本発明の請求項1の発明は、所定の波長域における波長λの光に対して第1屈折率を持つ第1部材と、波長λの光に対して第2屈折率を持ち第1部材と縞状に交互に配列される第2部材と、を備え、波長λの光に対する第1屈折率と波長λの光に対する第2屈折率との屈折率差をΔn(λ)とし、所定の波長域においてΔn(λ)/λの値はほぼ一定である回折格子である。
一般に波長λにおいて屈折率差Δn(λ)を有する2種類の部材で構成される格子深さdの回折格子において、波長λの光の位相差φはφ=Δn(λ)×d/λの関係式が成り立つ。回折格子による分光比は位相差φによって決まる。格子深さdは回折格子内では一般的に一様で変化しにくいため、位相差φはΔn(λ)/λによって決まり、分光比もΔn(λ)/λによって決まる。したがって、所定の波長域においてΔn(λ)/λの値がほぼ一定であるようにすることで分光比をほぼ一定にすることができる。そのため使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比が安定している。また、回折の±1次光までを考慮すると、0次光と±1次光とで0次光を中心にほぼ直線状に並ぶ3つのスポットを形成する3本の光束に入射した光を分離することができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、所定の波長域における最長波長に対するΔn(λ)/λの値と所定の波長域における最短波長に対する前記Δn(λ)/λの値との比が0.9以上1.11以下である回折格子である。
最長波長に対するΔn(λ)/λの値と最短波長に対するΔn(λ)/λの値との比が0.9以上1.11以下という範囲は分光比の変化が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲である。したがって、使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比は安定しているといえる。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、第1部材は、所定の波長域における最長波長λ0+Δλ0に対する第1屈折率n1(λ0+Δλ0)及び所定の波長域における最短波長λ0−Δλ0に対する第1屈折率n1(λ0−Δλ0)を持ち、第2部材は、所定の波長域における最長波長λ0+Δλ0に対する第2屈折率n2(λ0+Δλ0)及び所定の波長域における最短波長λ0−Δλ0に対する第2屈折率n2(λ0−Δλ0)を持ち、|n1(λ0+Δλ0)−n2(λ0+Δλ0)|/(λ0+Δλ0)=K×|n1(λ0−Δλ0)−n2(λ0−Δλ0)|/(λ0−Δλ0)、但し、0.90≦K≦1.11なる関係を有する回折格子である。
Kの範囲は分光比の変化が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲で設定してある。したがって、使用される波長が所定の波長域の中で波長λ0±Δλ0の範囲内でばらついても分光比は安定しているといえる。
請求項4の発明は、請求項1の発明において、所定の波長域におけるΔn(λ)/λの最小値とΔn(λ)/λの最大値との比が0.9以上である回折格子である。
Δn(λ)/λの最小値とΔn(λ)/λの最大値との比は所定の波長域の範囲内での分光比の最大のばらつきに相当する。その値が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲で設定されている。したがって、使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比は安定しているといえる。
請求項5の発明は、請求項1の発明において、第1部材は、所定の波長域における波長λの光に対する第1屈折率n1(λ)を持ち、第2部材は、所定の波長域における波長λの光に対する第2屈折率n2(λ)を持ち、|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値との比が0.90以上である回折格子である。
|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値との比は使用される波長の範囲内での分光比の最大のばらつきに相当する。その値が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲で設定されている。したがって、使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比は安定しているといえる。
請求項6の発明は、請求項1の発明において、所定の波長域以外の第2の波長域における波長λに対してΔn(λ)がほぼ0である回折格子である。
Δn(λ)がほぼ0であるので、回折格子は第2の波長域においては回折格子としては働かない。そのため、所定の波長域では回折格子として働き、第2の波長域では回折格子として働かない波長選択回折格子を得ることができる。
請求項7の発明は、請求項6の発明において、所定の波長域では入射した光を回折して透過させ、また、第2の波長域では入射した光を非回折で透過させる回折格子である。
波長選択回折格子とすることができる。
請求項8の発明は、請求項1の発明において、第1部材または第2部材の少なくとも一方は、所定の波長域以外の所定の域外波長域に光吸収を持つ回折格子である。
所定の波長域以外の所定波長外波長域に光吸収を持つ第1部材または第2部材は、異常分散現象を引き起こして、波長に対して屈折率を大きく変化させることができる。そのため、第1部材と第2部材との屈折率差を制御できる。
請求項9の発明は、請求項8の発明において、所定の波長域では入射した光を回折して透過させ、また、所定の域外波長域では入射した光を非透過で遮断させる回折格子である。
所定の域外波長域では、光吸収があるために仮に光が入射しても吸収されてしまうために非透過で遮断されてしまうが、異常分散現象を引き起こすことができるため、所定の波長域で回折格子として用いることができる。
請求項10の発明は、請求項8の発明において、所定の域外波長域に光吸収を持つ第1部材または前記第2部材は、所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物を含有する回折格子である。
所定の波長域以外の所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物を含有する第1部材または第2部材は、異常分散現象を引き起こして、波長に対して屈折率を大きく変化させることができる。そのため、第1部材と第2部材との屈折率差を制御できる。
請求項11の発明は、請求項6の発明において、第1部材または第2部材の少なくとも一方は、所定の波長域及び第2の波長域の短波長側の所定の域外波長域または所定の波長域及び第2の波長域の長波長側の所定の域外波長域のいずれか一方に光吸収を持つ回折格子である。
所定の波長域及び第2の波長域以外の所定波長外波長域に光吸収を持つ第1部材または第2部材は、異常分散現象を引き起こして、波長に対して屈折率を大きく変化させることができる。波長に対する屈折率の変化は所定の域外波長域に近いほど大きく、第1部材の第1屈折率と第2部材の第2屈折率との差の変化も大きい。所定の波長域と第2の波長域のいずれか一方は所定の域外波長域により近く、他方は所定の域外波長域により遠いようにすることができる。したがって波長選択回折格子の設計がしやすい。
請求項12の発明は、請求項11の発明において、所定の波長域では入射した光を回折して透過させ、第2の波長域では入射した光を非回折で透過させ、また、所定の域外波長域では入射した光を非透過で遮断させる回折格子である。
所定の域外波長域では、光吸収があるために仮に光が入射しても吸収されてしまうために非透過で遮断されてしまう。しかし、異常分散現象を引き起こすことができるため、所定の波長域で回折格子として用いることができるとともに第2の波長域では回折格子として働かないため、波長選択回折格子とすることができる。
請求項13の発明は、請求項11の発明において、所定の域外波長域に光吸収を持つ第1部材または第2部材は、所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物を含有する回折格子である。
所定の波長域及び第2の波長域以外の所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物を含有する第1部材または第2部材は、異常分散現象を引き起こして、波長に対して屈折率を大きく変化させることができる。そのため、第1部材と第2部材との屈折率差を制御できる。
請求項14の発明は、請求項10または請求項13の発明において、第1部材と第2部材とは一体であり、略等量の有機物を含有し、第1部材または第2部材のいずれか一方が含有する有機物は光吸収を少なくとも一部失った回折格子である。
有機物が光吸収を少なくとも一部失うようにするには、マスクパターンを介して有機物が分解する光を照射すれば良い。光吸収を少なくとも一部失った有機物を含有する第1部材または第2部材のいずれか一方は異常分散現象を引き起こさないが、光吸収を失っていない有機物を含有する他方の部材は異常分散現象を引き起こして、波長に対して屈折率を大きく変化させることができる。そのため、第1部材と第2部材の波長に対する屈折率差を制御でき、回折格子を作製するのに凹凸を形成する必要がない。そのため作製の工程を簡単にすることができる。また、平坦化をしなくても回折格子の表面を平坦にすることができる。
請求項15の発明は、請求項1の発明において、第1部材と第2部材とが縞状に交互に配列されるピッチは3μm以上10μm以下である回折格子である。
光ディスク上のスポットが適正な間隔で並ぶため、トラッキング制御が安定して行える。
請求項16の発明は、請求項1の発明において、回折格子の深さは1μm以上11μm以下である回折格子である。
使用できるレベルの回折格子のパターン形状が得られるとともに、トラッキング制御に用いることができる分光比とすることができる。
請求項17の発明は、請求項1の発明において、第1部材の屈折率の温度変化と第2部材の屈折率の温度変化は回折格子の使用温度範囲内でほぼ等しい回折格子である。
第1部材や第2部材の屈折率は温度が上昇するとわずかに減少する傾向がある。したがって、回折格子の使用温度範囲内で第1部材の屈折率の温度変化と第2部材の屈折率の温度変化とがほぼ等しければ、第1部材と第2部材の屈折率差はほぼ一定である。そのため、安定した分光比を得ることができる。
請求項18の発明は、請求項17の発明において、第1部材及び第2部材はガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内には存在しない回折格子である。
第1部材や第2部材の屈折率は温度が上昇するとわずかに減少する傾向は、ガラス転移温度近傍を境に減少する割合が増大する。したがって、ガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内にあると第1部材と第2部材の屈折率差が変化してしまう。したがって、ガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内に少なくとも存在しないようにすることで、屈折率の温度変化の傾向の変化点を使用温度範囲内になくすことができる。そのため、安定した分光比を得ることができる。
請求項19の発明は、請求項1の発明において、第1部材及び第2部材はガラス転移温度が回折格子の最高使用温度よりも高い回折格子である。
一般に材料はガラス転移温度以下の温度では挙動が安定している。したがって、ガラス転移温度が最高使用温度よりも高いと回折格子の使用温度範囲内では分光比以外の挙動も安定した回折格子を得ることができる。
請求項20の発明は、請求項10または請求項13の発明において、有機物を含有させる第1部材のベース材料または有機物を非含有の第1部材の屈折率の温度変化と有機物を含有させる第2部材のベース材料または有機物を非含有の第2部材の屈折率の温度変化は回折格子の使用温度範囲内でほぼ等しい回折格子である。
有機物を非含有の材料の屈折率の温度変化と有機物を含有する材料の屈折率の温度変化とは同様の傾向を示す。したがって、有機物を非含有の状態での第1部材の屈折率の温度変化と有機物を非含有の状態での第2部材の屈折率の温度変化とをほぼ等しくしても第1部材と第2部材の屈折率差をほぼ一定にすることができる。そのため、安定した分光比を得ることができる。さらに有機物を非含有の状態で材料の特性管理をすることができるので管理が容易である。
請求項21の発明は、請求項20の発明において、有機物を含有させる第1部材のベース材料または有機物を非含有の第1部材並びに有機物を含有させる第2部材のベース材料または有機物を非含有の第2部材は、ガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内には少なくとも存在しない回折格子である。
有機物を非含有の材料の屈折率は温度が上昇するとわずかに減少する傾向は、ガラス転移温度近傍を境に減少する割合が増大する。その傾向は有機物を含有する材料も同様の傾向を示す。したがって、有機物を非含有の材料のガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内にあると第1部材と第2部材の屈折率差が変化してしまう。したがって、ガラス転移温度が回折格子の使用温度範囲内に少なくとも存在しないようにすることで、屈折率の温度変化の傾向の変化点を使用温度範囲内になくすことができる。そのため、安定した分光比を得ることができる。
請求項22の発明は、請求項21の発明において、有機物を含有させる第1部材のベース材料または有機物を非含有の第1部材並びに有機物を含有させる第2部材のベース材料または有機物を非含有の第2部材は、ガラス転移温度が回折格子の最高使用温度よりも高い回折格子である。
一般に材料はガラス転移温度以下の温度では挙動が安定している。したがって、ガラス転移温度が最高使用温度よりも高いと回折格子の使用温度範囲内では分光比以外の挙動も安定した回折格子を得ることができる。
請求項23の発明は、所定の波長域のレーザ光を出射するレーザ光源と、請求項1の発明の回折格子と、を備えた光ピックアップ装置である。
所定の波長域の範囲で安定した分光比のレーザ光を出射する光ピックアップ装置を得ることができる。
請求項24の発明は、請求項23の発明において、所定の波長域のレーザ光は、CDに対する情報の記録またはCDの情報の再生の少なくとも一方を行うレーザ光である光ピックアップ装置である。
CD用のレーザ光について安定した分光比が得られる。そのため、CDに対する情報の記録やCDの情報の再生が安定して行える。
請求項25の発明は、所定の波長域のレーザ光及び第2の波長域のレーザ光を出射するレーザ光源と、請求項6の発明の回折格子と、を備えた光ピックアップ装置である。
2波長のレーザ光を出射することができるレーザ光源をレーザ光源として使い、第2の波長域のレーザ光に対しては回折格子として働かず、所定の波長域のレーザ光に対してのみ回折格子として働かせることができる。
請求項26の発明は、請求項25の発明において、所定の波長域のレーザ光は、CDに対する情報の記録またはCDの情報の再生の少なくとも一方を行うレーザ光であり、第2の波長域のレーザ光はDVDに対する情報の記録またはDVDの情報の再生の少なくとも一方を行うレーザ光である光ピックアップ装置である。
2波長のレーザ光はDVD用とCD用のレーザ光であるレーザ光源とし、DVD用のレーザ光に対しては回折格子として働かず、CD用のレーザ光源に対してのみ回折格子として働かせることができる。
請求項27の発明は、請求項23または請求項25の発明の光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置である。
光ピックアップ装置から出射される回折格子を通ったレーザ光は、所定の波長域の範囲で分光比が安定しているので、所定の波長域を使用する光ディスクに対する情報の記録や光ディスクの情報の再生を安定して行うことができる。さらに第2の波長域のレーザ光を出射する場合には、第2の波長域で分光しないので、第2の波長域を使用する光ディスクに対する情報の記録や光ディスクの情報の再生を安定して行うことができる。
請求項28の発明は、波長λ0+Δλ0の光に対して屈折率n1(λ0+Δλ0)、波長λ0−Δλ0の光に対して屈折率n1(λ0−Δλ0)である第1部材と、波長λ0+Δλ0の光に対して屈折率n2(λ0+Δλ0)、波長λ0−Δλ0の光に対して屈折率n2(λ0−Δλ0)である第2部材と、を備え、|n1(λ0+Δλ0)−n2(λ0+Δλ0)|/(λ0+Δλ0)=K×|n1(λ0−Δλ0)−n2(λ0−Δλ0)|/(λ0−Δλ0)、但し、0.90≦K≦1.11なる関係式で表される回折格子である。
Kの範囲は分光比の変化が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲で設定してある。したがって、使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比は安定しているといえる。
請求項29の発明は、波長λ0−Δλ0から波長λ0+Δλ0までの所定の波長λにおいて、波長λの光に対して屈折率n1(λ)である第1部材と、波長λの光に対して屈折率n2(λ)である第2部材と、を備え、|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値の比が0.90以上である回折格子である。
|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値との比は使用される波長の範囲内での分光比の最大のばらつきに相当する。その値が光ピックアップ装置のトラッキング制御に影響を及ぼさない範囲で設定されている。したがって、使用される波長が所定の波長域の中でばらついても分光比は安定しているといえる。
(実施の形態1)
本実施の形態1について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態1の回折格子の構成について説明する。図1は本実施の形態1の回折格子を備えた回折素子の構成図、図2は有機物の有無による波長と光吸収率、屈折率の関係を示す図である。本実施の形態1において、回折素子1は回折格子2を透明基板3と透明保護板7で挟み込む構成であり、回折格子2は縞状に交互に配列される第2部材6と有機物5を含有する第1部材4とを備える。回折格子2は所定の波長域で回折格子として働き、第2の波長域で回折格子として働かず、単に光を透過させるだけの働きをする波長選択回折格子とした。
透明基板3は光学ガラス、光学プラスチック等の基板である。本発明において透明とは回折素子1を使用する所定の全ての波長の光がほぼ透過するという意味である。透明基板3は通常表面、裏面とも平坦になるように磨かれる。透明基板3は円柱や直方体の形状であるが、設計により楕円柱、角丸四角柱、C面取りやR面取りした形状等のその他の形状としても良い。
透明基板3の表面に回折格子2が形成される。第1部材4は所定の波長域及び第2の波長域以外の所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物5を含有する樹脂である。第1部材4によって形成された凸部と透明基板3の表面である凹部からなる凹凸の高さが回折格子2の格子深さdとなる。第1部材4のベース材料にはEpo−Tek310、320、330等のエポキシ系の熱硬化型接着剤、OG114等のアクリル系紫外線硬化型接着剤、PIMEL7640、7621等の感光性ポリイミド、AZ6130、AZ4620等のレジスト等が使われる。
有機物5は所定の域外波長域に光吸収を持つ。このうち、可視光領域に光吸収を持ち、分子レベルで第1部材4のベース材料に溶解するものを染料、可視光領域に光吸収を持ち、粒子状態で第1部材4内に分散しているものを顔料という。有機物5には可視光領域以外に光吸収を持つものも含む。図2に示すように所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物5を含有していると、第1部材4の屈折率は非含有の場合に対して異なる値を示し、その度合いは所定の域外波長域に近いほど大きい。この現象を異常分散現象という。
第2部材6は有機物5を含まない樹脂であり、第1部材4によって形成された凸部と透明基板3の表面である凹部からなる凹凸を充填するものである。第2部材6にはEpo−Tek310、320、330等のエポキシ系の熱硬化型接着剤、OG114等のアクリル系紫外線硬化型接着剤、PIMEL7640、7621等の感光性ポリイミド、AZ6130、AZ4620等のレジスト等が使われる。
透明保護板7は光学ガラスや光学プラスチック等の基板であり、第1部材4及び第2部材6を保護するだけでなく、第1部材4と第2部材6を合わせた部材の厚さを一定にする役割も担う。回折格子2は透明基板3側も透明保護板7側も表面が平坦であり、その厚さである第1部材4と第2部材6を合わせた厚さは一定である。
次に、回折格子2の分光比と使用する波長と屈折率の関係について説明する。図3は本実施の形態1の回折格子の波長と屈折率の関係を示す図、図4(a)は回折格子として働く波長選択回折格子の働きを示す図、図4(b)は回折格子として働かない波長選択回折格子の働きを示す図である。波長λの光に対して第1屈折率n1(λ)を持つ第1部材4と波長λの光に対して第2屈折率n2(λ)を持つ第2部材6において、第1屈折率n1(λ)と第2屈折率n2(λ)との差の絶対値を屈折率差Δn(λ)とする。一般に屈折率差Δn(λ)を有する2種類の部材で構成される格子深さdの回折格子において、波長λの光の位相差φはφ=Δn(λ)×d/λの関係式が成り立つ。分光比は位相差φによって決まる。理論的にはφ=0、1、2、3・・・の場合は、透過率100%(回折0%)となる。また、φ=0.5、1.5、2.5・・・の場合は、透過率0%(2階のバイナリ−であれば、回折41%、4階の場合81%、8階の場合95%、16階の場合99%)となる。格子深さdは、回折格子2内では一様であり波長λによっては変化しないため、Δn(λ)/λが所定の波長域においてほぼ一定であれば、位相差φも一定であり、分光比も一定とすることができる。そのため使用される波長λがばらついても分光比が安定している。
ここで、図3に示すように回折格子2を回折格子として使用する光の中心波長をλ0、ばらつきをΔλ0とすると、所定の波長域は使用波長域であり、下限の波長λ0−Δλ0から上限の波長λ0+Δλ0の範囲に分布する。最短波長である波長λ0−Δλ0における第1部材4の屈折率をn1(λ0−Δλ0)、第2部材6の屈折率をn2(λ0−Δλ0)とすると屈折率差Δn(λ0−Δλ0)=|n1(λ0−Δλ0)−n2(λ0−Δλ0)|となる。同様に最長波長である波長λ0+Δλ0における第1部材4の屈折率をn1(λ0+Δλ0)、第2部材6の屈折率をn2(λ0+Δλ0)とすると屈折率差Δn(λ0+Δλ0)=|n1(λ0+Δλ0)−n2(λ0+Δλ0)|となる。
回折格子2の分光比は位相差φによって決まり、理想的には波長λ0+Δλ0と波長λ0−Δλ0の場合の分光比は等しいことであるので、その条件はΔn(λ0+Δλ0)×d/(λ0+Δλ0)=Δn(λ0−Δλ0)×d/(λ0−Δλ0)となる。
格子深さdは両辺に共通であるので、Δn(λ0+Δλ0)/(λ0+Δλ0)=Δn(λ0−Δλ0)/(λ0−Δλ0)となる。
または、|n1(λ0+Δλ0)−n2(λ0+Δλ0)|/(λ0+Δλ0)=K×|n1(λ0−Δλ0)−n2(λ0−Δλ0)|/(λ0−Δλ0)となり、上記の場合、定数K=1である。定数Kは、所定の波長域における最長波長に対するΔn(λ)/λの値と所定の波長域における最短波長に対する前記Δn(λ)/λの値との比である。したがって、定数Kの値は1に近ければ近いほど、分光比が安定していることになる。
たとえば、本実施の形態1の回折格子2を光ピックアップ装置の3ビーム法トラッキング制御に用いるCD用の光束を3本の光束に分離するために用いると考える。0.95≦K≦1.05の範囲であれば、光ピックアップ装置のトラッキング制御に対して分光比のばらつきはほとんど無視できるレベルであり、非常に望ましい。また、0.90≦K≦1.11の範囲であれば、分光比のばらつきは、光ピックアップ装置のトラッキング制御の実使用上、問題とはならないレベルであり、好ましい。ちなみに1.05、1.11はそれぞれ0.95、0.90の逆数である。
また、定数Kの値は所定の波長域の最短波長λ0−Δλ0と最長波長λ0+Δλ0における値として議論したが、本来、レーザ光の波長はλ0±Δλ0の所定の波長域内でばらつくのであるから、その範囲内での分光比のばらつきを議論すべきである。その場合、所定の波長域におけるΔn(λ)/λ、すなわち|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値とが分光比のばらつきに対応する。したがって、所定の波長域におけるΔn(λ)/λの最小値と最大値との比が所定の値以上で1に近いほど分光比のばらつきが小さいことになる。
ここで、Δλ0は波長のばらつきであるので、それほど大きな値ではない。その範囲内で第1部材4と第2部材6の屈折率差Δn(λ)は波長λに対して1次関数に近い形で変化するとみなせる。したがって、Δn(λ)/λ=|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値の比はK(K≦1)またはKの逆数(K≧1)の値に近い。
よってΔn(λ)/λ=|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値の比が0.95以上であれば光ピックアップ装置のトラッキング制御に対して分光比のばらつきはほとんど無視できるレベルであり、非常に望ましい。また、0.90以上であれば、分光比のばらつきは、光ピックアップ装置のトラッキング制御の実使用上、問題とはならないレベルであり、好ましい。
上記条件を満たすように、回折格子2の波長λ0−Δλ0、波長λ0+Δλ0における第1部材4の第1屈折率n1(λ0−Δλ0)、n1(λ0+Δλ0)及び第2部材6の第2屈折率n2(λ0−Δλ0)、n2(λ0+Δλ0)を制御すれば良い。たとえば、第1部材4に旭化成エレクトロニクス製のPIMEL7640、第2部材6に旭化成エレクトロニクス製のPIMEL7621、有機物5に有本化学工業製のOil Scarlet 5206を使った。その結果CD用のレーザ光の中心波長λ0が785nm、Δλ0が20nmとした場合、第1屈折率n1(765nm)=1.647、第2屈折率n2(765nm)=1.664、第1屈折率n1(805nm)=1.644、第2屈折率n2(805nm)=1.661となり、K=0.95とすることができた。波長が765nmと805nmの間で波長と屈折率差の関係が1次関数の関係から大きくずれていなければ、|n1(λ)−n2(λ)|/λの最小値と最大値の比も0.95程度である。
ところで、この場合、図4に示すように、第2の波長域であるDVD用のレーザ光の波長λ1=650nm近傍では第1部材4の第1屈折率n1(650nm)と第2部材6の第2屈折率n2(650nm)はそれぞれ1.673でほぼ等しい。すると、位相差φもほぼ0となるため、回折格子2は回折格子としてはほとんど働かず、0次光のみがほぼ100%透過する。一方所定の波長域であるCD用の波長λ0=785nm近傍の光は回折され、0次光と±1次光に分離される。すなわち、回折格子2はCD用の波長λ0=785nm近傍では回折格子として働くが、DVD用の波長λ1=650nm近傍では回折格子としては働かない、いわゆる波長選択回折格子とすることができる。すなわち、所定の波長域では入射した光を回折して透過させ、第2の波長域では入射した光を非回折で透過させる。また、所定の域外波長域では仮に光が入射しても、その光は光吸収のために非透過で遮断されてしまう。
有機物5は回折格子2が使われる所定の波長域、第2の波長域に合わせて選定される。回折格子2として使用する波長λ0=785nm、回折格子2としては働かせない波長λ1=650nmとすると、有機物5として第2の波長域の中心波長λ1より短い所定の域外波長域に光吸収を持つ上記のOil Scarlet 5206以外にも赤色102号や赤色2号等を用いることができる。また、いわゆる次世代DVDであるBD(ブルーレイ ディスク)やHD DVD(ハイ デフィニション DVD)として用いられる第2の波長域の中心波長λ1=405nmより短い所定の域外波長域に光吸収を持つ場合として銅クロロフィリンナトリウム等でも良い。また、逆に所定の波長域の中心波長λ0より長い所定の域外波長域に光吸収を持たせても良く、波長λ0=785nmより長い所定の域外波長域に光吸収を持つ、株式会社林原生物化学研究所製のNK−4432、NK−4489、NK−2911等としても良い。以上は分子レベルで第1部材4のベース材料に溶解するものであるが、ピグメントレッド254やピグメントレッド177等の顔料としても良い。なお、有機物5は、所定の域外波長域に光吸収を持たせるために、複数種類の有機物を混ぜたものとしても構わない。第1部材4は染料や顔料を含有した場合、着色して見えるが、第2の波長域及び所定の波長域の光は透過するので透明である。また、銅クロロフィリンナトリウムはほとんど薄い青色であるし、NK−4432、NK−4489、NK−2911はほとんど無色であり、染料と呼べるほどの色はない。
ところで、第1部材4の第1屈折率n1(λ)の温度変化と第2部材6の第2屈折率n2(λ)の温度変化は回折格子2の使用温度範囲内でほぼ等しいことが望ましい。回折格子2を搭載した回折素子1はレーザ光源の近傍に配置されることが多い。また、レーザ光源は発熱源でもある。したがって、回折格子2は使用中に温度が上がることが多い。図5(a)は温度と屈折率の関係を示す図、図5(b)は本実施の形態1のガラス転移温度が最高使用温度よりも高い場合を示す図、図5(c)は本実施の形態1のガラス転移温度が最低使用温度よりも低い場合を示す図である。図5(a)に示すように一般的に第1部材4や第2部材6の屈折率は温度が上昇すると直線的にわずかに減少する傾向がある。したがって、回折格子2の使用温度範囲内で第1部材4の第1屈折率n1(λ)の温度変化と第2部材の第2屈折率n2(λ)の温度変化とがほぼ等しければ、第1部材4と第2部材4の屈折率差Δn(λ)はほぼ一定である。そのため、安定した分光比を得ることができる。
さらに、第1部材4及び第2部材6はガラス転移温度が回折格子2の使用温度範囲内には存在しないすることが望ましい。図5(a)に示すように、屈折率が温度の上昇とともに直線的にわずかに低下する傾向は、ガラス転移温度近傍を境にその低下する割合が増大する場合が多い。したがって、ガラス転移温度が回折格子2の使用温度範囲内に存在すると、第1部材4と第2部材6の屈折率差Δn(λ)が変化してしまう。したがって、ガラス転移温度が回折格子2の使用温度範囲内に少なくとも存在しないようにすることで、屈折率の温度変化の傾向の変化点を使用温度範囲内になくすことができる。
ガラス転移温度が回折格子2の使用温度範囲内に少なくとも存在しないようにするためには、少なくとも3つの方法がある。1つは、図5(b)に示すように第1部材4及び第2部材6のガラス転移温度を回折格子の最高使用温度よりも高くすることである。もう1つは、図5(c)に示すように第1部材4及び第2部材6のガラス転移温度を回折格子の最低使用温度よりも低くすることである。さらにもう1つはガラス転移温度が存在しない材料を選択することである。
その中で第1部材4及び第2部材6はガラス転移温度が最高使用温度よりも高いことが望ましい。一般に材料はガラス転移温度以下の温度では挙動が安定している。したがって、ガラス転移温度が最高使用温度よりも高いと回折格子2の使用温度範囲内では分光比以外の挙動も安定した回折格子2を得ることができるためである。また、分光比を安定させるには、第1部材4のガラス転移温度も第2部材6のガラス転移温度も最高使用温度よりも高くすることが望ましい。一方のみのガラス転移温度を最高使用温度よりも高くしても、他方のガラス転移温度が使用温度範囲内に存在すると、使用中にガラス転移温度が使用温度範囲内に存在する方の屈折率が温度により変化してしまうためである。
また、第1部材4や第2部材6のベース材料に有機物5を含有させると、ベース材料の硬化状態が変化するものの、ベース材料のみの場合に対してガラス転移温度は大きな変化はせずに、屈折率は同様の傾向を示す。したがって、有機物5を非含有の状態での第1部材2の屈折率の温度変化と有機物5を非含有の状態での第2部材6の屈折率の温度変化とをほぼ等しくしても第1部材4と第2部材6の屈折率差Δn(λ)を回折格子2の使用温度範囲内でほぼ一定にすることができる。また、有機物を非含有の状態で材料の特性管理をすることができるので管理が容易である。
また、その際、有機物5を含有させる第1部材4のベース材料または有機物5を非含有の第1部材4のガラス転移温度を回折格子2の使用温度範囲内には少なくとも存在しないようにすることが望ましい。且つ、有機物5を含有させる第2部材6のベース材料または有機物5を非含有の第2部材6のガラス転移温度を回折格子2の使用温度範囲内には存在しないようにすることが望ましい。そのために、屈折率の温度変化の傾向の変化点を回折格子2の使用温度範囲内になくすことができる。また、有機物5を含有させる前の材料段階でガラス転移温度を管理することができるので、管理が容易となる。
さらに、有機物5を含有させる第1部材4のベース材料または有機物5を非含有の第1部材4のガラス転移温度を最高使用温度よりも高くし、且つ、有機物5を含有させる第2部材6のベース材料または有機物5を非含有の第2部材6のガラス転移温度を最高使用温度よりも高くすることが望ましい。ガラス転移温度が最高使用温度よりも高いと回折格子2の使用温度範囲内では分光比以外の挙動も安定した回折格子2を得ることができる。
ガラス転移温度が回折格子2の最高使用温度より高い例としては、例えば、最高使用温度が60℃の場合、Epo−Tek301、360があり、ガラス転移温度はそれぞれ約65℃、約90℃である。また、有機物5を含有させるとガラス転移温度はそれぞれ約85℃、約95℃となる。Epo−Tek301は、ガラス転移温度が最高使用温度よりもわずかに高く、ぎりぎりで使うことができる。また、Epo−Tek360は、ガラス転移温度が最高使用温度よりもかなり高く、比較的余裕を持って使うことができる。また。ガラス転移温度が回折格子2の使用温度範囲よりも低い例としては、例えば、セメダイン株式会社製の弾性接着剤PMシリーズがあり、ガラス転移温度が約−60℃である。
以上のように、第1部材4の第1屈折率n1(λ)の温度変化と第2部材6の第2屈折率n2(λ)の温度変化を回折格子2の使用温度範囲内でほぼ一定とすることにより、所定の波長域においてΔn(λ)/λの値をほぼ一定にすることがより容易となる。また、第2の波長域においても、Δn(λ)の値が使用温度により変化しにくいため、Δn(λ)の値をほぼ0にすることがより容易となる。
次に作製方法について説明する。図6は本実施の形態1の回折格子の作製方法を示す図である。まずあらかじめ有機物5を含有させた第1部材4をスピンコート法等で透明基板3に所定の均一な厚さで塗布する。次に加熱保持して、硬化する。次に第1部材4に所定の凸形状パターンを形成する。凸形状パターンの作製方法として、例えば、第1部材4の上にレジストを塗布し、所定のパターンとなるようにマスクパターン8を介して紫外線を照射し、現像後、ドライエッチングを行う方法がある。あるいは、第1部材4として感光性材料を使い、所定の均一な厚さに塗布し、所定のパターンとなるようにマスクパターン8を介して紫外線を照射し、現像を行っても良い。この第1部材4による凸形状の高さが回折格子2の深さdとなる。所定のパターンには、たとえば第1部材4と第2部材6とが縞状に交互に並べるようなパターンがある。そのピッチや深さdによって回折の特性が決定される。次にスピンコート法やスクリーン印刷法等で第2部材6を第1部材4による凸形状と凸形状の間に充填するように塗布する。透明保護板7をその上に重ね合わせて全体を加熱保持する。第2部材6は透明基板3、第1部材4、透明保護板6を強く接着する。最後に所定の寸法に切断し、完成とする。
なお、一般的に染料を始めとする分子レベルで第1部材4のベース材料に溶解する有機物5は紫外線により構造が一部破壊されて所定の光吸収の性質を失いやすい場合がある。そのため、紫外線照射、現像した際、紫外線が当たらない部分が残るような第1部材4を用いることで、所定の光吸収の性質を残した有機物5を含む第1部材4を形成することができる。
また、本実施の形態1において、屈折率は所定の波長域での波長λ0−Δλ0と波長λ0+Δλ0における値、または所定の波長λにおける値を採用するようにしているが、屈折率を測定する際の光源によっては、波長λどころか波長λ0−Δλ0や波長λ0+Δλ0における屈折率の測定ができない場合もある。その際には、波長λ0−Δλ0や波長λ0+Δλ0に限らず、複数の波長における屈折率を測定して、外挿や内挿をして波長λ0−Δλ0と波長λ0+Δλ0における屈折率を計算で算出しても良い。たとえば、DVD用の650nm近傍の波長とCD用の785nm近傍の波長で屈折率の測定を行い、外挿、内挿して765nmと805nmの屈折率を算出することができる。さらに405nm近傍の波長や785nmよりも長波長で測定すれば、屈折率の正確さは一段と増す。
なお、本実施の形態1において、有機物5は第1部材4に含有させたが、それに限るものではない。図7(a)は本実施の形態1の第2部材に有機物を含有させた回折格子の構成図、図7(b)は凹凸を作らず、透明保護板を設けない回折格子の構成図、図7(c)は凹凸を作らず、透明保護板を設けた回折格子の構成図である。
図7(a)において、第1部材4、第2部材6、有機物5、透明基板3、透明保護板7は全て前述の材料を使うことができる。作製方法について説明する。まず、有機物5を含有しない第1部材4をスピンコート法等で透明基板3に所定の均一な厚さで塗布する。次に加熱保持して硬化する。次に前述の方法と同一の方法で第1部材4に所定の凸形状パターンを形成する。次にあらかじめ有機物5を含有させた第2部材6をスピンコート法やスクリーン印刷法等で第1部材4による凸形状と凸形状の間に充填するように塗布する。透明保護板7をその上に重ね合わせて全体を加熱保持する。第2部材6は透明基板3、第1部材4、透明保護板6を強く接着する。最後に所定の寸法に切断し、完成とする。
この構成の場合、有機物5に紫外線が照射されることがないため、製造途中で紫外線により有機物5の構造が一部破壊されて所定の光吸収の性質を失うことがない。そのため、有機物5の選択の範囲が広い。
図7(b)において、第1部材4と第2部材6の原料は同一のものである。仮にそれを第1部材4の原料とする。あらかじめ有機物5を含有させた第1部材4の原料をスピンコート法等で透明基板3に所定の均一な厚さで塗布する。次に加熱保持して硬化する。次に所定のパターンとなるようにマスクパターン8を介して紫外線を照射する。ここで、紫外線が照射された部分の有機物5は紫外線により構造が一部破壊されて所定の光吸収の性質を失う。すると、第1部材4は所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物5を含有する領域と、所定の域外波長域には光吸収を持たない有機物5を含有する領域とに分類できる。改めて前者を第1部材4、後者を第2部材6と呼ぶことにする。最後に所定の寸法に切断し、完成とする。このように第1部材4と第2部材6とは一体であり、略等量の有機物5を含有する。
このような構成にすると、製造工程が簡単になり、平坦化をしなくても回折格子2の表面は平坦であるので透明保護板7が不要となり、安価に製造することができる。
図7(c)では、図7(b)における第1部材4を透明基板3に塗布した後、透明保護板7をその上に重ね合わせて全体を加熱保持する。その後に所定のパターンとなるようにマスクパターン8を介して紫外線を照射する。それによって紫外線が照射された部分の有機物5は所定の域外波長域の光吸収の性質を失う。このような透明保護板7を有する構成とすることにより、有さない構成に対し、回折格子2は外部環境に対し強くなるとともに、傷等に対しても強くなる。一方、マスクパターン8と回折格子2の距離が遠くなるので回折格子パターンはややボケやすくなる。
なお、本実施の形態1では、回折格子2は、所定の波長域において回折格子として働き、第2の波長域において回折格子としては働かず単に光を透過させる波長選択回折格子とした。しかし、波長選択回折格子である必要はなく、単に所定の波長域において回折格子として働く通常の回折格子としても良い。また、所定の波長域及び第2の波長域において働く回折格子としても良い。
また、所定の域外波長域に光吸収を持つ有機物5を第1部材4または第2部材6に含有させて異常分散現象を起こすようにしたが、その必要はない。たとえば、所定の域外波長域に光吸収を持つ材料そのものを用いて第1部材4または第2部材6を構成することができる。そのような材料として共役二重結合を有する材料が挙げられ、芳香族ポリイミドやポリアセン等がある。
以上のように、本実施の形態1の回折格子は所定の波長域においてΔn(λ)/λの値がほぼ一定であるので、分光比は所定の波長域でほぼ一定である。そのため使用される波長がばらついても分光比が安定している。
(実施の形態2)
本実施の形態2について図面を参照しながら説明する。本実施の形態2は実施の形態1の回折格子を備えた光ピックアップ装置である。図8は本実施の形態2の光ピックアップ装置の光学系の構成図、図9(a)はカバーを外した本実施の形態2の光ピックアップ装置の構成上面図、図9(b)は本実施の形態2の光ピックアップ装置の構成下面図である。
レーザ光源11は第2の波長域におけるDVD用の中心波長λ1(約650nm)のレーザ光を出射する発光点と所定の波長域におけるCD用の中心波長λ0(約785nm)のレーザ光を出射する発光点を1つのパッケージ内に搭載した2波長半導体レーザ光源とした。2つの発光点の距離は約110μmと近接している。2波長半導体レーザ光源には2種類ある。1つは2つの発光点を1つの半導体レーザ素子に集積したいわゆるモノリシック型2波長半導体レーザであり、もう1つは1つの発光点を備えた半導体レーザ素子を2つ隣接して備えたいわゆるハイブリッド型2波長半導体レーザである。本実施の形態2におけるレーザ光源11はモノリシック型2波長半導体レーザとしたが、どちらの種類でも構わない。レーザ光源11から出射される所定の波長域におけるレーザ光の波長λは、使用環境や発熱状態が変化するためにレーザ光源の温度が変わったり、個体差があったりして、波長λ0−Δλ0から波長λ0+Δλ0の範囲でばらつく。
回折素子1は実施の形態1で説明した回折格子2を備えており、波長選択回折素子である。第2の波長域における波長λ1のレーザ光は回折素子1を素通りし、所定の波長域における波長λ0のレーザ光は3ビーム法トラッキング制御に用いられる3本の光線に分離される。回折格子2は、所定の波長域における波長λの光に対して第1屈折率n1(λ)を持つ第1部材4と、波長λの光に対して第2屈折率n2(λ)を持ち第1部材4と縞状に交互に配列される第2部材6とを備える。回折格子2は、波長λの光に対する第1屈折率n1(λ)と波長λの光に対する第2屈折率n2(λ)との屈折率差をΔn(λ)とした場合に、所定の波長域においてΔn(λ)/λの値がほぼ一定であるように構成されている。したがって、分光比は所定の波長域でほぼ一定である。そのため使用される波長がばらついても分光比が安定している。
回折格子2のパターンは、第1屈折率を持つ第1部材4と第2屈折率を持つ第2部材とが縞状に交互に並べられるように形成されている。この平行な配列の向きは分離された3本の光線の集光スポットが光ディスク10の円周の接線方向と所定の微小角で並ぶように決められる。回折格子2のピッチは3〜10μm程度で、回折格子2の深さdは1〜11μm程度である。
回折格子2のピッチは3本の光線の集光スポットが光ディスク10上に並ぶ間隔に影響を及ぼし、ピッチが広いほど間隔は小さくなる。CDの場合、中央のメインビーム(0次光)と両端のサイドビーム(±1次光)との間隔はそれぞれ約15μm程度である。そのためにピッチは5.5〜6.5μmとした。しかし、最適なピッチは回折格子2の光学系内で配置される位置等の光学系の設計により3〜10μmの間で変化する。なお、最適なピッチは波長λによっては大きく変わらない。
また、回折格子2の深さdは波長λ、屈折率差Δn(λ)とともに、前述の通り、分光比に影響を及ぼす。トラッキング制御に用いることができる分光比と屈折率差Δn(λ)とを考慮すると、回折格子2の深さdは、CDの場合2.0μm以上、DVDの場合1.6μm以上、いわゆる次世代DVDの場合1.0μm以上とすることが望ましい。一方、回折格子2の深さdが深くなると、エッチングで回折格子2を掘ったり、マスクパターン8を介して紫外線照射で有機物5を分解させ化学的処理で凹凸形状を作製したりしても、大きく矩形形状からずれてしまい、特性のばらつき要因となってしまう。逆に回折格子2の深さdが浅いほど設計に近い理想に近いパターン断面の矩形形状を得ることができる。理想に近いパターン断面の矩形形状を得るためには回折格子2の深さdは8μm以下とすることが求められる。また、回折格子2の深さdを10μm以下とすれば、特性がばらつかない範囲でパターン断面の矩形形状を得ることができる。また、回折格子2の深さdが11μm以下であれば多少特性がばらつき、工数もかかるものの使用することが可能である。
集積光学部材12は内部に複数の傾斜面12a、12b、12cが設けられた光学ガラスで作製されている。傾斜面12a、12bには偏光分離膜12d、12e、傾斜面12cにはホログラム12fが形成されている。傾斜面12aに形成される偏光分離膜12dはP偏光のレーザ光を透過し、波長λ1のS偏光のレーザ光を反射する。また、傾斜面12bに形成される偏光分離膜12eはP偏光のレーザ光を透過し、波長λ1のS偏光のレーザ光を透過し、波長λ0のS偏光のレーザ光を反射する。
コリメートレンズ13は光学ガラスまたは光学プラスチック等で作製されている。コリメートレンズ13はレーザ光源1から出射された発散光であるレーザ光を略平行光に変換し、光ディスク10の記録面で反射された略平行光であるレーザ光を集束光に変換する。
ビームスプリッタ14は光学ガラス等で作製されており、レーザ光源11に対向する側の表面に偏光分離膜が形成されている。偏光分離膜は誘電体多層膜である。偏光分離膜はP偏光のレーザ光を一部のみ透過させ大半は反射させる。また、S偏光のレーザ光を全反射させる。
立ち上げプリズム15はそれまで光ディスク10の面に略平行な面内にあった光軸を、光ディスク10に対し略垂直に立ち上げるものである。本実施の形態2では立ち上げプリズムとしているが、立ち上げミラーとしても構わない。
ホログラム素子16は偏光ホログラム16aと1/4波長板16bで構成されている。偏光ホログラム16aはDVDの波長のS偏光の光にのみ作用するよう波長選択性のある材料で作製されている。また、1/4波長板16bはDVDとCDの両方の波長に作用するよう屈折率、厚みが設定されている。
対物レンズ17は2焦点対物レンズで、波長λ1の光、波長λ0の光に対してそれぞれ焦点を結ぶように構成されている。2焦点対物レンズとしては、集光レンズ及びフレネルレンズまたはホログラムレンズの組み合わせ、DVD用集光レンズにCD再生時に開口制限手段を設ける組み合わせ等を用いることができる。
光ディスク10はCD用がCD、CD−ROM、CD−R/RW、DVD用がDVD−ROM、DVD±R/RW、DVD−RAMなどであり、CD用もDVD用も再生専用の媒体を除いて全て記録も再生も可能なものである。また、本実施の形態2ではCD用とDVD用としているが、その組み合わせだけでなく、いわゆるBDやHD DVD等との組み合わせでも一般性を失わない。
光ディスク10からの反射光を受光して電気信号を発生させる受光センサ18は光ディスク10からの反射光を受光し、RF信号、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等を生成する電気信号を出力する受光素子である。受光センサ18はいくつかの受光部に分かれている。CDとDVDとでトラッキングエラー信号が異なる。CDでは回折素子1で分離した3本の光線の全てを使う3ビーム法を用いるのに対し、DVDは中央の1本の光線のみを使う1ビーム法を用いるためである。
前光モニタ19は光学センサであり、レーザ光源11からのレーザ光の一部の光量を電気信号に変換し、その結果を制御回路(図示せず)を通してレーザ光源11にフィードバックすることで、レーザ光源11の光量を一定に保つ働きをする。
キャリッジ21は光ピックアップ装置20の骨格を成すもので、キャリッジ21に各種光学部品を始めとする光ピックアップ装置20を構成する部品が直接または取り付け部材を介して取り付けられる。キャリッジ21はZn合金、Mg合金などの合金材料あるいは硬質樹脂材料などで形成される。
結合ベース22は回折素子1、集積光学素子12、レーザ光源11、受光センサ18を所定の位置に固定し、キャリッジ21に固定される。結合ベース22を形成する材料は、比較的軽量で高精度なできあがり寸法を実現できる形状加工性、良好な放熱性等を兼ね備えることが求められる。そのためZn、Zn合金、Al、Al合金、Ti、Ti合金などが好適に用いられる。本実施の形態2ではコスト面などを考慮し、Znダイキャストで作製した。
コリメートレンズ13、ビームスプリッタ14、立ち上げプリズム15、前光モニタ19は直接または取り付け部材を介してキャリッジ21に固定される。
ホログラム素子16と対物レンズ17はアクチュエータ23を構成する1部品である。アクチュエータ23はヨーク23a、固定部23b、サスペンションワイヤ23c、レンズホルダ23dを備える。固定部23bはヨーク23aに固定される。レンズホルダ23dは固定部23bにサスペンションワイヤ23cを介して可動状態で支持される。その際レンズホルダ23dはサスペンションワイヤ23c以外には触れないようにする。レンズホルダ23dに対物レンズ17及びホログラム素子16が取り付けられる。また、ヨーク23aには磁石23eが取り付けられるとともにレンズホルダ23dにはコイル23fが取り付けられる。アクチュエータ23はキャリッジ21に接着剤で固定される。アクチュエータ23は接着剤を介してのみキャリッジ21と接触する。アクチュエータ23はフォーカスサーボ、トラッキングサーボにより、光ディスク10の記録面のトラック上に集光スポットが合焦するように、コイル23fに電流を流し、磁石23eとで電磁力を発生させて対物レンズ17を駆動する。
次に光路について説明する。DVD用の波長λ1のレーザ光は回折格子2を備えた回折素子1、集積光学部材12を通過してコリメートレンズ13に入射する。レーザ光はP偏光になるよう設定されている。回折素子1において波長λ1の光は上述の通りそのまま透過する。コリメートレンズ13では略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。P偏光であるため、一部の光はビームスプリッタ14を透過し、前光モニタ19に入射する。前光モニタ19に入射した光は電気信号に変換されて波長λ1のレーザ光の光量制御に使われる。ビームスプリッタ14に入射した残りの大半の光は反射して立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15に入射した光はホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に焦点を結ぶ。
ホログラム素子16を透過する際、P偏光であるため、レーザ光は偏光ホログラム16aの影響を受けずにそのまま透過する。そして1/4波長板16bでP偏光の直線偏光から円偏光に変換される。
光ディスク10の記録面で反射された光は対物レンズ17、ホログラム素子16、立ち上げプリズム15、ビームスプリッタ14、コリメートレンズ13を通り、集積光学部材12に入射する。ホログラム素子16を再度透過する際、レーザ光は1/4波長板16bで円偏光からP偏光である往きの直線偏光とは垂直な直線偏光、すなわちS偏光に変換される。偏光ホログラム16aではS偏光であるため、レーザ光はRF信号、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等に対応する信号光成分に分離される。ビームスプリッタ14ではS偏光であるため全反射する。
集積光学部材12に入射したレーザ光は、S偏光であるため傾斜面12bに設けられた偏光分離膜12eを透過し、傾斜面12aに設けられた偏光分離膜12dで反射して受光センサ18に入射する。偏光ホログラム16aで分離され受光センサ18に入射した各信号光成分は受光センサ18で各種電気信号に変換される。
CD用の波長λ0のレーザ光は回折素子1、集積光学部材12を通過してコリメートレンズ13に入射される。レーザ光はP偏光になるよう設定されている。回折素子1において波長λ0の光は3ビーム法トラッキング制御に用いられる3本の光線に分離される。コリメートレンズ13で略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。P偏光であるため、一部の光はビームスプリッタ14を透過し、前光モニタ19に入射される。前光モニタ19に入射した光は電気信号に変換されて波長λ0のレーザ光の光量制御に使われる。ビームスプリッタ14に入射した残りの大半の光は反射して立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15に入射した光はホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に焦点を結ぶ。ホログラム素子16を透過する際、レーザ光はこの波長λ0では偏光ホログラム16aの影響を受けないのでそのまま透過し、1/4波長板16bでP偏光の直線偏光から円偏光に変換される。
光ディスク10の記録面で反射された光は対物レンズ17、ホログラム素子16、立ち上げプリズム15、ビームスプリッタ14、コリメートレンズ13を通り、集積光学部材12に入射する。ホログラム素子16を再度透過する際、レーザ光は1/4波長板16bで円偏光からP偏光である往きの直線偏光とは垂直な直線偏光、すなわちS偏光に変換される。そしてこの波長λ0では偏光ホログラム16aの影響を受けないため偏光ホログラム16aをそのまま透過する。ビームスプリッタ14ではS偏光であるため全反射する。
集積光学部材12に入射したレーザ光は、S偏光であるため傾斜面12bに設けられた偏光分離膜12eで反射され、傾斜面12cに設けられたホログラム12fに入射し、RF信号、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等に対応する信号光成分に分離される。その分離された光はそれぞれ受光センサ18に入射し、各種電気信号に変換される。
本実施の形態2において回折素子1の回折格子2は波長選択性を有し、DVD用の波長λ1のレーザ光を素通りさせ、CD用の波長λ0のレーザ光のみをトラッキング制御に使用する3本の光線に分離する。そして、レーザ光源11から出射されるCD用のレーザ光の波長がばらついても回折格子2の分光比の変化が少ないため、3本の光線の光量比は安定している。したがって、この回折素子1を搭載した光ピックアップ装置20はトラッキング制御が安定しており、安定した記録や再生の特性が得られる。
なお、集積光学部材12を使用する構成としたが、それに限るものではない。図10は本実施の形態2の集積光学部材を使わない光ピックアップ装置の光学系の構成図である。レーザ光源11、回折素子1、コリメートレンズ13、立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17は上述の説明と同じであり、その説明を援用する。
光学部材12gは内部に傾斜面12aを備え、傾斜面12aには偏光分離膜12dが形成されている。光学部材12gは光学ガラスで作製されている。偏光分離膜12dはP偏光のレーザ光を透過し、波長λ1のS偏光のレーザ光を反射する。
光学部材12hは内部に傾斜面12bを備え、傾斜面12bには偏光分離膜12eが形成されている。光学部材12hは光学ガラスで作製されている。偏光分離膜12eはP偏光のレーザ光を透過し、波長λ1のS偏光のレーザ光を透過し、波長λ0のS偏光のレーザ光を反射する。
ホログラム12fは受光センサ18の受光面から離した光学部材12hに対向する窓部の表面に設けた。ホログラム12fは受光センサ18のCD用のレーザ光を受光する面と偏光分離膜12eとの間の適切な位置に配置されていれば良い。そのため光学部材12hの受光センサ18に対向する面に設けても良い。
ビームスプリッタ14のレーザ光源11と対向する面には反射防止膜を形成し、レーザ光源11と対向しない方の面にはフィルタ14aを形成した。フィルタ14aは入射したレーザ光の光束の中心に近い領域の波長選択偏光分離膜とその周辺の全反射膜で構成される。波長選択偏光分離膜は波長λ1のP偏光の光のたとえば50%程度の所定の反射率だけ反射させて残りを透過させ、S偏光の光を全反射させる。また、波長λ0のP偏光の光のたとえば95%の光を反射させて残りを透過させ、S偏光の光を全反射させる。全反射膜は波長λ1の光も波長λ0の光も偏光に拘らず、全反射させる。波長選択偏光分離膜は誘電体多層膜で構成される。また、全反射膜は誘電体多層膜または金属膜で構成される。波長選択偏光分離膜を透過した光は前光モニタ19に入射して、レーザ光源11から出射されるレーザ光の光量の制御に用いられる。
波長λ1のレーザ光の光量分布は光束の中心部分の光量がフィルタ14aを通らない場合の光量の50%程度に小さくなる。このような光量分布の光束が光ディスク10の記録面に集光すると、そのスポットサイズはフィルタを通らない場合よりも小さくなる。このような現象を超解像現象という。その光学系に合うように波長選択偏光分離膜の反射率や範囲を適切に設計することにより、スポットサイズを小さく、サイドローブと呼ばれるスポット周辺の光量の盛り上がりを小さくすることができる。一方、波長λ0の光量は95%程度であるのでほとんど影響は受けない。
また、ビームスプリッタ14のレーザ光源11と対向する面と対向しない方の面とはたとえば1.1°程度の角度をつけて非平行とした。ビームスプリッタ14の内部を通過した光が干渉を起こさないためである。
光路は集積光学部材12を用いた場合とほぼ同じである。レーザ光源11から出射された波長λ1のレーザ光は回折素子1をほぼそのまま透過し、光学部材12g、12hをそのまま透過し、コリメートレンズ13で略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。ビームスプリッタ14の内部を通過して、フィルタ14aの波長選択偏光分離膜で一部が透過して前光モニタ19に入射する。残りは反射して再びビームスプリッタ14の内部を通過して、立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に入射し、光ディスク10の記録面で反射されて逆の経路でビームスプリッタ14に入射するまでは前述の通りである。ビームスプリッタ14に入射したレーザ光はビームスプリッタ14の内部を通過し、フィルタ14aで全反射して、再びビームスプリッタ14の内部を通過し、コリメートレンズ13に入射する。コリメートレンズ13で集束光に変換されて光学部材12hに入射する。光学部材12hを透過し、光学部材12gの斜面12aに形成された偏光分離膜12dで反射されて受光センサ18に入射する。
レーザ光源11から出射された波長λ0のレーザ光は回折素子1の回折格子2で3ビーム法トラッキング制御に用いる3本の光束に分離される。回折格子1から出射されたレーザ光は光学部材12g、12hを透過し、コリメートレンズ13に入射し略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。ビームスプリッタ14の内部を通過して、フィルタ14aの波長選択偏光分離膜で一部が透過して前光モニタ19に入射する。残りは反射して再びビームスプリッタ14の内部を通過して、立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に入射し、光ディスク10の記録面で反射されて逆の経路でビームスプリッタ14に入射するまでは前述の通りである。ビームスプリッタ14に入射したレーザ光はビームスプリッタ14の内部を通過し、フィルタ14aで全反射して、再びビームスプリッタ14の内部を通過し、コリメートレンズ13に入射する。コリメートレンズ13で集束光に変換されて光学部材12hに入射する。光学部材12hの傾斜面12bに形成された偏光分離膜12eで反射され、ホログラム12fで各種信号成分に分離されて、受光センサ18に入射する。
このように、集積光学部材12を用いなくても光ピックアップ装置の光学系を構築できる。この際、集積していた光学部材が単品の光学部材となるため、全体の大きさは若干大きくなる。しかし、精度良く作製する必要のある集積光学部材12が不要となるために製造コストを抑制することができる。また、フィルタ14aを配置することでDVDの光ディスク10の記録面でのスポットサイズを小さくでき、記録特性、再生特性に優れる。
また、レーザ光源11は2波長半導体レーザ光源としたが、それに限るものではない。図11は本実施の形態2の単波長のレーザ光源を2台用いた光ピックアップ装置の光学系の構成図である。
レーザ光源11aはDVD用の波長λ1のレーザ光を出射するレーザ光源、レーザ光源11bはCD用の波長λ0のレーザ光を出射するレーザ光源である。反射ミラー24は光路を折り曲げて光ピックアップ装置20を小型化するために用いる。反射ミラー24の表面には全反射膜が形成される。コリメートレンズ13a、13bはそれぞれDVD用、CD用に最適化したコリメートレンズである。
回折格子2を備えた回折素子1はDVD用の波長λ1のレーザ光は通らないのでCD用の波長λ0のレーザ光に特化して最適化することができる。たとえば、2波長半導体レーザ光源を使用する場合、回折格子2を波長選択回折格子とするために、Δn(λ)/λの値を所定の波長域において一定にできないように設計しなければならない場合が仮にあったとしても、本構成の場合、CD専用に設計できるのでΔn(λ)/λの値を所定の波長域においてほぼ一定にすることができる。
集積光学素子12は前述の集積光学素子12とほぼ同じである。しかし、本構成の場合、往路のDVD用の波長λ1のレーザ光は集積光学素子12には入射しない。そのため、偏光分離膜12d、12eにおける波長λ1のP偏光のレーザ光を透過させるという性質を付与する必要はない。
ビームスプリッタ14は内部に斜面を有する光学部材であり、光学ガラスや光学プラスチックで作製される。斜面には波長選択偏光分離膜が形成される。波長選択偏光分離膜は波長λ1のP偏光のレーザ光を一部反射させ、大半を透過させる。そして波長λ1のS偏光のレーザ光を全反射させる。また、波長λ0のP偏光のレーザ光を一部透過させ、大半を反射させる。そして波長λ0のS偏光のレーザ光を全反射させる。
立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17、受光センサ18、前光モニタ19は2波長半導体レーザ光源のレーザ光源11を用いる場合と同じである。
光路は以下の通りとなる。レーザ光源11aから出射された波長λ1のレーザ光は反射ミラー24で光路を折り曲げられ、コリメートレンズ13aで略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。ビームスプリッタ14で一部は反射されて前光モニタ19に入射する。残りのレーザ光は透過されて立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に入射し、光ディスク10の記録面で反射されて逆の経路でビームスプリッタ14に入射するまでは前述の通りである。ビームスプリッタ14で全反射されて今度はコリメートレンズ13bに入射して集束光に変換される。集積光学素子12に入射したレーザ光は傾斜面12bに形成された偏光分離膜12eを透過し、傾斜面12aに形成された偏光分離膜12dで反射されて受光センサ18に入射する。
レーザ光源11bから出射された波長λ0のレーザ光は回折素子1に入射し、回折格子2でCDの3ビーム法トラッキング制御に用いられる3本の光束に分離される。回折素子1から出射されたレーザ光は、集積光学素子12をそのまま透過し、コリメートレンズ13bで略平行光に変換されてビームスプリッタ14に入射する。レーザ光はビームスプリッタ14で一部透過して前光モニタ19に入射し、残りは反射して立ち上げプリズム15に入射する。立ち上げプリズム15、ホログラム素子16、対物レンズ17を通過して光ディスク10の記録面に入射し、光ディスク10の記録面で反射されて逆の経路でビームスプリッタ14に入射するまでは前述の通りである。ビームスプリッタ14に入射したレーザ光は全反射されてコリメートレンズ13bに入射して集束光に変換される。集積光学素子12に入射したレーザ光は傾斜面12bに形成された偏光分離膜12eで反射され、傾斜面12cに形成されたホログラム12fで各種信号成分に分離されて受光センサ18に入射する。
このようにDVD用のレーザ光源11aとCD用のレーザ光源11bとを別々に配置する場合、回折格子2はCD用に専用設計することができる。そのためΔn(λ)/λの値を所定の波長域においてほぼ一定にすることができ、より安定したトラッキング制御ができる光ピックアップ装置とすることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態3について図面を参照しながら説明する。図12は本実施の形態3の光ピックアップモジュールの構成図、図13は本実施の形態3の光ディスク装置の構成図である。実施の形態3は実施の形態1で説明した回折格子を備えた光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置であり、実施の形態2で説明した光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置である。
光ディスク装置40の光ディスク10及び光ピックアップ装置20を駆動する駆動機構を光ピックアップモジュール30という。ベース31は光ピックアップモジュール30の骨組みを成すもので、このベース31に直接的、間接的に各構成部品を固定する。
光ディスク10を載置するターンテーブルを備えたスピンドルモータ32はベース31に固定される。スピンドルモータ32は光ディスク10を回転させる回転駆動力を生成する。
フィードモータ33はベース31に固定される。フィードモータ33は光ピックアップ装置20が光ディスク10の内周と外周の間を移動するために必要な回転駆動力を生成する。フィードモータ33としてステッピングモータ、DCモータなどが使用される。スクリューシャフト34はらせん状に溝が掘られており、直接または数段のギアを介してフィードモータ33に接続される。本実施の形態3では直接フィードモータ33と接続される。ガイドシャフト35、36はそれぞれ両端で支持部材を介してベース31に固定される。ガイドシャフト35、36は光ピックアップ装置20を移動自在に支持する。光ピックアップ装置20はスクリューシャフト34の溝と噛み合うガイド歯を有するラックを備える。ラックがスクリューシャフト34に伝達されたフィードモータ33の回転駆動力を直線駆動力に変換するために光ピックアップ装置20は光ディスク10の内周と外周の間を移動することができる。
光ピックアップ装置20は実施の形態2で説明したものにカバー25を取り付けたものであり、実施の形態1で説明した回折格子2を備えている。光ピックアップ装置20は光ディスク10に対し情報の記録または再生の少なくとも一方を行い、そのためにレーザ光を光ディスク10に向けて出射する。光ピックアップ装置20から出射されるレーザ光が光ディスク10に対し直角に入射するように、支持部材を構成する調整機構でガイドシャフト35、36の傾きを調整する。
上部筐体41aと下部筐体41bを組み合わせてネジなどを用いて互いに固定して筐体41とする。トレイ42は筐体41に出没自在に設けられる。トレイ42はカバー37を取り付けた光ピックアップモジュール30を下面側から配置する。カバー37は開口を有し、光ピックアップ装置20の対物レンズ17を含む一部とスピンドルモータ32のターンテーブルを露出させる。本実施の形態3の場合、フィードモータ33も露出させる。ベゼル43をトレイ42の前端面に設け、トレイ42が筐体41内に収納された時に、トレイ42の出没口を塞ぐようにする。
ベゼル43にはイジェクトスイッチ44が設けられ、イジェクトスイッチ44を押すことで、筐体41とトレイ42との係合が解除され、トレイ42は筐体41に対し出没が可能な状態となる。レール45はそれぞれトレイ42の両側部及び筐体41の双方に摺動自在に取り付けられる。
筐体41の内部やトレイ42の内部には図示していない回路基板があり、信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。外部コネクタ46はコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、外部コネクタ46を介して光ディスク装置40内に電力を供給したり、外部からの電気信号を光ディスク装置40内に導いたり、あるいは光ディスク装置40で生成された電気信号を外部の電子機器などに送出したりする。
このように本実施の形態3の光ディスク装置40は、実施の形態1で説明した回折格子2を実施の形態2で説明したように備えた光ピックアップ装置20を備えている。レーザ光源11から出射される所定の波長域である波長λ0±Δλ0の範囲内でCD用のレーザ光の波長λがばらついても回折格子2の分光比の変化が少ないため、3本の光線の光量比は安定している。したがって、この回折格子2を備える回折素子1を搭載した光ピックアップ装置20はトラッキング制御が安定しており、安定した記録の特性や再生の特性が得られる。そのため、本実施の形態3の光ディスク装置40は記録の特性や再生の特性が安定している。