JP2005183553A - 積層型圧電素子および噴射装置 - Google Patents

積層型圧電素子および噴射装置 Download PDF

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Abstract

【課題】連続駆動させても、所望の変位量が実効的に変化しないために、装置が誤作動することなく、耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子及び噴射装置を提供する。
【解決手段】圧電体と電極とが交互に積層してなる積層型圧電素子において、圧電体に含まれるアルカリ金属が5ppm以上300ppm以下としている。また、ハロゲン元素が5ppm以上1000ppm以下としているものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層型圧電素子および噴射装置に関し、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、ならびに燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子に用いられる積層型圧電素子および噴射装置に関するものである。
従来より、積層型圧電素子を用いたものとしては、圧電体と内部電極を交互に積層した積層型圧電アクチュエータが知られている。積層型圧電アクチュエータには、同時焼成タイプと、圧電磁器と内部電極板を交互に積層したスタックタイプの2種類に分類されており、低電圧化、製造コスト低減の面から考慮すると、薄層化に対して有利であることと、耐久性に対して有利であることから、同時焼成タイプの積層型圧電アクチュエータが優位性を示しつつある。
図2は、特許文献1に示す従来の積層型圧電素子を示すもので、圧電体21と内部電極22を交互に積層した積層体200と互いに対向する一対の側面に形成された外部電極23とから構成されている。積層体200は、それを構成する圧電体21と内部電極22とが交互に積層されてなるが、内部電極22は圧電体21主面全体には形成されず、いわゆる部分電極構造となっている。この部分電極構造の内部電極22を一層おきに異なる積層体200の側面に露出するように左右互い違いに積層している。なお、積層体200の積層方向における両主面側は不活性層24、24が積層されている。そして、積層体200の互いに対向する一対の側面に上記露出する内部電極22同士を接続するように外部電極23が形成され、内部電極22を一層おきに接続することができる。
従来の積層型圧電素子を圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極23にさらにリード線が半田により固定され、外部電極23間に所定の電位がかけられて駆動させることができる。特に、近年においては、小型の積層型圧電素子は大きな圧力下において大きな変位量を確保する要求があるため、より高い電界を印加し、長時間連続駆動させることが行われている。
従来の積層型圧電素子の製造方法としては、圧電体21の原料を含むセラミックグリーンシートに内部電極ペーストを図2のような所定の電極構造となるパターンで印刷し、この内部電極ペーストが塗布されたグリーンシートを複数積層して得られた積層成形体を作製し、これを焼成することによって積層体200を作製する。その後、積層体200の一対の側面に外部電極23を焼成によって形成して積層型圧電素子が得られる。
従来の積層体200を製造するにあたって、以下のようにしてアルカリ金属が混入することがある。即ち、クリーンシートに混入された圧電体21の原料およびバインダー原料にアルカリ金属が酸化物、炭酸塩あるいは硝酸塩などの組成物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、焼結性を向上する目的で、ガラス粉末を圧電体21の原料に添加することがあるが、多くのガラス粉末にはアルカリ金属の酸化物が含まれている。さらに、製造工程において、圧電体21の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりする。
一方、以下のようにしてハロゲン元素も混入することがある。即ち、圧電体21の原料およびバインダー原料にハロゲン元素がフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、製造工程において、混合粉砕に水を用いたり、圧電体21の原料を長期保管しているとハロゲン元素の混入が発生したりする。さらに、圧電体21の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりする。
さらに、上述したアルカリ金属とハロゲン元素の双方は人体からNaCl等の化合物により混入することもある。
また、従来から内部電極22としては、銀とパラジウムの合金が用いられ、さらに、圧電体21と内部電極22を同時焼成するために、内部電極22の金属組成は、銀70wt%、パラジウム30wt%にして用いていた(例えば、特許文献2参照)。
このように、銀100%の金属組成からなる内部電極ではなく、パラジウムを含む銀・パラジウム合金含有の金属組成からなる内部電極を用いるのは、パラジウムを含まない銀100%組成では、一対の対向する電極間に電位差を与えた場合、その一対の電極のうちの正極から負極へ電極中の銀が素子表面を伝わって移動するという、いわゆるシルバーマイグレーション現象が生じるからである。この現象は、高温、高湿の雰囲気中で、特に著しく発生する。
従来の内部電極22を製造するにあたって、上述の圧電体21と同様であるが、以下のようにして内部電極22にアルカリ金属が混入することがある。即ち、内部電極22の原料ならびにバインダー原料にアルカリ金属が酸化物、炭酸塩あるいは硝酸塩などの組成物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、焼結性を向上する目的で、ガラス粉末を内部電極22の原料に添加することがあるが、多くのガラス粉末にはアルカリ金属の酸化物が含まれている。さらに、製造工程において、内部電極22の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりする。
一方、以下のようにして内部電極22にハロゲン元素も混入することがある。即ち、内部電極22の原料ならびにバインダー原料にハロゲン元素がフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、製造工程において、内部電極22の原料を長期保管しているとハロゲン元素の混入が発生したりする。さらに、焼成雰囲気から拡散したりする。
さらに、上述したアルカリ金属とハロゲン元素の双方は人体からNaCl等の化合物により混入することもある。
従来の外部電極23を製造するにあたって、上述の圧電体21、内部電極22と同様であるが、以下のようにして外部電極23にアルカリ金属が混入することがある。即ち、外部電極23の原料およびバインダー原料にアルカリ金属が酸化物、炭酸塩あるいは硝酸塩などの組成物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、焼結性を向上する目的で、ガラス粉末を外部電極23の原料に添加することがあるが、多くのガラス粉末にはアルカリ金属の酸化物が含まれている。さらに、製造工程において、外部電極23の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりする。
一方、以下のようにして外部電極23にハロゲン元素も混入することがある。即ち、外部電極23の原料およびバインダー原料にハロゲン元素がフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として含まれていたり、不可避不純物として混入したりする。また、製造工程において、混合粉砕に水を用いたり、外部電極23の原料を長期保管しているとハロゲン元素の混入が発生したりする。また、外部電極23の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりする。
さらに、上述したアルカリ金属とハロゲン元素の双方は人体からNaCl等の化合物により混入することもある。
ところで、従来の積層型圧電素子を製造するにあたって、圧電体21の原料およびバインダーからなるグリーンシートに、内部電極22の原料及びバインダーからなる原料ペーストを印刷したものを複数枚積層して焼成する際に、圧電体21および内部電極22に含まれる上述のアルカリ金属の濃度が大きい方から小さいほうへ拡散がおこることがある。この時、拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。また同様に、圧電体21および内部電極22に含まれるハロゲン元素の濃度が大きい方から小さいほうへ拡散がおこることもある。この時、拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。
さらに、積層体200の一対の側面に、外部電極23の原料及びバインダーからなる原料ペーストを印刷して焼成する際に、外部電極23および外部電極23と接する圧電体21に含まれるアルカリ金属の濃度が大きい方から小さいほうへ拡散がおこることもある。この時、拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。同時に、外部電極23および外部電極23と接する内部電極22に含まれるアルカリ金属の濃度が大きい方から小さいほうへ拡散がおこることもある。この時、拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。
同様に外部電極23および外部電極23と接する圧電体21に含まれるハロゲン元素の濃度が大きい方から小さいほうへハロゲン元素の拡散がおこることがある。この時、拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。同時に、外部電極23および外部電極23と接する内部電極22に含まれるハロゲン元素の濃度が大きい方から小さいほうへハロゲン元素の拡散がおこることもある。この時拡散する距離は焼成温度、焼成時間、そして濃度の比で異なってくる。
特開昭61−133715号公報 実開平1−130568号公報
しかしながら、積層型圧電素子を高温、高圧力の環境下で使用する場合、積層型圧電素子の温度が上昇すると、それに含まれる以下の2つの不純物がイオン化することで積層型圧電素子の固有抵抗が変化して変位量が変化するという問題があった。
まず第1に、圧電体21中に不純物としてアルカリ金属を含む場合、上述の変位量の変化は、アルカリ金属を主成分としない圧電体21とした場合に生じる。即ち、アルカリ金属を主成分としない場合には主に圧電体21中にアルカリ金属がイオンとして存在する場合が多くなり、このような状態で積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、アルカリ金属イオンが内部電極22間を移動し、これを長時間連続駆動させると、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して、本来の変位量が減少していくものと考えられる。
さらに、アルカリ金属イオンが局部的に集中した場合は、内部電極22間に局部的に短絡が生じて駆動が停止するという問題もあった。この短絡は高温で湿度の高い環境下で駆動させた場合に発生しやすいものでもあった。
このアルカリ金属を含有する問題は圧電体21に含まれている場合だけでなく、内部電極22に含有する場合には、積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、アルカリ金属イオンがプラス極となる内部電極22から圧電体21を介してマイナス極となる内部電極22間へと移動することで、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して、本来の変位量が減少していくものと考えられる。さらに、外部電極22に含有する場合には、積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、アルカリ金属イオンがプラス極となる外部電極23から、同じくプラス極となる内部電極22または圧電体21を介してマイナス極となる内部電極22間へと移動することで、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して、本来の変位量が減少していくものと考えられる。
これらの任意の箇所で発生するアルカリ金属イオンの移動により、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して変位量が変化するという問題があった。そして、アルカリ金属イオンの移動はアルカリ金属イオン濃度の大きい方から小さい方へアルカリ金属イオンが拡散することで生じると同時に外部から印加される電圧に対してはアルカリ金属イオンの極性と反対のマイナス極方向へ選択的に移動する。
なお、アルカリ金属はセラミックの焼結進行に非常に効果的であり、古くから焼結助剤として使われていたが、アルカリ金属の添加が多すぎると高周波誘電損失が大きくなるため、高周波誘電損失が大きくなると信号の伝送損失が大きくなる問題が発生するICパッケージや、高周波誘電損失が大きくなると品質係数Q値が小さくなる問題や自己発熱等の問題が発生するコンデンサなどに用いられるセラミックにおいては、高周波誘電特性を優先することから、誘電損失を小さくする目的でアルカリ金属を少なくすることが行われていた。これに対して、積層型圧電素子においては、これらの用途と異なり、直流高電圧で素子を駆動させるとともに、1kHz以下の低い周波数で使用されることから、高周波誘電特性は優先するものではなく、圧電体21に高電圧での絶縁特性を得るために、緻密な焼結体を形成することが求められていたため、各種焼結助剤としてアルカリ金属を用いることが行われてきた。
第2に、圧電体21中に不純物としてハロゲン元素を含む場合、上述の変位量の変化は圧電体21中にハロゲン元素がイオンとして存在する場合に生じる。即ち、積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、ハロゲン元素がイオン化して電解質成分として金属イオンが移動してしまい、本来の素子の固有抵抗が変化して変位量を減少させているものと考えられる。従って、このような移動が多くなると内部電極22や外部電極23に含まれている金属のマイグレーションが加速し、内部電極22間で局部的に短絡を起こしやすく駆動が停止するという問題もあった。この短絡は高温で湿度の高い環境下で駆動させた場合に発生しやすいものでもあった。
このハロゲン元素を含有する問題は圧電体21に含まれている場合だけでなく、内部電極22や外部電極23において、イオン化した塩素等のハロゲンが外気の水分と結びつき電解質成分を形成することで、塩酸と同等の効果を発現して電極を腐食したり、素子に高電圧を加えた場合にスパークしたり、電解質成分に電極を構成する金属がイオンとして溶解して、電極構成金属とハロゲンからなる析出物を形成して絶縁不良を起こして駆動が停止する問題があった。さらに、内部電極22に含有する場合には、積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、ハロゲンイオンがマイナス極となる内部電極22から圧電体21を介してプラス極となる内部電極22間へと移動することで、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して、本来の変位量が減少していくものと考えられる。さらに、外部電極22に含有する場合には、積層型圧電素子の外部電極23に電圧を印加した場合、特に、高電圧の直流電界で駆動させると、ハロゲンイオンがマイナス極となる外部電極23から、同じくマイナス極となる内部電極22または圧電体21を介してプラス極となる内部電極22間へと移動することで、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して、本来の変位量が減少していくものと考えられる。
これらの任意の箇所で発生するハロゲンイオンの移動により、積層型圧電素子の固有抵抗が変化して変位量が変化したり、イオン化した塩素等のハロゲンが外気の水分と結びつき電解質成分を形成することで、素子に高電圧を加えた場合にスパークしたり、電解質成分に電極を構成する金属がイオンとして溶解して、電極構成金属とハロゲンからなる析出物を形成して絶縁不良を起こして駆動が停止する問題があった。そして、ハロゲンイオンの移動はハロゲンイオン濃度の大きい方から小さい方へハロゲンイオンが拡散することで生じると同時に外部から印加される電圧に対してはハロゲンイオンの極性と反対のプラス極方向へ選択的に移動する。
このアルカリ金属を含有する問題とハロゲン元素を含有する問題が同時に発生すると、それぞれの問題が同時に発生すると同時に、積層型圧電素子の表面に水分が付着すると、イオン化したアルカリ金属によって電解質成分が形成され、素子に高電圧を加えた場合にスパークしたり、電解質成分が乾燥すると塩が形成されるため、内部電極22及び外部電極23を腐食して絶縁不良を起こして駆動が停止する問題があった。
従って、上述に説明した従来の積層型圧電素子を、自動車エンジンの燃料噴射装置等のように長期間にわたって使用する場合には、所望の変位量が次第に変化して装置が誤作動する問題を生じていたため長期間連続運転における変位量の変化の抑制と耐久性向上が求められていた。
本発明は、上述の問題点に鑑みて成されたものであり、高電圧、高圧力の環境下で長期間連続駆動させた場合でも、変位量が変化することがなく、耐久性に優れた積層型圧電素子および噴射装置を提供することを目的とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体にアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記内部電極にアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記外部電極に上記アルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子は、少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、アルカリ金属を5ppm以上300ppm以下含むことを特徴とする。
前記アルカリ金属がNa、Kのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体に前記ハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記内部電極に前記ハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記外部電極に前記ハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、ハロゲン元素を5ppm以上1000ppm以下含むことを特徴とする積層型圧電素子。
前記ハロゲン元素がCl、Brのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、アルカリ金属を5ppm以上300ppm以下及びハロゲン元素を5ppm以上1000ppm以下含むことを特徴とする。
前記内部電極中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることを特徴とする。
前記内部電極中のVIII族金属の含有量をM1(質量%)、Ib族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする請求項12に記載の積層型圧電素子。
前記VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
前記VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする。
前記Ib族金属がCuであることを特徴とする。
前記VIII族金属がNiであることを特徴とする。
前記内部電極中に金属組成物とともに無機組成物を添加したことを特徴とする。
前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
前記圧電体がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
前記圧電体がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする。
前記積層体の焼成温度が900℃以上1000℃以下であることを特徴とする。
前記内部電極中の組成のずれが焼成前後で5%以下であることを特徴とする。
前記積層体の側面に端部が露出する前記内部電極と端部が露出しない前記内部電極とが交互に構成されており、前記端部が露出していない前記内部電極と前記外部電極間の前記圧電体部分に溝が形成されており、該溝に前記圧電体よりもヤング率の低い絶縁体が充填されていることを特徴とする。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された請求項1乃至23のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする。
本発明の構成によれば、本発明者らが鋭意検討の結果、積層型圧電素子中の不純物であるアルカリ金属の量を上記範囲に制限すると、圧電体、内部電極又は外部電極にアルカリ金属イオンとして存在するのが抑制され、高電圧、高圧力の環境下で長期間連続駆動させた場合でも、積層型圧電素子の温度を一定に保つことができ、これにより、所望の変位量が実効的に変化しないのを初めて見いだしたものである。その結果、装置の誤作動を抑え、短絡のない耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子及びそれを用いた噴射装置を提供することができる。
また、本発明の構成によれば、本発明者らが鋭意検討の結果、積層型圧電素子中の不純物であるハロゲン元素の量を所定量に制限すると、圧電体、内部電極又は外部電極にハロゲン元素がイオン化するのを抑制し、高電圧、高圧力の環境下で長期間連続駆動させた場合でも、積層型圧電素子の温度を一定に保つことができ、これにより、所望の変位量が実効的に変化しないのを初めて見いだしたものである。その結果、装置の誤作動を抑え、短絡のない耐久性に優れた高信頼性の積層型圧電素子及びそれを用いた噴射装置を提供することができる。
なお、アルカリ金属とハロゲン元素が同時に含まれている場合も上述と同じ効果を得ることが可能である。
本発明の積層型圧電素子について以下に詳細に説明する。図1は本発明の積層型圧電素子の一実施例を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す斜視展開図である。
本発明の積層型圧電素子は、図1に示すように、圧電体11と内部電極12とを交互に積層してなる積層体13の一対の対向する側面において、内部電極12が露出した端部と、一層おきに電気的に導通する外部電極15が接合されている。また、積層体13の積層方向の両端の層には圧電体11で形成された不活性層を積層している。ここで、本発明の積層型圧電素子を積層型圧電アクチュエータとして使用する場合には、外部電極15にリード線を半田により接続固定し、前記リード線を外部電圧供給部に接続すればよい。
圧電体11間には内部電極12が配されているが、この内部電極12は銀―パラジウム等の金属材料で形成しているので、内部電極12を通じて各圧電体11に所定の電圧を印加し、圧電体11を逆圧電効果による変位を起こさせる作用を有する。
これに対して、不活性層14は内部電極12が配されていない複数の圧電体11の層で
あるため、電圧を印加しても変位を生じない。
そして本発明では、圧電体11中のアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ圧電体の焼結が進行しないため、積層体13を形成する際、内部電極金属を溶融させてしまう問題が発生するため好ましくない。また、500ppmを超えると、積層型圧電体素子を連続駆動させた場合に、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、圧電体11中のアルカリ金属を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、圧電体11中のアルカリ金属を5ppm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に圧電体中にアルカリ金属を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、圧電体11中のアルカリ金属の成分組成を制御するには、圧電体11の原料とバインダー原料にアルカリ金属を酸化物、炭酸塩あるいは硝酸塩などの組成物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のアルカリ金属を制御する場合においては、製造工程からのアルカリ金属の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるアルカリ金属の成分組成であるアルカリ金属酸化物あるいは、アルカリ金属炭酸塩、硝酸塩の量を抑制制御して、原料中に添加する製造方法でもよい。
そして本発明では、内部電極12中のアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ内部電極12の焼結が進行しないため好ましくない。また、500ppmを超えると、積層型圧電素子に高電圧の直流電界を印加した場合、プラス極となった内部電極12から圧電体11にアルカリ金属イオンが拡散して、圧電体11の抵抗値を下げることになり、その結果、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、内部電極中のアルカリ金属を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、内部電極中のアルカリ金属を5ppm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に内部電極中にアルカリ金属を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、内部電極12中のアルカリ金属の成分組成を制御するには、内部電極12の原料とバインダー原料にアルカリ金属を酸化物あるいは炭酸塩、硝酸塩などの組成物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。その他に、製造工程において、内部電極12の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のアルカリ金属を制御する場合においては、製造工程からのアルカリ金属の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるアルカリ金属の成分組成であるアルカリ金属酸化物あるいは、アルカリ金属炭酸塩、硝酸塩の量を抑制制御して、原料中に添加する製造方法でもよい。
そして本発明では、外部電極15中のアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ外部電極15の焼結が進行しないため、焼成時に内部電極12の金属を溶融させてしまう問題が発生するため好ましくない。さらに、圧電体11への密着力が小さくなるため好ましくない。また、500ppmを超えると、積層型圧電素子に高電圧の直流電界を印加した場合、プラス極となった外部電極15から圧電体11にアルカリ金属イオンが拡散して、圧電体11の抵抗値を下げることになり、その結果、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、外部電極中のアルカリ金属を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、外部電極中のアルカリ金属を5ppm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に外部電極中にアルカリ金属を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、外部電極15中のアルカリ金属の成分組成を制御するには、外部電極15の原料とバインダー原料にアルカリ金属を酸化物あるいは炭酸塩、硝酸塩などの組成物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。その他に、製造工程において、外部電極15の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のアルカリ金属を制御する場合においては、製造工程からのアルカリ金属の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるアルカリ金属の成分組成であるアルカリ金属酸化物あるいは、アルカリ金属炭酸塩、硝酸塩の量を抑制制御して、原料中に添加する製造方法でもよい。
そして本発明では、積層型圧電体素子中のアルカリ金属が5ppm以上300ppm以下とするのが好ましい。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ積層体13の焼結が進行しないため好ましくない。また、300ppmを超えると、積層型圧電体素子を連続駆動させた場合に、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。特に、連続駆動中の積層型圧電素子の変化量の変化率を小さくするには、積層型圧電素子中のアルカリ金属を5ppm以上100ppm以下にするのが好ましく、さらに好ましくは、アルカリ金属を5ppm以上50ppm以下にする。
次に積層型圧電素子中にアルカリ金属を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、従来の積層型圧電素子中のアルカリ金属の成分組成を制御するには、圧電体11、内部電極12及び外部電極13のそれぞれの原料とバインダー原料にアルカリ金属を酸化物あるいは炭酸塩、硝酸塩などの組成物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のアルカリ金属を制御する場合においては、製造工程からのアルカリ金属の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるアルカリ金属の成分組成であるアルカリ金属酸化物あるいは、アルカリ金属炭酸塩、硝酸塩の量を抑制制御して、原料中に添加する製造方法でもよい。
このアルカリ金属の含有量は、圧電体11、内部電極12、外部電極においては、積層型圧電素子を切断した上で、それぞれの部位が選択的に残るように、エッチング技術等を用いて、圧電体、内部電極、外部電極を分離した物を試料としてICP発光分析によって検出することができる。また、積層型圧電素子のアルカリ金属の含有量を検出する際は、積層型圧電素子を試料としてICP発光分析によって検出することができる。また、検出方法としてはICP発光分析に限るものではなく、検出限界の下限値が同等であるならば、オージェ分析法またはEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法を用いることもできる。
本発明のアルカリ金属としては、Na、Kのうち少なくとも1種以上が好ましい。アルカリ金属にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムがあるが、Na、Kは、イオン化しやすく移動のしやすいアルカリ金属であるので、積層型圧電素子の素子抵抗を下げて、積層型圧電素子の変位量を小さくするのに好適である。
一方、本発明では、圧電体中のハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ圧電体の焼結が進行しないため、積層体13を形成する際、内部電極金属を溶融させてしまう問題が発生するため好ましくない。また、1500ppmを超えると、積層型圧電体素子を連続駆動させた場合に、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動を起こしたり、短絡を起こして駆動が停止したりすることが発生するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、圧電体中のハロゲン元素を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、圧電体中のハロゲン元素を5ppm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に圧電体中にハロゲン元素を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、圧電体11中のハロゲン元素の成分組成を制御するには、圧電体11の原料とバインダー原料にハロゲン元素をフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。一方、その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のハロゲン元素を制御する場合においては、製造工程からのハロゲン元素の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるハロゲン元素の成分組成であるフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物を抑制制御してハロゲン元素の量を制御する製造方法でもよい。
そして本発明では、内部電極中のハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ内部電極の焼結が進行しないため好ましくない。また、1500ppmを超えると、積層型圧電素子に高電圧の直流電界を印加した場合、マイナス極となった内部電極12から圧電体11にハロゲンイオンが拡散して、圧電体11の抵抗値を下げることになり、その結果、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、内部電極中のハロゲン元素を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、内部電極中のハロゲン元素を5ppm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に内部電極中にハロゲン元素を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、内部電極12中のハロゲン元素の成分組成を制御するには、内部電極12の原料とバインダー原料にハロゲン元素をフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。一方、その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のハロゲン元素を制御する場合においては、製造工程からのハロゲン元素の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるハロゲン元素の成分組成であるフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物を抑制制御してハロゲン元素の量を制御する製造方法でもよい。
そして本発明では、外部電極中のアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下である。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ外部電極の焼結が進行しないため、焼成時に内部電極金属を溶融させてしまう問題が発生するため好ましくない。さらに、圧電体11への密着力が小さくなるため好ましくない。また、500ppmを超えると、積層型圧電素子に高電圧の直流電界を印加した場合、マイナス極となった外部電極15から圧電体11にハロゲンイオンが拡散して、圧電体11の抵抗値を下げることになり、その結果、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。
特に、連続駆動中の素子変化量の変化率を小さくするには、外部電極中のハロゲン元素を5ppm以上100ppm以下にすることが好ましい。
さらに、素子変化量の変化率を小さくするには、外部電極中のハロゲン元素を5ppはrm以上50ppm以下にすることがより好ましい。
次に外部電極中にハロゲン元素を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。
即ち、外部電極15中のハロゲン元素の成分組成を制御するには、外部電極15の原料とバインダー原料にハロゲン元素をフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。一方、その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のハロゲン元素を制御する場合においては、製造工程からのハロゲン元素の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるハロゲン元素の成分組成であるフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物を抑制制御してハロゲン元素の量を制御する製造方法でもよい。
そして本発明では、積層型圧電体素子中のハロゲン元素が5ppm以上300ppm以下とするのが好ましい。5ppm以下では、焼結助剤としての機能が著しく低下して、焼成温度を上げなければ積層体13の焼結が進行しないため好ましくない。また、300ppmを超えると、積層型圧電体素子を連続駆動させた場合に、素子の固有抵抗が変化することで、変位量が変化して装置が誤作動するので好ましくない。特に、連続駆動中の積層型圧電素子の変化量の変化率を小さくするには、積層型圧電素子中のハロゲン元素を5ppm以上100ppm以下にするのが好ましく、さらに好ましくは、ハロゲン元素を5ppm以上50ppm以下にする。
次に積層型圧電素子中にハロゲン元素を上述の範囲にする製造方法を以下に説明する。 即ち、従来の積層型圧電素子中のハロゲン元素の成分組成を制御するには、圧電体11、内部電極12及び外部電極13のそれぞれの原料とバインダー原料にハロゲン元素をフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物として添加して不可避不純物として混入する製造方法により実現されるがこれに限定されない。一方、その他に、製造工程において、圧電体11の原料を混合粉砕する粉砕ボールから混入したり、焼成雰囲気から拡散したりするので、積層型圧電素子中のハロゲン元素を制御する場合においては、製造工程からのハロゲン元素の混入を防止するために、他製品と製造工程を独立させ、原料中の不可避不純物となるハロゲン元素の成分組成であるフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ素化物あるいはアスタチン化合物を抑制制御してハロゲン元素の量を制御する製造方法でもよい。
このハロゲン元素の含有量は、圧電体、内部電極、外部電極においては、積層型圧電素子を切断した上で、それぞれの部位が選択的に残るように、エッチング技術等を用いて、圧電体、内部電極、外部電極を分離した物を試料としてイオンクロマトグラフィー法によって検出することができる。また、積層型圧電素子のハロゲン元素の含有量を検出する際は、積層型圧電素子を試料としてイオンクロマトグラフィー法によって検出することができる。また、検出方法としてはイオンクロマトグラフィー法に限るものではなく、検出限界の下限値が同等であるならば、オージェ分析法またはEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法を用いることもできる。
また、さらに好ましくは、積層型圧電素子中にアルカリ金属を5ppm以上300ppm以下及びハロゲン元素を5ppm以上1000ppm以下含むでもよい。これにより、上述した効果とは別に、シルバーマイグレーションを代表とする電極構成金属元素の拡散を防止することができる。
なお、本発明に用いるハロゲン元素としてCl、Brのうち少なくとも1種以上を用いることが好ましい。ハロゲン元素にはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンがあるが、Cl、Brは、イオン化しやすく移動のしやすいハロゲン元素であるので、積層型圧電素子の素子抵抗を下げて、積層型圧電素子の変位量を小さくするのに好適である。
本発明の積層型圧電素子に含まれるアルカリ金属やハロゲン元素を上述の範囲にすることにより、連続駆動中に発生する熱を一定温度にすることができるとともに変位量を一定に保つことが可能となる。
このように、駆動により発生する積層型圧電素子自身の発熱を抑制するためには、上記不純物の含有する範囲を規定するのに加えて、圧電体11の誘電損失(tanδ)を小さくしたり、素子抵抗を小さくしたりする必要がある。
圧電体11の誘電損失(tanδ)を小さくするためには、圧電体11をPbZrO−PbTiO等のペロブスカイト型酸化物を主成分として形成する場合、積層体13を酸素過剰雰囲気で焼成する方法や、また、積層体13の焼成後の処理において、最大焼成温度からの降温速度を遅くする方法がある。具体的には、降温速度を600℃/時以下にすればよく、好ましくは300℃/時以下にすればよい。また、誘電損失(tanδ)の値としては、1.5%未満であればよく、好ましくは0.5%以下にすればよい。
また、積層型圧電素子の素子抵抗を小さくするには、内部電極12に比抵抗値が小さい組成の材料を用いるとともに、電気伝導の経路を確保した緻密な構造にするとよい。
さらに、圧電体11の構成材料が有する変位量の温度特性が、使用温度に関係なく一定であることが望ましいので、連続駆動中の素子温度変化に対して変位量が小さい圧電体材料が好ましい。
また、効率良く素子内部の熱を素子の外側に放出するために、熱が伝わる内部電極12を熱伝導特性の優れた組成にすることが好ましい。
さらに、内部電極12中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることが望ましい。これは、上記の金属組成物は高い耐熱性を有するため、焼成温度の高い圧電体11と内部電極12を同時焼成することも可能である。
さらに、内部電極12中の金属組成物がVIII族金属の含有量をM1(重量%)、Ib族金属の含有量をM2(重量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足する金属組成物を主成分とすることが好ましい。これは、VIII族金属が15重量%を超えると、内部電極12の比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱する場合があるからである。また、内部電極2中のIb族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、VIII族金属が0.001重量%以上15重量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、0.1重量%以上10重量%以下が好ましい。また、熱伝導に優れ、より高い耐久性を必要とする場合は0.5重量%以上9.5重量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は2重量%以上8重量%以下がさらに好ましい。
ここで、Ib族金属が85重量%未満になると、内部電極12の比抵抗が大きくなり、積層型圧電素子を連続駆動させた場合、内部電極12が発熱する場合があるからである。また、内部金属12中のIb族金属の圧電体11へのマイグレーションを抑制するために、Ib族金属が85重量%以上99.999重量%以下とすることが好ましい。また、積層型圧電素子の耐久性を向上させるという点では、90重量%以上99.9重量%以下が好ましい。また、より高い耐久性を必要とする場合は90.5重量%以上99.5重量%以下がより好ましい。また、さらに高い耐久性を求める場合は92重量%以上98重量%以下がさらに好ましい。
上記の内部電極12中の金属成分の重量%を示すVIII族金属、Ib族金属はEPMA(Electron Probe Micro Analysis)法等の分析方法で特定できる。
さらに、本発明の内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu,Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これは、近年における合金粉末合成技術において量産性に優れた金属組成であるからである。
さらに、内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることが好ましい。これにより、耐熱性に優れ、比抵抗の小さな内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、Ib族金属がCuであることが好ましい。これにより、熱伝導性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中の金属成分は、VIII族金属がNiであることが好ましい。これにより、耐熱性に優れた内部電極12を形成できる可能性がある。
さらに、内部電極12中には、金属組成物とともに無機組成物を添加することが好ましい。これにより、内部電極12と圧電体11を強固に結合できる可能性があり、前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
さらに、圧電体11がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。これは、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)を代表とするペロブスカイト型圧電セラミックス材料等で形成されると、その圧電特性を示す圧電歪み定数d33が高いことから、変位量を大きくすることができ、さらに、圧電体11と内部電極12を同時に焼成することもできる。上記に示した圧電体11としては、圧電歪み定数d33が比較的高いPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることが好ましい。
さらに、焼成温度が900℃以上1000℃以下であることが好ましい。これは、焼成温度が900℃以下では、焼成温度が低いため焼成が不十分となり、緻密な圧電体11を作製することが困難になる。また、焼成温度が1000℃を超えると、焼成時の内部電極12の収縮と圧電体11の収縮のずれから起因した応力が大きくなり、積層型圧電素子の連続駆動時にクラックが発生する可能性があるからである。
また、内部電極12中の組成のずれが焼成前後で5%以下であることが好ましい。これは、内部電極12中の組成のずれが焼成前後で5%を超えると、内部電極12中の金属材料が圧電体11へのマイグレーションが多くなり、積層型圧電素子の駆動による伸縮に対して、内部電極12が追従できなくなる可能性がある。
ここで、内部電極12中の組成のずれとは、内部電極12を構成する元素が焼成によって蒸発、または圧電体11へ拡散することにより内部電極12の組成が変わる変化率を示している。
また、本発明の積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極12と端部が露出しない内部電極12とが交互に構成されており、前記端部が露出していない内部電極12と外部電極15間の圧電体部分に溝が形成されており、この溝内に、圧電体12よりもヤング率の低い絶縁体が形成されていることが好ましい。これにより、このような積層型圧電素子では、駆動中の変位によって生じる応力を緩和することができることから、連続駆動させても、内部電極12の発熱を抑制することができる。
次に、本発明の積層型圧電素子の製法を説明する。
本発明の積層型圧電素子は、まず、PbZrO−PbTiO等からなるペロブスカイト型酸化物の圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系、ブチラール系等の有機高分子から成るバインダーと、DOP(フタル酸ジオチル)、DBP(フタル酸ジブチル)等の可塑剤とを混合し、かつ、上記不純物の範囲としたスラリーを作製し、該スラリーを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成型法により圧電体11となるセラミックグリーンシートを作製する。
次に、銀−パラジウム等の内部電極を構成する金属粉末にバインダー、可塑剤等を添加混合して導電性ペーストを作製し、これを前記各グリーンシートの上面にスクリーン印刷等によって1〜40μmの厚みに印刷する。
そして、上面に導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを複数積層し、この積層体13について所定の温度で脱バインダーを行った後、900〜1200℃で焼成することによって積層体13が作製される。
なお、積層体13は、上記製法によって作製されるものに限定されるものではなく、複数の圧電体11と複数の内部電極12とを交互に積層してなる積層体13を作製できれば、どのような製法によって形成されても良い。
その後、積層型圧電素子の側面に端部が露出する内部電極12と端部が露出しない内部電極12とを交互に形成して、端部が露出していない内部電極12と外部電極15間の圧電体部分に溝を形成して、この溝内に、圧電体11よりもヤング率の低い、樹脂またはゴム等の絶縁体を形成する。ここで、前記溝は内部ダイシング装置等で積層体13の側面に 外部電極15は構成する導電材は積層型圧電素子の伸縮によって生じる応力を十分に吸収するという点から、ヤング率の低い銀、若しくは銀が主成分の合金が望ましい。
ガラス粉末に、バインダーを加えて銀ガラス導電性ペーストを作製し、これをシート状に成形し、乾燥した(溶媒を飛散させた)シートの生密度を6〜9g/cmに制御し、このシートを、柱状積層体13の外部電極形成面に転写し、ガラスの軟化点よりも高い温度、且つ銀の融点(965℃)以下の温度で、且つ焼成温度(℃)の4/5以下の温度で焼き付けを行うことにより、銀ガラス導電性ペーストを用いて作製したシート中のバインダー成分が飛散消失し、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極15を形成することができる。
なお、前記銀ガラス導電性ペーストの焼き付け温度は、ネック部を有効的に形成し、銀ガラス導電性ペースト中の銀と内部電極12を拡散接合させ、また、外部電極15中の空隙を有効に残存させ、さらには、外部電極15と柱状積層体13側面とを部分的に接合させるという点から、550〜700℃が望ましい。また、銀ガラス導電性ペースト中のガラス成分の軟化点は、500〜700℃が望ましい。
焼き付け温度が700℃より高い場合には、銀ガラス導電性ペーストの銀粉末の焼結が進みすぎ、有効的な3次元網目構造をなす多孔質導電体を形成することができず、外部電極15が緻密になりすぎてしまい、結果として外部電極15のヤング率が高くなりすぎ駆動時の応力を十分に吸収することができずに外部電極15が断線してしまう可能性がある。好ましくは、ガラスの軟化点の1.2倍以内の温度で焼き付けを行った方がよい。
一方、焼き付け温度が550℃よりも低い場合には、内部電極12端部と外部電極15の間で十分に拡散接合がなされないために、ネック部が形成されず、駆動時に内部電極12と外部電極15の間でスパークを起こしてしまう可能性がある。
なお、銀ガラス導電性ペーストのシートの厚みは、圧電体11の厚みよりも薄いことが望ましい。さらに好ましくは、アクチュエータの伸縮に追従するという点から、50μm以下がよい。
次に、外部電極15を形成した積層体13をシリコーンゴム溶液に浸漬するとともに、シリコーンゴム溶液を真空脱気することにより、積層体13の溝内部にシリコーンゴムを充填し、その後シリコーンゴム溶液から積層体13を引き上げ、積層体13の側面にシリコーンゴムをコーティングする。その後、溝内部に充填、及び柱状積層体13の側面にコーティングした前記シリコーンゴムを硬化させることにより、本発明の積層型圧電素子が完成する。
そして、外部電極15にリード線を接続し、該リード線を介して一対の外部電極15に0.1〜3kV/mmの直流電圧を印加し、積層体13を分極処理することによって、本発明の積層型圧電素子を利用した積層型圧電アクチュエータが完成し、リード線を外部の電圧供給部に接続し、リード線及び外部電極15を介して内部電極12に電圧を印加させれば、各圧電体11は逆圧電効果によって大きく変位し、これによって例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能する。
さらに、外部電極15の外面に、金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板が埋設された導電性接着剤からなる導電性補助部材を形成してもよい。この場合には、外部電極15の外面に導電性補助部材を設けることによりアクチュエータに大電流を投入し、高速で駆動させる場合においても、大電流を導電性補助部材に流すことができ、外部電極15に流れる電流を低減できるという理由から、外部電極15が局所発熱を起こし断線することを防ぐことができ、耐久性を大幅に向上させることができる。さらには、導電性接着剤中に金属のメッシュ若しくはメッシュ状の金属板を埋設しているため、前記導電性接着剤にクラックが生じるのを防ぐことができる。
金属のメッシュとは金属線を編み込んだものであり、メッシュ状の金属板とは、金属板に孔を形成してメッシュ状にしたものをいう。
さらに、前記導電性補助部材を構成する導電性接着剤は銀粉末を分散させたポリイミド樹脂からなることが望ましい。即ち、比抵抗の低い銀粉末を、耐熱性の高いポリイミド樹脂に分散させることにより、高温での使用に際しても、抵抗値が低く且つ高い接着強度を維持した導電性補助部材を形成することができる。さらに望ましくは、前記導電性粒子はフレーク状や針状などの非球形の粒子であることが望ましい。これは、導電性粒子の形状をフレーク状や針状などの非球形の粒子とすることにより、該導電性粒子間の絡み合いを強固にすることができ、該導電性接着剤のせん断強度をより高めることができるためである。
本発明の積層型圧電素子はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
また、上記では、積層体13の対向する側面に外部電極15を形成した例について説明したが、本発明では、例えば隣設する側面に一対の外部電極を形成してもよい。
図3は、本発明の噴射装置を示すもので、収納容器31の一端には噴射孔33が設けられ、また収納容器31内には、噴射孔33を開閉することができるニードルバルブ35が収容されている。
噴射孔33には燃料通路37が連通可能に設けられ、この燃料通路37は外部の燃料供給源に連結され、燃料通路37に常時一定の高圧で燃料が供給されている。従って、ニードルバルブ35が噴射孔33を開放すると、燃料通路37に供給されていた燃料が一定の高圧で内燃機関の図示しない燃料室内に噴出されるように形成されている。
また、ニードルバルブ35の上端部は直径が大きくなっており、収納容器31に形成されたシリンダ39と摺動可能なピストン41となっている。そして、収納容器31内には、上記した圧電アクチュエータ43が収納されている。
このような噴射装置では、圧電アクチュエータ43が電圧を印加されて伸長すると、ピストン41が押圧され、ニードルバルブ35が噴射孔33を閉塞し、燃料の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると圧電アクチュエータ43が収縮し、皿バネ45がピストン41を押し返し、噴射孔33が燃料通路37と連通して燃料の噴射が行われるようになっている。
また、本発明は、積層型圧電素子および噴射装置に関するものであるが、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置、インクジェット等の液体噴射装置、光学装置等の精密位置決め装置や振動防止装置等に搭載される駆動素子、または、燃焼圧センサ、ノックセンサ、加速度センサ、荷重センサ、超音波センサ、感圧センサ、ヨーレートセンサ等に搭載されるセンサ素子、ならびに圧電ジャイロ、圧電スイッチ、圧電トランス、圧電ブレーカー等に搭載される回路素子以外であっても、圧電特性を用いた素子であれば、実施可能であることは言うまでもない。
(実験例1)
本発明の積層型圧電素子からなる積層型圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。
まず、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)を主成分とする圧電セラミックの仮焼粉末、バインダー、及び可塑剤を混合したスラリーを作製し、ドクターブレード法で厚み150μmの圧電体11になるセラミックグリーンシートを作製した。
このセラミックグリーンシートの片面に、任意の組成比で形成された銀−パラジウム合金にバインダーを加えた導電性ペーストが、スクリーン印刷法により3μmの厚みに形成されたシートを300枚積層し、1000℃で焼成した。なお、圧電体11、内部電極12および外部電極13の原料中にKCOあるいはNaCO粉末を添加した。
得られた焼結体の積層型圧電素子、圧電体、内部電極および外部電極に含まれるアルカリ金属はICP分析を用いて検出した。
その後、ダイシング装置により積層体の側面の内部電極の端部に一層おきに深さ50μm、幅50μmの溝を形成した。
次に、平均粒径2μmのフレーク状の銀粉末を90体積%と、残部が平均粒径2μmのケイ素を主成分とする軟化点が640℃の非晶質のガラス粉末10体積%との混合物に、バインダーを銀粉末とガラス粉末の合計重量100質量部に対して8質量部添加し、十分に混合して銀ガラス導電性ペーストを作製した。このようにして作製した銀ガラス導電性ペーストを離型フィルム上にスクリーン印刷によって形成し、乾燥後、離型フィルムより剥がして、銀ガラス導電性ペーストのシートを得た。このシートの生密度をアルキメデス法にて測定したところ、6.5g/cmであった
そして、銀ガラスペーストのシートを積層体の外部電極面に転写し、650℃で30分焼き付けを行い、3次元網目構造をなす多孔質導電体からなる外部電極を形成した。なお、この時の外部電極の空隙率は、外部電極の断面写真の画像解析装置を用いて測定したところ40%であった。
その後、外部電極にリード線を接続し、正極及び負極の外部電極にリード線を介して3kV/mmの直流電界を15分間印加して分極処理を行い、図1に示すような積層型圧電素子を用いた積層型圧電アクチュエータを作製した。
得られた積層型圧電素子に170Vの直流電圧を印加した結果、積層方向に45μmの変位量が得られた。さらに、この積層型圧電素子に室温で0〜+170Vの交流電圧を150Hzの周波数にて印加し駆動試験を行った。
そして、この積層型圧電素子が駆動回数1×10回に達した時の変位量(μm)を測定して、連続駆動を開始する前の積層型圧電素子初期状態の変位量と比較して、変位量と積層型圧電素子の劣化の度合いを変位量の変化率(%)として算出して、表1〜4に記載した。なお、表1は積層型圧電素子中のアルカリ金属を変化させたものであり、表2は圧電体中のアルカリ金属を変化させたものであり、表3は内部電極のアルカリ金属を変化させたものであり、表4は外部電極のアルカリ金属を変化させたものである。
Figure 2005183553
Figure 2005183553
Figure 2005183553
Figure 2005183553
同表より、積層型圧電素子中のアルカリ金属が300ppmを超えると急激に変化率(%)が高くなり劣化が進行することがわかる。また、5ppmよりも低いと圧電体の焼結が行われなくなり、圧電体としての機能を有さないものであった。従って、積層型圧電素子中のアルカリ金属を5ppm以上300ppm以下にすることで、積層型圧電素子を、長期駆動させても、所望の変位量が実効的に変化しないために、装置が誤作動することなく、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。
これらは圧電体、内部電極、外部電極中に含まれるアルカリ金属の量についても同様のことがいえる。
(実験例2)
圧電体には、塩化チタンを添加し、内部電極、外部電極の原料中にはAgClを添加する以外は実験例1と同様の実験を行った。なお、得られた積層型圧電素子の圧電体、内部電極および外部電極に含まれるハロゲン元素はイオンクロマトグラフ分析を用いて検出した。実験の結果を表5〜8に示す。
Figure 2005183553
Figure 2005183553
Figure 2005183553
Figure 2005183553
同表より、積層型圧電素子中のハロゲン元素が1000ppmを超えると急激に変化率(%)が高くなり劣化が進行することがわかる。また、5ppmよりも低いと圧電体の焼結が行われなくなり、圧電体としての機能を有さないものであった。従って、積層型圧電素子中のアルカリ金属を5ppm以上300ppm以下にすることで、積層型圧電素子を、長期駆動させても、所望の変位量が実効的に変化しないために、装置が誤作動することなく、耐久性に優れた高信頼性の圧電アクチュエータを提供することができる。
これらは圧電体、内部電極、外部電極中に含まれるハロゲン元素の量についても同様のことがいえる。
次に、異なる内部電極の材料組成からなる積層型圧電素子を用いて、実験例1と同様の実験を行った結果を表9に示す。
Figure 2005183553
同表より、No.1の内部電極12を銀100%にした場合は、シルバーマイグレーションにより積層型圧電素子は破損して連続駆動が不可能となった。また、No.15、16は内部電極12中の金属組成物においてV■■■族金属の含有量が15重量%を超えており、また、Ib族金属の含有量が85重量%未満であるため、連続駆動によって劣化が増大するので、積層型圧電アクチュエータの耐久性が低下した。
これに対して、No.2〜14は内部電極中の金属組成物がVIII属金属の含有量をM1質量%、Ib属金属の含有量をM2質量%としたとき、0≦M1≦15、85≦M2≦100、M1+M2=100質量%を満足する金属組成物を主成分とするために、内部電極の比抵抗を小さくでき、連続駆動させても内部電極で発生する発熱を抑制できたので、素子変位量が安定した積層型アクチュエータを作製できた。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行うことは何等差し支えない。
本発明の積層型圧電素子を示すもので、(a)は斜視図、(b)は圧電体層と内部電極層との積層状態を示す斜視展開図である。 従来の積層型圧電素子を示すものである。
斜視図である。
本発明の噴射装置を示す説明図である。
符号の説明
11・・・圧電体
13・・・積層体
12・・・内部電極
21・・・圧電体
22・・・内部電極
23・・・外部電極
24・・・不活性層
31・・・収納容器
33・・・噴射孔
35・・・バルブ
43・・・圧電アクチュエータ

Claims (25)

  1. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体にアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記内部電極にアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  3. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記外部電極にアルカリ金属が5ppm以上500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  4. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、アルカリ金属を5ppm以上300ppm以下含むことを特徴とする積層型圧電素子。
  5. 前記アルカリ金属がNa、Kのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  6. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記圧電体にハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  7. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記内部電極にハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  8. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、前記外部電極にハロゲン元素が5ppm以上1500ppm以下含まれることを特徴とする積層型圧電素子。
  9. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、ハロゲン元素を5ppm以上1000ppm以下含むことを特徴とする積層型圧電素子。
  10. 前記ハロゲン元素がCl、Brのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  11. 少なくとも1つの圧電体と複数の内部電極を交互に積層してなる積層体を有し、該積層体の一対の側面に前記内部電極が一層おきに交互に接続された一対の外部電極を具備し、該外部電極に電界を印加して駆動する積層型圧電素子において、アルカリ金属を5ppm以上300ppm以下及びハロゲン元素を5ppm以上1000ppm以下含むことを特徴とする積層型圧電素子。
  12. 前記内部電極中の金属組成物がVIII族金属および/またはIb族金属を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  13. 前記内部電極中のVIII族金属の含有量をM1(質量%)、Ib族金属の含有量をM2(質量%)としたとき、0<M1≦15、85≦M2<100、M1+M2=100を満足することを特徴とする請求項12に記載の積層型圧電素子。
  14. 前記VIII族金属がNi、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がCu、Ag、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項12又は13に記載の積層型圧電素子。
  15. 前記VIII族金属がPt、Pdのうち少なくとも1種以上であり、Ib族金属がAg、Auのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  16. 前記Ib族金属がCuであることを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  17. 前記VIII族金属がNiであることを特徴とする請求項12乃至15のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  18. 前記内部電極中に金属組成物とともに無機組成物を添加したことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  19. 前記無機組成物がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項18に記載の積層型圧電素子。
  20. 前記圧電体がペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  21. 前記圧電体がPbZrO−PbTiOからなるペロブスカイト型酸化物を主成分とすることを特徴とする請求項20に記載の積層型圧電素子。
  22. 前記積層体の焼成温度が900℃以上1000℃以下であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  23. 前記内部電極中の組成のずれが焼成前後で5%以下であることを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  24. 前記積層体の側面に端部が露出する前記内部電極と端部が露出しない前記内部電極とが交互に構成されており、前記端部が露出していない前記内部電極と前記外部電極間の前記圧電体部分に溝が形成されており、該溝に前記圧電体よりもヤング率の低い絶縁体が充填されていることを特徴とする請求項1乃至23のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  25. 噴射孔を有する収納容器と、該収納容器に収納された請求項1乃至24のいずれかに記載の積層型圧電素子と、該積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から液体を噴出させるバルブとを具備してなることを特徴とする噴射装置。
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