JP5023783B2 - 分離膜モジュール - Google Patents

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本発明は、モジュール生産性が改善された細孔内にグリセリンが含有された中空糸膜および分離膜モジュールに関する。より詳しくは、環境の変化や物理的衝撃により中空糸膜細孔内のグリセリンが中空糸膜表面に染み出すのを抑えることで接着性を改善し、かつ溶出物であるUOを抑制できる中空糸膜に関する。
近年、血液浄化処理に用いられる人工腎臓用中空糸膜の性能に対する要求はますます高まっている。かつては、血液中の尿素やクレアチニンなどの低分子量物質を除去することが主とされていたが、最近では低分子量物質だけではなく、β2-ミクログロブリンなどの低分子タンパク質の除去も可能な中空糸膜性能が求められており、中空糸膜の透水性は高くなっている。
一方、中空糸膜が持つ細孔は、乾燥などの熱処理による中空糸膜自体の収縮により孔径が小さくなったり大きくなったりすることがあり、性能や品質の低下を引き起こす原因となっている。この問題を防ぐために、膜孔保持剤として中空糸膜の細孔にグリセリンを充填する技術がある。すなわち、高い透過性能を持つ中空糸膜ほど空孔率、細孔径が大きいので、より多くのグリセリンを含有させる必要がある。
しかしながら、中空糸膜はモジュールに納められた後、膜束の端部を固定するために樹脂を用いて接着を行うが、この際に、中空糸膜接着表面にグリセリンの液滴が多量に存在していると、樹脂と中空糸膜束との接着性が悪くなる。さらに、中空糸膜接着表面に過剰にグリセリンが存在すると、接着剤であるイソシアネートと反応して溶出性副生成物であるウレタンオリゴマー(UO)が生成しやすくなる。通常、これらの溶出性副生成物はプライミング処理により速やかに洗い流されるが、極力UOの生成を抑えるのが安全性の面から好ましい。
上記課題である溶出性副生成物量を減らすために、膜孔保持剤として分子内に少なくとも一個の低級アルコキシ基を有するポリエチレングリコール及び分子内に少なくとも一個の低級アルコキシ基を有するグリセリンの群から選ばれる一種類以上の膜孔保持剤を使用したり、多価アルコール縮合物を用いる技術が開示されている。(例えば、特許文献1、2参照)。また、膜の全空孔内に占める膜孔保持剤の割合を示す膜孔保持剤充填率を60〜95%にすることで透水性を保ちつつ、接着部分からの溶出性副生成物量を減らす技術が開示されている。(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらの方法については中空糸膜接着表面上の液滴の状態が明らかにされておらず、接着剤と膜孔保持剤の反応を抑制することができたものの、膜束と接着剤の接着性については明らかにされていない。中空糸の表面上に膜孔保持剤からなる液滴が存在していると中空糸膜と接着剤の接着性が低下するので、接着性に優れていない恐れがある。
そこで、単糖類、多糖類を膜孔保持剤として用いることで、液滴の発生を抑え接着性が良好でかつ接着部からの溶出性副生成物の発生を極めて低減させた技術が開示されている。(例えば、特許文献4参照)。単糖類、多糖類は吸湿性が低く、液滴の発生が見られないという利点があるが、コストが高くなることや安全性が低減する恐れがある。
また、中空糸モジュールの接着性に関しては、膜束の緩め率が0.1%以上5%以下であり、かつ接着固定部の一方の端部充填率をρ、もう一方の端部充填率をρ1とした時、ρ1/ρ<0.1、ρ≦0.6の関係式を満足する中空糸膜モジュールを得ることで接着部分の強度低下を起さないという方法がある。(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、膜孔保持剤と接着剤の反応による溶出性副生成物の生成については全く配慮されていない。
中空糸膜に外から力を与えることにより中空糸が変形し孔形が変化し膜孔保持剤が孔から滲み出してくる可能性がある。中空糸膜に力がかかる過程として中空糸膜の巻き取りがある。従来、中空糸膜をボビン上にチーズ状に捲く技術として巻き取り時の張力が中空糸膜一本あたり4.0g以上かつ降伏強度以下で捲くことにより中空糸膜の真円度やつぶれを改善する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。該技術により、中空糸膜巻き取り時の潰れや変形を抑制することはできるが、解じょ時の巻き取りテンションの変動による膜孔保持剤の滲み出しについては記載も示唆もされていない。
特開平9-47646号公報 特開2004-358433号公報 特開2001-190934号公報 特開平11-3332682号公報 特開2005-296937号公報 特開2004-313881号公報
本発明は、特に透過性能が高く、より空孔率が高い、膜孔保持剤を含有する中空糸膜において、モジュール作製時の端部接着の際に、中空糸膜接着表面上に液滴が存在しない接着性に優れかつ溶出性副生成物の生成が少ない、より安全な分離膜モジュールを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)ノズルより吐出された紡糸原液を凝固浴に浸漬して凝固させ、次いで洗浄工程、グリセリン付与工程、乾燥工程を経てボビンにチーズ状に巻き取られた中空糸膜をボビンから解じょし、多点綛に巻きかえることにより得られた中空糸膜をモジュールケースに装填し、端部を樹脂にて接着した後、樹脂の一部を切断し中空糸膜中空部が開口された、下記の特徴を有する分離膜モジュール。
(a)ボビンと多点綛との間にダンサーローラーおよび回転ローラーを配し、ダンサーローラーおよび回転ローラー間を走行する中空糸膜のテンション変動を5g以下とする
(b)中空糸膜の空孔率が65%以上、グリセリン付着率が65%以上である
(c)中空糸膜表面の液滴付着率が10%以下、中空糸膜表面に外径8μm以上の液滴が存在しない
(d)分離膜モジュールから切り出した接着部を40℃、200mlの温水中に2時間浸漬して得られた抽出液を50倍希釈した希釈液のUV(242nm)吸光度が0.042以下である
(2)最高使用圧の1.5倍の圧力を24時間かけた後も接着部分の剥離がみられないことを特徴とする(1)に記載の分離膜モジュール。
(3)血液浄化用に用いられることを特徴とする(1)または(2)に記載の分離膜モジュール。
本発明の中空糸膜のチーズからの解じょする方法は、例えば、血液透析膜、血液濾過膜、血液透析濾過膜、血漿分離膜など種々の中空糸型血液浄化膜に優れている。その選択透過性を保持しながら、中空糸膜をチーズから解じょして中空糸膜束を作製する際に、解じょ時の張力変動が5g以下で捲きとった中空糸膜束を用いてモジュールを作製することで、グリセリンの滲み出しを抑制し、中空糸膜表面の液滴付着率が少なく優れているので、端部接着部分の接着性が優れ、端部接着部分の副生成物の生成が少ないという利点がある。
以下、中空糸膜表面のグリセリン付着を低減させるためグリセリンの滲み出しを低減する発明を詳細に説明する。
本発明者らは、前記課題を解決するために、中空糸膜の製造から分離膜モジュールの製造にかかる一連の工程とモジュール接着不良および溶出物生成との関係について検討した。その結果、分離膜モジュール製造時に中空糸表面への膜孔保持剤であるグリセリンの滲み出しが多いものほど、接着不良や溶出物量が多くなる傾向があることを掴んだ。すなわち、グリセリンには吸湿性があるため、中空糸膜細孔から滲み出した極微量のグリセリンが大気中の水分を吸湿して液滴を形成する。この液滴が、モジュールケースと中空糸膜との間に存在することにより接着阻害を起こしていると考えられる。また、モジュール接着の際にはウレタン樹脂を用いるのが一般的であるが、ウレタンはグリセリンとの反応性も高いため、中空糸膜表面にグリセリンの滲み出し、ひいては液滴が多いほどウレタンオリゴマーの生成量も多くなり、溶出物量が増加することに繋がっていると考えられる。また、血液浄化用膜においては、高性能化を目指して膜の細孔径や空孔率が拡大する方向にある。このため、前記課題が生じる頻度がますます高まってきている。
モジュール接着不良および溶出物量の低減を達成するためには、中空糸膜表面へのグリセリンの滲み出し及び液滴の生成を抑制することが非常に重要であることを知見し、本発明に至った。
一方、従来、グリセリンなどの細孔保持剤を使用しないウェットタイプの分離膜モジュールがある。しかし、ウェットタイプのモジュールは分離膜モジュール内に水が充填されているため、本願発明のドライタイプのモジュールに比較して重量が数倍重くなり、輸送コストが増大する問題が生ずる。また、寒冷地では充填された水が凍結し、膜が破損するなどの問題が生ずる。したがって、本発明者らはドライタイプの分離膜モジュールにおける前記課題の解決について鋭意検討を行った。
本発明者らは、中空糸膜表面における液滴の発生メカニズムについて調査した結果、(1)中空糸膜製造工程においてはグリセリン水溶液に中空糸膜を一旦浸漬した後の余剰水分の掻き取り不良、(2)中空糸膜をボビンに巻き取る際の接圧、(3)モジュール組立までの保管条件(湿度や温度の変動)、(4)中空糸膜を巻き取ったボビンから中空糸膜を解じょする際のテンション変動などが要因として挙げられた。その中でも、特に前記(4)のテンション変動がグリセリンの滲み出しに大きな影響を与えていることがわかった。本発明者らは、解じょ時のテンション変動を抑えることにより、ついに本発明に到達した。
本発明において、中空糸膜の空孔率は65%以上であることが好ましい。空孔率は、中空糸膜の体積あたりに有する細孔の割合である。中空糸膜を例えば血液浄化に用いる場合には、血液から水分や老廃物質を除去する。物質を血液から除去するためには細孔が存在していなければならない。通常、空孔率は血液浄化器を形成する中空糸膜の透水性と相関関係があり、高い透水性と物質除去を両立するためには空孔率が65%以上あることが望ましい。70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましい。中空糸膜の空孔率が高いほどグリセリンの滲み出しが多くなる傾向にあり、このような中空糸膜こそ本願発明の効果が顕著である。
本発明において、中空糸膜の透水性(以下UFR)は30ml/(m2・hr・mmHg)以上が望ましい。UFRが小さいということは中空糸膜の空孔率や細孔径が小さいことを意味し、そのような中空糸膜においては本願発明の効果が顕著に現れない可能性がある。また、UFRが大きすぎると、本願発明を適用してもグリセリンの滲み出しを抑えきれないことがある。したがって、中空糸膜の透水性は、50〜1000ml/(m2・hr・mmHg)が好ましく、50〜700ml/(m2・hr・mmHg)がより好ましく、70〜500ml/(m2・hr・mmHg)がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜のグリセリン付着率は55重量%以上であることが好ましい。グリセリン付着率は、中空糸膜の重量あたりに付着しているグリセリンの割合を指す。グリセリンは細孔保持剤として用いられており、中空糸膜の乾燥や保管、モジュール組立などにおいて細孔が潰れたり縮小したりして性能が低下してしまうことを防ぐ役割をしている。空孔率とグリセリン付着率にはある程度相関関係があり、空孔率が高いほど相対的にグリセリン付着率も多くする必要がある。空孔率に対してグリセリン付着率が低すぎる場合には、細孔内にグリセリンが完全に充填された状態で無いか、すべての細孔にグリセリンが充填された状態で無いことを示している。このような状態では、細孔の大きさおよび形状を保持できなくなり性能が低下することがあるのでグリセリン付着率は58重量%以上である中空糸膜がより好ましく、62%以上がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜表面の液滴付着率は10%以下が望ましい。液滴付着率とは、中空糸膜表面積あたりの液滴と中空糸膜の接触面積の割合である。ここで液滴とは、図1に示すような、細孔保持剤であるグリセリンと水分でできているものを指す。液滴は、周囲の環境つまり湿度や温度で組成および大きさが変化する。グリセリンは周囲の水分を吸収するので湿度が高いほど液滴に含まれる水分が多くなる。液滴は、例えば、温度25℃、湿度55%の環境の場合では、グリセリン80%、水20%程度になる。経験的に、液滴付着率が10%以下であれば、おおむね接着不良の発生やウレタンオリゴマーの生成は許容範囲である。液滴付着率は低いほど、接着不良やウレタンオリゴマー量が減少する方向にあり、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。
本発明において、中空糸膜表面の液滴の大きさは8μm以下が望ましい。8μmよりも大きい液滴が存在すると、中空糸膜とモジュールケースとの接着不良に起因するリーク値が大きくなるためである。リーク値が高いと、例えば、血液浄化使用時に血球漏れなどが生じる恐れがある。液滴の大きさとリーク値との間には明確な相関はみられないが、8μmを超えるとリーク値が高くなるとか、使用時にリークが発生することを経験している。したがって、液滴の大きさは7μm以下がより好ましく、6μm以下がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜の内径は特に限定されないが、100〜300μmであることが好ましい。内径が小さすぎると、中空糸膜中空部を流れる被処理液(血液など)の圧力損失が大きくなる為、例えば血液を流した時溶血することがある。したがって、中空糸膜の内径は130μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。逆に、中空糸膜の内径が大きすぎると、中空糸膜中空部を流れる血液の剪断速度が小さく、濾過に伴いタンパク質などが膜の内面に堆積しやすくなる傾向がある。したがって、中空糸膜の内径は280μm以下がより好ましく、260μm以下がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜の膜厚は10〜100μmであることが好ましい。中空糸膜の膜厚がこの範囲であれば、グリセリン水溶液が細孔全体に充填し易いため好ましい。可紡性や血液浄化器の組立て性向上の面から10〜50μmの範囲にあることがより好ましい。高い透過性能を得るためには10〜30μmがさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜の膜構造は、均質構造であることが好ましい。本発明において、膜構造が均質であるとは、SEM(走査電子顕微鏡)で膜断面を1000倍程度で観察した際に、支持層、スキン層など膜断面構造に不均一性が観察されず、また、ボイドやピンホール等も観察されないことを言う。
また、均質構造であれば、中空糸膜の骨格となるポリマーネットワークが強固になるため、膜厚や中空糸膜外径の変化が小さく、ひいては細孔径や細孔形状の変化が小さくなり、グリセリンの滲み出しをより抑えることが可能となり好ましい。
以下、本発明の中空糸膜の製造方法を例示する。
ポリマー、溶媒、必要により非溶媒を加熱して混合溶解し、紡糸原液を調製する。得られた紡糸原液を中空形成剤とともにニ重管オリフィスノズルより吐出し、5mm〜100cmの空走部を通過させた後、凝固浴に浸漬して凝固、相分離させる。凝固浴より引き上げた中空糸膜を洗浄工程に導き、過剰の溶媒等を除去する。続いて、中空糸膜をグリセリン水溶液に浸漬して細孔内にグリセリン水溶液を充填する。グリセリン水溶液が付着した中空糸膜を引き続き乾燥工程に導き、乾燥させる。得られた乾燥中空糸膜をワインダーにてボビンにチーズ状に巻き取る。
本発明において、中空糸膜の材質としては、再生セルロース、改質セルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ビニルアルコール−エチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマーなどが挙げられるが、タンパク吸着量が少なく、透水性、溶質透過性に優れる点でセルロース系の材質が好ましい。高い透水性を得ることができ、溶質分離特性に優れ、生体適合性にも優れることから、セルロースジアセテートやセルローストリアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンがより好ましい。
本発明において、溶媒は特に限定されるものではないが、例えばセルロースアセテートポリマーに対する溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、セルロースアセテートポリマーの凝固および相分離のコントロールのしやすさ、作業安全性、廃棄処理の観点からN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドを用いるのが好ましい。
また、セルロースアセテートポリマーに対する非溶媒としては、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が好ましく用いられるが、溶媒との相溶性や洗浄除去性、安全性の観点からトリエチレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールとしては分子量200、400のものを用いるのが、室温で液体であり取り扱い性に優れる点より好ましい。
さらに、製膜溶液には、酸化防止剤や微孔形成剤などの添加剤を必要に応じて加えることができる。
本発明において、中空形成剤としては、ポリマーに対して活性のある液体、不活性な液体および気体を用いることができる。活性のある液体としては、ポリマーの溶媒および非溶媒と水との混合液、不活性な液体としては流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなど、不活性な気体としては窒素、アルゴンなどを用いることが可能である。中空形成剤として活性のある液体を用いると、得られる中空糸膜は不均一構造となりやすく、また不活性な液体および気体を用いると得られる中空糸膜は均質構造となりやすい。グリセリン等の細孔保持剤を含有する中空糸膜の場合、細孔からの細孔保持剤の脱落防止の観点から均質構造の中空糸膜とするのが好ましく、本発明においては中空形成剤として流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルを用いるのが好ましい。
本発明において、凝固液としては、製膜溶液の調製に用いた溶媒および非溶媒と水との混合液を用いるのが好ましい。凝固液組成により得られる中空糸膜の構造、特性が変化するため、溶媒、非溶媒、水の混合比率は目的とする膜構造、膜特性にあわせて試行錯誤により決定する必要がある。本発明において凝固液の調製に用いる溶媒、非溶媒は、製膜溶液の調製に用いたものと同じものを使用することが好ましく、さらに製膜時の経時的な組成変化を抑制するため製膜溶液中の溶媒、非溶媒比と同じにするのが好ましい。
洗浄工程は、中空糸膜製膜に用いた溶媒、非溶媒等を除去するためのものであり、洗浄装置の構成や用いる洗浄液については特に限定されるものではない。洗浄液については、溶媒、非溶媒と相溶性のあるものであればよく、水、アルコールなどを用いる事が可能であり、本発明においては洗浄液として、水を用いるのが好ましい。より好ましくは、限外処理した水をさらに逆浸透膜処理した水を用いる。
本発明において、細孔保持剤としてグリセリンを用いるのが好ましい。グリセリンは医薬品や化粧料の用途として用いられる安全性の高い物質であるが、室温における粘度が高いため、原液のままでは細孔保持剤として使用するのは困難である。したがって、本発明においてはグリセリンを水に溶解したものを100℃以下に加熱した後、中空糸膜と接触させることにより細孔内に含浸するのが好ましい。溶液中のグリセリン濃度や温度は、中空糸膜の細孔の大きさや数、分布状態によって適宜設定する必要があるが、本発明の中空糸膜のUFR範囲のものであれば、15〜90重量%のグリセリン水溶液を30〜80℃に加熱した後、中空糸膜を浸漬し細孔内に含浸させるのが好ましい。グリセリン濃度が低過ぎると、中空糸膜細孔内への含浸性は高まるが乾燥によって細孔が収縮するため、所期の膜特性を得られないとか、グリセリンの滲み出しが発生する可能性がある。したがって、グリセリン濃度は18重量%以上がより好ましく、21重量%以上がさらに好ましい。また、グリセリン濃度が高過ぎると、細孔径の保持効果は高まるが、粘度が高まるため細孔内への含浸性が低下することがある。また、グリセリン水溶液の粘度を低下させるためには温度を上げれば良いが、そうするとグリセリン自体が熱酸化されたり、中空糸膜にダメージを与える可能性がある。したがって、グリセリン濃度は87重量%以下がより好ましく、84重量%以下がさらに好ましい。
本発明において、乾燥温度は40〜120℃が好ましい。ここで、中空糸膜を乾燥させる目的としては、中空糸膜に含まれる水を蒸発させて中空糸膜の軽量化を行うだけでなく、血液浄化器の組立て性の確保(ポッティング剤が水と反応し接着不良を起こすことを防ぐ)、グリセリンの脱落防止(余剰の水を蒸発させることによりグリセリンの流動性を低下させる)、膜構造の固定化(その後の温度変化による細孔の拡大や縮小を防ぐ)などが挙げられる。乾燥温度が低過ぎると瞬時に水を蒸発させることができず、グリセリンの脱落を招くことがある。したがって、乾燥温度は45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また、乾燥温度が高過ぎると、グリセリンが熱酸化を起こすことがある。したがって、乾燥温度は115℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
本発明において、分離膜モジュールを作製する際には、ボビンに巻き取られた中空糸膜をボビンから解じょして、複数本の中空糸膜からなる束状に成形する必要がある。この際、図2に示すようにボビン状に巻き取られた中空糸膜を多点綛(図2では、一例として二点綛)に巻き返すことになるため、一定の速度で解じょすることができない。ボビンと多点綛との間にテンションローラーを設置することにより、中空糸膜に弛みが生じるのを防止する必要がある。ここで、多点綛としては、速度変動が比較的大きい綛の方が本願発明の効果がより大きくなるため、二点〜六点綛が好ましい。二点〜四点綛がより好ましく、二点または三点綛がさらに好ましい。
本発明においては、中空糸膜解じょ時のテンション(張力)の変動が5g以下で解じょすることが望ましい。中空糸膜をボビンから解じょする際の張力の変動が大きいということは、中空糸膜を無理に引っ張ることになり、中空糸膜に過剰な力がかかっていることを意味する。中空糸膜に過剰な力がかかることで膜の孔が変形し、細孔保持剤であるグリセリンが中空糸膜表面に滲み出してきて、その結果液滴として観測される。この液滴が多いとウレタンオリゴマー(UO)が多くなったり、モジュール作製時に接着性が悪くなったりする。また、細孔が変形することで性能が低下する恐れがある。また、逆に中空糸膜に張力がかかっていないと、中空糸膜に弛みが生じるなどして綛に巻き取られた中空糸膜束が長さ方向に整列しない。このような中空糸膜束を用いて分離膜モジュールを作製すると、折れや曲がりなどが生じ品質上問題があるし、使用時にリーク発生の原因となることがある。
本発明において、最高使用圧の1.5倍の圧力を24時間かけても接着部分の剥離が見られないことが好ましい。使用時に剥離が生じると、血液が漏れるとか、治療効果が発揮できないなどの不具合を生ずる可能性がある。また、血液ろ過のような比較的高い圧力がかかるような使用においても充分耐えうるようなモジュールであることが必要である。例えば、血液透析膜の保証耐圧は一般的に500mmHgであるが、本発明ではこの数倍の圧力においても接着部分の剥離が生じないことで、製品の安全性を確保している。
本発明において、モジュールから切り出した接着部を40℃、200mlの温水中に2時間浸漬して端部接着部から溶出物を抽出した液を50倍希釈した希釈液のUV(242nm)における吸光度が0.06以下であることが望ましい。ウレタン接着剤のジイソシアネートのモノマーとグリセリンが反応して生成される物質(ウレタンオリゴマー)は、水溶性であり、通常使用前のプライミング処理において速やかに除去される。しかし、本発明の分離膜モジュールはウレタンオリゴマーの生成を抑制しているので、不完全なプライミング処理であったとしてもウレタンオリゴマーの血液中への溶出等を防止することができる。UV(242nm)吸光度が低ければ低いほどリスクが小さくなるので、0.05以下がより望ましく、0.04がさらに望ましい。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(空孔率の測定)
中空糸膜に対する空孔率の測定は以下のように測定した。
十分に純水に浸漬させた中空糸束を900rpmの回転数で5分間遠心脱液し、膜孔に純水が詰った状態の中空糸の重量(W)を測定する。その後、乾燥機中で絶乾し、中空糸のみの重量(P)を測定し、体積空孔率(Φ)を計算した。
Φ(%)=W/(W+P/ポリマーの密度)×100
(UFRの測定)
血液浄化器を使用し、膜の内外両面に純水を満たし、37℃に恒温した。膜の内側に通じる血液浄化器入口から圧力をかけて37℃の純水を流し、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。膜間圧力差(TMP)はTMP=(Pi+Po)/2とする。(Piは血液浄化器入口圧力、Poは血液浄化器出口圧力)。4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを求めた。この数値に60をかけ、血液浄化器の膜面積で割って中空糸膜の純水の限外濾過係数(UFR)をもとめた。単位はml/(m2・hr・mmHg)である。
(膜孔形保持剤グリセリン付着率の測定)
中空糸膜に対する膜孔形保持剤グリセリン付着率は、以下のように測定した。
適当量(約30g)の中空糸膜を用意する。ループ状でもバンドル状でも構わない。必要に応じて中空糸内部に芯材がある場合はこれを除去する。中空糸膜を完全に乾燥させ重量Wを測定する。その後、中空糸膜を約40℃の水に浸漬させ、十分に洗浄した後、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥させ、重量Pを測定する。次に下記式により中空糸膜に対する膜孔形保持剤の付着率G(wt%)を計算した。
G(wt%)=(W−P)÷W×100
(中空糸膜表面の液滴付着率)
膜束を構成する中空糸膜をチーズから解じょした後の、モジュール作製時の中空糸膜を顕微鏡にて20倍で撮影し、中空糸膜部分のみを画像として取り込む。取り込んだ画像の液滴部分を黒色の楕円、それ以外の中空糸膜部分を白色として二値価処理する。ここで、液滴の最も長い軸を長軸とし、その軸の垂直方向に最も長い軸を短軸として楕円を作る。二値価処理して得られた画像を、画像解析ソフトで白色部分の面積の総和つまり中空糸のみの面積の総和と、黒色部分の面積の総和つまり液滴の面積の総和を求め、次式により中空糸膜表面の液滴付着率を求めた。
中空糸膜表面の液滴付着率(%)=液滴の面積の総和/(液滴の面積の総和+中空糸膜のみの面積の総和)×100
(液滴の大きさ)
膜束を構成する中空糸膜をチーズから解じょした後の、モジュール作製時の中空糸膜を顕微鏡にて20倍で観察し、最も大きい液滴の大きさを測定する。
(捲き取り張力の測定)
図2に示すような装置で膜束を構成する中空糸膜をチーズから解じょしている際に、ダンサーローラーと回転ローラー間を走行している中空糸膜の張力をテンションメーターで測定する。測定の際にテンションメーターと走行している中空糸膜が平行になるようにテンションメーターを設置する。カセが5回転以上している間の、中空糸膜4本あたりの最大張力と最小張力を読み取り、次式により捲き取り張力の変動幅を求めた。
捲き取り張力の変動幅(g)=最大張力−最小張力
(分離膜モジュールの作製)
中空糸膜を約30cmの長さに切断し、ポリエチレンフィルムで巻いて中空糸膜束とした。この中空糸膜束を円筒型のポリカーボネート製モジュールケースに挿入し、両末端をウレタンポッティング剤で固めた。端部を切断して、両末端が開口したモジュールを得た。中空糸膜の本数は、外表面積が約1.5m2となるよう適宜設定した。なお、円筒状のモジュールケースは円筒面2箇所にポートを設け、中空糸膜の外面を流体が灌流できるようにし、両末端にはエンドキャップを装着して、中空糸膜の内面を流体が灌流できるようにした。
(分離膜モジュールの接着性の試験)
端部接着部分に剥離の見られない作製した分離膜モジュールの中空内部分と中空外部分に純水を満たし、モジュールの中空外部分に加圧空気を送り、端部を密閉した状態で24時間最高使用時の1.5倍の圧力をかけた。24時間後、端部接着部分の観察を行い剥離の状態を確認した。この時、剥離のない状態を合格とした。
(溶出性副生成物の測定)
溶出性副生成物量は、以下のようにして測定した。
モジュール端部の接着部分を切り取り、1cm角に切断する。これを40℃、200mlの純水に2時間浸漬する。冷却後、モジュール端部と溶出液を分離させ溶出液0.1mlを純水で50mlとして、242nmにおける紫外吸光度(以下UV値と表記)を測定する。
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)56.7重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.3重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し、ボビンに巻き上げた。得られたボビンをポリエチレン製の袋に入れて、70℃で20時間熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。
得られたボビンから中空糸膜を張力変動が最大1.8gで解じょして中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入し、端部をウレタン樹脂にて接着した。硬化後のウレタン樹脂の一部を切断し、中空糸膜の中空部を開口し分離膜モジュールを作製した。中空糸膜の空孔率は80%、グリセリン付着率は76%であった。中空糸膜表面の液滴付着率を測定したところ0%であった。また、分離膜モジュールにおいて端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。分離膜モジュールより端部接着部分を切り出し、溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.032であった。UFRは、281 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(実施例2)
実施例1と同様にして得られたボビンから中空糸膜を張力変動の最大が2.4gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜の空孔率は80%、グリセリン付着率は76%であった。中空糸膜表面の液滴付着率は4%であった。この時の最大液滴の大きさは6μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.042であった。UFRは、261 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.5重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)56.4重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.1重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、63重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し、ボビンに巻き上げた。得られたボビンをポリエチレン製の袋に入れて、70℃で20時間熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。
空孔率71%、グリセリン付着率65%の中空糸膜をボビンから張力変動の最大が2.4gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜表面の液滴付着率は2%であった。この時の最大液滴の大きさは4μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.028であった。UFRは、75 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(実施例4)
実施例3と同様にして得られたボビンから中空糸膜を張力変動が最大で4.8gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。得られた中空糸膜の空孔率は71%、グリセリン付着率は65%であった。中空糸膜表面の液滴付着率は5.2%であった。この時の最大液滴の大きさは6μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.035であった。UFRは、82 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)18.5重量%、N-メチル-2-ピロリドン(三菱化学社製)57.0重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.5重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、67重量%のグリセリン水溶液中を通過させドライヤーで乾燥し、ボビンに巻き上げた。得られたボビンをポリエチレン製の袋に入れて、70℃で20時間熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は202μm、膜厚は17μmであった。
空孔率84%、グリセリン付着率79%の中空糸膜をボビンから張力変動が5.2gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜表面の液滴付着率は20%であった。この時の最大液滴の大きさは21μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.062であった。UFRは、610 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(比較例2)
比較例1と同様にして得られたボビンから中空糸膜を張力変動の最大が5.8gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜の空孔率は80%、グリセリン付着率は76%であった。中空糸膜表面の液滴付着率は42%であった。この時の最大液滴の大きさは34μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.085であった。UFRは、299 ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(比較例3)
実施例3と同様にして得られたボビンから中空糸膜を張力変動の最大が5.6gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜の空孔率は71%、グリセリン付着率は65%であった。中空糸膜表面の液滴付着率は23%であった。この時の最大液滴の大きさは41μmである。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.051であった。UFRは、79ml/(m2・hr・mmHg)であった。
(参考例)
ポリエーテルスルホン(住化ケムテックス社4800P)およびBASF社製PVP(K90)をNMPとTEGの混合液(重量比でNMP:TEG=8:2)にそれぞれ40重量%、7重量%になるよう混合・溶解し、均一な溶液とした。この溶液を紡糸原液として、二重環状スリット口金から吐出すると同時に、紡糸原液に対して非凝固性である流動パラフィンを内液として吐出した。口金から凝固層までの乾式部分を経て凝固層内に紡糸原液/内液を落とし込み凝固させ、中空糸膜として成形した後、洗浄工程、60℃、70重量%のグリセリン付着工程、乾燥工程を経て75m/minの速度でボビンに巻取った。得られた中空糸膜の内径は203μm、膜厚は23μmであった。
得られたボビンから中空糸膜を張力変動の最大が2.7gで解除して中空糸膜束を得た。得られた中空糸膜束を用いて実施例1と同様にして分離膜モジュールを作製した。中空糸膜の空孔率は86%、グリセリン付着率は81%であった。中空糸膜を中空糸膜表面の液滴付着率は13%であった。最大液滴の大きさは28μmであった。端部接着部分の剥離は見られず、合格であった。端部接着部分の溶出性副生成物の測定を行ったところ、UV値は0.094であった。UFRは、1200 ml/(m2・hr・mmHg)であった。本参考例の中空糸膜はUFRや空孔率が大きいことから細孔径も同様に大きく、よってグリセリンが細孔外に滲み出しやすくなっており、UV値が大きくなったものと考える。
本発明の血液浄化用中空糸膜は、チーズから中空糸膜を解除する際の張力変動を管理することでモジュール作製時の歩留まりを高い水準で維持することができる。また、モジュール作成時に生じる中空糸表面の液滴の発生を管理することにより、接着性に優れかつ溶出性副生成物の少ないモジュールを安定して提供することができるという利点を有する。従って、産業界に寄与することが大である。
中空糸膜に付着した液滴の一例を示す写真。 かせ捲き装置の一例を示す模式図。
符号の説明
1 ボビン
2 固定ガイド
3 ダンサーローラー
4 回転ローラー
5 かせ枠

Claims (3)

  1. ノズルより吐出された紡糸原液を凝固浴に浸漬して凝固させ、次いで洗浄工程、グリセリン付与工程、乾燥工程を経てボビンにチーズ状に巻き取られた中空糸膜をボビンから解じょし、多点綛に巻きかえることにより得られた中空糸膜をモジュールケースに装填し、端部を樹脂にて接着した後、樹脂の一部を切断し中空糸膜中空部が開口された、下記の特徴を有する分離膜モジュール。
    (a)ボビンと多点綛との間にダンサーローラーおよび回転ローラーを配し、ダンサーローラーおよび回転ローラー間を走行する中空糸膜のテンション変動を5g以下とする
    (b)中空糸膜の空孔率が65%以上、グリセリン付着率が65%以上である
    (c)中空糸膜表面の液滴付着率が10%以下、中空糸膜表面に外径8μm以上の液滴が存在しない
    (d)分離膜モジュールから切り出した接着部を40℃、200mlの温水中に2時間浸漬して得られた抽出液を50倍希釈した希釈液のUV(242nm)吸光度が0.042以下である
  2. 最高使用圧の1.5倍の圧力を24時間かけた後も接着部分の剥離がみられないことを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
  3. 血液浄化用に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の分離膜モジュール。
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