本発明の請求項1の発明は、光ディスクに向けて波長λ1のレーザ光及び波長λ1よりも長い波長λ2のレーザ光を出射するレーザ光源と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光する受光器と、レーザ光源と受光素子との間の光路上に位置し、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を透過する第1ブロックと第1ブロックに対向する第2ブロックとから構成されたプリズムと、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光器に向かわせるビームスプリッタと、ビームスプリッタと受光器との間に設けられ、レーザ光の光軸を含んで直交する2つの断面の一方における焦点位置を受光器の前側とし、他方における焦点位置を受光器の後側として、フォーカス制御に用いられる波長λ1及び波長λ2のレーザ光を生成する非点収差生成素子と、を備え、非点収差生成素子は、フレネルレンズ状の光学素子であり、その段差深さは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍であり、プリズムは第1ブロックと第2ブロックとを接着する接着層を有し、非点収差生成素子は接着層の中に位置し、非点収差生成素子は、レーザ光を反射させる反射領域と反射領域の周辺に位置する周辺領域とから構成されると共に第1ブロックに形成され、反射領域の第2ブロックに向かう面の高さは周辺領域の第2ブロックに向かう面の高さよりも低い光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器上におけるスポットは良好な形状とすることができる。また、第1ブロックと第2ブロックとを接着する際に、第1ブロックに形成された非点収差生成素子が第2ブロックに接触する場合であっても、非点収差生成素子の反射領域を第2ブロックに接触させないので、非点収差生成素子の反射領域を構成する反射面形状がつぶれることなく、そのまま非点収差生成素子の反射面形状にできる。
請求項2の発明は、光ディスクに向けて波長λ1のレーザ光及び波長λ1よりも長い波長λ2のレーザ光を出射するレーザ光源と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光する受光器と、レーザ光源と受光素子との間の光路上に位置し、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を透過する第1ブロックと第1ブロックに対向する第2ブロックとから構成されたプリズムと、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光器に向かわせるビームスプリッタと、ビームスプリッタと受光器との間に設けられ、レーザ光の光軸を含んで直交する2つの断面の一方における焦点位置を受光器の前側とし、他方における焦点位置を受光器の後側として、フォーカス制御に用いられる波長λ1及び波長λ2のレーザ光を生成する非点収差生成素子と、を備え、非点収差生成素子は、フレネルレンズ状の光学素子であり、その段差深さは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍であり、プリズムは第1ブロックと第2ブロックとを接着する接着層を有し、非点収差生成素子は接着層の中に位置し、非点収差生成素子は、レーザ光を反射させる反射領域と反射領域の周辺に位置する周辺領域とから構成されると共に第2ブロックに形成され、反射領域の第1ブロックに向かう面の高さは周辺領域の第1ブロックに向かう面の高さよりも低いことを特徴とする光ピックアップ装置である。
第1ブロックと第2ブロックとを接着する際に、第2ブロックに形成された非点収差生成素子が第1ブロックに接触する場合であっても、非点収差生成素子の反射領域を第1ブロックに接触させないので、非点収差生成素子の反射領域を構成する反射面形状がつぶれることなく、そのまま非点収差生成素子の反射面形状にできる。
プリズムの内部に非点収差生成素子があるために、ほこり等が非点収差生成素子の表面に付着することがなく、ほこり等に強い。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、複数の斜面には光ディスクからの反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光がほぼ45°の入射角度で入射する光ピックアップ装置である。
光路長が√2倍になるため、段差深さは1/√2倍にすることができ、非点収差生成素子を精度良く、安価に製造することができる。
請求項6の発明は、請求項4の発明において、非点収差生成素子は、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光をその輪帯で反射させる反射鏡である光ピックアップ装置である。
レンズであれば、非点収差生成素子の入射側と出射側とで屈折率に差を設け、その屈折率の差と輪帯への入射角度で透過光の出射角度が決まる。非点収差生成素子をプリズムの内部に設けるに当たり、非点収差生成素子の入射側と出射側とで屈折率に大きな差を設けるのは困難である。しかし、反射鏡であれば、輪帯へのレーザ光の入射角度で反射光の光路が決定するため、設計しやすい。
請求項7の発明は、ビームスプリッタで受光器に向かわせられた波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、非点収差生成素子で反射され、さらにビームスプリッタが形成された斜面と同じ斜面で反射されて受光器に向かう光ピックアップ装置である。
プリズムの中で光路長を長く確保することができるため、プリズムに受光器を近づけることができる。
請求項8の発明は、請求項6の発明において、非点収差生成素子は、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を通過させる媒質の表面に形成された光ピックアップ装置である。
接着剤等を介さずレーザ光を反射させることができるので、非点収差生成素子で反射されたレーザ光の品質が良い。
請求項9の発明は、請求項4の発明において、非点収差生成素子は、フレネルレンズ状の光学素子の輪帯と段差の配列が、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光が入射する方向から見て、十字形状である光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子を通過したレーザ光は、光軸を含んで直交する2つの断面のうち、一方の断面において受光器の手前で焦点を結び、他方の断面において受光器の奥で焦点を結ぶようにすることができる。
非点収差生成素子は、フレネルレンズ状で薄くすることが可能であり、プリズムと受光器との距離を小さくすることができる。
請求項11の発明は、請求項10の発明において、非点収差生成素子は、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光がプリズムから出射される面に形成された光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子が形成されたプリズムの大きさを小さくすることができる。
請求項12の発明は、請求項10の発明において、非点収差生成素子は、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光をその輪帯で屈折して透過させるレンズである光ピックアップ装置である。
光路を折り曲げることなく構成することができる。
請求項13の発明は、請求項1の発明において、段差深さは、0.1μm以上、且つ3.0μm以下である光ピックアップ装置である。
段差深さが0.1μm以上であれば、輪帯の形状を実用に使用できる精度で作製することができる。また、段差深さが3.0μm以下であれば、実用に使用できる精度の段差深さを得ることができる。
請求項14の発明は、請求項2の発明において、光ディスクはDVD及びCDであり、波長λ1のレーザ光はDVDに向けて出射されたレーザ光であり、且つλ2のレーザ光はCDに向けて出射されたレーザ光である光ピックアップ装置である。
波長λ1は約650nmであり、波長λ2は約780nmである。その比率は約5:6であり、段差深さがあまり深くならない深さで波長λ1及び波長λ2のほぼ自然数倍とすることができる。
請求項15の発明は、請求項1の発明において、段差深さは、波長λ1及び波長λ2のほぼ自然数倍であり、ほぼ自然数倍は、少なくとも自然数±0.25倍の範囲の値を含む光ピックアップ装置である。
段差深さが、波長λ1の自然数倍にも波長λ2の自然数倍にも近い値なので、波長λ1のレーザ光にも波長λ2のレーザ光にも非点収差生成素子として使用することができる。
請求項16の発明は、請求項1の発明において、フレネルレンズ状の光学素子の輪帯の形状はほぼ連続した形状である光ピックアップ装置である。
輪帯に階段状の形状がほぼ見られず、滑らかなので、レーザ光の受光器上におけるスポットは良好な形状とすることができる。
請求項17の発明は、光ディスクに向けて波長λ1のレーザ光及び波長λ1よりも長い波長λ2のレーザ光を出射するレーザ光源と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光する受光器と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光器に向かわせるビームスプリッタと、ビームスプリッタと受光器との間に設けられ、レーザ光の光軸を含んで直交する2つの断面の一方における焦点位置を受光器の前側とし、他方における焦点位置を受光器の後側として、フォーカス制御に用いられる波長λ1及び波長λ2のレーザ光を生成する非点収差生成素子と、を備え、非点収差生成素子は、フレネルレンズ状の光学素子であり、その段差深さは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍である光ディスク装置である。
非点収差生成素子をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子を小さくすることができ、光ディスク装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器上におけるスポットは良好な形状とすることができる。
請求項18の発明は、光ディスクに向けて波長λ1のレーザ光及び波長λ1よりも長い波長λ2のレーザ光を出射するレーザ光源と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光する受光器と、光ディスクで反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光器に向かわせるビームスプリッタと、ビームスプリッタと受光器との間に設けられ、レーザ光の光軸を含んで直交する2つの断面の一方における焦点位置を受光器の前側とし、他方における焦点位置を受光器の後側として、フォーカス制御に用いられる波長λ1及び波長λ2のレーザ光を生成する非点収差生成素子と、非点収差生成素子を内部に形成したプリズムと、を備え、非点収差生成素子は、フレネルレンズ状の光学素子であり、その段差深さは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍であり、非点収差生成素子のフレネルレンズ状の反射面形状は、プリズム内部の密閉された樹脂で生成されている光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器上におけるスポットは良好な形状とすることができる。そして、非点収差生成素子のフレネルレンズ状の反射面形状をプリズム内部の密閉された樹脂で生成するということは、マスクを介して露光、現像して残った樹脂の表面形状を直接非点収差生成素子の反射面形状とするということである。そのため、さらに樹脂とともにブロックをエッチングしてブロックに形成した反射面形状よりも、マスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。また、エッチングをしてブロックに反射面形状を形成する工程を省くことになるため、非点収差生成素子を安価に作製することができる。
請求項19の発明は、請求項18の発明において、プリズムは、波長λ1及び波長λ2のレーザ光が透過する第1ブロックと、第1ブロックに対向する第2ブロックと、第1ブロックと第2ブロックとの間に配置されて波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射する反射膜と、第1ブロックと反射膜との間に配置された第1樹脂と、反射膜と第2ブロックとの間に配置された第2樹脂と、を有し、非点収差生成素子の反射面形状は、第1樹脂または第2樹脂のいずれか一方の表面形状に沿って配置された反射膜の形状である光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子の反射面形状は、第1樹脂の表面形状に沿って配置された反射膜の形状である場合と、第2樹脂の表面形状に沿って配置された反射膜の形状である場合とがある。前者の場合、マスクを介して露光、現像して残った第1樹脂の表面形状を直接非点収差生成素子の反射面形状とするということである。そのため、さらに第1樹脂とともに第1ブロックをエッチングして第1ブロックに形成した反射面形状よりも、マスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。後者の場合、マスクを介して露光、現像して残った第2樹脂の表面形状を直接非点収差生成素子の反射面形状とするということである。そのため、さらに第2樹脂とともに第2ブロックをエッチングして第2ブロックに形成した反射面形状よりも、マスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。また、いずれの場合も、エッチングをして第1ブロックや第2ブロックに反射面形状を形成する工程を省くことになるため、非点収差生成素子を安価に作製することができる。
請求項20の発明は、請求項19の発明において、第1ブロックの屈折率と第1樹脂の屈折率とは波長λ1及び波長λ2においてほぼ等しい光ピックアップ装置である。
波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光は、第1ブロック、第1樹脂を通過し、反射膜で反射して、再び第1樹脂、第1ブロックを通過する。ここで、第1ブロックと第1樹脂の屈折率を波長λ1及び波長λ2においてほぼ等しくすることで、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光は第1ブロックと第1樹脂との境界で反射することなく、ほぼ全光量が透過する。したがって、受光器に入射する第1ブロックと第1樹脂との境界で反射した光はほとんどないので、良好な記録や再生の特性が得られる。
請求項21の発明は、請求項19の発明において、第1ブロック上に形成された第1樹脂はリソグラフィ用の感光性樹脂であり、反射膜は第1樹脂の表面形状に沿って配置され、第2樹脂は第1ブロックと第2ブロックとを貼り合わせる接着剤である光ピックアップ装置である。
第1樹脂にリソグラフィ用の感光性樹脂を用いることで、マスクを介して露光、現像するリソグラフィ技術を用いることができる。そのため、非常に精度が良い反射面形状とすることができる。
請求項22の発明は、請求項19の発明において、第2ブロック上に形成された第2樹脂はリソグラフィ用の感光性樹脂であり、反射膜は第2樹脂の表面形状に沿って配置され、第1樹脂は第1ブロックと第2ブロックとを貼り合わせる接着剤である光ピックアップ装置である。
第2樹脂にリソグラフィ用の感光性樹脂を用いることで、マスクを介して露光、現像するリソグラフィ技術を用いることができる。そのため、非常に精度が良い反射面形状とすることができる。
請求項23の発明は、請求項21または請求項22のいずれか1項の発明において、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域の感光性樹脂の表面は、周辺の領域の表面よりも低い光ピックアップ装置である。
非点収差生成素子のフレネルレンズ状の反射面形状の段差深さは、数μm以下であり、実際には1μm以下である場合が多い。そのため、他のものと接触しただけで変形し形状がつぶれてしまう。たとえば、第1ブロックと第2ブロックとを接着する際に強く押しつけ過ぎて反射面が他方のブロックに接触してしまうと、それが変形の原因になってしまう。特に樹脂で反射面形状を生成する場合は、樹脂が軟らかいために顕著である。したがって、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域の感光性樹脂の表面を周辺の領域の表面よりも低くすることで、そのような接触を抑制することができる。そのため、感光性樹脂で生成された反射面形状が、つぶれることなくそのまま非点収差生成素子の反射面形状となる。
請求項24の発明は、請求項21または請求項22のいずれか1項の発明において、感光性樹脂は、プリズムの外部に非露出である光ピックアップ装置である。
リソグラフィ用の感光性樹脂は必ずしも水分に対して強くはない。たとえば、水分が浸入すると光学特性が変化して屈折率が変化したり、第1ブロックや第2ブロックとの密着性が弱まって剥離しやすくなったりして、信頼性が低下する。したがって、感光性樹脂をプリズムの外部に対して非露出とすることで、外部から感光性樹脂に直接水分が浸入することを防ぐことができ、高い信頼性を維持することができる。
請求項25の発明は、請求項24の発明において、反射膜が感光性樹脂を覆った光ピックアップ装置である。
反射膜は水分を遮断することができるので、感光性樹脂をさらに反射膜で覆うことによって感光性樹脂に対する水分の浸入をより防ぐことができる。
請求項26の発明は、請求項8の発明において、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域の媒質の表面は、周辺の領域の表面よりも低い光ピックアップ装置である。
樹脂ほどではないにしても、媒質であるブロックの表面に非点収差生成素子のフレネルレンズ状の表面形状を形成した場合も、他のものと接触しただけで変形し形状がつぶれてしまう。ブロック同士を接着する際に強く押しつけ過ぎて反射面が媒質でない方のブロックに接触してしまうと、それが変形の原因になってしまう。したがって、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域の媒質の表面を周辺の領域の表面よりも低くすることで、そのような接触を抑制することができる。そのため、媒質に形成された反射面形状が、つぶれることなくそのまま非点収差生成素子の反射面形状となる。
請求項27の発明は、請求項16の発明において、フレネルレンズ状の光学素子の輪帯の形状は、露光する波長の光に対してほぼ連続した分布の透過率を持つグレースケールのマスクを用いて露光して形成した光ピックアップ装置である。
グレースケールのマスクは、露光に用いる波長の光に対する透過率が輪帯に相当する部分については場所によって連続的に変化しているマスクである。そのため、複数回の露光を繰り返さなくてもほぼ連続した輪帯の形状を得ることができる。また、露光を1回で済ますことができるので、設計した形状に非常に近い形状のフレネルレンズ状の光学素子の表面形状を得ることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態1について図面を参照しながら説明する。図1(a)は本実施の形態1の光ピックアップ装置の光学系の主要部分の説明図、図1(b)は図1(a)の非点収差生成素子部分の拡大図である。レーザ光源1から出射されたDVD用の波長λ1及びCD用の波長λ2のレーザ光はプリズム2に入射し、斜面3に形成されたビームスプリッタ5を透過して光ディスク7に入射する。光ディスク7で反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光はプリズム2に再び入射すると、ビームスプリッタ5で反射され、斜面4に形成された非点収差生成素子6に入射する。さらに非点収差生成素子6で反射され、再び斜面3で反射されて受光器8の光検出部9に入射する。非点収差生成素子6はフレネルレンズ状に形成され、その段差深さdは波長λ1または波長λ2のいずれかのほぼ自然数倍としている。
レーザ光源1はDVD用の波長λ1=約650nmのレーザ光とCD用の波長λ2=約780nmのレーザ光を光ディスク7に向けて出射する。本実施の形態1において、レーザ光源1は、波長λ1のレーザ光と波長λ2のレーザ光とが近接した位置から出射されるいわゆる2波長レーザ光源とした。しかし、波長λ1のレーザ光を出射するレーザ光源と波長λ2のレーザ光を出射するレーザ光源とを別々に配置しても良い。また、Blu−ray DiscやHD−DVDに用いられる波長λ3=約405nmのレーザ光と組み合わせても構わない。
図2は本実施の形態1のプリズムの構成図である。プリズム2は、BK7等の光学ガラス等で形成されたブロック2a、2b、2cで構成された直方体の光学素子である。ブロック2a、2bは波長λ1及び波長λ2のレーザ光が通る媒質でもある。ブロック2aとブロック2bとの境界が斜面3、ブロック2bとブロック2cとの境界が斜面4である。斜面3と斜面4とはほぼ平行であり、直方体であるプリズム2の内部でほぼ45°の傾きを有している。斜面3にはビームスプリッタ5と反射膜2dが形成され、斜面4には非点収差生成素子6が形成されている。
ビームスプリッタ5は誘電体多層膜の偏光分離膜で構成される。偏光分離膜には通過するレーザ光の偏光状態によって、レーザ光源1から出射され光ディスク7に向かうレーザ光を透過し、光ディスク7で反射されたレーザ光を反射して受光器8に向かわせる性質を持たせている。このようにして、ビームスプリッタ5は、光ディスク7で反射されたレーザ光をレーザ光源1に向かわずに受光器8に向かうように分離する。
反射膜2dは金属膜や誘電体多層膜で形成された全反射膜である。ビームスプリッタ5を延長して偏光分離膜をそのまま反射膜2dとしても構わない。
非点収差生成素子6はプリズム2の斜面4のブロック2b側に形成されたフレネルレンズ状の反射鏡とした。図3はフレネルレンズの説明図である。フレネルレンズ11は、通常のレンズ10を所定の高さd毎に分割し、分割した各部分を移動させて全体を薄くしたレンズである。フレネルレンズ11の段差深さdはレンズ10を分割した所定の高さdに相当する。また、各段差11b間の実際にレンズの屈折作用をする領域を輪帯11aと呼ぶ。本実施の形態1において、非点収差生成素子6は反射鏡としたが、レンズでも全く同じことが言える。
非点収差生成素子6の段差深さdは、波長λ1及び波長λ2のレーザ光が非点収差生成素子6に入射し出射する角度と媒質である光学ガラス等の屈折率を考慮して、波長λ1または波長λ2の自然数倍となる深さとした。段差深さdが入射する光の波長の自然数倍であると、段差6bの前後での位相差は0となるので、光は段差6bがない場合と同じ挙動をするためである。逆に段差深さdが波長の自然数−0.5倍に近いほど段差6bの影響が大きい。段差深さdは、波長λ1及び波長λ2の両方に対して、少なくとも自然数±0.25倍の範囲の値であれば、非点収差生成素子として使用することができる。自然数±0.25倍以内であれば、ほぼ自然数倍あるいは自然数倍に近いとする。本実施の形態1において、段差深さdは波長λ2の1倍とした。すなわち、波長λ1の約1.2倍である。波長λ1のレーザ光の方が、波長の自然数倍から少しずれた際のスポット形状に対する影響が小さいため、段差深さdは波長λ2の自然数倍となるようにした。したがって、波長λ2のレーザ光は段差6bの前後での位相差はほぼ0であるので、段差の影響がほぼ見られず、波長λ1のレーザ光も段差深さdが波長λ1の自然数倍に近いので、段差6bの影響が小さい。
実際の段差深さdは、自然数n、レーザ波長λ、媒質の屈折率η、入射角度、出射角度θとすると、段差深さd=n×λ×cosθ÷ηとなる。具体的には、n=1、波長λ2が0.78μm、BK7の屈折率ηが波長λ1や波長λ2付近では約1.51、入射角度、出射角度がθ=45°として、段差深さdをd=0.78÷√2÷1.51=約0.37μmとした。後述するように、非点収差生成素子6はレジストを塗布、露光・現像して所定の凹凸形状のパターンを形成する。そのため、段差深さdが約0.1μmよりも浅いと輪帯6aの形状の精度が劣化する。約0.1μm以上の段差深さdであれば、輪帯6aの形状は使用することができるレベルである。段差深さdが約0.2μm以上であれば、輪帯6aの形状はやや良好である。段差深さdが約0.3μm以上であれば、良好な形状の輪帯6aが得られる。逆に段差深さdが約3.0μmよりも深いと段差深さdの精度が劣化する。段差深さdが約3.0μm以下であれば、段差深さdの精度は使用することができるレベルである。段差深さdが約2.5μm以下であれば、段差深さdの精度はやや良好である。段差深さdが約2.0μm以下であれば、良好な精度の段差深さdが得られる。したがって、段差深さdを約0.3〜2.0μm程度の範囲にすると精度良い段差深さdと輪帯6aの形状が得られる。本実施の形態1において、段差深さdは約0.37μmであり、精度が良く、しかも輪帯6aの形状も精度が良い。
図4(a)は非点収差生成素子の働きと受光器を示す図、図4(b)は光ディスクが近い場合のスポットの状態を示す図、図4(c)は光ディスクが遠い場合のスポットの状態を示す図である。非点収差生成素子12は、光軸13を含んで直交する2つの断面で焦点距離を異ならせる素子である。非点収差生成素子12には、いわゆる円柱レンズ、円筒レンズやその組み合わせ、及び円筒反射鏡、円柱反射鏡やその組み合わせ等がある。図4(a)において、非点収差生成素子12は、簡単のため円筒レンズとした。
光ディスク7で反射されたレーザ光はレーザ光源1に集光するように戻ってくる。したがって、非点収差生成素子12に入射するレーザ光は集光しようとする光である。光軸13を含む上下方向の断面14においてレーザ光は、非点収差生成素子12をそのまま透過し、焦点16に集光する。一方、光軸13を含む左右方向の断面15においてレーザ光は、非点収差生成素子12が凹レンズの働きをするため、焦点16よりも奥側の焦点17に集光しようとする。受光器19は焦点16と焦点17との中間に配置される。つまり、焦点16の位置は受光器19の前側であり、焦点17の位置は受光器19の後側となるように配置される。すなわち、断面14の方向のレーザ光は、焦点16で集光してから少し広がった状態で受光器19に入射する。断面15の方向のレーザ光は焦点17で集光する前に少し広がった状態で受光器19に入射する。そのため、受光器19上のスポット18は、少し広がった状態のほぼ円形状となる。
図4(a)において、受光器19は、光ディスク7で反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を受光するA〜Dの光検出部20を田の字を45°寝かせたように配置する。AとCの光検出部20を左右方向に配置し、BとDの光検出部20を上下方向に配置した。A〜Dの光検出部20は受光した光量を電気信号に変換する。Aの光検出部20で変換された電気信号をA、Bの光検出部20で変換された電気信号をB、Cの光検出部20で変換された電気信号をC、Dの光検出部20で変換された電気信号をDとする。フォーカス制御用の信号であるフォーカスエラー信号FESは、FES=(A+C)−(B+D)を演算させることにより得ることができる。
図4(b)に示すように、光ディスク7が光ピックアップ装置に近い場合、焦点16は受光器19に近づき、焦点17は受光器19から遠ざかる。そのため、スポット18の上下の寸法が短くなって左右の寸法が長くなる。したがって、フォーカスエラー信号FES>0となる。逆に図4(c)に示すように、光ディスク7が光ピックアップ装置から遠い場合、焦点16は受光器19から遠ざかり、焦点17は受光器19に近づく。そのため、スポット18の上下の寸法が長くなり、左右の寸法が短くなる。したがって、フォーカスエラー信号FES<0となる。このようにフォーカスエラー信号FESは光ディスク7のフォーカス方向の位置ずれを示すフォーカス制御用の信号である。フォーカス制御は、フォーカスエラー信号FES=0、あるいは所定の値となるように行われる。
なお、段差深さdがレーザ光の波長の自然数倍からずれるほど、受光器19上のスポット18が細長い形状になりにくくなる。そのため、フォーカスエラー信号FESの感度が悪くなる。本実施の形態1において、段差深さdが、波長λ1に対してはほぼ自然数倍であり、波長λ2に対しても自然数倍に近いため、スポットの形状が良好であり、フォーカスエラー信号FESの感度は良好である。
図5(a)は本実施の形態1の斜面の法線方向から見た非点収差生成素子の図、図5(b)はA−A断面図、図5(c)はB−B断面図である。非点収差生成素子6はブロック2bの斜面4に形成される。図5(a)において、非点収差生成素子6は紙面上下方向がプリズム2の幅方向に相当する。図5(a)における非点収差生成素子6内部の縞状模様の実線部分は段差6bに相当し、段差6b間が輪帯6aに相当する。段差6bは十字状の縞状模様で分布している。これを約45°の傾きを持った切断面A−A、B−Bで切断した断面図が図5(b)、図5(c)である。図5(b)において、A−A断面では輪帯6aは凹面鏡になるように配列される。また、図5(c)において、B−B断面では輪帯6aは凸面鏡になるように配列される。このように、本実施の形態1の非点収差生成素子6は、凹面鏡と凸面鏡とが90°毎に現れる形状をしている。なお、A−A断面、B−B断面が約45°の傾きを持っているのは、受光器8に入射するレーザ光を図4のレーザ光に対して45°回転させるためである。それによって、受光器8の光検出部9の配列を受光器19の光検出部20の配列に対して45°回転させ、A〜Dの光検出部20の配列を縦横になるようにしている。
非点収差生成素子6の作製方法は以下の通りである。あらかじめ、所定形状に露光できるグレースケールのマスクを用意しておく。グレースケールのマスクは、露光に用いる波長の光に対する透過率が輪帯6aに相当する部分については場所によって連続的に変化しているマスクである。グレースケールのマスクを用いることにより、精度良い段差深さdとフレネルレンズ状の本来の形状である輪帯6aの連続した形状の曲面形状が実現できる。つまり輪帯6aには階段状の形状がほぼ見られず、滑らかなので、レーザ光の受光器8上における良好なスポット形状が得られる。しかも、複数回の露光を繰り返さなくても1回の露光で済ますことができるので、設計した形状に非常に近い形状のフレネルレンズ状の光学素子の表面形状を得ることができる。
まず、レジストを板状のブロック2bの表面に塗布し硬化する。次に、輪帯6a、段差6bの所定の凹凸パターンを形成することができるグレースケールのマスクを介して紫外線照射・露光して現像することにより、所定形状の凹凸パターンをレジストに残す。さらに、エッチングをして、ブロック2bの表面に所定形状の凹凸パターンを形成する。このようにして非点収差生成素子6の輪帯6a、段差6bの所定形状の凹凸パターンをブロック2bの表面に作製する。
次に、ブロック2bの所定形状の凹凸パターンの表面に全反射膜を形成する。全反射膜は金属膜や誘電体多層膜である。さらに、その表面に吸収膜を形成する。吸収膜は誘電体多層膜である。最後に、ブロック2bとブロック2cとを紫外線硬化型接着剤等で接着する。
さらに、プリズム2の作製は以下の通りである。板状のブロック2bの斜面3側の表面または板状のブロック2aの斜面3側の表面にビームスプリッタ5及び反射膜2dを形成する。そして、ブロック2aとブロック2bとを紫外線硬化型接着剤等で接着する。
このようにして、板状のブロック2aと板状のブロック2bと板状のブロック2cとが接着された1つの大きなブロックが形成される。そして、その大きなブロックを所定の形状に切り出し、研磨してプリズム2が作製される。プリズム2の表面のうち、レーザ光が入射したり、出射したりする面には反射防止膜を形成しても良い。
図6は本実施の形態1の受光器の構成図である。受光器8はA〜Dの光検出部9が田の字状に縦横に配列される。受光器19のA〜Dの光検出部20に対して、45°回転した配列である。光ディスク7が近づいたり遠ざかったりすると、受光器8上のレーザ光のスポットは斜め45°方向に伸びる。
図1(a)及び図2に示すように、レーザ光源1から出射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、プリズム2に入射し、斜面3に形成されたビームスプリッタ5をそのまま透過し、光ディスク7に向かう。光ディスク7で反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、プリズム2に入射し、ビームスプリッタ5で反射され、非点収差生成素子6に向かう。非点収差生成素子6に入射したレーザ光は、光軸を含んで直交する2つの断面で焦点距離を異なるように変換され反射されて、反射膜2dに向かう。反射膜2dでさらに反射されてプリズム2から出射されて受光器8に入射する。受光器8の光検出部9では、光ディスク7が近づいたり遠ざかったりするのに応じて、スポット形状が変化し、フォーカス制御用の電気信号が生成される。
斜面3は約45°傾いているのでビームスプリッタ5に入射するレーザ光はほぼ45°の入射角度であり、反射されるレーザ光の出射角度もほぼ45°である。そのため、レーザ光はほぼ水平に進み、斜面3とほぼ平行な斜面4に形成された非点収差生成素子6に入射する。したがって、非点収差生成素子6に入射するレーザ光の入射角度も約45°であり、非点収差生成素子6で反射されるレーザ光の出射角度も約45°である。また、反射膜2dへの入射角度と反射膜2dからの出射角度も約45°であり、プリズム2からはほぼ直角に出射されるため、屈折による光路の曲がりはほとんどない。
また、入射角度、出射角度が45°で光路長が√2倍になるため、段差深さdを1/√2倍にすることができる。そのため、段差深さdは、0.3μm以上2.0μm以下となり、段差深さdを精度良く作製することができる。また、段差深さdが浅くなるため、段差6bを形成する時間が短くなり、非点収差生成素子6を安価に製造することができる。
また、ビームスプリッタ5と受光器8との距離は、非点収差生成素子6と反射膜2dとの間で光路が折りたたまれるため、非点収差生成素子6と反射膜2dとの距離の分だけ小さくすることができる。そのため、光ピックアップ装置をより小型にすることができる。
また、非点収差生成素子6がレンズであれば、非点収差生成素子6のレーザ光の入射側と出射側とで屈折率に差を設け、その屈折率の差と輪帯6aへの入射角度で透過するレーザ光の出射角度が決まる。非点収差生成素子6をプリズム2の内部に設けるに当たり、非点収差生成素子6のレーザ光の入射側と出射側とで屈折率に大きな差を設けるのは困難である。しかし、反射鏡であれば、輪帯6aへのレーザ光の入射角度で反射光の光路が決定するため、設計しやすい。
また、非点収差生成素子6は、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を通過させる媒質であるブロック2bの表面に接着剤等を介さず直接形成されている。接着剤等を介すると、ブロック2bと接着剤等とのわずかな屈折率の違いやごく微小な気泡の影響により、レーザ光の品質に好ましくない影響を及ぼす可能性がある。しかし、接着剤等を介さず非点収差生成素子6がブロック2bの表面に直接形成されているため、非点収差生成素子6で反射されたレーザ光の品質が良い。また、ブロック2bの表面に形成された所定形状の凹凸パターンがそのまま反射鏡を構成する全反射膜の形状に反映されるので、設計された性能に極めて近い性能を発揮することができる。
また、非点収差生成素子6はプリズム2の内部に形成されているために、ほこり等が非点収差生成素子6の表面に付着することがなく、ほこり等に強い。
また、非点収差生成素子6は、輪帯6aと段差6bの配列が、光ディスク7で反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光が入射する方向から見て、十字形状である。そのため、非点収差生成素子6を通過したレーザ光は、光軸を含んで直交する2つの断面のうち、一方の断面において一方向のパワーを与えて受光器8の前側で焦点を結び、他方の断面において逆方向のパワーを与えて受光器8の後側で焦点を結ぶようにすることができる。そのため、フォーカスエラー信号FES>0における特性とFES<0における特性とを合わせやすい。
なお、本実施の形態1において、非点収差生成素子6の段差深さdは、波長λ2のレーザ光の入射角度とブロック2bの屈折率を考慮して、波長λ2の約1倍とした。しかし、それに限るものではなく、波長λ2の約5倍としても良い。波長λ1は約650nmであり、波長λ2は約780nmである。その比率は約5:6である。したがって、段差深さdを波長λ2の約5倍とすると、波長λ1の約6倍となり、波長λ1及び波長λ2の自然数倍とすることができる。その場合、波長λ1のレーザ光に対しても波長λ2のレーザ光に対しても、段差6bの前後での位相差をほぼ0にすることができ、段差6bの影響はほとんど見られず、受光器8上におけるスポット形状を良好にすることができる。また、段差深さdは、約1.83μmで、0.3〜2.0μmの間に入り、精度良い段差深さdと輪帯6aの形状が得られる。
この約1.83μmの自然数倍の段差深さdであれば、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光に対して、受光器8上におけるスポット形状を良好にすることができる。特に、最小の段差深さd=約1.83μmは、0.3〜2.0μmの間に入るため、精度良い段差深さdと輪帯6aの形状が得られる。また、段差深さdが小さいため、安価に製造することができる。しかし、1.83μmの2倍以上の段差深さdでも、精度良い段差深さdが得られれば、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光に対して、受光器8上におけるスポット形状を良好にすることができる。
また、段差深さdは波長λ2に対して自然数倍になるようにしたが、波長λ1に対して自然数倍になるようにしても構わないし、波長λ1と波長λ2の中間となるようにしても良い。その際、波長λ1に対しても波長λ2に対しても自然数±0.25倍の範囲の値を含むようにする。段差深さdが、波長λ1の自然数倍にも波長λ2の自然数倍にも近い値なので、波長λ1のレーザ光にも波長λ2のレーザ光にも非点収差生成素子6は非点収差生成素子として使用することができる。
また、本実施の形態1において波長λ1と波長λ2のレーザ光について説明した。しかし、それに限るものではなく、前述の波長λ3=約405nmとの組合せでも構わない。例えば、段差深さdを波長λ1の5倍、波長λ3の8倍とすると、入射角度、出射角度を45°、屈折率を1.51として、段差深さdは約1.52μmとなる。これは、0.3〜2.0μmの範囲内にあり、精度良い段差深さdと輪帯6aの形状が得られる。
また、本実施の形態1において、ブロック2bの表面に非点収差生成素子6の所定形状の凹凸パターンを形成した方法は、いわゆる半導体パターンを形成するのと同様の方法である。しかし、その方法に限るものではなく、フレネルレンズ状の所定の凹凸パターンが形成できる方法であれば構わない。例えば、金型に所定の凹凸パターンを形成し、材料をその凹凸パターンに流し込むような方法でも良い。
また、本実施の形態1において、非点収差生成素子6の輪帯6aと段差6bの配列は、光ディスク7で反射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光が入射する方向から見て、十字形状である。しかし、その形状に限るものではない。図7(a)は本実施の形態1の非点収差生成素子の輪帯と段差の配列の他の例を示す図、図7(b)はC−C断面図である。段差6bはほぼ直線であり、輪帯6aの形状は段差6bの横断方向では凸面鏡の形状である。すなわち、円柱反射鏡形状である。このような形状にしても、非点収差生成素子6は非点収差を生成するという働きをする。十字形状のように3次元の輪帯形状ではなく、2次元の輪帯形状を設計すれば良いので、非点収差生成素子6の設計が容易となる。
なお、媒質であるブロック2bの表面に形成された非点収差生成素子6のフレネルレンズ状の表面形状は、他のものと接触しただけで変形し形状がつぶれてしまう。ブロック同士を接着する際に強く押しつけ過ぎて反射面がブロック2cに接触してしまうと、それが変形の原因になってしまう。そのため、図1(b)に示すように非点収差生成素子6の波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域のブロック2bの表面を周辺の領域の表面よりも高さhだけ低くすることが望ましく、そのような接触を抑制することができる。そのため、ブロック2bに形成された反射面形状が、つぶれることなくそのまま非点収差生成素子6の反射面形状となる。このような、高さhを設けるような構成もグレースケールのマスクを用いることで実現できる。
このように、本実施の形態1において、非点収差生成素子6をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子6を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さdを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子6を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器8上におけるスポット18は良好な形状とすることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。図8は本実施の形態2のプリズムの構成図、図9は本実施の形態2のプリズムの別の例の構成図である。本実施の形態2は非点収差生成素子をプリズムの外側に設けた構成である。本実施の形態2におけるレーザ光源、光ディスク、受光器は実施の形態1と同じであるので、その説明を援用するとともに符号もそのまま使用する。
図8において、プリズム21は三角柱のブロック21aとブロック21bとを斜面22で貼り合わせた構成である。ブロック21a及びブロック21bは、BK7等の光学ガラス等で構成される。斜面22にはビームスプリッタ23が形成される。ビームスプリッタ23は誘電体多層膜で構成される偏光分離膜である。また、ブロック21bの一方の側面であるプリズム21の側面24に非点収差生成素子25が形成される。実施の形態1において、非点収差生成素子6はフレネルレンズ状の反射鏡であったが、本実施の形態2の非点収差生成素子25はフレネルレンズである。
段差深さdは、自然数n、レーザ波長λ、レンズ外の媒質の屈折率η1、レンズ内の媒質の屈折率η2、入射角度θとすると、段差深さd=n×λ÷(η2−η1)÷cosθとなる。段差深さdはd=1×0.78÷(1.51−1)=約1.53μmとした。ここで、n=1、波長λ2が0.78μm、レンズ内の媒質であるBK7の屈折率η2が1.51、レンズ外の媒質である空気の屈折率η1が1、入射角度θが0°である。段差深さdは、0.3μm以上2.0μm以下であり、精度良い段差深さdと輪帯の形状が得られる。段差深さdはブロック21bであるBK7の屈折率1.51を考慮した波長λ2の1倍である。この場合、段差深さdは波長λ1の1.2倍であり、自然数倍に近い。そのため、波長λ1のレーザ光に対して段差の影響がほとんど見られず、波長λ2のレーザ光に対しても段差の影響は小さい。したがって、波長λ1のレーザ光も波長λ2のレーザ光もスポット形状が良好である。
紙面下方のレーザ光源1より入射した波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、ビームスプリッタ23を透過し、紙面上方の光ディスク7に向けて出射される。光ディスク7で反射されたレーザ光は、ビームスプリッタ23で反射され、非点収差生成素子25を通過して受光器8に入射する。
非点収差生成素子25は、プリズム21の側面24に形成されたフレネルレンズであり、ほとんど厚さが無視できる程度に通常のレンズよりも厚さが薄い。そのため、プリズム21と受光器8との距離を小さくすることができる。
また、プリズム21は内部にはビームスプリッタ23が形成された斜面22のみがある。そのため、プリズム21の大きさは非点収差生成素子6がある場合よりも小さくすることができる。
また、レンズで非点収差生成素子25を構成しているので、光路を折り曲げることなく構成できる。
図9において、プリズム31は三角柱のブロック31aとブロック31bとを斜面32で貼り合わせた構成である。ブロック31a及びブロック31bは、BK7等の光学ガラス等で構成される。斜面32にはビームスプリッタ33が形成される。ビームスプリッタ33は誘電体多層膜で構成される偏光分離膜である。ここまでのプリズム31の構成はプリズム21と同じである。
非点収差生成素子36は光学基板35の表面に形成され、光学基板35がプリズム31のブロック31bの側面に接着される。非点収差生成素子36はフレネルレンズである。光学基板35はBK7等の光学ガラス等で構成される。
紙面下方のレーザ光源1より入射した波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、ビームスプリッタ33を透過し、紙面上方の光ディスク7に向けて出射される。光ディスク7で反射されたレーザ光は、ビームスプリッタ33で反射され、非点収差生成素子36を通過して受光器8に入射する。
良品のプリズム31と良品の非点収差生成素子36を形成した光学基板35を貼り合わせるため、プリズム21よりも歩留良く作製することができる。
以上のように、本実施の形態2においても、非点収差生成素子25、36をフレネルレンズとすることで、非点収差生成素子25、36を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さdを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子25、36を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器8上におけるスポット18は良好な形状とすることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3について、図面を参照しながら説明する。図10は本実施の形態3の光ピックアップ装置の構成図、図11は本実施の形態3の光ピックアップ装置の光学系の構成図である。本実施の形態3の光ピックアップ装置40は、実施の形態1で説明した光ピックアップ装置の具体例である。レーザ光源1、ビームスプリッタ5及び非点収差生成素子6を有するプリズム2は実施の形態1と同じであるので、その説明を援用するとともに、その符号もそのまま使用する。また、プリズム2は実施の形態2や後述の実施の形態5のプリズムと置き換えても構わない。
光ピックアップ装置40は基台49に各種部品を配置して構成される。基台49は光ピックアップ装置40の骨組みである。基台49は、Zn合金、Mg合金等の合金材料あるいは硬質樹脂材料で形成されるが、剛性を確保しやすい合金材料が望ましい。基台49には各種部品を配置するための取付け部が所定の箇所に設けられている。
回折素子41は第1回折格子及び第2回折格子を有する。第1回折格子は、DVD用の波長λ1のレーザ光を回折して0次光、±1次光、・・・に分離し、CD用の波長λ2のレーザ光をそのまま通過させる。第2回折格子は、波長λ1のレーザ光をそのまま通過させ、波長λ2のレーザ光を回折して0次光、±1次光、・・・に分離する。回折されて分離された0次光、±1次光、・・・のうち、0次光及び±1次光がトラッキング制御に用いられる。0次光をメインビーム、±1次光をサイドビームまたはサブビームともいう。
回折光の0次光の光量は、レーザ光の波長λと回折格子の屈折率、深さ等により決まる。第1回折格子は波長λ2のレーザ光の回折光のうち0次光がほぼ100%を占める回折格子深さを選定することにより実現できる。また、第2回折格子は波長λ1のレーザ光の回折光のうち0次光がほぼ100%を占める回折格子深さを選定することにより実現できる。
また、回折素子は以下のような回折格子を有する構成でも構わない。すなわち、回折格子の凹凸を形成する凹凸部材とその凹凸を充填する充填部材とを有し、凹凸部材と充填部材の何れか一方に所定の波長域に光吸収を有する材料を含有させた回折格子である。光吸収を有する所定の波長域の近傍では材料の屈折率の波長依存性が大きくなる。そのため、凹凸部材と充填部材との屈折率差に波長依存性が現れる。凹凸部材と充填部材との屈折率差が0である波長の場合には、その波長のレーザ光はそのまま回折格子を通過する。しかし、凹凸部材と充填部材との屈折率差が0でない場合には、回折格子は通過するレーザ光を回折する。第1回折格子は、波長λ1において凹凸部材と充填部材との屈折率が異なり、波長λ2において両者の屈折率が等しい。第2回折格子は、波長λ1において両者の屈折率が等しく、波長λ2において両者の屈折率が異なる。
反射鏡42は光路を折り曲げて光ピックアップ装置40を小さくするためのものである。反射鏡42は光学ガラスや光学プラスチック等で形成され、レーザ光が照射される面には偏光分離膜が形成されている。偏光分離膜は誘電体多層膜等である。偏光分離膜はP偏光のレーザ光の大半を反射し一部を透過させ、S偏光をほぼ全反射させるような性質を持たせた。
コリメートレンズ43は、レーザ光源1から出射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光を発散光から平行光に変換して光ディスク7に向けて出射するレンズである。また、光ディスク7で反射され対物レンズ46を通ってきた平行光を集束光に変換してプリズム2に向けて出射するレンズでもある。コリメートレンズ43は光学ガラスや光学プラスチック等で形成される。
1/4波長板44は、レーザ光源1から出射されたP偏光である波長λ1及び波長λ2のレーザ光を円偏光に変換する。さらに光ディスク7で反射された円偏光のレーザ光をP偏光に直角なS偏光に変換する。
立ち上げプリズム45は、それまで光ディスク7に対してほぼ平行であったレーザ光の光軸を光ディスク7に対してほぼ直角になるように立ち上げるためのプリズムである。立ち上げプリズム45に入射したレーザ光は、立ち上げプリズム45内部で複数回反射して、光ディスク7に対してほぼ直角に照射されるように出射される。立ち上げプリズム45は立ち上げ鏡としても良い。
対物レンズ46は2焦点レンズであり、光学ガラスまたは光学プラスチックで作製される。コリメートレンズ43で略平行光にされたレーザ光は対物レンズ46でそれぞれの波長に応じた光ディスク7の記録面に焦点を結ぶように集光される。なお、対物レンズ46は集光レンズおよびフレネルレンズまたはホログラムレンズの組み合わせ、DVD用集光レンズにCD再生時に開口制限手段を設ける組み合わせ等を用い、光ディスク7の厚みおよび開口数の違いを吸収するものも使用することができる。
前光モニタ47は受光した波長λ1及び波長λ2のレーザ光の光量に応じた電気信号に変換して出力する。出力された信号はレーザ光源1が出射するレーザ光の出力制御に用いられる。
図12は本実施の形態3の受光器の構成図である。受光器48はA〜L、a〜hの光検出部48aを有する。A〜Lの光検出部48aにはDVD用の波長λ1のレーザ光が入射する。a〜hの光検出部48aにはCD用の波長λ2のレーザ光が入射する。A〜D、a〜dの光検出部48aにはメインビームが入射し、E〜L、e〜hの光検出部48aにはサイドビームが入射する。図6のA〜Dの光検出部9に図12のA〜Dの光検出部48aとa〜dの光検出部48aとが対応する。
受光部A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、Lに入射し変換されたDVD用の電気信号をA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、Lとする。受光部a、b、c、d、e、f、g、hに入射し変換されたCD用の電気信号をa、b、c、d、e、f、g、hとする。
DVD用のフォーカスエラー信号FESは、DVD−ROM、DVD±R/RW:FES=(A+C)−(B+D)、DVD−RAM:FES={(A+C)−(B+D)}+Kt×{(E+I+G+K)−(H+L+F+J)}である。ここでKtは動作設定に応じて定まる定数である。
CD用のフォーカスエラー信号FESは、CD−R/RW/ROM:FES=(a+c)−(b+d)である。
DVD用のトラッキングエラー信号TESは、DVD−ROM:TES=ph(A,D)−ph(B,C)、DVD±R/RW、−RAM:TES={(A+B)−(C+D)}−Kt×{(E+I+F+J)−(G+K+H+L)}である。ここで、ph(X,Y)は検出したX,Yの位相差を変換した電圧である。トラッキングエラー信号TESはスポットのトラック位置ずれを示す信号である。
CD用のトラッキングエラー信号TESは、CD−R/RW/ROM:TES={(a+b)−(c+d)}−Kt×{(e+f)−(g+h)}、CD−ROM:TES=ph(a,d)−ph(b,c)である。通常はより安定してトラッキング制御することができる前者の方法が用いられる。しかし例えば、CD−ROMのピットの高さが規格に入っていないような粗悪ディスクを再生するような場合、前者の方法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力されない場合がある。そのような場合でも後者の方法ではトラッキングエラー信号TESがうまく出力できるため、予備のトラッキング制御法として用いることができる。このようにトラッキング制御しきれない規格から外れているような粗悪ディスクを再生するような場合でもトラッキング制御することができるので、光ディスク装置としてより幅広い光ディスク7に対応することができる。
レーザ光源1、回折素子41、プリズム2、受光器48はレーザモジュール50として結合ベースと呼ばれる部品に一体に固定され、レーザモジュール50の結合ベースが基台49に固定される。一旦レーザモジュール50として組み立て、レーザモジュール50を基台49に固定する構成とすることにより、各部品の組み立て精度、その経時変化の安定性を高めることができる。プリズム2と受光器48とはレーザモジュール50の中で近接して配置される。また、反射鏡42、コリメートレンズ43、1/4波長板44、立ち上げプリズム45、前光モニタ47は直接または取付け用の部品を介して基台49に固定される。対物レンズ46は対物レンズ駆動装置51のレンズホルダに固定され、対物レンズ駆動装置51が基台49に固定される。レンズホルダは対物レンズ駆動装置51本体にフォーカス方向、トラッキング方向に移動自在に支持されている。フォーカス制御用の信号またはトラッキング制御用の信号に応じて生成された光ディスク装置本体からの信号により対物レンズ駆動装置51は対物レンズ46をフォーカス方向またはトラッキング方向に移動させる。
カバー52、53は光ピックアップ装置40として配置された各種部品を保護するために光ピックアップ装置40本体に取り付けられる。図10においてカバー53はプリズム2等が見えるように取り外した状態なので、破線にて示した。
光路について説明する。レーザ光源1から出射された波長λ1及び波長λ2のレーザ光はP偏光であり、回折素子41に入射する。波長λ1のレーザ光は、回折素子41の第1回折格子でメインビームとサイドビームとに分離される。波長λ2のレーザ光は、回折素子41の第2回折格子でメインビームとサイドビームとに分離される。それぞれメインビームとサイドビームとに分離された波長λ1及び波長λ2のレーザ光は、プリズム2に入射する。ビームスプリッタ5の偏光分離膜はP偏光であるレーザ光を透過するように構成されており、P偏光であるレーザ光はプリズム2のビームスプリッタ5をそのまま透過して反射鏡42に入射する。レーザ光はP偏光であるために、反射鏡42の偏光分離膜で大半は反射されて光ディスク7に向かうが、一部は透過して前光モニタ47に入射する。前光モニタ47に入射したレーザ光は、光量に応じた電気信号に変換されて、レーザ光源1から出射されるレーザ光の出力の制御に用いられる。
反射鏡42の偏光分離膜で反射されたレーザ光は、コリメートレンズ43に入射する。それまで発散光であったレーザ光は、コリメートレンズ43で平行光に変換されて1/4波長板44に入射する。それまでP偏光であったレーザ光は、1/4波長板44で円偏光に変換されて立ち上げプリズム45に入射する。立ち上げプリズム45で光ディスク7に対してほぼ直角な方向に立ち上げられたレーザ光は対物レンズ46に入射し、光ディスク7で集光するように対物レンズ46で変換される。
光ディスク7で反射されたDVD用の波長λ1のレーザ光及びCD用の波長λ2のレーザ光は対物レンズ46でほぼ平行光に変換されて立ち上げプリズム45に入射する。立ち上げプリズム45で光ディスク7の面にほぼ平行な向きに変えられてレーザ光は1/4波長板44に入射する。レーザ光は1/4波長板44で円偏光からS偏光に変換されてコリメートレンズ43に入射する。コリメートレンズ43でレーザ光は集束光に変換されて反射鏡42に入射する。S偏光であるレーザ光は反射鏡42の偏光分離膜でほぼ全反射されてプリズム2に入射する。
ビームスプリッタ5の偏光分離膜はS偏光のレーザ光を反射するように構成されており、S偏光であるレーザ光はほぼ全反射されて非点収差生成素子6に入射する。非点収差生成素子6で非点収差を与えられて反射されたレーザ光は受光器48の光検出部48aに入射する。光検出部48aは受光したレーザ光を光量に応じてフォーカス制御用の信号及びトラッキング制御用の信号に変換する。
光ピックアップ装置40において、ビームスプリッタ5で分離されプリズム2の非点収差生成素子6で光軸を含んで直交する2つの断面で焦点距離を異ならせたレーザ光が生成される。一方の断面では焦点は受光器48の前側、他方の断面では焦点は受光器48の後側にある。さらにレーザ光は実質受光器8と同じ働きをする受光器48の光検出部48aで受光される。そのため、フォーカス制御用の信号に必要な受光器48上のレーザ光スポットは、実施の形態1で説明した場合と同じく良好な形状である。そのため、良好なフォーカス制御用の信号が得られる。また、非点収差生成素子6を薄くすることができ、プリズム2と受光器48との距離を小さくできる。
また、光ピックアップ装置40において、トラッキング制御用の信号は、回折素子41で分離されて光ディスク7で反射されたレーザ光が受光器48上の光検出部48aで受光されることで得られる。
なお、本実施の形態3において、ビームスプリッタ5はレーザ光源1から出射されたレーザ光をそのまま光ディスク7に向けて透過するようにした。しかし、レーザ光源1から出射されたレーザ光の一部を反射するようにして、前光モニタ47をプリズム2の受光器48とは逆側の側面部に配置しても構わない。その際、反射鏡42の偏光分離膜は全反射膜とする。
以上のように、本実施の形態3において、非点収差生成素子6をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子6を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さdを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子6を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器48上におけるスポット18は良好な形状とすることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態4について図面を参照しながら説明する。図13は本実施の形態4の光ピックアップモジュールの構成図、図14は本実施の形態4の光ディスク装置の構成図である。
図13において、光ディスク7を回転駆動する回転駆動部及び光ピックアップ装置40を回転駆動部に対して近づけたり離したりする移動部を備える光ディスク装置70の駆動機構を光ピックアップモジュール60という。ベース61は光ピックアップモジュール60の骨組みを成すもので、光ピックアップモジュール60はベース61に直接または間接に各構成部品が配置されて構成される。
回転駆動部は光ディスク7を載置するターンテーブル62aを有するスピンドルモータ62を備えている。スピンドルモータ62はベース61に固定される。スピンドルモータ62は光ディスク7を回転させる回転駆動力を生成する。
移動部はフィードモータ63、スクリューシャフト64、ガイド軸65、66を備えている。フィードモータ63はベース61に固定される。フィードモータ63は光ピックアップ装置40が光ディスク7の内周と外周の間を移動するために必要な回転駆動力を生成する。フィードモータ63としてステッピングモータ、DCモータなどが使用される。スクリューシャフト64はらせん状に溝が掘られており、直接または数段のギアを介してフィードモータ63に接続される。本実施の形態4ではギアを介してフィードモータ63と接続される。ガイド軸65、66はそれぞれ両端で保持部材を介してベース61に固定される。ガイド軸65、66は光ピックアップ装置40を移動自在に支持する。光ピックアップ装置40はスクリューシャフト64の溝と噛み合うガイド歯を有するラック67を備える。ラック67がスクリューシャフト64に伝達されたフィードモータ63の回転駆動力を直線駆動力に変換するために光ピックアップ装置40は光ディスク7の内周と外周の間を移動することができる。
なお、回転駆動部は光ディスク7を所定の回転数で回転させることができる構成であれば、本実施の形態4で説明した構成に限るものではない。また移動部は光ピックアップ装置40を光ディスク7の内周と外周の間の所定の位置に移動させることができる構成であれば、本実施の形態4で説明した構成に限るものではない。
光ピックアップ装置40は図10の構成にカバー53を取り付けたものである。光ピックアップ装置40において、非点収差生成素子6をビームスプリッタ5と受光器48との間に配置した。非点収差生成素子6はレーザ光の光軸を含んで直交する2つの断面の一方における焦点位置を受光器48の前側とし、他方における焦点位置を受光器48の後側として、フォーカス制御に用いられる波長λ1及び波長λ2のレーザ光を生成する。非点収差生成素子6はフレネルレンズ状の光学素子であり、その段差深さdは波長λ1または波長λ2の何れか一方のほぼ自然数倍である。そのため、非点収差生成素子6を薄くすることができ、光ピックアップ装置40は小型である。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに段差深さdをその波長のほぼ自然数倍とした方のレーザ光の受光器48上のスポット形状を良好にすることができる。そのため、光ピックアップ装置40は小型で良好なフォーカス制御を実現できる。光ピックアップ装置40の対物レンズ46から出射されるレーザ光が光ディスク7に対し直角に入射するように、保持部材を構成する調整機構でガイド軸65、66の傾きを調整する。
FPC68は光ピックアップ装置40と光ディスク装置70の本体とを電気的に接続する。FPC68は光ディスク装置70の本体側から光ピックアップ装置40に対し、電力を供給し、電気信号を送るための導電線であるとともに、光ピックアップ装置40から光ディスク装置70の本体側へ電気信号を送るための導電線でもある。
カバー69は開口を有し、光ピックアップ装置40の対物レンズ46及びスピンドルモータ62のターンテーブル62aを露出させる。さらに本実施の形態4の場合、フィードモータ63、ガイド軸66の部分も露出させて、カバー69の厚さの分だけ光ピックアップモジュール60の厚さが薄くなるようにしている。
図14において、筐体71は上部筐体71aと下部筐体71bを組み合わせてネジなどを用いて互いに固定して構成されている。トレイ72は筐体71に出没自在に設けられている。トレイ72は光ピックアップモジュール60を下面側から配置する。トレイ72は開口を有し、対物レンズ46及びスピンドルモータ62のターンテーブル62a、カバー69の少なくとも一部を露出させる。ベゼル73はトレイ72の前端面に設けられて、トレイ72が筐体71内に収納された時にトレイ72の出没口を塞ぐように構成されている。ベゼル73にはイジェクトスイッチ74が設けられ、イジェクトスイッチ74を押すことで、筐体71とトレイ72との係合が解除され、トレイ72は筐体71に対し出没が可能な状態となる。レール75はそれぞれトレイ72の両側部及び筐体71の双方に摺動自在に取り付けられる。筐体71内部やトレイ72内部には図示していない回路基板があり、信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。外部コネクタ76はコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、外部コネクタ76を介して光ディスク装置70内に電力を供給したり、あるいは外部からの電気信号を光ディスク装置70内に導いたり、あるいは光ディスク装置70で生成された電気信号を電子機器などに送出する。
光ピックアップ装置40のフォーカス制御とトラッキング制御の流れを説明する。図15は本実施の形態4の光ピックアップ装置の制御の流れを示す図である。レーザ光源1から出射されたDVD用の波長λ1のレーザ光及びCD用の波長λ2のレーザ光は、回折素子41でそれぞれトラッキング制御に用いられる光に分離され、光ディスク7に入射する。光ディスク7で反射されたレーザ光はプリズム2のビームスプリッタ5で分離され、非点収差生成素子6で光軸を含んで直交する2つの断面で焦点距離が異なる光とされて受光器48に入射する。受光器48に入射したレーザ光はDVD用フォーカス制御用、CD用フォーカス制御用、DVD用トラッキング制御用、CD用トラッキング制御用の電気信号に変換され、光ディスク装置70本体の前記図示していない回路基板にあるアナログ信号処理部70aに送られる。
アナログ信号処理部70aは入力された信号に演算・帯域処理を行い、サーボ処理部70bに出力する。サーボ処理部70bはアナログ信号処理部70aからの信号を基にフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを生成してモータ駆動部70cに出力する。モータ駆動部70cは入力されたフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを基に対物レンズ46を搭載する対物レンズ駆動装置51を駆動する電流を生成する。これにより光ディスク7に集光した光束の焦点のずれ及びトラックに対するずれが極小になるように制御される。
また、コントローラ70dにはアナログ信号処理部70a、サーボ処理部70b、モータ駆動部70cの各部から送られる信号が入力される。コントローラ70dはこれらの信号の演算処理等を行い、この演算処理の結果(信号)を各部に送出し、各部にて駆動、処理を実行させることで各部の制御を行う。
以上のように、本実施の形態4の光ディスク装置70は実施の形態3の光ピックアップ装置40を備えている。そのため、小型で良好なフォーカス制御を実現できる光ディスク装置70とすることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態5について図面を参照しながら説明する。図16は本実施の形態5のプリズムの構成と非点収差生成素子の拡大構成図、図17は本実施の形態5の別の例のプリズムの構成と非点収差生成素子の拡大構成図である。本実施の形態5におけるレーザ光源、光ディスク、受光器は実施の形態1と同じであるので、その説明を援用するとともに符号もそのまま使用する。
図16において、プリズム81は、非点収差生成素子83を内部に形成している。また、プリズム81のビームスプリッタ5はプリズム2のビームスプリッタ5と同じものであり、その説明を援用する。非点収差生成素子83は、フレネルレンズ状の反射鏡であり、その段差深さdは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍である。第1ブロック84と第2ブロック85とがプリズム81の斜面82で貼り合わされる。第1ブロック84及び第2ブロック85は、BK7等の光学ガラス等で構成され、第1ブロック84を光ディスク7で反射された波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光が透過する。第1樹脂87はリソグラフィ用の感光性樹脂であり、フォトレジスト、感光性ポリイミド等である。第1樹脂87が非点収差生成素子83のフレネルレンズ状の反射面形状を生成する。反射膜86は金属膜や誘電体多層膜であり、第1樹脂87の表面形状に沿って配置される。さらに、反射膜86表面に吸収膜(図示せず)が形成される。吸収膜は誘電体多層膜である。第2樹脂88は、第1ブロック84と第2ブロック85とを貼り合わせる接着剤であり、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気性接着剤等が用いられる。
非点収差生成素子83の作製方法は以下の通りである。あらかじめ、所定形状に露光できるグレースケールのマスクを用意しておく。まず、第1樹脂87を板状の第1ブロック84の表面に塗布し硬化する。次に、輪帯、段差の所定の凹凸パターンを形成することができるグレースケールのマスクを介して紫外線照射・露光して現像することにより、所定形状の凹凸パターンを第1樹脂87に残す。この所定形状の凹凸パターンがフレネルレンズ状の反射面形状となる。非点収差生成素子6の場合は、さらにエッチングをして、第1ブロック84の表面に所定形状の凹凸パターンを形成するが、非点収差生成素子83の場合は、このようなエッチングは行わない。
次に、第1ブロック84上の第1樹脂87で生成された所定形状の凹凸パターンの表面に反射膜86を形成する。さらに、その表面に吸収膜を形成する。最後に、第1ブロック84と第2ブロック85とを第2樹脂88で接着する。その後、プリズム2と同様の工程を経てプリズム81が作製される。
このように、第1樹脂87にリソグラフィ用の感光性樹脂を用いることで、マスクを介して露光、現像するリソグラフィ技術を用いることができる。そのため、非常に精度が良い反射面形状とすることができる。さらにグレースケールのマスクを介して露光、現像して残った第1樹脂87の表面形状を直接非点収差生成素子83の反射面形状とすることで、非点収差生成素子83のフレネルレンズ状の反射面形状をプリズム81内部の密閉された第1樹脂87で生成した。そのため、さらに第1樹脂87とともに第1ブロック84をエッチングして第1ブロック84に形成した反射面形状よりも、グレースケールのマスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。また、エッチングをして第1ブロック84に反射面形状を形成する工程を省くことになるため、非点収差生成素子83を安価に作製することができる。また、グレースケールのマスクは、露光に用いる波長の光に対する透過率が輪帯に相当する部分については場所によって連続的に変化しているマスクである。そのため、複数回の露光を繰り返さなくてもほぼ連続した輪帯の形状を得ることができる。また、露光を1回で済ますことができるので、設計した形状に非常に近い形状のフレネルレンズ状の光学素子の表面形状を得ることができる。
また、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光は、第1ブロック84、リソグラフィ用の感光性樹脂である第1樹脂87を通過し、反射膜86で反射して、再び第1樹脂87、第1ブロック84を通過する。第1樹脂87を介すると、第1ブロック84と第1樹脂87とのわずかな屈折率の違いやごく微小な気泡の影響により、レーザ光の品質に好ましくない影響を及ぼす可能性がある。そのため、第1ブロック84と第1樹脂87の屈折率を波長λ1及び波長λ2においてほぼ等しくして、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光が第1ブロック84と第1樹脂87との境界で反射することなく、ほぼ全光量が透過するようにする。したがって、受光器8に入射する第1ブロック84と第1樹脂87との境界で反射した光はほとんどないので、良好な記録や再生の特性が得られる。また、第1樹脂87がごく微小な気泡を含有しないように第1樹脂87の脱気を十分に行うことが望ましい。
また、非点収差生成素子81のフレネルレンズ状の反射面形状の段差深さdは、数μm以下であり、実際には1μm以下である場合が多い。そのため、他のものと接触しただけで変形し形状がつぶれてしまう。たとえば、第1ブロック84と第2ブロック85とを接着する際に強く押しつけ過ぎて反射面が第2ブロック85に接触してしまうと、それが変形の原因になってしまう。特に第1樹脂87はガラスよりも軟らかいために顕著である。したがって、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域87aの感光性樹脂の表面を周辺の領域87bの表面よりも高さhだけ低くすることで、そのような接触を抑制することができる。そのため、第1樹脂87で生成された反射面形状が、つぶれることなくそのまま非点収差生成素子81の反射面形状となる。
また、リソグラフィ用の感光性樹脂は必ずしも水分に対して強くはない。たとえば、水分が浸入すると光学特性が変化して屈折率が変化したり、第1ブロック84や第2ブロック85との密着性が弱まって剥離しやすくなったりして、信頼性が低下する。本実施の形態5において、図16に示すように、リソグラフィ用の感光性樹脂である第1樹脂87をプリズム81の外部に対して露出しないように配置して、さらに反射膜86で第1樹脂87を覆うようにした。したがって、外部から第1樹脂87に直接水分が浸入することを防ぐことができる。特に反射膜86は水分を遮断することができるので、第1樹脂87をさらに反射膜86で覆うことによって第1樹脂87に対する水分の浸入をより防ぐことができる。そのため第1樹脂87の高い信頼性を維持することができる。
図17において、プリズム91はプリズム83と同様に非点収差生成素子93を内部に形成している。また、プリズム91のビームスプリッタ5はプリズム2のビームスプリッタ5と同じものであり、その説明を援用する。非点収差生成素子93は、フレネルレンズ状の反射鏡であり、その段差深さdは波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍である。第1ブロック94と第2ブロック95とがプリズム91の斜面92で貼り合わされる。第1ブロック94及び第2ブロック95は、BK7等の光学ガラス等で構成され、第1ブロック94を光ディスク7で反射された波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光が透過する。第2樹脂98はリソグラフィ用の感光性樹脂であり、フォトレジスト、感光性ポリイミド等である。第2樹脂98が非点収差生成素子93のフレネルレンズ状の反射面形状を生成する。第2樹脂98の表面に吸収膜(図示せず)が形成される。吸収膜は誘電体多層膜である。さらに、反射膜96が第2樹脂98の表面形状に沿って吸収膜の表面に配置される。反射膜96は金属膜や誘電体多層膜である。第1樹脂97は、第1ブロック94と第2ブロック95とを貼り合わせる接着剤であり、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気性接着剤等が用いられる。
非点収差生成素子93の作製方法は非点収差生成素子83の作製方法と同様であり、以下の通りである。まず、第2樹脂98を板状の第2ブロック95の表面に塗布し硬化する。次に、輪帯、段差の所定の凹凸パターンを形成することができるグレースケールのマスクを介して紫外線照射・露光して現像することにより、所定形状の凹凸パターンを第2樹脂98に残す。この所定形状の凹凸パターンがフレネルレンズ状の反射面形状となる。次に、第2ブロック95上の第2樹脂98で生成された所定形状の凹凸パターンの表面に吸収膜を形成する。さらに、その表面に反射膜96を形成する。最後に、第1ブロック94と第2ブロック95とを第1樹脂97で接着する。その後、プリズム2と同様の工程を経てプリズム91が作製される。
このように、第2樹脂98にリソグラフィ用の感光性樹脂を用いることで、マスクを介して露光、現像するリソグラフィ技術を用いることができる。そのため、非常に精度が良い反射面形状とすることができる。さらにグレースケールのマスクを介して露光、現像して残った第2樹脂98の表面形状を直接非点収差生成素子93の反射面形状とすることで、非点収差生成素子93のフレネルレンズ状の反射面形状をプリズム91内部の密閉された第2樹脂98で生成した。そのため、さらに第2樹脂98とともに第2ブロック95をエッチングして第2ブロック95に形成した反射面形状よりも、グレースケールのマスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。また、エッチングをして第2ブロック95に反射面形状を形成する工程を省くことになるため、非点収差生成素子93を安価に作製することができる。また、グレースケールのマスクは、露光に用いる波長の光に対する透過率が輪帯に相当する部分については場所によって連続的に変化しているマスクである。そのため、複数回の露光を繰り返さなくてもほぼ連続した輪帯の形状を得ることができる。また、露光を1回で済ますことができるので、設計した形状に非常に近い形状のフレネルレンズ状の光学素子の表面形状を得ることができる。
また、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光は、第1ブロック94、接着剤である第1樹脂97を通過し、反射膜86で反射して、再び第1樹脂97、第1ブロック94を通過する。ここで、第1ブロック94と第1樹脂97の屈折率を波長λ1及び波長λ2においてほぼ等しくすることで、波長λ1のレーザ光及び波長λ2のレーザ光は第1ブロック94と第1樹脂97との境界で反射することなく、ほぼ全光量が透過する。したがって、受光器8に入射する第1ブロック94と第1樹脂97との境界で反射した光はほとんどないので、良好な記録や再生の特性が得られる。また、第1樹脂97がごく微小な気泡を含有しないように第1樹脂97の脱気を十分に行うことが望ましい。また、第1樹脂97を塗布する際に、反射膜96と第1樹脂97との間に微小な気泡を含有しないようにすることが望ましい。
また、非点収差生成素子93のフレネルレンズ状の反射面形状は、非点収差生成素子81の反射面形状と同様に、他のものと接触しただけで変形し形状がつぶれてしまう。たとえば、第1ブロック94と第2ブロック95とを接着する際に強く押しつけ過ぎて反射面が第1ブロック94に接触してしまうと、それが変形の原因になってしまう。特に第2樹脂98はガラスよりも軟らかいために顕著である。したがって、波長λ1及び波長λ2のレーザ光を反射させる領域に対応する領域98aの感光性樹脂の表面を周辺の領域98bの表面よりも高さhだけ低くすることで、そのような接触を抑制することができる。そのため、第2樹脂98で生成された反射面形状が、つぶれることなくそのまま非点収差生成素子93の反射面形状となる。
また、図17に示すように、リソグラフィ用の感光性樹脂である第2樹脂98をプリズム91の外部に対して露出しないように配置して、さらに反射膜96で第2樹脂98を覆うようにした。したがって、外部から第2樹脂98に直接水分が浸入することを防ぐことができる。特に反射膜96は水分を遮断することができるので、第2樹脂98をさらに反射膜96で覆うことによって第2樹脂98に対する水分の浸入をより防ぐことができる。そのため第2樹脂98の高い信頼性を維持することができる。
以上のように、本実施の形態5の光ピックアップ装置は、非点収差生成素子83、93をフレネルレンズ状とすることで、非点収差生成素子83、93を薄くすることができ、光ピックアップ装置を小型化することができる。また、小型になってもフォーカス制御用の信号の感度を十分に確保することができる。さらに、その段差深さを波長λ1または波長λ2のいずれか一方のほぼ自然数倍とすることで、非点収差生成素子83、93を通過した自然数倍とした方のレーザ光の受光器8上におけるスポットは良好な形状とすることができる。そして、非点収差生成素子83、93のフレネルレンズ状の反射面形状をプリズム81、91内部の密閉された樹脂で生成するということは、マスクを介して露光、現像して残った樹脂の表面形状を直接非点収差生成素子83、93の反射面形状とするということである。そのため、さらに樹脂とともにブロックをエッチングしてブロックに形成した反射面形状よりも、マスクの形状に1ステップ近い分だけ、精度が良い反射面形状が得られる。また、エッチングをしてブロックに反射面形状を形成する工程を省くことになるため、非点収差生成素子83、93を安価に作製することができる。