本発明の請求項1の発明は、光ディスクの所定の記録層に向けた出射光を発生する光源と、出射光を所定の記録層で集束させる対物レンズと、出射光が所定の記録層で反射し対物レンズを通過した反射光を受光する受光器と、対物レンズと受光器との間に配置され、受光器に向けて集束してくる反射光の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器の前側と後側としたフォーカス制御用の光を生成する非点収差生成素子と、を備え、非点収差生成素子は、面上に形成され、複数の輪帯部と、隣接する輪帯部をつなぐ段差部と、を有し、対物レンズのトラッキング方向の動作にかかわらず所定の記録層よりも奥側の記録層からの反射光が非点収差生成素子において輪帯部にのみ入射する構成とした光ピックアップ装置とした。
所定の記録層よりも奥側の記録層からの反射光の焦点位置は、所定の記録層からの反射光の焦点位置よりも光ディスクに近い。そのため、奥側の記録層からの反射光は、所定の記録層からの反射光よりも集束した状態で非点収差生成素子に入射する。一方、対物レンズがトラッキング方向に動作すると非点収差生成素子に入射する反射光の位置も変化する。そして反射光が非点収差生成素子の段差部にかかると段差部で反射された光は受光器に正しく入射しない。その影響を受ける度合いは入射する反射光が集光されているほど大きい。本発明において、奥側の記録層からの反射光は、非点収差生成素子の輪帯部にのみ入射する構成としたため、段差部による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有する光ディスクを用いて対物レンズをトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、本発明によれば、トラッキング方向への対物レンズ動作時においても奥側の記録層からの反射光は非点収差生成素子の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、非点収差生成素子は、輪帯部を反射鏡部とするフレネルミラーとした光ピックアップ装置とした。
フレネルミラーは、回折型のミラーよりも多次回折光の発生を抑制することができるため、光ディスクからの反射光をフォーカス制御用の光として効率良く利用することができる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、非点収差生成素子は、輪帯部をレンズ部とするフレネルレンズとした光ピックアップ装置とした。
フレネルレンズは、回折型のレンズよりも多次回折光の発生を抑制することができるため、光ディスクからの反射光をフォーカス制御用の光として効率良く利用することができる。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、輪帯部は同心楕円状に形成され、奥側の記録層からの反射光は対物レンズのトラッキング方向の動作にかかわらず最も内側の輪帯部にのみ入射する光ピックアップ装置とした。
最も内側の輪帯部は、トラッキング方向に相当する方向の長さが長く、対物レンズの位置が大きく変化しても奥側の記録層からの反射光は最も内側の輪帯部からはみ出しにくい。そのため、トラッキング方向への対物レンズ動作時においても奥側の記録層からの反射光は非点収差生成素子の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、所定の記録層からの反射光を最も内側の輪帯部の中心部に入射させた光ピックアップ装置とした。
対物レンズがトラッキング方向のどちらの向きに動作しても、奥側の記録層からの反射光は輪帯部からはみ出しにくい。そのため、トラッキング方向への対物レンズ動作時においても奥側の記録層からの反射光は非点収差生成素子の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、光源は1層のみの記録層を有する第2の光ディスクに向けた第2の出射光を出射光の近傍で発生し、第2の出射光が第2の光ディスクで反射した反射光を最も内側の輪帯部の中心部からずれた位置に入射させた光ピックアップ装置とした。
第2の光ディスクは、記録層は1層のみなので、その記録層以外からの反射光は本来存在しない。そのため、非点収差生成素子に集束状態で入射する光が存在しないので反射光消失状態は発生しない。したがって、第2の出射光が第2の光ディスクで反射した反射光が段差部に入射しても影響は小さいため、最も内側の輪帯部の中心部からずれた位置に入射させることができる。よって、2種類の出射光を発生させる光源を用いた光ピックアップ装置を構成することができる。
請求項7の発明は、請求項1の発明において、輪帯部のうち最も内側の輪帯部の高低差は段差部の高低差よりも大きくした光ピックアップ装置とした。
最も内側の輪帯部の高低差を大きくすることで、最も内側の輪帯部の中心部から最も内側の段差部までの距離を大きくすることができる。したがって、対物レンズの位置が大きく変化しても奥側の記録層からの反射光は最も内側の輪帯部からはみ出しにくい。そのため、トラッキング方向への対物レンズ動作時においても奥側の記録層からの反射光は非点収差生成素子の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
請求項8の発明は、光ディスクの所定の記録層に向けた出射光を発生する光源と、出射光を所定の記録層で集束させる対物レンズと、出射光が所定の記録層で反射し対物レンズを通過した反射光を受光する受光器と、対物レンズと受光器との間に配置され、受光器に向けて集束してくる反射光の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器の前側と後側としたフォーカス制御用の光を生成する非点収差生成素子と、を備え、非点収差生成素子は、面上に形成され、複数の輪帯部と、隣接する輪帯部をつなぐ段差部と、を有し、対物レンズのトラッキング方向の動作にかかわらず所定の記録層よりも奥側の記録層からの反射光が非点収差生成素子において輪帯部にのみ入射する構成とした光ディスク装置とした。
所定の記録層よりも奥側の記録層からの反射光の焦点位置は、所定の記録層からの反射光の焦点位置よりも光ディスクに近い。そのため、奥側の記録層からの反射光は、所定の記録層からの反射光よりも集束した状態で非点収差生成素子に入射する。一方、対物レンズがトラッキング方向に動作すると非点収差生成素子に入射する反射光の位置も変化する。そして反射光が非点収差生成素子の段差部にかかると段差部で反射された光は受光器に正しく入射しない。その影響を受ける度合いは入射する反射光が集光されているほど大きい。本発明において、奥側の記録層からの反射光は、非点収差生成素子の輪帯部にのみ入射する構成としたため、段差部による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有する光ディスクを用いて対物レンズをトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、本発明によれば、トラッキング方向への対物レンズ動作時においても奥側の記録層からの反射光は非点収差生成素子の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明について簡単に概略を説明する。
図1(a)は本実施の形態1の光ピックアップ装置におけるL0層からの反射光の経路を示す図、図1(b)はL1層からの反射光の経路を示す図、図1(c)は本実施の形態1における集積プリズムの構成図である。また、図2(a)は本実施の形態1における非点収差生成素子に入射するL0層からの反射光のスポットを示す図、図2(b)は本実施の形態1における非点収差生成素子に入射するL1層からの反射光のスポットを示す図、図2(c)は従来の非点収差生成素子に入射するL0層からの反射光のスポットを示す図、図2(d)は従来の非点収差生成素子に入射するL1層からの反射光のスポットを示す図である。また、図3(a)は本実施の形態1における受光器上のL1層からの反射光のスポットを示す図、図3(b)は従来の受光器上のL1層からの反射光のスポットを示す図である。
光源11は光ディスク20の所定の記録層であるL0層21に向けた出射光25を発生する。対物レンズ19は出射光25をL0層21で集束させる。受光器23は出射光25がL0層21で反射し対物レンズ19を通過した反射光26を受光する。非点収差生成素子18は対物レンズ19と受光器23との間に配置され、受光器23に向けて集束してくる反射光26の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器23の前側と後側としたフォーカス制御用の光を生成する。非点収差生成素子18は、斜面16上に形成され、複数の輪帯部29と、隣接する輪帯部29をつなぐ段差部30と、を有する。そして、本発明の光ピックアップ装置は対物レンズ19のトラッキング方向の動作にかかわらずL0層21よりも奥側の記録層であるL1層22からの反射光27が非点収差生成素子18において輪帯部29にのみ入射する構成とした。ここで、非点収差生成素子18はフレネルミラー30であり、輪帯部29は、反射鏡部とした。
図1(a)に示すL0層21からの反射光26の焦点位置は受光器23近傍である。したがって、反射光26は非点収差生成素子18に広がった状態で入射する。一方、L0層21に入射した出射光25の一部はそのまま透過し、L1層22に広がった状態で入射して反射し、図1(b)に示すように受光器23に到達する。L1層22からの反射光27の焦点位置は受光器23の近傍ではなく、光ディスク20により近い位置となる。そのため、L1層22からの反射光27は、L0層21からの反射光26よりも集束した状態で非点収差生成素子18に入射する。したがって、図2(b)に示すL1層22からの反射光27によるスポット52は図2(a)に示すL0層21からの反射光26によるスポット50よりも小さい。一方、対物レンズ29がトラッキング方向に動作すると、非点収差生成素子18に入射する反射光27のスポット52の位置も、対物レンズ29の動作に伴い、スポット53、スポット54のような位置に変化する。そして例えば、スポット53が図2(d)に示すように非点収差生成素子18の段差部30にかかると段差部30で反射された光は、図3(b)に示すように、反射光消失状態を発生し、受光器212に正しく入射しない。その影響を受ける度合いは入射する反射光27が集光されているほど大きい。
本発明において、L1層22からの反射光27は、非点収差生成素子18の輪帯部29にのみ入射する構成としたため、段差部30による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有する光ディスク20を用いて対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、本発明によれば、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光27は非点収差生成素子18の輪帯部29のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
次に本実施の形態1についてさらに詳細に説明する。図1において、光源11が発生する出射光25は波長λ1が約650nmである。また、光源11は波長λ2が約780nmの第2の出射光を出射光25の近傍で発生させる。出射光25の出射位置と第2の出射光の出射位置とは110μm程度の距離である。出射光25はDVDの記録や再生に用いられる。また、第2の出射光はCDの記録や再生に用いられる。
図4(a)は本実施の形態1における回折素子の斜視構成図、図4(b)は回折素子の上面からの透視図、図4(c)は回折素子の側面からの断面図である。回折素子12は2枚の基板12a、12bの間に回折格子13を挟んだ構成である。回折格子13はDVD用の光を回折するDVD用回折格子13aとCD用の光を回折するCD用回折格子13bとを直列に並べた構成である。DVD用回折格子13aとCD用回折格子13bとの間に基板12cを挟んでいる。基板12a、12b、12cにはBK7等の光学ガラスが用いられる。基板12cを省略し、基板12aに形成したDVD用回折格子13aと基板12bに形成したCD用回折格子13bとを直接貼り合わせても構わない。
DVD用回折格子13aは、所定の深さ、間隔、方向の縞状に形成された第1凹凸部13cと第1凹凸部13cを充填するように形成された第1充填部13dとで構成される。通常、第1凹凸部13cも第1充填部13dも透明樹脂で形成される。そして、第1凹凸部13cまたは第1充填部13dの少なくとも一方には所定の波長域に光吸収を持つ染料や顔料といった色素を含ませる。色素を含んだ場合の透明樹脂の屈折率は、色素を含まない場合の透明樹脂の屈折率に対して、所定の波長域に近い波長ほど大きい。そのようにして、第1凹凸部13cの屈折率と第1充填部13dの屈折率は、波長λ1では異なり、波長λ2では等しくなるように調整される。このため、第1回折格子13aは、DVD用の光を回折し0次光と±1次光とに分離し、CD用の光をそのまま透過させる。
同様に、CD用回折格子13bは、所定の深さ、間隔、方向の縞状に形成された第2凹凸部13eと第2凹凸部13eを充填するように形成された第2充填部13fとで構成される。通常、第2凹凸部13eも第2充填部13fも透明樹脂で形成される。そして、第2凹凸部13eまたは第2充填部13fの少なくとも一方には所定の波長域に光吸収を持つ色素を含ませる。そのようにして、第2凹凸部13eの屈折率と第2充填部13fの屈折率は、波長λ1では等しく、波長λ2では異なるように調整される。このため、第2回折格子13bは、DVD用の光をそのまま透過させ、CD用の光を回折し0次光と±1次光とに分離する。このようにして得られた回折光はそれぞれDVDのトラッキング制御とCDのトラッキング制御に用いられる。
図1において、非点収差生成素子18が形成される集積プリズム14はBK7等の光学ガラスで形成される。集積プリズム14は外形に対して45度の傾きの斜面15、16を内部に有する。斜面15と斜面16とは平行である。斜面15にはビームスプリッタ17が形成され、斜面16には非点収差生成素子18が形成される。
ビームスプリッタ17は光源11からの出射光25を透過し、反射光26、27を反射して非点収差生成素子18に入射させる。ビームスプリッタ17は例えば偏光分離膜を備える。
非点収差生成素子18は、フレネルミラー28で構成される。図5(a)は通常のミラーの断面図、図5(b)はフレネルミラーの断面図である。フレネルミラー32は、通常のミラー31を所定の段差深さd毎の輪切りにして高低差を縮めたミラーである。フレネルミラー32は、複数の輪帯部33と、隣接する輪帯部33をつなぐ段差部34と、を有し、輪帯部33を反射鏡部とする。フレネルミラー32は薄くすることができ、面上に形成される。輪帯部33は傾斜が全体として比較的ゆるく実際に光が入射して反射する部分である。また、段差部34は傾斜が急峻であり、下記に示す非点収差生成素子18としての本来の機能にはほとんど寄与しない部分である。フレネルミラー32は、回折型のミラーよりも多次回折光の発生を抑制することができるため、光ディスク20からの反射光26をフォーカス制御用の光として効率良く利用することができる。
なお、本実施の形態1において、非点収差生成素子18をフレネルミラー28とするが、回折型のミラーとしても構わない。また、輪帯部33は滑らかな面形状が望ましいが、ステップ状の面形状でも構わない。
図6(a)は非点収差生成素子の動作図、図6(b)は光ディスクが近い場合の光スポット形状を示す図、図6(c)は光ディスクが遠い場合の光スポット形状を示す図である。非点収差生成素子40は、光軸41を含んで直交する2つの断面42、43で焦点距離を異ならせる。非点収差生成素子40には、いわゆる円柱レンズ、円筒レンズやその組み合わせ、及び円筒反射ミラー、円柱反射ミラーやその組み合わせ等がある。図6(a)において、非点収差生成素子40は、簡単のため円筒レンズとした。
本発明において、光ディスクからの反射光は受光器47の近傍に集束するように非点収差生成素子40に入射する。上下方向の断面42方向の入射光は非点収差生成素子40をそのまま透過し、受光器47の前側の焦点44に集束してから受光器47に入射する。一方、左右方向の断面43方向の入射光は非点収差生成素子40が凹レンズの働きをするため、受光器47の後側の焦点45に集束するように受光器47に入射する。すなわち、断面42の方向の入射光は、焦点44で一旦集束してから少し広がった状態で受光器47に入射する。断面43の方向の入射光は焦点45で集束するように少し広がった状態で受光器47に入射する。そのため、受光器47上のスポット46は、少し広がった状態のほぼ円形状となる。
受光器47は、非点収差生成素子40を通過した光を受光するA〜Dの受光部48を有する。受光部48は、田の字の形に、断面42、43に対して45°回転して配置される。AとCの受光部48を左右方向に配置し、BとDの受光部48を上下方向に配置した。A〜Dの受光部48は受光した光量を電気信号に変換する。Aの受光部48で変換された電気信号をA、Bの受光部48で変換された電気信号をB、Cの受光部48で変換された電気信号をC、Dの受光部48で変換された電気信号をDとする。フォーカス制御用の信号であるフォーカスエラー信号FESは、FES=(A+C)−(B+D)を演算させることにより得ることができる。
図6(b)に示すように、光ディスクが光ピックアップ装置に近い場合、焦点44、45は光ディスクから離れるため、焦点44は受光器47に近づき、焦点45は受光器47から遠ざかる。そのため、スポット46の上下の寸法が短くなって左右の寸法が長くなる。したがって、フォーカスエラー信号FES>0となる。逆に図6(c)に示すように、光ディスクが光ピックアップ装置から遠い場合、焦点44、45は光ディスクに近づくため、焦点44は受光器47から遠ざかり、焦点45は受光器47に近づく。そのため、スポット46の上下の寸法が長くなり、左右の寸法が短くなる。したがって、フォーカスエラー信号FES<0となる。このようにフォーカスエラー信号FESは光ディスクのフォーカス方向の位置ずれを示すフォーカス制御用の信号である。フォーカス制御は、フォーカスエラー信号FES=0、あるいは所定の値となるように行われる。
本実施の形態1において、非点収差生成素子18であるフレネルミラー28の輪帯部29は図2に示すように同心楕円状である。この同心楕円状の長軸方向が図6の断面42の方向か断面43の方向のいずれか一方に、短軸方向が他方に相当する。この同心楕円状の最も内側の輪帯部29にL0層21からの反射光26が入射するようにした。L1層22からの反射光27のスポット52の中心位置はスポット50の中心位置とほぼ一致するため、L1層22からの反射光27のスポット52は最も内側の輪帯部29に位置する。最も内側の輪帯部29は、トラッキング方向に相当する方向の長さが長く、対物レンズ19の位置が大きく変化してもL1層22からの反射光27は最も内側の輪帯部29からはみ出しにくい。そのため、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光は非点収差生成素子18の輪帯部29のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。さらに、DVD用の光のスポット50が最も内側の輪帯部29のほぼ中心に位置するようにした。その分、CD用の光のスポット51は最も内側の輪帯部29の中心からずれる。
対物レンズ19は、DVD用の出射光25をDVDのL0層21に集束させるレンズである。また、対物レンズ19は、DVD用の出射光25をDVDのL1層22にも集束させることができる。さらに対物レンズ19は、CD用の第2の出射光をCDの記録層に集束させることもできる。
図3(a)において、受光器23は、出射光25がDVDの所定の記録層であるL0層21やL1層22で反射し対物レンズ19を通過した反射光26、27を受光する。また、第2の出射光がCDの記録層で反射し対物レンズ19を通過した反射光も受光する。受光器23は、受光部24で検出した光量を電気信号に変換して出力する。出力された信号は、フォーカス制御やトラッキング制御、光ディスクに記録された情報の再生等に用いられる。
受光器23はA〜L、a〜hの受光部24を有する。A〜Lの受光部24にはDVD用の波長λ1の光が入射する。a〜hの受光部24にはCD用の波長λ2の光が入射する。A〜Dの受光部24には第1回折格子13aで生成された0次光が入射し、E〜G、I〜Lの受光部24には±1次光のいずれかが入射する。また、a〜dの受光部24には第2回折格子13bで生成された0次光が入射し、e・g、f・hの受光部18aには±1次光のいずれかが入射する。図6のA〜Dの受光部48に図3のA〜Dの受光部24とa〜dの受光部24とが対応する。
本実施の形態1において、非点収差生成素子18は、非点収差生成素子40に対し、光軸41と直交する方向に45度回転させた状態とした。それに伴い、受光器23の受光部24は、受光器47の受光部48の面内で45度回転させた状態とした。したがって、受光器23内でAからDの受光部24の境界は水平垂直となり、その他の受光部24を含めた受光部24の配置の設計が容易となる。
受光器23において、A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、Lの受光部24に入射し変換されたDVD用の電気信号をA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、Lとする。a、b、c、d、e、f、g、hの受光部24に入射し変換されたCD用の電気信号をa、b、c、d、e、f、g、hとする。
DVD用のフォーカスエラー信号FESは、DVD−ROM、DVD±R/RW:FES=(A+C)−(B+D)、DVD−RAM:FES={(A+C)−(B+D)}+Kt×{(E+I+G+K)−(H+L+F+J)}である。ここでKtは動作設定に応じて定まる定数である。フォーカスエラー信号FESはスポットのフォーカスずれを示す信号である。
CD用のフォーカスエラー信号FESは、CD−R/RW/ROM:FES=(a+c)−(b+d)である。
DVD用のトラッキングエラー信号TESは、DVD−ROM:TES=ph(A,D)−ph(B,C)、DVD±R/RW、−RAM:TES={(A+B)−(C+D)}−Kt×{(E+I+F+J)−(G+K+H+L)}である。ここで、ph(X,Y)は検出したX,Yの位相差を変換した電圧である。トラッキングエラー信号TESはスポットのトラック位置ずれを示す信号である。
CD用のトラッキングエラー信号TESは、CD−R/RW/ROM:TES={(a+b)−(c+d)}−Kt×{(e+f)−(g+h)}、CD−ROM:TES=ph(a,d)−ph(b,c)である。通常はより安定してトラッキング制御することができる前者の方法が用いられる。しかし例えば、CD−ROMのピットの高さが規格に入っていないような粗悪ディスクを再生するような場合、前者の方法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力されない場合がある。そのような場合でも後者の方法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力できるため、予備のトラッキング制御法として用いることができる。このようにトラッキング制御しきれない規格から外れているような粗悪ディスクを再生するような場合でもトラッキング制御することができるので、光ディスク装置としてより幅広い光ディスク20に対応することができる。
なお、図3において、E〜H、A〜D、I〜Lの受光部24、e・g、a〜d、f・hの受光部24の配列が紙面上下方向からわずかにずれている。これは0次光が光ディスクの記録層のトラック上に集束された場合に±1次光がトラックからずらされて集束されるためである。したがって、0次光と±1次光とが同じトラック上に集束される場合、E〜H、A〜D、I〜Lの受光部24、e・g、a〜d、f・hの受光部24は紙面上下方向に配列される。
複数の記録層を有する光ディスク20は、DVDである。光ディスク20の手前側の記録層をL0層21、奥側の記録層をL1層22という。DVDには単層の記録層を有するものもある。また、CDは単層の記録層を有する。本実施の形態1において、光ディスク20の記録層は、L0層21、L1層22とするが、さらに多数の記録層を有する光ディスク20としても構わない。
図1において、光源11が発生した波長λ1の出射光25は回折格子13で回折される。出射光25はビームスプリッタ17を透過し、対物レンズ19に入射する。対物レンズ19は出射光25をL0層21で集束させる。出射光25はL0層21で反射し、その反射光26は対物レンズ19を通過し、ビームスプリッタ17で反射して非点収差生成素子18に入射する。その際、反射光26は受光器23に向けて集束してくる。非点収差生成素子18は、反射光26の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器23の前側と後側となるように変換して受光器23に入射させる。
この際、出射光25の一部はL0層21を透過し、L1層22で反射する。この反射光27はL1層22のさらに奥の1点から出射されたように振舞う。したがって、反射光26は受光器23の近傍で集束するが、反射光27はそれよりも光ディスク20に近い位置に集束する。したがって、図2に示すように、スポット52はスポット50とほぼ同じ位置であるが、スポット52はスポット50よりも小さい。逆に反射光26は受光器23でほぼ集束するが、図3に示すように反射光27によるスポット55は受光器23では大きく広がる。
図2(c)に示すように、スポット50とスポット51との間に従来の非点収差生成素子231の輪帯部232の中心がくるように配置していた。その結果、図2(d)に示すように対物レンズ209をトラッキング方向に動作させると、スポット52はスポット53やスポット54のように移動する。そして、スポット53のように段差部233を横切ると、段差部233にかかる部分は正しく反射されないため、スポット55は図3(b)に示すように、帯状の反射光消失状態が生じる。この反射光消失状態の位置は対物レンズ209のトラッキング方向の移動に伴い変化し、反射光消失状態の部分が受光部213にかかると受光量にアンバランスを生じ、特性の低下につながる。特に、±1次光が入射するE、F、H、G、I、J、K、Lの受光部213は、A、B、C、Dの受光部213よりも増幅率が高いので、反射光消失状態の部分がこれらの受光部213にかかるとより大きな影響が出て、トラッキング制御の特性が低下する。これが製造工程における不良発生の原因となっている。
本実施の形態1において、図2(b)のスポット52のように、L1層22からの反射光27は、対物レンズ19がトラッキング方向に動作しても輪帯部29にのみ入射する。したがって、図3(a)のスポット55のように、L1層22からの反射光27は、受光器23で反射光消失状態を発生させない。そのため、受光部24に入射するスポット55の光量分布による各受光部24の受光量のアンバランスが生じにくい。したがって、対物レンズ19がトラッキング方向に動作しても安定したトラッキング制御を行うことができ、製造工程における不良発生を抑えることができる。
図1は本実施の形態1に関係する光ピックアップ装置の光学系を示しているが、光ピックアップ装置はさらに多くの光学部品を有している。図7は本実施の形態1の光ピックアップ装置における光学系の構成図である。また、図8は本実施の形態1の光ピックアップ装置の構成図である。
図7において波長板60、コリメートレンズ61、立上げミラー62、受光器63が図1の構成よりも増えている。また、CDの記録層64も表示している。
波長板60は、P偏光であるDVD用の出射光25を円偏光に変換し、円偏光である反射光26をS偏光に変換する。その際、反射光27もS偏光に変換されてしまう。また、波長板60は、CD用の第2の出射光をP偏光から円偏光に変換し、円偏光である反射光をS偏光に変換する。ビームスプリッタ17は、前述のように偏光分離膜である。偏光分離膜は、例えばP偏光を透過しS偏光を反射する特性を有する。このようにして、波長板60は、ビームスプリッタ17にDVD用の出射光25、CD用の第2の出射光からDVD用の反射光26、CD用の反射光を分離させる。
コリメートレンズ61は出射光25を拡散光からほぼ平行光に変換し、ほぼ平行光である反射光26を受光器23の近傍で集束する集束光に変換する。図1に示すように、コリメートレンズ61を配置しないで、拡散光である出射光25が対物レンズ19に入射し、対物レンズ19が反射光26を受光器23の近傍で集束する集束光に変換しても構わない。
立上げミラー62は、それまで光ディスク20にほぼ平行であった出射光25及び第2の出射光の方向を光ディスク20にほぼ直角に立上げて対物レンズ19に入射させるための反射ミラーである。立上げプリズムを用いても構わない。本実施の形態1において、立上げミラー62は出射光25の一部及び第2の出射光の一部を透過させる。
受光器63は、立上げミラー62を透過した光を検出する。検出された光は受光器63にて電気信号に変換されて出力され、出射光25や第2の出射光の出力制御に用いられる。
図8において、光ピックアップ装置70は、基台71に上記光学系の各部品を直接または他の部品を介して取付けられて構成される。基台71は、光ピックアップ装置70の骨組みである。基台71は、Zn合金、Mg合金等の合金材料あるいは硬質樹脂材料で形成されるが、剛性を確保しやすい合金材料が望ましい。基台71には各種部品を配置するための取付部が所定の箇所に設けられている。
光源11、回折素子12、集積プリズム14、受光器23は、結合ベース72に固定されてレーザモジュール73を構成し、結合ベース72が基台71に固定される。結合ベース72は熱伝導率が高く、剛性が大きい、例えば合金材料で形成される。対物レンズ19は、対物レンズ19を駆動する対物レンズ駆動部74に搭載されて対物レンズ駆動部74が基台71に固定される。対物レンズ19は対物レンズ駆動部74によってフォーカス方向及びトラッキング方向に動作する。波長板60、コリメートレンズ61、立上げミラー62、受光器63は、直接または他の取付部材を介して基台71に固定される。
図9(a)は本実施の形態1における他の例1の非点収差生成素子に入射するL0層からの反射光のスポットを示す図、図9(b)は本実施の形態1における他の例1の非点収差生成素子に入射するL1層からの反射光のスポットを示す図、図9(c)は本実施の形態1における他の例2の非点収差生成素子に入射するL0層からの反射光のスポットを示す図、図9(d)は本実施の形態1における他の例2の非点収差生成素子に入射するL1層からの反射光のスポットを示す図である。
本実施の形態1において、非点収差生成素子18としてのフレネルミラー28の輪帯部29が描く形状は同心楕円形状としたが、それに限るものではない。図9(a)、図9(b)において、非点収差生成素子83としてのフレネルミラー80は複数の直線状の段差部82で区切られた輪帯部81で構成されている。この直線状の段差部82の方向とこれと直交する方向のいずれか一方が図6における断面42の方向に、他方が断面43の方向に相当する。直線状の段差部82の方向が平面の反射ミラーの方向となるため、設計の自由度は小さい。しかし、最も内側の輪帯部81は最も広く確保できる。そのため、対物レンズ19がトラッキング方向に動作した場合にスポット53やスポット54が段差部83にはかかりにくい。そのため、トラッキング制御が安定する。
図9(c)、図9(d)において、非点収差生成素子87としてのフレネルミラー84は最も内側の輪帯部85が略十字状となるような形状である。一方の対角方向の輪帯部85の並びは凸面鏡であり、他方の対角方向の輪帯部85の並びは凹面鏡である。それぞれの対角方向の段差部86に直交する方向の一方が、断面42の方向であり、他方が断面43の方向である。最も内側の輪帯部85の面積は小さいが、反射光26が受光部23の近傍に集束する位置が、非点収差生成素子87を配置しない場合と近いので設計がしやすい。
なお、出射光25をL1層22に集束させた場合、L0層21で一部が反射され、その反射光が非点収差生成素子18としてのフレネルミラー28に入射し、さらに受光器23に入射する。その際、L1層22からの反射光の非点収差生成素子18上の大きさはスポット50とほぼ等しい。一方、L0層21からの反射光のスポットはスポット50よりも大きく、仮にこのスポットが段差部30にかかっても段差部30の影響を受けにくい。また、受光器23上のL0層21からの反射光のスポットはスポット55よりもさらに大きくぼやける。したがって、受光器23上のL0層21からの反射光のスポットは、トラッキング制御に影響を及ぼすような光量分布にはなりにくい。そのため、出射光25をL1層22に集束させた場合、対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率は高くなりにくい。
(実施の形態2)
本実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。図10(a)は通常のミラーの断面図、図10(b)は実施の形態1におけるフレネルミラーの断面図、図10(c)は本実施の形態2におけるフレネルミラーの断面図である。また、図11(a)は本実施の形態2における非点収差生成素子に入射するL0層からの反射光のスポットを示す図、図11(b)は本実施の形態2における非点収差生成素子に入射するL1層からの反射光のスポットを示す図である。図10(a)と図10(b)は図5(a)と図5(b)と同じであり、その説明を援用する。また、本実施の形態2の光ピックアップ装置の非点収差生成素子93としてのフレネルミラー90以外の部品は実施の形態1の部品と同じであり、その説明を援用する。
図10に示すように、本実施の形態2の非点収差生成素子93としてのフレネルミラー90は輪帯部91のうち最も内側の輪帯部91の高低差d1を段差部92の高低差dよりも大きくした。最も内側の輪帯部91の高低差d1を大きくすることで、最も内側の輪帯部91の中心部から最も内側の段差部92までの距離W2を、最も内側の輪帯部33の高低差を段差部34の高低差dと等しくした場合の距離W1よりも大きくすることができる。したがって、図11に示すように、対物レンズ19の位置が大きく変化してL1層22からの反射光27のスポット52がスポット53、54のように位置が大きく変化しても最も内側の輪帯部91からはみ出しにくい。そのため、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光27は非点収差生成素子93の輪帯部91のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
逆に、本実施の形態2に示す非点収差生成素子93は、実施の形態1に示す非点収差生成素子18よりもトラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光27のスポット52は輪帯部91からはみ出しにくい。そのため、DVDからの反射光26のスポット50を非点収差生成素子93の中心からずらし、CDからの反射光のスポット51を非点収差生成素子93の中心近傍に近づけることができる。そのため、CDの特性をより良好にすることができる。
なお、段差部92の高低差dを最も内側の輪帯部91の高低差d1と等しくしないのは以下の理由による。すなわち、段差部92の高低差dはDVDとCDそれぞれの位相を決定し、その結果として受光部23に向かうDVDとCDの相対的な光量を決定づける。そのため最適な段差部92の最適な高低差dが存在するためである。
(実施の形態3)
本実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。図12は本実施の形態3の光ピックアップ装置における集積プリズムの構成図である。実施の形態1、2において、非点収差生成素子18、93はフレネルミラー28、90であった。本実施の形態3において、非点収差生成素子105はフレネルミラー106である。非点収差生成素子105を有する集積プリズム101以外の部品は実施の形態1と同じであり、その説明を援用する。
すなわち、光源11は光ディスク20の所定の記録層であるL0層21に向けた出射光25を発生する。対物レンズ19は出射光25をL0層21で集束させる。受光器23は出射光25がL0層21で反射し対物レンズ19を通過した反射光26を受光する。非点収差生成素子105は対物レンズ19と受光器23との間に配置され、受光器23に向けて集束してくる反射光26の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器23の前側と後側としたフォーカス制御用の光を生成する。ここで、非点収差生成素子105は、センサ面104上に形成され、複数の輪帯部107と、隣接する輪帯部107をつなぐ段差部108と、を有する。ここで、非点収差生成素子105はフレネルレンズ106であり、輪帯部107は、レンズ部とした。そして、本発明の光ピックアップ装置は対物レンズ19のトラッキング方向の動作にかかわらずL0層21よりも奥側の記録層であるL1層22からの反射光27がフレネルレンズ106において輪帯部107にのみ入射する構成とした。
本発明において、L1層22からの反射光27は、フレネルレンズ106の輪帯部107にのみ入射する構成としたため、段差部108による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有する光ディスク20を用いて対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、本発明によれば、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層からの反射光27はフレネルレンズ106の輪帯部107のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
次に本実施の形態3についてさらに詳細に説明する。集積プリズム101は、BK7等の光学ガラスで形成される。集積プリズム101は内部に斜面102を有し、斜面102にはビームスプリッタ103が形成される。ビームスプリッタ103は、ビームスプリッタ17と同様、光源11からの出射光25を透過し、光ディスク20からの反射光26、27を反射する。ビームスプリッタ103は、例えば偏光分離膜を備える。
集積プリズム101の受光器23と対向するセンサ面104に非点収差生成素子105としてのフレネルレンズ106が形成される。非点収差生成素子105は非点収差生成素子18、93と同様に、センサ面104上に形成され、複数の輪帯部107と、隣接する輪帯部107をつなぐ段差部108と、を有し、輪帯部107をレンズ部とする。実施の形態1、2と同様に対物レンズ19のトラッキング方向の動作にかかわらずL0層21よりも奥側のL1層22からの反射光27が非点収差生成素子105において輪帯部107にのみ入射する構成とした。輪帯部107は傾斜が全体として比較的ゆるく実際に光が入射して透過する部分である。また、段差部108は傾斜が急峻であり、非点収差生成素子105としての本来の機能にはほとんど寄与しない部分である。フレネルレンズ106は、回折型のレンズよりも多次回折光の発生を抑制することができるため、光ディスク20からの反射光26をフォーカス制御用の光として効率良く利用することができる。
なお、本実施の形態3において、非点収差生成素子105をフレネルレンズ106とするが、回折型のレンズとしても構わない。また、輪帯部107は滑らかな面形状が望ましいが、ステップ状の面形状でも構わない。
したがって、非点収差生成素子18、93の場合と同様に、L1層22からの反射光27は、非点収差生成素子105の輪帯部107にのみ入射する構成としたため、段差部108による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有する光ディスク20を用いて対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、本発明によれば、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層からの反射光27は非点収差生成素子105の輪帯部107のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
図13は本実施の形態3の光ピックアップ装置における他の例の集積プリズムの構成図である。本実施の形態3において集積プリズム101は集積プリズム111のような構成でも構わない。
集積プリズム111は、内部に斜面112を有し、斜面112にビームスプリッタ113を設ける。ビームスプリッタ113は、ビームスプリッタ103と同じである。
集積プリズム111の受光器23と対向するセンサ面114に非点収差生成素子116としてのフレネルレンズ117を予め形成した基板115を貼り付ける。非点収差生成素子116は非点収差生成素子105と同様に、基板115の面上に形成され、複数の輪帯部118と、隣接する輪帯部118をつなぐ段差部119と、を有し、輪帯部118をレンズ部とする。非点収差生成素子105と同様に対物レンズ19のトラッキング方向の動作にかかわらずL0層21よりも奥側のL1層22からの反射光27が非点収差生成素子116において輪帯部118にのみ入射する構成とした。したがって、非点収差生成素子116は非点収差生成素子105と同じ効果が得られる。
(実施の形態4)
本実施の形態4について、図面を参照しながら説明する。図14は本実施の形態4の光ピックアップ装置における光学系の構成図である。実施の形態1〜3の光ピックアップ装置はDVDとCDに対する記録や再生を行うが、本実施の形態4の光ピックアップ装置はDVDとCDに対する記録や再生に加えてBD(ブルーレイディスク)に対する記録や再生も行う。
光源121、回折素子122、回折格子123、集積プリズム124、非点収差生成素子125、受光器126は、それぞれ光源11、回折素子12、回折格子13、集積プリズム14、非点収差生成素子18、受光器23と同じである。また、結合ベース127は、結合ベース72と同じであり、それらを組立てたレーザモジュール128はレーザモジュール73と同じである。非点収差生成素子125は、フレネルミラー130により構成される。非点収差生成素子125は、非点収差生成素子18と同じで、斜面上に形成され、複数の輪帯部と、隣接する輪帯部をつなぐ段差部と、を有し、輪帯部を反射鏡部とする。
一方、光源131は波長λ3が約405nmの出射光を発生する。この出射光はBDの記録や再生に用いられる。集積プリズム132の内部には斜面が形成され、ビームスプリッタが設けられている。受光器134は光源131から出射されBD151の記録層で反射された反射光を検出し、電気信号に変換して出力する。この出力された電気信号はフォーカス制御、トラッキング制御、BDに記録された情報の再生等に用いられる。集積プリズム132と受光器134との間に非点収差生成素子133が配置される。非点収差生成素子133は、いわゆる円柱レンズ、円筒レンズやその組み合わせである。非点収差生成素子133によりBDのフォーカス制御に用いられる光が生成される。光源131、集積プリズム132、非点収差生成素子133、受光器134は、レーザモジュール136として結合ベース135に一体に取付けられる。
ホログラム140は回折によりBDのトラッキング制御に用いられる光を生成する。
ビームスプリッタ141はDVD用の光とCD用の光を透過し、BD用の光を反射して、DVD用の光、CD用の光とBD用の光とを分離する。ビームスプリッタ141は波長分離膜を備える。
コリメートレンズ142は、発散光である光源121、131から出射された光をほぼ平行光に変換する。また、逆にほぼ平行光であるDVD150、CD149、BD151で反射された反射光を集束光に変換する。
立上げミラー143はDVD150やCD149に対してほぼ平行であったDVD用の出射光、CD用の出射光がDVD150やCD149に対してほぼ直角となるように反射する。また、立上げミラー143はDVD用の出射光とCD用の出射光の一部とBD用の出射光を透過する。
立上げミラー144はBD151に対してほぼ平行であったBD用の出射光の出射光がBD151に対してほぼ直角となるように反射する。また、立上げミラー144はBD用の出射光の一部とDVD用の出射光とCD用の出射光を透過する。
対物レンズ146は、立上げミラー144で立上げられたBD用の光をBD151の記録層で集束させる。また、対物レンズ147は立上げられたDVD用の光をDVD150の記録層に集束させ、立上げられたCD用の光をCD149の記録層に集束させる。対物レンズ146と対物レンズ147とは一つの対物レンズ駆動部148に組み込まれる。
受光器145は立上げミラー145を透過したCD用の光、DVD用の光、BD用の光を検出し、電気信号に変換して出力する。出力された信号は、それぞれCD用の光の光量制御、DVD用の光の光量制御、BD用の光の光量制御に用いられる。
CD149の記録層は単層である。DVD150の記録層は単層のものと複数層のものとがある。また、BD151の記録層も単層のものと複数層のものとがある。
本実施の形態4の光ピックアップ装置は、DVDに関して実施の形態1〜3と同じであり、対物レンズ147のトラッキング方向の動作にかかわらずDVD150のL0層よりも奥側の記録層であるL1層からの反射光が非点収差生成素子125としてのフレネルミラー130において輪帯部にのみ入射する構成とした。
DVD150のL1層からの反射光は、非点収差生成素子125の輪帯部にのみ入射する構成としたため、段差部による影響を受ける度合いは小さい。そのため、DVD150を用いて対物レンズ147をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、トラッキング方向への対物レンズ147の動作時においてもL1層からの反射光は非点収差生成素子125の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。
また、BD151に関して、本実施の形態4において、非点収差生成素子133としてフレネルミラーやフレネルレンズを用いていないので、反射光消失状態は発生せず、不良率が高くなることはない。
なお、本実施の形態4において、非点収差生成素子125はフレネルミラー130としたが、フレネルレンズを用いた構成としても構わない。また、回折型のミラーやレンズとしても構わない。また、輪帯部は滑らかな面形状が望ましいが、ステップ状の面形状でも構わない。
(実施の形態5)
本実施の形態5について、図面を参照しながら説明する。図15は本実施の形態5の光ピックアップ装置における光学系の構成図である。本実施の形態5の構成は、非点収差生成素子133が非点収差生成素子153として集積プリズム152の内部に形成された以外、実施の形態4の構成と全く同じであり、集積プリズム152と非点収差生成素子153以外の説明は実施の形態4の説明を援用する。
集積プリズム152は、集積プリズム124と同様の構成であり、内部に斜面を有し、非点収差生成素子153が斜面上に配置される。非点収差生成素子153はフレネルミラー154で構成される。非点収差生成素子153は、複数の輪帯部と、隣接する輪帯部をつなぐ段差部と、を有し、輪帯部を反射鏡部とする。対物レンズ146のトラッキング方向の動作にかかわらずBD151のL0層よりも奥側のL1層からの反射光がフレネルミラー154において輪帯部にのみ入射する構成となるようにした。
BD151のL1層からの反射光は、非点収差生成素子153の輪帯部にのみ入射する構成としたため、段差部による影響を受ける度合いは小さい。そのため、複数の記録層を有するBD151を用いて対物レンズ146をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を実施の形態4の光ピックアップ装置と同程度に低くすることができる。すなわち、トラッキング方向への対物レンズ146の動作時においてもL1層からの反射光は非点収差生成素子153の輪帯部のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として不良率を低くすることができる。さらに、本実施の形態5において、非点収差生成素子133をなくすことができるため、より安価な光ピックアップ装置とすることができる。
なお、本実施の形態5において、非点収差生成素子153はフレネルミラー154としたが、フレネルレンズを用いた構成としても構わない。また、回折型のミラーやレンズとしても構わない。また、輪帯部は滑らかな面形状が望ましいが、ステップ状の面形状でも構わない。
(実施の形態6)
本実施の形態6について、図面を参照しながら説明する。図16は本実施の形態6の光ディスク装置における光ピックアップ装置駆動部の構成図、図17は本実施の形態6の光ディスク装置の構成図、図18は本実施の形態6の光ディスク装置におけるサーボの流れを示す図である。
図16において、光ディスク20を回転駆動する回転駆動部及び光ピックアップ装置70を回転駆動部に対して近づけたり離したりする移動部を備える光ディスク装置170の駆動機構を光ピックアップモジュール160という。ベース161は光ピックアップモジュール160の骨組みを成すもので、光ピックアップモジュール160はベース161に直接または間接に各構成部品が配置されて構成される。
回転駆動部は光ディスク20を載置するターンテーブル162aを有するスピンドルモータ162を備えている。スピンドルモータ162はベース161に固定される。スピンドルモータ162は光ディスク20を回転させる回転駆動力を生成する。
移動部はフィードモータ163、スクリューシャフト164、メインシャフト165、サブシャフト166を備えている。フィードモータ163はベース161に固定される。フィードモータ163は光ピックアップ装置70が光ディスク20の内周と外周の間を移動するために必要な回転駆動力を生成する。フィードモータ163としてステッピングモータ、DCモータなどが使用される。スクリューシャフト164はらせん状に溝が掘られており、直接または数段のギアを介してフィードモータ163に接続される。本実施の形態6では直接フィードモータ163と接続される。メインシャフト165、サブシャフト166はそれぞれ両端で保持部材を介してベース161に固定される。メインシャフト165、サブシャフト166は光ピックアップ装置70を光ディスク20の半径方向に移動自在に支持する。光ピックアップ装置70はスクリューシャフト164の溝と噛み合うガイド歯を有するラック167を備える。ラック167がスクリューシャフト164に伝達されたフィードモータ163の回転駆動力を直線駆動力に変換するために光ピックアップ装置70は光ディスク20の内周と外周の間を移動することができる。
なお、回転駆動部は光ディスク20を所定の回転速度で回転させることができる構成であれば、本実施の形態6で説明した構成に限るものではない。また移動部は光ピックアップ装置70を光ディスク20の内周と外周の間の所定の位置に移動させることができる構成であれば、本実施の形態6で説明した構成に限るものではない。
光ピックアップ装置70は実施の形態1で説明したもので、図8の構成にカバー75を取付けたものである。光ピックアップ装置70は実施の形態2から5で説明した光ピックアップ装置と置き換えても構わない。光ピックアップ装置70は、光源11、対物レンズ19、受光器23、非点収差生成素子18を備えている。光源11は光ディスク20の所定の記録層であるL0層21に向けた出射光25を発生する。対物レンズ19は出射光25をL0層21で集束させる。受光器23は出射光25がL0層21で反射し対物レンズ19を通過した反射光26を受光する。非点収差生成素子18は対物レンズ19と受光器23との間に配置され、受光器23に向けて集束してくる反射光26の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器23の前側と後側としたフォーカス制御用の光を生成する。ここで、非点収差生成素子18は、斜面16上に形成され、複数の輪帯部29と、隣接する輪帯部29をつなぐ段差部30と、を有する。そして、光ピックアップ装置70は対物レンズ19のトラッキング方向の動作にかかわらずL0層21よりも奥側の記録層であるL1層21からの反射光27が非点収差生成素子18において輪帯部29にのみ入射する構成とした。ここで非点収差生成素子18は輪帯部29を反射鏡部とするフレネルミラー28としたが、フレネルレンズとしても構わない。また、回折型のミラーやレンズとしても構わない。また、輪帯部29は滑らかな面形状が望ましいが、ステップ状の面形状でも構わない。
光ピックアップ装置70において、L1層22からの反射光27は、非点収差生成素子18の輪帯部29にのみ入射する構成としたため、段差部30による影響を受ける度合いは小さい。そのため、光ディスク装置170を製造する場合、複数の記録層を有する光ディスク20を用いて対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、光ピックアップ装置70では、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光27は非点収差生成素子18の輪帯部29のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として光ディスク装置170を製造する場合の不良率を低くすることができる。
光ピックアップ装置70の対物レンズ19から出射されるレーザ光が光ディスク20に対し直角に入射するように、保持部材を構成する調整機構でメインシャフト165、サブシャフト166の傾きを調整する。
図17において、光ディスク装置170の筐体171は上部筐体171aと下部筐体171bとを組み合わせてネジなどを用いて互いに固定して構成されている。トレイ172は筐体171に出没自在に設けられている。トレイ172はカバー168を設けた光ピックアップモジュール160を下面側から配置する。カバー168は開口を有し、光ピックアップ装置70の対物レンズ19及びスピンドルモータ162のターンテーブル162aを露出させる。さらに本実施の形態6の場合、フィードモータ163も露出させて、光ピックアップモジュール160の厚さが薄くなるようにしている。トレイ172は開口を有し、対物レンズ19及びターンテーブル162a、カバー168の少なくとも一部を露出させる。ベゼル173はトレイ172の前端面に設けられて、トレイ172が筐体171内に収納された時にトレイ172の出没口を塞ぐように構成されている。ベゼル173にはイジェクトスイッチ174が設けられ、イジェクトスイッチ174を押すことで、筐体171とトレイ172との係合が解除され、トレイ172は筐体171に対し出没が可能な状態となる。レール175はそれぞれトレイ172の両側部及び筐体171の双方に摺動自在に取付けられる。筐体171内部やトレイ172内部には図示していない回路基板があり、信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。外部コネクタ176はコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、外部コネクタ176を介して光ディスク装置170内に電力を供給したり、あるいは外部からの電気信号を光ディスク装置170内に導いたり、あるいは光ディスク装置170で生成された電気信号を電子機器などに送出する。
光ピックアップ装置70のフォーカス制御とトラッキング制御の流れを説明する。図18において、光源11から出射されたDVD用の波長λ1の光及びCD用の波長λ2の出射光は、回折素子12の回折格子13でそれぞれトラッキング制御に用いられる光に分離され、光ディスク20に入射する。光ディスク20で反射された反射光は集積プリズム14のビームスプリッタ17で分離され、非点収差生成素子18で光軸を含んで直交する2つの断面で焦点距離が異なる光とされて受光器23に入射する。非点収差生成素子18を通過したレーザ光はフォーカス制御に用いられる。受光器23に入射したレーザ光はDVD用フォーカス制御用、CD用フォーカス制御用、DVD用トラッキング制御用、CD用トラッキング制御用の電気信号に変換され、光ディスク装置170本体の前記図示していない回路基板にあるアナログ信号処理部170aに送られる。
アナログ信号処理部170aは入力された信号に演算・帯域処理を行い、サーボ処理部170bに出力する。サーボ処理部170bはアナログ信号処理部170aからの信号を基にフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを生成してモータ駆動部170cに出力する。モータ駆動部170cは入力されたフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを基に対物レンズ19を搭載する対物レンズ駆動部74を駆動する電流を生成する。これにより光ディスク20に集光した光束の焦点のずれ及びトラックに対するずれが極小になるように制御される。
また、コントローラ170dにはアナログ信号処理部170a、サーボ処理部170b、モータ駆動部170cの各部から送られる信号が入力される。コントローラ170dはこれらの信号の演算処理等を行い、この演算処理の結果(信号)を各部に送出し、各部にて駆動、処理を実行させることで各部の制御を行う。
以上のように、本実施の形態6の光ディスク装置170は実施の形態1の光ピックアップ装置70を備えている。すなわち、L1層22からの反射光27は、光ピックアップ装置70の非点収差生成素子18の輪帯部29にのみ入射する構成としたため、段差部30による影響を受ける度合いは小さい。そのため、光ディスク装置170を製造する場合に、光ピックアップ装置70は複数の記録層を有する光ディスク20を用いて対物レンズ19をトラッキング方向に動作させて特性を評価する工程における不良率を低くすることができる。すなわち、光ピックアップ装置70は、トラッキング方向への対物レンズ19の動作時においてもL1層22からの反射光27は非点収差生成素子18の輪帯部29のみに入射するので、反射光消失状態は発生せず、この効果として光ディスク装置170を製造する場合の不良率を低くすることができる。ここで実施の形態1の光ピックアップ装置70は実施の形態2から実施の形態5の光ピックアップ装置と置き換えても構わない。