JP5024922B2 - 軸筒のグリップ構造並びにこの軸筒のグリップ構造を備えた筆記具及び塗布具 - Google Patents
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Description
これに対し、筆記具又は塗布具の軸筒のグリップ部分に自己形状保持可能なゲルを使用する技術として特許文献2記載のものがある。これによると、ゲル状物質は指が当たった部分は変形はするものの、芯軸部分から逃げることはなく、ゲル状物質の緩衝効果が損なわれないこととなっている。
また、芯軸がステンレスパイプや真鍮パイプのような金属製の場合、外被体やゲル状物質を通して芯軸の色がほの見えてしまうため、グリップの色がくすんで見える、という問題点がある。
さらに、本発明は、上記第1の課題に加え、グリップ色のくすみの改善効果を高めることを第2の課題とする。
また、本発明は、上記第1の課題に加え、グリップ色のくすみを押さえつつ色のバリエーションを広げることを第3の課題とする。
さらに、本発明は、上記第1、第2、第3又は第4の課題に加え、成形性を向上させることを第5の課題とする。
また、本発明は、上記第1、第2、第3、第4又は第5の課題に加え、グリップ構造の製造を容易にすることを第6の課題とする。
前記第1の課題に鑑み、本発明のうち第1の発明は、塗布物を内蔵する軸筒11の把持部17に設けられる軸筒11のグリップ構造20であって、内側に塗布物を収容する芯軸13の外側に設けられ該芯軸13を直接被覆する内被体21と、前記内被体21の外側を覆う外被体23と、前記内被体21と外被体23との間に充填される自己形状保持可能なゲル状物質25とを備えるとともに、前記内被体21は前記芯軸13の材質よりも前記ゲル状物質25との親和性が高い材質にて形成され、前記芯軸13は金属製であるとともに、前記内被体21は光線非透過性の材質で形成され、前記ゲル状物質25及び前記外被体23は光線透過性に形成されていることを特徴とする。
ここで、「塗布物」とは、塗布されるべき面に塗布される物質をいい、具体的には、筆記具10に使用されるインク、芯、絵の具等及び塗布具に使用される化粧品、修正液、接着剤、薬剤等をいう。なお、ここでいう筆記具10は、使用される塗布物に応じて、ボールペン、シャープペンシル、フェルトペン、サインペン等様々な態様のものが可能である。
「把持部17」とは、軸筒11において手指で直接把持される部分をいう。
「芯軸13」とは、その内側に塗布物を収容する構造をいう。ここで、芯軸13が塗布物を収容する態様としては、芯軸13自体が塗布物を直接収容する場合と、塗布部とを収容したリフィルあるいはカートリッジを収容する場合とがあり得る。このうち、前者の場合においては、「軸筒11」が「芯軸13」と一致することとなる。
「外被体23」とは、内被体21の外側を、所定の間隔をもって覆う構造をいう。
「ゲル状物質25」とは、内被体21と外被体23との間に充填される物質であって、化学的又は物理的な高分子間の架橋作用により、ポリマーが液体を含有した状態で立体網目状構造を取り、かつ、ゲル状物質25そのものが自己形状保持可能に形成されたものをいう。ここで、「自己形状保持可能」とは、流動性を備えない粘弾性体であって、押圧力のような外力により容易に変形するが、その外力を除くと元の形に復元することを意味する。
またここで、「架橋」とは、ゾル状物質の分子間に何らかの化学的力を働かせることで、流動性を低下させることをいう。このその化学的力を発生させる条件は、原料となるゾル状物質の種類により異なる。たとえば、所定温度に加熱することによりゾル状物質の架橋化が促進される場合には、このような温度に加熱することが条件となる。また、特に何もしなくても所定時間以上放置することで架橋化が進行する場合には、このような時間放置することが条件となる。
ここで、「光線透過性」とは、具体的には無色透明、無色半透明、着色透明又は着色半透明のいずれかをいう。
また、筆記具10や塗布具の把持部17に流動性を有する液状物質を用いた場合に比較して、自己形状保持可能なゲル状物質25は、把持した時に変形はするが流動はしないという特性を持つ。このため、把持した指は外被体23を介して直接芯軸13に当たることなく、常にゲル状物質25の快適な触感を感じることが可能になり、把持力の強弱の個人差があっても、良好な把持感及び長時間使用における疲労低減の効果を得ることが可能となる。さらに、前記ゲル状物質25は自己形状保持が可能なため、使用中に外被体23を傷付けたとしてもゲル状物質25が漏れ出すことはない。
また、上記のようなグリップ構造20を把持部17に備えた筆記具10又は塗布具、すなわち、内側に塗布物を収容する芯軸13の外側に設けられ該芯軸13を直接被覆する内被体21と、前記内被体21の外側を覆う外被体23と、前記内被体21と外被体23との間に充填される自己形状保持可能なゲル状物質25とを備えるとともに、前記内被体21は前記芯軸13の材質よりも前記ゲル状物質25との親和性が高い材質にて形成された軸筒11のグリップ構造20を軸筒11の把持部17に設けたことを特徴とする筆記具10又は塗布具においては、上述のようなゲル状物質25による把持感の向上や長時間使用における疲労低減の効果を提供するのみならず、ゲル状物質25の変形による芯軸13表面との剥離に伴う気泡の混入も減少させることができる。
(2)第2の発明
前記第2の課題に鑑み、本発明のうち第2の発明に係る軸筒11のグリップ構造20は、前記第1の発明の特徴に加え、前記内被体21は白色であることを特徴とする。
また、前記第1の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記内被体21は白色であるとともに、前記ゲル状物質25及び前記外被体23は光線透過性に形成されており、光線透過性のゲル状物質25を通して芯軸13の色が透過することがないので、グリップ色のくすみはより改善されることとなる。
前記第3の課題に鑑み、本発明のうち第3の発明に係る軸筒11のグリップ構造20は、前記第1の発明の特徴に加え、前記内被体21は着色されていることを特徴とする。
すなわち、外被体23及びゲル状物質25を通して内被体21の色が視認できることになり、グリップ色のくすみを改善しつつ、様々なグリップ色のバリエーションを実現することができる。
また、前記第1の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記内被体21は着色されているとともに、前記ゲル状物質25及び前記外被体23は光線透過性であり、外被体23及びゲル状物質25を通して内被体21の色が視認できることになり、グリップ色のくすみを改善しつつ、様々なグリップ色のバリエーションを実現することができる。
前記第4の課題に鑑み、本発明のうち第4の発明に係る軸筒11のグリップ構造20は、前記第1、第2又は第3の発明の特徴に加え、前記芯軸13の先端近傍の一部及び後端近傍の一部のうち少なくとも一方は前記内被体21に覆われずに該芯軸13の表面が露出していることを特徴とする。
よって、上記芯軸13部分において、先端近傍の一部若しくは後端近傍の一部又はこれらの両方には、内被体21による被覆がなされず、芯軸13表面を露出させることとしている。
また、前記第1、第2又は第3の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記芯軸13の先端近傍の一部及び後端近傍の一部のうち少なくとも一方は前記内被体21に覆われずに該芯軸13の表面が露出していることとすると、芯軸13とその前後の部材との組み付けを妨げないこととなる。
前記第5の課題に鑑み、本発明のうち第5の発明に係る軸筒11のグリップ構造20は、前記第1、第2、第3又は第4の発明の特徴に加え、前記内被体21の後端近傍には外周に沿って外方に突出して前記外被体23の内側に接触する鍔状のセンタリング部材22が設けられていることを特徴とする。
ここで、「センタリング部材22」とは、外被体23の軸心を軸筒11の軸心と一致させるための部材で、充填されるゲル状物質25が外被体23の中で偏らないようにすることを目的としている。
また、前記第1、第2、第3又は第4の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記内被体21の後端近傍には外周に沿って外方に突出して前記外被体23の内側に接触する鍔状のセンタリング部材22が設けられていることとすると、外被体23にセンタリング部材22を形成することが不要となり外被体23の形状を簡素化することができ、金型構造の簡素化を図ることができる。
前記第6の課題に鑑み、本発明のうち第6の発明は、前記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の特徴に加え、前記内被体21は前記芯軸13表面に塗装により形成されていることを特徴とする。
たとえば、芯軸13表面に、シリコーン塗料を塗布することで、この部分を内被体21とすることができる。
また、前記第1、第2、第3、第4又は第5の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記内被体21は前記芯軸13表面に塗装により形成されていることとすると、内被体21を容易に形成することができる。
前記第6の課題に鑑み、本発明のうち第7の発明は、前記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の特徴に加え、前記内被体21は前記芯軸13表面にインサート成形により形成されることを特徴とする。
すなわち、金型内に芯軸13を挿入し、その表面にたとえばシリコーンゴムによるインサート成形を施すことで、内被体21を形成することとなっている。このインサート成形を採用することにより、内被体21を薄肉に設計することが可能となっており、軸筒11を細身に形成したい場合であっても、ゲル状物質25層の厚みを十分確保することができる。
また、前記第1、第2、第3、第4又は第5の発明に係る筆記具10又は塗布具において、前記内被体21は前記芯軸13表面にインサート成形により形成されることとすると、金型を抜きテーパにすることができるので、割型にする必要がなく、内被体21表面の割線バリが解消できるとともに、金型の取り数も減少させることができる。
すなわち、本発明のうち第1の発明によると、ゲル状物質と芯軸との密着性を高めることで軸筒部分の美観を向上させ、また、芯軸が金属製である場合であっても、グリップ色のくすみを防止することが可能となる。
さらに、本発明のうち第2の発明によると、上記第1の発明の特徴に加え、グリップ色のくすみの改善効果を高めることが可能となる。
また、本発明のうち第3の発明によると、上記第1の発明の特徴に加え、グリップ色のくすみを押さえつつ色のバリエーションを広げることが可能となる。
さらに、本発明のうち第5の発明によると、上記第1、第2、第3又は第4の発明の特徴に加え、成形性を向上させることが可能となる。
また、本発明のうち第6及び第7の発明によると、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明の特徴に加え、グリップ構造の製造を容易にすることが可能となる。
図1は本発明の実施の形態に係る筆記具10としてのシャープペンシルの一部断面側面図である。また、図2は把持部17における内被体21の平面図(A)並びに芯軸13及び内被体21を一部断面で示した側面図(B)である。さらに、図3は把持部17の一部断面側面図である。
なお、筆記具や塗布具としてはシャープペンシルに限定されず、ボールペン、筆ペン、万年筆等の筆記具、あるいは修正液を収容した塗布具等が可能である。
また、本明細書において、前方とはペン先側方向であり、後方とは反ペン先側方向である。
軸筒11は、軸方向において先端側に配置される芯軸13と後端側に配置される後軸12の2部品により構成される。芯軸13と後軸12は螺着により相互に固定されることで、軸筒11を形成している。
芯軸13は、ステンレス鋼製の円筒形を呈している(図2(B)参照)。この芯軸13内部には、塗布体としての芯19が収納される(図1参照)。
芯軸13の外周表面には、図2(B)に示すように、内被体21が被覆されている。内被体21は、白色のシリコーン製であり、ステンレス鋼製の芯軸13表面に、インサート成形により形成される。内被体21は、先端から後端にかけて僅かに拡径している。これにより、金型を抜きテーパにすることができる。また、内被体21後端近傍には、図2(A)に示すように、120°間隔で等配された3枚の同一形状の鍔状構造が設けられている。これらは、図3に示すように、外被体23の後端部分を芯軸13に対してセンタリングするためのセンタリング部材22として機能する。
一方、芯軸13の前端には内被体21が被覆されておらず、ここに前ネジ管14が装着される(図3参照)。そして、図1に示すように、この前ネジ管14に口金16が螺着されている。ここで、口金16の後端は外被体23の先端と当接している。
そして、前記芯軸13と外被体23が内被体21を介して固定されることにより形成される内被体21と外被体23の間の空間には、自己形状保持可能なゲル状物質25が内蔵されている。
外被体23は、弾性材であれば材質は問わず、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのような弾性材も使用可能であるが、特にシリコーンゴムが望ましい。
ゲル状物質25は自己形状が保持できるものならば、材質は問わず、シリコーンゲル、アクリルゲル、ウレタンゲルなどのいずれのゲル状物質も使用可能であるが、特にシリコーンゲルが望ましい。このようなゲル状物質の市販品の例としては、株式会社ジェルテック製の「αGEL」(登録商標)が挙げられる。
そして、ゲル状物質25が、内被体21のセンタリング部材22間に形成された間隙から注入される。すなわち、図示しない注入ノズルをセンタリング部材22間の隙間から差し込み、注入ノズルを介してゲル状物質25を注入する。注入ノズルは1本であってもよいし、複数本であってもよいが、複数本にすることで注入時間を短縮できる利点がある。ゲル状物質25は注入する段階ではまだゾル状で流動性を呈しており、注入後に室温で放置するか又は加温することで硬化し、自己形状保持が可能となる。このようなゲル状物質25の代表例としては、次式のようなものがある。
(ただし、Rはアルケニル基であり、R1は脂肪族不飽和結合を有しない一価の炭化水素であり、R2は一価の脂肪族炭化水素基(R2の少なくとも50モル%はメチル基であり、アルケニル基を有する場合にはその含有率は10モル%以下である)であり、nはこの成分の25℃における粘度が100〜10,000cStになるような数である。)
上記式1に示すゲル状物質25は、ジオルガノポリシロキサン(A成分)と、25℃における粘度が5,000cSt以下であり、1分子中に少なくともSi原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B成分)とからなり、かつB成分中のSi原子に直接結合している水素原子の合計量に対するジオルガノポリシロキサン(A成分)中に含まれるアルケニル基の合計量の比(モル比)が0.1〜2.0になるように調整された混合物を硬化させることにより得られる付加型シリコーンコポリマーである。
上記に挙げた、A成分、B成分及び触媒を混合した後に、注入ノズルにより、内被体21と外被体23との間の空間へ流動性を有しているゲル状物質25を注入する。この空間がゲル状物質25で満たされた後は、室温に放置するか、あるいは加温することにより硬化させることで、ゲル状物質25は自己形状を保持可能となる。
上述の内被体21、ゲル状物質25及び外被体23により、グリップ構造20が形成されることとなる。
そして、上述のゲル状物質25を、着色透明ないし着色半透明にした場合、白色内被体21により芯軸13の金属色がマスキングされ、ゲル状物質25の色彩がそのまま表現できることとなる。
13 芯軸 14 前ネジ管 15 後ネジ管
16 口金 17 把持部 18 リング部材
19 芯
20 グリップ構造 21 内被体 22 センタリング部材
23 外被体 24 環状凸部 25 ゲル状物質
Claims (10)
- 塗布物を内蔵する軸筒の把持部に設けられる軸筒のグリップ構造であって、
内側に塗布物を収容する芯軸の外側に設けられ該芯軸を直接被覆する内被体と、
前記内被体の外側を覆う外被体と、
前記内被体と外被体との間に充填される自己形状保持可能なゲル状物質とを備えるとともに、
前記内被体は前記芯軸の材質よりも前記ゲル状物質との親和性が高い材質にて形成され、
前記芯軸は金属製であるとともに、
前記内被体は光線非透過性の材質で形成され、
前記ゲル状物質及び前記外被体は光線透過性に形成されていることを特徴とする軸筒のグリップ構造。 - 前記内被体は白色であることを特徴とする請求項1記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記内被体は着色されていることを特徴とする請求項1記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記芯軸の先端近傍の一部及び後端近傍の一部のうち少なくとも一方は前記内被体に覆われずに該芯軸の表面が露出していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記内被体の後端近傍には外周に沿って外方に突出して前記外被体の内側に接触する鍔状のセンタリング部材が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記内被体は前記芯軸表面に塗装により形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記内被体は前記芯軸表面にインサート成形により形成されることを特徴とする1、2、3、4、5又は6記載の軸筒のグリップ構造。
- 前記内被体の外径は、前端から後端にかけ僅かに拡径していることを特徴とする請求項7記載の軸筒のグリップ構造。
- 内側に塗布物を収容する芯軸の外側に設けられ該芯軸を直接被覆する内被体と、
前記内被体の外側を覆う外被体と、
前記内被体と外被体との間に充填される自己形状保持可能なゲル状物質とを備えるとともに、
前記内被体は前記芯軸の材質よりも前記ゲル状物質との親和性が高い材質にて形成され、
前記芯軸は金属製であるとともに、
前記内被体は光線非透過性の材質で形成され、
前記ゲル状物質及び前記外被体は光線透過性に形成されている軸筒のグリップ構造を軸筒の把持部に設けたことを特徴とする筆記具。 - 内側に塗布物を収容する芯軸の外側に設けられ該芯軸を直接被覆する内被体と、
前記内被体の外側を覆う外被体と、
前記内被体と外被体との間に充填される自己形状保持可能なゲル状物質とを備えるとともに、
前記内被体は前記芯軸の材質よりも前記ゲル状物質との親和性が高い材質にて形成され、
前記芯軸は金属製であるとともに、
前記内被体は光線非透過性の材質で形成され、
前記ゲル状物質及び前記外被体は光線透過性に形成されている軸筒のグリップ構造を軸筒の把持部に設けたことを特徴とする塗布具。
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