JP5025049B2 - 不燃性洗浄剤、洗浄方法および洗浄装置 - Google Patents

不燃性洗浄剤、洗浄方法および洗浄装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精密機械部品、光学機械部品等の加工時に使用される種々の加工油類やグリース類やワックス類、電気電子部品のハンダ付け時に使用されるフラックス類、基板製造時に使用されるスクリーンに付着したインキやペースト類および樹脂吐出装置のミキシング部に付着した樹脂類、液晶セル製造時にセルに付着した液晶等のあらゆる汚れを洗浄するのに好適な洗浄剤とその洗浄剤に適した洗浄方法および洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
精密機械部品、光学機械部品等の加工時に種々の加工油類、例えば、切削油、プレス油、引抜き油、熱処理油、防錆油、潤滑油等、または、グリース類、ワックス類等が使用されるが、これらの汚れは最終的には除去する必要があり,溶剤による除去が一般的に行われている。
また、電子回路の接合方法としてはハンダ付けが最も一般的に行われているが、ハンダ付けすべき金属表面の酸化物の除去清浄化、再酸化防止、ハンダ濡れ性の改良の目的で、ロジンを主成分としたフラックスでハンダ付け面を予め処理することが通常行われている。ハンダ付けの方法としては溶液状のフラックス中に基板を浸漬する等により、フラックスを基板面に付着させた後、溶融ハンダを供給する方法や予めフラックスとハンダの粉末を混合してペースト状にしたものをハンダ付けすべき場所に供給した後加熱する方法等があるが、いずれにしても、フラックス残渣は金属の腐食や絶縁性の低下の原因となるため、ハンダ付け終了後、十分に除去する必要がある。
【0003】
また、近年、スクリーン印刷法が電子工業分野をはじめとして広く活用されている。これは絹、ナイロン,テトロンなどの繊維、あるいはステンレスの針金などで織った布地(スクリーン)を枠に張って四周を固定し、その上にポリビニルアルコール、酢酸ビニルエマルジョン、アクリルモノマー等の主剤とジアゾニウム塩類や重クロム酸塩等の感光剤を撹拌混合したものを塗布し、光化学的方法で乳剤膜を作って必要な画線以外の目をふさぎ、パターンを形成したスクリーンと、スキージと呼ばれるウレタン製ゴムを取り付けた道具を使い、印刷を行うものである。印刷を終えたスクリーンとスキージは保管または再使用のため、スクリーンおよびスキージに付着したインキ、ペーストを洗浄、除去する必要がある。
【0004】
また、各種電気・電子部品等をエポキシ、ウレタン、シリコーンおよびポリエステル等の樹脂で接合、充填または封止するために樹脂吐出装置が広く使用されている。この用途に使用される樹脂には常温付近で架橋・硬化する2液タイプ(主剤と硬化剤)のものも多く使われており,2液を自動的に比率計量、混合撹拌する工程で作業を中断する際、吐出装置内での樹脂の硬化を防止するためにミキシング部やノズル部を洗浄する必要がある。
【0005】
また、液晶セルは2枚のガラス基板をその周縁部にシール剤を塗布することで10μm以下のギャップで接着し、液晶を入れるための液晶室が形成された構造になっている。また、シール剤で囲まれたこの液晶室の外側には、ガラス基板が10μm以下という微小ギャップで向かい合ったギャップが存在する。上記液晶室に液晶を封入する工程において、上記ギャップ部にも毛細管現象で液晶が入ってしまう。本来液晶が入って欲しくない上記ギャップ部には透明電極に信号を印加するための電極端子がある。この電極端子は絶縁されていなければならないが、上記ギャップ部に液晶が入った状態では絶縁不良が発生するために、十分に除去する必要がある。
【0006】
これらの洗浄、除去には、不燃性で毒性が低く、優れた溶解性を示す等、多くの特徴を有することから、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン(以下CFC113という)やCFC113とアルコールなどを混合した溶剤で洗浄していた。しかしながら、CFC113はオゾン層破壊等の地球環境汚染問題が指摘され、日本では1995年末にその生産が全廃された。このCFC113の代替品として、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンの混合物(以下HCFC225という)や1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(以下HCFC141bという)等のハイドロクロロフルオロカーボン類(以下HCFCという)や2H、3H−パーフルオロペンタン等のハイドロフルオロカーボン類(以下HFCという)が提案されている。しかし、HCFC類では僅かにオゾン層破壊能があるために日本では2020年にその使用が禁止される予定である。HFC類では近年新たな問題として浮上してきた地球温暖化係数の高いことが指摘されており、地球規模での環境汚染を抑制するために、洗浄機の構造を密閉構造とする事で大気への放出量を削減する等の対策が必要となり、洗浄剤用途での使用が困難になる。さらに、HFC類は地球環境保護のためにその使用が制限される可能性も高い。
【0007】
さらに、近年では塩素原子を全く含まないハイドロフルオロエーテル類(以下HFEという)等のオゾン層破壊能が全くなく、地球温暖化係数の低い不燃性のフッ素系溶剤が提案されているが、塩素原子を含まないために溶解能が低く単独では洗浄剤として使用できず、可燃性溶剤を組み合わせた洗浄剤の技術が開示されている。しかし、可燃性溶剤を組み合わせる場合にはHFEの分子構造中に含まれるアルキル基等の炭素数が少なく引火点出現抑制効果が高いメチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物である必要がある。HFE類の中でもアルキル基の炭素数が多い、例えば、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物は、引火点出現抑制効果が低いために、これらと可燃性溶剤を組み合わせた場合、引火点が出現してしまう問題がある。
【0008】
メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と可燃性溶剤を組み合わせた洗浄剤の技術としては、特開平10−36894号公報、特開平10−212498号公報および特開平10−251692号公報等が開示されており、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物とグリコールエーテル類の併用についての記載がある。しかし、例えば,フラックス洗浄剤としては、フラックス成分であるロジンやイオン性残渣の原因となるアミンの塩酸塩や有機酸等の汚れおよびハンダ付け工程によって生成され、白色残渣の原因となる重合ロジンやロジンの金属塩等の汚れの全てを洗浄する必要があるが、前記洗浄剤ではグリコールエーテル類を単独で使用していたり、グリコールエーテル類を併用していても、本願発明の一般式(1)で表されるグリコールエーテル類を使用していないために、全ての汚れを充分に洗浄することができない。
【0009】
以上のごとく、CFC113の代替品として、これまで提案されてきた洗浄剤では、洗浄が可能であってもオゾン層破壊の問題により将来その使用が禁止されていたり、引火の危険性があるために洗浄機等の設備を防爆構造とするのに設備コストが上昇したり、洗浄剤としての洗浄力が不足している等、洗浄剤として使用する上で多くの問題を抱えているのが現状である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、洗浄におけるあらゆるタイプの汚れに対して、HCFC225に匹敵するような高い洗浄力を示し、かつ、蒸気洗浄時等の高温下における酸化劣化を防止しつつ、低毒性で、引火危険性および地球温暖化係数が低く、オゾン層破壊の恐れが全くない洗浄剤とその洗浄剤に適した洗浄方法および洗浄装置を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を達成するための手段】
本発明者は、上記課題を達成するため、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の引火点を有さない特性および引火点出現抑制効果を生かし、引火点の出現しない洗浄剤を見出すべく鋭意検討を重ねた結果、メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物に一般式(1)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を加えることにより、あらゆる汚れを洗浄でき、また、酸化防止剤等の添加により高温下で連続して使用できることを見出し,さらに、その洗浄剤に適した洗浄方法および洗浄装置を見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、発明の第1は、(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と(b)下記一般式(1)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる一種以上の化合物を含有することを特徴とする不燃性洗浄剤である。
【0013】
【化2】
Figure 0005025049
【0014】
(式中、R11はメチル基又はブチル基又はイソブチル基、R12は水素又はブチル基又はイソブチル基、R13、R14、R15は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜3の整数を示し、かつ、 R11がメチル基の場合には、R13、R14、R15の炭素数の総和とnの合計が2〜4の整数を示す)
【0015】
発明の第2は(c)下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含有することを特徴とする発明の第1に記載の洗浄剤である。
21O−(R22O)−R23 (2)
(式中、R21は水素または炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基、R22は炭素数2〜3のアルキレン基、R23は炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基、nは1〜3の整数を示す)
【0016】
発明の第3は、(d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種以上の化合物を含有する発明の第1または第2に記載の洗浄剤である。
発明の第4は、(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分を含有する発明の第1〜3のいずれかに記載の洗浄剤である。
発明の第5は(f)フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤および紫外線吸収剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物とを含有する発明の第1〜4のいずれかに記載の洗浄剤である。
発明の第6は、発明の第1〜5のいずれかに記載の洗浄剤で被洗物を洗浄した後、(g)少なくとも1種の化合物(a)を含有する組成物でリンスおよび/または蒸気洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【0017】
発明の第7は、組成物(g)が、添加成分(e)および安定剤(f)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の成分または安定剤を含有するものである発明の第6に記載の洗浄方法である。
発明の第8は、(A)発明の第1〜5のいずれかに記載の洗浄剤により被洗物を洗浄するための洗浄槽、(B)組成物(g)によりリンスするためのリンス槽、引火点を有さない組成物(g)に含有される少なくとも一種の成分または化合物の蒸気を発生させるための蒸気発生槽、該蒸気発生槽から発生した蒸気で蒸気洗浄するための蒸気ゾーン、(C)発生した蒸気を凝縮した後、得られた凝縮液から水分を除去するための水分離槽、及び水分を除去された凝縮液をリンス槽(B)に戻す機構を有する洗浄装置。
【0018】
発明の第9は、発明の第1〜5のいずれかに記載の洗浄剤を構成する少なくとも一種の成分または化合物の蒸気を発生させるための加熱機構を有する発明の第8の洗浄槽(A)、リンス槽(B)、(D)該洗浄槽(A)から発生した蒸気で蒸気洗浄するための蒸気ゾーン、水分離槽(C)及び水分を除去された凝縮液を該洗浄槽(A)に戻す機構を有する洗浄装置。
発明の第10は、発明の第9において、リンス槽(B)の代わりに、該凝縮液を蒸気ゾーン(D)内でシャワーリンスする機構を有する洗浄装置。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、洗浄とは被洗物に付着している汚れを次工程に影響のないレベルまで除去することである。また、リンスとは被洗物に付着している汚れ成分を含む洗浄剤を溶剤に置換することである。また、シャワーリンスとは洗浄後、単独あるいは複数の吐出口から液状または霧状の溶剤を吐出して被洗物に当て、被洗物に付着している洗浄剤を溶剤に置換することである。さらに、蒸気洗浄とは被洗物表面にわずかに残留する汚れ成分を、被洗物と蒸気との温度差によって被洗物表面で凝縮する液体で除去することである。
【0020】
本発明の洗浄剤および組成物(g)には、(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が必要である。これにより低毒性で、引火危険性および温暖化係数が低く、オゾン層破壊の全くない洗浄剤組成とする事がはじめて可能となる。
【0021】
本発明の洗浄剤においては、洗浄剤に引火点を生ぜず、加工油類、グリース類、ワックス類、フラックス類および液晶等のあらゆる汚れに対する洗浄力の向上を目的に(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる化合物の一種、または二種以上の組み合わせを使用する必要がある。具体的には、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコール−n−ブチルメチルエーテル、エチレングリコール−i−ブチルメチルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエチルエーテル、エチレングリコール−i−ブチルエチルエーテル、エチレングリコール−n−ブチル−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチル−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−ブチル−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−ブチル−i−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−ブチル−i−ブチルエーテル、エチレングリコールジ−i−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール−i−ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエチルエーテル、ジエチレングリコール−i−ブチルエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチル−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−i−ブチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−i−ブチル−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチル−i−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−i−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルメチルエーテル、プロピレングリコール−i−ブチルメチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエチルエーテル、プロピレングリコール−i−ブチルエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチル−i−プロピルエーテル、プロピレングリコール−i−ブチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−i−ブチル−i−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチル−i−ブチルエーテル、プロピレングリコールジ−i−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコール−i−ブチルメチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエチルエーテル、ジプロピレングリコール−i−ブチルエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチル−i−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−i−ブチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−i−ブチル−i−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチル−i−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−i−ブチルエーテル等が挙げられる。この中で特に洗浄性バランスに優れるジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、3−メトキシブタノールおよび3−メチル−3−メトキシブタノールが好ましい。さらに好ましくは人体における代謝系でアルコキシ酢酸を生成しないジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、3−メトキシブタノールおよび3−メチル−3−メトキシブタノール等がより毒性が低く好ましい。よりいっそう好ましくは3−メトキシブタノールである。
【0022】
本発明の洗浄剤においては、あらゆる汚れに対する洗浄力の向上を目的に(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる一種以上の化合物を使用することができる。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−i−プロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−i−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−i−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−i−プロピルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールジ−i−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールジ−i−プロピルエーテル等を挙げることができる。この中で特に人体における代謝系でアルコキシ酢酸を生成しないジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等がより毒性が低く好ましい。
【0023】
化合物(b)や化合物(c)のグリコールエーテル類の蒸気圧は、洗浄剤が引火点を有さない範囲であれば特に制限はないが、20℃における蒸気圧が1.33×103Pa未満が好ましく、より好ましくは6.66×102Pa以下であり、さらに1.33×102Pa以下が好ましい。
【0024】
本発明の洗浄剤においては、あらゆる汚れに対する洗浄力の向上を目的に(d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる一種以上の化合物を使用することができる。本発明の洗浄剤に使用するグリコールエーテルアセテート類とは、水酸基を有するグリコールエーテル類をアセテート化した化合物である。ここで言うグリコールエーテル類とは2個の水酸基が2個の相異なる炭素原子に結合している脂肪族あるいは脂環式化合物において、その2個の水酸基のうちいずれか1個の水酸基の水素が炭化水素残基またはエーテル結合を含む炭化水素残基に置換されている化合物である。例えば、下記一般式(3)で特定されるグリコールエーテルアセテート類を挙げることができる。
【0025】
【化3】
Figure 0005025049
【0026】
(式中、R31は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基、R32、R33、R34は水素またはメチル基、nは0〜1の整数、mは1〜4の整数を示す)
【0027】
グリコールエーテルアセテート類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール等に対応するモノアルキルエーテルのアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等を挙げることができる。
【0028】
また、本発明の洗浄剤に使用するヒドロキシカルボン酸エステル類とは水酸基を有するエステル化合物であり、例えば、乳酸エステル、リンゴ酸エステル、酒石酸エステル、クエン酸エステル、グリコールモノエステル、グリセリンモノエステル、グリセリンジエステル、リシノール酸エステルおよびヒマシ油等を挙げることができる。特に好ましいヒドロキシカルボン酸エステル類としては下記一般式(4)で特定される乳酸エステル類を挙げることができる。
【0029】
【化4】
Figure 0005025049
【0030】
(式中、R41は炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はシクロアルキル基を示す)
【0031】
乳酸エステル類の具体例としては乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸ペンチル等を挙げることができる。成分(d)は、グリコールエーテルアセテート類またはヒドロキシカルボン酸エステル類の中から選ばれた、1種又は2種以上を組み合わせることができる。
本発明における洗浄剤は、上記成分(a)、(b)、(c)を含有する引火点を有さない洗浄剤である。ここでいう、「引火点を有さない」とは、JIS K 2265等の一般的な引火点評価試験により、洗浄剤に引火点なしと認められることを意味する。
本発明の洗浄剤および組成物(g)には、1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃で、請求項1〜3に記載の成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)とは異なる化合物である、成分(e)を洗浄力改良剤、安定剤、融点降下剤等の添加成分として使用できる。
【0032】
成分(e)を以下、溶剤の種類ごとに例示する。
炭化水素類としては、n−ヘキサン、ベンゼン、イソヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、2−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,4−ジメチルペンタン、イソオクタン等が挙げられる。また、液晶洗浄に好ましい炭化水素類としては液晶洗浄性に優れる分岐構造を有する炭化水素類、例えば、イソオクタンが好ましく、より好ましくは環状の炭化水素類、例えば、ベンゼン、シクロヘキサンであり、よりいっそう好ましくはシクロヘキサンである。さらに不燃性洗浄剤とするためには液晶洗浄性に優れ、好ましい沸点を有するイソオクタンが好ましい。
【0033】
アルコール類としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができる。
ケトン類としてはアセトン,メチルエチルケトンを挙げることができる。
エステル類としてはギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等を挙げることができる。
【0034】
成分(e)は、上記例示された化合物のなかから選ばれた、1種又は2種以上を組み合わせることができる。
本発明においては、その洗浄目的に応じて、各種汚れに対するより好ましい成分(e)を選ぶことができる。例えば、炭化水素類またはケトン類は加工油類、グリース類、ワックス類、および液晶等の洗浄に好ましく、特に液晶洗浄には分岐構造を有する炭化水素類が好ましく、より好ましくはイソオクタンであり、アルコール類またははエステル類は、フラックス類、基板製造時に使用されるスクリーンに付着したインキやペースト類および樹脂吐出装置のミキシング部に付着した樹脂類等の洗浄に好ましい。
【0035】
成分(e)は1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃であり、かつ、使用中の組成変動を少なくするために併用する(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物沸点の±40℃の範囲に入ることが好ましく、さらに好ましくは±30℃である。
また、成分(e)は、併用する(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と共沸組成物あるいはそれに近似する組成の共沸様組成物であることが好ましい。
また、洗浄剤および組成物(g)の酸化劣化を防ぐ目的で成分(f)を添加することができる。成分(f)としては、例えば、以下に示す種類ごとに例示することができる。
【0036】
フェノール系酸化防止剤としては、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の化合物を挙げることができる。
【0037】
アミン系酸化防止剤としては、ジフェニル−p−フェニレン−ジアミン、4−アミノ−p−ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン等の化合物を挙げることができる。
リン系酸化防止剤としては、フェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルジイソオクチルホスファイト、ジフェニルジイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト等の化合物を挙げることができる。
【0038】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル等の化合物を挙げることができる。
【0039】
紫外線吸収剤としては、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−クロロベンゾフェノン、2、2’−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ドデシル−2−ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート、ビスフェノールA−ジ−サリシレート等のフェニルサリシレート類および2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α’−ジジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾ−ル類を挙げることができる。
【0040】
これら例示された化合物のなかで、フェノール系酸化防止剤の添加効果が高く、特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが好ましい。また、洗浄剤を連続して加熱使用する蒸気洗浄等の場合には、フェノール系酸化防止剤およびアミン系酸化防止剤の群から選ばれる少なくとも一種以上とリン系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤の群から選ばれる一種以上を併用することによって、長期間洗浄剤の酸化分解を抑制することが可能となる。
【0041】
また、本発明の洗浄剤はあらゆる汚れに対して優れた洗浄性を示すが,特にフラックスなどの樹脂類や液晶の洗浄に適している。
本発明の洗浄剤は、上述した(a)〜(f)各成分を定法に従って混合し均一化して得られる。
【0042】
各成分の重量割合については、本発明の洗浄剤の特徴である、高洗浄性、低毒性、低引火性が損なわれない範囲であれば、特に制限はないが、成分(a)/成分(b)の重量割合の範囲が95/5〜40/60であることがより好ましい。成分(b)の重量割合が5より大きいときに、各種汚れに対するより好ましい溶解力改善効果が得られ、60より小さいときにより好ましい低引火性を達成できる。成分(a)/{成分(b)+成分(c)+成分(d)}の重量割合の範囲が95/5〜40/60であることがより好ましい。{成分(b)+成分(c)+成分(d)}の重量割合が5より大きいときに、各種汚れに対するより好ましい溶解力改善効果が得られ、60より小さいときにより好ましい低引火性を達成できる。洗浄剤の洗浄性と低引火性のバランスを考慮した、さらに好ましい成分(a)/{成分(b)+成分(c)}の重量割合の範囲は90/10〜50/50であり、いっそう好ましくは80/20〜60/40である。
【0043】
成分(b)/{成分(c)+成分(d)}の重量割合の範囲は90/10〜10/90であることがより好ましい。成分(c)の重量割合が10より大きいときに、より好ましいロジン溶解性が得られ、90より小さいときに、重合ロジンやロジンの金属塩に対するより好ましい洗浄性が得られる。洗浄剤のロジンに対する溶解性と重合ロジン等の白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄性のバランスを考慮した、さらに好ましい成分(b)/{成分(c)+成分(d)}の重量割合の範囲は80/20〜20/80であり、いっそう好ましくは70/30〜30/70である。
【0044】
成分(e)を添加する場合には{(a)+(b)+(c)+(d)}/(e)の重量割合の範囲が90/10〜99.9/0.1あることがより好ましい。(e)の重量割合が10よい小さいときにより好ましい低引火性を達成でき、0.1より大きいときに安定剤としてのより好ましい効果が得られる。さらに好ましい重量割合の範囲は93/7〜99/1である。 成分(f)を添加する場合には{(a)+(b)+(c)+(d)+(e)}に対して、1〜1000ppm、より好ましくは10〜1000ppmである。
【0045】
本発明の洗浄剤の融点は15℃以下が好ましいが、冬期使用することも考慮すると10℃以下がより好ましく,さらに好ましくは5℃以下である。
組成物(g)は、上述した(a)、(e)、(f)各成分を定法に従って混合し均一化して得られる。
【0046】
各成分の重量割合については、組成物(g)の特徴である、低毒性、低引火性が損なわれない範囲であれば、特に制限はないが、成分(e)を添加する場合には(a)/(e)の重量割合の範囲が90/10〜99.9/0.1あることがより好ましい。(e)の重量割合が10よい小さいときにより好ましい低引火性を達成でき、0.1より大きいときに安定剤としてのより好ましい効果が得られる。さらに好ましい重量割合の範囲は93/7〜99/1である。
成分(f)を添加する場合には{(a)+(e)}に対して、1〜1000ppm、より好ましくは10〜1000ppmである。
本発明の洗浄剤および組成物(g)には、必要に応じて各種助剤、例えば,界面活性剤、安定剤、消泡剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0047】
以下に本発明の洗浄剤および組成物(g)に添加できる添加剤の具体例を例示する。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び両性界面活性剤を添加しても良い。アニオン系界面活性剤としては、炭素数が6〜20の脂肪酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルカリ金属類、アルカノールアミン類およびアミン塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、アルキルフェノール、炭素数が8〜18の直鎖または分岐の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイドのブロックポリマー等が挙げられる。両性界面活性剤としては,ベタイン型、アミノ酸型等が挙げられる。
【0048】
安定剤としてはニトロメタン、ニトロエタン等のニトロアルカン類、1,2−ブチレンオキサイド等のエポキシド類、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トリエタノールアミン等のアミン類、1,2,3−ベンゾトリアゾール類等が挙げられる。 消泡剤としては、自己乳化シリコーン、シリコン、脂肪酸、高級アルコール、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールおよびフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
本発明の洗浄剤及び組成物(g)は、以下に示す洗浄方法及び洗浄装置を利用することによって、最も効果的な洗浄を行うことができる。
本発明の洗浄方法は、被洗物に付着したあらゆるタイプの汚れを(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物に(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテル類を含有し、必要に応じて(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテル類、(d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物、(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分および(f)酸化防止剤および紫外線吸収剤を添加することによって、優れた洗浄性を示し、かつ、引火点を有さない洗浄剤で洗浄したのち、汚れ成分等を発明の第六に記載の(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物単体または発明の第七に記載の(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分からなる引火点を有さない組成物(g)で被洗物をリンスおよび/または蒸気洗浄することを特徴としている。特に組成物(g)については汚れ成分に応じて、(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分を添加することにより、リンス性がより向上する。洗浄工程及びリンス工程には洗浄性、リンス性を向上することを目的とした手拭き、浸漬、シャワーおよび超音波等の物理的な方法を組み合わせることにより、効果的な洗浄が可能となる。特に液晶洗浄において超音波を使用する場合には、液晶パネル中のスペーサーによるITO膜の損傷を防止するために40kHz以上の周波数を使用することが好ましい。なお、シャワーリンスを行う場合の吐出圧としては1×103〜2×106Paであることが好ましく、より好ましくは1×104〜1×106である。本発明の洗浄方法は本発明の洗浄剤を使用する上で、洗浄性及び乾燥性に優れ、被洗物の材質に対する影響も少なく、最も適した洗浄方法と言える。
【0050】
本発明の洗浄方法を実施する装置としては、これまでトリクロロエタン,CFC113等の塩素系洗浄剤で使用されていた3槽式洗浄機等の一般的な洗浄機であれば使用することが可能であり、洗浄装置を限定するものではないが、具体的な洗浄装置の事例として、図1に示した本発明の第八に記載の洗浄装置、図2に示した本発明の第九に記載の洗浄装置および図3に示した本発明の第十に記載の洗浄装置を挙げることができる。
【0051】
以下に本発明の洗浄方法及び洗浄装置を添付図面によって具体的に説明する。
図1に示す洗浄装置は、主な構造として洗浄液を入れる洗浄槽(A)1、組成物(g)を入れるリンス槽(B)2及び蒸気発生槽3、組成物(g)の蒸気に満たされる蒸気ゾーン4、蒸発した組成物(g)を冷却管9によって凝縮し、凝縮した液と冷却管に付着した水とを静置分離するための水分離槽(C)5からなる。実際の洗浄においては被洗物を専用のジグやカゴ等に入れて、洗浄装置内を洗浄槽(A)1、リンス槽(B)2、蒸気ゾーン4の順に移動しながら洗浄を完了させる。
【0052】
洗浄槽(A)1では、本発明の洗浄剤をヒーター7で加熱昇温し、一定温度にコントロールしながら被洗物に付着した汚れを超音波振動子8により発生したキャビテーションで洗浄除去する。この時,物理的な力としては超音波以外に揺動や洗浄剤の液中噴流等のこれまでの洗浄機に採用されているいかなる方法を使用しても良い。本洗浄装置においては被洗物を洗浄槽(A)1からリンス槽(B)2に移動する時、洗浄剤成分が被洗物表面に付着していることにより、被洗物表面での乾燥による汚れ成分の固着を防止しつつ、リンス槽(B)2へ移動することが可能となる。
【0053】
リンス槽(B)2では、被洗物に付着している洗浄剤中に溶解している汚れ成分を組成物(g)で除去する。組成物(g)は、リンス槽(B)2からオーバーフロー配管11、16、12を通って蒸気発生槽3に入り、蒸気発生槽3のヒーター6で加熱沸騰され、その組成の一部または全部が蒸気となって矢印13のように冷却管9で凝縮された後、配管14から水分離槽(C)5に集まり水と分離された上で、配管15を通ってリンス槽(B)2に戻る。この組成物(g)を洗浄装置内で液体や気体に状態変化させながら循環することによって、リンス槽(B)2に持ち込まれた洗浄剤成分や汚れ成分を連続的に蒸気発生槽3に蓄積し,リンス槽(B)2の清浄度の維持や蒸気ゾーン4における蒸気洗浄が可能となる。
【0054】
蒸気発生槽3で発生した蒸気に満たされた蒸気ゾーン4で行う蒸気洗浄は、被洗物表面で蒸気が凝縮することによりできた液中に汚れ成分が全く含まれないので、洗浄工程最後の仕上げ洗浄として有効である。さらに、洗浄効果を高めるためには、リンス槽(B)2の冷却管10で組成物(g)温度を低温に保ち、浸漬する被洗物温度を低く抑制することによって,蒸気温度との温度差を広げ凝縮量を増やすことが効果的である。
【0055】
本発明の洗浄装置では、洗浄剤と組成物(g)の2種類の液を使用するために独立した浸漬槽構造となっているが、各槽上部の空間を蒸気ゾーンとして共通に使用することにより,洗浄剤からの非塩素系フッ素化合物の蒸発ロスを抑制し、結果として洗浄剤の組成変動を減少し、長期連続使用することが可能となる。
【0056】
次に図2に示す洗浄装置は、主な構造として洗浄液を入れる洗浄槽(A)17、組成物(g)を入れるリンス槽(B)18、洗浄剤の蒸気に満たされる蒸気ゾーン(D)19、蒸発した洗浄剤を冷却管23によって凝縮し、凝縮した液と冷却管に付着した水とを静置分離するための水分離槽(C)20からなる。実際の洗浄においては被洗物を専用のジグやカゴ等に入れて、洗浄装置内を洗浄槽(A)17、リンス槽(B)18、蒸気ゾーン(D)19の順に通過させながら洗浄を完了させる。リンス槽(B)数については精密洗浄等の高い清浄度が求められる場合には必要に応じて2槽以上に増やしても良い。
【0057】
洗浄槽(A)17では、本発明の洗浄剤をヒーター21で加熱し、沸騰状態で被洗物に付着した汚れを洗浄除去する。この時,物理的な力としては揺動や洗浄剤の液中噴流等のこれまでの洗浄機に採用されている物理的な力であればいかなる方法を使用しても良い。本洗浄装置では、被洗物を洗浄槽(A)17からリンス槽(B)18に移動する時、洗浄剤成分が被洗物表面に付着することにより、被洗物表面での乾燥による汚れ成分の固着を防止しつつ,リンス槽(B)18へ移動することが可能となる。
【0058】
リンス槽(B)18では、本発明の組成物(g)で被洗物に付着している洗浄剤中に溶解している汚れ成分を除去する。
洗浄剤は洗浄槽(A)17のヒーター21で加熱沸騰され、その組成の一部または全部が蒸気となって矢印25のように蒸気ゾーン(D)19を満たした後、冷却管23で凝縮された後、配管26から水分離槽(C)20に集まり水と分離された上で、配管27を通って、一旦リンス槽(B)18に戻された後、該リンス槽(B)18からオーバーフローして矢印28のように最終的に洗浄槽(A)17に戻される。
組成物(g)は、リンス槽(B)18からオーバーフローして矢印28のように洗浄槽(A)17に入り、洗浄槽(A)17のヒーター21で加熱沸騰され、蒸気となって矢印25のように冷却管23で凝縮された後、配管26から水分離槽(C)20に集まり水と分離された上で、配管27を通ってリンス槽(B)18に戻る。
【0059】
このように図2に示す洗浄装置は図1に示した洗浄装置と異なり、洗浄剤と組成物(g)が洗浄槽(A)17において混合することを特徴とし、洗浄剤と組成物(g)に含まれる(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃は同一成分とすることが好ましい。
【0060】
この洗浄剤と組成物(g)に含まれる(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物と(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分を洗浄装置内で循環させ、リンス槽(B)18内の組成物の一部を洗浄槽(A)17にオーバーフローさせることによって、蒸気ゾーン(D)19における蒸気洗浄が可能となるのみならず、被洗物によりリンス槽(B)18に持ち込まれた洗浄剤中の(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種以上の化合物、(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種以上の化合物、(d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分を連続的に洗浄槽(A)17に戻すことが可能となり、洗浄槽(A)17内の洗浄剤、及びリンス槽(B)18の組成物(g)の組成を一定に保つ事ができる。
【0061】
洗浄槽(A)17で発生した蒸気に満たされた蒸気ゾーン(D)19で行う蒸気洗浄は、被洗物表面で蒸気が凝縮したことによりできた液中に汚れ成分が全く含まれないので、洗浄工程最後の仕上げ洗浄として有効である。さらに、洗浄効果を高めるためには、リンス槽(B)18の冷却管24で組成物(g)温度を低温に保ち、被洗物温度を低くすることによって、蒸気温度との温度差を広げ凝縮量を増やすことが効果的である。
【0062】
次に図3に示す洗浄装置は、主な構造として洗浄液を入れる洗浄槽(A)29、洗浄剤の蒸気に満たされる蒸気ゾーン(D)30、蒸発した洗浄剤を冷却管34によって凝縮し、凝縮した液と冷却管に付着した水とを静置分離するための水分離槽(C)31,水分離槽(C)31で静置分離された凝縮液をシャワーリンスするためのポンプ33とからなる。実際の洗浄においては被洗物を専用のジグやカゴ等に入れて、洗浄装置内を洗浄槽(A)29、蒸気ゾーン(D)30の順に移動しながら洗浄を完了させる。
【0063】
洗浄槽(A)29では、本発明の洗浄剤をヒーター32で加熱し、沸騰状態で被洗物に付着した汚れを洗浄除去する。この時,物理的な力としては揺動や洗浄剤の液中噴流等のこれまでの洗浄機に採用されている物理的な力であれば、いかなる方法を使用しても良い。
【0064】
蒸気ゾーン(D)30では、主に本発明の洗浄剤に含まれる(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物や(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分等の蒸気圧の高い成分の蒸気を冷却管34で凝縮させ水分離槽(C)31に集めた後、これら凝縮液をポンプ33で配管38、39に送液し、シャワーノズル40,41から被洗物にシャワーすることによって,被洗物に付着している洗浄剤中に溶解している汚れ成分をリンスする。凝縮液は、水分離槽(C)31に集められた後、配管37およびポンプ33から洗浄槽(A)29に入りヒーター32で加熱沸騰され、蒸気となって矢印35のように冷却管34で凝縮された後、配管36から水分離槽(C)31に戻る。
【0065】
洗浄槽(A)29で発生した蒸気に満たされた蒸気ゾーン(D)30で行う蒸気洗浄は、被洗物表面で凝縮する液中に汚れ成分が全く含まれないので、洗浄工程最後の仕上げ洗浄として有効である。
本発明の洗浄装置では、洗浄剤に含まれる(a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物や(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃等の蒸気圧の高い成分が主に洗浄装置内で液体や気体に状態変化させながら循環することによって、被洗物に付着しているわずかに残留している可能性の有る汚れ成分を組成物(g)、及びリンス槽を使用せずにリンス及び蒸気洗浄が可能である。
【0066】
前記図1〜3に示した各洗浄装置はその目的や用途によって使い分けることができ、高清浄度が求められるような精密洗浄等では、図1や図2に示した組成物(g)を使用し、かつ、浸漬槽を1槽または2槽以上設けた洗浄装置がより好ましい。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、洗浄剤の各種物性は以下のようにして測定、評価した。
[実施例1〜10及び比較例1〜8]
(1)引火点
JIS K 2265に従い、測定温度80℃まではタグ密閉式で引火点の測定を行い引火点が確認されない場合には、クリーブランド開放式で引火点の測定を行った。評価は以下の基準による。
○:引火点なし
×:引火点あり
【0068】
(2)地球温暖化係数(100年積算)
地球温暖化係数とは二酸化炭素を基準として、二酸化炭素の温暖化係数を「1」とした場合の相対値を表し、洗浄剤中の20重量%以上の溶剤について評価する。
評価は以下の基準による。
○:500未満
×:500以上
【0069】
(3)ロジン溶解性試験
フラックスを加熱して、イソプロパノール等の溶剤成分を蒸発乾固したのち、約0.2gのペレットを作成する。これを40℃の洗浄剤50mlで2分間揺動洗浄(200回/分)し、メチルパーフルオロブチルエーテルおよびメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物(商品名:HFE7100、住友スリーエム(株)製)でリンスした後、エアーブローして乾燥する。溶解性は試験の前後にペレットの重量を測定し、以下の計算式で計算する。
ロジン溶解性(%)={(試験前重量−試験後重量)/試験前重量}×100
評価は以下の基準による。
◎:40%以上
○:20%以上〜40%未満
×:20%以下
試験に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
【0070】
(4)基板洗浄性試験
重合ロジン、およびロジン金属塩等、白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄剤の洗浄性を、以下の操作により測定した。
【0071】
ガラスエポキシ製プリント基板(35×48mm)をフラックスに片面浸漬し風乾した後、250℃でハンダ付けして作成した試験片を40℃の洗浄剤50mlで2分間揺動洗浄(200回/分)し、メチルパーフルオロブチルエーテルおよびメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物(商品名:HFE7100、住友スリーエム(株)製)でリンスおよび蒸気洗浄して乾燥する。
洗浄性は基板表面の外観を目視評価する。評価は以下の基準による。
◎:基板面及びハンダ面のいずれにも白色残渣なし
○:ハンダ面に白色残渣なし
×:白色残渣あり
試験に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
【0072】
【実施例1〜10】
表1に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤を得た。各洗浄剤について、評価試験を行ない、結果を表1にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルにより引火点を消去した上で、ロジン、重合ロジン、ロジンの金属塩、アミンの塩酸塩および有機酸等のフラックス成分およびフラックス塗布工程において生成されたあらゆる汚れを洗浄できることが確認された。また、(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテル、(d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類および(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の成分を添加することによって、さらに優れた洗浄性が得られた。さらに、(f)酸化防止剤および紫外線吸収剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を添加することによりより高い酸化安定性が得られた。
【0073】
【比較例1】
表1に記載の溶剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表1にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物単独ではロジン溶解性及び基板洗浄性のいずれも不十分であった。
【0074】
【比較例2〜3】
表1に記載の組成で各成分を混合し洗浄剤を得た。この洗浄剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表1にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物に成分(c)として、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテルの単独添加あるいはジプロピレングリコールメチルエチルエーテルとジプロピレングリコールエチルプロピルエーテルを併用して添加しただけでは基板洗浄性が不充分であった。
【0075】
【比較例4〜5】
表1に記載の組成で各成分を混合し洗浄剤を得た。この洗浄剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表1にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物に成分(c)として、ジプロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルの単独添加あるいはジエチレングリコールモノプロピルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテルを併用して添加しただけではロジン溶解性が不充分であった。
【0076】
【比較例6】
表1に記載の組成で各成分を混合し洗浄剤を得た。この洗浄剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表1にまとめた。エチルパーフルオロブチルエーテルとエチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物に成分(b)としてエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを添加した組成では引火点が確認された。
【0077】
【比較例7】
表1に記載の組成で各成分を混合し洗浄剤を得た。この洗浄剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表1にまとめた。2H,3H−パーフルオロペンタンに成分(b)としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルを添加した組成では地球温暖化係数が500を越えた。
[実施例11〜12及び比較例8]
(5)実機洗浄試験1
図1に示す洗浄装置の洗浄槽(A)1に所定の組成の洗浄剤を入れ、リンス槽(B)2、蒸気発生槽3および水分離槽(C)5に所定の組成の組成物(g)を入れ、重合ロジン、およびロジン金属塩等、白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄性について、以下の操作及び洗浄条件により測定した。
操作
・フラックス洗浄性評価
ガラスエポキシ製プリント基板(35×48mm)をフラックスに片面浸漬し風乾した後、250℃でハンダ付けして作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、組成物(g)でリンスした後、蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性はイオン性残渣(単位:μgNaCl/sqin)をオメガメーター(600R−SC、アルファメタルズ社製)で測定し、その測定値を「β」とする。評価は以下の基準による。
【0078】
◎:β≦7
○:7<β≦14
×:β>14
試験に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
・脱脂洗浄性評価
30メッシュのステンレス金網(10×20mm)に下記金属加工油を含浸させ、100℃で30分間加熱して作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、組成物(g)でリンスした後蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性は目視評価する。評価は以下の基準による。
【0079】
○:加工油の残留なし
△:一部に加工油の残留あり
×:加工油の残留あり
試験に用いた金属加工油:パークロロエチレン中に染料(ズダン)0.1重量%、ユニカットGH35(商品名、日本石油(株)製)を25重量%含有する液を調整し、試験用金属加工油とした。
洗浄条件
洗浄槽(A)1 :40℃、2分間超音波洗浄(出力:110w、周波数:28kHz)
リンス槽(B)2 :15℃、2分間浸漬揺動(20回/分)
蒸気ゾーン4:2分間静置
【0080】
【実施例11】
表2に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤および組成物(g)を得た。洗浄剤および組成物(g)を用いて上記評価試験を行ない、結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを含有する引火点を有さない洗浄剤と(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物単独で引火点を有さない組成物(g)で洗浄することにより、フラックス及び油に対する優れた洗浄が確認された。
【0081】
【実施例12】
表2に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤および組成物(g)を得た。洗浄剤および組成物(g)を用いて上記評価試験を行ない、結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルと(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテルとを併用した引火点を有さない洗浄剤と(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物と(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の成分とを併用した引火点を有さない組成物(g)で洗浄することにより、フラックス及び油に対する優れた洗浄が確認された。
【0082】
【比較例8】
表2に記載の洗浄剤および組成物(g)について実施例11,12と同じ評価試験を行った。結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物だけではフラックス及び油に対する洗浄性がいずれも不充分であった。
【0083】
[実施例13〜14及び比較例9]
(6)実機洗浄試験2
図2に示す洗浄装置の洗浄槽(A)17に所定の組成の洗浄剤を入れ、リンス槽(B)18および水分離槽(C)20に所定の組成の組成物(g)を入れ、重合ロジン、およびロジン金属塩等、白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄性について、以下の操作及び洗浄条件により測定した。
【0084】
操作
・フラックス洗浄性評価
ガラスエポキシ製プリント基板(35×48mm)をフラックスに片面浸漬し風乾した後、250℃でハンダ付けして作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、組成物(g)でリンスした後、蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性はイオン性残渣(単位:μgNaCl/sqin)をオメガメーター(600R−SC、アルファメタルズ社製)で測定し、その測定値を「β」とする。評価は以下の基準による。
◎:β≦7
○:7<β≦14
×:β>14
試験に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
【0085】
・脱脂洗浄性評価
30メッシュのステンレス金網(10×20m)に下記金属加工油を含浸させ、100℃で30分間加熱して作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、組成物(g)でリンスした後蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性は目視評価する。評価は以下の基準による。
○:加工油の残留なし
△:一部に加工油の残留あり
×:加工油の残留あり
試験に用いた金属加工油:パークロロエチレン中に染料(ズダン)0.1重量%、ユニカットGH35(商品名、日本石油(株)製)を25重量%含有する液を調整し、試験用金属加工油とした。
【0086】
洗浄条件
洗浄槽 (A)17:2分間沸騰洗浄
リンス槽 (B)18:15℃、2分間浸漬揺動(20回/分)
蒸気ゾーン(D)19:2分間静置
【0087】
【実施例13】
表2に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤および組成物(g)を得た。洗浄剤および組成物(g)を用いて上記評価試験を行ない、結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを含有する引火点を有さない洗浄剤と(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物単独で引火点を有さない組成物(g)で洗浄することにより、フラックス及び油に対する優れた洗浄が確認された。
【0088】
【実施例14】
表2に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤および組成物(g)を得た。洗浄剤および組成物(g)を用いて上記評価試験を行ない、結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルと(c)一般式(2)で表されるグリコールエーテルとを併用した引火点を有さない洗浄剤と(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物と(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の成分とを併用した引火点を有さない組成物(g)で洗浄することにより、フラックス及び油に対する優れた洗浄が確認された。
【0089】
【比較例9】
表2に記載の洗浄剤および組成物(g)について実施例13,14と同じ評価試験を行った。結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物だけではフラックス及び油に対する洗浄性がいずれも不充分であった。
【0090】
[実施例15及び比較例10]
(7)実機洗浄試験3
図3に示す洗浄装置の洗浄槽(A)29及び水分離槽(C)31に洗浄剤を入れ、1時間空運転を行い水分離槽(C)31の洗浄剤に含まれる蒸気圧の低い成分の濃度を低下させた上で、重合ロジン、およびロジン金属塩等、白色残渣の原因となる汚れに対する洗浄性について、以下の操作及び洗浄条件により測定した。
【0091】
操作
・フラックス洗浄性評価
ガラスエポキシ製プリント基板(35×48mm)をフラックスに片面浸漬し風乾した後、250℃でハンダ付けして作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、洗浄剤の凝縮液でリンスした後、蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性はイオン性残渣(単位:μgNaCl/sqin)をオメガメーター(600R−SC、アルファメタルズ社製)で測定し、その測定値を「β」とする。評価は以下の基準による。
◎:β≦7
○:7<β≦14
×:β>14
試験に用いたフラックスの商品名:JS−64ND((株)弘輝製)
【0092】
・脱脂洗浄性評価
30メッシュのステンレス金網(10×20mm)に下記金属加工油を含浸させ、100℃で30分間加熱して作成した試験片を上記洗浄装置を用いて洗浄し、洗浄剤の凝縮液でリンスした後蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性は目視評価する。評価は以下の基準による。
○:加工油の残留なし
△:一部に加工油の残留あり
×:加工油の残留あり
試験に用いた金属加工油:パークロロエチレン中に染料(ズダン)0.1重量%、ユニカットGH35(商品名、日本石油(株)製)を25重量%含有する液を調整し、試験用金属加工油とした。
【0093】
洗浄条件
洗浄槽 (A)17:2分間沸騰洗浄
蒸気ゾーン(D)19:2分間シャワーリンス(5L/分)後,2分間静置
【0094】
【実施例15】
表2に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤を得た。洗浄剤を用いて上記評価試験を行ない、結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを含有する引火点を有さない洗浄剤と洗浄剤の凝縮液で洗浄することにより、フラックス及び油に対する優れた洗浄が確認された。
【0095】
【比較例10】
表2に記載の洗浄剤について実施例15と同じ評価試験を行った。結果を表2にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物だけではフラックス及び油に対する洗浄性がいずれも不充分であった。
【0096】
[実施例16〜28及び比較例11]
(8)液晶洗浄性試験
液晶に対する洗浄剤の洗浄性を、以下の操作により測定した。
液晶セルのシール剤で囲まれた、液晶室の外側にあるギャップ部(ギャップ:6μm)に液晶を塗布し、10分間放置することによりギャップ部を液晶で満たした。この液晶汚れのついた液晶セルを50℃の洗浄剤100mlで10分間超音波洗浄(100kHz、200w)し、メチルパーフルオロブチルエーテルおよびメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物(商品名:HFE7100、住友スリーエム(株)製)でリンスおよび蒸気洗浄して乾燥する。洗浄性は液晶セルのギャップ部を偏光顕微鏡で観察して評価する。評価基準は以下の基準による。
◎:ギャップ部に液晶汚れが全く残留しない
○:ギャップ部に液晶汚れが極微量残留する
△:ギャップ部に液晶汚れの残留が少量残留する
×:ギャップ部に液晶汚れの残留が多量に残留する
試験に用いた液晶:ZLI−4792(メルクジャパン社製)
【0097】
【実施例16〜28】
表3に記載の組成で各成分を混合し、目的の洗浄剤を得た。洗浄剤を用いて上記評価試験を行ない、結果を表3にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物、(b)一般式(1)で表されるグリコールエーテルを含有する引火点を有さない洗浄剤と洗浄剤の凝縮液で洗浄することにより、液晶に対する優れた洗浄が確認された。さらに、(e)1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の成分を添加することにより、より優れた液晶洗浄性が得られた。さらに、(f)酸化防止剤および紫外線吸収剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を添加することによりより高い酸化安定性が得られた。
【0098】
【比較例11】
表3に記載の洗浄剤について実施例と同じ評価試験を行った。結果を表3にまとめた。(a)メチルパーフルオロブチルエーテルとメチルパーフルオロイソブチルエーテルの混合物だけではフラックス及び油に対する洗浄性がいずれも不充分であった。
【0099】
【表1】
Figure 0005025049
【0100】
【表2】
Figure 0005025049
【0101】
【表3】
Figure 0005025049
【0102】
【発明の効果】
本発明の洗浄剤は、優れた洗浄性を有するとともに引火点がなく安全である。
すなわち、引火点を有さないものの、フラックスや液晶等の汚れに対する溶解性に劣るメチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物単体に、一般式(1)で表されるグリコールエーテルを添加することによって、引火点を有さないというメチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテルおよびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の特性をそのままに、例えば,フラックス洗浄において、高いロジン溶解性を有するとともに基板表面に残留する重合ロジン、ロジンの金属塩およびイオン性物質に対する優れた洗浄性を有する洗浄剤となり、さらに、1.013×105Paにおける沸点が20℃〜100℃の炭化水素類を添加することで、より優れた液晶洗浄性を有する洗浄剤を提供できる。洗浄剤が引火点を有さないので、引火の危険性が低減され、洗浄機等の設備上、引火,爆発等を防ぐための防爆構造とする必要がなく、かつ、既存の洗浄設備をそのまま使用できるため低コストの洗浄システムを確立することが可能となる。また、1.013×105Paにおいて沸点が20℃〜100℃の添加成分により、蒸気洗浄時の気相での金属安定性の向上、洗浄剤の凝固防止等が可能となる。
【0103】
本発明の組成物によれば、引火の危険を全く心配せずにあらゆるタイプの汚れを容易に被洗物表面から溶解洗浄する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の洗浄剤および洗浄方法を利用した洗浄装置の一例である。
【図2】本発明の洗浄剤および洗浄方法を利用した洗浄装置の一例である。
【図3】本発明の洗浄剤および洗浄方法を利用した洗浄装置の一例である。
【符号の説明】
1 洗浄槽(A)
2 リンス槽(B)
3 蒸気発生槽
4 蒸気ゾーン
5 水分離槽(C)
6 ヒーター
7 ヒーター
8 超音波振動子
9 冷却管
10冷却管
11オーバーフロー配管
12オーバーフロー配管
13蒸気の流れ
14凝縮液用配管
15水分離後の凝縮液用配管
16オーバーフロー液用配管
17洗浄槽(A)
18リンス槽(B)
19蒸気ゾーン(D)
20水分離槽(C)
21ヒーター
22超音波振動子
23冷却管
24冷却管
25蒸気の流れ
26凝縮液用配管
27水分離後の凝縮液用配管
28組成物(g)の流れ
29洗浄槽(A)
30蒸気ゾーン(D)
31水分離槽(C)
32ヒーター
33ポンプ
34冷却管
35蒸気の流れ
36凝縮液用配管
37水分離後の凝縮液配管
38シャワー用の凝縮液配管
39シャワー用の凝縮液配管
40シャワーノズル
41シャワーノズル
42冷却管
43冷却管
44冷却管

Claims (6)

  1. (a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
    (b)エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル又はジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル 並びに
    (c)下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも一種以上の化合物 を含有することを特徴とする不燃性洗浄剤。
    21 O−(R 22 O) −R 23 (2)
    (式中、R 21 は水素、R 22 は炭素数2〜3のアルキレン基、R 23 は炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基、nは1〜3の整数を示す)
  2. (a)メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
    (b)エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル又はジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル 並びに
    (d)グリコールエーテルアセテート類およびヒドロキシカルボン酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物 を含有することを特徴とする不燃性洗浄剤。
  3. (e) 1.013×10 5 Paにおける沸点が20℃〜100℃の添加成分であって、かつ、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類からから選ばれる化合物の一種又は二種以上の組み合わせを含有する請求項1又は2に記載の洗浄剤。
  4. (f)酸化防止剤および紫外線吸収剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物とを含有する請求項1〜のいずれか一項に記載の洗浄剤。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の洗浄剤で被洗物を洗浄した後、(
    g)少なくとも1種の化合物(a)を含有する組成物でリンス及び/又は蒸気洗浄することを特徴とする洗浄方法。
  6. 組成物(g)が、添加成分(e)および化合物(f)よりなる群か
    ら選ばれる少なくとも一種の成分または化合物を含有するものである請求項記載の洗浄方法。
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