JP4873837B2 - 積層型圧電素子および噴射装置 - Google Patents

積層型圧電素子および噴射装置 Download PDF

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Description

本発明は、積層型圧電素子(以下、単に「素子」ということもある)および噴射装置に関し、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、ならびに燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子に用いられる積層型圧電素子および噴射装置に関するものである。
従来より、積層型圧電素子を用いたものとしては、圧電体と内部電極を交互に積層した積層型圧電アクチュエータが知られている。積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、1つの圧電体からなる圧電磁器と板状体の内部電極を交互に積層したスタックタイプの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、薄層化に対して有利であることと、耐久性に対して有利であることから、同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータが優位性を示しつつある。
図2は、特許文献1に示す従来の積層型圧電素子を示すもので、積層体200と互いに対向する一対の側面に形成された外部電極23とから構成されている。積層体200は、それを構成する圧電体21と内部電極22とが交互に積層されてなるが、内部電極22は圧電体21主面全体には形成されず、いわゆる部分電極構造となっている。この部分電極構造の内部電極22を一層おきに異なる積層体200の側面に露出するように左右互い違いに積層している。なお、積層体200の積層方向における両端面には不活性層24が積層されている。そして、積層体200の互いに対向する一対の側面に上記露出する内部電極22同士を接続するように外部電極23が形成され、内部電極22を一層おきに接続することができる。
そして、従来の積層型圧電素子の製造方法としては、圧電体21の原料を含むセラミックグリーンシートに内部電極ペーストを図2のような所定の電極構造となるパターンで印刷し、この内部電極ペーストが塗布されたグリーンシートを複数積層して得られた積層成形体を作製し、これを焼成することによって積層体200を作製する。その後、積層体200の一対の側面に外部電極23を焼成によって形成して積層型圧電素子が得られる(例えば特許文献1参照)。
なお、内部電極22としては、銀とパラジウムの合金が用いられ、さらに、圧電体21と内部電極22を同時焼成するために、内部電極22の金属組成は、銀70重量%、パラジウム30重量%にして用いていた(例えば、特許文献2参照)。
このように、銀のみの金属組成からなる内部電極22ではなく、パラジウムを含む銀−パラジウム合金含有の金属組成からなる内部電極22を用いるのは、パラジウムを含まない銀のみの組成では、一対の対向する内部電極22間に電位差を与えた場合、その一対の内部電極22のうちの正極から負極へ電極中の銀が素子表面を伝わって移動するという、いわゆるシルバーマイグレーション現象が生じるからである。この現象は、高温、高湿の雰囲気中で、著しく発生していた。
従来の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極23にさらにリード線が半田により固定され(不図示)、外部電極23間に所定の電位がかけられて駆動させることができる。特に、近年においては、小型の積層型圧電素子は大きな圧力下において大きな変位量を確保する要求があるため、より高い電界を印加し、長時間連続駆動させることが行われている。
特開昭61−133715号公報 実開平1−130568号公報
従来の同時焼成タイプの積層型圧電素子は、内部電極22と圧電体21を密着させるために、内部電極22の焼結する温度と圧電体21が焼結する温度を一致させることが求められ、内部電極22や圧電体21の材料組成を検討することが行われてきた。しかしながら、これだけでは圧電体21に接する内部電極22自体が圧電変位しないことから、圧電体21は内部電極22にクランプされた形状となり、内部電極22と圧電体21との間の接合強度が大きいと内部電極22に接する圧電体21は変位量が小さくなり、積層型圧電素子の変位量が小さくなる問題があった。さらに、駆動させると残留応力が内部電極22と圧電体21の間に生じ、加熱して熱暴走したりするという問題があった。
特に内部電極22に硬度の硬い金属を用いると、圧電体21が内部電極22にクランプされる力が大きくなり、積層型圧電素子の変位量が小さくなると同時に、圧電体21に加わる残留応力が大きいために、連続して駆動した場合、次第に変位量が小さくなる問題があった。また、残留応力が大きい積層型圧電素子を長時間駆動すると、素子温度が上昇し、この素子温度が放熱量を上回ると熱暴走現象が生じて破壊に至り、変位量が急激に劣化する問題があった。従って、素子温度上昇を抑制するために、硬度の小さく比抵抗の小さい内部電極が求められていた。
さらに、従来の積層型圧電素子を燃料噴射装置等の駆動素子に利用されるアクチュエータとして用いた場合には、所望の変位量が次第に変化して装置が誤作動する問題を生じていたため長期間連続運転における変位量の変化の抑制と耐久性向上が求められていた。
本発明は、上述の問題点に鑑みて成されたものであり、高電圧、高圧力下で圧電アクチュエータの変位量を大きくさせ、かつ、長期間連続駆動させた場合でも変位量が変化することがなく、耐久性に優れた積層型圧電素子および噴射装置を提供することを目的とする。
本発明の積層型圧電素子は、少なくとも1つの圧電体と複数の、金属組成物および金属酸化物を含む内部電極とを交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体と前記内部電極との間にガラス層が形成され、圧電体の強度より圧電体と内部電極との間の接合強度が弱く、前記圧電体と前記内部電極との間の接合強度が10MPa以上70MPa以下であることを特徴とする。
また、前記内部電極中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることを特徴とする。
また、前記内部電極中のVIII族金属の含有量をM1(質量%)、Ib族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする。
また、前記VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
また、前記VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。あるいは、前記VIII族金属がNiであり、前記Ib族金属がCuであることを特徴とする。
さらに、前記内部電極中に金属組成物とともに無機組成物を添加し、前記無機組成物が50体積%以下であることを特徴とする。また、前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
また、前記圧電体がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。さらに、前記圧電体がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
また、前記積層体の焼成温度が900℃以上1000℃以下であることを特徴とする。
また、前記積層体の側面に端部が露出する前記内部電極と端部が露出しない前記内部電極とが交互に構成されており、前記端部が露出していない前記内部電極と前記外部電極間の前記圧電体部分に溝が形成されており、該溝に前記圧電体よりもヤング率の低い絶縁体が充填されていることを特徴とする。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子によれば、圧電体の強度よりも圧電体と内部電極との間の接合強度を弱くしたことで、内部電極が圧電体をクランプする力を小さくすることができることから、積層型圧電体素子の変位量を大きくすることができる。さらに、圧電体と内部電極との間の残留応力を小さくすることが出来るので、駆動中の変位量を一定とする耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。
従って、積層型圧電素子を連続駆動させても、所望の変位量が実効的に変化しないために、装置が誤作動することなく、耐久性に優れた高信頼性の噴射装置を提供することができる。
本発明の積層型圧電素子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の積層型圧電素子の一実施例を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す斜視展開図である。
本発明の積層型圧電素子は、図1に示すように、圧電体11と内部電極12とを交互に積層してなる積層体13の一対の対向する側面において、内部電極12が露出した端部と、一層おきに電気的に導通する外部電極15が接合されている。また、積層体13の積層方向の両端の層には圧電体11で形成された不活性層14を積層している。ここで、本発明の積層型圧電素子を積層型圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極15にリード線を半田により接続固定し、前記リード線を外部電圧供給部に接続すればよい。
圧電体11間には内部電極12が配されているが、この内部電極12は銀−パラジウム等の金属材料で形成しているので、内部電極12を通じて各圧電体11に所定の電圧を印加し、圧電体11を逆圧電効果による変位を起こさせる作用を有する。
これに対して、不活性層14は内部電極12が配されていない複数の圧電体11の層で
あるため、電圧を印加しても変位を生じない。
そして本発明では、圧電体11の強度より圧電体11と内部電極12との間の接合強度が弱いことが特徴である。ここで、圧電体11の強度よりも圧電体11と内部電極12との間の接合強度が弱いこととしたのは、圧電体11と内部電極12との間の接合強度が圧電体11の強度以上であれば、圧電体11が内部電極12にクランプされた構造をとることから、内部電極12に接合した圧電体11の界面部分は電圧を印加されても圧電変位が出来ないため、積層型圧電素子の変位量が小さくなるからである。
そのため、積層型圧電体素子の変位量を大きくするには、圧電体11の強度より圧電体11と内部電極12との間の接合強度を弱くすることが必要であるが、好ましくは圧電体11の強度の70%以下とすることで、内部電極12に接合した圧電体11の界面部分の残留応力を小さくすることができるので、積層型圧電素子の変位量を大きくすることができる。好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下とすることで、連続駆動時における耐久性を向上できる。
さらに本発明では、前記圧電体11と内部電極12との間の接合強度が70MPa以下であることが好ましい。ここで、70MPaより大きくなると、内部電極が圧電体11をクランプする力が大きいことで、変位量が小さくなる。ただし、接合強度が0MPaでは積層型圧電素子自体が形状を保つことが出来ない。そのため、積層型圧電体素子の変位量を大きくするには、圧電体11の強度より圧電体11と内部電極12との間の接合強度が弱く、かつ、前記圧電体11と内部電極12との間の接合強度が0MPaより大きく70MPa以下であることが好ましい。
なお、積層型圧電素子の変位量を大きくするためには、上記接合強度は50MPa以下が好ましい。また、積層型圧電素子の変位量を大きくかつ耐久性を向上させるためには、40MPa以下がより好ましい。さらに耐久性を向上させるには、10MPa以上35MPa以下がさらに好ましい。
ここで、積層型圧電素子を、3mm×4mm×36mmに加工して、JIS R1601の4点曲げにて、曲げ強さを測定したとき、内部電極12の電極面が試験片の長手方向に略垂直になるようにして、試験片が内部電極12と圧電体11の界面で破壊した時の値を圧電体と内部電極との間の接合強度、試験片が圧電体11の箇所で破壊した時の値を圧電体の強度とした。
さらに本発明では、前記外部電極15と内部電極12との間の接合強度が圧電体11と内部電極12との接合強度よりも大きいことを特徴とする。ここで、圧電体11と内部電極12との間の接合強度が外部電極15と内部電極12の強度以上であれば、積層型圧電素子の連続駆動時における耐久性を向上できる。
本発明において、圧電体11の強度より圧電体11と内部電極12との間の接合強度を弱くする製造方法としては、圧電体11の表面粗さを小さくして、圧電体11と内部電極12との接合時のアンカー効果を小さくしたり、焼成時の圧電体11と内部電極12との接合部の結晶成長を押さえる目的で、内部電極12が焼結を開始する焼結開始温度を、圧電体11が焼結を開始する焼結開始温度より低温になるように、材料組成を選定する。さらには、圧電体11と内部電極12との接合箇所の面積を少なくするために、内部電極の占有面積を小さくしたり、圧電体11と内部電極12との間にガラス層を形成する方法などがある。
具体的には、圧電体11と内部電極12との界面に、圧電体11が焼結を開始する焼結開始温度よりも低温の液相が形成できるように、例えば、内部電極12を構成する金属の粉末とともに、その金属酸化物の粉末を加えて電極パターンを印刷する。
このように、内部電極12が焼結を開始する焼結開始温度を、圧電体11が焼結を開始する焼結開始温度より低温にすることで、同時焼成の際、最初に内部電極12部分に液相が生成することになり内部電極12単独で焼結が進行する。圧電体11と内部電極12との間にガラス層を形成する場合は、液相がガラス層となるように冷却速度を100℃/時間よりも速くする。
さらに、内部電極12が硬度の高い金属で構成されると、圧電体11と内部電極12との接合強度が高まるので、内部電極12を硬度の低い金属で構成する。
また、本発明においては、内部電極12中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることが望ましい。これは、上記の金属組成物は高い耐熱性を有するため、焼成温度の高い圧電体11と内部電極12を同時焼成すること可能となるためである。
さらに、内部電極12中の金属組成物がVIII族金属の含有量をM1(重量%)、Ib族金属の含有量をM2(重量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足する金属組成物を主成分とすることが好ましい。これは、VIII族金属が15重量%を超えると、内部電極12の硬度が高くなると同時に比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱する場合があるからである。また、内部電極2中のIb族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、VIII族金属が0.001重量%以上15重量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。また、熱伝導に優れ、より高い耐久性を必要とする場合は0.5重量%以上9.5重量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は2重量%以上8重量%以下がさらに好ましい。
ここで、Ib族金属が85重量%未満になると、内部電極12の比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱する場合があるからである。また、内部金属12中のIb族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、Ib族金属が85重量%以上99.999重量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、90重量%以上99.9重量%以下が好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合は90.5重量%以上99.5重量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は92重量%以上98重量%以下がさらに好ましい。
上記の内部電極12中の金属成分の重量%を示すVIII族金属、Ib族金属はEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法で特定できる。
さらに、本発明の内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu,Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これは、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成であるからである。
さらに、内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これにより、耐熱性に優れ、比抵抗の小さな内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がNiであることが好ましい。これにより、耐熱性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、Ib族金属がCuであることが好ましい。これにより、硬度の低い熱伝導性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中には、金属組成物とともに無機組成物を添加することが好ましい。これにより、内部電極12と圧電体11を結合できる。さらに、前記無機組成物が50体積%以下であることが好ましい。これにより、内部電極12と圧電体11との間の接合強度を圧電体11の強度より小さく出来る。さらに好ましくは30体積%以下にすることで積層型圧電素子の耐久性を向上できる。前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。なお、前記無機組成物の量は、積層型圧電素子の断面SEM像における内部電極中の無機組成物の面積比である。
さらに、圧電体11がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。これは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)を代表とするペロブスカイト型圧電セラミックス材料等で形成されると、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いことから、変位量を大きくすることができ、さらに、圧電体11と内部電極12を同時に焼成することもできる。上記に示した圧電体11としては、圧電歪み定数d33が比較的高いPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
さらに、焼成温度が900℃以上1000℃以下であることが好ましい。これは、焼成温度が900℃以下では、焼成温度が低いため焼成が不十分となり、緻密な圧電体11を作製することが困難になる。また、焼成温度が1000℃を超えると、内部電極12と圧電体11接合強度が大きくなるからである。
また、本発明の積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極12と端部が露出しない内部電極12とが交互に構成されており、前記端部が露出していない内部電極12と外部電極15間の圧電体部分に溝が形成されており、この溝内に、圧電体12よりもヤング率の低い絶縁体が形成されていることが好ましい。これにより、このような積層型圧電素子では、駆動中の変位によって生じる応力を緩和することができることから、連続駆動させても、内部電極12の発熱を抑制することができる。
次に、本発明の積層型圧電素子の製法を説明する。
本発明の積層型圧電素子は、まず、PbZrO−PbTiO等からなるペロブスカイト型酸化物の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電体11となるセラミックグリーンシートを作製する。
次に、銀−パラジウム等の内部電極12を構成する金属粉末に、酸化銀等の金属酸化物、バインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、この積層体について所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって積層体13が作製される。
このとき、不活性層14の部分のグリーンシート中に、銀−パラジウム等の内部電極12を構成する金属粉末を添加したり、不活性層14の部分のグリーンシートを積層する際に、銀−パラジウム等の内部電極を構成する金属粉末および無機化合物とバインダーと可塑剤からなるスラリーをグリーンシート上に印刷することで、不活性層14とその他の部分の焼結時の収縮挙動ならびに収縮率を一致させることができるので、緻密な積層体を形成することができる。
なお、積層体13は、上記製法によって作製されるものに限定されるものではなく、複数の圧電体11と複数の内部電極12とを交互に積層してなる積層体13を作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
その後、積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極12と端部が露出しない内部電極12とを交互に形成して、端部が露出していない内部電極12と外部電極15間の圧電体部分に溝を形成して、この溝内に、圧電体11よりもヤング率の低い、樹脂またはゴム等の絶縁体を形成する。ここで、前記溝は内部ダイシング装置等で積層体13の側面に形成される。
外部電極15は構成する導電材はアクチュエータの伸縮によって生じる応力を十分に吸収するという点から、ヤング率の低い銀、若しくは銀が主成分の合金が望ましい。
ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cm3に制御し、このシートを、柱状積層体13の外部電極形成面に転写し、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行うことにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極15を形成することができる。
なお、前記銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を有効的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と内部電極12を拡散接合させ、また、外部電極15中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極15と柱状積層体13側面とを部分的に接合させるという点から、550〜700℃が望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜700℃が望ましい。
焼き付け温度が700℃より高い場合には、銀ガラス導電性ペーストの銀粉末の焼結が進みすぎ、有効的な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができず、外部電極15が緻密になりすぎてしまい、結果として外部電極15のヤング率が高くなりすぎ駆動時の応力を十分に吸収することができずに外部電極15が断線してしまう可能性がある。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行った方がよい。
一方、焼き付け温度が550℃よりも低い場合には、内部電極12端部と外部電極15の間で十分に拡散接合がなされないために、ネック部が形成されず、駆動時に内部電極12と外部電極15の間でスパークを起こしてしまう可能性がある。
なお、銀ガラス導電性ペーストのシートの厚みは、圧電体11の厚みよりも薄いことが望ましい。さらに好ましくは、アクチュエータの伸縮に追従するという点から、50μm以下がよい。
次に、外部電極15を形成した積層体13をシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、積層体13の溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から積層体13を引き上げ、積層体13の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び柱状積層体13の側面にコーティングした前記シリコーンゴムを硬化させることにより、本発明の積層型圧電素子が完成する。
そして、外部電極15にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極15に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、積層体13を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を利用した積層型圧電アクチュエータが完成し、リード線を外部の電圧供給部に接続し、リード線及び外部電極15を介して内部電極12に電圧を印加させれば、各圧電体11は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
さらに、外部電極15の外面に、金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板が埋設された導電性接着剤からなる導電性補助部材を形成してもよい。この場合には、外部電極15の外面に導電性補助部材を設けることによりアクチュエータに大電流を投入し、高速で駆動させる場合においても、大電流を導電性補助部材に流すことができ、外部電極15に流れる電流を低減できるという理由から、外部電極15が局所発熱を起こし断線することを防ぐことができ、耐久性を大幅に向上させることができる。さらには、導電性接着剤中に金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板を埋設しているため、前記導電性接着剤にクラックが生じるのを防ぐことができる。
金属のメッシュとは金属線を編み込んだものであり、メッシュ状の金属板とは、金属板に孔を形成してメッシュ状にしたものをいう。
さらに、前記導電性補助部材を構成する導電性接着剤は銀粉末を分散させたポリイミド樹脂からなることが望ましい。即ち、比抵抗の低い銀粉末を、耐熱性の高いポリイミド樹脂に分散させることにより、高温での使用に際しても、抵抗値が低く且つ高い接着強度を維持した導電性補助部材を形成することができる。さらに望ましくは、前記導電性粒子はフレーク状や針状などの非球形の粒子であることが望ましい。これは、導電性粒子の形状をフレーク状や針状などの非球形の粒子とすることにより、該導電性粒子間の絡み合いを強固にすることができ、該導電性接着剤のせん断強度をより高めることができるためである。
本発明の積層型圧電素子はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
また、上記では、積層体13の対向する側面に外部電極15を形成した例について説明したが、本発明では、例えば隣設する側面に一対の外部電極を形成してもよい。
図3は、本発明の噴射装置を示すもので、収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
また、本発明は、積層型圧電素子および噴射装置に関するものであるが、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、または、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子以外であっても、圧電特性を用いた素子であれば、実施可能であることは言うまでもない。
本発明の積層型圧電素子からなる積層型圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの片面に、任意の組成比で形成された銀−パラジウム合金に酸化銀とバインダーを加えた導電性ペーストが、スクリーン印刷法により3μmの厚みに形成されたシートを300枚積層し、焼成した。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で焼成した。
その後、ダイシング装置により積層体の側面の内部電極の端部に一層おきに深さ50μm、幅50μmの溝を形成した。
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末を90体積%と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末10体積%との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計重量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。このようにして作製した銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。このシートの生密度をアルキメデス法にて測定したところ、6.5g/cmであった。
そして、前記銀ガラスペーストのシートを積層体13の外部電極15面に転写し、650℃で30分焼き付けを行い、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極15を形成した。なお、この時の外部電極15の空隙率は、外部電極15の断面写真の画像解析装置を用いて測定したところ40%であった。
その後、外部電極15にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極15にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電素子を用いた積層型圧電アクチュエータを作製した。
得られた積層型圧電素子に200Vの直流電圧を印加した結果、積層方向に表1に示す変位量が得られた。
次に、作製した表1の積層型圧電素子を、3mm×4mm×36mmに加工して、JIS R1601の4点曲げにて、曲げ強さを測定した。このとき、内部電極12の電極面が試験片の長手方向に略垂直になるようにして、試験片が内部電極12と圧電体11の界面で破壊した時、圧電体と内部電極との間の接合強度が圧電体の強度よりも大きいことから、この時の値を圧電体と内部電極との間の接合強度とした。一方、試験片が圧電体11の箇所で破壊した時、圧電体の強度が圧電体と内部電極との間の接合強度よりも大きいことから、この値を圧電体の強度とした。
比較のために、圧電体を3mm×4mm×36mmに加工して、JIS R1601の4点曲げにて、曲げ強さを測定した結果も記載した。
Figure 0004873837
表1より、圧電体11の強度より圧電体11と内部電極12との間の接合強度が強い場合には(試料No.1)、積層型圧電素子の変位量を充分大きくすることができないが、圧電体の強度より圧電体と内部電極との間の接合強度が強い場合には(試料No.2〜7)、積層型圧電素子の変位量を充分大きくできることが確認できる。
次に、異なる内部電極12の材料組成からなる積層型圧電素子を用いて、曲げ強さとの関係を表2に記載した。なお、各試料の変位量の変化率も併せて測定した。変化率としては、各試料の積層型圧電素子が駆動回数1×10回に達した時の変位量(μm)と、連続駆動を開始する前の積層型圧電素子初期状態の変位量(μm)とを比較して、変位量と積層型圧電素子の劣化の度合いを調べたものである。結果を表2に示す。
Figure 0004873837
表2より、試料No.1の内部電極12を銀100%にした場合は、シルバーマイグレーションにより積層型圧電素子は破損して連続駆動が不可能となった。また、試料No.15、16は内部電極12中の金属組成物においてVIII族金属の含有量が15重量%を超えており、また、Ib族金属の含有量が85重量%未満であるため、内部電極12の硬度が大きいことで、積層型圧電アクチュエータの耐久性が低下することがわかる。
これに対して、No.2〜14は、内部電極12中の金属組成物がVIII属金属の含有量をM1質量%、Ib属金属の含有量をM2質量%としたとき、0≦M1≦15、85≦M2≦100、M1+M2=100質量%を満足する金属組成物を主成分とするために、内部電極12の硬度を小さくすることができるとともに、内部電極12の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても内部電極12で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。
No.17〜19も内部電極の硬度を小さくすることができるとともに、内部電極12
の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても内部電極12で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
本発明の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す展開斜視図である。 従来の積層型圧電素子を示す斜視図である。 本発明の噴射装置を示す断面図である。
符号の説明
11・・・圧電体
13・・・積層体
12・・・内部電極
21・・・圧電体
22・・・内部電極
23・・・外部電極
31・・・収納容器
33・・・噴射孔
35・・・バルブ
43・・・圧電アクチュエータ

Claims (16)

  1. 少なくとも1つの圧電体と複数の、金属組成物および金属酸化物を含む内部電極とを交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体と前記内部電極との間にガラス層が形成され、前記圧電体の強度より前記圧電体と前記内部電極との間の接合強度が弱く、前記圧電体と前記内部電極との間の接合強度が10MPa以上70MPa以下であることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 前記外部電極と前記内部電極との間の接合強度が前記圧電体と前記内部電極との接合強度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  3. 前記内部電極中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型圧電素子。
  4. 前記内部電極中のVIII族金属の含有量をM1(質量%)、Ib族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする請求項に記載の積層型圧電素子。
  5. 前記VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項3またに記載の積層型圧電素子。
  6. 前記VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  7. 前記VIII族金属がNiであることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  8. 前記Ib族金属がCuであることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  9. 前記内部電極中に金属組成物とともに無機組成物を添加したことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  10. 前記無機組成物が50体積%以下であることを特徴とする請求項に記載の積層型圧電素子。
  11. 前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項または10に記載の積層型圧電素子。
  12. 前記圧電体がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  13. 前記圧電体がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項12に記載の積層型圧電素子。
  14. 前記積層体の焼成温度が900℃以上1000℃以下であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  15. 前記積層体の側面に端部が露出する前記内部電極と端部が露出しない前記内部電極とが交互に構成されており、前記端部が露出していない前記内部電極と前記外部電極間の前記圧電体部分に溝が形成されており、該溝に前記圧電体よりもヤング率の低い絶縁体が充填されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  16. 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された請求項1乃至15のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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