JP5021775B2 - ハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置及び輸送方法 - Google Patents

ハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置及び輸送方法 Download PDF

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本発明は、天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素などのハイドレートを形成する気体状のハイドレート形成物質と水との包接化合物であるハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置及び輸送方法に関する。
ハイドレートは、複数の水分子で構成されるクラスター内にガス状のハイドレート形成物質(例えば天然ガス、メタン、エタン、二酸化炭素など)が包接された構造の水和物である。このハイドレートは、1m3中に約165Nm3もの天然ガスを包蔵することができるなど高いガス包蔵性を有するとともに、大きな生成熱・解離熱、生成・解離差圧、高い反応選択性等の性質を有するため、例えば天然ガスの貯蔵・輸送システムや蓄熱システム、アクチュエータ、混合ガスの分離・精製システムなどの多様な用途での利用が注目されており、現在盛んに研究されている。
天然ガスをハイドレート化し、天然ガスハイドレートとして貯蔵・輸送する技術については既に報告がなされており(例えば特許文献1及び特許文献2参照)、その利点として、天然ガスハイドレートの大気圧下の平衡温度条件が約−80℃であるため、従来実用化されている液化天然ガス(LNG)の大気圧下における貯蔵・輸送温度(−163℃)よりも大幅に緩やかな温度条件で貯蔵・輸送が可能となり、貯蔵・輸送設備の耐性や断熱性を格段に簡略化できることが挙げられている。
特許文献1には、ハイドレートを成形固化装置において輸送に適した形状に形成固化した後、貯蔵容器に収めて貯蔵・輸送する技術について記載されているが、貯蔵・輸送における温度などの諸条件については記載も示唆もなされておらず、貯蔵・輸送時に大部のハイドレートが分解してしまう虞がある。
また、特許文献2には、天然ガスハイドレートにスラリー媒体を加えたハイドレートスラリー燃料を、約1ataにおいて−30℃から0℃の温度範囲内において貯蔵・輸送する技術について記載されているが、その貯蔵・輸送に係る詳細な条件については記載も示唆もなされていない。
特開2001−280592号公報 特開2001−192683号公報
以上のように、ハイドレートを分解することなく貯蔵・輸送することができる技術の提供が求められている。本発明の課題は、貯蔵・輸送時におけるハイドレートの分解を抑制し、効率的にハイドレートを貯蔵・輸送することが可能なハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置及び輸送方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るハイドレートの貯蔵方法の発明は、ハイドレートが貯蔵されている貯蔵槽の雰囲気を循環させることを特徴とする。
本発明において「雰囲気」とは、ハイドレートをとりまく気体または液体(すなわち、流体)である。この特徴によれば、貯蔵槽の雰囲気を循環させるため、ハイドレートをとりまく雰囲気が置換され、貯蔵槽内の温度条件を均一に保つことができる。よって、ハイドレートの分解を抑制することができ、長期間、ハイドレートを安定に保存することができる。
また、本発明の第2の態様に係るハイドレートの貯蔵方法の発明は、ハイドレートが貯蔵されている貯蔵槽の雰囲気と当該ハイドレートとを循環させることを特徴とする。
この特徴によれば、貯蔵槽の雰囲気とハイドレートとを循環させるため、ハイドレートをとりまく雰囲気が置換され、貯蔵槽内の温度条件を均一に保つことができる。よって、ハイドレートの分解を抑制することができ、長期間、ハイドレートを安定に保存することができる。
また、本発明の第3の態様に係るハイドレートの貯蔵装置の発明は、ハイドレートを貯蔵する貯蔵槽と、前記貯蔵槽の雰囲気を循環させる循環手段と、を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、貯蔵槽の雰囲気を循環させる循環手段を備えているため、ハイドレートをとりまく雰囲気が置換され、貯蔵槽内の温度条件を均一に保つことができる。よって、ハイドレートの分解を抑制することができ、長期間、ハイドレートを安定に保存することができる。
また、本発明の第4の態様に係るハイドレートの貯蔵装置の発明は、ハイドレートを貯蔵する貯蔵槽と、前記貯蔵槽の雰囲気と当該ハイドレートとを循環させる循環手段と、を備えていることを特徴とする。
この特徴によれば、貯蔵槽の雰囲気とハイドレートとを循環させる循環手段を備えているため、ハイドレートをとりまく雰囲気が置換され、貯蔵槽内の温度条件を均一に保つことができる。よって、ハイドレートの分解を抑制することができ、長期間、ハイドレートを安定に保存することができる。
また、本発明の第5の態様に係るハイドレートの貯蔵装置の発明は、前記第3の態様において、前記循環手段に、循環する雰囲気の温度をコントロールする加熱・冷却器が設けられていることを特徴とする。
この特徴によれば、循環手段に加熱・冷却器が設けられているため、循環する雰囲気との間で熱交換を行うことができ、雰囲気を所定温度にコントロールすることができる。そして、所定温度に調整された雰囲気が貯蔵槽に循環してハイドレートの周囲をとりまくため、当該ハイドレートの温度条件を確実に制御することが可能である。また、貯蔵するハイドレートの分解が抑制される温度領域に制御することにより、ハイドレートの分解を確実に抑制することができる。
また、本発明の第6の態様に係るハイドレートの貯蔵装置の発明は、前記第4の態様において、前記循環手段に、循環する雰囲気とハイドレートの温度をコントロールする加熱・冷却器が設けられていることを特徴とする。
この特徴によれば、循環手段に加熱・冷却器が設けられているため、循環する雰囲気及びハイドレートとの間で熱交換を行うことができ、雰囲気とハイドレートを所定温度にコントロールすることができる。そして、所定温度に調整された雰囲気とハイドレートが貯蔵槽に循環してハイドレートの周囲をとりまくため、当該ハイドレートの温度条件を確実に制御することが可能である。また、貯蔵するハイドレートの分解が抑制される温度領域に制御することにより、ハイドレートの分解を確実に抑制することができる。
また、本発明の第7の態様に係るハイドレートの輸送方法の発明は、前記第3の態様から前記第6の態様のいずれかの態様に記載のハイドレートの貯蔵装置を輸送手段に搭載してハイドレートを輸送することを特徴とする。
この特徴によれば、ハイドレートの貯蔵装置に貯蔵され、分解が抑制されたハイドレートを輸送するため、輸送時におけるハイドレートの分解、ガス化を確実に回避することができ、ハイドレートを効率的、経済的に輸送することができる。
本発明によれば、ハイドレートを長期間にわたって安定して貯蔵することができるとともに、輸送の際にある程度の時間を要したとしてもハイドレートの分解による損失を最小限に抑えることが可能である。
本発明の第1実施形態に係るハイドレート貯蔵装置の概略構成図である。 ハイドレートの分解性の説明に供する図面である。 本発明の第2実施形態に係るハイドレート貯蔵装置の概略構成図である。
以下、本発明に係るハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置及び輸送方法について説明する。本発明においてハイドレートの種類は特に限定されるものではない。すなわち、ハイドレートを形成するガス状のハイドレート形成物質の種類は、所定の温度、圧力条件でハイドレートを形成するものであればよく、例えば天然ガス(メタンを主成分とし、副成分としてエタン、プロパンなどを含む混合ガス)、メタンガス、エタンガス、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)などを挙げることができる。また、ハイドレートはペレット状、粉末状、顆粒状、圧密ブロック状などに成形することができ、貯蔵・輸送に適した形状にすることが好ましい。また、ハイドレートは自己保存性を発現した状態で貯蔵・輸送することが好ましい。
本発明では、貯蔵時、輸送時のハイドレートの分解を抑制するために、貯蔵槽の雰囲気の循環制御、または貯蔵槽の雰囲気とハイドレートとの循環制御を実施する。雰囲気または雰囲気とハイドレートの循環は、連続的または間欠的に実施することができ、具体的にはハイドレートの種類や貯蔵量、単位時間あたりの循環量などに応じて調整することができる。なお、雰囲気とはハイドレートをとりまく流体であり、具体的には気体または液体である。
図1は本発明の第1実施形態に係るハイドレート貯蔵装置の概略構成図であり、このハイドレート貯蔵装置100は、主要な構成としてハイドレートを貯蔵する貯蔵槽11と、循環手段を備えている。
本実施形態に係るハイドレート貯蔵装置100の雰囲気は気体であり、例えば貯蔵槽11に貯蔵されるハイドレートに含まれるハイドレート形成物質と同種のガス(例えば天然ガス、メタンガスなど)を用いることができる。なお、雰囲気の気体としてハイドレートの一部が分解することによって生成したボイルオフガスや、別途貯蔵槽11に導入したガスを利用することができる。
ハイドレート貯蔵装置100は、ハイドレートを貯蔵槽11内に留めて雰囲気(気体)を循環させる構成、または雰囲気(気体)とハイドレートとを循環させる構成をとることができる。ハイドレートを貯蔵槽11に留めて雰囲気(気体)を循環させる構成を採用する場合には、ハイドレートを貯蔵槽11内に留め、配管13への流出を防止する流出防止手段を設けることが好ましい。
貯蔵槽11は保温性の高い素材、構造からなるものを用いることができ、その内部に所定量のハイドレートを貯蔵することができるように構成されている。また、貯蔵槽11は大気圧程度の圧力に調整される。
また、貯蔵槽11はハイドレートの分解が抑制される温度に調整される。
ここで、ハイドレートを貯蔵する際の貯蔵温度について説明する。図2は、大気圧相当の圧力条件下、ペレット形状に成形し、自己保存性を発現したメタンハイドレートにおける分解性について本発明者が研究した結果を示す図面であり、メタンハイドレートが50%分解するのに掛かる時間と温度との関係を示したものである。すなわち、メタンハイドレートが50%分解するのに掛かる時間が長いほどハイドレートの分解が抑制されており、長期間、安定に貯蔵することが可能であることを意味するものである。
図2に示す如く、メタンハイドレートは280K(7℃)付近より低温側になるにつれて分解が抑制され、250K(−23℃)付近で最も分解が抑制されて50%分解するのに数千時間掛かることがわかる。一方、250K付近より低温側においては、低温であるほど分解が抑制されるという従来の知見と異なり、ハイドレートの分解が促進されてしまい、例えば200K(−73℃)付近では数時間で分解してしまうことがわかる。このように、ハイドレートが分解する温度として、250K(−23℃)付近を中心として高温側と低温側に分解領域が存在するとの知見を得ることができた。またこの結果は、ハイドレートの種類や形状などによって大きく異なるものではなく、ある程度の一般性を有しているものと推測される。以上より、ハイドレートは、低温であるほど安定に存在するという従来の知見と異なり、所定の温度範囲内において分解が抑制され、安定に存在し得ることがわかる。
また、ハイドレートを貯蔵している際に、何らかの原因によりその一部が分解してしまった場合には、ハイドレートの分解が吸熱反応であるために周囲に存在するハイドレートから熱を奪い、そのハイドレートの温度を低下させてしまうことがある。そして、その温度が低温側の分解領域(200K付近)にまで達することにより、分解がより一層促進されて多量のハイドレートが分解、ガス化してしまう虞がある。
しかし本発明においては、本発明者が得た上記知見に基づき貯蔵槽11の温度(貯蔵温度)を−50℃(223K)から−3℃(270K)、好ましくは−40℃(233K)から−10℃(263K)に制御することにより、ハイドレートの分解を確実に抑制するものである。さらに、雰囲気または雰囲気とハイドレートとを循環させることにより、貯蔵槽11の全体を設定温度において均一に制御することができ、温度変化に由来する分解を未然に回避することが可能である。その結果、長期間にわたってハイドレートを安定に保存することができる。
また、貯蔵槽11には、内部温度を測定する温度センサー17を設けることが好ましい。これにより、貯蔵槽11内の温度変化(温度分布)を検出し、それに基づいて後述するポンプ12や加熱・冷却器18を制御することにより、温度変化が大きくなることを未然に回避することができる。なお、温度センサー17は、貯蔵槽11内の各領域での温度差を小さくし、貯蔵槽11全体での温度をより均一に制御する観点から、貯蔵槽11の複数箇所に設置することが好ましい。
循環手段は循環経路を形成する配管13と、雰囲気または雰囲気とハイドレートとを送出するポンプ12から構成されており、雰囲気または雰囲気とハイドレートとを循環させる。貯蔵槽11からの雰囲気または雰囲気とハイドレートとの排出口は複数箇所に設けることが好ましく、配管13を経由して貯蔵槽11に導入される導入口も複数箇所に設けることが好ましい。このような構成とすることにより、貯蔵槽11内において流れが淀む部分(温度変化を生じやすい部分)が構成されることがなくなり、より確実に貯蔵槽11内を同一条件に制御することができる。また、ポンプ12は温度センサー17とリンクして構成されており、当該温度センサー17からの信号に応じて循環量や循環頻度を調整することができるように構成されている。なお、雰囲気が気体の場合には、ポンプに代えてブロアーを用いることができる。
また配管13は保温性が高く、パイプ形状のものを用いることができ、この配管13には加熱・冷却機能を備え、循環する雰囲気または雰囲気とハイドレートの温度をコントロールする加熱・冷却器18を設けることが好ましい。加熱・冷却器18は温度センサー17とリンクして構成されており、例えば温度センサー17において貯蔵槽11の温度が設定温度より高くなったことを検出した場合には加熱・冷却器18を冷却制御し、一方、設定温度より低くなったことを検出した場合には加熱制御することができるようになっている。そして、温度調整された雰囲気または雰囲気とハイドレートが貯蔵槽11に循環することにより、温度変化、温度分布を解消させ、貯蔵槽11を均一な温度条件に保つことができる。なお、加熱・冷却器18としてヒーターを用いることもできる。
次に、図3を参照しつつ本発明の第2実施形態に係るハイドレート貯蔵装置200について説明する。図1を参照しつつ説明した第1実施形態に係るハイドレート貯蔵装置100と同様の構成については同一の符合を付して説明を省略する。
このハイドレート貯蔵装置200は、雰囲気として液体のオイルを用いる構成となっている。オイルはハイドレートと反応することが無く、ハイドレートの貯蔵温度において流体性を維持するものであれば特に限定することなく用いることができ、例えば灯油、シリコン油、重油、軽油などを用いることができる。オイルは、オイル導入手段19を介して、ハイドレートをとりまく程度の量が貯蔵槽11に導入される。
本実施形態に係るハイドレート貯蔵装置200においても、ハイドレートを貯蔵槽11内に留めて雰囲気(オイル)を循環させる構成、または雰囲気(オイル)とハイドレートとを循環させる構成を採用することが可能である。雰囲気であるオイルがハイドレートと混ざり合うことによりスラリーを形成する場合には、雰囲気とハイドレートとを循環させる構成であることが好ましい。
また、図1または図3を用いて説明したハイドレート貯蔵装置を、船舶、航空機または車両などの輸送手段に搭載して消費地に向けて輸送することができる。上述したように本発明に係るハイドレート貯蔵装置においてハイドレートを貯蔵することによりハイドレートの分解を抑制することができるので、消費地への輸送にある程度の時間を要したとしてもハイドレートを効率的かつ経済的に輸送することが可能である。
本発明は、ハイドレートを分解させることなく貯蔵するハイドレートの貯蔵方法、貯蔵装置、及びハイドレートを分解させることなく輸送するハイドレートの輸送方法に利用可能である。
11 貯蔵槽
12 ポンプ
13 配管
17 温度センサー
18 加熱・冷却器
19 オイル導入手段
100、200 ハイドレート貯蔵装置

Claims (6)

  1. ハイドレートが貯蔵されている貯蔵槽の雰囲気を循環させることにより、貯蔵槽内の温度を−50℃から−3℃の範囲内に制御するハイドレートの貯蔵方法であって、
    前記雰囲気がハイドレート形成物質と同種のガスであることを特徴とする、ハイドレートの貯蔵方法。
  2. ハイドレートが貯蔵されている貯蔵槽の雰囲気を循環させることにより、貯蔵槽内の温度を−50℃から−3℃の範囲内に制御するハイドレートの貯蔵方法であって、
    前記雰囲気が液体のオイルであることを特徴とする、ハイドレートの貯蔵方法。
  3. ハイドレートを貯蔵する貯蔵槽と、
    前記貯蔵槽の雰囲気を循環させることにより、貯蔵槽内の温度を−50℃から−3℃の範囲内に制御する循環手段と、を備え、
    前記雰囲気がハイドレート形成物質と同種のガスであることを特徴とする、ハイドレートの貯蔵装置。
  4. ハイドレートを貯蔵する貯蔵槽と、
    前記貯蔵槽の雰囲気を循環させることにより、貯蔵槽内の温度を−50℃から−3℃の範囲内に制御する循環手段と、を備え、
    前記雰囲気が液体のオイルであることを特徴とする、ハイドレートの貯蔵装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載のハイドレートの貯蔵装置において、前記循環手段に、循環する雰囲気の温度を−50℃から−3℃の範囲内にコントロールする加熱・冷却器が設けられていることを特徴とする、ハイドレートの貯蔵装置。
  6. 請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のハイドレートの貯蔵装置を輸送手段に搭載してハイドレートを輸送することを特徴とする、ハイドレートの輸送方法。
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