JP2006156690A - 積層型圧電素子およびこれを用いた噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】積層型圧電素子の連続駆動によって圧電体に発生するクラックや内部電極の剥離を防止して耐久性を高める。
【解決手段】圧電体11と内部電極12とが交互に積層されてなる積層体13と、該積層体13の側面に正極、負極もしくはグランドとなる一対の外部電極15とを備え、内部電極12を正極の外部電極15、負極もしくはグランドの外部電極15と交互に接続するとともに、内部電極12と極性が異なる外部電極15間に絶縁領域16を形成してなる積層型圧電素子であって、内部電極12と絶縁領域16との境界をR状に形成してなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層型圧電素子(以下、単に「素子」ということもある)および噴射装置に関し、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、ならびに燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子に用いられる積層型圧電素子および噴射装置に関するものである。
従来より、積層型圧電素子を用いたものとしては、圧電体と内部電極を交互に積層した積層型圧電アクチュエータが知られている。積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、1つの圧電体からなる圧電磁器と板状体の内部電極を交互に積層したスタックタイプの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、薄層化に対して有利であることと、耐久性に対して有利であることから、同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータが優位性を示しつつある。
図12は、特許文献1に示す従来の積層型圧電素子を示すもので、積層体23と互いに対向する一対の側面に形成された外部電極25とから構成されている。積層体23は、それを構成する圧電体21と内部電極22とが交互に積層されてなるが、内部電極22は圧電体21主面全体には形成されず、いわゆる部分電極構造となっている。この部分電極構造の内部電極22を一層おきに異なる積層体23の側面に露出するように左右互い違いに積層している。なお、積層体23の積層方向における両端面には不活性層24が積層されている。そして、積層体23の互いに対向する一対の側面に上記露出する内部電極22同士を接続するように外部電極25が形成され、内部電極22を一層おきに接続することができる。
そして、従来の積層型圧電素子の製造方法としては、圧電体21の原料を含むセラミックグリーンシートに内部電極ペーストを図12(b)のように、多角形状の平面構造となるパターンで印刷し、この内部電極ペーストが塗布されたグリーンシートを複数積層して得られた積層成形体を作製し、これを焼成することによって積層体23を作製する。その後、積層体23の一対の側面に外部電極25を焼成によって形成して積層型圧電素子が得られる(例えば特許文献1参照)。
なお、内部電極22としては、銀とパラジウムの合金が用いられ、さらに、圧電体21と内部電極22を同時焼成するために、内部電極22の金属組成は、銀70質量%、パラジウム30質量%にして用いていた(例えば、特許文献2参照)。
このように、銀のみの金属組成からなる内部電極22ではなく、パラジウムを含む銀−パラジウム合金含有の金属組成からなる内部電極22を用いるのは、パラジウムを含まない銀のみの組成では、一対の対向する内部電極22間に電位差を与えた場合、その一対の内部電極22のうちの正極から負極へ電極中の銀が素子表面を伝わって移動するという、いわゆるシルバーマイグレーション現象が生じるからである。この現象は、高温、高湿の雰囲気中で、著しく発生していた。
従来の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極25にさらにリード線が半田により固定され(不図示)、外部電極25間に所定の電位がかけられて駆動させることができる。特に、近年においては、小型の積層型圧電素子は大きな圧力下において大きな変位量を確保する要求があるため、より高い電界を印加し、長時間連続駆動させることが行われている。
特開昭61−133715号公報 実開平1−130568号公報
そして、従来の同時焼成タイプの積層型圧電素子は、内部電極を形成する際、極性の異なる内部電極と外部電極が接触しないように絶縁領域を設けるように内部電極パターンを形成していた。また、上記絶縁領域に位置する圧電体は、異なる極性の内部電極間に挟まれていないため、積層型圧電素子を駆動させても前記圧電体は変位を示さない。
即ち、コンデンサ等の通常の積層型電子部品と異なり、積層型圧電素子は駆動時に素子自体が連続的に寸法変化を起こすため、高電界、高圧力下で長期間連続駆動させた場合、異なる極性の内部電極に挟まれた圧電体のみが変位を示し、異なる極性の内部電極に挟まれていない圧電体は変位を示さないために、前記内部電極と前記絶縁領域の境界に応力が集中する。該応力が発生すると、絶縁領域である圧電体にクラックが発生し、クラックを伝って、極性の異なる内部電極と外部電極間でショートして積層型圧電体素子が破壊する問題があった。
また、圧電体は絶縁体であることから、異なる極性の内部電極間で電流が流れることがないため、積層型圧電素子を駆動するための電圧は電極パターン端部に集中するいわゆるエッジ効果を発生する。そのため、異なる極性の内部電極に挟まれた圧電体のなかでも、電極パターン端部に挟まれた部位の変位が大きく変化しようとする。しかし、異なる極性の内部電極に挟まれていない圧電体は変位を示さないために、その境界に応力が集中する。すなわち内部電極と極性が異なる外部電極間に形成された絶縁領域と内部電極との境界に応力が集中して絶縁領域である圧電体にクラックが発生し、積層型圧電体素子が破壊する問題があった。
特に、内部電極と前記絶縁領域との境界が直線状であれば、境界の一部にクラックが発生した場合、その一点を起点にして境界に沿ってクラックが直線状に成長して積層型圧電体素子を破壊する問題があった。また、内部電極と前記絶縁領域との境界に直線同士を付き合わせたような任意の角度の端部が内部電極パターンに形成されていると、直線同士を付き合わせたような任意の角度の端部に応力が集中して絶縁領域である圧電体にクラックが発生した。
上述したようなクラックは圧電体の変位機能低下を引き起こすため、積層型圧電素子の駆動変位量が変化し、信頼性と耐久性が劣化するという問題があった。
さらに、従来の積層型圧電素子を燃料噴射装置等の駆動素子に利用されるアクチュエータとして用いた場合には、所望の変位量が次第に変化して装置が誤作動する問題を生じていたため長期間連続運転における変位量の変化の抑制と耐久性向上が求められていた。
本発明は、上述の問題点に鑑みて成されたものであり、高電圧、高圧力下で圧電アクチュエータの変位量を大きくさせ、かつ、長期間連続駆動させた場合でも変位量が変化することがなく、耐久性に優れた積層型圧電素子および噴射装置を提供することを目的とする。
本発明の積層型圧電素子は、圧電体と内部電極とが交互に積層されてなる積層体と、該積層体の側面に正極と負極、または正極とグランドのいずれかとなる一対の外部電極とを備え、前記内部電極を正極の外部電極、負極またはグランドの外部電極と交互に接続するとともに、前記内部電極と極性が異なる外部電極間に絶縁領域を形成してなる積層型圧電素子であって、前記内部電極と前記絶縁領域との境界をR状に形成したことを特徴とする。
また、異なる極性を有する前記内部電極同士が前記圧電体を介して重なる部分の形状がR状であることを特徴とする。
また、前記R状の曲率半径Rが0.5〜10mmであることを特徴とする。
また、前記内部電極を前記積層体の側面に露出させたことを特徴とする。
また、前記内部電極に空隙を設け、該内部電極の断面における全断面積に対する空隙の占める面積比が5〜70%であることを特徴とする。
また、前記積層体が多角形柱状体であることを特徴とする。
また、前記内部電極中の金属組成物が8〜10族金属および/または11族金属を主成分とすることを特徴とする
また、前記内部電極中の8〜10族金属の含有量をM1(質量%)、11族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする
また、前記8〜10族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
また、前記8〜10族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。あるいは、前記8〜10族金属がNiであり、前記11族金属がCuであることを特徴とする。
また、前記圧電体がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。さらに、前記圧電体がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子によれば、前記内部電極と前記絶縁領域との境界をR状に形成することで、内部電極と極性が異なる外部電極間に形成された絶縁領域と内部電極との境界における応力集中を防止できるため、高電界、高圧力下で積層型圧電素子を長期間連続駆動させても、極性の異なる内部電極と外部電極間に生じるクラックの成長を抑止し、極性の異なる内部電極と外部電極間におけるショートを防止することができる。
さらに、異なる極性を有する前記内部電極同士が前記圧電体を介して重なる部分の形状がR状であれば、内部電極と極性が異なる外部電極間に形成された絶縁領域と内部電極との境界に応力が一点に集中することがないので、前記境界における応力集中を防止することができる。これにより、積層型圧電素子を高電界、高圧力下で長期間連続駆動させても、積層型圧電素子の駆動方向である積層方向に伸縮駆動させても、異なる極性を有する上下の内部電極の前記境界で発生する積層方向に生じるクラックを防止することができるので、素子の耐久性を高めることができる。
さらに、前記R状の曲率半径Rが0.5〜10mmであれば、内部電極と前記絶縁領域との境界の一部にクラックが発生した場合でも、境界が曲線であるためにクラックが境界に沿って一気に直線状に成長するのを抑制することができる。
さらに、前記内部電極を前記積層体の側面に露出させれば、前記内部電極同士に挟まれる圧電体の面積を広くできるので、前記圧電体の変位面積を大きくできるとともに、駆動させた際に素子に発生する応力を素子の外側まで伝播することができることから、変位量に優れた高信頼性の積層型圧電素子とすることができる。
さらに、前記内部電極に空隙を設け、該内部電極の断面における全断面積に対する空隙の占める面積比が5〜70%であれば、圧電体が電界によって変形する際の内部電極による拘束力を弱くでき、圧電体の変位量を大きくできる。また、前記空隙により内部電極に加わる応力が緩和され、内部電極の剥れを防止して素子の耐久性が向上するという利点がある。さらには、素子内における熱伝導は内部電極が支配的であるが、内部電極に空隙があると、素子外部の急激な温度変化による素子内部の温度変化が緩和されるので、熱衝撃に強い積層型圧電素子とすることができる。
さらに、内部電極中の金属組成物が8〜10族金属および/または11族金属を主成分とすれば、圧電体と内部電極とを同時焼成することが可能となり、接合界面を強固に結合できるだけでなく、素子が変位して内部電極に応力が加わっても、内部電極自体が伸縮して応力集中を防止するため、クラックの発生を抑制することができる
従って、積層型圧電素子を連続駆動させても、所望の変位量が実効的に変化しないために、装置が誤作動することなく、耐久性に優れた高信頼性の噴射装置を提供することができる。
本発明の積層型圧電素子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の積層型圧電素子の一実施例を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体と内部電極との積層状態を示す斜視展開図である。また、図2は本発明の積層型圧電素子の内部電極パターンを示す拡大図で、(a)は圧電体と内部電極との積層状態を示す斜視展開図、(b)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す透視図である。
本発明の積層型圧電素子は、図1に示すように、圧電体11と内部電極12とを交互に積層してなる積層体13とし、該積層体13の積層方向の両端の層には圧電体11で形成された不活性層14を設けている。そして、積層体13の一対の対向する側面では、内部電極12が交互に正極、負極またはグランドが印加される外部電極15と電気的に導通して接合されている。一方、内部電極と極性が異なる外部電極との間には、異なる極性が印加される電極同士のショート防止のために、絶縁領域16を形成している。尚、この絶縁領域16は圧電体11の表面に形成されている。ここで、本発明の積層型圧電素子を積層型圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極15にリード線(図示しない)を半田により接続固定し、前記リード線を外部電圧供給部(図示しない)に接続すればよい。
また、圧電体11間には内部電極12が配されているが、この内部電極12は銀−パラジウム等の金属材料で形成しているので、内部電極12を通じて各圧電体11に所定の電圧を印加し、圧電体11を逆圧電効果による変位を起こさせる作用を有する。
これに対して、不活性層14は内部電極12が配されていない複数の圧電体11の層で
あるため、電圧を印加しても変位を生じない。また、絶縁領域16に挟まれた部位における圧電体11も内部電極12が配されていないことから、電圧を印加しても変位を生じない。
そして本発明では、図1(b)に示すように、内部電極12と絶縁領域16との境界をR状としたことを特徴とする。これは、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線状であれば、境界の一部にクラックが発生した場合、その一点を起点にして境界に沿ってクラックが直線状に成長して素子を破壊するからである。また、内部電極12と絶縁領域16との境界に直線同士を付き合わせたような角形状の端部を有する内部電極パターンにより形成されていると、前記角形状の端部に応力が集中して絶縁領域16にクラックが発生して、該クラックを伝って極性の異なる内部電極12外部電極15間でショートが起こり、積層型圧電体素子の耐久性が著しく低下する。
なお、図1(b)では、内部電極12のパターンが絶縁領域16に向かって凸型でR状に形成されているが、本発明では内部電極12と絶縁領域16の境界がR状であればよいため、前記凸型に限るものではない。例えば、内部電極12のパターンを絶縁領域16に向かって凹型に形成したり、R状を有する凸型と凹型と交互に連続して形成されているものでもよい。積層型圧電素子の耐久性をより高くするためには、凸型あるいは凹型のどちらかのR状であることが好ましく、異なる曲率半径を有する曲部が複数あるよりも単一の曲率半径を有する曲部で前記境界を形成する方が耐久性に優れているので好ましい。さらには、積層型圧電素子に電圧を印加して素子を変位させた後、電圧を解除した際、内部電極に素子側面から圧縮の応力がかかるため、耐久性をさらに高めるには、凹型が好ましい。
また、異なる極性を有する内部電極12同士が圧電体11を介して重なる部分の形状がR状であることが好ましい。これは、異なる極性の内部電極に挟まれた圧電体11の領域が実効的に変位する領域であるので、前記重なる部分の端部の形状が直線状であれば、前記境界に応力が集中し、そこでクラックが発生しやすくなる。そのため、異なる極性を有する上下の内部電極12間に挟まれた圧電体11は積層型圧電素子の駆動方向である積層方向に伸縮駆動するため、前記境界から積層方向に前記クラックが成長しやすくなり、極性が異なる内部電極12同士をつなぐようなクラックが生じてショートする可能性がある。
そして、上記した異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの形状は点対称形であることが好ましい。これは、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの形状が点対称でない場合、素子を変位させると、素子変位の中心軸がそろっていないために、変位の軸がぶれるため好ましくない。内部電極12形状が点対称形であることにより、素子変位の中心軸が一直線になり、素子変位の軸がぶれないため、変位方向が一直線となる変位のぶれない耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。
ここで、点対称とは、いわゆる対称中心が存在する形状であることを示している。即ち、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの面内に任意の1点を規定し、その1点を中心にして、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを面に平行になるように回転させた場合、180°以内の回転角で、回転前後の形状が重なり合うことである。そして、この時の回転の中心となる点が、対称中心である。点対称としては、180°回転対称、120°回転対称、90°回転対称がよく知られているが、内部電極12と外部電極15の導通を確保する経路を最小限に押さえることができることで、簡単な構造で精度良く積層型圧電素子を作製することが可能な180°回転対称が好ましい。
さらに、対称の中心が、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの重心であると、積層型圧電素子の全ての異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの重心が積層方向に一直線にそろうため、変位方向の中心軸が一直線となるだけではなく、重心が変位方向の中心軸と一致するので、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができるので、さらに好ましい。
また、内部電極12が積層体13の側面に露出させることが好ましい。これは、内部電極12が素子側面で露出していない部分では、電極の露出していない箇所は、駆動時に変位できないことから、駆動時に変位する領域が素子内部に閉じ込められているために変位時の応力が前記境界に集中しやすくなり、耐久性に問題が生じるので好ましくないからである。
ここで、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aとは、図2(a)に示すように、異なる極性の電圧を印加される内部電極12の電極パターンが圧電体11に配されており、図2(b)に示すように、前記電極パターン同士が圧電体11を介して重なり合う領域で示される。実際のところ、圧電体11は異なる極性の電界が印加される内部電極12に挟まれた領域(上述した異なる極性の内部電極12同士が圧電体11を介して重なる部分12a)で実効的に圧電変位して、積層型圧電素子は駆動する。
また、前記R状の曲率半径Rが0.5〜10mmであることが好ましい。これは、前記R状の曲率半径Rが0.5mm未満であると、曲率が小さいために、実際には、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線同士を付き合わせたようなあ角形状の端部が内部電極パターンに形成されていることと同じであり、端部に応力が集中して絶縁領域である圧電体にクラックが発生し、クラックを伝って異なる極性の内部電極同士がショートして積層型圧電体素子が破壊するからである。
10mmを超えると、逆に曲率が大きくなり、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線状であることと同じ現象が発生し、境界の一部にクラックが発生した場合、その一点を起点にして境界に沿ってクラックが成長して素子を破壊するからである。
前記R状の曲率半径Rは、より好ましくは1〜5mmとすることで耐久性を高めることができる。さらには1〜3mmとすることで耐久性が高く積層型圧電素子を小型化することができる。
また、内部電極12に空隙21を設け、該内部電極12の断面における全断面積に対する空隙21の占める面積比が5〜70%であることが好ましい。これは、空隙21を内部電極12の面積に対して5〜70%占めるようにすると、変位量が大きくなり、変位量に優れた積層型圧電素子を得ることができるからである。
内部電極12に空隙21が無いと、電界を受けて圧電体11が変形する際に、内部電極12からの束縛を受けやすいため、変形量が小さくなり、充分な積層型圧電素子の変位量を得ることができない。これに対して、内部電極12中に空隙21がある積層型圧電素子は、圧電体の変形が自由になり、変形量が大きくなる。
ここで、上述した内部電極12の面積に対する空隙21の占める割合(空隙率)は、積層型圧電素子を積層方向に切断した面で測定する。その切断面において、内部電極の部分に存在する空隙の面積を測定し、その空隙の面積の総和を内部電極2の面積(空隙も含む)で除した値を100倍したものである。
また、空隙率が5%より少ないと圧電体11が電界を印加されて変形する際に内部電極12から束縛を受け、圧電体11の変形が抑制され、積層型圧電素子の変形量が小さくなる。また、発生する内部応力も大きくなるために耐久性にも悪い影響を与える。
一方、空隙率が70%より大きいと、空隙21間の電極部分に極端に細い部分が生じる為、内部電極12自体の強度が低下し、内部電極12にクラックが生じやすくなり、最悪は断線等を生じる恐れがあるので好ましくない。併せて、内部電極12の導電性が低下するため、圧電体11に電圧を印加し難くなり、充分な変位量を得られない場合がある。
尚、空隙21は電極部分間に設けたものだけではなく、電極部分の内部に包含されたような状態で存在しても良い。
さらに、前記空隙率は、より好ましくは7〜70%、さらに好ましくは10〜60%である。このようにすることで、圧電体11をよりスムーズに変形できるとともに、内部電極12の導電性を充分に有しているため、積層型圧電素子の変位量を増大することができる。
また、空隙21の断面における最大幅が1μm以上であることが好ましい。最大幅とは、積層型圧電素子の積層方向の断面において、内部電極の断面に存在する空隙の大きさを電極に平行な線を引きその線上の長さを測定し、測定値で最大の値を最大幅とした。さらに、空隙21の最大幅は、変位量を大きくできるということと、内部応力を軽減し、耐久性を向上するという観点から、2μmがより好ましく、3μmがさらに好ましい。
また、前記内部電極12断面において電極部分と空隙の界面が圧電体11に接する部分を起点とする電極部分への接線22と圧電体11とのなす角度23が60度以上であることが好ましい。この角度は、積層型圧電素子の積層方向の断面において、電極部分と空隙21の界面が圧電体11と接する点を起点とし、電極部分に接するように線を引き、この接線22と圧電体11とのなす角度23で表される。
ここで、角度23が60度未満であると、内部電極12中の電極部分が圧電体11と接してできるメニスカスの部位が大きくなるため、内部電極12が圧電体11を拘束する力が大きくなり、変位量が低下する可能性がある。さらに、角度は、内部電極12が圧電体11を拘束する力が小さくなるという理由で変位量を大きくできること、内部応力を小さくし、耐久性を向上させると言う観点から、70度以上がより好ましく、80度以上であることがさらに好ましい。
また、積層体13が多角形柱状体であることが好ましい。これは、積層体13が円柱状体であると、真円にしなければ中心軸がぶれてしまうため高精度の円を作って積みあげなければならず、同時焼成による量産型の製法を用いるのが困難になり、また、略円形状の積層体を積層後、あるいは焼成後に外周を研磨して円柱状にしても、内部電極の中心軸を高精度にそろえるが困難になる。これに対して、多角形柱状体であれば、基準線を決定した圧電体に内部電極を形成することができ、さらに基準線に沿って積層することができるので、駆動の軸である中心軸を量産型の製法をもちいて形成することができるため、耐久性の高い素子とすることができる。
また、異なる極性の内部電極12と外部電極15との距離L1が0.1〜5mmであることで、変位量を大きくかつ絶縁破壊を防止することを両立した、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。5mmを超えると、内部電極面積の減少に伴い、圧電体11の駆動領域が小さくなるので好ましくない。0.1mmよりも小さいと絶縁特性が急激に劣化する。
駆動寸法を大きくして、耐久性を高めるには、0.1mm以上3mm以下が好ましく、0.5mm以上1mm以下がさらに好ましい。ここで、距離L1とは、内部電極12が配された圧電体11上における内部電極12と外部電極15との絶縁距離であり、該絶縁距離の最短距離を示している。
さらに本発明では、図4に示すように、素子表面での異なる極性の内部電極12と外部電極15の距離L2が0.1mm〜5mmであることで、変位量を大きくかつ絶縁破壊を防止することを両立した、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。5mmを超えると、内部電極面積の減少に伴い、圧電体11の駆動領域が小さくなるので好ましくない。0.1mmよりも小さいと絶縁特性が急激に劣化する。
駆動寸法を大きくして、耐久性を高めるには、0.1mm以上3mm以下が好ましく、0.5mm以上1mm以下がさらに好ましい。ここで、距離L2とは、積層体13の側面における1つの内部電極12と外部電極15との絶縁距離であり、該絶縁距離の最短距離を示している。
また、本発明においては、内部電極12中の金属組成物が8〜10族金属および/または11族金属を主成分とすることが望ましい。これは、上記の金属組成物は高い耐熱性を有するため、焼成温度の高い圧電体11と内部電極12を同時焼成すること可能となるためである。そのため、外部電極15の焼結温度を圧電体11の焼結温度より低温で作製することが出来るので、圧電体11と外部電極15との間の激しい相互拡散を抑制することができる。
さらに、内部電極12中の金属組成物が8〜10族金属の含有量をM1(質量%)、11族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足する金属組成物を主成分とすることが好ましい。これは、8〜10族金属が15質量%を超えると、比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱し、該発熱が温度依存性を有する圧電体11に作用して変位特性を減少させてしまうため、積層型圧電素子の変位量が小さくなる場合があるからである。さらに、外部電極15を形成した際、外部電極15と内部電極12とが相互拡散して接合するが、8〜10族金属が15質量%を超えると、外部電極15中に内部電極成分が拡散した箇所の硬度が高くなるため、駆動時に寸法変化する積層型圧電素子においては、耐久性がおちるからである。また、内部電極12中の11族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、8〜10族金属が0.001質量%以上15質量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。また、熱伝導に優れ、より高い耐久性を必要とする場合は0.5質量%以上9.5質量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は2質量%以上8質量%以下がさらに好ましい。
ここで、11族金属が85質量%未満になると、内部電極12の比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱する場合があるからである。また、内部金属12中の11族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、11族金属が85質量%以上99.999質量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、90質量%以上99.9質量%以下が好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合は90.5質量%以上99.5質量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は92質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。
上記の内部電極12中の金属成分の質量%を示す8〜10族金属、11族金属はEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法で特定できる。
さらに、本発明の内部電極12中の金属成分は、8〜10族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がCu,Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これは、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成であるからである。
さらに、内部電極12中の金属成分は、8〜10族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これにより、耐熱性に優れ、比抵抗の小さな内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、8〜10族金属がNiであることが好ましい。これにより、耐熱性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、11族金属がCuであることが好ましい。これにより、硬度の低い熱伝導性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中に上記した金属組成物とともに、酸化物、窒化物または炭化物を添加することが好ましい。これにより、内部電極の強度が増し、積層型圧電素子の耐久性が向上する。特に酸化物は圧電体11と相互拡散して内部電極12と圧電体11との密着強度を高めるのでより好ましい。さらに、前記無機組成物が50体積%以下であることが好ましい。これにより、内部電極12と圧電体11との間の接合強度を圧電体11の強度より小さく出来る。さらに好ましくは30体積%以下にすることで積層型圧電素子の耐久性を向上できる。
前記酸化物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。尚、添加された酸化物等の含有量は、積層型圧電素子の断面SEM像における内部電極中の組成の面積比から算出できる。
さらに、圧電体11がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。これは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)を代表とするペロブスカイト型圧電セラミックス材料等で形成されると、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いことから、変位量を大きくすることができ、さらに、圧電体11と内部電極12を同時に焼成することもできる。上記に示した圧電体11としては、圧電歪み定数d33が比較的高いPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
さらに、焼成温度が900℃以上1000℃以下であることが好ましい。これは、焼成温度が900℃以下では、焼成温度が低いため焼成が不十分となり、緻密な圧電体11を作製することが困難になる。また、焼成温度が1000℃を超えると、内部電極12と圧電体11接合強度が大きくなるからである。
また、本発明の積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極12と端部が露出しない内部電極12とが交互に構成されており、前記端部が露出していない内部電極12と外部電極15間の圧電体部分に溝が形成されており、この溝内に、圧電体11よりもヤング率の低い絶縁体が形成されていることが好ましい。これにより、このような積層型圧電素子では、駆動中の変位によって生じる応力を緩和することができることから、連続駆動させても、内部電極12の発熱を抑制することができる。
次に、本発明の積層型圧電素子の製法を説明する。
本発明の積層型圧電素子は、まず、PbZrO−PbTiO等からなるペロブスカイト型酸化物の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DBP(フタル酸ジブチル)、DOP(フタル酸ジオチル)等の可塑剤とを混合してスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電体11となるセラミックグリーンシートを作製する。
次に、銀−パラジウム等の内部電極12を構成する金属粉末に、酸化銀等の金属酸化物、バインダー及び可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。ここで、内部電極12にR状のパターンを形成するには、あらかじめ、スクリーン印刷の版にR状となるようにパターンを形成して印刷する。薄膜手法で電極を形成する場合は、R状となるようにパターンを形成したメタルマスクを代表とするマスクパターンをグリーンシート状に配置して電極パターンを形成した。
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、この積層体について所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって積層体13が作製される。
このとき、不活性層14の部分のグリーンシート中に、銀−パラジウム等の内部電極12を構成する金属粉末を添加したり、不活性層14の部分のグリーンシートを積層する際に、銀−パラジウム等の内部電極12を構成する金属粉末および無機化合物とバインダーと可塑剤からなるスラリーをグリーンシート上に印刷することで、不活性層14とその他の部分の焼結時の収縮挙動ならびに収縮率を一致させることができるので、緻密な積層体を形成することができる。
なお、積層体13は、上記製法によって作製されるものに限定されるものではなく、複数の圧電体11と複数の内部電極12とを交互に積層してなる積層体13を作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
次に、ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cmに制御し、このシートを、積層体13の外部電極形成面に転写し、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ積層体13の焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行うことにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極15を形成することができる。
このとき、外部電極15を構成するペーストを多層のシートに積層してから焼付けを行っても、1層ごとに積層しては焼付けを行っても良いが、多層のシートに積層してから一度に焼付けを行うほうが量産性に優れている。そして、外部電極層の層ごとにガラス成分を変える場合は、シートごとにガラス成分の量を変えたものを持ちいればよいが、最も圧電体11に接した面にごく薄くガラスリッチな層を構成したい場合は、積層体に、スクリーン印刷等の方法で、ガラスリッチなペーストを印刷した上で、多層のシートを積層する事が用いられる。このとき、印刷のかわりに5μm以下のシートを用いても良い。
なお、前記銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を有効的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と内部電極12を拡散接合させ、また、外部電極15中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極15と柱状積層体13側面とを部分的に接合させるという点から、500〜800℃が望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜800℃が望ましい。
焼き付け温度が800℃より高い場合には、銀ガラス導電性ペーストの銀粉末の焼結が進みすぎ、有効的な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができず、外部電極15が緻密になりすぎてしまい、結果として外部電極15のヤング率が高くなりすぎ駆動時の応力を十分に吸収することができずに外部電極15が断線してしまう可能性がある。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行った方がよい。
一方、焼き付け温度が500℃よりも低い場合には、内部電極12端部と外部電極15の間で十分に拡散接合がなされないために、ネック部が形成されず、駆動時に内部電極12と外部電極15の間でスパークを起こしてしまう可能性がある。
そして、外部電極15にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極15に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、積層体13を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を利用した積層型圧電アクチュエータが完成し、リード線を外部の電圧供給部に接続し、リード線及び外部電極15を介して内部電極12に電圧を印加させれば、各圧電体11は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
さらに、外部電極15の外面に、金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板が埋設された導電性接着剤からなる導電性補助部材を形成してもよい。この場合には、外部電極15の外面に導電性補助部材を設けることによりアクチュエータに大電流を投入し、高速で駆動させる場合においても、大電流を導電性補助部材に流すことができ、外部電極15に流れる電流を低減できるという理由から、外部電極15が局所発熱を起こし断線することを防ぐことができ、耐久性を大幅に向上させることができる。さらには、導電性接着剤中に金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板を埋設しているため、前記導電性接着剤に亀裂が生じるのを防ぐことができる。
金属のメッシュとは金属線を編み込んだものであり、メッシュ状の金属板とは、金属板に孔を形成してメッシュ状にしたものをいう。
さらに、前記導電性補助部材を構成する導電性接着剤は銀粉末を分散させたポリイミド樹脂からなることが望ましい。即ち、比抵抗の低い銀粉末を、耐熱性の高いポリイミド樹脂に分散させることにより、高温での使用に際しても、抵抗値が低く且つ高い接着強度を維持した導電性補助部材を形成することができる。さらに望ましくは、前記導電性粒子はフレーク状や針状などの非球形の粒子であることが望ましい。これは、導電性粒子の形状をフレーク状や針状などの非球形の粒子とすることにより、該導電性粒子間の絡み合いを強固にすることができ、該導電性接着剤のせん断強度をより高めることができるためである。
本発明の積層型圧電素子はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
また、上記では、積層体13の対向する側面に外部電極15を形成した例について説明したが、本発明では、例えば隣設する側面に一対の外部電極を形成してもよい。
図5は、本発明の噴射装置を示すもので、収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
また、本発明は、積層型圧電素子および噴射装置に関するものであるが、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、または、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子以外であっても、圧電特性を用いた素子であれば、実施可能であることは言うまでもない。
(実施例1)本発明の積層型圧電素子からなる積層型圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。
まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの片面に、銀−パラジウム合金(銀95質量%−パラジウム5重量%)にバインダーを加えた導電性ペーストをスクリーン印刷法により3μmの厚みで、図6〜10に示す形状で印刷して形成したシートを300枚積層し、焼成した。焼成は、800℃で保持した後に、1000℃で焼成した。
図6は、内部電極12と絶縁領域16との境界がR状であり、積層型圧電素子の全ての素子側面で異なる極性の内部電極が露出している内部電極パターンを示す図である。ここで、図6(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す図である。
図7は、内部電極12と絶縁領域16との境界がR状であり、積層型圧電素子の全ての素子側面で異なる極性の内部電極が露出している内部電極パターンで、さらに圧電体11にR面が形成されていることを示す図である。ここで、図7(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す図である。
図8は、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線状であり、積層型圧電素子の一部の素子側面では片方の内部電極しか露出していない内部電極パターンを示す図である。ここで、図8(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す平面図である。
図9は、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線状であり、積層型圧電素子の全ての素子側面で異なる極性の内部電極が露出している積層型圧電素子の内部電極パターンを示す図である。ここで、図9(a)、(b)は異なる極性のそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す図である。
図10は、内部電極12と絶縁領域16との境界が直角状であり、積層型圧電素子の全ての素子側面で異なる極性の内部電極が露出している積層型圧電素子の内部電極パターンを示す図である。ここで、図9(a)、(b)は異なる極性のそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す図である。
図11は、内部電極12と絶縁領域16との境界が直線状であり、異なる極性の内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aの形状が非点対称形であり、積層型圧電素子の全ての素子側面で異なる極性の内部電極が露出している積層型圧電素子の内部電極パターンを示す図である。ここで、図10(a)、(b)は異なる極性のそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性を有する内部電極同士が圧電体11を介して重なる部分12aを示す図である。
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計質量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製し、このようにして作製した銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。
そして、前記銀ガラスペーストのシートを積層体13の外部電極15面に転写して積層し、700℃で30分焼き付けを行い、外部電極15を形成した。
その後、外部電極15にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極15にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電素子を用いた積層型圧電アクチュエータを作製した。
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加したところ、すべての積層型圧電アクチュエータにおいて、積層方向に45μmの変位量が得られた。さらに、この積層型圧電アクチュエータを室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、1×10回まで連続駆動した試験を行った。結果は表1に示すとおりである。
Figure 2006156690
この表1から、比較例である試料番号3、4、5、6は、内部電極12と絶縁領域16との境界がR状でないため、積層型圧電アクチュエータを連続駆動させると、圧電変位の大きくなる部分と圧電変位しない部分の境界に応力が集中して、該積層界面にかかる負荷が増大して圧電体11の絶縁領域16にクラックが生じるとともに、駆動中にノイズが発生した。
これらに対して、本発明の実施例である試料番号1、2では、内部電極12と絶縁領域16との境界がR状であるため、1×10回連続駆動させた後も、素子変位量が著しく低下することなく、積層型圧電アクチュエータとして必要とする実効変位量を有し、また、誤作動が生じない優れた耐久性を有した積層型圧電アクチュエータを作製できた。
特に試料番号2は、圧電体11にR面があるため、1×10回連続駆動させた後も、素子変位量がほとんど変化せず、極めて耐久性に優れていた。
(実施例2)実施例1の試料No.2の積層型圧電アクチュエータの内部電極12の材料組成を変化させて、各試料の変位量の変化率を測定した。ここで、変位量の変化率とは、各試料の積層型圧電素子が駆動回数1×10回に達した時の変位量(μm)と、連続駆動を開始する前の積層型圧電素子初期状態の変位量(μm)とを比較したものである。結果を表2に示す。
Figure 2006156690
表2より、試料No.1の内部電極12を銀100%にした場合は、シルバーマイグレーションにより積層型圧電素子の一部に破損が生じた。また、試料No.18は内部電極12中の金属組成物において8〜10族金属の含有量が15質量%を超えており、また、11族金属の含有量が85質量%未満であるため、内部電極12の比抵抗が大きいことで積層型圧電素子を連続駆動させた際発熱して、積層型圧電アクチュエータの変位量が低下することがわかる。
これに対して、試料No.2〜14は、内部電極12中の金属組成物が8〜10属金属の含有量をM1質量%、1b属金属の含有量をM2質量%としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100質量%を満足する金属組成物を主成分とするために、内部電極12の比抵抗を小さくして発熱を抑制できたとともに、伸縮性に富んだ内部電極12とすることができたので、クラックが発生することなく素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できた。
試料No.15〜17も内部電極12の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても内部電極12で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できることがわかる。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
本発明の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す展開斜視図である。 本発明の積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す斜視展開図、(b)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 本発明の積層型圧電素子の圧電体間に配された内部電極の拡大断面図である。 本発明の積層型圧電素子が有する内部電極と外部電極との距離を示す横断面図である。 本発明の噴射装置を示す断面図である。 本発明の実施例である積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 本発明の実施例である積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 従来の積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 従来の積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 従来の積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 従来の積層型圧電素子の内部電極パターンを示すもので、(a)、(b)は異なる極性を有するそれぞれの内部電極パターンを示す平面図で、(c)は異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分を示す図である。 従来の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す展開斜視図である。
符号の説明
11、101・・・圧電体
12、102・・・内部電極
12a・・・異なる極性の内部電極同士が圧電体を介して重なる部分
13、103・・・積層体
14、104・・・不活性層
15、105・・・外部電極
16、106・・・絶縁領域
21・・・気孔
22・・・接線
23・・・角度
31・・・収納容器
33・・・噴射孔
35・・・バルブ
37・・・燃料通路
39・・・シリンダ
41・・・ピストン
43・・・圧電アクチュエータ

Claims (12)

  1. 圧電体と内部電極とが交互に積層されてなる積層体と、該積層体の側面に正極と負極、または正極とグランドのいずれかとなる一対の外部電極とを備え、前記内部電極を正極の外部電極、負極またはグランドの外部電極と交互に接続するとともに、前記内部電極と極性が異なる外部電極間に絶縁領域を形成してなる積層型圧電素子であって、前記内部電極と前記絶縁領域との境界をR状に形成したことを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 異なる極性を有する前記内部電極同士が前記圧電体を介して重なる部分の形状がR状であることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電素子。
  3. 前記R状の曲率半径Rが0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層型圧電素子。
  4. 前記内部電極を前記積層体の側面に露出させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  5. 前記内部電極に空隙を設け、該内部電極の断面における全断面積に対する空隙の占める面積比が5〜70%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  6. 前記内部電極中の金属組成物が8〜10族金属および/または11族金属を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  7. 前記内部電極中の8〜10族金属の含有量をM1(質量%)、11族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  8. 前記8〜10族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の積層型圧電素子。
  9. 前記8〜10族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、11族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の積層型圧電素子。
  10. 前記8〜10族金属がNiであることを特徴とする請求項8に記載の積層型圧電素子。
  11. 前記11族金属がCuであることを特徴とする請求項8に記載のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  12. 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された請求項1乃至11のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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