JP5176499B2 - 多孔質中空糸膜およびその製造方法、および中空糸膜モジュール - Google Patents

多孔質中空糸膜およびその製造方法、および中空糸膜モジュール Download PDF

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水性流体の処理に好適に利用される多孔質中空糸膜に関する。より詳しくは、水処理、血液処理、食品分野など水性流体の処理に好適に使用することができる多孔質中空糸膜およびその製造方法、および中空糸膜モジュールに関する。
従来、中空糸膜は、その製造方法や出荷形態の違い等により、中空部に流動パラフィンやミリスチン酸イソプロピル等の中空糸膜素材に対して不活性な液体または水が充填されたものや液体が充填されていないもの、などが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
また例えば、ポリスルホン系樹脂とポリビニルピロリドンに代表される親水性材料とからなる非対称構造の中空糸膜では、実質的に水を含まない状態でバンドル化された中空糸膜集合体がある。(例えば、特許文献2参照)。
これら、気体や疎水性の液体と接触した状態で保存された中空糸膜集合体では、長期間の保存によって中空糸膜の疎水化が進行し、モジュールに成型後、水性流体でプライミングしても、その直後には十分な性能を発揮できない問題があった。
中空部に流動パラフィンなどの疎水性液体が充填されたチーズでは、膜孔保持と親水性付与のため膜壁部分にグリセリンなどの親水性物質が充填されたものが知られているが、依然、中空部側の膜表面は疎水性の液体と接触しているため、長期間保存時には部分的に疎水化してしまうことが避けられなかった。
特開平5−64730号公報 特開平6−296686号公報
本発明は、上記従来技術に鑑み、長期間の保存や、高温および/または低湿環境での乾燥後も、水性流体でのプライミング直後に速やかに所望の性能を発揮可能な多孔質中空糸膜およびその製造方法、および中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成を含む。
(1)多孔質中空糸膜の紡糸工程に連続して、70〜90重量%のグリセリン水溶液またはグリセリン誘導体水溶液への多孔質中空糸膜の浸漬、液切りを繰り返し行うことで該多孔質中空糸膜の中空部および細孔部に満たされた水をグリセリン水溶液またはグリセリン誘導体水溶液と置換し、引き続き乾燥し、水分率を3〜12重量%に調整された多孔質中空糸膜を充填してなる中空糸膜モジュールであって、温度60℃以下、湿度20%以下で保存されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2)前記中空糸膜モジュールをプライミング処理した際、処理後5分後の透水性であるUFR(A)と処理後30分後の透水性であるUFR(B)との比(UFR(A)/UFR(B))が90%以上であることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜モジュール。
本発明によれば、細孔内部だけでなく、中空部にも親水化剤を充填することによって、従来の空気、窒素ガスなどの気体や、流動パラフィンなどの疎水性流体が充填された中空糸膜に比べて、中空糸膜表面の部分的な疎水化を抑制することができ、このため長期保存や、高温および/または低湿環境下での乾燥後も、水性流体でのプライミング直後に速やかに所望の性能を発揮可能となる。このような利点から本発明の多孔質中空糸膜および中空糸膜モジュールは、水処理、血液処理、食品分野など水性流体の処理に好適に使用することができる。
多孔質中空糸膜の膜壁部分(細孔内部)に加えて、中空部分にも親水化剤を充填することによって、多孔質膜の部分的な疎水化をも抑制することができ、このため長期保存や、高温および/または低湿環境での乾燥後も、水性流体でのプライミング直後に速やかに所望の性能を発揮可能となる。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明においては、多孔質中空糸膜の細孔内部に加えて、中空部にも親水化剤が充填されているのが好ましい。多孔質中空糸膜の細孔内部だけでなく、中空部にも親水化剤を充填し、多孔質中空糸膜の保管あるいはモジュール製造することによって、前記課題を解決できることが検討の結果より見出された。
本発明において、多孔質中空糸膜の細孔内部および中空部に充填する親水化剤としては、グリセリンまたはグリセリン誘導体を用いるのが好ましい。例えば、血液浄化用途の中空糸膜においては従来、孔径保持剤としてグリセリンが用いられ、また膜の親水化剤としてはポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどが用いられている。グリセリンを膜の細孔内に充填した場合には、グリセリンが高粘性液体であること、細孔径が十分小さいことより比較的短時間であれば細孔内からの脱落はほとんどみられず、またプライミング等の洗浄操作により容易に除去可能である。また、安全性の点からも好ましく用いられている。一方、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールは、親水化剤としては好ましく用いられるが、血液中への溶出の問題や孔径保持剤としての利用ができないなどの不利な面がある。
本発明者は、従来孔径保持剤として利用されてきたグリセリンまたはグリセリン誘導体を細孔内部だけでなく中空部にも充填しておくことにより、中空糸膜の製造工程や保管時、中空糸膜モジュール作成時においても中空糸膜の疎水化を抑制できると考えた。しかし、グリセリンを中空部に充填すること自体は容易に可能だが、充填したグリセリンが中空部から脱落、漏洩しないようにするための配慮が必要である。
本発明において、中空部に充填した親水化剤(グリセリン等)の脱落、漏洩を防止するためには、中空糸膜の構造を適正化するとともに、保管時の配慮が必要である。
中空糸膜の構造としては、内表面側に少なくとも緻密層を有することが好ましい。外表面側にも緻密層を有すると二重の防御壁ができるため好ましい。また、緻密層の厚みや細孔径、空隙率を特定の範囲にするのがより好ましい。緻密層の厚みは、中空糸膜の膜厚にもよるが0.1〜5μm程度あればよい。緻密層が薄すぎると欠点が露呈しやすくなり、親水化剤の漏洩に繋がることがあるため0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。緻密層の細孔径は、1〜50nmであることが好ましく、2〜35nmであることがより好ましく、3〜20nmであることがさらに好ましい。緻密層の細孔径が前記範囲であれば、グリセリン等の親水化剤が細孔を通過して膜外に漏洩するのを効果的に防止することができる。
本発明は、種々の用途に利用される多孔質中空糸膜に適用することができるが、特に血液浄化用中空糸膜への適用がより好適である。したがって、多孔質中空糸膜の内径は150μm以上300μm以下とするのが好ましい。中空糸膜の内径が小さすぎると血流の線速度が高くなるため、血球成分がダメージを受ける可能性がある。中空糸膜の内径が大きすぎると血液の剪断速度や圧力損失が高まらず、中高分子量物質の透過に寄与するろ過の効果が小さくなり、また不足する膜性能を補うためにモジュール(血液浄化器)のサイズを大きくしなければならないなど使用の利便性を損なう可能性がある。したがって、中空糸膜の内径は160μm以上280μm以下がより好ましく、170μm以上260μm以下がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜の膜厚は10μm以上50μm未満が好ましい。中空糸膜の膜厚が薄すぎると、透過性能は高まるが必要な強度を維持することが困難な場合がある。また、膜厚が大きすぎると、物質の透過抵抗が大きくなり、除去物質の透過性が不充分となる可能性がある。また、モジュールのサイズを大きくする必要があるなど、使用の利便性を損なう可能性がある。さらに、膜厚が厚すぎると、後述する紡糸製膜段階において、中空形成剤を親水化剤溶液に置換する際の作業性や効率が低下することがある。したがって、中空糸膜の膜厚は13μm以上40μm以下がより好ましく、16μm以上30μm以下がさらに好ましい。
本発明の中空糸膜を得るためには、ポリマー、溶媒、非溶媒からなる紡糸原液および芯液(中空形成材)に凝固性のある液体を使用して、ノズルから同時に吐出し、空走部を通過させた後、凝固浴に導き、中空糸膜形状を固定する。得られた中空糸膜を洗浄浴にて過剰の溶媒、非溶媒を除去し、膜孔保持剤を中空部および細孔内部に含浸させた後、乾燥して巻き取る。
本発明において、中空糸膜を構成する材料(ポリマー)としては、主としてセルロースアセテート系ポリマーを使用するのが好ましい。セルロースアセテート系ポリマーとしては、疎水性と親水性のバランス、補体活性の抑制や血液のクロッティングの無い返血性の良さといった血液適合性の面から水酸基がある程度キャップされたセルロースジアセテートやセルローストリアセテートが入手が容易であり、特に好ましい。
中空糸膜の性能と膜の強度、緻密層の細孔径や厚み、空隙率をバランスさせるためには、紡糸原液中のセルロースアセテート系ポリマー濃度を16重量%以上25重量%以下に設定するのが好ましく、17重量%以上23重量%以下とするのがより好ましい。
本発明において、セルロースアセテート系ポリマーの溶媒としては、N−メチルピロリドン(以下、NMPと称することがある)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用するのが好ましい。これらの溶媒は水と良好な相溶性を有し、セルロースアセテート系ポリマーに対して凝固性を示す。また、非溶媒としてはエチレングリコール、トリエチレングリコール(以下、TEGと称することがある)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、アルコール類などがある。
本発明において、芯液としては前記溶媒、非溶媒および水からなる水溶液が一般に使用できるが、その他に膨潤剤、その他の添加物を含む場合もあり得る。本発明の中空糸膜は、細孔内部だけでなく、中空部にも親水化剤を充填したものである。すなわち、紡糸原液や凝固液に用いる非溶媒として、前記親水化剤を用いるのが作業性、コストの面から好ましいが、これに限定されるものではなく、所望する膜構造や膜性能に合わせ適宜設定すればよい。
セルロースアセテート系ポリマーを原料として使用する場合、前記芯液の水分含量が低すぎると、ポリマーに対する凝固性が低下するため、紡糸原液中のポリマー濃度を高めても緻密層の形成やポロシティが不均一になりやすい。したがって、前記芯液中の水分含量は10質量%以上が好ましい。30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上がさらにより好ましく、水単独で用いるのが特に好ましい。一方、該芯液の水分含量が高くなりすぎるとノズルから吐出された紡糸原液の凝固が急激に進行するために曳糸性が低下し、糸切れや中空糸膜の変形が発生するなどの障害が発生しやすくなる。ここで、本発明においては、従来公知のセルロースアセテート系ポリマーに比較して低粘度のセルロースアセテート系ポリマーを使用しており、理由はよくわからないが、該芯液の水分含量を高めても糸切れの発生のない、良好な紡糸安定性を得られることがわかった。
本発明の中空糸膜の構造を決定する因子として、紡糸原液中のポリマー濃度やノズル温度などが影響するが、加えてノズルから吐出された紡糸原液が凝固浴に浸漬されるまでの間の空中走行部の長さ(時間)にも影響を受ける。本発明において、空中走行部の長さは10mm以上600mm以下とするのが好ましい。また、空中走行部を外気と遮断し、内部を0℃以上50℃以下に設定することが好ましい。空中走行部の長さと温度を前記範囲とすることにより、中空糸膜外表面近傍の膜構造を親水化剤の漏洩防止性と膜性能とのバランスを良好に保つことができる。一方、紡糸原液の内表面側では外表面側からの脱溶媒の影響を受けるより前に、芯液によるポリマーの凝固を完了させ緻密層を形成させることが可能となる。
紡糸製膜の安定性を高めるためには、空中走行部の長さは10mm以上300mm以下がより好ましく、紡糸口金からの紡糸原液の吐出斑の影響を相殺するには10mm以上150mm以下がさらに好ましい。空中走行部の温度はコントロールが容易な点で3℃以上45℃以下が好ましく、性能面で有用タンパクの漏れ量を抑制するには5℃以上40℃以下がより好ましい。
空中走行部の長さと温度は、ノズルドラフトや紡糸速度により適正範囲が変わるものであって、本発明の範囲はノズルドラフトが1〜5程度、紡糸速度が30〜90m/min.の場合を想定している。
本発明において、適正な中空糸膜構造を得るためには凝固浴の条件を適正化することも重要な要件の1つである。外表面側の空隙率や開孔径を小さくするためには凝固浴中の溶媒濃度を低くし、温度を低くすることが有効である。凝固浴中の溶媒濃度は50重量%以上80重量%以下、凝固浴温度は20℃以上70℃以下が好ましい。凝固浴からの中空糸膜の曳きだし性および空中走行部の温度コントロールの容易性を確保する面から、溶媒濃度は55重量%以上77重量%以下、凝固浴温度は30℃以上50℃以下がより好ましく、溶媒濃度が60重量%以上75重量%以下、凝固浴温度が35℃以上45℃以下がさらに好ましい。
凝固浴から曳き出した中空糸膜は、引き続き水洗浴にて過剰の溶媒、非溶媒を除去するために洗浄を行う。短時間に洗浄を行うためには、水洗浴の温度を出来るだけ高くする方がよい。しかし、温度が高すぎると、膜構成材料の劣化や膜形状、膜構造に欠陥が生じる可能性もあるので、30〜90℃程度で洗浄を行うのが好ましく、40〜90℃がより好ましく、50〜85℃がさらに好ましい。
水洗工程を経た中空糸膜は続いて、細孔内部および中空部への親水化剤の充填工程へ移行させる。本発明においては、グリセリン水溶液への多孔質中空糸膜の浸漬、液切りを繰り返し行うことで、細孔内部への親水化剤であるグリセリン水溶液を充填すると同時に、該多孔質中空糸膜の中空部に満たされた中空形成剤をグリセリン水溶液と置換する。ここで、グリセリンの濃度は70〜95重量%とするのが好ましい。グリセリン濃度が低すぎると、後段の中空糸膜乾燥工程における水分蒸発に伴う細孔径の縮小や中空糸膜形状の変形(潰れ、偏平化)が起こる可能性がある。また、グリセリン濃度が高すぎると、流動性が低下するために充填や置換が不十分になることがある。したがって、グリセリン濃度は75〜93重量%がより好ましく、80〜90重量%がさらに好ましい。
グリセリン水溶液の温度は、グリセリン濃度にもよるが、前記範囲であれば、80〜95℃程度が好ましい。このような温度範囲であれば、グリセリン水溶液の流動性が確保され、充填性や置換性の面で好ましい。
本発明において、グリセリン水溶液への浸漬、液切りの各時間や頻度は、中空糸膜の内径や膜厚、膜構造にも関係するので一概には言えないが、内径150〜300μm、膜厚10〜50μm程度であれば、浸漬、液切りを各3〜10秒程度、浸漬、液切りを1工程として3〜10回程度行えば足りるといえる。
細孔内部および中空部にグリセリン水溶液が充填された中空糸膜は、乾燥工程を経てボビンにチーズ状に巻き取る。ここで、乾燥後の中空糸膜の水分率は13重量%以下に調整することが好ましい。水分率が高すぎると、中空糸膜を保管する際に雰囲気中の水分を吸湿し、漏洩や脱落の原因となる。また、中空糸膜モジュールを作成する際の中空糸膜端部封止に使用するウレタン等の樹脂と水が反応して発泡するとか、ウレタンオリゴマーなどの副生成物が生ずるなどの不具合が生じることがある。逆に、水分率が低すぎると、却って吸湿性が高まるため保管条件をシビアにコントロールする必要が生じる。したがって、乾燥後の中空糸膜の水分率は3〜12重量%がより好ましく、4〜11重量%がさらに好ましく、5〜10重量%がさらにより好ましい。
上記、得られた中空糸膜を複数本束ね、ハウジングケースに挿入し、端部を樹脂にて接着する際、ウレタン系接着剤を使用する。該ウレタン系接着剤に関しては主剤としてポリオール、硬化剤としてポリイソシアネートを使用しウレタン結合により硬化反応が進行するものであれば特に限定はなく、またポリイソシアネート成分として芳香族系のもの、脂肪族系のものがあるが、いずれも使用することができる。樹脂の取り扱い性や用途に応じて求められる特性等を考慮して、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を適宜選択するのが好ましい。
本発明の多孔質中空糸膜および該多孔質中空糸膜を収納したモジュールは、温度60℃以下程度、湿度20%以下程度で保管するのが好ましい。温度が高すぎたり、湿度が高すぎると、中空糸膜の水分率を前記した範囲に調整したとしても、保管中の吸湿、ひいては吸湿による親水化剤の流動性が増すことにより、中空部や細孔内部から親水化剤が脱落、漏洩することがある。親水化剤が脱落、漏洩すると、細孔の収縮や中空糸膜形状の変形などにつながり、性能低下や品質低下の原因となることがある。
本発明の方法によって得られる多孔質中空糸膜は、特に内表面の疎水化抑制の手段を講じているため、使用時のプライミング性(再湿潤性)に優れる。具体的には、プライミング処理後5分後の透水性(UFR(A))とプライミング処理後30分後の透水性(UFR(B))との比(UFR(A)/UFR(B))が90%以上であるのが好ましい。例えば、多孔質中空糸膜を血液浄化用途に使用する場合、透析施設においてプライミング処理から臨床使用までの時間は最短でおよそ5〜10分程度である。このような施設においてはプライミング直後より所期性能を発現する必要が生ずる。したがって、UFR(A)/UFR(B)は93%以上であるのがより好ましく、96%以上であるのがさらに好ましい。
従来、ポリスルホン系高分子からなる多孔質中空糸膜に代表されるように、中空糸膜の親水性を改善(向上)させるために、ポリビニルピロリドン(PVP)やポリエチレングリコール等の親水性成分を添加した中空糸膜が知られている。しかし、PVPは高分子量の親水性材料であるため容易に血液中に溶出し、高分子量であるが故に生体内に蓄積するという問題がある。本発明の中空糸膜は、親水化剤としてグリセリンまたはグリセリン誘導体を使用するので、血液浄化用途などに使用した際にも、プライミング処理において速やかに洗い流され、生体への悪影響の懸念がない。
以下、実施例にて本発明の好ましい実施態様を説明する。ただし、本発明はこれに何ら限定されるものではない。
(中空糸膜の膜厚測定)
倍率200倍の投影機で中空糸膜の断面を投影し、各視野内で最大、最小、中程度の大きさの中空糸の内径(A)および外径(B)を測定し、各中空糸の膜厚を次式で求め、
膜厚=(B−A)/2
1視野15個の中空糸膜の平均を算出する。
(中空糸膜内表面の細孔径)
中空糸膜内表面を10万倍の電子顕微鏡で観察し、写真(SEM写真)を撮影する。その画像を画像解析ソフトで処理して、中空糸膜内表面の細孔径を求める。画像解析ソフトは、例えばImage Pro Plus(Media Cybernetics,Inc.)を使用して測定する。取り込んだ画像を孔部と閉塞部が識別されるように強調・フィルタ操作を実施する。その後、孔部の細孔径を測定し、孔内部に下層のポリマー鎖が見て取れる場合には、孔を結合して一孔とみなして測定する。これを10視野実施してその平均を求める。初期操作としてスケール設定を実施する。
(緻密層厚みの測定)
本発明における中空糸膜の緻密層の厚みは、以下のようにして求めた。
中空糸膜断面を3000倍の倍率で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察を行い、明らかに孔、ボイドが観察されない部分を緻密層と定義し、その部分の厚みを測定した。
(中空糸膜モジュールのプライミング)
中空糸膜モジュールを縦置きにし、イオン交換し水を流量100ml/minで中空部側に流し始め十分に気泡を除去し、1000ml以上のイオン交換水を流し終わったら、中空部出口側から中空糸外側部分へ回路を接続し、5分間流す。
(中空糸膜の透水性の測定)
透水性の測定に関しては、以下の手順で実施する。
中空糸膜を3000〜20000本充填した中空糸膜モジュールを作製する。計算に用いる中空糸膜面積は、中空糸内径(ID)基準とし、接着部分を除いた有効長(L)から有効膜面積を計算する。予め純水を中空糸膜内部(中空部)、中空糸膜外部(モジュール内)の順に通水し、気泡を除去する。モジュールおよび内部に充填された純水を37℃に調整した後、中空糸膜内部(中空部)に通じるモジュール入口から37℃の純水によって圧力をかけて、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差(P)を生じせしめ、1分間に膜を通して膜外側に出てくる純水の量(W)を測定する。4点の異なったPにおける1分間のWを測定し、PとWを2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを数値として求める。次に下記式により中空糸膜の透水性(UFR、ml/(m・h・mmHg))を計算する。UFR=W(ml/min)×60(min/h)÷A(m)÷P(mmHg)ここで、有効膜面積A(m)=ID(μm)×10−6×π×L(m)×中空糸本数である。
(中空糸膜の水分率)
本発明における多孔質中空糸膜の水分率は、以下の式により計算した。
水分率%=100×(Ww−Wd)/Wd
ここで、Wwは乾燥前の中空糸膜重量(g)、Wdは、120℃の乾熱オーブンで2時間以上乾燥後(絶乾後)の中空糸膜重量(g)である。
(実施例1)
紡糸原液として、セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社製)19.0重量%、N‐メチル‐2‐ピロリドン(三菱化学社製)68.9重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)12.1重量%を180℃にて混合溶解した。これを公知の方法で脱泡した後、焼結フィルターに通し、2重管構造の紡糸用口金の外管から垂直下方に向け吐出した。同時に内管には逆浸透処理水(RO水)を芯液として供給した。紡糸用口金から吐出された中空糸は13mmの空走部分を通過後、凝固浴、水洗浴、グリセリン浴を経て、オンライン乾燥された後、ワインダーによって60m/分の巻上げ速度でボビンにチーズ状に巻き取った。凝固浴の組成はNMP/TEG/水=59.5/10.5/30.0、温度は45℃に設定した。グリセリン浴中のグリセリン濃度は88.0重量%とし、温度は92℃に設定した。また、浸漬と液切りを3回繰り返すことにより、中空部に満たされた中空形成剤をグリセリン水溶液と完全に置換した。乾燥後の中空糸膜の内径、膜厚はそれぞれ203μm、20μmであった。また、乾燥後の中空糸膜水分率は12重量%であった。得られた中空糸膜を10,200本集束し、切断してハウジングケースに挿入した。端部をウレタン接着剤を用いて接着し、作製した中空糸膜モジュールを、60℃、湿度20%以下の条件で12時間放置後、イオン交換水にてプライミングを実施し、プライミング後5分、30分、60分、180分、12時間後に透水性を測定した。
(実施例2)
紡糸原液として、セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社製)20.0重量%、N‐メチル‐2‐ピロリドン(三菱化学社製)64.0重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)16.0重量%を180℃にて混合溶解した。これを公知の方法で脱泡した後、焼結フィルターに通し、2重管構造の紡糸用口金の外管から垂直下方に向け吐出した。同時に内管にはRO水を芯液として供給した。紡糸用口金から吐出された中空糸は25mmの空走部分を通過後、凝固浴、水洗浴、グリセリン浴を経て、オンライン乾燥された後、ワインダーによって60m/分の巻上げ速度でボビンに巻き取った。凝固浴の組成はNMP/TEG/水=56.0/14.0/30.0、温度は55℃に設定した。グリセリン浴中のグリセリン濃度は78.0重量%とし、温度は80℃に設定した。また、浸漬と液切りを3回繰り返すことにより、中空部に満たされた中空形成剤をグリセリン水溶液と完全に置換した。乾燥後の中空糸膜の内径、膜厚はそれぞれ198μm、22μmであった。また、乾燥後の中空糸膜水分率は6重量%であった。得られた中空糸膜を10,200本集束し、切断してハウジングケースに挿入した。端部をウレタン接着剤を用いて接着し、作製した中空糸膜モジュールを、60℃、湿度20%以下の条件で12時間放置後、イオン交換水にてプライミングを実施し、プライミング後5分、30分、60分、180分、12時間後に透水性を測定した。
(比較例1)
実施例1と同様にして中空糸膜を得た。得られた中空糸膜を温度60℃、湿度80%の環境下に24時間放置後、中空糸膜をハウジングケースに挿入し端部をウレタン系接着剤を用いて接着した。接着剤硬化部を観察すると、接着剤の発泡が確認され、品質面で問題があった。また、発泡による接着不良が原因と思われるリークの発生もみられた。
(比較例2)
紡糸原液として、セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社製)18.0重量%、N‐メチル‐2‐ピロリドン(三菱化学社製)57.4重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.6重量%を180℃にて混合溶解させたものを用いた。これを焼結フィルターに通した後、2重管構造の紡糸用口金から垂直下方に向け吐出した。同時に内側の管には流動パラフィンを芯液として供給し、中空糸膜を形成した。この中空糸膜は60mmの蒸気雰囲気中を通過後、凝固浴、水洗浴、グリセリン浴を経て、オンライン乾燥した後、75m/分の巻上げ速度でボビンに巻き取った。グリセリン濃度は65.0重量%とし、浴温度は85℃に設定した。本比較例においては、中空形成材(芯液)として疎水性液体である流動パラフィンを用いているため、中空糸膜中空部にグリセリンが充填されなかった。乾燥後の中空糸膜の内径、膜厚はそれぞれ200μm、17μmであった。また、乾燥後の中空糸膜水分率は12重量%であった。得られた中空糸膜を10,200本集束し、切断してハウジングケースに挿入した。端部をウレタン接着剤を用いて接着し、作製した中空糸膜モジュールを、60℃、湿度20%以下の条件で12時間放置後、イオン交換水にてプライミングを実施し、プライミング後5分、30分、60分、180分、12時間後に透水性を測定した。
実施例と比較例の結果をあわせて表1に示す。
Figure 0005176499
上記、実施例と比較例との比較により、本発明の多孔質中空糸膜の中空部および細孔内部に親水化剤が充填されてなる中空糸膜および中空糸膜モジュールは、中空糸膜内表面の疎水化抑制に配慮がなされているので、標準的なプライミング処理における湿潤性に優れ、すなわち透水性の発現性に優れていることがわかる。
本発明の多孔質中空糸膜は、細孔内部だけでなく中空部にも親水化剤が充填されているので、中空糸膜またはモジュール状態での長期間の保存や高温、低湿度環境下においても、中空糸膜の疎水化を効果的に抑制できており、種々の保存期間や保存状態、各種用途において所期性能の発現性に優れている。

Claims (2)

  1. 多孔質中空糸膜の紡糸工程に連続して、70〜90重量%のグリセリン水溶液またはグリセリン誘導体水溶液への多孔質中空糸膜の浸漬、液切りを繰り返し行うことで該多孔質中空糸膜の中空部および細孔部に満たされた水をグリセリン水溶液またはグリセリン誘導体水溶液と置換し、引き続き乾燥し、水分率を3〜12重量%に調整された多孔質中空糸膜を充填してなる中空糸膜モジュールであって、温度60℃以下、湿度20%以下で保存されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  2. 前記中空糸膜モジュールをプライミング処理した際、処理後5分後の透水性であるUFR(A)と処理後30分後の透水性であるUFR(B)との比(UFR(A)/UFR(B))が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
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