JP5022336B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents
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図31の(a)に示すように、パイロット燃料噴射に対してケースA,B,Cに示すような3種類の時間差でメイン燃料噴射を行うと、図31の(b)に示すように、パイロット燃料噴射後のケースA,B,Cそれぞれのメイン燃料噴射の噴射開始時期の高圧燃料供給通路圧力が大きく変動していることが分かる。Aのケースの圧力挙動曲線とCのケースの圧力挙動曲線とではメイン燃料噴射の噴射開始時期の圧力差が10MPaもあり、若し、メイン燃料噴射の噴射時間を同じとすると、実際に噴射される量に差が出るのは明らかである。ちなみに、図30の(b)におけるDのケースの圧力挙動曲線は、パイロット燃料噴射だけの場合の参考的な圧力挙動曲線である。
また、個々の燃料噴射弁の噴射特性の経年変化に対する考慮がなされていないという課題もあった。
制御部は、差圧センサからの信号にもとづいてオリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、前段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮することにより、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
制御部は、蓄圧部圧力センサからの信号及び前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて、オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、前段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、蓄圧部圧力センサからの信号と燃料供給通路圧力センサからの信号からオリフィス差圧は容易に算出され、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮することにより、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
制御部は、燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて燃料噴射弁からの燃料の噴射に伴う圧力低下量を検出し、その圧力低下量にもとづいてオリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、前段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮することにより、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
制御部は、差圧センサからの信号にもとづいてオリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報と、予め記憶されたバックフローに係るバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、前段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮するとともに、予め記憶されたバックフローに係るバックフロー情報にもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
制御部は、蓄圧部圧力センサからの信号及び燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて、オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報と、バックフローに係る予め記憶されたバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、蓄圧部圧力センサからの信号と燃料供給通路圧力センサからの信号からオリフィス差圧は容易に算出され、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮するとともに、予め記憶されたバックフローに係るバックフロー情報にもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
制御部は、燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて燃料噴射弁からの燃料の噴射に伴う圧力低下量を検出し、その圧力低下量にもとづいてオリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、検出された実燃料供給情報と、予め記憶されたバックフローに係るバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、当該気筒の当該同一サイクルでの複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の実燃料噴射情報にもとづいて、前段燃料噴射における実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、当該気筒の当該同一サイクルでの前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の燃料噴射情報を決定することを特徴とする。
そして、オリフィス差圧から燃料のオリフィス通過流の検出開始タイミング、オリフィス通過流の検出終了タイミング、オリフィス通過流量率、オリフィス通過流量等の実燃流供給情報を検出することができる。そして、燃料噴射弁の燃料噴射孔からオリフィスまでの燃料供給通路の長さを考慮するとともに、予め記憶されたバックフローに係るバックフロー情報にもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、容易に燃料噴射弁の実際の噴射開始時期、噴射終了時期、燃料噴射率、燃料噴射量等の実燃料噴射情報を得ることができる。
特に、オリフィス下流側に配置された燃料供給通路圧力センサの信号にもとづくので、他気筒での燃料噴射や燃料ポンプによる吐出による燃料蓄圧部の圧力変動の影響が少ないので、仮に燃料蓄圧部の圧力信号を用いる場合よりも正確な後段燃料噴射の制御ができる。
以下に、本発明の第1の実施形態に係る燃料噴射装置について図1を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図である。
本実施形態の燃料噴射装置1Aは、エンジン制御装置(制御部)80A(以下ECU80Aと称する)により電子制御されるモータ63によって駆動される低圧ポンプ3A(フィードポンプとも呼ばれる)及びエンジンクランク軸から取り出された駆動力で機械的に駆動される高圧ポンプ3B(サプライポンプとも呼ばれる)と、この高圧ポンプ3Bから高圧燃料が供給されるコモンレール(燃料蓄圧部)4と、内燃機関、例えば、4気筒のディーゼルエンジン(以下エンジンと呼ぶ)の各気筒41の燃焼室内に高圧燃料を噴射供給するインジェクタ(燃料噴射弁)5Aと、ECU80Aにより電子制御されるインジェクタ5Aに内蔵のアクチュエータ6Aを含んで構成される。
ここで、低圧ポンプ3A及び高圧ポンプ3Bは請求項に記載の燃料ポンプに対応する。
低圧燃料供給配管61のストレーナ64と流量調整弁69との中間から分岐した戻り配管65が、調圧弁67を経由して低圧ポンプ3Aの過剰な燃料供給を燃料タンク2に戻すようになっている。
高圧ポンプ3Bには、吐出される燃料温度を検出する燃料温度センサSTfが設けられ、その信号をECU80Aに出力している。
ここで、最大実燃料供給量は、多段噴射の場合はその積分量である。
エンジンの各気筒のインジェクタ5Aまでの高圧燃料供給通路21の長さに配管引き回し設計上差が生じるのは当然であり、高圧燃料供給通路21の前記オリフィス75を設ける位置は、前記した燃料通路容積を確保した上で、各気筒が同じ燃料通路容積となるように適宜調節する。
なお、以下では燃料噴射量は単に「噴射量」と、目標燃料噴射量は単に「目標噴射量」、実燃料噴射量は単に「実噴射量」と称する。
図2は、本実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置に用いられるエンジン制御装置の機能ブロック図であり、図3は、目標噴射量Qiに対する噴射時間Tiを決定するための二次元マップの構成概念図であり、図4は、噴射時間の補正係数を取得するための目標噴射量、噴射時間及びコモンレール圧力をパラメータとした補正係数のマップの構成概念図であり、(a)は、パイロット燃料噴射の補正係数の三次元マップの構成概念図、(b)は、メイン燃料噴射の補正係数の三次元マップの構成概念図である。
ちなみに、前記マイクロコンピュータのCPUとしては、演算速度が速い、例えば、マルチコアタイプのCPUであることが望ましい。
なお、モータ63を駆動するモータ駆動回路を、ECU80Aが含んでも良いし、ECU80Aの外部に別個設けても良い。
以下では、ECU80Aに含まれるマイクロコンピュータで制御される内容を、単にECU80Aの制御として表現する。また、後記する第2から第6の実施形態におけるECU80B〜80Fのハード的な構成もECU80Aと同じである。
前記ECU80Aにおけるエンジン制御の基本的な処理の概要は、図2の機能ブロック図に示されている。要求トルク演算部801において、アクセル開度θthとエンジン回転速度Neにもとづいて要求トルクTrqsolを算出する。目標噴射量演算部802において、エンジン回転速度Neと前記算出された要求トルクTrqsolとにもとづいて目標噴射量Fsolを算出する(図2中、目標噴射量演算部802へのエンジン回転速度Neの信号は省略)。気筒41(図1参照)ごとに設けられた噴射制御部805A,805B,805C,805Dにおいて、エンジン回転速度Ne、前記算出された要求トルクTrqsol、前記算出された目標噴射量Fsol、TDC信号、クランク角信号、コモンレール圧力センサSPc(図1参照)からのコモンレール圧Pc等にもとづき多段噴射のモード選択、個別の燃料噴射の目標噴射量と噴射開始指令時期を決定し、目標噴射量に応じた補正された噴射時間を決定し、噴射終了指令時期を決定し、噴射開始指令時期と噴射終了指令時期の設定を行い、噴射指令信号としてアクチュエータ駆動回路806A、806B,806C,806Dに出力し、各インジェクタ5Aのアクチュエータ6Aを駆動する。
以下では、多段噴射の例としてパイロット燃料噴射とメイン燃料噴射とに2回に分けて燃料噴射する場合について説明する。
噴射制御部805A,805B,805C,805Dの詳細な構成とその作用については、後記する。
なお、噴射制御部805B,805C,805Dにもエンジン回転速度Ne、要求トルクTrqsol及びコモンレール圧力Pcの信号が入力されるが、図が煩雑になる関係で省略してある。
なお、コモンレール圧力演算部803へのエンジン回転速度Neの信号入力も省略してある。
次に、噴射制御部805A,805B,805C,805Dについて図2を参照しながら説明する。
図2に示すように、各噴射制御部805A,805B,805C,805Dは、多段噴射制御部810、実燃料供給情報検出部(実燃料供給情報検出手段)813、実燃料噴射情報検出部(実燃料噴射情報検出手段)814を含んでいる。そして、多段噴射制御部810は、更に多段噴射モード制御部811、個別噴射情報設定部812を含んでいる。
多段噴射モード制御部811は、例えば、エンジン回転速度Ne、要求トルクTrqsolにもとづいてパイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の2段噴射とするかメイン燃料噴射のみの1段噴射にするかを決定する。そして、多段噴射モード制御部811は、多段噴射モードか1段噴射可のモードによって、実燃料供給情報検出部813における後記する実燃料供給情報の検出方法を制御する。
具体的には、前記ECU80Aには、目標噴射量Qi及びコモンレール圧Pcの変化における、実験的に決定された最適な噴射時間Tiを記録した二次元マップ812aが前記したECU80Aを構成するROM上に電子的に格納されている。
更に、個別噴射情報設定部812は、図4の(b)に示すように、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、噴射時間TiM、コモンレール圧力Pcをパラメータとするメイン燃料噴射の噴射時間TiMを補正する補正係数KMの三次元マップ812cを有しており、補正係数KMをこの三次元マップ812cに登録して学習更新できるようになっている。
具体的には、前記ECU80Aには、パイロット燃料噴射の噴射時間TiP、目標噴射量FPsol及びコモンレール圧Pcの変化における、初期設定された補正係数KPを記録した三次元マップ812bと、メイン燃料噴射の噴射時間TiM、目標噴射量FMsol及びコモンレール圧Pcの変化における、初期設定された補正係数KMを記録可能にした三次元マップ812cとがそれぞれ前記したECU80Aを構成する不揮発メモリ上に電子的に格納されている。
個別噴射情報設定部812は、パイロット燃料噴射の目標噴射量FPsolの所定区間、パイロット燃料噴射の噴射時間TiPの所定区間、コモンレール圧力Pcの所定区間の単位三次元空間に含まれるという条件のときに、個別噴射情報設定部812で得られたパイロット燃料噴射の目標噴射量FPsolと、実燃料噴射情報算出部814から得られた後記する実噴射量QiPsumの比KPを補正係数として、所定個数を時系列的にその単位三次元空間に対応づけて登録する。そして、個別噴射情報設定部812において、パイロット燃料噴射の目標噴射量FPsolに対して噴射時間の二次元マップ812aを参照してパイロット燃料噴射の噴射時間TiPが算出されたとき、補正係数KPの三次元マップ812bを参照して補正係数KPの移動平均〈KP〉を取得し、補正係数KPの移動平均〈KP〉を乗じて、補正されたパイロット燃料噴射の噴射時間TiP(=TiP×〈KP〉)を得て用いる。
以下では、補正係数KPの移動平均〈KP〉を単に補正係数〈KP〉と称する。
以下では、補正係数KMの移動平均〈KM〉を単に補正係数〈KM〉と称する。
個別噴射情報設定部812における補正係数KPの三次元マップ812bと補正係数KMの三次元マップ812cの更新の方法は、図5から図9のフローチャートの中で説明する。
実燃料供給情報検出部813は、メイン燃料噴射に対しても同様に、オリフィス差圧ΔPORの信号にもとづいて、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、オリフィス通過流の検出終了タイミングtOREMを検出し、燃料温度センサSTfからの燃料温度Tfの信号とオリフィス差圧ΔPORの信号とにもとづいてオリフィス通過流量率QORを算出し、最終的にオリフィス通過流量率QORを時間積分してオリフィス通過流量QMsumを算出する。
次に、図5から図9を参照しながら噴射制御部805(図2中、805A,805B,805C,805Dと表示)における制御について説明する。図5から図9は、噴射制御部805A,805B,805C,805Dにおける噴射制御の流れを示すフローチャートである。この噴射制御は、噴射制御部805A,805B,805C,805Dにおいて、TDC信号及びクランク角信号にもとづいて気筒41(図1参照)ごとにタイミング調整されて実行される。ここでは、1つの気筒41の燃焼室への噴射制御の流れについて説明する。
ここで、パイロット燃料噴射の「燃料噴射情報」とは、パイロット燃料噴射の目標噴射量FPsol、噴射開始指令時期tSP、噴射時間TiP、噴射終了指令時期tEP等を含む総称であり、メイン燃料噴射の「燃料噴射情報」とは、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、噴射開始指令時期tSM、噴射時間TiM、噴射終了指令時期tEM等を含む総称である。
ステップS112では、個別噴射情報設定部812が、エンジン回転速度Ne、要求トルクTrqsolからパイロット燃料噴射の目標噴射量FPsol、噴射開始指令時期tSP、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、噴射開始指令時期tSMを決定する。
特に高圧燃料供給通路21のコモンレール4寄りにオリフィス75を設けることにより、他気筒の燃料噴射によるコモンレール圧力Pcの脈動及びオリフィス75の下流側の高圧燃料供給通路21の圧力の脈動は早く整定することが分かっている(特願2008−165383の図19参照方)。
ここで、正のオリフィス差圧ΔPORとは、コモンレール4側からインジェクタ5A側への燃料の流れを生じたときに発生するオリフィス差圧ΔPORであり、逆方向の燃料の流れを生じたときに発生するのが負のオリフィス差圧ΔPORである。
このステップS121のチェックは、差圧センサSdPからの信号のノイズ以上のオリフィス差圧ΔPORの信号という意味と、燃料噴射に伴うオリフィス差圧ΔPORであることをチェックするものである。
ちなみに、オリフィス差圧ΔPORから燃料のオリフィス通過流量率QORは次式(1)により容易に算出できる。
このステップS126のチェックは、差圧センサSdPからの信号のノイズ以上のオリフィス差圧ΔPORの信号という意味と、燃料噴射の終了に伴う反射波によるオリフィス差圧ΔPORであることをチェックするものである。
ここでのステップS123〜S126の処理は、例えば、数μsec〜数十μsecの周期で行われ、Δtはオリフィス差圧ΔPORをサンプリングする周期であり、数μsec〜数十μsecである。
ステップS128では、実燃料噴射情報検出部814が、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSP、検出終了タイミングtOREPをパイロット燃料噴射の噴射開始時期、終了時期に換算し、オリフィス通過流量QPsumをパイロット燃料噴射の実噴射量QiPsumとする。そして、パイロット燃料噴射の実噴射量QiPsum、噴射開始時期、終了時期は、個別噴射情報設定部812に入力される。
ちなみに、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSP及び検出終了タイミングtOREPを、パイロット燃料噴射の噴射開始時期、終了時期に換算することは、例えば、オリフィス通過流量率QORの平均値〔QPsum/(tOREP−tORSP)〕と高圧燃料供給通路21の流路断面積から平均流速が求まり、燃料通路の長さを考慮すれば容易に求められる。
ここで、パイロット燃料噴射の実噴射量QiPsum、噴射開始時期、終了時期は、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
そして、ステップS130では、実燃料供給情報検出部813が、タイマtをリセットする。ステップS130の後、結合子(B)に従って、ステップS131へ進む。
次いで、ステップS132では、個別噴射情報設定部812が、ステップS112で決定されたパイロット燃料噴射の目標噴射量FPsol、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、及びステップ128で実燃料噴射情報検出部814から入力されたパイロット燃料噴射の実噴射量QiPsumにもとづき、メイン燃料噴射の補正された目標噴射量FMsol*を算出する〔FMsol*=FMsol+(FPsol−QiPsum)〕。
ステップS133では、個別噴射情報設定部812は、補正されたメイン燃料噴射の目標噴射量FMsol*の補正前の目標噴射量FMsolに対する絶対値パーセント表示の偏差量が所定の閾値ε1以上か否かをチェックする。偏差量が所定の閾値ε1以上の場合(Yes)は、ステップS134に進み、偏差量が所定の閾値ε1未満の場合(No)は、ステップS135に進む。
ここで所定の閾値ε1は、実噴射量QiPsumの計測誤差程度の値であり、計測誤差以上の場合が有意な補正として、補正されたメイン燃料噴射の目標噴射量FMsol*を用いることにするものである。
ステップS135では、個別噴射情報設定部812が、ステップS131で設定したメイン燃料噴射の噴射開始指令時期tSM直近のコモンレール圧力Pc*、ステップS112で設定されたメイン燃料噴射の目標噴射量FMsolにもとづいて、二次元マップ812aを参照してメイン燃料噴射の噴射時間TiMを決定する。次いで、ステップS136では、個別噴射情報設定部812が、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、噴射時間TiM、噴射開始指令時期tSM直近のコモンレール圧力Pc*にもとづいて、三次元マップ812cを参照し、補正係数〈KM〉を決定する。
ここで、メイン燃料噴射の噴射開始指令時期tSM直近のコモンレール圧力Pc*は、演算時間を考慮して噴射開始指令時期tSMから所定の短時間、例えば、演算周期の数μsec〜数十μsecだけ遡った時点のコモンレール圧力Pcである。
オリフィス差圧ΔPORから燃料のオリフィス通過流量率QORは前記した式(1)により容易に算出できる。
ステップS147では、実燃料供給情報検出部813が、噴射指令信号からメイン燃料噴射の噴射終了を受信したか否かをチェックする。メイン燃料噴射の噴射終了を受信した場合(Yes)は、ステップS148へ進み、受信していない場合(No)はステップS145へ戻り、ステップS145〜ステップS147を繰り返す。ステップS148では、実燃料供給情報検出部813が、差圧センサSdPからのオリフィス差圧ΔPORの信号にもとづいて、所定閾値以上の負のオリフィス差圧ΔPORを検出したか否かをチェックする。所定閾値以上の負のオリフィス差圧を検出した場合(Yes)は、ステップS149へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS145へ戻り、ステップS145〜ステップS148を繰り返す。
このステップS148のチェックは、差圧センサSdPからの信号のノイズ以上のオリフィス差圧ΔPORの信号という意味と、燃料噴射の終了に伴う反射波によるオリフィス差圧ΔPORであることをチェックするものである。
ここでのステップS145〜S148処理は、例えば、数μsec〜数十μsecの周期で行われ、Δtはオリフィス差圧ΔPORをサンプリングする周期であり、数μsec〜数十μsecである。
ステップS150では、実燃料噴射情報検出部814が、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、検出終了タイミングtOREMをメイン燃料噴射の噴射開始時期、終了時期に換算し、オリフィス通過流量QMsumをメイン燃料噴射の実噴射量QiMsumとする。そして、メイン燃料噴射の実噴射量QiMsum、噴射開始時期、終了時期は、個別噴射情報設定部812に入力される。
ちなみに、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM及び検出終了タイミングtOREMを、メイン燃料噴射の噴射開始時期、終了時期に換算することは、例えば、例えば、オリフィス通過流量率QORの平均値〔QMsum/(tOREM−tORSM)〕と高圧燃料供給通路21の流路断面積から平均流速が求まり、燃料通路の長さを考慮すれば容易に求められる。
ここで、メイン燃料噴射の実噴射量QiMsum、噴射開始時期、終了時期も、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
ステップS150の後、結合子(D)に従って、ステップS151へ進む。
そして、ステップS152では、実燃料供給情報検出部813が、タイマtをリセットし、1つの気筒41(図1参照)における一連のパイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の制御が終了する。
ステップS163では、個別噴射情報設定部812が、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsol、噴射時間TiM、コモンレール圧力Pcにもとづいて、三次元マップ812cを参照し、補正係数〈KM〉を決定する。その後、結合子(F)に従ってステップS137へ進む。
図10は、1つの気筒に対してパイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の噴射指令信号を出すときの、高圧燃料供給通路における燃料挙動の時間推移を示す図であり、(a)は、噴射指令信号のパターンを示す図、(b)は、インジェクタからの実燃料噴射率の時間推移を示す図、(c)は、燃料のオリフィス通過流量率の時間推移を示す図、(d)は、オリフィスの上下流側の圧力変化の時間推移を示す図である。
図10の(a)では、時間t1が噴射開始指令時期、時間t3が噴射終了指令時期である噴射時間TiPのパイロット燃料噴射の噴射指令信号の後に、時間t5が噴射開始指令時期、時間t7が噴射終了指令時期である噴射時間TiMのメイン燃料噴射の噴射指令信号が出されている。
ここで、メイン燃料噴射の噴射指令信号の噴射開始指令時期t5、噴射終了指令時期t7、噴射時間TiMが、請求項に記載の「後段燃料噴射の燃料噴射情報」に対応する。
ここで、噴射開始時期t2、噴射終了時期t4、実噴射量QiPsumが、パイロット燃料噴射の、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応し、噴射開始時期t6、噴射終了時期t6、実噴射量QiMsumが、メイン燃料噴射の、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
パイロット燃料噴射による燃料のオリフィス75を通過するオリフィス通過流量率は、図10の(c)に示すように、インジェクタ5A(図1参照)内の図示しない燃料通路や高圧燃料供給通路21(図1参照)の容積分だけパイロット燃料噴射の噴射開始時期t2より遅れたt2’(前記した図6のフローチャートのオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSPに対応)から立ち上がり、同様に燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけ噴射終了時期t4より遅れてt4’(前記した図6のフローチャートのオリフィス通過流の検出終了タイミングtOREPに対応)にゼロに戻る。そして、メイン燃料噴射によるオリフィス通過流量率は、インジェクタ5A内の図示しない燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけメイン燃料噴射の噴射開始時期t6より遅れたt6’(前記した図8のフローチャートのオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSMに対応)から立ち上がり、同様に燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけ噴射終了時期t8より遅れてt8’(前記した図8のフローチャートのオリフィス通過流の検出終了タイミングtOREMに対応)にゼロに戻る。
ここで、時間t2’,t4’及び時間t2’から時間t4’までのオリフィス通過流量率の時間積分値(前記図6のフローチャートのオリフィス通過流量QPsumに対応)は、パイロット燃料噴射の、請求項に記載の「実燃料供給情報」に対応し、時間t6’,t8’及び時間t6’から時間t8’までのオリフィス通過流量率の時間積分値(前記図8のフローチャートのオリフィス通過流量QMsumに対応)はメイン燃料噴射の、請求項に記載の「実燃料供給情報」に対応する。
図10の(c),(d)におけるt8Exp’は、実燃料噴射率の噴射終了時期t8Expに対応するものである。
逆に、パイロット燃料噴射における実噴射量QiPsumがその目標噴射量FPsolよりも多い場合は、前記したフローチャートのステップS132〜S135における制御により、メイン燃料噴射の噴射時間TiMを短縮して、パイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の合計の目標噴射量Fsolとなるようにメイン燃料噴射を制御できる。
そして、オリフィス差圧ΔPORからオリフィス通過流量率QORを算出することによりインジェクタ5Aへの実燃料供給量が正確に算出することができる。インジェクタ5Aやアクチュエータ6Aの製造公差があったとしても、その製造公差の影響を反映した燃料のオリフィス通過流量率QOR、つまり、オリフィス通過流量QPsum,QMsumが演算できるので、例えば、算出されたオリフィス通過流量QPsum,QMsumにもとづいてECU80Aにおけるインジェクタ5Aへのパイロット燃料噴射及びメイン燃料噴射の噴射指令信号の噴射時間TiP,TiMを補正係数KP,KMで補正することにより、各気筒41(図1参照)への実噴射量を同一にすることができる。
その結果、各気筒41への実噴射量を正確に制御して、各気筒の発生トルクをより正確に制御できる。
通常、インジェクタ5Aからの燃料噴射は、PM(粒子状物質)の低減、NOxと燃焼騒音の低減、排ガス昇温や還元剤供給による触媒の活性化等の目的で実際は、「パイロット(Pilot)燃料噴射」、「プレ(Pre)燃料噴射」、「メイン(Main)燃料噴射」「アフタ(After)燃料噴射」、「ポスト(Post)燃料噴射」の多段噴射にすることが普通である。
そして、このような多段噴射における実噴射量がエンジンの運転状態における目標値通りになされないと、エンジンの排気ガスの規制値をクリアすることができなかったりする。特に、実噴射量に経年変化がある場合でも、オリフィス差圧ΔPORから実噴射量を正確に算出することができるので、ECU80Aにおいて、噴射指令信号の噴射時間を調整することにより、実燃料供給量を目標値に一致するように制御することができる。
また、パイロット燃料噴射、プレ燃料噴射、メイン燃料噴射の合計の実噴射量が前記した目標噴射量Fsolになるように前段燃料噴射の実噴射量に応じて後段燃料噴射の目標噴射量を調整するようにしても良いし、パイロット燃料噴射とプレ燃料噴射のそれぞれの実噴射量の合計と前記した目標噴射量Fsolとの差分をメイン燃料噴射における目標噴射量FMsolとアフタ燃料噴射における目標噴射量FAftsolとに割り振るように設定するようにしても良い。
次に、本発明の第2の実施形態に係る燃料噴射装置について図11を参照しながら詳細に説明する。
図11は、第2の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図である。
本実施形態の燃料噴射装置1Bが第1の実施形態の燃料噴射装置1Aと異なる点は、(1)エンジンの各気筒41に配されたインジェクタ5Aに燃料を供給する高圧燃料供給通路21に設けられたオリフィス75の上下流差圧を検出する差圧センサSdPの代わりに、オリフィス75の下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサSPsを設けた点と、(2)ECU80Aの代わりにECU(制御部)80Bとなった点と、(3)ECU80Bにおいて燃料のオリフィス通過流量率QORを算出するオリフィス差圧ΔPORの定義を変えた点と、(4)パイロット燃料噴射の後に続くメイン燃料噴射の噴射時間TiMを決定するときに用いる噴射開始指令時期tSM直近のコモンレール圧力Pc*の代わりに、噴射開始指令時期tSM直近の燃料供給通路圧力Ps*とした点である。
第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
そして、本実施形態におけるECU80Bの機能は、基本的に第1の実施形態におけるECU80Aと同じであるが、燃料のオリフィス通過流量率をECU80Bで算出するときに用いる信号が第1の実施形態の場合と異なる。
第1の実施形態では、前記した(1)式によりオリフィス通過流量率QORを算出したが、本実施形態では、(1)式におけるオリフィス差圧ΔPORを、コモンレール圧力センサSPcが検出するコモンレール圧力Pcと、燃料供給通路圧力センサSPsが検出するオリフィス75の下流側の燃料供給通路圧力Psとの差圧(Pc−Ps)に置き換える。
これらのステップにおいてコモンレール圧力Pcよりも燃料供給通路圧力Psを用いることにより、パイロット燃料噴射における精度の良い噴射時間TiP、補正係数〈KP〉や、メイン燃料噴射における精度の良い噴射時間TiM、補正係数〈KM〉を取得して制御することができる。
また、インジェクタ5Aやアクチュエータ6Aの製造公差による噴射特性のばらつきや噴射特性の経年変化に対して、噴射指令信号の噴射時間を調整して、実噴射量を目標噴射量と一致するように制御できる。
そして、第1の実施形態と同様にエンジンシステムの個々の部品への寸法公差等のハード仕様に対する要求を緩和しても排ガス規制をクリアし易くなる。特に、インジェクタに対するハード仕様を緩和することができる。ひいては、エンジンシステムの製造コスト低減にも寄与する。
次に、本発明の第3の実施形態に係る燃料噴射装置について図12を参照しながら詳細に説明する。
図12は、第3の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図である。
本実施形態の燃料噴射装置1Cが第2の実施形態の燃料噴射装置1Bと異なる点は、(1)コモンレール圧力Pcを検出するコモンレール圧力センサSPcを削除した点と、(2)ECU80Bの代わりにECU(制御部)80Cとなった点と、(3)コモンレール圧力Pcを制御するのにコモンレール圧力センサSPcの代わりに燃料供給通路圧力センサSPsを用いる点と、(4)ECU80Cにおいて燃料のオリフィス通過流量率QORを算出する方法を変えた点である。
第2の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
そして、ECU80Cにおいて燃料供給通路圧力センサSPsから入力された燃料供給通路圧力Psの信号には高周波のノイズをカットするフィルタ処理を行う。ここで燃料供給通路圧力Psをフィルタ処理したものを圧力Psfilと称することにする。
このように燃料供給通路圧力センサSPsから入力された圧力信号をフィルタ処理することにより、ECU80Cにおいて図示しないクランク角センサや、気筒判別センサからの信号及びECU80C内で発生させる気筒別の噴射指令信号にもとづいて、ある気筒において燃料噴射が完了して、「膨張行程」、「排気行程」と続いて、「吸気行程」、「圧縮行程」に入ると、燃料供給通路圧力センサSPsからの圧力Psfilの信号は、比較的圧力振動の少ない状態となり、コモンレール圧力Pcと略同じ値となる。
なお、このコモンレール圧力Pcの制御に用いる燃料供給通路圧力センサSPsは、本実施形態のような4気筒エンジンの場合に代表的に4つの内の1つのみとしても良いし、4つ全てを用いて、サンプリングするタイミングが異なる4つの信号の平均値をもってコモンレール圧力Pcとしても良い。
本実施形態においては、図3に示す二次元マップ812aのコモンレール圧力として前記したようなサンプリングによる圧力Psfilを用いる。また、図4の(a),(b)に示した三次元マップ812b,812cのコモンレール圧力として、圧力Psfilを用いる。
図13、図14は、第3の実施形態におけるECU80Cでの1つの気筒における燃料のオリフィス通過流量率QORを算出する制御の流れを示すフローチャートである。図13、図14のフローチャートは、第2の実施形態のフローチャートからの変更部分、つまり、オリフィス差圧ΔPORを用いないで、オリフィス75の下流側の燃料供給通路圧力Psの変化からオリフィス通過流の検出開始タイミングの取得や、オリフィス通過流量率QORの算出や、オリフィス通過流の検出終了タイミングの取得の部分のみを記載してある。
また、本実施形態では、高圧燃料供給通路21のオリフィス75の下流側に燃料供給通路圧力センサSPsを設けているので、図5から図9のフローチャートのステップS113,S114,S162,S163において、「コモンレール圧力Pc」を「燃料供給通路圧力Psをフィルタリング処理した圧力Psfil」と読み替えて圧力Psfilを用いることとし、ステップS135,S136において、「tSM直近のコモンレール圧力Pc*」を「tSM直近の燃料供給通路圧力Psをフィルタリング処理した圧力Psfil *」と読み替えてメイン燃料噴射の噴射開始指令時期tSM直近の圧力Psfil *を用いることとする。
C1:定数
V:コモンレール4、4本の高圧燃料供給通路21及びインジェクタ5A内の燃料通 路を含む全体積
Qin:燃料のコモンレール4へのポンプ3Bからの流入量率(mm3/sec)
Qinject:インジェクタ5Aから燃焼室内への燃料噴射率(mm3/sec)
である。
図5に示したフローチャートのステップS117に続く図13に示したフローチャートのステップS118では、実燃料供給情報検出部813が、噴射指令信号からパイロット燃料噴射の噴射開始を受信したか否かをチェックする。パイロット燃料噴射の噴射開始を受信した場合(Yes)は、ステップS119へ進み、受信していない場合(No)はステップS118を繰り返す。ステップS119では、実燃料供給情報検出部813が、タイマtをスタートさせ、更に、ステップS120では、実燃料供給情報検出部813が、パイロット燃料噴射におけるオリフィス通過流量QPsumを0.0にリセットする。
ステップS121Aでは、実燃料供給情報検出部813が、燃料供給通路圧力センサSPsで検出されたフィルタ処理された後のオリフィス75の下流側圧力Psfilが所定値よりも低下したか否かをチェックする〔(Psfil<P0−ΔPε)?〕。所定値よりも低下した場合(Yes)はステップS122Aへ進み、そうでない場合(No)はステップS121Aを繰り返す。
図16の(d)において、下流側圧力Psfilが所定値P0より下にΔPεを超えて低下したタイミングがt2’である。
なお、初期値Piは、所定値(P0−ΔPε)と一致する場合もあれば、圧力Psfilをサンプリングする繰返し周期の次の繰り返しのタイミングとなり、所定値(P0−ΔPε)と異なる値となる場合もある。
ここで、オリフィス通過流量率QORは、(1)式において、ΔPORの代わりに圧力低下量ΔPdownを代入することにより容易に算出できる。
ステップS124では、実燃料供給情報検出部813が、QPsum=QPsum+QOR・Δtとして、オリフィス通過流量率QORを積算する。
ステップS125では、実燃料供給情報検出部813が、噴射指令信号からパイロット燃料噴射の噴射終了を受信したか否かをチェックする。パイロット燃料噴射の噴射終了を受信した場合(Yes)は、ステップS126Aへ進み、受信していない場合(No)はステップS123Aへ戻り、ステップS123A〜ステップS125を繰り返す。
ステップS126Aでは、実燃料供給情報検出部813が、フィルタ処理されたオリフィス75の下流側圧力Psfilが基準圧力低下線よりも増加したか否かをチェックする。基準圧力低下線よりも増加した場合(Yes)はステップS127Aへ進み、そうでない場合(No)はステップS123Aに戻りステップS123A〜S126Aを繰り返す。
オリフィス通過流量QPsumは、図16の(d)において、ドットで示した基準圧力低下線x1と圧力Psfilの曲線で囲まれた領域の面積が前記したオリフィス通過流量QPsum、つまり、実噴射量QiPsumに対応する。
図8に示したフローチャートのステップS140に続く図14に示したフローチャートのステップS141では、実燃料供給情報検出部813が、タイマtをスタートさせ、更に、ステップS142では、実燃料供給情報検出部813が、メイン燃料噴射におけるオリフィス通過流量QMsumを0.0にリセットする。
ステップS143Aでは、実燃料供給情報検出部813が、燃料供給通路圧力センサSPsで検出されたフィルタ処理された後のオリフィス75の下流側圧力Psfilが所定値よりも低下したか否かをチェックする〔(Psfil<(Psfil *−ΔPε)?〕。所定値(Psfil *−ΔPε)よりも低下した場合(Yes)はステップS144Aへ進み、そうでない場合(No)はステップS143Aを繰り返す。
ここで、Psfil *は、メイン燃料噴射の噴射指令時期tSM直近の圧力Psfilであり、ΔPεは圧力Psfilのノイズレベル以上の変化か否かを判定するための予め設定された閾値である。
なお、初期値Piは、所定値(Psfil *−ΔPε)と一致する場合もあれば、圧力Psfilをサンプリングする繰返し周期の次の繰り返しのタイミングとなり、所定値(Psfil *−ΔPε)と異なる値となる場合もある。
ここで、オリフィス通過流量率QORは、(1)式において、ΔPORの代わりに圧力低下量ΔPdownを代入することにより容易に算出できる。
ステップS146では、実燃料供給情報検出部813が、QMsum=QMsum+QOR・Δtとして、オリフィス通過流量率QORを積算する。
ステップS147では、実燃料供給情報検出部813が、噴射指令信号からメイン燃料噴射の噴射終了を受信したか否かをチェックする。メイン燃料噴射の噴射終了を受信した場合(Yes)は、ステップS148Aへ進み、受信していない場合(No)はステップS145Aへ戻り、ステップS145A〜ステップS147を繰り返す。
ステップS149Aでは、実燃料供給情報検出部813が、ステップS148AでYesのとき、タイマtによりメイン燃料噴射の終了に伴うオリフィス通過流の検出終了タイミングtOREMを取得し、ステップS144Aにおいて取得されたオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、ステップS149Aにおいて取得されたオリフィス通過流の検出終了タイミングtOREM、ステップS145A〜S148Aの繰り返しにおける最後のオリフィス通過流量QMsumを実燃料噴射情報検出部814へ出力する。ここで、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、検出終了タイミングtOREM、及びオリフィス通過流量QMsumは、請求項に記載の「実燃料供給情報」に対応する。
また、オリフィス75の下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサSPsからの圧力信号のみで、オリフィス差圧ΔPORを圧力低下量ΔPdownに置き換えた(1)式にもとづいて容易に精度の高い燃料のオリフィス通過流量率QORを算出し、オリフィス通過流量QPsum,QMsumを、つまり、実噴射量QiPsum,QiMsumを、気筒ごとに、噴射指令信号ごとに算出できる。
また、インジェクタ5Aやアクチュエータ6Aの製造公差による噴射特性のばらつきや噴射特性の経年変化に対して、噴射指令信号の噴射時間を調整して、実噴射量を目標噴射量と一致するように制御できる。
そして、第2の実施形態と同様にエンジンシステムの個々の部品への寸法公差等のハード仕様に対する要求を緩和しても排ガス規制をクリアし易くなる。特に、インジェクタに対するハード仕様を緩和することができる。ひいては、エンジンシステムの製造コスト低減にも寄与する。
以下に、本発明の第4の実施形態に係る燃料噴射装置について図17から図19を参照しながら詳細に説明する。
図17は、第4の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図であり、図18は、本実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置に用いられるエンジン制御装置の機能ブロック図である。図19は、背圧式インジェクタのバックフロー率関数マップの構成概念図である。
本実施形態における燃料噴射装置1Dは、第1の実施形態と以下の点で異なる。
(1)背圧式の燃料噴射弁であるアクチュエータ6Bを有するインジェクタ5Bが用いられている。(2)それに伴い、各気筒に設けられたインジェクタ5Bには、ドレーン通路9が接続され、それらは戻り燃料配管73に更に接続して、逆止弁74とオリフィス76を並列に接続した流量調整器を介して低圧ポンプ3Aの吐出側の低圧燃料供給配管(燃料供給系の低圧部)61に接続している。(3)本実施形態の燃料噴射装置1Dは、ECU(制御部)80Dにより電子制御される。
第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図18に示すように本実施形態におけるECU80Dは、第1の実施形態におけるECU80Aと基本的に同じ構造であるが、第1の実施形態における噴射制御部805A,805B,805C,805Dの代わりに、噴射制御部805A’,805B’,805C’,805D’を含んでいる。
噴射制御部805A’,805B’,805C’,805D’は、多段噴射制御部810’、実燃料供給情報検出部813’、実燃料噴射情報検出部814’を含んでいる。多段噴射制御部810’は、更に多段噴射モード制御部811、個別噴射情報設定部812’を含んでいる。
バックフロー率関数マップ812dは、図19に示すようにコモンレール圧力Pcと噴射時間Tiの二次元マップで、バックフロー率関数QBF(t)を求められるようにしたものであり、バックフロー率関数QBF(t)を図19中に例示してある。
背圧式のインジェクタ5Bでは、このバックフロー率関数QBF(t)の時間積分に当たるバックフロー量が、実際にインジェクタ5Bの燃料噴射孔10(図17参照)から気筒41の燃焼室内に噴射される実噴射量に加わって、オリフィス通過流量となるので、オリフィス通過流量率QORを単に時間積分するだけでは実噴射量は得られない。
そのために、コモンレール圧力Pcと噴射時間Tiによって決まるバックフロー率関数QBF(t)を用いて、バックフロー率も算出するようにする。
また、実燃料噴射情報検出部814’は、メイン燃料噴射におけるオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、オリフィス通過流の燃料噴射開始検出タイミングtORSiM、オリフィス通過流のバックフロー終了タイミングtOREBF、オリフィス通過流の検出終了タイミングtOREMを、それぞれインジェクタ5Bのバックフロー開始時期、燃料噴射孔10からのメイン燃料噴射の燃料噴射開始時期、バックフロー終了時期、燃料噴射孔10からのメイン燃料噴射の燃料噴射終了時期に換算し、オリフィス通過流量QMsumからバックフロー量QBFsumを差し引いて、実噴射量QiMsumを算出する。
これらの換算されたデータは個別噴射情報設定部812’に入力され、必要に応じて、補正に用いられる。
パイロット燃料噴射の場合は、図5から図9に示した第1の実施形態におけるフローチャートのステップS117の後に、図20に示すフローチャートのステップS311へ進み、図21に示すフローチャートのステップS331の後、図5から図9に示した第1の実施形態におけるフローチャートのステップS130に進む。
メイン燃料噴射の場合は、図5から図9に示した第1の実施形態におけるフローチャートのステップS139の後に、図20に示すフローチャートのステップS311へ進み、図21に示すフローチャートのステップS331の後、図5から図9に示した第1の実施形態におけるフローチャートのステップS152に進む。
図5から図9に示した第1の実施形態におけるフローチャートのステップS117の後にステップS311に進むと、実燃料供給情報検出部813’は、コモンレール圧力Pc、噴射時間Ti[TiP]に対応するバックフロー率関数を取得する。具体的には、バックフロー率関数QBF(t)とともに、図19に示す噴射時間Ti[TiP]に対応して、実際にバックフローが始まるバックフロー開始時期tSBE、前記したバックフロー区間TiBFのパラメータも取得する。
IFLAGは、バックフロー開始後に燃焼室内への実際の燃料噴射を検出したか否かを示す判定フラッグであり、最初はリセットする。
ステップS314では、実燃料供給情報検出部813’が、燃料噴射[パイロット燃料噴射]によるオリフィス通過流量Qsum[QPsum]と、バックフロー量QBFsumとを0.0にリセットする。
ここで、正のオリフィス差圧ΔPORとは、コモンレール4側からインジェクタ5B側への燃料の流れを生じたときに発生するオリフィス差圧ΔPORであり、逆方向の燃料の流れを生じたときに発生するのが負のオリフィス差圧ΔPORである。
このステップS315のチェックは、差圧センサSdPからの信号のノイズ以上のオリフィス差圧ΔPORの信号という意味と、燃料噴射に伴うオリフィス差圧ΔPORであることをチェックするものである。
ステップS318では、実燃料供給情報検出部813’が、オリフィス差圧ΔPORからオリフィス通過流量率QOR(mm3/sec)を算出する。
ステップS320では、実燃料供給情報検出部813’が、QBFsum=QBFsum+QBF(t)・Δtとして、バックフロー率QBFを積算する。
ステップS321では、実燃料供給情報検出部813’が、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はステップS332へ進み、そうでない場合(No)はステップS325へ進む。
ステップS332では、実燃料供給情報検出部813’が、オリフィス通過流量率QORがバックフロー率QBF(t)を越えているか否かをチェックする。越えている場合は、ステップS323へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS325へ進む。
つまり、オリフィス通過流量率QORが、バックフロー率QBF以上になったということは、燃料噴射孔10から燃焼室への噴射が開始されたことを検出したことになる。
このステップS326のチェックは、差圧センサSdPからの信号のノイズ以上のオリフィス差圧ΔPORの信号という意味と、燃料噴射の終了に伴う反射波によるオリフィス差圧ΔPORであることをチェックするものである。
ここでのステップS318〜S326の処理は、例えば、数μsec〜数十μsecの周期で行われ、Δtはオリフィス差圧ΔPORをサンプリングする周期であり、数μsec〜数十μsecである。
ステップS329では、実燃料噴射情報検出部814’が、オリフィス通過流量Qsum[QPsum]からバックフロー量QBFsumを差し引いて実噴射量Qisum[QiPsum]を算出する(Qisum=Qsum−QBFsum ,[QiPsum=QPsum−QBFsum])。
そして、燃料噴射[パイロット燃料噴射]の実噴射量Qisum[QiPsum]、バックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期は、個別噴射情報設定部812’に入力される。
ちなみに、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORS[tORSP]、バックフロー終了タイミングtOREBF、燃料噴射開始検出タイミングtORSi[tORSiP]、検出終了タイミングtORE[tOREP]を燃料噴射[パイロット燃料噴射]のバックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期に換算することは、例えば、オリフィス通過流量率QORの平均値{Qsum/(tORE−tORS) ,[QPsum/(tOREP−tORSP)}と高圧燃料供給通路21の流路断面積から平均流速が求まり、燃料通路の長さを考慮すれば容易に求められる。
ここで、燃料噴射[パイロット燃料噴射]の実噴射量Qisum[QiPsum]、噴射開始時期、噴射終了時期は、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
ステップS331では、実燃料噴射情報検出部814’が、IFLAG=0にリセットする。その後、図5から図9のフローチャートのステップS130へ進む。
ステップS331では、実燃料噴射情報検出部814’が、IFLAG=0にリセットする。その後、図5から図9のフローチャートのステップS152へ進む。
図22は、1つの気筒に対してパイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の噴射指令信号を出すときの、高圧燃料供給通路における燃料挙動の時間推移を示す図であり、(a)は、噴射指令信号のパターンを示す図、(b)は、インジェクタからの実燃料噴射率とバックフロー率の時間推移を示す図、(c)は、燃料のオリフィス通過流量率の時間推移を示す図、(d)は、オリフィスの上下流側の圧力変化の時間推移を示す図である。
図22の(a)では、時間t1が噴射開始指令時期、時間t3が噴射終了指令時期である噴射時間TiPのパイロット燃料噴射の噴射指令信号の後に、時間t5が噴射開始指令時期、時間t7が噴射終了指令時期である噴射時間TiMのメイン燃料噴射の噴射指令信号が出されている。
パイロット燃料噴射による燃料のオリフィス75を通過するオリフィス通過流量率は、図22の(c)に示すように、インジェクタ5B(図17参照)内の図示しない燃料通路や高圧燃料供給通路21(図17参照)の容積分だけパイロット燃料噴射のバックフロー開始時期t2Aより遅れたt2A’から立ち上がり、同様に燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけ噴射終了時期t4Bより遅れてt4B’にゼロに戻る。そして、メイン燃料噴射によるオリフィス通過流量率は、インジェクタ5B内の図示しない燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけメイン燃料噴射のバックフロー開始時期t6Aより遅れたt6A’から立ち上がり、同様に燃料通路や高圧燃料供給通路21の容積分だけ噴射終了時期t8より遅れてt8’にゼロに戻る。
言わずもがなであるが、パイロット燃料噴射のバックフロー量QBFsumとメイン燃料噴射のバックフロー量QBFsumは当然異なる値である。
図22の(c),(d)におけるt8Exp’は、実燃料噴射率の噴射終了時期t8Expに対応するものである。
逆に、パイロット燃料噴射における実噴射量QiPsumがその目標噴射量FPsolよりも多い場合は、前記したフローチャートのステップS132〜S135における制御により、メイン燃料噴射の噴射時間TiMを短縮して、パイロット燃料噴射とメイン燃料噴射の合計の目標噴射量Fsolとなるようにメイン燃料噴射を制御できる。
そして、オリフィス差圧ΔPORからオリフィス通過流量率QORを算出するとともに、バックフロー率関数QBF(t)を取得してバックフロー率QBFを用いることにより、インジェクタ5Bへの実燃料供給量であるオリフィス通過流量QPsum,QMsumやバックフロー量QBFsumを正確に算出することができる。
インジェクタ5Bやアクチュエータ6Bの製造公差があったとしても、その製造公差の影響を反映した燃料のオリフィス通過流量率QOR、つまり、オリフィス通過流量QPsum,QMsumが演算できるので、例えば、算出されたオリフィス通過流量QPsum,QMsumやバックフロー量QBFsumにもとづいて実噴射量QiPsum,QiMsumが算出でき、ECU80Dにおけるインジェクタ5Bへのパイロット燃料噴射及びメイン燃料噴射の噴射指令信号の噴射時間TiP,TiMを補正係数KP,KMで補正することにより、各気筒41(図17参照)への実噴射量を同一にすることができる。
その結果、各気筒41への実噴射量を正確に制御して、各気筒の発生トルクをより正確に制御できる。
通常、インジェクタ5Bからの燃料噴射は、PM(粒子状物質)の低減、NOxと燃焼騒音の低減、排ガス昇温や還元剤供給による触媒の活性化等の目的で実際は、「パイロット(Pilot)燃料噴射」、「プレ(Pre)燃料噴射」、「メイン(Main)燃料噴射」「アフタ(After)燃料噴射」、「ポスト(Post)燃料噴射」の多段噴射にすることが普通である。
そして、このような多段噴射における実噴射量がエンジンの運転状態における目標値通りになされないと、エンジンの排気ガスの規制値をクリアすることができなかったりする。特に、実噴射量に経年変化がある場合でも、オリフィス差圧ΔPORから実噴射量を正確に算出することができるので、ECU80Dにおいて、噴射指令信号の噴射時間を調整することにより、実燃料供給量を目標値に一致するように制御することができる。
また、パイロット燃料噴射、プレ燃料噴射、メイン燃料噴射の合計の実噴射量が前記した目標噴射量Fsolになるように前段燃料噴射の実噴射量に応じて後段燃料噴射の目標噴射量を調整するようにしても良いし、パイロット燃料噴射とプレ燃料噴射のそれぞれの実噴射量の合計と前記した目標噴射量Fsolとの差分をメイン燃料噴射における目標噴射量FMsolとアフタ燃料噴射における目標噴射量FAftsolとに割り振るように設定するようにしても良い。
次に、本発明の第5の実施形態に係る燃料噴射装置について図23を参照しながら詳細に説明する。
図23は、第5の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図である。
本実施形態の燃料噴射装置1Eが第4の実施形態の燃料噴射装置1Dと異なる点は、(1)エンジンの各気筒に配されたインジェクタ5Bに燃料を供給する高圧燃料供給通路21に設けられたオリフィス75の上下流差圧を検出する差圧センサSdPの代わりに、オリフィス75の下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサSPsを設けた点と、(2)ECU80Dの代わりにECU(制御部)80Eとなった点と、(3)ECU80Eにおいて燃料のオリフィス通過流量率QORを算出するオリフィス差圧ΔPORの定義を変えた点と、(4)パイロット燃料噴射の後に続くメイン燃料噴射の噴射時間TiMを決定するときに用いる噴射開始指令時期tSM直近のコモンレール圧力Pc*の代わりに、噴射開始指令時期tSM直近の燃料供給通路圧力Ps*とした点である。
言い換えると、本実施形態は、第2の実施形態において直動式の燃料噴射弁であるインジェクタ5Aを背圧式の燃料噴射弁であるインジェクタ5Bに変え、インジェクタ5Bに適合するように第2の実施形態を変形したものである。
第4の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
そして、本実施形態におけるECU80Eの機能は、基本的に第4の実施形態におけるECU80Dと同じであるが、燃料のオリフィス通過流量率QORをECU80Eで算出するときに用いる信号が第4の実施形態の場合と異なる。
第4の実施形態では、前記した(1)式によりオリフィス通過流量率QORを算出したが、本実施形態では、(1)式におけるオリフィス差圧ΔPORを、コモンレール圧力センサSPcが検出するコモンレール圧力Pcと、燃料供給通路圧力センサSPsが検出するオリフィス75の下流側圧力Psとの差圧(Pc−Ps)に置き換える。
これらのステップにおいてコモンレール圧力Pcよりも燃料供給通路圧力Psを用いることにより、パイロット燃料噴射における精度の良い噴射時間TiP、補正係数〈KP〉や、メイン燃料噴射における精度の良い噴射時間TiM、補正係数〈KM〉を取得して制御することができる。
また、インジェクタ5Bやアクチュエータ6Bの製造公差による噴射特性のばらつきや噴射特性の経年変化に対して、噴射指令信号の噴射時間を調整して、実噴射量を目標噴射量と一致するように制御できる。
そして、第4の実施形態と同様にエンジンシステムの個々の部品への寸法公差等のハード仕様に対する要求を緩和しても排ガス規制をクリアし易くなる。特に、インジェクタに対するハード仕様を緩和することができる。ひいては、エンジンシステムの製造コスト低減にも寄与する。
次に、本発明の第6の実施形態に係る燃料噴射装置について図24を参照しながら詳細に説明する。
図24は、第6の実施形態の蓄圧式の燃料噴射装置の全体構成を示した図である。
本実施形態の燃料噴射装置1Fが第5の実施形態の燃料噴射装置1Eと異なる点は、(1)コモンレール圧力Pcを検出するコモンレール圧力センサSPcを削除した点と、(2)ECU80Eの代わりにECU(制御部)80Fとなった点と、(3)コモンレール圧力Pcを制御するのにコモンレール圧力センサSPcの代わりに燃料供給通路圧力センサSPsを用いる点と、(4)ECU80Fにおいて燃料のオリフィス通過流量率QORを算出する方法を変えた点である。
言い換えると、本実施形態は、第3の実施形態において直動式の燃料噴射弁であるインジェクタ5Aを背圧式の燃料噴射弁であるインジェクタ5Bに変え、インジェクタ5Bに適合するように第3の実施形態を変形したものである。
第5の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
そして、ECU80Fにおいて燃料供給通路圧力センサSPsから入力された燃料供給通路圧力Psの信号には高周波のノイズをカットするフィルタ処理を行う。ここで燃料供給通路圧力Psをフィルタ処理したものを圧力Psfilと称することにする。
このように燃料供給通路圧力センサSPsから入力された圧力信号をフィルタ処理することにより、ECU80Fにおいて図示しないクランク角センサや、気筒判別センサからの信号及びECU80F内で発生させる気筒別の燃料噴射指令にもとづいて、ある気筒において燃料噴射が完了して、「膨張行程」、「排気行程」と続いて、「吸気行程」、「圧縮行程」に入ると、燃料供給通路圧力センサSPsからの圧力Psfilの信号は、比較的圧力振動の少ない状態となり、コモンレール圧力Pcと略同じ値となる。
なお、このコモンレール圧力Pcの制御に用いる燃料供給通路圧力センサSPsは、本実施形態のような4気筒エンジンの場合に代表的に4つの内の1つのみとしても良いし、4つ全てを用いて、サンプリングするタイミングが異なる4つの信号の平均値をもってコモンレール圧力Pcとしても良い。
本実施形態においては、図18に示す二次元マップ812aのコモンレール圧力として前記したようなサンプリングによる圧力Psfilを用いる。また、図18及び図4の(a),(b)に示した三次元マップ812b,812cのコモンレール圧力として、圧力Psfilを用いる。
図25から図29は、第6の実施形態におけるECU80Fでの1つの気筒における燃料のオリフィス通過流量率QORから実噴射量を算出する制御の流れを示すフローチャートである。図25から図29のフローチャートは、第1の実施形態のフローチャートからの変更部分、つまり、オリフィス差圧ΔPORを用いないで、オリフィス75の下流側の燃料供給通路圧力Psの変化からオリフィス通過流の検出開始タイミングの取得や、オリフィス通過流量率QORの算出や、実噴射量オリフィス通過流の検出終了タイミングの取得や、オリフィス通過流量率QORからオリフィス通過流量QPsum,QMsumを算出や、バックフロー量QBFsumの算出や、オリフィス通過流量QPsum,QMsumからバックフロー量QBFsumを差し引いて実噴射量QiPsum,QiMsumを算出する部分のみを記載してある。
また、本実施形態では、高圧燃料供給通路21のオリフィス75の下流側に燃料供給通路圧力センサSPsを設けているので、図5から図9のフローチャートのステップS113,S114,S162,S163において、「コモンレール圧力Pc」を「燃料供給通路圧力Psをフィルタリング処理した圧力Psfil」と読み替えて圧力Psfilを用いることとする。
ステップS117に続くステップS411では、実燃料供給情報検出部813’は、圧力Psfil、パイロット燃料噴射の噴射時間TiPに対応するバックフロー率関数を取得する。具体的には、バックフロー率関数QBF(t)とともに、図19に示すパイロット燃料噴射の噴射時間TiP(図19中では噴射時間Tiと一般化して表示)に対応して、実際にバックフローが始まるバックフロー開始時期tSBE、前記したバックフロー区間TiBFのパラメータも取得する。
ステップS412では、実燃料供給情報検出部813’が、噴射指令信号からパイロット燃料噴射の噴射開始を受信したか否かをチェックする。パイロット燃料噴射の噴射開始を受信した場合(Yes)は、ステップS413へ進み、受信していない場合(No)はステップS412を繰り返す。
ステップS413では、実燃料供給情報検出部813’が、タイマtをスタートさせ、IFLAG=0とする。IFLAGは、バックフロー開始後に実際の燃焼室内への燃料噴射を検出したか否かを示す判定フラッグであり、最初はリセットする。
ステップS414では、実燃料供給情報検出部813’が、パイロット燃料噴射によるオリフィス通過流量QPsumと、バックフロー量QBFsumとを0.0にリセットする。
図30の(d)において、下流側圧力Psfilが所定値P0よりも低下したタイミングがt2A’である。
ステップS418では、実燃料供給情報検出部813’が、ステップS415でYesのときのオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSPにおける圧力Psfilを初期値Piとして図30の(d)に示すように基準圧力低下線を設定する。
なお、初期値Piは、所定値(P0−ΔPε)と一致する場合もあれば、圧力Psfilをサンプリングする繰返し周期の次の繰り返しのタイミングとなり、所定値(P0−ΔPε)と異なる値となる場合もある。
ここで、オリフィス通過流量率QORは、(1)式において、ΔPORの代わりに圧力低下量ΔPdownを代入することにより容易に算出できる。
ステップS420では、実燃料供給情報検出部813’が、QPsum=QPsum+QOR・Δtとして、オリフィス通過流量率QORを積算する。
ステップS421では、実燃料供給情報検出部813’が、QBFsum=QBFsum+QBF(t)・Δtとして、バックフロー率QBFを積算する。ステップS421の後、結合子(J)に従って、ステップS422へ進み、実燃料供給情報検出部813’が、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はステップS423へ進み、そうでない場合(No)はステップS426へ進む。
ステップS423では、実燃料供給情報検出部813’が、オリフィス通過流量率QORがバックフロー率QBF(t)を越えているか否かをチェックする。越えている場合は、ステップS424へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS426へ進む。
つまり、オリフィス通過流量率QORが、バックフロー率QBF以上になったということは、燃料噴射孔10(図24参照)から燃焼室への噴射が開始されたことを検出したことになる。
ここでのステップS419〜S427の処理は、例えば、数μsec〜数十μsecの周期で行われ、Δtは圧力Psfilをサンプリングする周期であり、数μsec〜数十μsecである。
ステップS430では、実燃料噴射情報検出部814’が、オリフィス通過流量QPsumからバックフロー量QBFsumを差し引いて実噴射量QiPsumを算出する(QiPsum=QPsum−QBFsum)。
そして、パイロット燃料噴射の実噴射量QiPsum、バックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期は、個別噴射情報設定部812’に入力される。
ちなみに、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSP、バックフロー終了タイミングtOREBF、燃料噴射開始検出タイミングtORSiP、検出終了タイミングtOREPをパイロット燃料噴射のバックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期に換算することは、例えば、オリフィス通過流量率QORの平均値{QPsum/(tOREP−tORSP)}と高圧燃料供給通路21の流路断面積から平均流速が求まり、燃料通路の長さを考慮すれば容易に求められる。
ここで、パイロット燃料噴射の実噴射量QiPsum、噴射開始時期、噴射終了時期は、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
ステップS432では、実燃料噴射情報検出部814’が、IFLAG=0にリセットする。その後、図5から図9のフローチャートのステップS130へ進む。
図5から図9に示したフローチャートのステップS134からステップS450に進むと、個別噴射情報設定部812’が、ステップS131で設定したメイン燃料噴射の噴射開始指令時期tSM直近の圧力Psfil *、メイン燃料噴射の目標噴射量FMsolにもとづいて、二次元マップ812aを参照してメイン燃料噴射の噴射時間TiMを決定する。
ステップS451では、実燃料供給情報検出部813’は、圧力Psfil *、メイン燃料噴射の噴射時間TiMに対応するバックフロー率関数を取得する。具体的には、バックフロー率関数QBF(t)とともに、図19に示すメイン燃料噴射の噴射時間TiM(図19中では噴射時間Tiと一般化して表示)に対応して、実際にバックフローが始まるバックフロー開始時期tSBE、前記したバックフロー区間TiBFのパラメータも取得する。
ここで、メイン燃料噴射の直近の圧力Psfil *は、演算時間を考慮して噴射開始指令時期tSMから所定の短時間、例えば、演算周期の数μsec〜数十μsecだけ遡った時点の圧力Psfilである。
ステップS453では、個別噴射情報設定部812’が、TiM×〈KM〉の演算をして補正されたメイン燃料噴射の噴射時間TiMを算出する(TiM=TiM・〈KM〉)。そしてステップS454では、個別噴射情報設定部812’が、メイン燃料噴射の噴射終了指令時期tEMを、ステップS131で設定された噴射開始指令時期tSMと、ステップS453で算出された補正されたメイン燃料噴射の噴射時間TiMとを加算して算出する(tEM=tSM+TiM)。そして、ステップS455では、個別噴射情報設定部812’が、メイン燃料噴射の噴射終了指令時期tEMを設定する。具体的には、噴射指令信号として噴射終了指令時期tEMをアクチュエータ駆動回路806Aに出力するとともに、実燃料供給情報検出部813’にも出力する。
ステップS457では、実燃料供給情報検出部813’が、タイマtをスタートさせ、IFLAG=0とする。IFLAGは、バックフロー開始後に実際の燃焼室内への燃料噴射を検出したか否かを示す判定フラッグであり、最初はリセットする。
ステップS458では、実燃料供給情報検出部813’が、メイン燃料噴射によるオリフィス通過流量QMsumと、バックフロー量QBFsumとを0.0にリセットする。
ステップS462では、実燃料供給情報検出部813’が、ステップS459でYesのときのオリフィス通過流の検出開始タイミングtORSPにおける圧力Psfilを初期値Piとして基準圧力低下線を設定する。
なお、初期値Piは、所定値(Psfil *−ΔPε)と一致する場合もあれば、圧力Psfilをサンプリングする繰返し周期の次の繰り返しのタイミングとなり、所定値(Psfil *−ΔPε)と異なる値となる場合もある。
ここで、オリフィス通過流量率QORは、(1)式において、ΔPORの代わりに圧力低下量ΔPdownを代入することにより容易に算出できる。
ステップS464では、実燃料供給情報検出部813’が、QMsum=QMsum+QOR・Δtとして、オリフィス通過流量率QORを積算する。
ステップS465では、実燃料供給情報検出部813’が、QBFsum=QBFsum+QBF(t)・Δtとして、バックフロー率QBFを積算する。
ステップS466では、実燃料供給情報検出部813’が、IFLAG=0か否かをチェックする。IFLAG=0の場合(Yes)はステップS467へ進み、そうでない場合(No)はステップS470へ進む。
ステップS467では、実燃料供給情報検出部813’が、オリフィス通過流量率QORがバックフロー率QBF(t)を越えているか否かをチェックする。越えている場合は、ステップS468へ進み、そうでない場合(No)は、ステップS470へ進む。
つまり、オリフィス通過流量率QORが、バックフロー率QBF以上になったということは、燃料噴射孔10から燃焼室への噴射が開始されたことを検出したことになる。
ここでのステップS463〜S471の処理は、例えば、数μsec〜数十μsecの周期で行われ、Δtは圧力Psfilをサンプリングする周期であり、数μsec〜数十μsecである。
ステップS474では、実燃料噴射情報検出部814’が、オリフィス通過流量QMsumからバックフロー量QBFsumを差し引いて実噴射量QiMsumを算出する(QiMsum=QMsum−QBFsum)。
そして、パイロット燃料噴射の実噴射量QiMsum、バックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期は、個別噴射情報設定部812’に入力される。
ちなみに、オリフィス通過流の検出開始タイミングtORSM、バックフロー終了タイミングtOREBF、燃料噴射開始検出タイミングtORSiM、検出終了タイミングtOREMをパイロット燃料噴射のバックフロー開始時期、噴射開始時期、バックフロー終了時期、噴射終了時期に換算することは、例えば、オリフィス通過流量率QORの平均値{QMsum/(tOREM−tORSM)}と高圧燃料供給通路21の流路断面積から平均流速が求まり、燃料通路の長さを考慮すれば容易に求められる。
ここで、パイロット燃料噴射の実噴射量QiMsum、噴射開始時期、噴射終了時期は、請求項に記載の「実燃料噴射情報」に対応する。
ステップS476では、実燃料噴射情報検出部814’が、IFLAG=0にリセットする。その後、図5から図9のフローチャートのステップS152へ進む。
この場合、ステップS459における「燃料供給通路圧力センサSPsで検出されたフィルタ処理された後のオリフィス75の下流側圧力Psfilが所定値Psfil *よりも低下したか否かをチェックする〔(Psfil<Psfil *−ΔPε)?〕。所定値Psfil *よりも低下した場合(Yes)は、結合子(L)に従ってステップS460へ進み、そうでない場合(No)はステップS459を繰り返す。」を、「燃料供給通路圧力センサSPsで検出されたフィルタ処理された後のオリフィス75の下流側圧力Psfilが所定値P0よりも低下したか否かをチェックする〔(Psfil<P0−ΔPε)?〕。所定値P0よりも低下した場合(Yes)は、結合子(L)に従ってステップS460へ進み、そうでない場合(No)はステップS459を繰り返す。」に読み替える。
また、オリフィス75の下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサSPsからの圧力信号のみで、オリフィス差圧ΔPORを圧力低下量ΔPdownに置き換えた(1)式にもとづいて容易に精度の高い燃料のオリフィス通過流量率QORを算出し、オリフィス通過流量QPsum,QMsumを、つまり、実噴射量QiPsum,QiMsumを、気筒ごとに、噴射指令信号ごとに算出できる。
また、インジェクタ5Bやアクチュエータ6Bの製造公差による噴射特性のばらつきや噴射特性の経年変化に対して、噴射指令信号の噴射時間を調整して、実噴射量を目標噴射量と一致するように制御できる。
そして、第5の実施形態と同様にエンジンシステムの個々の部品への寸法公差等のハード仕様に対する要求を緩和しても排ガス規制をクリアし易くなる。特に、インジェクタに対するハード仕様を緩和することができる。ひいては、エンジンシステムの製造コスト低減にも寄与する。
また、第4の実施形態から第6の実施形態においては、バックフロー率関数QBF(t)を、コモンレール圧力Pc、燃料供給通路圧力Ps、又は燃料供給通路圧力Psにもとづくフィルタ処理された圧力Psfilと、噴射時間Tiの二次元マップ812dを参照して用いることとしたが、それに限定されない。二次元マップ812dで、バックフロー開始時期tSBFと、バックフロー区間TiBFと、燃料噴射時の実噴射量とインジェクタ5Bへの燃料供給量、つまり、オリフィス通過流量の比γと、を取得するようにしても良い。
ここで、例えば、パイロット燃料噴射の場合は、γはQiPsum/QPsumの比であり、メイン燃料噴射の場合は、γはQiMsum/QMsumの比を示す値であり、実験的に予め求めて、バックフロー開始時期tSBFと、バックフロー区間TiBFのデータとともに二次元マップ812dとして格納しておいても良い。
更に、個別噴射情報設定部812が、パイロット燃料噴射の噴射開始指令時期tSP、噴射終了指令時期tEPに対して、実燃料噴射情報検出部814において取得されたパイロット燃料噴射の噴射開始時期、終了時期を比較して、インジェクタ5A又はインジェクタ5Bの作動遅れ量の経時変化を監視し、所定の予め設定された作動遅れ量基準値を超える場合に、作動遅れ量基準値を超えた分だけメイン燃料噴射の噴射開始指令時期tSM、噴射終了指令時期tEMを補正して出力するようにしても良い。
このように補正することで、噴射量の制御だけでなく、適切なクランク角でメイン燃料噴射が実際に開始され終了できるように制御できる。
ECU80A,80B,80C,80D,80E,80Fを構成するCPUの演算速度の制限から、その気筒41の次のサイクルにおいてメイン燃料噴射の目標噴射量FMsolを補正して、それに対応するメイン燃料噴射の噴射時間TiMを設定して、メイン燃料噴射を制御しても良い。エンジンの通常の高速回転状態では、1つの気筒41が連続するサイクル間で同じアクセル開度θth、エンジン回転速度Neの運転状態に維持されることが多いので、エンジン制御上、前記した実施形態同様に正確に前段燃料噴射の結果で後段燃料噴射を補正することができる。
2 燃料タンク
3A 低圧ポンプ(燃料ポンプ)
3B 高圧ポンプ(燃料ポンプ)
4 コモンレール(燃料蓄圧部)
5A,5B インジェクタ(燃料噴射弁)
6A,6B アクチュエータ
9 ドレーン通路
10 燃料噴射孔
21 高圧燃料供給通路(燃料供給通路)
41 気筒
61 低圧燃料供給配管
75 オリフィス
80A,80B,80C,80D,80E,80F ECU(制御部)
801 要求トルク演算部
801a 二次元マップ
802 目標噴射量演算部
802a 二次元マップ
803 コモンレール圧力演算部
803a 二次元マップ
804 コモンレール圧制御部
805A,805B,805C,805D,805A’,805B’,805C’,805D’ 噴射制御部
806A,806B,806C,806D アクチュエータ駆動回路
810,810’ 多段噴射制御部
811 多段噴射モード制御部
812,812’ 個別噴射情報設定部
812a 二次元マップ
812b 三次元マップ
812c 三次元マップ
812d バックフロー率関数マップ
813,813’ 実燃料供給情報検出部(実燃料供給情報検出手段)
814,814’ 実燃料噴射情報検出部(実燃料噴射情報検出手段)
K,KP,KM 補正係数
Ne エンジン回転速度
Pc コモンレール圧力
Ps 燃料供給通路圧力
SdP 差圧センサ
SPc コモンレール圧力センサ(蓄圧部圧力センサ)
SPs 燃料供給通路圧力センサ
STf 燃料温度センサ
x1 基準圧力低下線
x2 基準圧力低下線
Claims (11)
- 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスの上流側及び下流側の差圧を検出する差圧センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の全量を前記気筒の燃焼室へ供給する構造であり、
前記制御部は、
前記差圧センサからの信号にもとづいてオリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料蓄圧部の圧力を検出する蓄圧部圧力センサと、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路内の前記オリフィスの下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の全量を前記気筒の燃焼室へ供給する構造であり、
前記制御部は、
前記蓄圧部圧力センサからの信号及び前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて、前記オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路内の前記オリフィスの下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の全量を前記気筒の燃焼室へ供給する構造であり、
前記制御部は、
前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて前記燃料噴射弁からの燃料の噴射に伴う圧力低下量を検出し、その圧力低下量にもとづいて前記オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報にもとづいて実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスの上流側及び下流側の差圧を検出する差圧センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の一部をバックフローとして戻り燃料配管に戻して、燃料供給系の低圧部へ排出する構造であり、
前記制御部は、
前記差圧センサからの信号にもとづいて前記オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報と、予め記憶された前記バックフローに係るバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料蓄圧部の圧力を検出する蓄圧部圧力センサと、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路内の前記オリフィスの下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の一部をバックフローとして戻り燃料配管に戻して、燃料供給系の低圧部へ排出する構造であり、
前記制御部は、
前記蓄圧部圧力センサからの信号及び前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて、前記オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報と、予め記憶された前記バックフローに係るバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 燃料ポンプによって送り出された燃料を蓄圧状態に貯留する燃料蓄圧部、該燃料蓄圧部から内燃機関の各気筒に向けて分岐した燃料供給通路を通じて供給される燃料を前記内燃機関の各気筒の燃焼室へ供給する燃料噴射弁、及び該燃料噴射弁から燃料噴射させるための噴射指令信号を前記内燃機関の運転状態に応じて設定して出力する制御部を備え、前記噴射指令信号にもとづいて前記燃料噴射弁の少なくとも噴射開始時期と噴射終了時期を含む燃料噴射情報が決定されるとともに、前記内燃機関の各気筒の圧縮行程中又は膨張行程中に、前記燃料噴射弁から複数回の燃料噴射に分けて実施する多段噴射を行う燃料噴射装置において、
前記燃料供給通路に配置されたオリフィスと、
前記燃料供給通路内の前記オリフィスの下流側の圧力を検出する燃料供給通路圧力センサと、を備え、
前記燃料噴射弁は、燃料噴射時に前記燃料供給通路を通じて供給された燃料の一部をバックフローとして戻り燃料配管に戻して、燃料供給系の低圧部へ排出する構造であり、
前記制御部は、
前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて前記燃料噴射弁からの燃料の噴射に伴う圧力低下量を検出し、その圧力低下量にもとづいて前記オリフィスを通過する燃料の実燃料供給情報を検出する実燃料供給情報検出手段と、
前記検出された実燃料供給情報と、予め記憶された前記バックフローに係るバックフロー情報とにもとづいて、実燃料噴射情報を検出する実燃料噴射情報検出手段と、を有し、
当該気筒の当該同一サイクルでの前記複数回の燃料噴射のうち相対的に早い前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報にもとづいて、前記前段燃料噴射における前記実燃料噴射情報の示す実燃料噴射量と前記噴射指令信号に対応する目標噴射量との誤差を補正するように、前記当該気筒の当該同一サイクルでの前記前段燃料噴射よりも後の後段燃料噴射の前記燃料噴射情報を、決定することを特徴とする燃料噴射装置。 - 前記燃料蓄圧部の圧力を検出する蓄圧部圧力センサを備え、
前記制御部は、前記後段燃料噴射の前記燃料噴射情報の前記噴射開始時期と前記噴射終了時期の差分である噴射時間を決定するときに、前記噴射開始時期直近の前記蓄圧部圧力センサからの信号にもとづいて決定することを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の燃料噴射装置。 - 前記制御部は、前記後段燃料噴射の前記燃料噴射情報の前記噴射開始時期と前記噴射終了時期の差分である噴射時間を決定するときに、前記噴射開始時期直近の前記燃料供給通路圧力センサからの信号にもとづいて決定することを特徴とする請求項2、請求項3、請求項5及び請求項6のうちのいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
- 前記制御部は、前記前段燃料噴射の前記実燃料噴射情報を前記内燃機関の同一気筒の次サイクルの前記後段燃料噴射の前記燃料噴射情報の決定にも用いることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
- 前記後段燃料噴射は、前記複数回の燃料噴射のうち最も燃料噴射量が多いメイン燃料噴射であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
- 前記制御部は、前記複数回の燃料噴射のそれぞれに対する目標燃料噴射量に応じて設定される今回の噴射時間を、前回までの、前記検出された実燃料噴射情報の実燃料噴射量と前記目標燃料噴射量との比、又は前記検出された実燃料情報の噴射開始時期及び噴射終了時期を用いて補正することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
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