JP5025362B2 - 風味改良剤 - Google Patents
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また、乳酸菌は、整腸作用等、人の健康に有益な作用を奏することも知られており、これらの作用を利用するために上記以外にも様々な種類の飲食品へ利用されることが望まれている。
そのため、飲食品に乳酸菌の発酵生成物の有する独特の風味を付与せずに、風味改良効果を効率よく得ることのできる方法の開発が望まれている。
(1)乳酸菌の菌体を該菌体に損傷を与える処理に供することを特徴とする風味改良剤または調味料の製造方法。
(2)乳酸菌の菌体に損傷を与える処理が、加熱処理、有機溶媒処理、超音波処理、界面活性剤処理、酵素処理および機械的破砕処理からなる群より選ばれる処理である、上記(1)の方法。
(3)上記(1)または(2)の方法により得られる風味改良剤または調味料。
(4)乳酸菌の菌体を該菌体に損傷を与える処理に供して得られる処理物を含有することを特徴とする風味改良剤または調味料。
(5)乳酸菌の菌体に損傷を与える処理が、加熱処理、有機溶媒処理、超音波処理、界面活性剤処理、酵素処理および機械的破砕処理からなる群より選ばれる処理である、上記(4)の風味改良剤または調味料。
(6)上記(3)〜(5)いずれか1つの風味改良剤または調味料を添加してなる飲食品。
(7)上記(3)〜(5)いずれか1つの風味改良剤または調味料を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の風味改良方法。
(8)上記(3)〜(5)いずれか1つの風味改良剤または調味料を飲食品素材に添加することを特徴とする飲食品の製造方法。
乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ぺディオコッカス(Pediococcus)属、またはストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌があげられる。
ラクトバチルス属に属する微生物としては、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sake)、ラクトバチルス・サンフランシスコ(Lactobacillus sanfrancisco)、ラクトバチルス・フラクチボランス(Lactobacillus fructivorans)、ラクトバチルス・ホモヒオチ(Lactobacillus homohiochii)、ラクトバチルス・ヒルガルディ(Lactobacillus hilgardii)等に属する乳酸菌があげられる。ペディオコッカス属に属する乳酸菌としては、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等に属する乳酸菌があげられる。ストレプトコッカス属に属する微生物としては、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等に属する乳酸菌があげられる。
上記乳酸菌は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
乳酸菌を培養する培地は、炭素源、窒素源、無機物、微量成分等を含有していれば、合成培地および天然培地のいずれの培地も用いることができる。培地は液体培地および固体培地のいずれであってもよい。
窒素源としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、コーン・スティープ・リカー、カゼイン分解物、大豆粉、野菜ジュース、カザミノ酸、尿素、等の窒素含有有機物等があげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。
微量成分としては、パントテン酸、ビオチン、サイアミン、ニコチン酸等のビタミン類、β−アラニン、グルタミン酸等のアミノ酸類等があげられ、これらを単独または組合せて用いることができる。
上記乳製品、穀物粉等をそのまま、または必要に応じて水、上記培地成分等を添加し混合して得られる混合物とし、これを天然培地として用いてもよい。
培養条件は、用いる乳酸菌の種類により異なるが、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃で、通常6時間〜20日間、好ましくは1〜15日間行う。液体培地の場合は、必要に応じて通気攪拌してもよい。
液体培地で培養した場合、培養後得られる培養液をそのまま乳酸菌の菌体に損傷を与える処理に供してもよいが、培養液を、ろ過、遠心分離等の固液分離処理に供して得られる菌体を該処理に供してもよい。
乳酸菌の菌体は、水、食塩水、りん酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の水性媒体に懸濁した後、該処理に供してもよい。
水性媒体のpHはpH2〜pH8が好ましく、pH3.5〜7がより好ましく、pH4〜6がさらに好ましい。
緩衝液としては、構成する酸および塩基の濃度が、0.001〜1mol/l、好ましくは0.01〜0.3mol/lのものが好ましく用いられる。
これらの処理は単独で行ってもよいし、他の処理の妨げとならない限り、組み合わせて行ってもよい。
有機溶媒処理としては、有機溶媒の乳酸菌の菌体に対する直接処理、または該菌体を含有する培養液もしくは水性媒体へ添加する処理があげられる。
有機溶媒としては、飲食品への利用という観点から、エタノールまたはエタノールに上記水性媒体を添加して得られるエタノール溶液が好ましくあげられる。清酒、焼酎、みりん等のアルコール含有飲料を有機溶媒として用いてもよい。
エタノール溶液中のエタノール濃度は通常1〜99%、好ましくは5〜99%、より好ましくは15〜99%である。
有機溶媒処理に用いる有機溶媒の量に特に限定はないが、例えば、乳酸菌の菌体の湿重量1重量部に対して、1〜100,000重量部が好ましく、1〜10,000重量部がより好ましく、10〜1,000重量部がさらに好ましい。
超音波処理としては、超音波破砕機を用いる処理があげられる。菌体は培養液または菌体の懸濁液中に含有されていることが好ましい。超音波破砕は、通常、超音波出力20〜200W、0〜30℃で、10秒間〜1時間処理する。
界面活性剤としては、食品への利用という観点から、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、大豆リン脂質等が好ましく用いられる。
界面活性剤で処理する温度、時間等の処理条件は、乳酸菌の菌体の量、界面活性剤の種類等により異なり、通常10〜95℃、好ましくは30〜95℃で、30秒間〜1ヶ月間であるが、10〜30℃で1日間〜1ヶ月間、31〜50℃で1〜24時間、51〜70℃で2〜60分間、71〜95℃で30秒間〜2分間処理することが好ましい。
機械的破砕処理としては、攪拌機、高速攪拌機、回転振とう機等を用いる攪拌処理、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー等を用いる圧力処理等があげられる。
撹拌処理する際、菌体は培養液または菌体の懸濁液中に含有されていることが好ましい。撹拌速度は50〜10,000rpmが好ましく、100〜1,000rpmがさらに好ましい。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等があげられる。
酸としては、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、脂肪酸等のカルボン酸等があげられる。
核酸としては、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等があげられる。
糖としては、ショ糖、ブドウ糖、乳糖等があげられる。
調味料 としては、醤油、味噌、酢、みりん、アルコール含有発酵調味料、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキス、酵母エキス、蛋白質加水分解物等があげられる。
賦形剤としては、デキストリン、各種澱粉等があげられる。
本発明の風味改良剤または調味料は、液状、粉状、顆粒状等のいずれの形状を有するものであってもよい。
本発明の風味改良剤または調味料は、いずれの風味改良剤または調味料として用いてもよいが、呈味、好ましくはうま味増強用、酸味緩和用、または矯臭用の風味改良剤または調味料として好適に用いられる。
酸味緩和とは、酢酸、クエン酸、アスコルビン酸等の酸味物質が単独、または複数で呈する酸味をやわらかくして、まろやかにすることをいう。
本発明の風味改良方法としては、例えば、呈味、好ましくはうま味を増強する方法、酸味を緩和する方法、矯臭する方法、またはそれらを組み合わせる方法があげられる。
例えば、本発明の風味改良剤または調味料を、飲食品を製造する際に素材の一部として添加する方法、製品となっている飲食品を加熱調理、電子レンジ調理、真空調理等で調理する際に添加する方法、摂食の際に添加する方法等があげられる。
例えば、味噌、醤油、みりん、アルコール含有発酵調味料、マヨネーズ、ドレッシング、ポン酢等の調味料、おでんつゆ、鍋つゆ、めんつゆ等のつゆ、焼き肉のたれ等のたれ、ミートソース、トマトソース、ホワイトソース等のソース、ポタージュ、コンソメスープ、だし等のスープ、ビーフシチュー、カレー、ラーメン、味噌汁、煮物、佃煮、肉まん、餃子、ハンバーグ等の調理食品、キムチ、漬物、佃煮、かまぼこ、ソーセージ、冷凍食品、レトルト食品、菓子、パン等の加工食品等の飲食品をあげることができる。
以下、本発明の実施例を示す。
回収した菌体を滅菌水で洗浄した後、0.1gの菌体(湿重量)を10mlの滅菌水に懸濁し、超音波破砕機(BRANSON社製)を用いて超音波出力80Wで10分間、超音波処理を行った。
超音波処理後、得られた処理物を3,000rpmで10分間遠心分離して上清を回収し、該上清を95℃で1分間加熱して酵素を失活させて第1表に示される乳酸菌の菌体の超音波処理物を調製した。
乳酸菌の菌体の超音波処理物を添加しためんつゆとコントロールとを比較し、うま味の強さおよび味のまとまりの観点から総合的に好ましいと感じられる方を選択する評価を、10名のパネラーにより行った。
なお、いずれのめんつゆにおいても、乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
加熱処理後、得られた処理物を3,000rpmで10分間遠心分離し、上清を回収してラクトバチルス・フラクチボランスATCC15435株の菌体のエタノール処理物(以下、乳酸菌の菌体のエタノール処理物1という)を得た。
乳酸菌の菌体のエタノール処理物1およびコントロール1を、実施例1で調製しためんつゆに0.001%および0.01%となるように添加する以外は、実施例1と同様の操作方法および評価方法で、めんつゆの官能評価を行った。
なお、いずれのめんつゆにおいても、乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
また、ラクトバチルス・ペントサス NBRC12011株の菌体をエタノールを含有しない懸濁液に懸濁する以外は同様の操作を行って、コントロール2を調製した。
その結果、乳酸菌の菌体のエタノール処理物2を添加しためんつゆは、いずれの濃度においてもコントロール2を添加しためんつゆと比較して有意に好ましい(危険率5%)めんつゆであるという評価であった。
なお、いずれのめんつゆにおいても、乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
得られたごまドレッシングのうま味および酸味について、10名のパネラーにより官能評価を行った。評価は、7段階評価による7点評点法により行い、それぞれの項目について強く感じられるものを高得点とした。
なお、いずれのごまドレッシングにおいても、乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
また、実施例3で調製した乳酸菌の菌体のエタノール処理物2およびコントロール2を、常法に準じて調製した焼き肉のたれに0.1%(w/w)となるように添加し、常法により牛焼き肉を調製した。
また、乳酸菌の菌体のエタノール処理物を添加した焼き肉のたれを用いて得られた焼き肉は、うま味が強く、畜肉臭が弱く、味のまとまりがあるものであった。
また、実施例3で調製した乳酸菌の菌体のエタノール処理物2およびコントロール2を常法に準じて調製したさばの味噌煮の調味液に0.1%(w/w)となるように添加する以外は常法を用いてさばの味噌煮を調製した。
評価は7段階評価による7点評点法で行い、うま味、畜肉臭、魚臭および醸造物(醤油)の風味については強く感じられるものを高得点とし、味のまとまりについては、味がまとまっていると感じられるものを高得点とした。
また、乳酸菌の菌体のエタノール処理物を添加したさばの味噌煮は、うま味および醤油の風味が強く、魚臭が弱く、味のまとまりがあるものであった。
各食品のうま味、畜肉臭および味のまとまりについて、10名のパネラーにより官能評価を行った。評価は7段階評価による7点評点法で行い、うま味および畜肉臭については強く感じられるものを高得点とし、味のまとまりについては、味がまとまっていると感じられるものを高得点とした。
なお、いずれのカレーおよびハンバーグにおいても、乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
得られたアルコール含有発酵調味料を、実施例1で調製しためんつゆに10%(w/w)となるように添加し、乳酸菌の菌体のエタノール処理物を含有するめんつゆを調製した。
各めんつゆのうま味および味のまとまりについて、好ましいと感じられる方を選択する評価を、10名のパネラーにより行った。
その結果、いずれの項目についても、乳酸菌の菌体のエタノール処理物2を含有するめんつゆはコントロール3に対して、有意に(危険率5%)好ましいめんつゆであるとの評価であった。
なお、得られたマヨネーズに乳酸菌の菌体による臭いおよび乳酸菌の発酵により生じる独特の風味は感じられなかった。
Claims (6)
- ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、およびラクトバチルス・フラクチボランス(Lactobacillus fructivorans)からなる群より選ばれる乳酸菌の菌体を、該菌体に損傷を与えるエタノール溶液処理に供することを特徴とする風味改良剤または調味料の製造方法。
- 請求項1記載の方法により得られる風味改良剤または調味料。
- ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、およびラクトバチルス・フラクチボランス(Lactobacillus fructivorans)からなる群より選ばれる乳酸菌の菌体を、該菌体に損傷を与えるエタノール溶液処理に供して得られる処理物を含有することを特徴とする風味改良剤または調味料。
- 請求項2または3に記載の風味改良剤または調味料を添加してなる飲食品。
- 請求項2または3に記載の風味改良剤または調味料を飲食品に添加することを特徴とする飲食品の風味改良方法。
- 請求項2または3に記載の風味改良剤または調味料を飲食品素材に添加することを特徴とする飲食品の製造方法。
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