本発明の請求項1の発明は、光ディスクの情報記録面に集光させて情報の記録または再生の少なくとも一方を行う光ピックアップ装置において、光ディスクに向けてレーザ光を出射する光源と、光ディスクの情報記録面からの反射光のうち光ピックアップ装置のトラッキング制御に用いられる光を受光するメイントラッキング光検出面とトラッキング制御の補助に用いられる光を受光するサブトラッキング光検出面とを有する受光センサと、光ディスクの情報記録面からの反射光をメイントラッキング光検出面に入射する光束に分離するメイントラッキング領域とサブトラッキング光検出面に入射する光束に分離するサブトラッキング領域とを有し光ディスクの円周の接線方向に平行なタンジェンシャル方向の分割線で区切られたトラッキング領域を有するホログラムと、を具備し、ホログラムは、トラッキング領域が光ディスクの半径方向に平行なラジアル方向の分割線でメイントラッキング領域とサブトラッキング領域とに交互に区切られ、メイントラッキング領域とサブトラッキング領域とがラジアル方向において同一幅であるものとしたことを特徴とする光ピックアップ装置である。
複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において、トラッキング制御には必要のない所定の情報記録面以外からの反射光については、メイントラッキング領域で分離される光とサブトラッキング領域で分離される光とが光ディスクの半径に平行な方向において同一幅である。そのためメイントラッキング領域で分離された光をメイントラッキング光検出面が受光する受光量とサブトラッキング領域で分離された光をサブトラッキング光検出面が受光する受光量との比率が一定になるように、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面とを配置することが容易となる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、光ディスクは複数層の情報記録面を有するDVDである光ピックアップ装置である。
DVDには複数層の情報記録面を有するものがある。そのため、複数層の情報記録面を有するDVDの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において、トラッキング制御には必要のない所定の情報記録面以外からの反射光については、メイントラッキング領域で分離される光とサブトラッキング領域で分離される光とが光ディスクの半径に平行な方向において同一幅である。そのためメイントラッキング領域で分離された光をメイントラッキング光検出面が受光する受光量とサブトラッキング領域で分離された光をサブトラッキング光検出面が受光する受光量との比率が一定になるように、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面とを配置することが容易となる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有するDVDに対して安定した記録及び再生を実現することができる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、受光センサは光ディスクの情報記録面からの反射光のうち光ピックアップ装置のフォーカス制御に用いられる光を受光するフォーカス光検出面を備え、ホログラムは光ディスクの情報記録面からの反射光をフォーカス光検出面に入射する光束に分離するフォーカス領域を備え、フォーカス領域とトラッキング領域とはタンジェンシャル方向の分割線で区切られた光ピックアップ装置である。
フォーカス領域はタンジェンシャル方向の分割線でトラッキング領域と区切られている。このようなフォーカス領域で分離された光束が作り出すフォーカス制御用信号は波形の乱れが少なく、安定したフォーカス制御ができる。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、メイントラッキング領域とサブトラッキング領域とを備えたトラッキング領域はホログラムのラジアル方向の中央部にある光ピックアップ装置である。
トラッキング情報の少ない光ディスクの情報記録面に集光するスポットの中央部付近をトラッキング制御の補助に用いられる光束を分離するサブトラッキング領域に配分することができる。そのためトラッキング制御用信号の出力を大きくすることができる。
請求項5の発明は、請求項1の発明において、受光センサのメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面とはタンジェンシャル方向に並列で配置され、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面からの反射光については、メイントラッキング領域で分離された光束がメイントラッキング光検出面に入射する位置とサブトラッキング領域で分離された光束がサブトラッキング光検出面に入射する位置とはラジアル方向においても互いにずれている光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外からの反射光は所定の情報記録面からの反射光に従って受光センサに入射してくる。そのため、所定の情報記録面からの反射光について、メイントラッキング領域で分離された光束の入射位置とサブトラッキング領域で分離された光束の入射位置とをラジアル方向においても互いにずらすと、所定の情報記録面以外からの反射光もずらすことができる。そのため、不必要な光束を光検出面に入射させないようにすることができる。
請求項6の発明は、請求項4の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、トラッキング領域の中のある領域を通過した場合メイントラッキング光検出面に入射し、一方、トラッキング領域の中の他の領域を通過した場合サブトラッキング光検出面に入射する光ピックアップ装置である。
たとえば、所定の情報記録面以外からの反射光がメイントラッキング光検出面にのみ入射する場合を考える。すると、複数層の情報記録面を有する光ディスクや光学系のばらつきで光束の入射位置がラジアル方向にずれると、メイントラッキング光検出面に入射する光束の光量は変化する。しかし、サブトラッキング光検出面の光量は0のままである。そのため、所定の情報記録面以外からの反射光について、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の出力のバランスが崩れる。しかし、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の両方に入射するようにすると、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の光量はばらつき等によって同時に変化する。そのため、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の出力のバランスが崩れるのを防ぐことができる。
請求項7の発明は、請求項4の発明において、ホログラムは、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面からの反射光をメイントラッキング光検出面に入射させるトラッキング領域を、ラジアル方向のホログラムの周辺部に備えた光ピックアップ装置である。
このトラッキング領域を通過した所定の情報記録面以外からの反射光がメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面に入射すると、バランスを欠いた状態となりやすい。しかし、ラジアル方向の周辺部に設けることで、所定の情報記録面以外からの反射光がメイントラッキング光検出面やサブトラッキング光検出面に入射するのを防ぐことができる。また、ラジアル方向のホログラムの周辺部はトラッキングの情報を多く含んでおり、この区域の光束をメイントラッキング光検出面に入射させることで、トラッキング制御用信号の出力を大きくすることができる。
請求項8の発明は、請求項7の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、ラジアル方向の周辺部に設けられたトラッキング領域は、受光センサの光検出面の領域外に入射させる光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外からの反射光は所定の情報記録面からの反射光に従って入射する。また、所定の情報記録面以外からの反射光は、光ディスクのばらつき等があると、ホログラムの中心に近い区域を通過した光束ほど入射位置の変動は小さく、ホログラムの端部に近い区域を通過した光束ほど入射位置の変動が大きい。そのため、初めから変動要因が多い光束を受光センサの光検出面の領域外に入射させることにより、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の入射光量バランスを安定して保つことができる。
請求項9の発明は、請求項4の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域を通過した場合、メイントラッキング光検出面に入射させる光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外からの反射光は、ホログラムの中心に近い光束ほど、光ディスクがばらついても受光センサに入射する位置は変化しにくい。ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域を通過した光束をメイントラッキング光検出面に入射させるようにした。そのため光ディスクがばらついても光束は安定して光検出面に入射するので、トラッキング制御用信号が安定する。
請求項10の発明は、請求項4の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域を通過した場合、サブトラッキング光検出面に入射させる光ピックアップ装置である。
ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域を通過した光束をサブトラッキング光検出面に入射させるようにした。そのため光ディスクがばらついても光束は安定して光検出面に入射するので、トラッキング制御用信号が安定する。サブトラッキング光検出面の出力は一般的にメイントラッキング光検出面の出力に比べてゲインがかかるため重要であるが、その一方小光量ですむ。そのためその残りをメイントラッキング光検出面での出力に回すことができる。
請求項11の発明は、請求項4の発明において、ホログラムは、メイントラッキング領域とサブトラッキング領域とがタンジェンシャル方向の分割線で区切られているトラッキング領域を、ラジアル方向のホログラムの周辺部に備えた光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外の反射光について、トラッキング領域がタンジェンシャル方向の分割線で区切られることで、光ディスクのばらつき等でメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面の出力のバランスを崩す恐れがある。しかし、このトラッキング領域はホログラムのラジアル方向の周辺部にあるため、所定の情報記録面以外の反射光はメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面には入射しないため、その出力のバランスには影響しない。そのため、トラッキング制御用信号としてはキャンセルされてオフセットを極小に保つことができる。さらに、ホログラムのラジアル方向の周辺部はトラッキングの情報が多く含まれており、タンジェンシャル方向の分割線でトラッキング領域を区切って、メイントラッキング光検出面に入射する光量を増やすことで、トラッキング制御用信号の出力を大きくすることができる。
請求項12の発明は、請求項3の発明において、光源から第2光ディスクに向けて出射されたレーザ光を回折して光ピックアップ装置のトラッキング制御に用いられる0次光または±1次光の光束に分離する回折格子と、第2光ディスクの情報記録面からの反射光のうち0次光を受光する第2メイントラッキング光検出面と+1次光または−1次光のいずれか一方を受光する第2サブトラッキング光検出面と+1次光または−1次光の他方を受光する第3サブトラッキング光検出面とを備えた第2受光センサと、第2光ディスクの情報記録面からの反射光を第2メイントラッキング光検出面、第2サブトラッキング光検出面及び第3サブトラッキング光検出面に入射する光束に分離する第2トラッキング領域を備えた第2ホログラムと、を備えた光ピックアップ装置である。
第2光ディスク用のホログラムと3ビーム法を用いる第2光ディスク用のトラッキング制御に必要な光検出面を備えることで光ディスクと第2光ディスクの両方に用いることができる。
請求項13の発明は、請求項12の発明において、受光センサは第2受光センサを兼用し、受光センサのメイントラッキング光検出面は第2受光センサの第2メイントラッキング光検出面を兼用し、受光センサのサブトラッキング光検出面は第2受光センサの第2サブトラッキング光検出面を兼用する光ピックアップ装置である。
トラッキング制御に必要な光検出面を兼用して受光センサと第2受光センサを兼用することで、部品点数を減らすことができる。さらに光検出面も兼用しているので、光検出面を配置する面積を少なくすることができ、光ピックアップ装置を小型、薄型にすることができる。また、光検出面と外部をつなぐ端子数を減らすことができるため、受光センサを小さくでき、光ピックアップ装置を小型、薄型にすることができる。
請求項14の発明は、請求項12の発明において、第2光ディスクはCDである光ピックアップ装置である。
CD用のホログラムと3ビーム法を用いるCDのトラッキング制御に必要な光検出面を備えることでDVDとCDの両方に用いることができる。
請求項15の発明は、請求項13の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、ホログラムのラジアル方向の中央部に設けられたトラッキング領域の中のある領域を通過した場合第2メイントラッキング光検出面に入射し、一方、トラッキング領域の中の他の領域を通過した場合第2サブトラッキング光検出面及び第3サブトラッキング光検出面の少なくともいずれか一方に入射する光ピックアップ装置である。
第3サブトラッキング光検出面と第2サブトラッキング光検出面とは電気的に接続される。どちらか少なくとも一方に光束が入射すれば出力として現れる。ここで、たとえば、所定の情報記録面以外からの反射光が第2メイントラッキング光検出面にのみ入射する場合を考える。すると、複数層の情報記録面を有する光ディスクや光学系のばらつきで光束の入射位置がラジアル方向にずれると、第2メイントラッキング光検出面に入射する光束の光量は変化する。しかし、第2サブトラッキング光検出面と第3サブトラッキング光検出面の総和の光量は0のままである。そのため、所定の情報記録面以外からの反射光について、第2メイントラッキング光検出面の出力と、第2サブトラッキング光検出面と第3サブトラッキング光検出面の総和の出力のバランスが崩れる。しかし、第2メイントラッキング光検出面と、第2サブトラッキング光検出面と第3サブトラッキング光検出面の少なくともいずれか一方と、の両方に入射するようにすると、第2メイントラッキング光検出面の光量と、第2サブトラッキング光検出面と第3サブトラッキング光検出面の総和の光量とはばらつき等によって同時に変化する。そのため、第2メイントラッキング光検出面の出力と、第2サブトラッキング光検出面と第3サブトラッキング光検出面の総和の出力とのバランスが崩れるのを防ぐことができる。
請求項16の発明は、請求項15の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に2番目に近いメイントラッキング領域を通過した場合、第3サブトラッキング光検出面のタンジェンシャル方向の中央部に入射する光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外からの反射光は、ホログラムの中心に近い光束ほど、光ディスクがばらついても受光センサに入射する位置は変化しにくい。第3サブトラッキング光検出面には所定の情報記録面以外のある特定の情報記録面からの反射光がどうしても入射してしまう。そのため、ホログラムのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に2番目に近いメイントラッキング領域で分離された光束が第3サブトラッキング光検出面のタンジェンシャル方向の中央に入射するように構成した。さらにその両隣はサブトラッキング領域として分離されることになるので、このメイントラッキング領域で分離された光束は独立して第3サブトラッキング光検出面に入射することになる。そのためこの光束は多少複数層の情報記録面を有する光ディスクがばらついても安定して第3サブトラッキング光検出面に入射するため、安定したトラッキング制御用信号が得られる。
請求項17の発明は、請求項12の発明において、第2受光センサは第2光ディスクの情報記録面からの反射光のうち光ピックアップ装置のフォーカス制御に用いられる光を受光する第2フォーカス光検出面を備え、第2ホログラムは第2光ディスクの情報記録面からの反射光を第2フォーカス光検出面に入射する光束に分離する第2フォーカス領域を備えた光ピックアップ装置である。
第2光ディスク用の第2フォーカス光検出面を備えることで、第2光ディスクの光束に最適な第2フォーカス光検出面とすることができる。そのため、第2光ディスクのフォーカス制御をより精度良く行うことができる。
請求項18の発明は、請求項1の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、メイントラッキング光検出面が受光する受光量とサブトラッキング光検出面が受光する受光量との比率が一定である光ピックアップ装置である。
所定の情報記録面以外からの反射光は、所定の比率でメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面で受光される。所定の比率は、所定の情報記録面以外からの反射光により生成されるトラッキング制御用信号が略0になる比率である。そのため、トラッキング制御用信号としてはキャンセルされてオフセットを極小に保つことができる。
請求項19の発明は、請求項13の発明において、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光については、第2メイントラッキング光検出面が受光する受光量と、第2サブトラッキング光検出面が受光する受光量と第3サブトラッキング光検出面が受光する受光量の合計との比率が一定である光ピックアップ装置である。
第3サブトラッキング光検出面と第2サブトラッキング光検出面とは電気的に接続される。どちらか少なくとも一方に光束が入射すれば出力として現れる。所定の情報記録面以外からの反射光は、所定の比率で第2メイントラッキング光検出面と、第2サブトラッキング光検出面及び第3サブトラッキング光検出面で受光される。所定の比率は、所定の情報記録面以外からの反射光により生成されるトラッキング制御用信号が略0になる比率である。そのため、トラッキング制御用信号としてはキャンセルされてオフセットを極小に保つことができる。
請求項20の発明は、請求項1から請求項19のいずれかの発明の光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置である。
複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において、トラッキング制御には必要のない所定の情報記録面以外からの反射光については、メイントラッキング領域で分離される光とサブトラッキング領域で分離される光とが光ディスクの半径に平行な方向において同一幅である。そのためメイントラッキング領域で分離された光をメイントラッキング光検出面が受光する受光量とサブトラッキング領域で分離された光をサブトラッキング光検出面が受光する受光量との比率が一定になるように、メイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面とを配置することが容易となる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。図1は本実施の形態1の光ピックアップ装置の光学系の構成図、図2(a)は本実施の形態1の光ピックアップ装置の上面構成図、図2(b)は下面構成図である。本実施の形態1において複数層の情報記録面を有する光ディスクとしてDVD9、第2光ディスクとしてCD9eとした。しかし、他の種類のディスクとの組み合わせでも一般性を失わない。また、本実施の形態1の光ピックアップ装置はいわゆる2波長半導体レーザ光源を用い、DVD9に対してもCD9eに対しても記録または再生の少なくとも一方をすることができる光ピックアップ装置である。
本実施の形態1の光ピックアップ装置20において、光源1、回折素子2、集積プリズム3及び受光センサ10は結合ベース13に取り付けられ、結合ベース13がキャリッジ12に取り付けられる。コリメートレンズ4、ビームスプリッタ5、立ち上げプリズム6及び前光モニタ11は直接または取り付け部材を介してキャリッジ12に取り付けられる。また、ホログラム素子7と対物レンズ8はアクチュエータ14のレンズホルダ15に取り付けられる。レンズホルダ15はサスペンションホルダ17にサスペンションワイヤ16によって可動状態で支持される。アクチュエータ14はキャリッジ12に固定される。
光源1はDVD用の波長λ1(約650nm)のレーザ光を出射する発光点とCD用の波長λ2(約780nm)のレーザ光を出射する発光点を近接して設けた。光源1は2つの波長のレーザ光の発光点を1つの半導体素子に形成したいわゆるモノリシック型2波長半導体レーザ光源としても良いし、それぞれ異なる波長の発光点を有する半導体素子を2個近接して設けたいわゆるハイブリッド型2波長半導体レーザ光源としても良い。本実施の形態1において光源1はいわゆるモノリシック型2波長半導体レーザ光源とした。
回折素子2はDVD用の波長λ1のレーザ光に対してはそのまま透過させ、CD用の波長λ2のレーザ光に対しては回折してトラッキング制御に用いる中央のメインビームと呼ばれる光量の大きい0次光の光束と両側のサイドビームと呼ばれる光量の小さい±1次光の光束の3本の光束に分離する波長選択回折素子とした。従来DVD9のトラッキング制御にはDVD9に1本の光束を照射する1ビームトラッキング制御法を用い、CD9eのトラッキング制御にはCD9eに3本の光束を照射する3ビームトラッキング制御法を用いてきた。本実施の形態1のように光源1として2波長半導体レーザ光源を用いる場合、DVD用のレーザ光に対しては回折素子2を介さずに、CD用のレーザ光のみに回折素子2を介するような構成にすることは困難である。また波長選択性のない通常の回折素子2を用いると、DVD用のレーザ光も3ビームに分離され、そのうちメインビームのみが記録や再生に用いられる。DVDに高倍速で記録する場合、サイドビームの損失分をカバーするために、光源1はより大パワーのレーザ光を出力する必要がある。そのため回折素子2として波長選択回折素子が望ましい。
図3(a)は本実施の形態1の回折素子の構成図、図3(b)は回折格子部分を中心とした詳細構成図である。回折素子2は透明基板2aの表面に凸部材2cと充填部材2dからなる回折格子2bを構成した上に透明保護板2eを設け、さらに透明保護板2eの表面に開口制限膜2fを設けた構成とした。凸部材2cには所定の波長域に光吸収の性質を有する有機物が含有されている。この有機物は可視光領域に光吸収の性質を有していれば顔料や染料と呼ばれるものである。このような有機物を含有していると凸部材2cの屈折率はその近傍の波長域で有機物を含有しない場合に対して変化を起こす。その変化幅は光吸収の波長に近いほど大きい。上記所定の波長域を波長λ1よりわずかに短い波長域とすれば、波長λ1と波長λ2とで凸部材2cの屈折率を違えることができる。凸部材2cの材料、充填部材2dの材料、有機物の材料を適切に選択すれば波長λ1で凸部材2cと充填部材2dの屈折率を等しくし、波長λ2で凸部材2cと充填部材2dの屈折率を異ならせることができる。したがって回折素子2はDVD用の波長λ1のレーザ光に対してはそのまま透過させ、CD用の波長λ2のレーザ光に対しては回折してトラッキング制御に用いる3本の光束に分離する波長選択回折素子とすることができる。なお、有機物は充填部材2dに含有させても良い。
透明基板2a及び透明保護板2eは光学ガラスまたは光学プラスチックで構成した。凸部材2c、充填部材2dはレジスト、紫外線硬化型や熱硬化型の接着剤等で構成した。開口制限膜2fは例えばSiO2膜とSi膜、Ti膜の少なくとも一方とを交互に複数回積層した構成とした。開口制限膜2fは開口部を有し、開口制限膜2fに入射した光は吸収し、開口部に入射した光は透過する。開口形状は光ピックアップ装置20の光学設計の状況に応じて略方形状、円形や楕円形状、小判型形状あるいは多角形として良い。
なお、回折素子2の形状は本実施の形態1では略直方体としたが、楕円柱型や角丸四角柱型等としても良い。また、端部をC面取り、R面取りした形状としても良い。
図4は本実施の形態1の集積プリズムの構成図である。集積プリズム3は、透明な光学ガラスや光学プラスチックで形成されたブロック3a、3b、3c、3dを互いにガラスや紫外線硬化接着剤などで接合して、全体として略直方体形状とした。集積プリズム3は互いに略平行な傾斜面3e、3f、3gを内蔵する。傾斜面3eはブロック3aと3bの間に形成されており、この傾斜面3eはブロック3aと3bの接合面に相当する。ブロック3a、3bの少なくとも一方の面に偏光分離膜3hを形成する。偏光分離膜3hは、波長λ1のP偏光のレーザ光はほぼ透過し、S偏光のレーザ光は反射し、波長λ2のレーザ光のP偏光のレーザ光もS偏光のレーザ光もほぼ透過させる特性を有する。傾斜面3fはブロック3bと3cの間に形成されており、傾斜面3fはブロック3bと3cの接合面に相当する。ブロック3b、3cの少なくとも一方の面に偏光分離膜3iを形成する。偏光分離膜3iは、波長λ1のP偏光のレーザ光、S偏光のレーザ光ともにほぼ透過し、波長λ2のレーザ光のP偏光のレーザ光を透過させ、S偏光のレーザ光を反射させる特性を有する。傾斜面3gはブロック3cと3dの間に形成されており、傾斜面3gはブロック3cと3dの接合面に相当する。ブロック3c、3dの少なくとも一方の面にCD用のホログラム3jを設けた。
ホログラムの働きを説明する。図5はホログラムの働きを示す図である。ホログラム25は光の回折と干渉を利用して入射した光束を所定の方向に導く光学素子である。ここでホログラム25は基板25aの表面に設けた凹凸25bにより入射した光束が透過する際に回折と干渉を受けて所定の方向に導かれる形態であるとして説明する。また、簡単のためホログラム25と受光センサ10との間の集光レンズは省略した。凹凸25bは凸部と凹部とを交互に略平行に並べた構成である。通常、回折の+1次光または−1次光の回折光の少なくとも一方が光ピックアップ装置20に用いられる。主に凹凸25bの深さにより回折光の光量が決まり、凹凸25bの間隔と凹凸25bの方向により回折光の光束が向かう方向が決まる。隣り合う2つの凹凸25bは分割線25cと呼ばれる仮想線で区切られる。凸部と凹部とが平行に並んでいると、入射した光束の形状が保たれたままホログラム25から出射される。一方、凸部と凹部の並びがカーブしているとそれに合わせて出射される光束の形状が変化するため、平行光が入射した場合に集束光や発散光にすることもできる。
図5において、ホログラム25は3本の分割線25cで区切られる。区切られた4つの領域それぞれに入射した光は凹凸25bの方向に従って回折されてホログラム25から出射し、受光センサ10に入射する。それぞれの領域からの光束が入射する位置に光検出面を配置することにより光束を分離することができる。なお、ホログラム25は透過型としたが、反射型としても構わない。また、光束は反対側から透過するようにしても構わない。また、凹凸25bは基板25aの表面に剥き出しとしたが、凹凸25bを充填材料で充填しても良い。その際、ホログラムとして使用するレーザ光の波長において凹凸25bと充填材料の屈折率は異なるようにする。
図6は本実施の形態1のCD用のホログラムの分割パターン図である。第2ホログラムはCD用のホログラム3jとした。CD用のホログラム3jはCD9eの半径方向に平行な方向の分割線35とCD9eの円周の接線方向に平行な方向の分割線36を有する等面積の4つの分割領域31、32、33、34を備える。分割領域31、32、33、34は各々トラッキング制御に必要な光束を分離する第2トラッキング領域31a、32a、33a、34aとフォーカス制御に必要な光束を分離する第2フォーカス領域31b、31c、32b、32c、33b、33c、34b、34cに分割される。そのうち第2フォーカス領域31b、32b、33b、34bで分離された光束は合焦してから受光センサ10に入射し、第2フォーカス領域31c、32c、33c、34cで分離された光束は合焦する前に受光センサ10に入射する。第2フォーカス領域31b、32b、33b、34bと第2フォーカス領域31c、32c、33c、34cの合焦の状態は逆でも構わない。
なお、本実施の形態1では、集積プリズム3を4つのブロックで構成したが、光学設計の仕様などによって、3つ以下のブロックや5つ以上のブロックで構成しても良く、その結果傾斜面を2つ以下や4つ以上集積プリズム3の中に内蔵させても良い。
コリメートレンズ4は光源1から出射された発散光のレーザ光を略平行光に変換し、DVD9、CD9eの情報記録面で反射された略平行光のレーザ光を集束光に変換する。コリメートレンズ4は光学ガラスまたは光学プラスチックで作製される。
ビームスプリッタ5は光学ガラスまたは光学プラスチックで作製される。光源1側の面には偏光分離膜を形成する。偏光分離膜は光源1のいずれの発光点から出射されたレーザ光も大半を反射し、一部を透過させる。また、偏光分離膜はDVD9、CD9eの情報記録面で反射されたいずれのレーザ光もほとんど全部を反射させる。立ち上げプリズム6はそれまでDVD9、CD9eの面に略平行な面内にあった光軸をDVD9、CD9eの面に略直角に立ち上げるためのプリズムであり、ミラーとしても良い。
図7は本実施の形態1のホログラム素子の断面構成図である。ホログラム素子7は光学ガラス等で作製された光源1側の基板7c、DVD9、CD9e側の基板7dの間に、光源1側にDVD用のホログラム7a、DVD9、CD9e側に1/4波長板7bを有した構成である。DVD用のホログラム7aはDVD9で反射された復路の波長λ1のレーザ光にのみ作用するよう波長選択性、偏光選択性を持たせて基板7cの表面に形成されている。また1/4波長板7bは両方の波長の光に作用するよう屈折率と厚みが設定されている。
図8は本実施の形態1のDVD用のホログラムの分割パターン図である。DVD用のホログラム7aはDVD9で反射されたレーザ光を+1次光の回折光であるトラッキング制御とフォーカス制御に必要な光束に分離する。DVD用のホログラム7aはDVD9の半径方向に平行なラジアル方向の第1分割線7eとDVD9の円周の接線方向に平行なタンジェンシャル方向の第2分割線7fで隔てられた略等面積の4つの分割領域100、200、300、400を備える。ラジアル方向、タンジェンシャル方向はDVD9に光源1からのレーザ光が入射する位置を基準とする。第1分割線7eがDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向のほぼ中心、第2分割線7fがDVD用のホログラム7aのラジアル方向のほぼ中心である。各々の分割領域100、200、300、400はタンジェンシャル方向の分割線でトラッキング領域113、213、313、413とフォーカス領域123、223、323、423に区切られる。
DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に近い領域のトラッキング領域113、213、313、413は、ラジアル方向の分割線でメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412とに交互に区切られる。すなわち、メイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412とはラジアル方向において同一幅とした。DVDの情報記録面に集光するスポットの中央部付近はトラッキング情報が少ない。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中央部にサブトラッキング領域112、212、312、412を配置して、トラッキング情報が少ない区域の光束をトラッキング制御の補助に用いる。これにより、トラッキング制御用信号の出力を大きくすることができる。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の周辺部の領域のトラッキング領域113、213、313、413はメイントラッキング領域111、211、311、411のみとした。またトラッキング領域113、213、313、413のうちDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の端部もメイントラッキング領域111、211、311、411とした。
また、フォーカス領域123、223、323、423は、タンジェンシャル方向の分割線で、フォーカス領域121、221、321、421とフォーカス領域122、222、322、422に区切られる。フォーカス領域121、221、321、421が分離する光束は合焦してから受光センサ10に入射する。また、フォーカス領域122、222、322、422が分離する光束は合焦する前に受光センサ10に入射する。なお、フォーカス領域121、221、321、421とフォーカス領域122、222、322、422は光束の合焦の状態が逆でも構わない。タンジェンシャル方向の分割線で区切られたフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422で分離された光束が作り出すフォーカス制御用信号は波形の乱れが少なく、安定したフォーカス制御ができる。
対物レンズ8は光学ガラスや光学プラスチック等で作製され、DVD9、CD9eの両方に焦点を合わせることができる。2焦点対物レンズである対物レンズ8としては、集光レンズ及びフレネルレンズまたはホログラムレンズの組み合わせ、DVD用集光レンズにCD再生時に開口制限手段を設ける組み合わせ等を用い、DVD9、CD9eの厚み及び開口数の違いを吸収するものも使用することができる。
DVD9はDVD−ROM、DVD±R/RW、DVD−RAM等である。CD9eはCD、CD−ROM、CD−R/RWである。DVD9もCD9eも再生専用の媒体を除いて全て記録も再生も可能なものである。しかも、2層の情報記録面を有する光ディスクを含む複数層の情報記録面を有する光ディスクを含むものである。また、DVD9とCD9eの組み合わせだけでなく、いわゆるBD(Blu−ray Disc)やHD DVD(High Definition DVD)等との組み合わせでも一般性を失うものではない。
受光センサ10は、モールド樹脂などで構成されたケース内にDVD9、CD9eからの反射光が入射する光検出面10aを内蔵する。光検出面10aは仕様などに応じて所定のパターンで配置される。図9は本実施の形態1の受光センサの光検出面の配置図である。本実施の形態1において、受光センサ10はDVD用とCD用を兼用した。兼用することでCD専用の受光センサを用いる必要がなくなり、部品点数を減らすことができる。また、光検出面10aを配置する面積を少なくすることができ、光ピックアップ装置20を小型、薄型にすることができる。さらに、光検出面10aと外部をつなぐ端子数を減らすことができるため、受光センサ10を小さくすることができ、光ピックアップ装置20を小型、薄型にすることができる。光検出面10aはその内容によりメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、DVD用フォーカス光検出面10d、CD用サブトラッキング光検出面10e、CD用フォーカス光検出面10fに分類できる。第2メイントラッキング光検出面はメイントラッキング光検出面10bと兼用である。第2サブトラッキング光検出面はサブトラッキング光検出面10cと兼用である。また、第3サブトラッキング光検出面はCD用サブトラッキング光検出面10eである。フォーカス光検出面はDVD用フォーカス光検出面10dである。また、第2フォーカス光検出面はCD用フォーカス光検出面10fである。
光検出面10aは、DVD用フォーカス光検出面10dが長方形の中心位置、メイントラッキング光検出面10bが長方形の頂点位置となるように配置される。また、サブトラッキング光検出面10cはメイントラッキング光検出面10bのタンジェンシャル方向の内側に並列で配置される。CD用サブトラッキング光検出面10eが配置されるのは1組のラジアル方向に並ぶメイントラッキング光検出面10bの側部である。CD用サブトラッキング光検出面10eはそれぞれのメイントラッキング光検出面10bのタンジェンシャル方向の外側に並列で配置される。また、CD用フォーカス光検出面10fがDVD用フォーカス光検出面10dのラジアル方向に隣接して配置される。B11、A11、B12、A12、B13のDVD用フォーカス光検出面10dはタンジェンシャル方向に接するように並ぶ。A21、B21、A22のCD用フォーカス光検出面10fもまたタンジェンシャル方向に接するように並ぶ。CD専用に最適なCD用フォーカス光検出面10fを備えることで、CD9eのフォーカス制御をより精度良く行うことができる。メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eのラジアル方向外側の縁は全てラジアル方向のほぼ同じ位置とした。サブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eのラジアル方向の長さは等しく、メイントラッキング光検出面10bのラジアル方向の長さはそれらよりも長い。なお、CD用サブトラッキング光検出面10eは、スペースに十分な余裕があれば、全てのメイントラッキング光検出面10bのタンジェンシャル方向の外側に並列で配置しても構わない。
DVDのフォーカス制御にはA11、A12、B11、B12、B13の各DVD用フォーカス光検出面10dからの出力が用いられる。また、CDのフォーカス制御にはA21、A22、B21の各CD用フォーカス光検出面10fからの出力が用いられる。CD用フォーカス光検出面10fはDVD用フォーカス光検出面10dと共用としても構わないが、専用のCD用フォーカス光検出面10fを設けることで最適なフォーカス制御用信号が得られる。なお、A11、A12、A21、A22の各DVD用フォーカス光検出面10d、CD用フォーカス光検出面10fは電気的に接続してある。同様にB11、B12、B13、B21の各DVD用フォーカス光検出面10d、CD用フォーカス光検出面10fも電気的に接続してある。一方、DVDのトラッキング制御にはα、β、C、Dの各メイントラッキング光検出面10bの出力が用いられ、その補助としてG、H、T、Uの各サブトラッキング光検出面10cの出力が用いられる。また、CDのトラッキング制御にはα、β、C、Dの各メイントラッキング光検出面10bの出力とG、H、T、Uの各サブトラッキング光検出面10cの出力に加えて、E、Fの各CD用サブトラッキング光検出面10eの出力が用いられる。G、T、Eの各サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10e及びH、U、Fの各サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eは電気的に接続されている。
図10は本実施の形態1のDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束がメイントラッキング光検出面に入射する様子を示した図、図11は本実施の形態1のDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束がサブトラッキング光検出面に入射する様子を示した図である。DVD9で集光し反射して分割領域200のメイントラッキング領域211に入射した光束は分離されてすべてαのメイントラッキング光検出面10bの「●」の位置にスポット27として略合焦状態で入射するようにDVD用のホログラム7aが構成されている。図10の「●」は図9の「●」と同じものである。分割領域200のメイントラッキング領域211とαのメイントラッキング光検出面10bとはラジアル方向及びタンジェンシャル方向で交差した配置になっている。また、DVD9で集光し反射して分割領域200のサブトラッキング領域212に入射した光束は分離されてすべてGのサブトラッキング光検出面10cの「●」の位置にスポット27aとして略合焦状態で入射するようにDVD用のホログラム7aが構成されている。図11の「●」は図9の「●」と同じである。Gのサブトラッキング光検出面10cはαのメイントラッキング光検出面10bと隣合わせている。分割領域200のサブトラッキング領域212とGのサブトラッキング光検出面10cとはラジアル方向及びタンジェンシャル方向で交差した配置になっている。サブトラッキング領域212で分離された光束はサブトラッキング光検出面10cの中心部に入射する。メイントラッキング領域211で分離された光束は、メイントラッキング光検出面10bがサブトラッキング光検出面10cよりラジアル方向が長くなっている分、ラジアル方向の内側に入射する。
同様にして、図9に示すように、メイントラッキング領域111、211、311、411で分離された各光束はそれぞれC、α、β、Dの各メイントラッキング光検出面10bにスポット27として略合焦状態で入射する。同様にサブトラッキング領域112、212、312、412で分離された各光束はそれぞれT、G、H、Uの各サブトラッキング光検出面10cにスポット27aとして略合焦状態で入射する。このようにDVD用のホログラム7aの各々の分割領域100、200、300、400のトラッキング領域113、213、313、413で分離された光束はラジアル方向及びタンジェンシャル方向で交差してメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射する。このようにすることは光束全体の幅が光路の途中で狭くなることであり、光路の途中で光束全体の幅が広がって他の光学部品によって光束の端部が遮断されることを防ぐことができる。なお、交差させるのはラジアル方向またはタンジェンシャル方向のどちらか一方向でも構わない。交差させた方向では光束全体の幅は途中で狭くなるのでその方向では光束の端部が遮断されることを防ぐことができる。また、DVD用のホログラム7aのフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422で分離された光束は、A11、A12、B11、B12、B13のDVD用フォーカス光検出面10dにスポット28として入射してフォーカス制御用の信号に変換される。フォーカス領域121、221、321、421からの光束は合焦してからDVD用フォーカス光検出面10dに入射し、フォーカス領域122、222、322、422からの光束は合焦する前にDVD用フォーカス光検出面10dに入射するので、スポット29はわずかに広がりを持つ。
CDの場合も同様に図9に示すように、CD用のホログラム3jの第2トラッキング領域31a、32a、33a、34aで分離された光束のうち回折素子2の回折格子2bで分離されたメインビームはそれぞれC、α、β、Dのメイントラッキング光検出面10bの「×」の位置にスポット29として略合焦状態で入射する。また、サイドビームはそれぞれT、G、E、H、F、Uのサブトラッキング光検出面10cの「×」の位置とCD用サブトラッキング光検出面10eの「×」の位置にスポット29aとして略合焦状態で入射する。スポット29のラジアル方向の入射位置とスポット29aのラジアル方向の入射位置とはほぼ等しい。前述のように、本来、C、Dのメイントラッキング光検出面10bのタンジェンシャル方向の外側にもCD用サブトラッキング光検出面10eを配置するべきであるが、配置しなかった。その理由は以下の通りである。この部分に光検出面を配置することで受光センサ10の幅が大きくなってしまい、光ピックアップ装置20の厚さが厚くなってしまうことと、後述するように光検出面を配置しなくても十分にトラッキング制御用の信号が確保できるためである。さらに光検出面10aの数を減らすことで、情報の記録または再生を行う所定の情報記録面以外から光検出面10aに入射する反射光の光量の絶対値を減らすことができる効果もある。またCD用のホログラム3jの各々の分割領域31、32、33、34の第2トラッキング領域31a、32a、33a、34aで分離された光束もDVDの場合と同様にCD9eの半径方向に平行な方向及び円周の接線方向に平行な方向で交差してメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eに入射させる。このようにすることは光束全体の幅が光路の途中で狭くなることであり、光路の途中で光束全体の幅が広がって集積プリズム3の側面によって光束の端部が遮断されることを防ぐことができる。なお、交差させるのはCD9eの半径方向に平行な方向または円周の接線方向に平行な方向のどちらか一方向でも構わない。交差させた方向では光束全体の幅は途中で狭くなるのでその方向では光束の端部が遮断されることを防ぐことができる。また、CD用のホログラム3jの第2フォーカス領域31b、31c、32b、32c、33b、33c、34b、34cで分離された光束は、A21、A22、B21のCD用フォーカス光検出面10fにスポット30として入射してCD用フォーカス制御用の信号に変換される。第2フォーカス領域31b、32b、33b、34bからの光束は合焦してからCD用フォーカス光検出面10fに入射し、第2フォーカス領域31c、32c、33c、34cからの光束は合焦する前にCD用フォーカス光検出面10fに入射するので、スポット30はわずかに広がりを持つ。
光ピックアップ装置20のトラッキング制御とフォーカス制御の流れを説明する。図12は光ピックアップ装置の制御の流れを示す図である。受光センサ10に入射した光はDVD用トラッキング制御用、DVD用フォーカス制御用、CD用トラッキング制御用、CD用フォーカス制御用の電気信号に変換され、光ディスク装置本体26のアナログ信号処理部26aに入る。アナログ信号処理部26aは入力された信号に演算・帯域処理を行い、サーボ処理部26bに出力する。サーボ処理部26bはアナログ信号処理部26aからの信号を基にフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成してモータ駆動部26cに出力する。フォーカスエラー信号はDVD9、CD9eの情報記録面に集光した光束の焦点のずれである。トラッキングエラー信号はDVD9、CD9eの情報記録面に集光した光束の情報トラックに対するDVD9、CD9eの半径方向のずれである。モータ駆動部26cは入力されたフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を基に対物レンズ8を搭載するアクチュエータ14を駆動する電流を生成する。これによりDVD9、CD9eの情報記録面上に集光した光束の焦点のずれ及び情報トラックに対するずれが極小になるように制御される。
また、コントローラ26dにはアナログ信号処理部26a、サーボ処理部26b、モータ駆動部26c、ディジタル信号処理部26e、レーザ駆動部26fの各部から送られる信号が入力される。コントローラ26dはこれらの信号の演算処理等を行い、この演算処理の結果(信号)を各部に送出し、各部にて駆動、処理を実行させることで各部の制御を行う。
前光モニタ11は光源1から出射されたレーザ光の一部を受け、光量を電気信号に変換し出力するセンサである。図12に示すように、この電気信号は光ディスク装置本体26のアナログ信号処理部26aに入る。アナログ信号処理部26aは入力された信号に演算・帯域処理を行い、ディジタル信号処理部26eに出力する。ディジタル信号処理部26eはアナログ信号処理部26aからの信号とホストから送られたデータを基にレーザ変調信号を生成してレーザ駆動部26fに送る。光ピックアップ装置20本体の光源1の近傍に配置されたレーザ光源駆動電源26hはレーザ駆動部26fからの信号を受けて光源1に駆動電流を供給する。これによりDVD9、CD9eの情報記録面に集光した光束の光量が一定になるように制御される。
図2において、キャリッジ12は光ピックアップ装置20の骨格を成すもので、前述のようにキャリッジ12に各種光学部品を始めとする光ピックアップ装置20を構成する部品が直接あるいは他の部品を介して取り付けられる。キャリッジ12はZn合金、Mg合金などの合金材料あるいは硬質樹脂材料などで形成される。
結合ベース13を形成する材料は比較的軽量で、高精度なできあがり寸法を実現できる形状加工性、良好な放熱性等を兼ね備えることが求められる。例えば、Zn、Zn合金、Al、Al合金、Ti、Ti合金などが好適に用いられる。本実施の形態1では、コスト面などを考慮し、Znダイキャストで結合ベース13を形成した。結合ベース13の光源1、回折素子2、集積プリズム3及び受光センサ10の取り付け部はキャリッジ12への取り付け部に対して所定の位置、角度で形成される。
ホログラム素子7と対物レンズ8はコイルを備えたレンズホルダ15に固定される。レンズホルダ15はサスペンションワイヤ16を介してサスペンションホルダ17に可動状態で支持される。サスペンションホルダ17は磁石を備えたヨーク18に固定される。その際レンズホルダ15はサスペンションワイヤ16以外には触れないようにする。アクチュエータ14は対物レンズ8、コイル、磁石を備える。アクチュエータ14はキャリッジ12に接着剤で固定される。アクチュエータ14は接着剤を介してのみキャリッジ12と接触する。アクチュエータ14はフォーカス制御、トラッキング制御によりDVD9の情報記録面の情報トラック上に集光スポットが合焦し、位置ずれがないように対物レンズ8を駆動する。
次に光路について説明する。図1において、光源1から出射されたDVD用の波長λ1のレーザ光は波長選択回折素子である回折素子2をほとんど回折されずにそのまま透過する。以下、光源1から出射されたレーザ光を往路光、往路光がDVD9、CD9eで反射されたレーザ光を復路光という。往路光はP偏光であるので集積プリズム3をそのまま透過し、コリメートレンズ4に入射する。コリメートレンズ4にてそれまで発散光であった往路光は略平行光に変換される。往路光はビームスプリッタ5に入射し、一部が透過され、大半が反射される。透過した往路光は前光モニタ11に入射し、往路光の出力制御に用いられる。ビームスプリッタ5で反射された大半の往路光は立ち上げプリズム6に入射し、それまでDVD9に略平行だった光路の向きがDVD9に略直角な方向に変換される。ホログラム素子7に入射した往路光はDVD用のホログラム7aをそのまま透過し、1/4波長板7bでP偏光から円偏光に変換される。さらに対物レンズ8で集束光に変換され、DVD9の情報記録面に合焦で入射する。
DVD9の情報記録面で反射され、復路光となったレーザ光は対物レンズ8にて略平行光に変換されて、ホログラム素子7に入射する。復路光は1/4波長板7bにて円偏光からS偏光に変換される。さらにDVD用のホログラム7aでトラッキング制御に必要な光束とフォーカス制御に必要な光束に分離される。DVD用のホログラム7aで分離された復路光は立ち上げプリズム6を通過し、ビームスプリッタ5でほぼ全反射され、コリメートレンズ4で集束光に変換され、集積プリズム3に入射する。集積プリズム3に入射した復路光は偏光分離膜3iを透過し、偏光分離膜3hで反射されて集積プリズム3から出射されて受光センサ10に入射する。
光源1から出射されたCD用の波長λ2のレーザ光の往路光は回折素子2でトラッキング制御用に用いられる3ビームに分割されて集積プリズム3に入射する。その後はDVDの往路光と同じ経路をたどり、CD9eに入射する。CD9eの情報記録面で反射されて復路光となったレーザ光は対物レンズ8にて略平行光に変換されて、ホログラム素子7に入射する。復路光は1/4波長板7bで円偏光からS偏光に変換され、DVD用のホログラム7aはそのまま透過する。復路光はさらに立ち上げプリズム6を通過し、ビームスプリッタ5でほぼ全反射され、コリメートレンズ4で集束光に変換され、集積プリズム3に入射する。集積プリズム3に入射した復路光は偏光分離膜3iで反射され、CD用のホログラム3jでトラッキング制御に必要な光束とフォーカス制御に必要な光束に分離される。その後、再度偏光分離膜3iで反射され集積プリズム3から出射されて受光センサ10に入射する。
CDのトラッキング制御用のレーザ光である回折格子2bで回折され、CD用のホログラム3jで分離された光束が受光センサ10にスポット29、29aとして入射する位置は図9の「×」で示した位置である。メインビームのスポット29、サイドビームのスポット29aのラジアル方向の位置はほとんど同じである。スポット29aはサブトラッキング光検出面10cやCD用サブトラッキング光検出面10eのほぼ中心に位置する。一方、DVDのトラッキング制御用のレーザ光であるDVD用のホログラム7aのトラッキング領域113、213、313、413で分離された光束が受光センサ10に入射する位置は図9の「●」で示した位置である。サブトラッキング領域112、212、312、412で分離された光束はCDの場合とほぼ同様にサブトラッキング光検出面10cのほぼ中心に入射し、スポット27aの位置はスポット29aの位置とほぼ同じである。しかし、メイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束がメイントラッキング光検出面10bに入射するスポット27の位置はラジアル方向のより内側とした。また、それに伴いメイントラッキング光検出面10bのラジアル方向の長さを内側に伸ばした。これは後述するように2層の情報記録面を有するDVDを用いる際に、情報の記録または再生を行う所定の情報記録面以外からの反射光の影響により発生するオフセットを極小にするのに必要なものである。なお、伸ばすのはラジアル方向の外側でも良く、その場合、メイントラッキング光検出面10bに入射する位置はラジアル方向のより外側とする。
次にフォーカス制御について説明する。本実施の形態1ではDVD9もCD9eもスポットサイズ法で行うものとした。そのために、フォーカス領域121、221、321、421からの光束は合焦してからDVD用フォーカス光検出面10dに入射し、フォーカス領域122、222、322、422からの光束は合焦する前にDVD用フォーカス光検出面10dに入射するように、DVD用のホログラム7aを構成した。また、第2フォーカス領域31b、32b、33b、34bからの光束は合焦してからCD用フォーカス光検出面10fに入射し、第2フォーカス領域31c、32c、33c、34cからの光束は合焦前する前にCD用フォーカス光検出面10fに入射するように、CD用のホログラム3jを構成した。DVD用のフォーカス制御するためのフォーカスエラー信号FESはDVD用フォーカス光検出面10dの出力をIA11、IA12、IB11、IB12、IB13とすると以下のように表される。
FES=(IA11+IA12)−(IB11+IB12+IB13)
同様にCD用のフォーカスエラー信号FESはフォーカス光検出面10fの出力をIA21、IA22、IB21とすると以下のように表される。
FES=(IA21+IA22)−IB21
DVD9においてDVD用のホログラム7aのフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422がタンジェンシャル方向に一様な帯状形状がフォーカスエラー信号FESにとって望ましい。これはフォーカスエラー信号FESが乱れにくいようにするためである。本実施の形態1のDVD用のホログラム7aでは各分割領域100、200、300、400内ではフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422はタンジェンシャル方向の分割線でのみ分割されるように構成した。CD用のホログラム3jも同様であり、第2フォーカス領域31b、31c、32b、32c、33b、33c、34b、34cが外周部からCD用のホログラム3jの中心に近い部分までCD9eの円周の接線方向に平行な分割線でのみ分割されるように構成した。
次にトラッキング制御について説明する。本実施の形態1ではトラッキング制御はCD9eにおいては3ビーム・ディファレンシャル・プッシュプル法(以下、DPP法という。)で行い、粗悪な光ディスクが使われた場合に位相差法に変更できるものとした。また、DVD9においてはDVD9の種類により異なり、DVD−RAMの場合、再生の場合も記録の場合も1ビーム・プッシュプル法、それ以外のDVD9の再生の場合、位相差法、記録の場合、1ビーム・アドバンスト・プッシュプル法とした。
CD9eにおけるDPP法によるCD用のトラッキング制御するためのトラッキングエラー信号TESは以下の通りのように表される。ここでメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eの出力をIα、Iβ、IC、ID、IG、IH、IT、IU、IE、IFとする。
TES=(IC+Iα)−(ID+Iβ)−k2{(IE+IG+IT)−(IF+IH+IU)}
(但し、k2は動作設定に応じて定まる定数)
通常k2は理想的にはk2≒1になるように設計される。またIE、IG、IT、IF、IH、IUには数倍程度のゲインがかけられているのでサブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eに入射する光量は小さい。前述のようにサイドビームのうちTとUに入射する光束とペアになる光束が入射するCD用サブトラッキング光検出面10eはないが、トラッキングエラー信号TESを得ることができる。
また、CDにおける位相差法によるトラッキングエラー信号TESは以下の通りとなる。
TE=∠{(IC+Iβ)−(ID+Iα)}
(但し、∠は検出した位相差を変換した電圧)
通常はより安定してトラッキング制御することができるDPP法が用いられる。しかし例えば、ピットの高さが規格に入っていないような粗悪ディスクを再生するような場合、DPP法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力されない場合がある。そのような場合でも位相差法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力できるため、予備のトラッキング制御法として用いることができる。このようにトラッキング制御しきれない規格から外れているような粗悪なCD9eを再生するような場合でもトラッキング制御することができるので、光ディスク装置としてより幅広いCD9eに対応することができる。
一方、DVD−RAMのトラッキングエラー信号TESは以下のように表される。なお、DVD9のトラッキング制御はいずれも1ビームを用いる方式である。
TES=(IC+Iα)−(ID+Iβ)
また、DVD−RAM以外のDVD9の再生の場合のトラッキングエラー信号TESは以下のように表される。
TES=∠(IC−ID)+∠(Iβ−Iα)
もしくは
TES=∠{(IC+Iβ)−(ID+Iα)}
である。どちらの関係式で算出したトラッキングエラー信号TESを用いても良い。
また、DVD−RAM以外のDVD9の記録の場合のトラッキングエラー信号TESは以下のように表される。
TES=(IC+Iα)−(ID+Iβ)−k1{(IG+IT)−(IH+IU)}
(但し、k1は動作設定に応じて定まる定数)
この場合にのみ、G,H,T,Uのサブトラッキング光検出面10cの出力がトラッキング制御の補助に用いられる。通常k1は理想的にはk1≒1になるように設計される。またIG、IT、IH、IUには数倍程度のゲインがかけられているのでサブトラッキング光検出面10cに入射する光量は小さい。ただし、CD用サブトラッキング光検出面10eも電気的にはつながっているので、仮にCD用サブトラッキング光検出面10eに何らかの光が入射すれば出力として加算される。このようにDVD9においては各使用するDVD9の種類と記録または再生の動作に応じて最適なトラッキングエラー信号が得られるため、最適なトラッキング制御が行える。
本実施の形態1においてDVD9として2層の情報記録面を有するDVDを用いた場合を説明する。図13(a)は本実施の形態1の2層の情報記録面を有するDVDにおけるレーザ光の反射の様子において手前側の情報記録面で反射した場合を示す図、図13(b)は奥側の情報記録面で反射した場合を示す図である。手前側の情報記録面をL0層9a、奥側の情報記録面をL1層9bという。レーザ光40がL0層9aに集光して反射される場合、一部はL0層9aを透過し奥側のL1層9bで反射される。また、L1層9bに集光して反射される場合、一部は手前のL0層9aで反射される。したがって、L0層9aに集光する場合も、L1層9bに集光する場合も、非集光で反射されたレーザ光が反射してくる。このように集光でレーザ光を反射する方の情報記録面を集光面、非集光でレーザ光を反射する方の情報記録面を非集光面という。図13(a)においてL0層9aが集光面、L1層9bが非集光面、図13(b)においてL0層9aが非集光面、L1層9bが集光面である。これらの非集光面の情報記録面で反射されたレーザ光は信号成分を含んだ集光面の情報記録面で反射されたレーザ光とともに受光センサ10に入射する。そして非集光面の情報記録面で反射されたレーザ光はトラッキング制御を行う際のノイズ成分となりトラッキング制御を不安定にさせる原因となり得る。
図14は本実施の形態1の非集光面であるL1層で反射されDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図、図15は本実施の形態1の非集光面であるL1層で反射されDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図である。図16は本実施の形態1の非集光面であるL0層で反射されDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図、図17は本実施の形態1の非集光面であるL0層で反射されDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図である。
図14において非集光面であるL1層9bで反射したレーザ光は、分割領域200のメイントラッキング領域211で分離され、1点には集光せずに分散してスポット41として非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はメイントラッキング光検出面10bとDVD用フォーカス光検出面10dとの間である。各スポット41は各メイントラッキング領域211に対応する。スポット41のDVD用のホログラム7aの中心に相当する位置がほぼ図10のスポット27の位置である。そしてDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域211で分離された光束がスポット44としてメイントラッキング光検出面10bに入射する。同様に図15において非集光面であるL1層で反射したレーザ光は、分割領域200のサブトラッキング領域212で分離され、1点には集光せずに分散してスポット42として非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はサブトラッキング光検出面10cとDVD用フォーカス光検出面10dとの間である。各スポット42は各サブトラッキング領域212に対応する。スポット42のDVD用のホログラム7aの中心に相当する位置がほぼ図11のスポット27aの位置である。そしてDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域で分離された光束がスポット45としてサブトラッキング光検出面10cに入射する。
一方、図16において非集光面であるL0層で反射したレーザ光は、分割領域200のメイントラッキング領域211で分離され、1点には集光せずに分散してスポット41として非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はDVD用フォーカス光検出面10dと反対側である。各スポット41は各メイントラッキング領域211に対応する。スポット41のDVD用のホログラム7aの中心に相当する位置がほぼ図10のスポット27の位置である。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域211で分離された光束がスポット44としてメイントラッキング光検出面10bに入射する。また、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心から2番目に近いメイントラッキング領域211で分離された光束が、スポット46としてCD用サブトラッキング光検出面10eのタンジェンシャル方向の中央部に入射する。同様に図17において非集光面であるL0層で反射したレーザ光は、分割領域200のサブトラッキング領域212で分離され、1点には集光せずに分散してスポット42として非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はDVD用フォーカス光検出面10dと反対側である。各スポット42は各サブトラッキング領域212に対応する。スポット42のDVD用のホログラム7aの中心に相当する位置がほぼ図11のスポット27aの位置である。そしてDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域で分離された光束がスポット45としてサブトラッキング光検出面10cに入射する。
図18は本実施の形態1の非集光面であるL1層で反射されたレーザ光の受光センサ上の入射位置を示す図であり、図13(a)に相当する。図14及び図15で示した受光センサ10に入射するレーザ光の位置が図18にも示されている。図19は本実施の形態1の非集光面であるL0層で反射されたレーザ光の受光センサ上の入射位置を示す図であり、図13(b)に相当する。図16及び図17で示した受光センサ10に入射するレーザ光の位置が図19にも示されている。非集光面であるL1層9bで反射されたレーザ光40も非集光面であるL0層9aで反射されたレーザ光40もメイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束はスポット41として受光センサ10上に入射する。同様にサブトラッキング領域112、212、312、412で分離された光束はスポット42として受光センサ10上に入射する。フォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422で分離された光束はスポット43として受光センサ10上に入射する。スポット41はL1層9bで反射された場合の入射位置とL0層9aで反射された場合の入射位置とでは、集光面で反射されて受光センサ10上に入射した図9のスポット27を中心に点対称の位置関係にある。また、スポット42はL1層9bで反射された場合の入射位置とL0層9aで反射された場合の入射位置とでは、集光面で反射されて受光センサ10上に入射した図9のスポット27aを中心に点対称の位置関係にある。
また、DVD9はL0層9aとL1層9b間の距離がばらついたり、DVD9全体の屈折率がばらついたりする場合がある。そのような場合、DVD用のホログラム7aの中心付近を通過した光束が受光センサ10に入射する位置はほとんど動かずに、そこから離れた位置を通過した光束ほど入射する位置が大きく変動する。このことより、スポット41、42は光検出面10aに全く入射しないようにするのは非常に困難なことである。したがって、トラッキングエラー信号TESを生成する場合にスポット41、42の影響を極小にすることが必要である。特にサブトラッキング光検出面10cやCD用サブトラッキング光検出面10eにつながる検出回路にはk1やk2を満たすために数倍のアンプが組み込まれており、スポット41、42の影響はさらに大きい。そこで各光検出面10aに入射するスポット41、42が生成するトラッキングエラー信号TESがk1を考慮してなおバランスが取れるようにすること、つまりトラッキングエラー信号TESがほぼ0とすることによりスポット41、42の影響を極小にできる。これはすなわち、メイントラッキング光検出面10bが受光する受光量と、サブトラッキング光検出面10cが受光する受光量とCD用サブトラッキング光検出面10eが受光する受光量の合計との比率が一定になるようにすることである。これは、受光センサ10をDVD専用としたり、サブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eとを電気的に接続しなかったりする場合には、次の通りになる。すなわち、メイントラッキング光検出面10bが受光する受光量と、サブトラッキング光検出面10cが受光する受光量との比率が一定になるようにすることである。しかも2層の情報記録面を有するDVD9や光ピックアップ装置の光学系のばらつきを考慮してもその状態が保たれることが望ましい。すなわちスポット41、42が生成するトラッキングエラー信号TESは以下の通りに表される。
TES=(IC+Iα)−(ID+Iβ)−k1{(IG+IT)−(IH+IU)}≒0
そのために、スポット41の所定の一部がメイントラッキング光検出面10bに入射するようにメイントラッキング光検出面10bが配置されている。同様にスポット42の所定の一部がサブトラッキング光検出面10cに入射するようにサブトラッキング光検出面10cが配置されている。スポット43の一部がDVD用フォーカス光検出面10dに入射するようにDVD用フォーカス光検出面10dが配置されている。
逆に、スポット41、42が所定のメイントラッキング光検出面10b及びサブトラッキング光検出面10c以外のメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、DVD用フォーカス光検出面10dには入射しないように光検出面10aが配置されている。このような配置は、集光面からの反射光について、メイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束の入射位置とサブトラッキング領域112、212、312、412で分離された光束の入射位置とをラジアル方向においても互いにずらし、非集光面からの反射光もずらすことで実現した。このようにして、不必要な光束を光検出面10aに入射させないようにすることができる。また、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の周辺部に設けられたトラッキング領域113、213、313、413で分離された光束は、受光センサ10の光検出面10aの領域外に入射させる。DVD用のホログラム7aの端部に近い区域を通過した光束ほど入射位置の変動が大きい。そのため、初めから変動要因が多い光束を受光センサ10の光検出面10aの領域外に入射させることにより、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの入射光量バランスを安定して保つことができる。逆にDVD用のホログラム7aの端部に近い区域からの光束ほどスポット27、27aから離れるので、光検出面10aの領域から外しやすい。また、スポット43がメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eには入射しないように光検出面10aが配置されている。
また、図示していないが、DVD用のホログラム7aで回折されずに0次光としてそのまま通過したレーザ光がDVD用フォーカス光検出面10d、メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cのいずれにも入射しないように光学系が構成されている。また、DVD用のホログラム7aで−1次光として回折されたレーザ光もDVD用フォーカス光検出面10d、メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cのいずれにも入射しないように光検出面10aが配置されている。さらにα、β、C、Dの各メイントラッキング光検出面10bにはほぼ同程度の光量のスポット41が入射する。また、G、H、T、Uの各サブトラッキング光検出面10cにもほぼ同程度の光量のスポット42が入射する。また、E、Fの各CD用サブトラッキング光検出面10eにもほぼ同程度の光量のスポット41が入射する。そのため、メイントラッキング光検出面10bが受光する受光量と、サブトラッキング光検出面10cが受光する受光量との比率が一定になり、トラッキングエラー信号TESはk1を考慮してもほぼ0となる。このように構成するためには光検出面10aの(α、G、E)、(β、H、F)、(C、T)、(D、U)、(B11、A11、B12、A12、B13)をお互いに離すように配置した。そのためDVD用のホログラム7aからのレーザ光は前述のように交差させて対角に相当する光検出面10aに入射させることにより光路の途中で光束の一部が遮断されることを防いだ。
スポット44は、前述のようにDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェルシャル方向のDVD用のホログラム7aの中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束のものである。スポット44はL1層9bで反射されたものもL0層9aで反射されたものもメイントラッキング光検出面10bに入射させる。スポット45は、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェルシャル方向のDVD用のホログラム7aの中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412で分離されたものである。スポット45はL1層9bで反射されたものもL0層9aで反射されたものもサブトラッキング光検出面10cに入射させる。スポット46はラジアル方向のDVD用のホログラム7aの中心に最も近く且つタンジェンシャル方向のDVD用のホログラム7aの中心に2番目に近いメイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束のものである。スポット46はL0層9aで反射されたもののみCD用サブトラッキング光検出面10eのタンジェンシャル方向の中央部に入射させる。スポット44はDVD用のホログラム7aの中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束のものである。スポット45はDVD用のホログラム7aの中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412で分離された光束のものである。そのためDVD9のばらつきがあっても、スポット44、45はその入射位置はほとんどばらつかないため、メイントラッキング光検出面10bやサブトラッキング光検出面10cからはみ出しにくい。また、スポット46もCD用サブトラッキング光検出面10eのタンジェンシャル方向の中央に入射するように構成した。そのためスポット46は複数層の情報記録面を有するDVD9が多少ばらついても安定してCD用サブトラッキング光検出面10e内に位置する。したがって、安定したトラッキング制御用信号が得られる。
DVD9の非集光面の情報記録面からの反射光については、あるトラッキング領域113、213、313、413の中のある領域を通過した場合メイントラッキング光検出面10bに入射し、そのトラッキング領域113、213、313、413の中の他の領域を通過した場合サブトラッキング光検出面10cに入射することが重要である。たとえば、DVD9の非集光面の情報記録面からの反射光がメイントラッキング光検出面10bにのみ入射する場合を考える。すると、複数層の情報記録面を有するDVD9や光学系のばらつきで光束の入射位置がラジアル方向にずれると、メイントラッキング光検出面10bに入射する光束の光量は変化する。しかし、サブトラッキング光検出面10cの光量は0のままである。そのため、DVD9の非集光面情報記録面からの反射光について、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの出力のバランスが崩れる。しかし、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの両方に入射するようにすると、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの光量はばらつき等によって同時に変化する。そのため、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの出力のバランスが崩れるのを防ぐことができる。
本実施の形態1のようにサブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eとが電気的に接続されている場合には、以下のように考える。すなわち、DVD9の非集光面の情報記録面からの反射光については、あるトラッキング領域113、213、313、413の中のある領域を通過した場合メイントラッキング光検出面10bに入射し、そのトラッキング領域113、213、313、413の中の他の領域を通過した場合サブトラッキング光検出面10cまたはCD用サブトラッキング光検出面10eの少なくともいずれか一方に入射することが重要である。それによって、メイントラッキング光検出面10bの出力と、サブトラッキング光検出面10cとCD用サブトラッキング光検出面10eの総和の出力とのバランスが崩れるのを防ぐことができる。
また、スポット44のラジアル方向の幅をメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとのラジアル方向の長さの差以下とした。その結果、非集光面のL1層9bで反射した場合に、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット44として、メイントラッキング光検出面10bに取り込むことができる。同時に、スポット44と同じ列のスポット41がサブトラッキング光検出面10cに入射しないようにできる。また、スポット45のラジアル方向の幅はスポット44のラジアル方向の幅とほぼ同じであり、前述したようにスポット27とスポット27aのラジアル方向の入射位置の差はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとの長さの差とほぼ等しい。そのため、非集光面のL1層9bで反射した場合に、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット45として、サブトラッキング光検出面10cに取り込むことができる。また、非集光面のL0層9aで反射した場合も、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット45として、サブトラッキング光検出面10cに取り込むことができる。
図19において、スポット45と同じ列のスポット42がメイントラッキング光検出面10bに入射している。しかし、DVD9のばらつきがあっても、メイントラッキング光検出面10bに入射する光量はほとんど変化しない。また、スポット44の隣の列のスポット42の一部がメイントラッキング光検出面10bとCD用サブトラッキング光検出面10eに同時に入射している。しかし、この場合、DVD9のばらつきがあってこのスポット42の位置がずれても、メイントラッキング光検出面10bに入射する光量とCD用サブトラッキング光検出面10eに入射する光量の比率はほとんど変わらない。
以上のように、DVD9のばらつきがあっても、非集光面の情報記録面からの反射光については、メイントラッキング光検出面10bの受光量と、サブトラッキング光検出面10cの受光量とCD用サブトラッキング光検出面10eの受光量の合計との比率は、ほぼ一定に保たれる。それは、図18に示す非集光面であるL1層9bからの反射光でも、図19に示す非集光面であるL0層9aからの反射光でも、同じである。
メイントラッキング光検出面10bはラジアル方向の長さが長いので入射する光束を1点に集光させるのではなく、複数の集光点に分けたり、線状に集光させたりしても良い。そのことによって、スポット41、42がメイントラッキング光検出面10bに入射するのを効率的に回避したり、スポット41、42が生成するトラッキングエラー信号TESが略0の値を保ちやすくしたりできる。その目的でメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cの長さは自由に設定しても良い。また、スポット41、42の分布は光学倍率によって広くなったり狭くなったりする。そこで適宜これらのテクニックを駆使してトラッキングエラー信号TESへの影響を最小限にするのが肝要である。また、受光センサ10の出力ピン数に余裕があれば、メイントラッキング光検出面10、サブトラッキング光検出面10cの出力をさらに分離することができる。それによりスポット41、42によるトラッキングエラー信号へ与える影響をさらに小さくすることができる。
なお、再生信号RFは記録マーク列方向の記録マークのエッジの情報を含めることでジッターを良化することができる。再生信号RFは以下の通りとした。
RF=IA11+IA12+IB11+IB12+IB13+Iα+Iβ+IC+IDである。サブトラッキング光検出面10cやCD用サブトラッキング光検出面10eの出力も合算するのが、本来望ましいが、受光センサ10のサイズの制限から上記の通りとした。本実施の形態1ではタンジェンシャル方向のDVD用のホログラム7aの端部をメイントラッキング領域111、211、311、411として割り当て、光束をメイントラッキング光検出面10bに入射させて再生信号RFとして取り込んだ。そのため、再生信号RFは良好なジッターを有する。
次に2層の情報記録面を有するDVDのL0層9aに記録後L1層9bに記録を開始した場合の例を示す。図20は本実施の形態1のL0層に記録後L1層に記録を開始した場合の光ディスクの状況を示す図である。また、図21(a)は本実施の形態1のL0層に記録後L1層に記録を開始した場合のL0層からのレーザ光の反射光量分布を示した、L1層に記録を開始した直後でL0層の記録エリアと未記録エリアの境界からL1層にレーザ光を照射した場合の図、図21(b)はわずかにL0層の記録エリアに入った領域からL1層にレーザ光を照射した場合の図、図21(c)はL0層の記録エリアに完全に入った領域からL1層にレーザ光を照射した場合の図、図21(d)は(b)の場合のDVD用のホログラムの状況を示した図である。
通常、2層の情報記録面を有するDVD9に記録する際、L0層9aの内周側から記録を進め、記録可能な最外周まで記録後、L1層9bへ焦点をジャンプし、L1層9bの最外周側から内周に向かって再び記録を進める。L0層9aに記録を進めている間は非集光面であるL1層9bからの反射光は内周側のL0層9aの記録エリア9cを半分、外周側の未記録エリア9dを半分含んでいる。記録エリア9cの反射率は未記録エリア9dの反射率と異なり、その境界線はタンジェンシャル方向の向きである。
L0層9aへの記録を終了し、L1層9bへジャンプした直後は、図21(a)に示すように非集光面であるL0層9aからの反射光40aは内周側のL0層9aの記録エリア9cからの反射光40bを半分、外周側の未記録エリア9dからの反射光40cを半分含んだ分布である。その境界線40dはタンジェンシャル方向の向きである。次に内周側へ記録を開始すると、図21(b)に示すように非集光面であるL0層9aからの反射光40aの分布は内周側の記録エリア9cからの反射光40bの分が増え、外周側の未記録エリア9dからの反射光40cの分が減少する。その際も境界線40dはタンジェンシャル方向の向きである。さらに内周側に記録が進むと、図21(c)に示すように非集光面であるL0層9aからの反射光40aは記録エリア9cからの反射光40bのみの均一な分布となる。図21(b)の分布を持つ反射光40aがDVD用のホログラム7aに入射すると、図21(b)の破線で示した記録エリア9cと未記録エリア9dの境界線40dが、図21(d)に示すタンジェンシャル方向の破線となる。ここでメイントラッキング領域111、211及びサブトラッキング領域112、212を横切っている間はメイントラッキング領域111、211とサブトラッキング領域112、212の間の分割線がラジアル方向に平行で、ラジアル方向の幅が同一であるので、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射する光量の比はほとんど変化しない。そのため、トラッキングエラー信号TESの非集光面であるL0層9aからの反射光40aによるオフセットの変化は極小であるので、この場合でもトラッキングエラー信号TESは安定している。
なお、例えばメイントラッキング領域111、211とサブトラッキング領域112、212の間の分割線がタンジェンシャル方向に平行な場合、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射する光量の比が図21(d)の破線の位置により大きく変化する。そのためトラッキングエラー信号TESは安定しない。
ただし、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の周辺部にあるトラッキング領域113、213、313、413(本実施の形態1ではラジアル方向のDVD用のホログラム7aの中心から3番目に近いトラッキング領域以遠)で分離されたレーザ光の光束はメイントラッキング光検出面10bにもサブトラッキング光検出面10cにも入射しない。このような区域のトラッキング領域113、213、313、413のメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412を隔てる分割線がタンジェンシャル方向に平行でも上記光量の比は変化しにくく、トラッキングエラー信号TESは不安定にはならない。このようにメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射するL0層9aからの非集光での反射光の比が一定になるようにDVD用のホログラム7aを設計することが望ましい。
また、図18においてラジアル方向のDVD用のホログラム7aの中心に最も近いトラッキング領域113、213、313、413で分離された光束はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cの両方に入射している。しかし、その他のトラッキング領域113、213、313、413で分離された光束はいずれもメイントラッキング光検出面10bにもサブトラッキング光検出面10cにもCD用サブトラッキング光検出面10eにも入射していない。このような場合、スポット41、42の入射位置が2層の情報記録面を有するDVD9のばらつきや光学系のばらつきでラジアル方向に多少ずれてもメイントラッキング光検出面10bの受光量とサブトラッキング光検出面10cの受光量のバランスはほとんど変化しないので安定している。また、前述の非集光面の記録エリア9cからの反射光40bと未記録エリア9dからの反射光40cによるアンバランスが発生した場合もそのアンバランスはラジアル方向の光量分布となって現れる。そのためメイントラッキング光検出面10bの出力とサブトラッキング光検出面10cの受光量のバランスはほとんど変化しないので安定している。また、実施の形態2で後述するように、フィルタを用いた場合もそのアンバランスはラジアル方向の光量分布となって現れる。そのためメイントラッキング光検出面10bの受光量とサブトラッキング光検出面10cの受光量のバランスはほとんど変化しないので安定している。
なお、DVD用のホログラム7aの凹凸のピッチは小さい方がDVD用フォーカス光検出面10dとメイントラキング光検出面10bとの距離を離すことができるため望ましい。しかしDVD用のホログラム7aのピッチは8μm以上となるようにした。前述のようにDVD用のホログラム7aはCD用の波長λ2のレーザ光はそのまま透過させるようにしている。しかし、ピッチが9μm以下になると波長λ2のレーザ光の透過率が低下し始め、8μm以下になるとCDの光量低下が大きくなり、使用しにくくなるためである。
以上のように本実施の形態1の光ピックアップ装置は、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光を受光するメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面からの出力の比率が一定になるようにできる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2について図面を参照しながら説明する。図22は本実施の形態2の光ピックアップ装置の光学系の構成図である。図23(a)は本実施の形態2のビームスプリッタの構成でフィルタの形状の一例を示した図、図23(b)はフィルタ形状の別の例を示した図、図23(c)はフィルタの構成とレーザ光の経路を示した図である。ビームスプリッタ5以外の構成部品は実施の形態1と同じであるのでその説明を援用する。
ビームスプリッタ5は光透過部材21の面21aにフィルタ22を設けた構成である。面21aは光源1と対向しない面である。ビームスプリッタ5は実施の形態1と同様にキャリッジ12に直接または取り付け部材を介して取り付けられる。
光透過部材21は光学ガラスまたは光学プラスチックで作製されている。光透過部材21は面21aと、光源1と対向する面21bを有する。面21aと面21bとは例えば1.1°程度の角度をつけて平行でないようにし、光透過部材21を通過した光が干渉を起こさないようにしている。さらに光軸とDVD用の波長λ1のレーザ光を出射する発光点とCD用の波長λ2のレーザ光を出射する発光点とからなる平面に垂直な面21aと面21bとが平行でなく非平行とすることで、光学系の光軸上にない両発光点から出射されたレーザ光の非点収差を小さくすることができる。一方、こういった光の干渉、非点収差が問題にならないのであれば面21aと面21bとは平行にした方が製造コストの低減が実現できる。
フィルタ22は光透過部材21の面21aに形成される。フィルタ22は光透過部材21の面21aに形成された波長選択偏光分離膜22aと、所定の光強度分布に対応させて波長選択偏光分離膜22aの表面に形成された全反射膜22bを備えている。波長選択偏光分離膜22aは誘電体多層膜で作製される。波長選択偏光分離膜22aは高屈折率膜と低屈折率膜が交互に28〜48層積層されている。高屈折率膜としてはTiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等がある。また、低屈折率膜としてはSiO2、MgF2等がある。各膜の厚さは100〜200nmである。波長選択偏光分離膜22aの反射率はこの高屈折率膜と低屈折率膜の積層反射率に対応する。本実施の形態2において波長選択偏光分離膜22aの膜特性の設計は例えば波長λ1のP偏光反射率を50%程度、S偏光反射率をほぼ100%、波長λ2のP偏光反射率を90%程度、波長λ1及び波長λ2のS偏光反射率をほぼ100%となるようにした。しかしこの数字は光学系を構成する部品がもつ定数、光学系の設計定数で変わるものであり、最適の膜特性はその光学系ごとで異なる。
また、全反射膜22bは誘電体多層膜または金属膜で作製される。誘電体多層膜で作製される場合、全反射膜22bは高屈折率膜と低屈折率膜が交互に20層以下で積層されている。高屈折率膜としてはTiO2、Nb2O5、Ta2O5、Al2O3等がある。また、低屈折率膜としてはSiO2、MgF2等がある。各膜の厚さは100〜200nmである。金属膜で作製される場合、全反射膜22bは金属膜の単層で構成される。金属膜としてはAu、Ag、Al、Pt等がある。また金属膜を保護する目的で金属膜の表面にSiO2等の誘電体等で構成される保護膜を設けても良い。また、この保護膜は必要な光学的な特性が得られれば、波長選択偏光分離膜22aの最後の1層として波長選択偏光分離膜22aの領域と全反射膜22bの全領域に成膜しても良い。また、波長選択偏光分離膜22aと全反射膜22bとを一気に全体に形成し、波長選択偏光分離膜22aの部分のみ全反射膜22bに相当する分を除去して波長選択偏光分離膜22aとしても良い。その場合、全反射膜22bが波長選択偏光分離膜22aと同じ組成、膜厚の誘電体の層で構成され、必要な光学的な特性が得られなければならない。
光源1から出射された光の中心部に相当する個所には所定の大きさ、形状に全反射膜22bが形成されない領域22cを設ける。図23(a)、図23(b)に示すように本実施の形態2において領域22cは光学系の光軸付近の領域とした。領域22cで露出している膜は波長選択偏光分離膜22aとなる。図23(a)に示すように波長選択偏光分離膜22aの波長λ1のP偏光反射率が50%程度の場合、DVD9のラジアル方向に相当する方向では光束が分布する領域の65%程度以内の領域を領域22cとし、領域22cと全反射膜22bの境界線はタンジェンシャル方向に相当する方向の直線状とした。すなわち領域22cを短冊状の形状とした。また、波長選択偏光分離膜22aの波長λ1のP偏光反射率が75%程度の場合、DVD9のラジアル方向に相当する方向では光束が分布する領域の45%程度以内の領域を領域22cとすると良い。また、図23(b)に示すように短冊状ではなく、DVD9のタンジェンシャル方向に相当する方向において光束が分布する領域の90〜95%程度以内とする楕円形の領域を領域22cとしても良い。
なお、本実施の形態2において光透過部材21の面21aや面21bの形状を略長方形としたが、四隅をC面取りやR面取りしても良い。また、光束が入射し出射するのに必要最小限の領域があれば良いので、その形状に合わせた楕円形状や角丸四角形のような形状としても構わない。
次にフィルタ22の作用について説明する。図24(a)は本実施の形態2のフィルタを通過したレーザ光の対物レンズの開口面における光強度分布を示す図、図24(b)は光ディスクの記録面における光強度分布を示す図である。光源1から出射されビームスプリッタ5に入射したレーザ光は光透過部材21を透過し、フィルタ22に入射する。この場合レーザ光はP偏光である。レーザ光が波長λ1の場合上記の通り、波長選択偏光分離膜22aである領域22cに入射したレーザ光は50%程度が反射され、全反射膜22bに入射したレーザ光はほぼ100%が反射されて、再び光透過部材21を透過してDVD9に向けて出射される。レーザ光は対物レンズ8で集束光に変換されてDVD9の情報記録面で集光される。その際、レーザ光は対物レンズ8において図24(a)の実線に示すような中心部が低下した光強度分布となる。このような光強度分布のレーザ光がDVD9の情報記録面で集光されると、図24(b)に示すようにフィルタ22がない場合に比べて光強度分布が小さくなる。すなわち、DVD9の情報記録面のレーザ光の集光スポットを小さく絞ることができる。この現象を超解像現象という。対物レンズ8の開口面での光強度分布を光学系に合わせて最適化することにより集光スポットは小さく絞れ、サイドローブと呼ばれる周辺部の盛り上がりも低く抑えることができる。そのため、DVD9の集光スポットの収差を低く抑えることができる。
一方、レーザ光が波長λ2の場合上記の通り、波長選択偏光分離膜22aである領域22cに入射したレーザ光は90%程度が反射され、全反射膜22bに入射したレーザ光はほぼ100%が反射されて、再び光透過部材21を透過してCD9eに向けて出射される。すなわち、波長λ2のレーザ光は波長選択偏光分離膜22aによる光強度の低下はほとんど見られない。そしてレーザ光は対物レンズ8で集束光に変換されてCD9eの情報記録面で集光される。そのため、対物レンズ8の開口面における光強度分布は図24(a)の破線に示すフィルタ22なしの分布に近く、CD9eの情報記録面における集光スポットの光強度分布も図24(b)の破線で示すフィルタ22なしの分布に近い。そのためCD9eの集光スポットは利用効率が良い。
DVD9の情報記録面及びCD9eの情報記録面で反射されたレーザ光はS偏光であり、上記の通りほぼ100%が反射されて受光センサ10に向かう。すなわち、光強度分布に変化は起きない。また領域22cにおける波長選択偏光分離膜22aで透過されたレーザ光は前光モニタ11に入射し、光量制御に用いられ、効率良く光を使うことができる。
本実施の形態2の場合、上記の通りフィルタ22はキャリッジ12に固定して取り付けられる。DVD用のホログラム7aは対物レンズ8とともにアクチュエータ14のレンズホルダ15にキャリッジ12に対して可動状態で取り付けられる。そのため、DVD9に対して情報を記録したり、再生したりする際に、フィルタ22の領域22cを通過してきたレーザ光の光強度分布の中心とDVD用のホログラム7aの中心とが必ずしも一致しない。この中心ずれはDVD用のホログラム7aに入射する光強度分布の中心がずれていることに相当する。また、この光強度分布は方向を限らずに変化する。本実施の形態2のDVD用のホログラム7aは実施の形態1と同じものを使用する。
中心ずれがタンジェンシャル方向に発生した場合、図8に示すようにDVD用のホログラム7aのフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422はタンジェンシャル方向の分割腺で区切られているため、フォーカスエラー信号FESはタンジェンシャル方向の中心ずれの影響を受けにくい。さらに、メイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412とはラジアル方向の分割線で区切られてタンジェンシャル方向に交互に並ぶように配置されているので、トラッキングエラー信号TESもやはりタンジェンシャル方向の中心ずれの影響は受けにくい。
中心ずれがラジアル方向に発生した場合、図8に示すようにフォーカス領域(121、122)、(221、222)、(321、322)、(421、422)の各組がトラッキング領域113、213、313、413と交互にラジアル方向に並ぶように配置されているので、フォーカスエラー信号FESはラジアル方向の中心ずれの影響を受けにくい。さらにメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412がラジアル方向の分割線で区切られ、ラジアル方向において同一幅であるのでメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射する光量の比はほとんど変化しない。そのためトラッキングエラー信号TESもタンジェンシャル方向の中心ずれの影響は受けにくい。
なお、DVD用のホログラム7aは第2分割線7fを対称軸に対称な形状であることが望ましい。また、フィルタ22の領域22cと全反射膜22bとの境界部がDVD用のホログラム7aのフォーカス領域123、223、323、423に相当するように、その周辺がトラッキング領域113、213、313、413に相当するように設計するとトラッキング制御にはフィルタ22の反射率段差の影響が出にくい。
このように本実施の形態2の光ピックアップ装置20はキャリッジ12に固定されたフィルタ22を備えていて、フィルタ22の領域22cを透過してきたレーザ光の光強度分布の中心とDVD用のホログラム7aの中心とがずれても安定したトラッキングエラー信号TES、フォーカスエラー信号FESを生成することができる。しかもフィルタ22を備えているためにDVDの集光スポットの収差を低く抑えることができるとともに、CDの集光スポットは利用効率が良い。
(実施の形態3)
本実施の形態3について図面を参照しながら説明する。図25は本実施の形態3の光ピックアップ装置の光学系の構成図である。図26は本実施の形態3のDVD用受光センサの光検出面の配置図である。本実施の形態3の光ピックアップ装置20はDVD用光源1aとCD用光源1bとを離して配置し、DVD用受光センサ10gとCD用受光センサ10hとを別々に配置したものである。
DVD用光源1aの半導体レーザ素子はDVD用受光センサ10gの光検出面10aを形成する基板上に配置され、1つのパッケージとして形成される。DVD用光源1aはDVD9に対して情報を記録または再生の少なくとも一方を行うのに必要なレーザ光をDVD9に向けて出射する。同様にCD用光源1bの半導体レーザ素子はCD用受光センサ10hの光検出面10aを形成する基板上に配置され、1つのパッケージとして形成される。CD用光源1aはCD9eに対して情報を記録または再生の少なくとも一方を行うのに必要なレーザ光をCD9eに向けて出射する。
本実施の形態3の回折格子2bはCD用光源1bを収納したパッケージのレーザ光が出射される窓部のCD用光源1b側の面に設けた。DVD用光源1aとCD用光源1bとは離れているため回折格子2bにはCD用のレーザ光のみ入射させることができる。そのため回折格子2bはCDのトラッキング制御専用に中央の光量の大きい0次光であるメインビームと両側の光量の小さい±1次光であるサイドビームの3本の光束にレーザ光を分離する。窓部は透明なプラスチックで形成されており、金型に所定の回折格子2bの形状と逆の形状の凹凸を形成しておき、そこに窓部の材料を射出、硬化して回折格子2bを形成する。CD用光源1bを収納したパッケージの一部として回折格子2bを構成することで光ピックアップ装置20の小型化や軽量化が図れる。
なお、回折素子2は透明基板2aのCD用光源1b側の面に回折格子2bを形成し、反対側の面に開口制限膜2fを設けた構成としても良い。透明基板2a及び開口制限膜2fは実施の形態1と同じであり、その説明を援用する。回折格子2bは透明基板2aのCD用光源1b側の面に所定の形状の凹凸を形成する。例えば、金型に所定の形状と逆の形状の凹凸を形成しておき、そこに透明基板2aの材料を射出、硬化して透明基板2aを形成しても良い。また、透明基板2aの表面を所定の形状の凹凸にエッチングし、その後、所定の形状に切断しても良い。また、実施の形態1で説明した回折素子2をそのまま使用しても構わない。
CD用のホログラム3jはCD用光源1bを収納したパッケージのレーザ光が出射させる窓部のCD用光源1bと反対側の面に設けた。窓部を作る金型のCD用のホログラム3jを形成する面にCD用のホログラム3jと逆の凹凸を形成しておくことで、窓部を作る際に回折格子2bと同時に作製することができる。すなわち本実施の形態3ではCD用光源1b、CD用受光センサ10h、回折格子2b、CD用のホログラム3jを1つのパッケージに収めた構成である。そのため、光ピックアップ装置20の小型化や軽量化が図れる。本実施の形態3におけるCD用のホログラム3jは実施の形態1のCD用のホログラム3jとは異なり、透過型のホログラムとなるが、実施の形態1のCD用のホログラム3jと同様にフォーカス制御用に用いられる光束とトラッキング制御用に用いられる光束を分離する。
なお、CD用のホログラム3jはパッケージの窓部に形成する必要はない。単独の素子として光学ガラスや光学プラスチックの板上にCD用のホログラム3jを形成しても良い。また、回折素子2の開口制限膜2fを形成する面にCD用のホログラム3jを形成した上で開口制限膜2fを形成しても良い。CD用のホログラム3jは図6に示す分割パターンとした。
リレーレンズ23は光学ガラスや光学プラスチックで形成される。リレーレンズ23はCD用光源1bから出射されたレーザ光の発散角を変換し、コリメートレンズ4で略平行光になるように調整するためのレンズである。リレーレンズ23を配置することで、CD用光源1bから出射されたレーザ光を光強度分布の裾の方まで取り込むことができるため、レーザ光を効率良く利用することができる。また、開口制限する役割を果たすことができるため、回折素子2を用いた場合の開口制限膜2fを省略することができる。
前光ホログラム24は光学ガラスや光学プラスチックの表面にホログラムを形成し、DVD用光源1aから出射されたレーザ光の一部をDVD用受光センサ10gに入射させ、DVDの光量制御用の信号を得るためのものである。実際にホログラムが形成され光量制御用に用いられるのは記録や再生には用いられない光束の端の部分である。実際の記録や再生に用いられる光束の部分にはホログラムは形成されない。
ビームスプリッタ5は光学ガラスまたは光学プラスチックで作製された透明基板5aのDVD用光源1aに対向する側の表面に波長選択偏光分離膜5bを形成した構成である。波長選択偏光分離膜5bは波長λ1のレーザ光をP偏光、S偏光に関わらず全反射させ、波長λ2のP偏光のレーザ光の大半を透過させて一部を反射させ、S偏光を全透過させる。波長選択偏光分離膜5bは誘電体多層膜で作製される。
コリメートレンズ4、ホログラム素子7、対物レンズ8、前光モニタ11は実施の形態1と同じであり、その説明を援用する。また、立ち上げミラー6aは実施の形態1の立ち上げプリズム6を置き換えたものである。ここでDVD用のホログラム7aの分割パターンは図8に示す通りとした。
DVD用受光センサ10gの光検出面10aは図9に対し、CD用サブトラッキング光検出面10eとCD用フォーカス光検出面10fを省いた。さらにメイントラッキング光検出面10bのラジアル方向の長さをサブトラッキング光検出面10cのラジアル方向の長さと同じにした。その際、メイントラッキング光検出面10bのラジアル方向の外側の縁の方を切り詰めた。したがって、メイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとはラジアル方向において位置がずれた配置となっている。なお、DVD用光源1aと前光ホログラム24で分離された光束を受光する光検出面の配置は省略した。
図26において、集光面の情報記録面からの反射光はスポット27、27aとしてメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cの中心に入射する。したがって、スポット27とスポット27aのラジアル方向の入射位置はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとのラジアル方向の位置ずれ分だけずれている。スポット41は非集光面であるL0層9a、L1層9bで反射され、メイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束によるものである。スポット42は非集光面であるL0層9a、L1層9bで反射され、サブトラッキング領域112、212、312、412で分離された光束によるものである。メイントラッキング光検出面10bに入射するスポットはDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411で分離された光束によるスポット44のみである。また、サブトラッキング光検出面10cに入射するスポットはDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412で分離されたスポット45のみである。
これは、以下の理由による。スポット44のラジアル方向の幅をメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとのラジアル方向の位置の差以下とした。その結果、非集光面のL1層9bで反射した場合に、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット44として、メイントラッキング光検出面10bに取り込むことができる。同時に、スポット44と同じ列のスポット41がサブトラッキング光検出面10cに入射しないようにできる。また、スポット45のラジアル方向の幅はスポット44のラジアル方向の幅とほぼ同じであり、前述したようにスポット27とスポット27aのラジアル方向の入射位置の差はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cとの長さの差とほぼ等しい。そのため、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット45として、サブトラッキング光検出面10cに取り込むことができる。同時に、スポット45と同じ列のスポット42がメイントラッキング光検出面10bに入射しないようにできる。
そして、非集光面のL0層9aで反射した場合についても、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域111、211、311、411を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット44として、メイントラッキング光検出面10bに取り込むことができる。同時に、スポット44と同じ列のスポット41がサブトラッキング光検出面10cに入射しないようにできる。また、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域112、212、312、412を通過したラジアル方向の幅一杯の光束をスポット45として、サブトラッキング光検出面10cに取り込むことができる。同時に、スポット45と同じ列のスポット42がメイントラッキング光検出面10bに入射しないようにできる。
このようにDVD専用の光検出面10aの配置とすることにより、CD用サブトラッキング光検出面10eに入射するはずの光束を考慮する必要がなくなるだけでなく、メイントラッキング光検出面10bに入射していた変動要因を含みやすい光束がメイントラッキング光検出面10bへ入射することを防ぐことができる。そのため2層の情報記録面を有するDVDを用いた場合に、トラッキングエラー信号TESに発生するオフセットをさらに小さくすることができ、より安定したフォーカスエラー信号TESを得ることができる。
なお、第2受光センサをCD用受光センサ10hとし、CD用受光センサ10hの光検出面10aは図9におけるDVD用フォーカス光検出面10dを省いた配置にすれば良い。そして、メイントラッキング光検出面10bを第2メイントラッキング光検出面に置き換え、サブトラッキング光検出面10cを第2サブトラッキング光検出面に置き換え、CD用サブトラッキング光検出面10eを第3サブトラッキング光検出面に置き換える。また、CD用フォーカス光検出面10fを第2フォーカス光検出面に置き換える。第2メイントラッキング光検出面はCD用のホログラム3jの第2トラッキング領域31a、32a、33a、34aを通過したCD9eの情報記録面からの反射光のうち、回折格子2dで分離された0次光であるメインビームを受光する。第2サブトラッキング光検出面はCD用のホログラム3jの第2トラッキング領域31a、32a、33a、34aを通過したCD9eの情報記録面からの反射光のうち、回折格子2dで分離された±1次光であるサイドビームの一方を受光する。第3サブトラッキング光検出面はサイドビームの他方を受光する。第2フォーカス光検出面はCD用のホログラム3jの第2フォーカス領域31b、31c、32b、32c、33b、33c、34b、34cを通過したCD9eの情報記録面からの反射光を受光する。第2メイントラッキング光検出面の大きさは第2サブトラッキング光検出面や第3サブトラッキング光検出面に合わせても良い。また、第3サブトラッキング光検出面を全ての第2メイントラッキング光検出面の側方に設けても良い。
なお、本実施の形態3ではDVD用光源1aとCD用光源1bとを離して配置した光ピックアップ装置とした。しかし光源1として実施の形態1で説明した光源1を用い、回折素子2を用いずにCDのトラッキング制御を1ビーム法で行う場合も同じDVD用のホログラム7aとDVD用受光センサ10gを用いることができる。この場合、光学系全体は図1の回折素子2がない構成となる。DVD用のホログラム7aは実施の形態3のDVD用のホログラム7aと同じで良いが、CD用のホログラム3jは別途専用に設計する必要がある。また、DVD用受光センサ10gの光検出面10aの配置は図26に説明した通りでも構わないが、CD用フォーカス光検出面10fを配置しても良い。
(実施の形態4)
本実施の形態4について図面を参照しながら説明する。図27は本実施の形態4のDVD用のホログラムの分割パターン図である。図28は本実施の形態4のDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束がメイントラッキング光検出面に入射する様子を示した図、図29は本実施の形態4のDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束がサブトラッキング光検出面に入射する様子を示した図である。図30は本実施の形態4の非集光面であるL1層で反射されDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図、図31は本実施の形態4の非集光面であるL1層で反射されDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図、図32は本実施の形態4の非集光面であるL0層で反射されDVD用のホログラムのメイントラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図、図33は本実施の形態4の非集光面であるL0層で反射されDVD用のホログラムのサブトラッキング領域で分離された光束が受光センサに入射する様子を示した図である。図34は本実施の形態4の非集光面の情報記録面で反射された光束の分布図である。本実施の形態4はDVD用のホログラム7aの分割パターンの変形例である。DVD用のホログラム7aの分割パターンを除いた構成は実施の形態1と同じであるのでその説明を援用する。
図27に示すように、本実施の形態4においてDVD用のホログラム7aはラジアル方向の第1分割線7e及びタンジェンシャル方向の第2分割線7fで区切られた略等面積の4つの分割領域100、200、300、400を備える。各分割領域100、200、300、400はタンジェンシャル方向の分割線で区切られて交互に並ぶトラッキング領域113、213、313、413とフォーカス領域123、223、323、423を備える。
DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に2番目に近いフォーカス領域123、223、323、423はタンジェンシャル方向の分割線でフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422にそれぞれ2つに分割される。その他のフォーカス領域123、223、323、423はフォーカス領域121、122、221、222、321、322、421、422のいずれか1つで構成される。フォーカス領域121、221、321、421で分離された光束は合焦してから受光センサ10に入射する。また、フォーカス領域122、222、322、422で分離された光束は合焦する前に受光センサに10に入射する。なお、フォーカス領域121、221、321、421とフォーカス領域122、222、322、422は光束の合焦の状態が逆でも構わない。
DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いトラッキング領域113、213、313、413はラジアル方向の分割線で区切られて交互に並ぶメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412を備える。このメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412とはラジアル方向において同一幅である。DVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心から最も遠い区域のトラッキング領域113、213、313、413はメイントラッキング領域111、211、311、411とした。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に2番目に近いトラッキング領域はラジアル方向の分割線とタンジェンシャル方向の分割線で区切られて並ぶメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412を備える。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の周辺部はトラッキング情報が多く含まれており、その区域をメイントラッキング光検出面10bに入射させることにより、トラッキング制御用信号の出力を大きくする。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心から最も遠いトラッキング領域113、213、313、413はメイントラッキング領域111、211、311、411とした。
図28に示すように、DVD9で集光し反射してDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心から2番目に近いメイントラッキング領域211と最も遠いメイントラッキング領域211で分離された光束はαのメイントラッキング光検出面10bのラジアル方向のほぼ中心近くの「●」の位置にスポット27bとして略合焦状態で入射するようにした。またDVD9で集光し反射してDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域111で分離された光束はαのメイントラッキング光検出面10b上のさらにラジアル方向の内側の「●」の位置にスポット27として略合焦状態で入射するようにした。いずれにしても分割領域200のメイントラッキング領域211で分離された光束は全てメイントラッキング光検出面10bに入射する。分割領域200とαのメイントラッキング光検出面10bとはラジアル方向及びタンジェンシャル方向で交差した配置になっている。
また、図29に示すように、サブトラッキング領域212で分離された光束はGのサブトラッキング光検出面10cのほぼ中心の「●」の位置にスポット27aとして略合焦状態で入射するようにした。分割領域200とGのサブトラッキング光検出面10cとはラジアル方向及びタンジェンシャル方向で交差した配置になっている。スポット27とスポット27aのラジアル方向の入射位置の差はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cのラジアル方向の長さの差にほぼ等しい。
非集光面の情報記録面で反射された場合は以下のようになる。図30において非集光面であるL1層で反射したレーザ光は、分割領域200のメイントラッキング領域211で分離され、1点には集光せずに分散して非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はメイントラッキング光検出面10bとDVD用フォーカス光検出面10dとの間であり、一部がメイントラッキング光検出面10bに入射する。各スポット41は各メイントラッキング領域211に対応する。同様に図31において非集光面であるL1層で反射したレーザ光は、分割領域200のサブトラッキング領域212で分離され、1点には集光せずに分散して非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はサブトラッキング光検出面10cとDVD用フォーカス光検出面10dとの間であり、一部がサブトラッキング光検出面10cに入射する。各スポット42は各サブトラッキング領域212に対応する。
一方、図32において非集光面であるL0層で反射したレーザ光は、分割領域200のメイントラッキング領域211で分離され、1点には集光せずに分散して非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はDVD用フォーカス光検出面10dと反対側であり、一部がメイントラッキング光検出面10bに入射する。各スポット41は各メイントラッキング領域211に対応する。同様に図33において非集光面であるL0層で反射したレーザ光は、分割領域200のサブトラッキング領域212で分離され、1点には集光せずに分散して非合焦状態で受光センサ10に入射する。入射する位置はDVD用フォーカス光検出面10dと反対側であり、一部がサブトラッキング光検出面10cに入射する。各スポット42は各サブトラッキング領域212に対応する。
非集光面の情報記録面で反射されDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域211で分離された光束がメイントラッキング光検出面10bに入射するようにした。また、非集光面の情報記録面で反射されDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く且つDVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に最も近いサブトラッキング領域212で分離された光束はサブトラッキング光検出面10cに入射するようにした。また、CD用サブトラッキング光検出面10eのタンジェンシャル方向の中心部には、非集光面のL0層9aで反射され、DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近く、DVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の中心に2番目に近いメイントラッキング領域211で分離された光束が入射するようにした。DVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に最も近いメイントラッキング領域211からのスポット41のラジアル方向の幅は、同じ列のサブトラッキング領域212からのスポット42のラジアル方向の幅とほぼ等しい。その幅はメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cのラジアル方向の長さの差以下とした。メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eに入射する非集光面の情報記録面で反射されたレーザ光の光束はいずれも、そのメイントラッキング領域211、サブトラッキング領域212で分離された光束のラジアル方向の幅全体がほぼ光検出面10aに入射するようにした。
一方、非集光面の情報記録面で反射されDVD用のホログラム7aのラジアル方向の中心に2番目に近いメイントラッキング領域211、サブトラッキング領域212で分離された光束はいずれもどの光検出面10aにも入射しない。したがってトラッキング領域をタンジェンシャル方向の分割線でメイントラッキング領域とサブトラッキング領域に隔てた場合に生じる2層の情報記録面を有するDVD9のばらつきや光学系のばらつきに起因するメイントラッキング光検出面10bとサブトラッキング光検出面10cに入射する光量バランスのばらつきによる不具合は生じない。よって、実施の形態1で説明したようなL0層9aへの記録直後にL1層9bへジャンプして引き続きL1層9bでの記録を行う場合や実施の形態2で説明したフィルタ22を使用した場合等での不具合は生じない。
図34に示すように、全てのメイントラッキング領域111、211、311、411、サブトラッキング領域112、212、312、412、メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eで成り立つ。
このようにトラッキング領域113、213、313、413をメイントラッキング領域111、211、311、411とサブトラッキング領域112、212、312、412に分割する際、DVD用のホログラム7aのタンジェンシャル方向の分割線で隔てる必要がある場合、非集光面の情報記録面で反射されその領域で分離された光束が光検出面10aに入射しないようにすることが肝要である。そのようなトラッキング領域113、213、313、413をDVD用のホログラム7aのラジアル方向の周辺部に配置することで実現できる。
なお、本実施の形態4で示したスポット27とスポット27bのようにメイントラッキング光検出面10bに集光するスポットを複数にすることにより、必要最小限の光束のみ光検出面10aに入射させることができる。また、本実施の形態4においてもスポット41、42が所定のメイントラッキング光検出面10b及びサブトラッキング光検出面10c以外のメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、DVD用フォーカス光検出面10dには入射しないように光検出面10aが配置されている。また、スポット43がメイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10c、CD用サブトラッキング光検出面10eには入射しないように光検出面10aが配置されている。また、図示していないが、DVD用のホログラム7aで回折されずにそのまま通過したレーザ光がDVD用フォーカス光検出面10d、メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cのいずれにも入射しないように光学系が構成されている。また、DVD用のホログラム7aで−1次光として回折されたレーザ光もDVD用フォーカス光検出面10d、メイントラッキング光検出面10b、サブトラッキング光検出面10cのいずれにも入射しないように光検出面10aが配置されている。
このように実施の形態4の光ピックアップ装置は、複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光を受光するメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面からの出力の比率が一定になるようにできる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態5について図面を参照しながら説明する。図35は本実施の形態5の光ピックアップモジュールの構成図、図36は本実施の形態5の光ディスク装置の構成図である。実施の形態5は実施の形態1から実施の形態4で説明した光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置である。
光ディスク装置60のDVD9、CD9e及び光ピックアップ装置20を駆動する駆動機構を光ピックアップモジュール50という。ベース51は光ピックアップモジュール50の骨組みを成すもので、このベース51に直接的、間接的に各構成部品を固定する。
DVD9やCD9eを載置するターンテーブルを備えたスピンドルモータ52はベース51に固定される。スピンドルモータ52はDVD9やCD9eを回転させる回転駆動力を生成する。
フィードモータ53はベース51に固定される。フィードモータ53は光ピックアップ装置20がDVD9やCD9eの内周と外周の間を移動するために必要な回転駆動力を生成する。フィードモータ53としてステッピングモータ、DCモータなどが使用される。スクリューシャフト54はらせん状に溝が掘られており、直接または数段のギアを介してフィードモータ53に接続される。本実施の形態5では直接フィードモータ53と接続される。ガイドシャフト55、56はそれぞれ両端で支持部材を介してベース51に固定される。ガイドシャフト55、56は光ピックアップ装置20を移動自在に支持する。光ピックアップ装置20はスクリューシャフト54の溝と噛み合うガイド歯を有するラックを備える。ラックがスクリューシャフト54に伝達されたフィードモータ53の回転駆動力を直線駆動力に変換するために光ピックアップ装置20はDVD9やCD9eの内周と外周の間を移動することができる。
光ピックアップ装置20は実施の形態1から実施の形態4で説明したものである。光ピックアップ装置20はDVD9やCD9eに対し情報の記録または再生の少なくとも一方を行い、そのためにレーザ光をDVD9やCD9eに向けて出射する。光ピックアップ装置20から出射されるレーザ光がDVD9やCD9eに対し直角に入射するように、支持部材を構成する調整機構でガイドシャフト55、56の傾きを調整する。
上部筐体61aと下部筐体61bを組み合わせてネジなどを用いて互いに固定して筐体61とする。トレイ62は筐体61に出没自在に設けられる。トレイ62はカバー63を取り付けた光ピックアップモジュール50を下面側から配置する。カバー63は開口を有し、光ピックアップ装置20の対物レンズ8を含む一部とスピンドルモータ52のターンテーブルを露出させる。本実施の形態5の場合、フィードモータ53も露出させる。ベゼル64をトレイ62の前端面に設け、トレイ62が筐体61内に収納された時に、トレイ62の出没口を塞ぐようにする。
ベゼル64にはイジェクトスイッチ65が設けられ、イジェクトスイッチ65を押すことで、筐体61とトレイ62との係合が解除され、トレイ62は筐体61に対し出没が可能な状態となる。レール66はそれぞれトレイ62の両側部及び筐体61の双方に摺動自在に取り付けられる。
筐体61の内部やトレイ62の内部には図示していない回路基板があり、信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。外部コネクタ67はコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、外部コネクタ67を介して光ディスク装置60内に電力を供給したり、外部からの電気信号を光ディスク装置60内に導いたり、あるいは光ディスク装置60で生成された電気信号を外部の電子機器などに送出したりする。
このように本実施の形態5の光ディスク装置は実施の形態1から実施の形態4で説明した光ピックアップ装置を備えている。実施の形態1から実施の形態4の光ピックアップ装置は複数層の情報記録面を有する光ディスクの所定の情報記録面にレーザ光を集光させて情報の記録または再生を行う場合において所定の情報記録面以外からの反射光を受光するメイントラッキング光検出面とサブトラッキング光検出面からの出力の比率が一定になるようにできる。そのためトラッキング制御に用いられる信号としてほぼキャンセルしてオフセットを極小に保つことができる。そのため複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。したがって、本実施の形態5の光ディスク装置は複数層の情報記録面を有する光ディスクに対して安定した記録及び再生を実現することができる。