、金属板に孔を形成してメッシュ状にしたものを意味する。
前記導電性補助部材を構成する導電性接着剤は、銀粉末を分散させたポリイミド樹脂からなることが望ましい。すなわち、比抵抗の低い銀粉末を、耐熱性の高いポリイミド樹脂に分散させることにより、高温での使用に際しても、抵抗値が低く且つ高い接着強度を維持した導電性補助部材を形成することができる。
前記導電性粒子は、フレーク状や針状などの非球形の粒子であることが望ましい。これは、導電性粒子の形状をフレーク状や針状などの非球形の粒子とすることにより、該導電性粒子間の絡み合いを強固にすることができ、該導電性接着剤のせん断強度をより高めることができるためである。
本発明の積層型圧電素子はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、上記実施形態では、積層体13の対向する側面に外部電極15を形成した例について説明したが、本発明では、例えば隣設する側面に一対の外部電極15を形成してもよい。
<噴射装置>
次に、上記で説明した本発明の積層型圧電素子を備えた噴射装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図8は、本実施形態にかかる噴射装置を示す概略断面図である。図8に示すように、本実施形態にかかる噴射装置は、一端に噴射孔33を有する収納容器31の内部に、上記実施形態に代表される本発明の積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータ43が収納されている。
具体的には、収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が配設されている。噴射孔33には、燃料通路37がニードルバルブ35の動きに応じて連通可能に配設されている。この燃料通路37は、外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。したがって、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で図示しない内燃機関の燃料室内に噴出されるように構成されている。
ニードルバルブ35の上端部は、内径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41が配置されている。そして、収納容器31内には、上記した積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータ43が収納されている。
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるように構成されている。
以上、本発明の一実施形態について示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、積層型圧電素子を噴射装置に用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、または、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子に適用可能である。また、これら以外のものであっても、圧電特性を用いた素子であれば、実施可能である。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<圧電アクチュエータの作製>
積層型圧電素子からなる圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3−PbTiO3)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体層11になるセラミックグリーンシートを複数作製した。ついで、このセラミックグリーンシートの片面に、主たる金属層12a、低充填金属層12b及び高充填金属層12cを、それぞれスクリーン印刷法により印刷した。
具体的には、主たる金属層12a、低充填金属層12b及び高充填金属層12cの印刷は、それぞれ下記のようにして行った。
・主たる金属層12a:銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5質量%)に平均粒径0.2μmのアクリルビーズを銀−パラジウム合金100質量部に対して10質量部の割合で加え、さらにバインダーを加えた導電性ペーストを、シート片面に厚さ3μmとなるように印刷した。
・低充填金属層12b:銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5質量%)にバインダーを加えた導電性ペーストを、シート片面に厚さ1μmとなるように印刷し、その上に平均粒径1μmのアクリルビーズにバインダーを加えたアクリルビーズペーストを、厚さ10μmとなるように積層印刷した。なお、アクリルビーズは、銀−パラジウム合金100質量部に対して5質量部の割合となるように配合した。
・高充填金属層12c:銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5質量%)にバインダーを加えた導電性ペーストを、シート片面に厚さ3μmとなるように印刷した。
上記のようにして各金属層が印刷されたシートを300枚用意した。これとは別に不活性層14になるグリーンシートを用意し、これらを下から順に不活性層30枚、積層体300枚、不活性層30枚となるように積層して積層成形体を得た。
なお、積層する際には、表1に示す組み合わせで積層した。表1中の詳細は、以下の通りである。
・金属層12aの層数割合:全金属層数に対する主たる金属層12aの層数の割合(%)
・低充填金属層12b,高充填金属層12cの対向配置:低充填金属層12bと高充填金属層12cが、少なくとも1層の圧電体層11を挟んで対向配置されているか否か
・低充填金属層12bの両側金属層が高充填金属層12c:低充填金属層12bに対して積層方向に隣り合う両側の金属層が高充填金属層12cであるか否か
・金属層12aが金属充填率の高い順に積層:積層方向に、低充填金属層12b、高充填金属層12c、主たる金属層12aの順序で間に圧電体層11をそれぞれ介して配置され、かつ主たる金属層12aが金属充填率の高い順に積層されているか否か
この積層成形体をプレスした後、脱脂をして焼成した。焼成は、800℃で2時間保持した後に、1000℃で2時間焼成して積層体13を得た。この積層体13について、各金属層12a〜12cの金属の充填率を測定した結果、以下の通りであった。
・主たる金属層12aにおける金属の充填率X:70%
・低充填金属層12bにおける金属の充填率Y:45%
・高充填金属層12cにおける金属の充填率Z:85%
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。ついで、この銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成して乾燥させた後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。この銀ガラスペーストのシートを積層体13の外部電極15面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極15を形成して積層型圧電素子を得た。
上記で得た積層型圧電素子の外部電極15にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極15にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した(表1中の試料No.1〜9)。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。
<評価>
上記で得られた各圧電アクチュエータについて、連続駆動試験を行なった。評価方法を下記に示すと共に、その結果を表1に示す。
(連続駆動試験の評価方法)
各圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×109回まで連続駆動した試験を行った。より具体的には、試験は各試料100個ずつで行った。変位量は、光学式非接触微少変位計で測定した。初期状態の変位量とは、1回駆動させた際の変位量を意味する。また、連続駆動後の積層部を金属顕微鏡、SEM等を使って観察し、デラミネーションの有無を観察した。さらに、高調波成分のノイズ発生の有無及び1kHzでうなり音発生の有無を評価した。
Figure 0005027448
表1から明らかなように、比較例である試料No.9は、積層界面にかかる応力が一点に集中して負荷が増大してデラミネーション(層間剥離)が生じるとともに、うなり音やノイズが発生した。これに対して、本発明の試料No.1〜8は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有しているのがわかる。したがって、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できたといえる。
特に、応力緩和層(低充填金属層12b)と応力集中層(高充填金属層12c)とを圧電体層11を介して隣同士に配置させた試料No.3、4は、素子の変位量を大きくすることができるだけでなく、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。さらに、応力緩和層を圧電体層11を介してはさみこんだ試料No.5〜8は、素子の変位量を最も大きくすることができるだけでなく、素子変位量がほとんど変化せず、極めて耐久性に優れていたことから、素子変位量が安定した圧電アクチュエータとすることができた。
上記実施例1における試料No.8の圧電アクチュエータの金属層12の組成(Y/X及びZ/X)を表2に示すように変化させて、各圧電アクチュエータを得た(表2中の試料No.10〜15)。また、比較例として、実施例1における試料No.9の圧電アクチュエータについても記載した(表2中の試料No.15)。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。なお、試料No.15の圧電アクチュエータは、全ての金属層の充填率が約70%に設定されているので、表中にはX=70%、Y=70%、Z=70%と記載し、充填率の比率Y/X=1、Z/X=1と記載している。
上記で得られた各圧電アクチュエータ(表2中の試料No.10〜15)について、上記実施例1と同様にして連続駆動試験を行なった。その結果を表2に示す。
Figure 0005027448
表2から明らかなように、Y/Xが0.9より大きく、Z/Xが1.05より小さい試料No.15は、積層界面にかかる応力が一点に集中して負荷が増大してデラミネーション(層間剥離)が生じるとともに、うなり音やノイズ発生が生じた。
これに対して、試料No.10〜14は、Y/Xが0.1〜0.9の範囲であり、Z/Xが1.05〜2の範囲であるので、素子の変位量を最も大きくすることができるだけでなく、素子変位量がほとんど変化せず、極めて耐久性に優れていたことから、素子変位量が安定した積層型アクチュエータとすることができた。特に、試料No.12、13は、Y/Xが0.5〜0.8の範囲であり、Z/Xが1.1〜1.2の範囲であるので、優れた素子変位量を有する積層型アクチュエータとすることができた。
上記実施例1における試料No.8の圧電アクチュエータの金属層12の材料組成を表3に示すように変化させて、各圧電アクチュエータを得た(表3中の試料No.16〜33)。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。
上記で得られた各圧電アクチュエータについて、上記実施例1と同様にして連続駆動試験を行ない、初期状態の変位量と連続駆動後の変位量を式:[1−(連続駆動後の変位量/初期状態の変位量)]×100に当てはめ、変位量変化率(%)を算出した。その結果を表3に示す。
Figure 0005027448
表3から明らかなように、試料No.32,33は、金属層12中の金属組成物において8〜10族金属の含有量が15質量%を超えており、また11族金属の含有量が85質量%未満であるため、金属層12の比抵抗が大きく、積層型圧電素子を連続駆動させた際には発熱し、圧電アクチュエータの変位量が低下することがわかる。
これに対して、試料No.16〜28は、金属層12中の金属組成物が8〜10属金属の含有量をM1質量%、11b属金属の含有量をM2質量%としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100質量%を満足する金属組成物を主成分とするため、金属層12の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても金属層12で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。また、試料No.29〜31も、金属層12の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても金属層12で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。
<圧電アクチュエータの作製>
積層型圧電素子からなる圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。
まず、上記実施例1と同様にして各金属層が印刷されたシートを30枚用意した。ついで、これとは別に不活性層14になるグリーンシートを用意し、これらを下から順に不活性層5枚、積層体30枚、不活性層5枚となるように積層して積層成形体を得た。
なお、積層する際には、表4に示す組み合わせで積層した。表4中の詳細は、以下の通りである。
・低充填金属層12b,高充填金属層12cの配置:低充填金属層12bと高充填金属層12cが、少なくとも1層の圧電体層11を挟んで対向配置されているか否か
この積層成形体をプレスした後、脱脂をして焼成した。焼成は、800℃で2時間保持した後に、1000℃で2時間焼成して積層体13を得た。この積層体13について、各金属層12a〜12cの金属の充填率を測定した結果、以下の通りであった。
・主たる金属層12aにおける金属の充填率X:70%
・低充填金属層12bにおける金属の充填率Y:45%
・高充填金属層12cにおける金属の充填率Z:85%
次に、上記実施例1と同様にして、積層体13に外部電極15を形成して積層型圧電素子を得た。ついで、上記で得た積層型圧電素子の外部電極15にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極15にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電素子を用いた圧電アクチュエータを作製した(表4中の試料No.34〜37)。得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての圧電アクチュエータにおいて、積層方向に変位量が得られた。
<評価>
上記で得られた各圧電アクチュエータについて、上記実施例1と同様にして連続駆動試験を行なった。その結果を表4に示す。
Figure 0005027448
表4から明らかなように、比較例である試料No.37は、積層界面にかかる応力が一点に集中して負荷が増大してデラミネーション(層間剥離)が生じるとともに、うなり音やノイズが発生した。これに対して、本発明の試料No.34〜36は、1×109回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有しているのがわかる。したがって、優れた耐久性を有した圧電アクチュエータを作製できたといえる。
特に、応力緩和層(薄型金属層12b)と応力集中層(厚型金属層12c)とを圧電体層11を介して隣同士に配置させた試料No.36は、素子の変位量を大きくすることができるだけでなく、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。
(a)は、本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。 本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子の積層構造を示す部分拡大断面図である。 本発明の一実施形態にかかる高充填金属層を示す部分拡大断面図である。 本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子の他の積層構造を示す部分拡大断面図である。 本発明の一実施形態にかかる積層型圧電素子の他の積層構造を示す部分拡大断面図である。 本発明の一実施形態にかかる圧電体層の空隙を説明するための概略説明図である。 本発明の他の積層型圧電素子の一実施形態にかかる積層構造を示す部分拡大断面図である。 本発明の一実施形態にかかる噴射装置を示す概略断面図である。 (a)は、従来の積層型圧電素子を示す斜視図であり、(b)は、(a)における圧電体層と金属層との積層状態を示す部分斜視図である。 従来の積層型圧電素子における積層構造を示す部分拡大断面図である。
符号の説明
11 圧電体層
12,12a 金属層
12b 低充填金属層
12c 高充填金属層
13 積層体
14 不活性層
15 外部電極
31 収納容器
33 噴射孔
35 ニードルバルブ
37 燃料通路
39 シリンダ
41 ピストン
43 圧電アクチュエータ
45 皿バネ

Claims (19)

  1. 複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い低充填金属層を複数含んでいることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 複数の前記低充填金属層は、該低充填金属層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されている請求項1記載の積層型圧電素子。
  3. 複数の前記低充填金属層が積層方向に規則的に配設されている請求項1又は2記載の積層型圧電素子。
  4. 前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い高充填金属層を複数含んでいる請求項1〜3のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  5. 複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い高充填金属層を複数含んでいることを特徴とする積層型圧電素子。
  6. 複数の前記高充填金属層は、該高充填金属層以外の他の金属層を複数層挟んでそれぞれ配設されている請求項5記載の積層型圧電素子。
  7. 複数の前記高充填金属層が積層方向に規則的に配設されている請求項5又は6記載の積層型圧電素子。
  8. 前記複数の金属層は、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い低充填金属層を複数含んでいる請求項5〜7のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  9. 前記低充填金属層に対して積層方向に隣り合う金属層が前記高充填金属層である請求項4又は8記載の積層型圧電素子。
  10. 前記低充填金属層に対して積層方向に隣り合う両側の金属層が前記高充填金属層である請求項4又は8記載の積層型圧電素子。
  11. 前記高充填金属層が金属の充填率のピークであり、該高充填金属層から積層方向に2層以上の金属層にわたって金属の充填率が漸次減少する傾斜領域を有している請求項4〜10のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  12. 前記低充填金属層は、空隙を介して互いに離隔した状態で配設された複数の部分金属層で構成されている請求項1〜4,8〜10のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  13. 前記複数の金属層のうち、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い金属層を低充填金属層とし、金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い金属層を高充填金属層とし、前記低充填金属層及び高充填金属層を除く他の金属層における金属の充填率をXとし、前記低充填金属層における金属の充填率をYとするとき、充填率の比(Y/X)が0.1〜0.9の範囲にある請求項1〜12のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  14. 前記複数の金属層のうち、該金属層を構成する金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも低い金属層を低充填金属層とし、金属の充填率が積層方向に隣り合う両側の金属層よりも高い金属層を高充填金属層とし、前記低充填金属層及び高充填金属層を除く他の金属層における金属の充填率をXとし、前記高充填金属層における金属の充填率をZとするとき、充填率の比(Z/X)が1.05〜2の範囲にある請求項1〜13のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  15. 前記金属層が周期律表第8〜11族元素から選ばれる金属を主成分とし、前記金属層中の周期律表第8〜10族元素の含有量をM1(質量%)とし、周期律表第11族元素の含有量をM2(質量%)とするとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100の関係を満足する請求項1〜14のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  16. 前記金属層中の周期律表第8〜10族元素がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru及びOsから選ばれる少なくとも1種であり、前記周期律表第11族元素がCu、Ag及びAuから選ばれる少なくとも1種である請求項15記載の積層型圧電素子。
  17. 前記金属層がCuを主成分とする請求項1〜15のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  18. 複数の圧電体層と複数の金属層とが同時焼成されて交互に積層された積層型圧電素子において、積層方向の両端には、圧電体で構成された不活性層が形成されており、前記不活性層に隣接する金属層は、該金属層における金属の充填率が積層方向に隣り合う金属層における金属の充填率よりも高い高充填金属層であることを特徴とする積層型圧電素子。
  19. 噴出孔を有する容器と、該容器内に収納される請求項1〜18のいずれかに記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に充填された液体が、前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出させるように構成されたことを特徴とする噴射装置。
JP2006152289A 2005-06-15 2006-05-31 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置 Active JP5027448B2 (ja)

Priority Applications (8)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006152289A JP5027448B2 (ja) 2005-06-15 2006-05-31 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
CN201210155477.8A CN102651448B (zh) 2005-06-15 2006-06-15 层叠型压电元件及使用其的喷射装置
EP06766780.8A EP1898476B1 (en) 2005-06-15 2006-06-15 Multilayer piezoelectric element and ejector using this
US11/917,747 US8441174B2 (en) 2005-06-15 2006-06-15 Multilayer piezoelectric element and injector using the same
PCT/JP2006/312046 WO2006135013A1 (ja) 2005-06-15 2006-06-15 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
CN200680021047XA CN101238598B (zh) 2005-06-15 2006-06-15 层叠型压电元件及使用其的喷射装置
US13/728,212 US20130168465A1 (en) 2005-06-15 2012-12-27 Multilayer Piezoelectric Element and Injector Using the Same
US13/728,184 US8648517B2 (en) 2005-06-15 2012-12-27 Multilayer piezoelectric element and injector using the same

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005175719 2005-06-15
JP2005175719 2005-06-15
JP2006152289A JP5027448B2 (ja) 2005-06-15 2006-05-31 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007027692A JP2007027692A (ja) 2007-02-01
JP5027448B2 true JP5027448B2 (ja) 2012-09-19

Family

ID=37787993

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006152289A Active JP5027448B2 (ja) 2005-06-15 2006-05-31 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5027448B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1978567B1 (en) * 2007-02-19 2014-06-25 Continental Automotive GmbH Piezoceramic multilayer actuator and method of manufacturing a piezoceramic multilayer actuator
JP5055370B2 (ja) * 2007-08-29 2012-10-24 京セラ株式会社 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム
EP2190042A4 (en) * 2007-09-18 2012-04-11 Kyocera Corp STACKED PIEZOELECTRIC ELEMENT, SPRAY DEVICE AND FUEL JET SYSTEM EQUIPPED WITH SAME
US8405278B2 (en) 2007-10-29 2013-03-26 Kyocera Corporation Multi-layer piezoelectric element, ejection device having the element, and fuel ejection system
JP5539902B2 (ja) * 2008-01-23 2014-07-02 エプコス アクチエンゲゼルシャフト 圧電多層構成要素
JP7491713B2 (ja) * 2020-03-27 2024-05-28 Tdk株式会社 圧電素子、圧電アクチュエータ、および圧電トランス

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63142875A (ja) * 1986-12-05 1988-06-15 Sumitomo Special Metals Co Ltd 圧電積層アクチユエ−タ−
JP2893741B2 (ja) * 1989-08-02 1999-05-24 日本電気株式会社 電歪効果素子
JPH03106082A (ja) * 1989-09-20 1991-05-02 Fuji Electric Co Ltd 積層形圧電アクチュエータ素子
JPH11186626A (ja) * 1997-12-25 1999-07-09 Kyocera Corp 積層型圧電アクチュエータ
JP3506609B2 (ja) * 1998-06-30 2004-03-15 京セラ株式会社 積層型圧電アクチュエータ
JP3881484B2 (ja) * 1999-11-11 2007-02-14 京セラ株式会社 積層型圧電アクチュエータ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007027692A (ja) 2007-02-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5084744B2 (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム
JP5311733B2 (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置、及びこれを備えた燃料噴射システム
JP5050165B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP4885869B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
WO2006135013A1 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP2010507222A (ja) 圧電アクチュエータユニット及びその製造方法
JP5027448B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP4956054B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP2006013437A (ja) 積層型圧電素子およびその製造方法ならびにこれを用いた噴射装置
JP5377100B2 (ja) 積層型圧電素子、これを用いた噴射装置および燃料噴射システム
JP4817610B2 (ja) 積層型圧電素子およびその製造方法ならびにこれを用いた噴射装置
WO2005041316A1 (ja) 積層型圧電素子
JP2008251865A (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム
JP5562382B2 (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム
JP4925563B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JPWO2009096381A1 (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム
JP4868707B2 (ja) 積層型圧電素子および噴射装置
JP4741197B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP2005129871A (ja) 積層型圧電素子及びこれを用いた噴射装置
JP5153095B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP4873837B2 (ja) 積層型圧電素子および噴射装置
JP2005183553A (ja) 積層型圧電素子および噴射装置
JP2006156690A (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP4986486B2 (ja) 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置
JP5133399B2 (ja) 積層型圧電素子、これを備えた噴射装置及び燃料噴射システム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080602

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111213

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120125

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120417

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20120424

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120529

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120622

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150629

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5027448

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150