JP5025837B1 - ハロゲン原子含有樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、けん化度が60〜99.9モル%であり粘度平均重合度が100〜1,000であるポリビニルアルコールを0.01〜2.5質量部、分子量が2,000以下でありヒドロキシル基含有率が10質量%以上である多価アルコールを0.01〜2.5質量部、および亜鉛化合物を0.01〜5質量部含有するハロゲン原子含有樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、食品用途、医療用途、あるいは日用品等の一般用途などの分野で好適に使用されるハロゲン原子含有樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる成形品に関する。特に、熱安定性が良好で、着色が少ない成形品を得ることのできるハロゲン原子含有樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる成形品に関する。
ポリ塩化ビニルに代表されるハロゲン原子含有樹脂はCa−Zn系、Ba−Zn系等の安定剤を配合して成形加工され、その成形品は一般用途に用いられるほか、食品用途、医療用途等にも広く用いられている。
しかしながら、これらの安定剤は、ハロゲン原子含有樹脂の熱劣化を抑制する能力が不十分であるため、成形直後の成形品に着色が見られたり、成形時の熱安定性が十分でないという欠点があった。このため、これらの欠点を改良する手段として、酸化防止剤を添加したり、ヒドロキシル基を持つ化合物を添加したりしたハロゲン原子含有樹脂組成物が提案されている。
特許文献1(特開昭50−92947号公報)には、塩素含有樹脂に、カルシウムセッケンと、亜鉛セッケンと、多価アルコールまたはその誘導体と、中性の無機カルシウム塩とを添加する方法が開示されている。
特許文献2(特開昭54−81359号公報)には、塩素含有重合体に水溶性重合体を添加する方法が開示されている。
特許文献3(特開昭57−147552号公報)には、含塩素樹脂にジペンタエリスリトールとジカルボン酸との反応縮合物、亜鉛化合物、およびハイドロタルサイトを添加する方法が開示されている。
特許文献4(特開昭60−238345号公報)には、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂に、エチレン単位の含有量20〜50%、酢酸ビニル単位のけん化度96%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物およびハイドロタルサイト系化合物等を添加する方法が開示されている。
特許文献5(特開平1−178543号公報)には、含ハロゲン熱可塑性樹脂に、金属石鹸、および、エチレン含有量20〜75モル%、酢酸ビニル部分のケン化度50モル%以上の共重合組成物を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物を添加する方法が開示されている。
特許文献6(特開平6−287387号公報)には、塩化ビニル系樹脂に、有機酸の金属塩、ポリビニルアルコールのアセタール化物を添加する方法が開示されている。
特許文献7(特開平9−3286号公報)には、塩化ビニル系樹脂に、けん化度70〜95モル%、平均重合度300〜2,000で、かつ分子鎖末端にメルカプト基を有する部分けん化ポリビニルアルコールを添加する方法が開示されている。
特許文献8(特開平9−31281号公報)には、塩化ビニル系樹脂に、亜鉛化合物、ハイドロタルサイト類、ポリビニルアルコール、および、ポリメチルメタクリレートを添加する方法が開示されている。
非特許文献1(高分子論文集、Vol.47、No.3、p.197(1990))には、ポリ塩化ビニルに、ステアリン酸亜鉛−ステアリン酸カルシウム複合石けん、重合度が600以上の完全けん化ポリビニルアルコールを添加する方法が開示されている。
非特許文献2(高分子論文集、Vol.47、No.6、p.509(1990))には、ポリ塩化ビニルに、ステアリン酸亜鉛−ステアリン酸カルシウム複合石けん、重合度が500、けん化度が73.6モル%の部分けん化ポリビニルアルコールを添加する方法が開示されている。
非特許文献3(高分子論文集、Vol.50、No.2、p.65(1993))には、ポリ塩化ビニルに、ステアリン酸亜鉛−ステアリン酸カルシウム複合石けん、エチレン含有量が29モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体を添加する方法が開示されている。
非特許文献4(Polymers&Polymer Composites、Vol.11、p.649(2003))には、ポリ塩化ビニルに、ステアリン酸亜鉛−ステアリン酸カルシウム複合石けんと、重合度が500、けん化度が98.5モル%のポリビニルアルコールまたはエチレン含有量が29モル%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体を添加する方法が開示されている。
非特許文献5(日本接着学会誌、Vol.43、No.2、p.43(2007))には、ポリ塩化ビニルに、重合度が500でありけん化度が88モル%であるポリビニルアルコールまたは重合度が1700でありけん化度が78モル%以上であるポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチルを添加する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜8および非特許文献1〜5に記載されたハロゲン原子含有樹脂組成物には、以下のような問題があった。
すなわち、低分子量の多価アルコールを添加する場合、成形時に、低分子多価アルコールが表面にブリード・アウトして混練時に混練物が押し出し機等内部のスクリュー表面に粘着するなどのトラブルが生じやすい。また、得られる成形品に、多価アルコールの揮発、ブロッキングの発生、透明性の低下、接着性及び密着性の低下等のトラブルが生じやすい。
また、高分子量の多価アルコールを添加する場合、特に比較的低温で成形した際、高分子多価アルコールのハロゲン原子含有樹脂組成物中での分散性が不十分になり、熱安定性が十分でない。
特開昭50−92947号公報 特開昭54−81359号公報 特開昭57−147552号公報 特開昭60−238345号公報 特開平1−178543号公報 特開平6−287387号公報 特開平9−3286号公報 特開平9−31281号公報
高分子論文集、Vol.47、No.3、p.197(1990) 高分子論文集、Vol.47、No.6、p.509(1990) 高分子論文集、Vol.50、No.2、p.65(1993) Polymers&Polymer Composites、Vol.11、p.649(2003) 日本接着学会誌、Vol.43、No.2、p.43(2007)
本発明は、成形時の熱安定性に優れ、着色が少ない成形品を得ることができるハロゲン原子含有樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ハロゲン原子含有樹脂に対して、特定のポリビニルアルコール、特定の多価アルコールおよび亜鉛化合物をそれぞれ特定量添加してなるハロゲン原子含有樹脂組成物が、特に低温で成形加工した場合でも十分な熱安定性を有し、かつ当該ハロゲン原子含有樹脂組成物を成形して得られる成形品の着色が少ない事を見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、上記課題は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、けん化度が60〜99.9モル%であり粘度平均重合度が100〜1,000であるポリビニルアルコールを0.01〜2.5質量部、分子量が2,000以下でありヒドロキシル基含有率が10質量%以上である多価アルコールを0.01〜2.5質量部、および亜鉛化合物を0.01〜5質量部含有するハロゲン原子含有樹脂組成物を提供することによって解決される。
上記のポリビニルアルコールと上記の多価アルコールとの質量比は(ポリビニルアルコールの質量)/(多価アルコールの質量)=30/70〜90/10を満たすことが好ましい。
上記のポリビニルアルコールの粘度平均重合度は100〜450であることが好ましい。
上記のハロゲン原子含有樹脂組成物は、ポリビニルアルコール、多価アルコールおよび亜鉛化合物を、ハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させたものであることが好ましい。
また上記課題は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、けん化度が60〜99.9モル%であり粘度平均重合度が100〜1,000であるポリビニルアルコールを0.01〜2.5質量部、分子量が2,000以下でありヒドロキシル基含有率が10質量%以上である多価アルコールを0.01〜2.5質量部、および亜鉛化合物を0.01〜5質量部添加する工程を有するハロゲン原子含有樹脂組成物の製造方法を提供することによっても解決される。
さらに上記課題は、上記ハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品によっても解決される。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物を用いた場合には、特に低温で成形加工した場合でも十分な熱安定性を有し、なおかつ成形の際に押し出し機内部等への粘着物の付着が少ない。しかも、当該ハロゲン原子含有樹脂組成物を成形して得られる成形品は着色が少ない。
以下、本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる成形品について詳説する。
[ハロゲン原子含有樹脂]
本発明で用いられるハロゲン原子含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩素含有樹脂;臭素化ポリオレフィン等の臭素含有樹脂などが挙げられ、成形品の用途などに応じ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができるが、入手のし易さや物性などの観点から、塩素含有樹脂が好ましく、ポリ塩化ビニルまたはポリ塩化ビニリデンがより好ましく、ポリ塩化ビニルがさらに好ましい。
上記ポリ塩化ビニルを製造する原料の単量体としては、塩化ビニル単量体を単独で使用してもよいし、50質量%以上の塩化ビニル単量体と、これと共重合可能な他の単量体との混合物を使用してもよい。なお、塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデンなどが挙げられる。
また、これらの単量体を用いて上記ポリ塩化ビニルを製造する方法としては特に限定されないが、該単量体を重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法を好適に採用することができる。その際には分散安定剤として、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル;ポリビニルアルコール、ゼラチン等の水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマー等の油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウム等の水溶性乳化剤などが好適に用いられる。その中でも、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
使用される重合開始剤としては、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組み合せて用いることができる。
重合に際しては、必要に応じて、重合反応系にその他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、アルデヒド、ハロゲン化炭化水素、メルカプタン等の重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物等の重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤;ブロッキング防止剤;消泡剤;スケール防止剤;帯電防止剤などが挙げられる。
重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
[ポリビニルアルコール]
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有されるポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある。)を前記ハロゲン原子含有樹脂に含有させる方法は特に限定されないが、ハロゲン原子含有樹脂を形成するための単量体の重合後に得られるハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させることが好適である。該PVAは粉として、あるいは、水または有機溶剤に溶解させてハロゲン原子含有樹脂に添加することができる。該PVAをハロゲン原子含有樹脂を形成するための単量体の重合前や重合中に添加すると、該PVAが単量体および得られるハロゲン原子含有樹脂の分散剤として作用するため、該ハロゲン含有樹脂の平均粒子径や可塑剤吸収性等の品質に悪影響を及ぼすことがある。また、ハロゲン原子含有樹脂製造後の樹脂洗浄により該PVAがほとんど除去されることにより、ハロゲン原子含有樹脂組成物中のPVAの含有量が少なくなり、熱安定性が不十分となるおそれがある。
上記PVAのけん化度は60〜99.9モル%であり、好ましくは65〜99モル%であり、より好ましくは70〜99モル%である。けん化度が60モル%未満の場合、または99.9モル%を超える場合は長期の熱安定性が低下する。なお、PVAのけん化度はJIS K6726に従って測定した値である。
上記PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」と言うことがある。)は100〜1,000であり、好ましくは150〜800であり、より好ましくは200〜700である。特に低温で成形加工した場合でも、より一層熱安定性が向上し、かつ成形の際に押し出し機内部への粘着物の付着をより一層抑制する観点から、PVAの重合度の上限は450であることがさらに好ましい。PVAの重合度が1,000を超えると、長期の熱安定性が低下する。そして、重合度が100未満のPVAを得ることは製造上困難である。なお、PVAの重合度はJIS K6726に従って測定した値である。すなわち、PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から次式により求めることができる。

重合度=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
上記PVAは、例えば、ビニルエステル単量体を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法を採用して重合させ、得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造することができる。工業的観点から好ましい重合方法は、溶液重合法、乳化重合法および分散重合法である。重合操作にあたっては、回分法、半回分法および連続法のいずれの重合方式を採用することも可能である。
重合に用いることができるビニルエステル単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等を挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
ビニルエステル単量体の重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲であればビニルエステル単量体と他の単量体とを共重合させても差し支えない。使用しうる他の単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
ビニルエステル単量体の重合に際して、得られるPVAの重合度を調節すること等を目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン;チオ酢酸等のチオカルボン酸;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、中でもアルデヒドおよびケトンが好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするPVAの重合度に応じて決定されるが、一般に、使用されるビニルエステル単量体に対して0.1〜10質量%が望ましい。ここで、連載移動剤としてチオカルボン酸類等を用いた際には、連鎖移動剤に由来する官能基がビニルエステル系重合体の末端に導入され、けん化によって末端にSH基を有するPVAが得られる場合がある。しかしながら、このようなPVAを用いた場合には、得られるポリ塩化ビニル樹脂組成物の熱安定性向上の効果がそれほど大きくない。よって、連鎖移動剤としてチオカルボン酸類を用いないことが望ましい。また、PVAの末端にはSH基を有さないことが好ましい。
本発明では、ビニルエステル単量体を通常よりも高い温度条件で重合して得られる1,2−グリコール結合量の多いPVAを用いることもできる。この場合、PVAにおける1,2−グリコール結合量は、好ましくは1.9モル%以上、より好ましくは2.0モル%以上、さらに好ましくは2.1モル%以上である。また、1,2−グリコール結合量の上限としては、例えば、3.0モル%である。
ポリビニルエステルのけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、またはp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合せて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
ハロゲン原子含有樹脂組成物中のPVAの含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して0.01〜2.5質量部であり、好ましくは0.05〜2質量部である。PVAの含有量が0.01質量部未満では長期の熱安定性が十分でなく、2.5質量部を超えると、得られるハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品が着色しやすくなる。
使用されるPVAは、25℃におけるpKaが3.5〜5.5の酸および/またはその金属塩を含有する組成物の形態であってもよい。このような酸の種類について特に制限はなく、例えば、酢酸(pKa4.76)、プロピオン酸(pKa4.87)、酪酸(pKa4.63)、オクタン酸(pKa4.89)、アジピン酸(pKa5.03)、安息香酸(pKa4.00)、ギ酸(pKa3.55)、吉草酸(pKa4.63)、ヘプタン酸(pKa4.66)、乳酸(pKa3.66)、フェニル酢酸(pKa4.10)、イソ酪酸(pKa4.63)、シクロヘキサンカルボン酸(pKa4.70)等が挙げられる。この中でも、酢酸、プロピオン酸および乳酸が好ましい。金属塩の種類としては特に制限はないが、通常、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩が用いられる。
上記酸および/またはその金属塩の含有量は、PVA100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜3質量部であり、さらに好ましくは0.15〜2質量部である。PVA100質量部に対する酸および/またはその金属塩の含有量が0.05質量部未満の場合、長期の熱安定性が低下するおそれがあり、一方、5質量部を超える場合と、得られるハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品が着色しやすくなる傾向がある。
なお、該酸および/またはその金属塩をPVAに所定量含有させる方法は特に限定されず、例えば、上述したポリビニルエステルのけん化反応で用いられるアルカリ触媒の種類や量等を調整する方法;PVA製造後に該酸および/またはその金属塩を追加したり、除去したりする方法などが採用される。
[多価アルコール]
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される多価アルコールを前記ハロゲン原子含有樹脂に含有させる方法は特に限定されないが、ハロゲン原子含有樹脂を形成するための単量体の重合後に得られるハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させることが好適である。該多価アルコールは粉または粘調液体として、あるいは、水または有機溶剤に溶解させてハロゲン原子含有樹脂に添加することができる。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される多価アルコールは分子量が2,000以下であり、好ましくは1,500以下であり、特に好ましくは1,000以下である。分子量が2,000を超えると長期の熱安定性が低下する。分子量の下限については特に制限はないが、ハロゲン原子含有樹脂組成物からのブリード・アウトや揮発を抑制する観点から、100以上が好ましい。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される多価アルコールは分子中のヒドロキシル基含有率が10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。ヒドロキシル基含有率が10質量%より少ない場合は、長期の熱安定性が損なわれる。一方、ヒドロキシル基含有率は、通常、60質量%以下である。なお、多価アルコールのヒドロキシル基含有率(質量%)は、次式により求めることができる。

(ヒドロキシル基含有率)={(多価アルコール1分子に含まれるヒドロキシル基を構成する水素原子および酸素原子の合計原子量)/(多価アルコールの分子量)}×100
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、グリセリン単位の繰り返し数が3以上のポリグリセリン、グリセリンの脂肪族カルボン酸エステル、ジグリセリンの脂肪族カルボン酸エステル、グリセリン単位の繰り返し数が3以上のポリグリセリンの脂肪族カルボン酸エステル、グリセリンのアルキルエーテル、ジグリセリンのアルキルエーテル、グリセリン単位の繰り返し数が3以上のポリグリセリンのアルキルエーテル、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールの脂肪族カルボン酸エステル、ジペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの脂肪族カルボン酸エステル、リボース、デオキシリボース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、長期にわたり優れた熱安定性を維持する点から、ソルビトール、ジグリセリン、グリセリン単位の繰り返し数が3以上のポリグリセリン及びジペンタエリスリトールが好適であり、取り扱い易さの観点から、ソルビトール及びジペンタエリスリトールがより好適である。なお、多価アルコールとして上述したエステル及びエーテルは、エステル化又はエーテル化される前の多価アルコールが分子中に複数有するヒドロキシル基の一部がエステル化又はエーテル化されたものであり、エステル化又はエーテル化後においても分子中に複数のヒドロキシル基を有する化合物である。
ハロゲン原子含有樹脂組成物中の多価アルコールの含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して0.01〜2.5質量部であり、好ましくは0.05〜2質量部である。多価アルコールの含有量が0.01質量部未満では長期の熱安定性が十分でなく、2.5質量部を超えると、得られるハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品が着色しやすくなったり、該ハロゲン原子含有樹脂組成物やそれからなる成形品からの揮発や、表面へのブリード・アウトが発生したりする。
上述の多価アルコールを、前記PVAとともに含有することが本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物の特徴の一つである。これにより、低温で成形加工した場合でも当該ハロゲン原子含有樹脂組成物は十分な熱安定性を有するようになる。したがって、適用可能な成形温度範囲が広くなる。また、前記多価アルコールを、前記PVAとともに前記ハロゲン原子含有樹脂組成物に含有させた場合には、成形時に押し出し機内部等への粘着物の付着も少なく、得られる成形品の着色も少ない。
前記PVAと前記多価アルコールとの質量比は特に限定されないが、特に低温で成形加工した場合でも、より一層熱安定性が向上し、かつ成形の際に押し出し機内部への粘着物の付着をより一層抑制する観点から、両者の質量比は(PVAの質量)/(多価アルコールの質量)=30/70〜90/10を満たすことが好ましく、35/65〜85/15を満たすことがより好ましく、40/60〜80/20を満たすことがさらに好ましく、45/55〜80/20を満たすことが特に好ましく、50/50〜80/20を満たすことが最も好ましい。
[亜鉛化合物]
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される亜鉛化合物を前記ハロゲン原子含有樹脂に含有させる方法は特に限定されないが、ハロゲン原子含有樹脂を形成するための単量体の重合後に得られるハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させることが好適である。該亜鉛化合物は粉として、あるいは、水または有機溶媒に溶解乃至分散させてハロゲン原子含有樹脂に添加することができる。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物に含有される亜鉛化合物としては、有機酸の亜鉛塩や無機亜鉛塩などが挙げられる。有機酸の亜鉛塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛等の脂肪族カルボン酸の亜鉛塩;安息香酸亜鉛、p−t−ブチル安息香酸亜鉛等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩;アミノ酸の亜鉛塩;リン酸モノエステルまたはリン酸ジエステルの亜鉛塩などが挙げられる。また、無機亜鉛塩としては、例えば、酸化亜鉛、炭酸亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、脂肪族カルボン酸の亜鉛塩が好ましく、ステアリン酸亜鉛がより好ましい。
ハロゲン原子含有樹脂組成物中の亜鉛化合物の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜3質量部である。亜鉛化合物の含有量が0.01質量部未満では十分な熱安定化効果は得られず、5質量部を超えると、得られるハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品が黒化するため好ましくない。
前記PVA、前記多価アルコール及び前記亜鉛化合物を前記ハロゲン原子含有樹脂に含有させるに際し、前記PVA、前記多価アルコール及び前記亜鉛化合物を前記ハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させることが好適である。これにより、本発明の効果がより奏されやすくなる。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物は、ハロゲン原子含有樹脂、前記PVA、前記多価アルコールおよび前記亜鉛化合物のみからなっていてもよいが、これらの成分の他に、通常用いられる滑剤、安定剤、可塑剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、改質剤、強化剤、顔料、発泡剤、等をさらに含有していてもよい。また、本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物には、上記以外の他の樹脂を含有していてもよい。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物における、前記ハロゲン原子含有樹脂、前記PVA、前記多価アルコールおよび前記亜鉛化合物の合計の占める割合は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、70〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
上記滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸;ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド;ブチルステアレート等のモノアルコールの脂肪酸エステル;硬化ひまし油、エチレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート等、ポリオールの脂肪酸エステルのうちヒドロキシル基含有率が10質量%未満のもの;セチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコールなどが挙げられる。中でも、ポリオールの脂肪酸エステルのうちヒドロキシル基含有率が10質量%未満のものを用いることが好ましい。このとき、当該化合物はポリオールの脂肪酸モノエステルであることが好ましく、グリセリンの脂肪酸モノエステルであることがより好ましい。また、ポリオールの脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、炭素数が8〜22のものであることが好ましく、ステアリン酸であることがより好ましい。上記の化合物の中でも、グリセリンモノステアレートが特に好適である。上記滑剤の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
上記安定剤としては、周知のものを用いることができ、具体的には、カルシウム石鹸、バリウム石鹸等のアルカリ土類金属の石鹸やアルミニウム石鹸、有機リン酸金属塩等の有機金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、ゼオライト等の無機複合金属塩等の無機金属塩、塩素酸バリウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ナトリウム等のハロゲン酸素酸塩、β−ジケトン、エポキシ化合物等の非金属安定剤などが挙げられる。
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の酸とn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、t−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプタノール、n−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、イソデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖または分岐のアルキルモノアルコール単独または混合物とからなるエステルや、ブタンジオールとアジピン酸とのエステルのようなエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、オクチルエポキシステアレート、エポキシトリグリセライド、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシルやエピクロルヒドリンとビスフェノールAの低分子量反応生成物樹脂のようなエポキシ系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、モノブチルジキシレニルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤としては、通常用いられるものであればいずれでもよく、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアジッド〕グリコールエステル、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−t−ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−t−ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
上記リン系酸化防止剤としては、通常用いられるものであればいずれでもよく、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−t−ブチル−4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜3質量部である。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン;2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−t−オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール;フェニルサリシレートレゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
上記光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラエチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モノホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピレリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−t−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン等のヒンダードアミン化合物などが挙げられる。上記光安定剤の含有量は、ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部である。
本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物の成形加工方法としては、押し出し加工、カレンダー加工、ブロー成形、プレス加工、粉体成形、射出成形等が挙げられる。
本発明の成形品は、上記のハロゲン原子含有樹脂組成物からなる。当該成形品の形状に特に制限はないが、例えば、ペレット、フィルム、シート、パイプ、チューブや、その他の各種立体成形品などが挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において、特に断りがない場合、部および%はそれぞれ質量部および質量%を示す。
[PVAの分析方法]
PVAの分析は、特に断らない限りJIS K6726に記載の方法に従って行った。
[実施例1]
(ポリ塩化ビニルの製造)
重合度850、けん化度72モル%のポリビニルアルコールを塩化ビニルに対して600ppmに相当する量で脱イオン水に溶解させ、分散安定剤を調製した。このようにして得られた分散安定剤を、スケール付着防止剤NOXOL WSW(CIRS社製)が固形分として0.3g/mになるように塗布されたグラスライニング製オートクレーブに仕込んだ。次いで、グラスライニング製オートクレーブにジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液0.04部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル30部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下に重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.83MPaであった。重合を開始してから7時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.44MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて一晩乾燥を行い、ポリ塩化ビニル(PVC)を得た。
(PVAの製造)
撹拌機、窒素導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた6L反応槽に酢酸ビニル900g、メタノール2,100gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整し、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3gを加えて重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持し、5時間後に重合率が70%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで、減圧下にて未反応の酢酸ビニルを除去し、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液を得た。濃度を30%に調整したPVAc溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.006となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られたPVAはメタノールで洗浄した。以上の操作により重合度320、けん化度80モル%のPVAを得た。
(ポリ塩化ビニル組成物およびそれからなる成形品(シート)の製造)
磁性ビーカーに、上記で得られたポリ塩化ビニル100部、上記で得られたPVAを0.75部、市販のソルビトールを0.25部、市販のステアリン酸亜鉛を1部、および市販のステアリン酸カルシウムを0.5部それぞれ加え混合し、ポリ塩化ビニル組成物を得た。
得られたポリ塩化ビニル組成物をテストロールにより160℃で5分間混練し、厚さ0.45mmのシートを作成した。
(熱安定性試験)
上記シートを50×70mmにカットし、得られたシート片をギヤーオーブン中に入れ、180℃の温度で完全に黒色になるまでの時間(黒化時間)を測定し、熱安定性の指標とした。評価結果を表1に示す。
(着色性試験)
上記のシートを45×30mmに複数カットし、得られたシート片を12〜14枚重ね合わせ、185℃で5分間プレスして厚さ5mmの試験片を作製し、目視により着色性を比較し、以下の基準にしたがって判定した。評価結果を表1に示す。
A:着色がほとんどない。
B:わずかに着色が認められる。
C:黄色である。
D:黄褐色である。
(粘着物の付着発生評価)
上記のポリ塩化ビニル組成物混練時の、押し出し機内部等への粘着物の付着の発生度合を評価するためポリ塩化ビニル組成物の混練に使用した上記テストロールの表面を目視により観察し、テストロール表面への粘着物の付着の発生度合について、以下の基準に従って判定した。評価結果を表1に示す。
A:付着が全くない。
B:わずかに付着が認められる。
C:多量の付着が認められる。
[実施例2〜8]
使用する多価アルコールの種類、PVA、多価アルコールおよびステアリン酸亜鉛の含有量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリ塩化ビニルを得て、実施例1と同様にしてシートを成形した。そして、実施例1と同様に熱安定性試験、着色性試験および粘着物の付着発生評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜14]
使用する多価アルコールの種類、PVA、多価アルコールおよびステアリン酸亜鉛の含有量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリ塩化ビニルを得て、実施例1と同様にしてシートを成形した。そして、実施例1と同様に熱安定性試験、着色性試験および粘着物の付着発生評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0005025837
実施例1〜8では、けん化度が80モル%、重合度が320であるPVAと、多価アルコールとしてソルビトール、ジグリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの10量体または20量体)またはジペンタエリスリトールとを共に含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。いずれのポリ塩化ビニル組成物も十分な熱安定性を有し、しかもテストロール表面への粘着物の付着も少なかった。また、これらのポリ塩化ビニル組成物を成形して得られた各シートは、着色が少なかった。
一方比較例1〜2では、多価アルコールを含有しないポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。多価アルコールを含有しない場合、黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例3はPVAを含有せず、多価アルコールとしてソルビトール1部を含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。PVAを含有しない場合は、黒化時間が短く熱安定性が不十分であり、シートが黄色に着色し、さらにテストロール表面への多量の粘着物の付着も認められた。
比較例4はPVAを3部、多価アルコールとしてソルビトールを1部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。PVAを3部含有すると黒化時間は十分に長いが、シートが黄色に着色した。
比較例5はPVAを1部、多価アルコールとしてソルビトールを3部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。多価アルコールを3部含有すると黒化時間は十分に長いが、シートが黄褐色に着色し、テストロール表面への多量の粘着物の付着も認められた。
比較例6はPVAを0.005部、多価アルコールとしてソルビトールを1部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。PVAが0.005部では黒化時間が短く熱安定性が不十分であり、シートが黄色に着色し、さらにテストロール表面への多量の粘着物の付着も認められた。
比較例7はPVAを1部、多価アルコールとしてソルビトールを0.005部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。ソルビトールが0.005部では黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例8〜10はPVAを含有せず、多価アルコールとしてジグリセリン(比較例8)、ポリグリセリン(グリセリンの10量体、比較例9)またはジペンタエリスリトール(比較例10)を含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。PVAを含有しない場合は、いずれも黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例11はPVAを1部、多価アルコールとしてグリセリンモノステアレートを1部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。グリセリンモノステアレートはヒドロキシル基含有率が9質量%である。このように多価アルコールのヒドロキシル基含有率が低い場合は、黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例12はPVAを1部、多価アルコールとしてポリグリセリン(グリセリンの約50量体)を1部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。ポリグリセリン(グリセリンの約50量体)は分子量が約3,700である。このように多価アルコールの分子量が大きい場合は、黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例13はPVAを0.75部、多価アルコールとしてソルビトールを0.25部、ステアリン酸亜鉛を0.005部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。ステアリン酸亜鉛の含有量が0.005部の場合は、黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
比較例14はPVAを0.75部、多価アルコールとしてソルビトールを0.25部、ステアリン酸亜鉛を10部含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。ステアリン酸亜鉛の含有量が10部の場合は、黒化時間が短く熱安定性が不十分であった。
[比較例15]
実施例1において、PVAの製造の際のけん化時にアルカリモル比を0.006から0.003へ変更したこと以外は実施例1と同様の方法で表1に示すPVAを得た。このPVAを用いて実施例1と同様にしてポリ塩化ビニル組成物を得て、実施例1と同様にしてシートを成形した。そして、実施例1と同様に熱安定性試験、着色性試験および粘着物の付着発生評価を行った。評価結果を表1に示す。
比較例15はけん化度が55モル%、重合度が320であるPVAと多価アルコールとしてソルビトールを含有するポリ塩化ビニル組成物の評価結果を示している。PVAのけん化度が55モル%の場合は黒化時間が短く熱安定性が十分でなかった。
上記実施例で示されているとおり、本発明のハロゲン原子含有樹脂組成物を用いれば、比較的低温で成形した場合でも十分な熱安定性を有するため、適用可能な成形温度範囲が広い。さらには成形時に押し出し機内部等への粘着物の付着の発生も抑制でき、着色の少ない成形品が得られるため非常に有意義である。

Claims (6)

  1. ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、けん化度が60〜99.9モル%であり粘度平均重合度が100〜1,000であるポリビニルアルコールを0.01〜2.5質量部、分子量が2,000以下でありヒドロキシル基含有率が10質量%以上である多価アルコールを0.01〜2.5質量部、および亜鉛化合物を0.01〜5質量部含有するハロゲン原子含有樹脂組成物。
  2. ポリビニルアルコールと多価アルコールとの質量比が(ポリビニルアルコールの質量)/(多価アルコールの質量)=30/70〜90/10を満たす請求項1に記載のハロゲン原子含有樹脂組成物。
  3. ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が100〜450である請求項1または2に記載のハロゲン原子含有樹脂組成物。
  4. ポリビニルアルコール、多価アルコールおよび亜鉛化合物を、ハロゲン原子含有樹脂に添加することによって含有させた請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン原子含有樹脂組成物。
  5. ハロゲン原子含有樹脂100質量部に対して、けん化度が60〜99.9モル%であり粘度平均重合度が100〜1,000であるポリビニルアルコールを0.01〜2.5質量部、分子量が2,000以下でありヒドロキシル基含有率が10質量%以上である多価アルコールを0.01〜2.5質量部、および亜鉛化合物を0.01〜5質量部添加する工程を有するハロゲン原子含有樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン原子含有樹脂組成物からなる成形品。
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