JP5019982B2 - 水分散型組成物、およびその製造方法 - Google Patents

水分散型組成物、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フィルム、板、繊維等の成形体および成形体表面に塗工された機能性膜等に耐候性を付与するための紫外線吸収層の形成材として使用される水分散型組成物、およびその製造方法に関するものである。
従来から様々な樹脂製の成形体が種々の用途に用いられているが、樹脂製成形体は一般に紫外線に弱いため、耐候性向上を目的として、紫外線を吸収することのできる皮膜(紫外線吸収層)がその成形体表面に設けられている。
紫外線吸収層は、例えば、紫外線吸収性モノマーを含む原料モノマー混合物を溶液重合して得られた紫外線吸収性ポリマー溶液を、成形体に塗工して形成されるものが公知となっている(特許文献1等)。
また、紫外線吸収層を得るための公知の塗工液として、例えば特許文献2〜5に開示されている通り、環境への影響を配慮した水分散型(エマルション型)の紫外線吸収性ポリマー組成物がある。紫外線吸収性モノマーを他のモノマーと共に乳化重合することにより水分散型組成物が得られるが、本発明者が紫外線吸収層の紫外線吸収性を高めるために紫外線吸収性モノマーを高比率(例えば30質量%以上)にしたところ、乳化重合安定性が低下して多数の凝集物が生成する問題が生じた。この問題が生じる原因は、ほとんどが常温で固体(粉体)である紫外線吸収性モノマーは加温しなければ他の重合相手のモノマーと相溶せず、油滴が存在する水相中で進行する乳化重合において安定な油滴を形成できないところにある。なお、溶液重合の場合は、紫外線吸収性モノマーを重合溶剤に溶解させることができたため、このような問題は起こらなかった。
上記の問題がある一方で、本願出願人は、水溶性媒体中で乳化剤を使用せずに紫外線吸収性ポリマーを製造する方法を利用することによって水系の紫外線吸収性樹脂組成物を得ており、当該組成物に関する出願(特許文献6)を既に行なっている。特許文献6で開示されている方法でも、多量の紫外線吸収性モノマーを用いたときの重合安定性は不充分であった。
特開2000−177070号公報 特許第3580832号公報 特開2000−313705号公報 特開2002−212237号公報 特開2004−160734号公報 特開2004−217695号公報
上記の通り、多量の紫外線吸収性モノマーを使用する乳化重合では油滴が安定しないため、工業的問題である重合の安定性が低いことを招いていた。この問題がある一方で、薄膜で十分な耐候性を有する紫外線吸収層を実現しようとすれば、紫外線吸収性ポリマーの製造において紫外線吸収性モノマーを多量に使用することが望まれる。
本発明は、上記事情に鑑み、薄膜であっても優れた耐候性を発揮する紫外線吸収層を形成でき、製造過程の乳化重合において油滴が安定する水分散型組成物、およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明に係る水分散組成物は、水を有し、紫外線吸収層を形成するために用いられる組成物であって、25℃で固体状の紫外線吸収性モノマー(I)30〜85質量部と、前記モノマー(I)と共重合可能かつ架橋性を有さないモノマー(II)70〜15質量部と、前記モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100に対する質量比が20〜50の重合性ノニオン型界面活性剤とを含水媒体中で乳化重合して得られた紫外線吸収性ポリマーを含有することを特徴とする。
前記含水媒体中には、紫外線安定剤が含まれていても良い。この場合、紫外線吸収層の黄変が抑制される。非重合性紫外線安定剤および/または前記モノマー(II)の一部が、前記紫外線安定剤であると良い。紫外線安定剤に非重合性紫外線安定剤が選択されている場合には、カチオン性化合物と本発明に係る水分散組成物との混和安定性が向上する。
前記紫外線吸収性ポリマーの平均粒径は、紫外線吸収層の欠陥が生じ難くして実用的な耐水性を確保する観点から、30〜80nmであることが好ましい。
前記モノマー(I)には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーが含まれていることが好ましい。紫外線吸収層が、長期に亘って優れた耐候性を示すからである。
前記含水媒体中には、非重合性界面活性剤が含まれていないことが好ましい。このような化合物の含量によっては、乳化重合における油滴の安定性に影響を及ぼす場合があるためである。
本発明に係る水分散組成物を使用して紫外線吸収層を形成することにより、紫外線吸収層積層体を製造できる。
本発明に係る製造方法は、25℃で固体状の紫外線吸収性モノマー(I)30〜85質量部と、前記モノマー(I)と共重合可能かつ架橋性を有さないモノマー(II)70〜15質量部と、前記モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100に対する質量比が20〜50の重合性ノニオン型界面活性剤と、含水媒体とを混合し、加熱により前記モノマー(I)を前記モノマー(II)に溶解させた後に重合開始剤を添加することを特徴とする。この方法によれば、本発明に係る水分散組成物の一組成である紫外線吸収性ポリマーを乳化重合で製造する過程において、安定した油滴を形成できる。
本発明に係る水分散組成物により形成された紫外線吸収層は、当該組成物が多量のモノマー(I)を使用して製造されているので、薄膜であっても優れた耐候性を示す。また、本発明に係る水分散型組成物は、その製造のための乳化重合において所定量の重合性ノニオン型界面活性剤を配合するから、エマルション中の油滴が安定すると共に凝集物発生量が抑制される。この抑制により、重合設備からの凝集物除去作業が軽減する上に、紫外線吸収性ポリマーのロスが少なくなる。
含水媒体と当該媒体に分散する紫外線吸収性ポリマーとが、本発明に係る水分散組成物の必須成分である。この組成物は、塗工性に優れ、当該組成物を塗工して形成した紫外線吸収層は、耐候性に優れるだけでなく、耐汚染性にも優れる。
上記水分散組成物の構成成分である紫外線吸収性ポリマーは、紫外線吸収性モノマー(I)、該モノマー(I)と共重合可能かつ架橋性を有さないモノマー(II)、および重合性ノニオン型界面活性剤とを含水媒体中で乳化重合することにより得られる。この乳化重合では、含水媒体中に配合剤を添加しても良い。
(モノマー(I))
モノマー(I)は、25℃で固体状の紫外線吸収性モノマーである。25℃で液状の紫外線吸収性モノマーを原料にした場合には、乳化重合において油滴が安定するので、そのモノマーを紫外線吸収性ポリマー原料として多量使用できる。一方で、前記25℃で固体状のモノマー(I)を原料とする場合には、一般的には油滴が安定しないが、重合性ノニオン型界面活性剤との併用により多量のモノマー(I)を使用することが可能になる。なお、乳化重合における油滴が安定する限り、25℃で液状の紫外線吸収性モノマーを使用しても良い。
好適なモノマー(I)としては、例えば、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系モノマーがある。当該ベンゾトリアゾール系モノマーは、後記一般式(2)で表されるベンゾフェノン系モノマーおよび一般式(3)で表されるトリアジン系モノマーよりも、紫外線吸収性に優れる。
Figure 0005019982
上記一般式(1)中、R1、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。R2は、炭素数1〜12の炭化水素基、−R'−O−(R'は炭素数2または3の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す)または水素結合を形成し得る元素を有する基を表す。R3は水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)におけるR1およびR4のハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかである。炭素数1〜8のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基(イソペンチル基)、tert−ペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基(1,1,3,3,−テトラメチルブチル基)、2−エチルヘキシル基等の直鎖状または分枝状アルキル基;およびシクロヘキシル基等の脂環式アルキル基;が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基等である。
一般式(1)におけるR2の炭素数1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、sec−ペンチレン基、tert−ペンチレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、tert−オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等の直鎖状または分枝状のアルキレン基;シクロヘキシレン基等の脂環式アルキレン基;フェニレン基、キシリレン基、ベンジレン基、フェネチレン基等の芳香族炭化水素基;が挙げられる。なお、R2の「水素結合を形成し得る元素を有する基」とは、紫外線吸収性ポリマー分子間で水素結合を形成し、塗膜(紫外線吸収層)の耐屈曲性、耐水性等の物性を高める作用を有する基である。R2の具体例としては、−NH−、−CH2NH−、−OCH2CH(OH)CH2O−、−CH2CH2COOCH2CH(OH)CH2O−が挙げられる。
上記式(1)で表されるモノマー(I)としては、例えば、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−(メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−2H−メトキシ−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−5−(2'−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−5−(2'−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−メトキシフェニル)−5−(3'−メタクリロイルオキシプロポキシ)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−メタクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−メタクリロイルアミノ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−アクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−ブチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−2−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−2−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシカルボニル)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられる。これら例示した上記式(1)で表されるモノマー(I)において、重合安定性が特に良好なものは、例えば、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールである。
他の好適なモノマー(I)としては、下記一般式(2)で表されるベンゾフェノン系モノマーが挙げられる。このモノマーでは、ベンゾフェノン骨格が紫外線を吸収する。
Figure 0005019982
上記一般式(2)中、R5、R6、R9は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。R7は、−O−、−OCH2CH2O−、−OCH2CH(OH)CH2O−を表す。R8は、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(2)で表される好適なベンゾフェノン系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノンが挙げられる。ベンゾフェノン系モノマーは、対応するベンゾフェノン(紫外線吸収剤として市販されている)と、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応により得られる。
その他のモノマー(I)としては、下記一般式(3)で表されるトリアジン系モノマーが挙げられる。
Figure 0005019982
上記一般式(3)中、R10は−(CH2)n−O−または−CH2CH(OH)−CH2O−を表し、nは1〜20の整数を表す。R11は、水素原子またはメチル基を表す。R12〜R19は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルケニル基、アルキル基を表す。
上記一般式(3)で表されるモノマー(I)としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビスジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
モノマー(I)は、その一種または二種以上を使用することができる。このときのモノマー(I)の使用量が多いほど紫外線吸収層の紫外線吸収特性良化の傾向がある一方で、モノマー(I)量が過剰であると乳化重合の安定性が低下して紫外線吸収性ポリマーの工業的製造が難しくなる。そのため、モノマー(I)の使用量は、モノマー(I)とモノマー(II)の使用量を100質量部としたときに、30〜85質量部であると良く、40〜85質量部であると好ましく、50〜75質量部であると更に好ましい。
(モノマー(II))
モノマー(II)は、上記の通り、モノマー(I)と共重合可能でかつ架橋性を有さないモノマーである。ここで、「架橋性を有さない」とは、製造される紫外線吸収性ポリマーが架橋構造をとらないことである。従って、架橋性を有する二官能以上のモノマー、および紫外線吸収性ポリマーの官能基との反応により紫外線吸収性ポリマーの架橋構造を導くモノマーは、モノマー(II)には該当しない。
モノマー(II)として、架橋性を有さないものを選択すれば、紫外線吸収層の造膜性が良好になり、紫外線吸収層の可撓性・伸張性の低下が抑制される。また、モノマー(II)の種類と量を選択することで、得られる紫外線吸収性ポリマーの特性を変化させることが可能である。
モノマー(II)としては、耐候性に優れた紫外線吸収性ポリマーを実現でき、ベンゾトリアゾール系モノマーとの共重合性が良好なものが好ましい。このようなモノマー(II)としては、(メタ)アクリレートであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、イーストマン社製「Eastman AAEM」)、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ビニルエステル、ハロゲン含有モノマー、窒素含有モノマー、ビニルエーテル、エポキシ基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、および酸性官能基含有モノマーもモノマー(II)に該当する。
上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル等である。
上記ハロゲン含有モノマーとしては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、へプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等である。
上記窒素含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレート等である。
上記ビニルエーテルとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等である。
上記エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製「MGMA」)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製「サイロマーA400」)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製「サイロマーM100」)等である。
上記ヒドロキシル基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製「プラクセルF」シリーズ)等である。
上記酸性官能基含有モノマーとしては、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等である。
モノマー(II)に該当する多くの化合物が在り、その化合物の中には紫外線吸収性ポリマーの紫外線安定性を高めるものも在る。その安定性を高めるモノマー(II)としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が、モノマー(II)に該当する。当該式で表される化合物は、紫外線吸収層の耐候性を一層向上させることができる好適なモノマー(II)である。
Figure 0005019982
上記一般式(4)中、R20は水素原子またはシアノ基を表す。R21は、酸素原子またはイミノ基を表す。R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。R24は、水素原子またはアルキル基を表す。
上記一般式(4)で表されるモノマー(II)としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA87」)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA−82」)、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。
モノマー(II)は、その一種または二種以上を使用することができる。二種以上のモノマー(II)を使用する場合、ヒドロキシル基含有モノマーと一般式(4)で表される化合物を選択することが好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーは、紫外線吸収層の被着体に対する密着性を向上させ、一般式(4)で表される化合物は、紫外線吸収層の耐候性を向上させるからである。
モノマー(II)の使用量は、モノマー(I)とモノマー(II)の使用量を100質量部とした場合に、良好な重合安定性と造膜性を両立するには、15〜70質量部であると良く、15〜60質量部であると好ましく、25〜50質量部であると更に好ましい。
一般式(4)で表される化合物がモノマー(II)の一種になっている場合、モノマー(II)の全量15〜70質量部中の一般式(4)で表される化合物は、0.5〜30質量部であると良く、0.5〜15質量部であると好ましく、0.5〜10質量部であると更に好ましい。一般式(4)で表される化合物が0.5質量部未満であると、その耐候性向上効果が発現せず、30質量部を超える場合には、造膜性が著しく低下すると共に、重合安定性が低下する場合がある。
(重合性ノニオン型界面活性剤)
重合性ノニオン型界面活性剤は、モノマー(I)およびモノマー(II)とラジカル重合可能なプロペニル基等のラジカル重合性基を有する化合物である。当該界面活性剤は、重合で生成する紫外線吸収性ポリマーの構成として取り込まれる。
上記重合性ノニオン型界面活性剤としては、例えば、下記一般式(5)で表されるポリエチレングリコールアルキルエーテル系化合物が挙げられる。当該化合物を選択している場合には、重合安定性が特に良好になる。
Figure 0005019982
上記式(5)において、R25はアルキル基を表し、nは整数である。上記式(5)で表されるポリエチレングリコールアルキルエーテル系化合物としては、例えば、R25が−C1123、nが10〜50である化合物が挙げられる。
また、他の重合性ノニオン型界面活性剤としては、例えば、下記一般式(6)で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物が挙げられる。
Figure 0005019982
上記式(6)において、R26はアルキル基を表し、nは整数である。上記式(6)で表されるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物としては、例えば、R26が−C919、nが10〜50である化合物が挙げられる。
市場において重合性ノニオン型界面活性剤を入手可能である。そのような重合性ノニオン型界面活性剤としては、ADEKA社製「アデカリアソープER」シリーズ(ER−10、ER−20、ER−30、ER−40等)、ADEKA社製「アデカリアソープNE」シリーズ(NE−10、NE−20、NE−30等)、第一工業製薬社製「アクアロンRN」シリーズ(RN−10、RN−20、RN−30、RN−50、RN−2025等)等がある。
重合性ノニオン型界面活性剤は、その一種または二種以上を使用することができる。当該界面活性剤量が少なければ、乳化重合において油滴が安定しないだけではなく、凝集物が多く発生してしまう。一方で、前記界面活性剤の量が過剰であると、紫外線吸収層を構成する紫外線吸収性モノマー(I)の絶対量が少なくなるため、紫外線吸収層の非粘着性および耐水性が低下する場合がある。そのため、モノマー(I)とモノマー(II)との全量100に対しての重合性ノニオン型界面活性剤の量は、20〜50質量部であると良く、25〜40質量部であると好ましく、25〜35質量部であると更に好ましい。
(配合剤)
配合剤は、紫外線吸収性ポリマーの乳化重合における前記含水媒体に配合するものであり、モノマー(I)、モノマー(II)、および重合性ノニオン型界面活性剤以外の一種または二種以上の化合物である。油滴の安定性を損なうことが無い限り、前記含水媒体に配合剤を添加することが許容される。
配合剤としては、紫外線吸収層の黄変を抑制する観点からは、非重合性紫外線安定剤が好ましい。当該安定剤としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系紫外線安定剤が好ましい。配合剤にする紫外線安定剤の量は、モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100に対する質量比として、0.5〜30であると良い(但し、モノマー(II)として紫外線安定性を有する化合物が含まれている場合、その紫外線安定性モノマー(II)と配合剤である紫外線安定剤との全量が、モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100に対する質量比として、0.5〜30であると良い)。
配合剤としてアニオン型、ノニオン型、カチオン型、または両性型、かつ、非重合性の公知の界面活性剤を使用しても良いが、その使用量によっては乳化重合における油滴を不安定にする場合がある。そのため、非重合性界面活性剤の使用を避けることが好ましい。
非重合性アニオン型界面活性剤としては、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート;が挙げられる。
非重合性ノニオン型界面活性剤としては、例えば、アルキルフェノール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等のポリオールと脂肪酸のエステル;エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物;が挙げられる。
非重合性カチオン型界面活性剤としては、アミン塩、イミダゾール塩、第4級アンモニウム塩等である。
非重合性両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等である。具体的な非重合性両性界面活性剤としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、第一工業製薬社製「アモーゲンK」)が挙げられる。
(水分散組成物の製法)
本発明の水分散組成物は、以下の乳化重合により製造される。なお、水分散組成物の一構成である紫外線吸収性ポリマーは、水媒体中において重合性ノニオン型界面活性剤により形成された油滴中で、モノマー(I)、モノマー(II)、および重合性ノニオン型界面活性剤がラジカル重合して生成するものである。
一括仕込み法、モノマー滴下法、プレエマルション法等を、乳化重合の方法として使用でき、一括仕込み法が乳化重合の方法として好ましい。モノマー(II)に25℃で固体状のモノマー(I)を溶解させるためには加熱が必要なので、モノマー滴下法を採用する場合には、滴下ロートに加熱設備を設けなければならない。しかし、そのような設備は、一括仕込み法では不要である。
一括仕込み法を採用する場合、モノマー(I)、モノマー(II)、重合性ノニオン型界面活性剤、および水を反応容器内に仕込む(必要に応じて配合剤も仕込む場合がある)。このとき、反応容器内への仕込み順序は特に限定されない。反応容器に仕込むモノマー(I)、モノマー(II)、および重合性ノニオン型界面活性剤の量は、上記の通りである。また、モノマー(I)およびモノマー(II)の全量は、モノマー(I)、モノマー(II)、および水の合計を100質量%とした場合に、25〜45質量%であると良い。この範囲であれば、重合時の温度制御が容易になる上に、適切な厚みの紫外線吸収層を形成できる。より好ましいモノマー(I)およびモノマー(II)の全量は、25〜35質量%である。
なお、反応器容器に仕込む水には、有機溶剤を4.0質量%程度以下含ませても良い。例えば有機溶剤にジエチレングリコール、ブチルセロソルブ等の高沸点溶剤を用いると、モノマー(I)がモノマー(II)に溶解しやすくなると共に、紫外線吸収層形成の助剤として作用するからである。また、他に用い得る有機溶剤としては、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ダワノール(登録商標:ダウケミカル社製)等のプロピレングリコール系溶剤等がある。ただし、後記のVOCフリーを達成するには、水のみを重合用媒体とすることが好ましい。
上記モノマー(I)等を反応容器内に仕込んだ後、反応容器内を80℃以上に加温すればモノマー(I)をモノマー(II)に溶解させることができる。モノマー(I)の溶解を確認するには、反応容器内部の液体を少量サンプリングして、目視で確認可能である。
続いて、反応容器内の温度を70〜80℃程度に維持し、重合開始剤を添加して乳化重合を行う。重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物;が挙げられる。また、これらの重合開始剤と共に、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムやL−アスコルビン酸等を用いることにより、レドックス系開始剤としてもよい。重合開始剤の好適使用量は、モノマー(I)およびモノマー(II)の全量を100質量%とした場合に、0.01〜1質量%である。重合開始剤量が少な過ぎると、重合完結に時間がかかることがあるが、多過ぎると重合安定性・貯蔵安定性が低下する上に、紫外線吸収層の耐水性等の物性が悪化することもあるので好ましくない。
重合開始剤添加後、乳化重合が開始すると発熱が始まるが、そのときの初期発熱は95℃以下に抑制することが好ましい。なお、重合初期とは、モノマー(I)等の質量にもよるが、大体30分程度である。その後は、75〜95℃で重合を続ける。重合反応は、pH2〜10で行われると良い。
反応時間は、反応容器内に仕込んだモノマー(I)、重合開始剤等の質量および種類に応じて、効率よく乳化重合反応を完結し得るように適宜設定すればよい。その時間は、通常、1〜10時間程度である。なお、紫外線吸収性ポリマーが酸基を含有する場合には、乳化重合の前、途中または重合後に、中和しても良い。
乳化重合後、必要に応じて固形分を調整することにより、本発明に係る水分散型組成物が得られる。当該組成物は、VOCフリーであることが好ましい。ここで、VOCとは、WHOによって分類された室内空気汚染源となる可能性のある有機化合物のうちの沸点が50−100℃〜240−260℃である揮発性有機化合物のことである。VOCフリーというためには、このような揮発性有機化合物が、組成物中0.5質量%以下であることが望ましい。
(紫外線吸収性ポリマー)
紫外線吸収性ポリマーの平均粒径が30〜80nmであると、塗工性が良好、かつ、耐水性に優れた紫外線吸収層を形成しやすいため好ましい。より好ましい平均粒径は、30〜60nmである。ここで、エマルションのポリマー粒子の平均粒径は、例えば、Particle Sizing System社製「NICOMP MODEL 380」を用いて測定することができる。解析方法は、VOLUME Weighted GAUSSIAN DISTRIBUTION Analysis(Solid Particle)を採用すればよい。前記平均粒径を調整するには、製造した水分散組成物を濾過等の公知の分級方法で処理すると良い。この場合、平均粒径5μmを超える粗大粒子を除去しておくことが好ましい。粗大粒子が原因になって、紫外線吸収層に欠陥が生じる場合があるからである。
なお、紫外線吸収性ポリマーを、後記紫外線により劣化する樹脂に高分子量紫外線吸収剤として配合すれば、その樹脂の耐候性を改善することができる。
紫外線吸収性ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、5万以上である。Mwは、例えばGPC等で測定することができる。本発明における紫外線吸収性ポリマーは、Mwが100万を超えるものであっても良い。
また、紫外線吸収性ポリマーのTgは、0〜80℃であると好ましく、10〜60℃であるとより好ましい。TgはDSC(示差走査熱量測定装置)やTMA(熱機械測定装置)によって求めることができる。また、下記式によって求められる計算値(以下、「計算Tg」ということがある)を目安とすると、簡便である。
Figure 0005019982
上記式中、Tgはガラス転移温度(K)を示し、W1、W2、…Wnは、各モノマーの質量分率を示し、Tg1、Tg2、…Tgは、対応するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を示す。なお、ホモポリマーのTgは、「POLYMER HANDBOOK 第3版」(John Wiley & Sons, Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
(水分散組成物)
上記乳化重合により製造された水分散組成物は、本発明の水分散組成物に該当する。また、水と上記乳化重合法により製造された紫外線吸収性ポリマーを含有する水分散組成物も本発明に該当する。
本発明の水分散組成物には、他の成分が添加されていても良い。その添加成分としては、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト樹脂、アルミキレートおよびジルコニア等の金属系架橋剤等の硬化剤(この場合は紫外線吸収性ポリマーにヒドロキシル基および/またはカルボキシル基を導入しておく);ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、インドール系等の有機系紫外線吸収剤;酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤;立体障害ピペリジン化合物(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「チヌビン123」、「チヌビン144」、「チヌビン765」)、ヒンダードアミン系紫外線安定剤(例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA−31」)等の添加型の紫外線安定剤;塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂;レベリング剤、酸化防止剤、タルク等の充填剤、防錆剤、蛍光性増白剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、増粘剤、コロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機微粒子やポリメチルメタクリレート系のアクリル系微粒子、成膜助剤等の塗料分野で一般的な添加剤が挙げられる。これらの他の添加成分は、紫外線吸収層における紫外線吸収性ポリマー量が50質量%以上(より好ましくは80質量%以上)になるように使用することが望ましい。
フィルム、板、繊維等の成形体自体、および成形体表面に塗工された機能性膜等のいずれかの表面に、本発明に係る水分散組成物を塗工すれば、紫外線吸収層を備えた積層体を得ることができる。このとき、紫外線により劣化し易い樹脂を成形体(基材)として使用できる。「紫外線により劣化する」とは、紫外線により主鎖が切断して分子量が低下したり、逆に架橋によってゲルが形成する等の化学構造の変化により、機械強度・透明性低下あるいは黄変等の物性低下を起こすことをいう。
上記の紫外線により劣化する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)が挙げられ、これらの樹脂表面に本発明の水分散組成物を塗工することにより紫外線吸収層を形成できる。また、本発明の水分散組成物を使用して、JSR社製「ARTON」、日本ゼオン社製「ZEONEX」、日立化成社製「OPTREZ」などの光学用樹脂等の表面に紫外線吸収層を形成しても良い。中でも、安価で軽くて丈夫でかつ透明性に優れたポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
また、上記の樹脂としては、他に、下記式(7)で示されるラクトン構造を有するポリマーが挙げられる。
Figure 0005019982
上記式(7)中、R27、R28およびR29は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。前記有機残基としては、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキレン基、芳香環等を挙げることができる。
上記成形体の形状は、特に限定されず、汎用性の高い平板状、曲板状、波板状等の板状またはフィルム状であっても良い。また、木目印刷等の印刷で表面が装飾された樹脂基材を、上記成形体に使用することも可能である。更に、ガラス等の無機質透明基材で作られた容器等の内容物を紫外線から守る目的で、無機質透明基材の外表面に紫外線吸収層を設けることもできる。
水分散組成物を成形体に塗布する方法としては、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート等の公知の塗工方法がある。
紫外線吸収層の紫外線吸収性能は、Lambert−Beerの法則により、層の厚みと、紫外線吸収性ポリマーに導入されている紫外線吸収性基の量とに依存する。つまり、その紫外線吸収性能は、モノマー(I)の使用量に依存する。従って、モノマー(I)の使用量と、紫外線吸収層に要求される耐候性や紫外線吸収性能とを勘案して、紫外線吸収層の厚さを決定すればよい。通常、0.5〜500μmの範囲内である。厚さが500μmを超えると、紫外線吸収性能が飽和してコスト的に無駄である。逆に厚さが0.5μm未満では、成形体上へ均一に塗工するのが困難であると共に、紫外線吸収性能も不充分になるおそれがある。より好ましい厚さの範囲は1〜300μm、さらに好ましくは2〜50μmである。
本発明の組成物を成形体に薄膜状に塗布して紫外線吸収層を形成するときの乾燥温度は、通常、室温(あるいは外気温)〜200℃で乾燥させるのが好ましい。
成形体と紫外線吸収層とを有する紫外線吸収層積層体(当該積層体には、成形体と紫外線吸収層との間に他の層を有するものも該当する)は、紫外線吸収層が耐水性・強度・耐候性等種々の特性に優れるので、このまま種々の用途に活用できるが、最外表面にハードコート層が設けられていても良い。ハードコート層は、高硬度で耐擦傷性に優れた塗膜を形成することのできる樹脂を用いて形成することが好ましい。そのような塗膜を形成できる樹脂としては、例えば、特開2000−177070号公報で開示されているようなシリコーン系硬化性樹脂や有機系硬化性樹脂が好ましい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例および比較例において、「部」および「%」とあるのは、それぞれ質量部および質量%を表す。
(実施例1)
モノマー(I)として、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(以下、「UVA−1」)65部を使用し、モノマー(II)として、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン2.0部(ADEKA社製「アデカスタブLA−82」;紫外線安定剤)、2−エチルヘキシルアクリレート31部、およびヒドロキシエチルメタクリレート2.0部を使用し、次の通り、水分散型組成物を調製した。撹拌機、還流冷却機、窒素ガス導入管、温度計および滴下ロートを備えたセパラブルフラスコに、モノマー(I)を仕込み、更にモノマー(II)を仕込んで、窒素ガスを導入して撹拌した。その後、上記フラスコ内に、重合性ノニオン性型界面活性剤1(ADEKA社製「アデカリアソープER−20」)の25%水溶液120部、および脱イオン水239.1部を加え、加熱しながら、80〜85℃で1時間撹拌した。粉体であったUVA−1が全て溶解したことを目視にて確認した後、70℃に調温した。次に、重合開始剤である2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の10%水溶液5.0部を上記フラスコ内に添加し、乳化重合を開始させた。当該重合では、初期発熱を95℃以下に抑えながら30分程度経過した後、80〜85℃に調温し、その後約2時間熟成した後、冷却した。以上の操作により水分散型組成物を調製した。この水分散型組成物において、分散粒子の平均粒径は41nm、固形分は30%、pHは6.5、粘度は6.4mPa・sであった。また、凝集物量は0.00%、であった。
なお、上記分散粒子の平均粒径、固形分、pH、および粘度は、以下の通りにして求めた値である。平均粒径の算出では、Particle Sizing System社製「NICOMP MODEL 380」を使用し、VOLUME Weighted GAUSSIAN DISTRIBUTION Analysis(Solid Particle)を解析方法として採用した。固形分は、アルミ皿に水分散型組成物を約1g取り、110℃で1時間、熱風乾燥機内で乾燥する前後の質量を精秤して算出した。pH値は、25℃に調温した水分散組成物をデジタルpHメータ(堀場製作所製)により測定した。粘度は、B型粘度計(トキメック社製デジタル粘度計「M−BII」)を使用し、25℃、ローターNo.1、回転数60rpmの条件で測定した。
また、上記凝集物量は、次の通り算出した。予め計量した300メッシュ金網によって水分散組成物を濾過し、濾取された凝集物を金網ごと100℃の熱風乾燥機内で3時間乾燥した。その後金網を計量し、次式により凝集物量を算出した。
Figure 0005019982
(実施例2〜22、比較例1〜7)
実施例1と同様にして実施例2〜22および比較例1〜7の水分散組成物を調製し、各水分散組成物における平均粒径、固形分、pH、粘度、および凝集物量を求めた。ここで、各水分散組成物の調製に使用した原料比は、後記表1〜3に示す比率とした。なお、実施例15においては、非重合性紫外線安定剤をモノマー(II)と共に反応容器内に仕込んだ。比較例2および3においては、非重合性ノニオン型界面活性剤または非重合性アニオン型界面活性剤を、重合性ノニオン型界面活性剤に替えて添加した。比較例4、6および7においては、非重合性ノニオン型界面活性剤を、重合性ノニオン型界面活性剤と共に添加した。また、比較例5においては、グリシジルメタクリレート(GMA)をモノマー(II)と共に加えた。
以上の実施例および比較例の水分散組成物について、その製造過程における重合安定性を確認した。更に、各水分散組成物について、塗工性、およびカチオン混和性を評価した。また、各水分散組成物を使用して形成した紫外線吸収層について、粗大粒子、耐汚染性、非粘着性、耐水性、耐黄変性、標準耐候性、および伸長後耐候性の評価を行った。これらの評価の詳細は、以下の通りである。なお、以下においては、「紫外線吸収層」と「塗膜」とは同義である。
(重合安定性)
水分散組成物中における上記凝集物量算出値から、乳化重合における重合安定性を評価した。評価基準は、次の通りとした。
凝集物量0.00〜0.09%:◎
凝集物量0.10〜0.19%:○
凝集物量0.20〜0.49%:△
凝集物量0.50%以上:×
(塗工性)
水分散型組成物を、バーコーター♯30で乾燥後塗膜の厚みが11.7μmになるようにガラス板(7cm×15cm;以下同じ)上に塗工した。このガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置し、3分間乾燥した。その後、乾燥機から取りだして、室温(25℃)でしばらく静置した後、塗膜のハジキ・シワ・ワキ(気泡のようなもの)等の欠陥の有無および縮みを目視で観察した。その観察における評価基準は、次の通りである。
欠陥が全くなく、塗膜の縮みも認められなかった:◎
欠陥がわずかに認められ、塗膜の縮みが塗布幅(7cm)の10%以内であった:○
欠陥が確認され、塗膜の縮みが塗布幅(7cm)の30%以内であった:△
欠陥が塗膜全面に確認され、膜の縮みが塗布幅(7cm)の50%以内であった:×
(カチオン混和性)
5%ポリビニルアルコール(クラレ社製「クラレポバール」)水溶液50部と、水分散組成物10部とを混合・攪拌し、攪拌中に1%ポリエチレンイミン(日本触媒社製「エポミンSP−006」)水溶液10gを徐々に添加してカチオン混合物を調製した。この調製直後のカチオン混合物の状態、および50℃で1ヶ月放置した後の前記混合物の状態を目視確認した。その確認での評価基準は、次の通りとした。
調製直後および放置後共に、異常が無かった:◎
調製直後の異常は無かったが、放置後にやや粘性が増加:○
調製直後に少量のブツの発生が認められ、放置後に異常なし又はやや粘性が増加:△
調製直後に大量のブツが発生、または、放置後に粘性が非常に増加:×
(粗大粒子)
保留粒径5μm、捕集効率80%の定性濾紙No.2を用いて、水分散型組成物の自然濾過を行った。濾過後の水分散組成物を、バーコーター♯12で乾燥後塗膜の厚みが4.7μmになるようにガラス板上に塗工し、このガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置し、3分間乾燥した。その後、乾燥機から塗工したガラス板を取りだして、室温(25℃)で静置した後、粒径5μm以上の粗大粒子の存在を目視で確認した。この確認において、縮んだ塗膜の場合にはその塗膜全体を見て確認した(以下、同じ)。粗大粒子の評価基準は、次の通りとした。
粗大粒子が認められなかった:◎
3個以下の粗大粒子が認められた:○
4〜10個の粗大粒子が認められた:△
全面に粗大粒子が認められた:×
(耐汚染性)
水分散型組成物を、バーコーター♯30で乾燥後塗膜の厚みが11.7μmになるようにガラス板上に塗工し、このガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置し、3分間乾燥した。その後、塗工したガラス板を乾燥機から取りだして、室温(25℃)で静置した後、2液型エポキシ樹脂で塗膜の四辺をシールし、塗膜とガラス板の隙間に水が入るのを防いだ。この試料を、23℃、65%RHの恒温恒湿室に1日静置してから、0.05%のカーボンブラック粒子が分散している懸濁液を、試料の塗膜面に刷毛で1回塗布し、50℃で1時間乾燥させた。次いで、塗膜面を流水に当てながら、刷毛で30回こすって洗浄した。室温で乾燥させた後、表面の汚れ状態を目視で観察した。耐汚染性の評価基準は、次の通りとした。
塗膜に汚染が全く認められず、透明性があった:◎
塗膜が部分的に黒っぽいが、透明性は維持されていた:○
塗膜が全体的に黒っぽいが、透明性がある程度維持され、塗膜を通じて新聞紙の小さい文字を判別できた:△
塗膜が全体的に黒っぽい上に透明性が無く、塗膜を通じて新聞紙の小さい文字を判別することが困難であった:×
(非粘着性)
水分散型組成物を、バーコーター♯30で乾燥後塗膜の厚みが11.7μmになるようにガラス板上に塗工し、このガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置し、3分間乾燥した。この試料を、23℃、65%RHの恒温恒湿室に1日静置した。この試料の上に、ガーゼ1枚(日本薬局方のガーゼ:タイプ1:萬星衛生材料社から入手)、ガラス板(カバーガラス;2cm×2cm)、錘(400g)をこの順序に重ねて載せ、50℃の熱風乾燥機中で10分間加温した。その後、乾燥機から取りだして、室温(25℃)で1時間静置し、錘とカバーガラスを取り除いた後、ガーゼを手で剥離した。そのときの状態を次の基準で評価した。
ガーゼを剥離する際に速やかに剥がれ、ガーゼ痕が塗膜に認められなかった:◎
ガーゼを剥離する際に少し抵抗があるがきれいに剥がれ、ガーゼ痕が塗膜に認められなかった:○
ガーゼを剥離する際にかなり抵抗があり、ガーゼ痕がはっきりと認められた:△
ガーゼを剥離する際に糸くずが塗膜に残った:×
(耐水性)
水分散型組成物を、バーコーター♯30で乾燥後塗膜の厚みが11.7μmになるようにガラス板上に塗工し、このガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置し、3分間乾燥した。この試料を、23℃、65%RHの恒温恒湿室に1日静置した後、ガラスピペットで脱イオン水を塗膜に1滴たらし、塗膜状態を次の基準で評価した。
異常が全く無かった:◎
わずかに蛍光を示すが、塗膜の透明性が維持されていた:○
塗膜の白化傾向が認められ、塗膜を通じて新聞紙の小さい文字を判別することが困難であった:△
塗膜の白化傾向が認められ、水滴が蒸発した後の塗膜に水滴痕が認められた:×
(耐黄変性)
バインダー(日本触媒社製「アクリセットEX−35」)100部、高沸点溶剤(チッソ社製「CS−12」)5部、分散剤(花王社製「デモールEP」)0.3部、消泡剤(サンノプコ社製「ノプコ8034L」)0.2部、粘性調整剤(ADEKA社製「アデカノールUH−420」)0.3部、顔料(石原産業社製酸化チタン「R−930」)40部、および水19部を配合し、白色塗料を調製した。この白色塗料をアプリケータによりガラス板表面に塗布した後、室温で一日乾燥し、更に80℃の乾燥機中で5日間乾燥した後、室温で一日放置してガラス板表面に白色塗膜を形成した。この白色塗膜表面に、バーコーター♯30で乾燥後塗膜の厚みが11.7μmになるように水分散型組成物を塗工し、そのガラス板を110℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に60分間載置した。この載置後の塗膜を評価対象とした。これとは別に、上記と同様にして白色塗膜表面に水分散組成物を塗工し、ガラス板を110℃乾燥機内に3分間置き、評価対象塗膜と比較するための基準塗膜を作製した。評価対象塗膜と基準塗膜とを目視で比較し、評価対象塗膜の黄変を確認した。耐黄変性の評価は、次の基準で行なった。
基準塗膜と差異がなかった:◎
基準塗膜よりも僅かに淡く黄変:○
基準塗膜よりも淡く黄変:△
基準塗膜よりも明らかに黄変、または褐色化:×
(標準耐候性)
ガラス板(30cm×30cm)の上に膜固定用のポリ塩化ビニルフィルム(20cm×30cm;厚み100μm)を載置し、フィルムの4隅をセロハンテープでガラス板に貼り付けて、その上に、水分散型組成物をバーコーター♯12で乾燥後塗膜の厚みが4.7μmになるように塗工し、このガラス板を80℃の熱風乾燥機内の水平なガラス板上に載置して3分間乾燥した。この試料を、室温で1時間静置した後、塗膜を塗工したフィルムをガラス板上から剥離した。このフィルムの裏面の端、約1cmに両面テープを貼り付けてガラス板に載せて1kg荷重のローラーを1往復させて圧着し、紫外線劣化促進試験機(「アイスーパーUVテスター UV−W131」:岩崎電気社製)にセットして、60℃、50%RHの雰囲気下で、120mW/cm2の紫外線を50時間連続照射した。照射後の塗膜外観を目視で観察し、次の基準で評価した。
塗膜に全く異常が無かった:◎
塗膜が僅かに着色していた:○
塗膜の半分程度が着色していた:△
塗膜全面が着色していた:×
(伸長後耐候性)
標準耐候性の評価と同様にして塗膜を形成し、ポリ塩化ビニルフィルムから剥がし取った。この剥がした塗膜を、引張試験機(「オートグラフAGS100D」:島津製作所製)により、50℃雰囲気下、引張速度5mm/minで100%引張って固定し、1時間放置した。その後、試験機から伸張後の塗膜を取り外し、標準耐候性の評価と同様にして、50時間の紫外線照射を行った。上記と同様の基準で塗膜外観を評価した。
以上の評価結果を表1〜3に示す。なお、表中における用語は、下記の意味である。
UVA−1:2−[2−ヒドロキシ−5−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール
UVA−2:2−[2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
HALS:4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン(ADEKA社製「アデカスタブLA82」)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート(ヒドロキシル基と反応するため架橋性モノマーに該当する。)
重合性ノニオン型界面活性剤1:ADEKA社製「アデカリアソープER−20」(上記一般式(5)で表されるR25が−C1123、nが20であるポリエチレングリコールアルキルエーテル系化合物に該当する。)
重合性ノニオン型界面活性剤2:第一工業製薬社製「アクアロンRN−20」(上記一般式(6)で表されるR26が−C919、nが20であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物に該当する。)
非重合性ノニオン型界面活性剤:花王社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤「エマルゲン1118S」
非重合性アニオン型界面活性剤:第一工業製薬社製「ハイテノールLA−10」
重合開始剤:2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩
Figure 0005019982
Figure 0005019982
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表1〜3の結果から次のことを確認することができる。
(1)重合性ノニオン型界面活性剤を乳化剤として使用した全ての実施例では、重合安定性に優れていた(実施例20の重合安定性も実用上の許容範囲内である)。その一方で、比較例1〜4、比較例6、および比較例7では、乳化重合中の凝集物の発生または乳化重合中のゲル化のために重合安定性に劣っていた。つまり、実施例では、乳化重合における油滴が安定していた。
(2)架橋性モノマーを使用した比較例5では、重合安定性が優れていたものの、全ての実施例よりも紫外線吸収層の伸長後耐候性が悪かった。
(3)実施例では、重合安定性および耐候性だけでなく、塗工性および耐汚染性にも優れていた。
本発明の水分散型組成物は、有機溶媒による環境汚染を防ぎ、種々の素材からなる成形体に、優れた耐候性を長期に亘って付与することができる。
従って、本発明の水分散型組成物は、内容物や成形体(基材)を紫外線から保護するための劣化保護用途、例えば、薬品・食品等を包装する材料やガラス瓶等に紫外線吸収層を形成するためのコーティング剤として利用可能である。また、染料等の色素の退色防止用コーティング剤としてや、フッ素樹脂フィルム等のプラスチック基材同士を貼り合わせする際の粘着剤や接着剤、あるいはシリコーン系やアクリル系のハードコート層用のプライマーとしても使用できる。さらには、耐候性記録液、繊維処理剤、絶縁素子や表示素子の絶縁用コーティング剤としても用い得る。
本発明の紫外線吸収層積層体(「フィルム」と表現される積層体も含む)は、記録材料(可逆性感熱用、溶融転写用、昇華転写用、インクジェット用、感熱用、ICカード、ICタグ等)、薬品・食品等の包装材、太陽電池用バックシート、マーキングフィルム、感光性樹脂板、粘着シート、色素増感型太陽電池、高分子固体電解質、紫外線吸収絶縁膜、各種光学フィルム(偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム等)、建築材料用フィルム(ガラス飛散防止フィルム、化粧シート、窓用フィルム)、屋内外のオーバーレイ用フィルム(表示材料、電飾看板)、農業用フィルム、シュリンクフィルム等として利用可能である。

Claims (8)

  1. 水を有し、紫外線吸収層を形成するために用いられる水分散型組成物であって、
    25℃で固体状の紫外線吸収性モノマー(I)30〜85質量部と、前記モノマー(I)と共重合可能かつ架橋性を有さないモノマー(II)70〜15質量部と、前記モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100に対する質量比が20〜50の重合性ノニオン型界面活性剤とを含水媒体中で乳化重合して得られた紫外線吸収性ポリマーを含有することを特徴とする水分散型組成物。
  2. 前記含水媒体中に紫外線安定剤が含まれている請求項1に記載の水分散型組成物。
  3. 前記紫外線安定剤が、非重合性紫外線安定剤および/または前記モノマー(II)の一部である請求項2に記載の水分散型組成物。
  4. 前記紫外線吸収性ポリマーの平均粒径が、30〜80nmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分散型組成物。
  5. 前記モノマー(I)として、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーが含まれている請求項1〜4のいずれか1項に記載の水分散型組成物。
  6. 非重合性界面活性剤を、前記含水媒体中に含まない請求項1〜5のいずれか1項に記載の水分散型組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の水分散型組成物により紫外線吸収層が形成された紫外線吸収層積層体。
  8. 水分散型組成物の製造方法であって、
    25℃で固体状の紫外線吸収性モノマー(I)30〜85質量部と、前記モノマー(I)と共重合可能かつ架橋性を有さないモノマー(II)70〜15質量部と、前記モノマー(I)およびモノマー(II)の全量100質量部に対して20〜50質量部の重合性ノニオン型界面活性剤と、含水媒体とを混合し、
    加熱により前記モノマー(I)を前記モノマー(II)に溶解させた後に重合開始剤を添加することを特徴とする水分散型組成物の製造方法。

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