JP2002350625A - 波長選択性回折素子および光ヘッド装置 - Google Patents

波長選択性回折素子および光ヘッド装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】2波長用半導体レーザが出射する一方の波長の
光を回折せず透過し、他の波長の光を回折する光学素子
を得て、光ヘッド装置に搭載し光利用効率の高く安定し
た装置とする。 【解決手段】異なる2つの波長の光に対して用いられ、
透明基板11A上に形成された周期的凹凸部を構成する
凹凸部材12Aと充填部を構成する充填部材13Aのう
ちいずれか一方は赤色有機物顔料を含む材料からなり、
他方は透明無機物を含む材料からなり、凹凸部材12A
の屈折率と充填部材13Aの屈折率は、一方の波長の光
に対して等しく、他方の波長の光に対しては異なる波長
選択性回折素子を得て、光ヘッド装置の光源と光記録媒
体を結ぶ光路中に設置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は波長選択性回折素子
および光ヘッド装置に関し、特にCD用およびDVD用
の異なる2つの波長の光が入射して用いられる波長選択
性回折素子およびこの波長選択性回折素子を搭載した光
ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光ディスクであるDVDとCDと
の互換型光ヘッド装置(以下、互換型光ヘッド装置とい
う)が注目されている。この互換型光ヘッド装置におい
ては、DVD再生用に波長650nmの半導体レーザが
使用され、CD−ROM、CD−RなどのCD再生用に
波長790nmの半導体レーザが使用される。また、こ
のヘッド装置において、2波長半導体レーザを用いて、
部品点数を低減し、装置の小型化および低コスト化を図
ることが望まれている。ここで、波長650nmの半導
体レーザとは、650nm波長帯の半導体レーザのこと
であり、個体差などの原因によりばらつく波長まで含
む。波長790nmについても同様であり、また、以下
同じ意味で使用する。
【0003】しかし、従来の3ビーム発生用回折素子や
ホログラム回折素子(以下、ホログラムビームスプリッ
タともいう)などの回折素子を2波長用半導体レーザと
組み合わせて使用する場合、波長650nm(以下λ1
ともいう)および波長790nm(以下λ2ともいう)
のいずれの入射光に対しても回折光を発生する。
【0004】その結果、望まない不要な回折光が迷光と
なって光検出器に混入し、情報の記録または再生ができ
ない。さらに、一方の光ディスクへの入射光の3ビーム
発生用に設けられた回折格子が、他方の光ディスクへの
入射光を回折し不要回折光を発生して、光量損失を招き
信号光を減少させるなどの問題が発生する。
【0005】この問題の解決法として、特定波長に対し
てのみ、回折作用を発生する回折素子が望まれる。その
例として、特開平4−129040には、一方の入射光
に対して光路差をその波長の整数倍にし、かつ他方の入
射光に対して光路差をその波長の非整数倍にした波長選
択性回折素子が記載されている。しかし、一方の波長の
入射光に対して光路差をその波長の整数倍にするため、
他方の波長の入射光に対しては回折効率が限定されて、
回折効率選択の自由度が少なく、満足できるものではな
かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の問題を解決し、設計自由度の大きい波長選択性回折素
子を提供することにあり、またこの波長選択性回折素子
と2波長用半導体レーザを備えた情報の記録および再生
を、安定して行える光ヘッド装置を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、透明基板上に
形成された周期的凹凸部と、周期的凹凸部を充填する充
填部とを備え、異なる2つの波長の光に対して用いられ
る回折素子において、周期的凹凸部を構成する凹凸部材
と充填部を構成する充填部材のうちいずれか一方は赤色
有機物顔料を含む材料からなり、他方は透明無機物を含
む材料からなり、凹凸部材の屈折率と充填部材の屈折率
は、一方の波長の光に対して実質的に等しく、他方の波
長の光に対しては異なることを特徴とする波長選択性回
折素子を提供する。
【0008】また、異なる2つの波長の光を出射する光
源と、2つの波長の光を光記録媒体上に集光する対物レ
ンズと、2つの波長の光の光記録媒体からの反射光を検
出する光検出器とを備える光ヘッド装置であって、光源
と対物レンズとの間の光路中に、上記の波長選択性回折
素子が設置されていることを特徴とする光ヘッド装置を
提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】「第1の実施態様」図1に示す本
実施態様の波長選択性回折素子1Aに、波長λ1と波長
λ2の(λ 1<λ2)光が入射する(図1(a)は波長λ1
の光が入射する様子を示し、図1(b)は波長λ2の光
が入射する様子を示す)。波長選択性回折素子1Aは、
凹凸部材12Aからなる回折格子を表面に形成している
透明基板11Aと、その間に充填される充填部材13A
とを備える回折素子であり、透明基板14Aで充填部材
13Aが保護されている。波長λ1の光に対しては凹凸
部材12Aと充填部材13Aとの屈折率が等しく、波長
λ2の光に対しては凹凸部材12Aと充填部材13Aと
の屈折率が異なる。
【0010】凹凸部材12Aまたは充填部材13Aのい
ずれか一方には、赤色有機物顔料を、他方には透明無機
物を含んでいる。ここで含んでいるという意味は、凹凸
部材または充填部材が、実際上含有する(含む)場合と
そのものが両部材の一方を構成している場合のことであ
る。以下では、赤色有機物顔料が含まれる、または透明
無機物が含まれるとして説明する。
【0011】赤色有機物顔料は650nmより短い波長
域において、波長の減少に応じて急激に吸収が増加し、
550nm近傍に吸収極大を有する。このとき屈折率は
吸収極大近傍で急激に変化する。DVD用の波長の屈折
率は、この急激な変化に影響されるのに対し、CD用の
波長の屈折率はほとんど影響されないため、DVD用の
波長とCD用の波長における屈折率差は大きな値とな
る。
【0012】一方、透明無機物は可視域では透明である
ため吸収がなく、DVD用の波長とCD用の波長との屈
折率差は赤色有機顔料の屈折率差よりも小さい。また、
透明無機物は含まれる材料、組成などにより、赤色有機
顔料のDVD用の波長またはCD用の波長の屈折率と一
致させることができる。
【0013】例えば、凹凸部材12Aに赤色有機物顔料
が含まれている場合には、凹凸部材12Aの、波長λ1
における屈折率と波長λ2における屈折率の差を、透明
無機物が含まれている充填部材13Aの屈折率の差より
も大きくできる。したがって、有機物顔料が含まれてい
る凹凸部材12Aと透明無機物が含まれている充填部材
13Aとの材料や含有量を適切に選択すれば、これら材
料の波長λ1における屈折率は等しく、かつ波長λ2にお
ける屈折率は異ならせることができる。
【0014】このため、波長λ1の光が凹凸部材12A
を通過するときには、屈折率が等しいため、回折格子の
機能は発生せず直進透過する。一方、波長λ2の光が透
過するときには、屈折率が異なるため回折格子として機
能し、凹凸部材12A(回折格子)の高さd1と格子形
状により回折効率を変化させることができ、また回折格
子の格子ピッチを変化させることにより回折角度を変化
させることができる。
【0015】上記において、凹凸部材12Aに赤色有機
物顔料が含まれているとしたが、充填部材13Aに有機
物顔料が含まれているとしても、同様である。また、凹
凸部材12Aと充填部材13Aとの屈折率が等しいと
は、両材料の屈折率差が0.005以内の場合をいい、
以下においても同様である。
【0016】「第2の実施態様」図2に示す本実施態様
の波長選択性回折素子1Bは、11B、14Bなど11
A、14Aとはアルファベットが異なっているが、同じ
数字のものは図1と同じ構成要素を示し、透明基板であ
る。波長λ1の光に対しては回折格子である凹凸部材1
2Bと充填部材13Bの屈折率が異なり(図2
(a))、波長λ2の光に対しては凹凸部材12Bと充
填部材13Bの屈折率が等しい(図2(b))。
【0017】本実施態様でも、凹凸部材12Bまたは充
填部材13Bのいずれかに赤色有機物顔料が含まれ、他
方に透明無機物が含まれている。例えば、凹凸部材12
Bに赤色有機物顔料が含まれ、充填部材13Bに透明無
機物が含まれ、これら材料や含有量を適切に選択すれ
ば、波長λ1における屈折率は異なり、かつ波長λ2にお
ける屈折率は等しくできる。このとき、凹凸部材12B
を波長λ1の光が透過するときには、波長選択性回折素
子1Bは回折格子として機能し、波長λ2の光が透過す
るときは回折されずに直進透過する。また回折光の効率
は、凹凸部材12B(回折格子)の高さd2や格子形状
を変えることで変化でき、回折光の角度は格子ピッチの
大きさに応じて変化できる。
【0018】「第3の実施態様」図3に示す本実施態様
の波長選択性回折素子1Cは、第1と第2の実施態様の
波長選択性回折素子を組み合わせたものである。波長選
択性回折素子1Cは、回折格子である凹凸部材12Cを
表面に形成している透明基板11Cと、回折格子である
凹凸部材15Cを表面に形成している透明基板16Cと
を備え、充填部材13Cと14Cとにより透明基板17
Cが挟まれている積層構造を有する。ここで、波長λ1
の光に対しては凹凸部材12Cと充填部材13Cの屈折
率が等しく、波長λ2の光に対しては凹凸部材12Cと
充填部材13Cの屈折率が異なる。
【0019】また、波長λ1の光に対しては凹凸部材1
5Cと充填部材14Cの屈折率が異なり、波長λ2の光
に対しては凹凸部材15Cと充填部材14Cの屈折率が
等しい。したがって、図3(a)が示す波長選択性回折
素子1Cの上側の部分は図2(a)、下側の部分は図1
(a)がそれぞれ示すように、波長λ1の光は凹凸部材
15C(回折格子)で回折され、凹凸部材12Cを透過
し、凹凸部材15Cのみが回折格子として作用する。
【0020】一方、図3(b)が示す波長選択性回折素
子1Cの上側の部分は図2(b)、下側の部分は図1
(b)がそれぞれ示すように、波長λ2の光は凹凸部材
15Cを透過し、凹凸部材12Cで回折され、凹凸部材
12Cのみが回折格子として作用する。したがって、ひ
とつの複合化された素子で2種の波長に対して、それぞ
れ独立に回折素子として機能する。
【0021】以上説明した本波長選択性回折素子におい
ては、格子高さd1、d2または格子形状を変化させるこ
とで回折効率を変ることができるので、3ビーム発生用
素子またはホログラムビームスプリッタとして、好適な
効率が得られる格子高さを選択すればよい。また、波長
選択性回折素子の凹凸部を階段状の多段ステップまたは
ブレーズド回折格子の格子形状にすることにより、特定
の次数の回折効率を高めて用いてもよい。回折角度につ
いても、所望の回折角度となるような格子ピッチとすれ
ばよく、これらは従来の3ビーム発生用素子やホログラ
ムビームスプリッタに用いられている手法をそのまま、
波長選択性回折素子に採用できる。
【0022】第3の実施様態で説明したように2つの波
長選択性回折素子を組み合わせて用いてもよく、さらに
3つ以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、DVD
用およびCD用で3ビーム発生用素子として機能する波
長選択性回折素子の組み合わせや、DVD用でホログラ
ムビームスプリッタとして機能し、CD用で3ビーム発
生用素子として機能する波長選択性回折素子など目的に
応じて、組み合わせればよい。本波長選択性回折素子は
1/2波長板、1/4波長板などの波長板を積層して、
用いることもできる。
【0023】本波長選択性素子に用いられる赤色有機物
顔料は、DVD用およびCD用いずれの波長においても
顕著な吸収がないよう選択しているため、これらの波長
で高い透過率が得られる。赤色有機物顔料としては、ジ
ケトピロロピロール系、アンスラキノン系、キナクリド
ン系、縮合アゾ系、ペリレン系などに属する顔料を使用
できる。これらの有機物顔料は単独で用いてもよいし、
2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、ピグメン
トレッド(Pigment Red) 254に代表さ
れるジケトピロロピロール系やピグメントレッド177
に代表されるアンスラキノン系は耐久性に優れており、
本素子の赤色有機物顔料として好ましく用いられる。
【0024】有機物顔料は蒸着法などにより製膜しても
よいし、また分散処理された有機物顔料を樹脂バイン
ダ、重合性モノマ、重合開始材、増感剤、溶剤、界面活
性剤などに混合し適宜調整した組成物を用いて製膜して
もよい。組成物を用いる場合には透明基板上に組成物を
塗布した後、溶媒を加熱除去しさらに重合硬化させると
よい。また、必要に応じて重合硬化後、加熱処理しても
よい。
【0025】赤色有機物顔料が含まれたフォトレジスト
は、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの作製に用い
られており、市販のカラーフィルタ用レジストの一部は
そのまま使用できる。また、赤色有機物顔料、樹脂バイ
ンダ、重合性モノマ重合開始材、増感剤、溶剤、界面活
性剤などの濃度や化合物は必要に応じて調整してもよ
い。
【0026】赤色有機物顔料を用いる格子の凹凸部材ま
たは充填部材などについては、いずれの場合も、形成
(製膜)後の光の吸収特性が以下のように調整されるこ
とが好ましい。吸収端の波長は580nmから620n
mまでの範囲にあることが好ましく、吸収端の波長は複
素屈折率n*(λ)=n(λ)+i・k(λ)(実数部
n(λ)は通常の屈折率、虚数部i・k(λ)のうちk
(λ)は吸収係数、λは波長)において、波長を減少さ
せていくとき、波長650nm以下で初めてk(λ)が
0.01を超える波長λを吸収端と定義する。
【0027】k(λ)を0.01としたのは、k(λ)
を0から増加させるときに、0に近くかつ測定誤差より
大きくて、明らかに増加傾向が把握できる値であること
による。この吸収端の波長が620nmより大きい場合
には、吸収損失(透過率の低下)が問題になり、また5
80nmより小さい場合には、波長650nmと波長7
90nm波との間で大きな屈折率差を得ることが困難で
ある。
【0028】大きな屈折率差を得るために、波長の減少
とともに吸収係数が急激に増加することが必要である。
赤色有機物顔料は波長550nm近傍で吸収極大を有す
るので、この波長で吸収係数が大きな値であるとよい。
実施例の例1、例2、例3、に用いた有機物顔料の55
0nmにおける吸収係数k、および650nmと790
nmにおける屈折率の差(△n)を表1に示した。
【0029】
【表1】
【0030】ショット(SCHOTT)社の光学ガラス
カタログにおいて、△nの大きい光学ガラスとしてフリ
ントガラスが記載されている。商品名SF6、SF58
などのフリントガラスの△nは、おのおの0.012、
0.015である。これらの値と比較すると、赤色有機
物顔料を用いた表1中でk(550nm)が0.05以
下である場合には、吸収の効果により大きな屈折率差△
nを得ているとは言い難い。したがって、波長550n
mでの吸収係数kについては0.05より大きいことが
好ましい。
【0031】回折格子の格子深さが小さい程、格子加工
に要する時間が短く、さらに得られる素子の入射角度依
存性が低減できるため好ましい。そのためには赤色顔料
を含む膜の△nが大きい方が好ましい。この△nを大き
くするには、赤色有機物顔料の含有量を増加すればよ
い。このとき含有量の増加につれ、屈折率も増加するた
め、DVD用およびCD用いずれの波長の屈折率も1.
6以上であると、△nを大きくする上で好ましい。
【0032】本波長選択性素子に用いられる透明無機物
は、屈折率1.6以上である化合物が好ましい。このよ
うな透明無機物の化合物の中でも、ジルコニウム酸化
物、チタン酸化物、イットリウム酸化物、亜鉛酸化物、
アルミニウム酸化物は屈折率が高く、さらに化学的に安
定であり好ましい。
【0033】上記酸化物は蒸着法などにより製膜しても
よいし、また微粒子化された透明酸化物を樹脂バイン
ダ、重合性モノマ、重合開始材、増感剤、溶剤、界面活
性剤などに混合し適宜調整した組成物を用いて製膜して
もよい。組成物を用いる場合には透明基板または格子上
に組成物を塗布した後、溶媒を加熱除去しさらに重合硬
化させるとよい。また、必要に応じて重合硬化後、加熱
処理してもよい。
【0034】また微粒子化された透明酸化物はその平均
粒径が大きいと散乱光の発生量が大きいため、平均粒径
は透過波長に対して十分小さいことが好ましい。DVD
用の波長が650nmであるため、平均粒径はその平均
粒径が100nmより小さいことが好ましく、さらに5
0nm以下であるとさらに好ましい。微粒子化された透
明無機材料を用いる場合は、組成物中の含有量を変える
ことで凹凸部材また充填部材の屈折率を変えることがで
き、わずかな屈折率も調整できるため好ましく用いるこ
とができる。以下、波長選択性回折素子が光ヘッド装置
に搭載された場合を説明する。
【0035】「第4の実施態様」図4は本発明の光ヘッ
ド装置の一例を示し、波長選択性回折素子として、CD
用の3ビームを発生する波長選択性回折素子1A(図
1)を用いた。このように構成された光ヘッド装置にお
いて、光源である2波長用半導体レーザ3から出射した
波長λ1の光は、波長選択性回折格子1Aにより回折さ
れることなく直進透過し、さらにビームスプリッタ4を
透過し、コリメートレンズ5により平行光となる。
【0036】その後、この平行光は、対物レンズ6によ
り光記録媒体である光ディスク7(DVD系)の情報記
録面上(トラック上)に集光される。そして、光ディス
ク7で反射された光は、再び対物レンズ6およびコリメ
ートレンズ5を透過し、ビームスプリッタ4により反射
されて光検出器8の受光面に集光される。
【0037】一方、2波長用半導体レーザ3から出射し
た波長λ2の光は、波長選択性回折格子1Aにより出射
光の一部(例えば、5%〜40%)が±1次回折光とし
て回折されるが、±1次回折光を含めこの光はさらにビ
ームスプリッタ4を透過し、コリメートレンズ5により
平行光にされる。その後、この平行光は対物レンズ6に
より光ディスク7(CD系)の情報記録トラック上に、
0次回折光および±1次回折光が3ビームとなって集光
される。そして、光ディスク7により反射された光は、
再び対物レンズ6およびコリメートレンズ5を透過し、
ビームスプリッタ4により反射されて、0次回折光およ
び±1次回折光はそれぞれ光検出器8の受光面に集光さ
れる。
【0038】上記のように、本発明の波長選択性回折格
子1Aを搭載した光ヘッド装置の場合、波長λ1の光は
波長選択性回折格子により回折されることなく直進透過
する。したがって、DVD系の光ディスクでは、DVD
系の光検出器(4分割受光面)を用いて、1ビームを使
用する位相差法によるトラッキング誤差信号検出、さら
に非点収差法による光ディスク面へのフォーカシング誤
差信号検出、および記録情報であるピット信号検出が安
定して行える。
【0039】一方、CD系の光ディスクでは、DVD系
と同一の4分割受光面の光検出器8を用いて、非点収差
法による光ディスク情報記録面へのフォーカシング誤差
信号検出およびピット信号検出が行われる。さらに光検
出器における他の2つの受光面で±1次回折光を受光す
ることにより、3ビーム法によるトラッキング誤差信号
検出が行われる。
【0040】上記の説明では波長選択性回折格子をCD
系の波長λ2の光に対する3ビーム法に適用した例につ
いて述べたが、情報記録に用いられる差動プッシュプル
法に適用してもよい。またDVD系の波長λ1の光に対
して3ビームを発生する波長選択性回折格子1Bを適用
しても、1ビームを使用する方法に比べ、より正確なト
ラッキング誤差検出に有効である。一方の光ディスク用
の光が他方の光ディスク用の回折格子により回折され、
光量損失が発生することがなく有効である。なお、波長
選択性回折格子の格子ピッチは、素子が用いられる光ヘ
ッド装置の光学系および光ディスクのトラッキング誤差
信号検出法に応じて適宜定められる。
【0041】「第5の実施態様」図5は本発明の光ヘッ
ド装置の他の例を示し、波長選択性回折素子1Cを、波
長選択性のホログラムビームスプリッタとして用いた光
ヘッド装置である。このように構成された光ヘッド装置
において、波長λ1および波長λ2の光を出射する2波長
用半導体レーザ3から出射した波長λ1の光は、ホログ
ラムビームスプリッタで入射光の約70%が透過した
後、コリメートレンズ5により平行光にされる。その
後、この平行光は対物レンズ6により光ディスク7(D
VD系)の情報記録面上に集光される。そして、光ディ
スク7で反射された光は、再び対物レンズ6およびコリ
メートレンズ5を透過し、ホログラムビームスプリッタ
により回折された約10%の光が、光検出器8の受光面
に集光される。
【0042】一方、2波長用半導体レーザ3から出射し
た波長λ2の光も、ホログラムビームスプリッタで出射
光の約70%が透過した後、コリメートレンズ5により
平行光にされる。その後、この平行光は対物レンズ6に
より光ディスク7(CD系)の情報記録面上に集光され
る。そして、光ディスク7により反射された光は、再び
対物レンズ6およびコリメートレンズ5を透過し、ホロ
グラムビームスプリッタにより回折された約10%の光
が、波長λ1の光の検出に用いたのと同一の光検出器8
の受光面に集光される。
【0043】このように、本発明の波長選択性回折素子
1Cを搭載した光ヘッド装置の場合、同一の光検出器を
用いて、使用波長の異なる光ディスクへの情報の記録お
よび再生を行うことができ、光ヘッド装置の小型化・高
特性化を図れる。なお、波長選択性回折素子の格子ピッ
チはそれが用いられる光ヘッド装置の光学系に応じて適
宜定められる。また、DVD系の光ディスクについて
は、波長選択性の偏光ホログラムビームスプリッタなど
を対物レンズと一体駆動する構成にしてもよい。
【0044】また、図4に示した光ヘッド装置の例で
は、ビームスプリッタ4が用いられ、2波長用半導体レ
ーザ3(光源ユニット)と光検出器8とが分離された構
成とした。しかし、ビームスプリッタ4の代わりに波長
選択性のホログラムビームスプリッタ1Cを用いて、光
ディスクで反射された光を2波長用半導体レーザ(光源
ユニット)内の半導体レーザ近傍に配置された、光検出
器に集光するように回折させてもよい。この場合、半導
体レーザと光検出器とが同一の光源ユニット内に配置さ
れるため光ヘッド装置を小型化できる。
【0045】
【実施例】「例1」赤色有機物顔料としてピグメントレ
ッド177を14.8%(質量基準とする、以下同じ)
含む顔料含有液である御国色素社製CFレッドAGR−
01を73%、ペンタエリスリトールテトラアクリレー
ト(日本化薬社製KAYARAD−DPHA)を22
%、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−
2−アセテートを5%混合し混合物を作製し、さらに光
重合開始材として、イルガキュア907(チバスペシャ
リティケミカルズ社製)を上記混合物に対して0.7%
となるよう混合し組成物Aを作製した。
【0046】この組成物Aを凹凸部材としてスピンコー
ト法により透明基板としてのガラス基板上に均一にコー
ティングし、100℃で2分間保持した。次に組成物A
全面に紫外線を照射後、200℃で60分間保持し、厚
さ3.8μm膜を作製した。このようにして作製した膜
の上に、膜厚60nmのSiO2膜をスパッタ法により
形成し、SiO2膜の上にフォトレジストをスピンコー
ト法により塗布した。次にフォトマスクをガラス基板の
SiO2膜側に配置して紫外線露光し、その後ドライエ
ッチングを行った。このようにして、図1に示すような
凹凸部材12Aを回折格子として、格子ピッチ20μ
m、格子深さ3.8μmに作製した。
【0047】凹凸部材12Aの吸収端における波長は6
00nmであり、550nmでの吸収係数kは0.10
であった。屈折率は波長650nmにおいて1.63
6、波長790nmにおいて1.601であり、上記2
波長での屈折率の差は0.035であった。
【0048】次に平均粒子径が約30nmの酸化亜鉛粒
子が含まれるJSR社製KZ7987重合組成物を96
%、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化
薬社製KAYARAD−DPHA)を4%混合した混合
物を作製し、さらに光重合開始材として、イルガキュア
907(チバスペシャリティケミカルズ社製)を上記混
合物に対して0.08%となるよう混合し充填部材とし
て組成物Bを作製した。
【0049】この組成物Bを前述の回折格子上に凹凸部
が充填されるように塗布し、60℃で2分保持した後、
充填面に透明基板であるガラス基板を積層した。その
後、紫外線を照射し、充填部材を硬化した。硬化後の充
填部材の屈折率は波長650nmにおいて1.637、
波長790nmにおいて1.630であり、上記2波長
での屈折率の差は0.007であった。また、硬化後の
充填部材の膜厚は8μmであり、凹凸部材は充填部材に
より充填された。
【0050】このようにして作製した素子に波長790
nmの半導体レーザ光を入射したところ、0次回折光の
透過率が76%であり、+1次回折光および−1次回折
光の回折効率がともに7%であった。また、波長650
nmの半導体レーザ光を入射したところ、0次回折光の
透過率が90%であり、+1次回折光、−1次回折光、
および高次回折光の回折効率はいずれも0.5%以下で
あり、本素子は上記2波長で波長選択性のある回折機能
を示した。
【0051】「例2」赤色有機物顔料としてピグメント
レッド177を14.8%含む顔料含有液である御国色
素社製CFレッドAGR−01を90%、ペンタエリス
リトールテトラアクリレート(日本化薬社製KAYAR
AD−DPHA)を8%、プロピレングリコール−1−
モノメチルエーテル−2−アセテートを2%混合し混合
物を作製し、さらに光重合開始材として、イルガキュア
907(チバスペシャリティケミカルズ社製)を上記混
合物に対して0.2%となるよう混合し組成物Cを作製
した。
【0052】この組成物Cを凹凸部材としてスピンコー
ト法によりガラス基板上に均一にコーティングし、10
0℃で2分間保持した。次に組成物C全面に紫外線を照
射後、200℃で60分間保持し、厚さ2.6μm膜を
作製した。このようにして作製した膜の上に、膜厚60
nmのSiO2膜をスパッタ法により形成し、 SiO 2
膜の上にフォトレジストをスピンコート法により塗布し
た。次にフォトマスクをガラス基板のSiO2膜側に配
置して紫外線露光し、その後ドライエッチングを行っ
た。このようにして、図2に示すような凹凸部材12B
を回折格子として、格子ピッチ4μm、格子深さ2.6
μmに作製した。
【0053】凹凸部材の吸収端における波長は600n
mであり、550nmでの吸収係数kは0.15であっ
た。屈折率は波長650nmにおいて1.740、波長
790nmにおいて1.689であり、上記2波長での
屈折率の差は0.051であった。
【0054】次に例1のJSR社製KZ7987重合組
成物を充填部材として用い、前述の回折格子上に凹凸部
が充填されるように塗布し、60℃で2分保持した後、
充填面にガラス基板を積層した。その後、紫外線を照射
し、充填部材を硬化した。
【0055】硬化後の充填部材の屈折率は波長650n
mにおいて1.695、波長790nmにおいて1.6
87であり、上記2波長での屈折率の差は0.008で
あった。また、効果後の充填部材の膜厚は5μmであ
り、格子部材は充填部材により充填されていた。
【0056】このようにして作製した素子に波長790
nmの半導体レーザ光を入射したところ、0次回折光の
透過率が92%であり、+1次回折光、−1次回折光、
および高次回折光の回折効率はいずれも0.5%以下で
あった。また、波長650nmの半導体レーザ光を入射
したところ、0次回折光の透過率が67%であり、+1
次回折光および−1次回折光の回折効率はいずれも10
%であり、本素子は上記2波長で波長選択性のある回折
機能を示した。
【0057】「例3(比較例)」赤色有機物顔料として
ピグメントレッド209を14.7%含む顔料含有液で
ある御国色素社製CFレッドAGR−02を73%、ペ
ンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬社製
KAYARAD−DPHA)を22%、プロピレングリ
コール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートを5
%混合し混合物を作製し、さらに光重合開始材として、
イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ社
製)を上記混合物に対して0.7%となるよう混合し組
成物を作製した。
【0058】この組成物を凹凸部材としてスピンコート
法によりガラス基板上に均一にコーティングし、100
℃で3分間保持した。次に組成物全面に紫外線を照射
後、200℃で60分間保持し、厚さ6.0μmの膜を
作製した。この凹凸部材の吸収端における波長は570
nmであり、波長550nmでの吸収係数kは0.05
であった。屈折率は波長650nmにおいて1.60
5、波長790nmにおいて1.590であり、上記2
波長での屈折率の差は0.015であった。
【0059】「例4」本例の2波長用の光ヘッド装置
は、例1で作製した回折素子が、図4に示す波長選択性
回折素子1Aのように、2波長用半導体レーザ3とビー
ムスプリッタ4との間に配置された構成となっている。
本発明の波長選択性回折素子が使用されているため、波
長650nmの光を回折させることなく、また波長79
0nmの光に対してトラッキングエラー検出用の3ビー
ムを発生させることができ、少ない部品点数でS/Nの
よい安定した情報の記録および再生を行うことができ
た。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の波長選択
性回折素子を用いれば、特定の波長に対して3ビームを
発生する回折格子やホログラムビームスプリッタとして
機能する光学素子が実現する。このような波長選択性回
折素子を光ヘッド装置に搭載することにより、CD用と
DVD用の光に対して独立に回折効率や回折角度を設定
できるため、おのおのの光学系で最適に光ディスクの情
報を検出できる。
【0061】さらに、本発明の波長選択性回折素子を用
いた光ヘッド装置では、2波長用半導体レーザの搭載に
よる半導体レーザ数の削減に加えて、さらに装置の部品
点数の削減および小型化が実現できるとともに、CD系
光ディスクおよびDVD系光ディスクの情報の記録およ
び再生において、光利用効率の高い安定した記録および
再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の波長選択性回折素子の一つの例を示す
図で、(a)波長λ1の光が入射したときの様子を示す
側面図、(b)波長λ2の光が入射したときの様子を示
す側面図。
【図2】本発明の波長選択性回折素子の他の例を示す図
で、(a)波長λ1の光が入射したときの様子を示す側
面図、(b)波長λ2の光が入射したときの様子を示す
側面図。
【図3】図1と図2の波長選択性回折素子を積層した波
長選択性回折素子の一つの例を示す図で、(a)波長λ
1の光が入射したときの様子を示す側面図、(b)波長
λ2の光が入射したときの様子を示す側面図。
【図4】本発明の光ヘッド装置の一つの構成例を示す側
面図。
【図5】本発明の光ヘッド装置の他の構成例を示す側面
図。
【符号の説明】
1A、1B、1C、:波長選択性回折素子 3:2波長用半導体レーザ 4:ビームスプリッタ 5:コリメートレンズ 6:対物レンズ 7:光ディスク 8、8A、8B:光検出器 11A、14A、11B、14B、11C、16C、1
7C:透明基板 12A、12B、12C、15C:凹凸部材 13A、13B、13C、14C:充填部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G065 AA11 AB04 AB09 AB22 AB24 BA01 BB06 BB10 BB14 BB15 BB16 BB28 DA15 DA20 2H049 AA03 AA13 AA31 AA43 AA44 AA57 AA64 5D119 AA43 JA26 LB07

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基板上に形成された周期的凹凸部と、
    周期的凹凸部を充填する充填部とを備え、異なる2つの
    波長の光に対して用いられる波長選択性回折素子におい
    て、周期的凹凸部を構成する凹凸部材と充填部を構成す
    る充填部材のうちいずれか一方は赤色有機物顔料を含む
    材料からなり、他方は透明無機物を含む材料からなり、
    凹凸部材の屈折率と充填部材の屈折率は、一方の波長の
    光に対して実質的に等しく、他方の波長の光に対しては
    異なることを特徴とする波長選択性回折素子。
  2. 【請求項2】前記透明無機物は、ジルコニウム酸化物、
    チタン酸化物、イットリウム酸化物、亜鉛酸化物および
    アルミニウム酸化物よりなる群のうちいずれか1種以上
    の酸化物である請求項1記載の波長選択性回折素子。
  3. 【請求項3】前記透明無機物は、微粒子でありその平均
    粒径が100nm以下である請求項1または2記載の波
    長選択性回折素子。
  4. 【請求項4】異なる2つの波長の光を出射する光源と、
    2つの波長の光を光記録媒体上に集光する対物レンズ
    と、2つの波長の光の光記録媒体からの反射光を検出す
    る光検出器とを備える光ヘッド装置であって、光源と対
    物レンズとの間の光路中に、請求項1、2または3記載
    の波長選択性回折素子が設置されていることを特徴とす
    る光ヘッド装置。
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