本発明の請求項1の発明は、光源から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子を構成する第1部材と第2部材とを備え一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスクに出射する回折素子であって、第1部材は第1樹脂を備え2つの波長で所定の屈折率を持ち、第2部材は染料を分子レベルで溶解させた第2樹脂を備えて所定の波長域に光吸収を持ち、一方の波長で第1部材と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材とは異なる屈折率を持ち、染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いた回折素子である。
染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料が妨げとなって第2樹脂の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子は長期間に渡り安定した特性を有する。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、既に重合反応が完了した高分子材料は熱可塑性樹脂である回折素子である。
熱可塑性樹脂は材料としては安定しており溶剤に溶解しやすいものもあり、染料を分子レベルで溶解させた状態を容易に実現でき、製造しやすい。
請求項3の発明は、透明基板上に第1樹脂を塗布して硬化する第1工程と、第1樹脂を所定の凹凸形状に形成する第2工程と、第2樹脂と染料とを分子レベルで溶剤に溶解させて所定の凹凸形状に充填する第3工程と、染料を第2樹脂に分子レベルで溶解した状態で溶剤を蒸発させる第4工程と、を備え、第3工程において、第2樹脂として溶剤に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いた回折素子の製造方法である。
第2樹脂として溶剤に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料が妨げとなって第2樹脂の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、このようにして製造された回折素子は、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子が体積変化を起こしにくい。その結果、長期間に渡り安定した特性を有する。
請求項4の発明は、透明基板上に第2樹脂と染料とを溶剤に分子レベルで溶解させて塗布し染料を第2樹脂に分子レベルで溶解した状態で溶剤を蒸発させる第1工程と、染料を分子レベルで溶解させた第2樹脂を所定の凹凸形状に形成する第2工程と、第1樹脂を所定の凹凸形状に充填する第3工程と、第1樹脂を硬化させる第4工程と、を備え、第1工程において、第2樹脂として溶剤に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いた回折素子の製造方法である。
第2樹脂として溶剤に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料が妨げとなって第2樹脂の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、このようにして製造された回折素子は、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子が体積変化を起こしにくい。その結果、長期間に渡り安定した特性を有する。
請求項5の発明は、請求項3または請求項4の発明において、第2樹脂は熱可塑性樹脂である回折素子の製造方法である。
熱可塑性樹脂は材料としては安定しており溶剤に溶解しやすいものもあり、染料を分子レベルで溶解させた状態を容易に実現でき、製造しやすい。
請求項6の発明は、2つの波長の光を光ディスクに向けて出射する光源と、光源から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子を構成する第1部材と第2部材とを備え一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスクに出射する回折素子と、を備え、第1部材は第1樹脂を備え2つの波長で所定の屈折率を持ち、第2部材は染料を分子レベルで溶解させた第2樹脂を備えて所定の波長域に光吸収を持ち、一方の波長で第1部材と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材とは異なる屈折率を持ち、染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いた光ピックアップ装置である。
染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料が妨げとなって第2樹脂の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子は長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子を搭載する光ピックアップ装置も長期間に渡り安定した特性を有する。
請求項7の発明は、2つの波長の光を光ディスクに向けて出射する光源と、光源から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子を構成する第1部材と第2部材とを備え一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスクに出射する回折素子と、を備え、第1部材は第1樹脂を備え2つの波長で所定の屈折率を持ち、第2部材は染料を分子レベルで溶解させた第2樹脂を備えて所定の波長域に光吸収を持ち、一方の波長で第1部材と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材とは異なる屈折率を持ち、染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いた光ディスク装置である。
染料を分子レベルで溶解させる第2樹脂として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料が妨げとなって第2樹脂の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子は長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子を搭載する光ディスク装置も長期間に渡り安定した特性を有する。
(実施の形態1)
本実施の形態1について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態1の回折素子の概要を説明する。図1は、本実施の形態1における回折素子の断面図である。本実施の形態1の回折素子10は、光源20から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子11を構成する第1部材13と第2部材14とを備えている。回折素子10は一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスク21に出射する。第1部材13は第1樹脂15を備え、2つの波長で所定の屈折率を持つ。第2部材14は染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を備えて所定の波長域に光吸収を持つ。第2部材14は一方の波長で第1部材13と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材13とは異なる屈折率を持つ。本実施の形態1の回折素子10は、染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とする。
染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り回折素子10に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、本実施の形態1の回折素子10は、長期間に渡り安定した特性を有する。
本実施の形態1において、一方の波長を短い方の波長の波長λ1、他方の波長を長い方の波長の波長λ2として、説明するが、一方の波長と他方の波長とは逆でも構わない。ここで、回折格子11は透明基板12上に形成され、さらに透明基板18が回折格子11の表面側から接着剤19で回折格子11に接着される。また、染料17は肉眼で着色して見えるものだけでなく、紫外線や赤外線を吸収して肉眼で無色透明に見えるものを含む。また、染料17は、溶媒に対して分子レベルで溶解するものを指す。回折格子11で分離されて出射された光はトラッキング制御に用いられる。
次に、本実施の形態1の回折素子の製造方法の概要を説明する。図2(a)は、本実施の形態1の回折素子の製造方法において透明基板の断面図、図2(b)は、第1樹脂を透明基板の上に形成した図、図2(c)は、所定の凹凸形状に形成した図、図2(d)は、溶剤に第2樹脂と染料を溶解させた溶液を形成した図、図2(e)は、溶剤を蒸発させた図、図2(f)は、透明基板を接着した図、図3は、本実施の形態1の溶剤に第2樹脂と染料とを溶解させた図である。
まず第1工程において、図2(a)に示す透明基板12上に図2(b)に示すように第1樹脂15を塗布して硬化する。次に第2工程において、図2(c)に示すように第1樹脂15を所定の凹凸形状に形成する。次に第3工程において、図3に示すように第2樹脂16と染料17とを分子レベルで溶剤22に溶解させて図2(d)に示すようにその溶液23を所定の凹凸形状に充填する。次に第4工程において、図2(e)に示すように染料17を第2樹脂16に分子レベルで溶解した状態で溶剤22を蒸発させる。ここで、本実施の形態1の製造方法は、第3工程において、第2樹脂16として溶剤22に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とする。最後に図2(f)に示すように透明基板18を接着剤19で回折格子11に接着して、回折素子10は完成となる。
本実施の形態1において、本製造方法で製造された回折素子10は、第2樹脂16として溶剤22に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り回折素子10に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、本実施の形態1の回折素子10は、長期間に渡り安定した特性を有する。
図4は、本実施の形態1における別構成の回折素子の断面図、図5(a)は、本実施の形態1の別形態の回折素子の製造方法において透明基板の断面図、図5(b)は、第2樹脂と染料を溶解させた溶液を透明基板の上に形成した図、図5(c)は、溶剤を蒸発させた図、図5(d)は、所定の凹凸形状に形成した図、図5(e)、は第1樹脂を形成した図、図5(f)は、透明基板を接着した図である。
回折素子24と回折素子10との違いは、回折格子25の構成と回折格子11の構成との違いによる。回折格子11では第1樹脂15を備えた第1部材13が所定の凹凸形状を形成するが、回折格子25では染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を備えた第2部材14が所定の凹凸形状を形成する。
この回折素子24の製造方法は以下の通りである。まず第1工程において、図3に示すように第2樹脂16と染料17とを溶剤22に分子レベルで溶解させる。そして図5(a)に示す透明基板12上に図5(b)に示すようにその溶液23を塗布する。さらに図5(c)に示すように染料17を第2樹脂16に分子レベルで溶解した状態で溶剤22を蒸発させる。次に第2工程において、図5(d)に示すように染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を所定の凹凸形状に形成する。次に第3工程において、図5(e)に示すように第1樹脂15を所定の凹凸形状に充填する。次に第4工程において、第1樹脂15を硬化させる。ここで、本実施の形態1の製造方法は、第1工程において、第2樹脂16として溶剤22に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とする。最後に図5(f)に示すように透明基板18を接着剤19で回折格子25に接着する。
この製造方法で製造した回折素子24の構成においても、第2樹脂16として溶剤22に溶解させる前に既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り回折素子24に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子25は体積変化を起こしにくい。その結果、本実施の形態1の回折素子24は、長期間に渡り安定した特性を有する。
次に、本実施の形態1の回折素子10、24について詳細に説明する。
図1において、光源20は近接した位置から短い波長λ1の光と長い波長λ2の光とを出射する。波長λ1の光と波長λ2の光はレーザ光である。本実施の形態1において波長λ1の光はDVD用でλ1=約650nm、波長λ2の光はCD用でλ2=約780nmである。本実施の形態1において、光源20から出射される光はDVD用とCD用としたが、例えばBD(ブルーレイディスク)用である波長が約405nmの光のような他の波長の光との組合せでも構わない。透明基板12、18は波長λ1及び波長λ2において透明な基板であり、例えば、BK7のような光学ガラス等で構成される。接着剤19は熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、エポキシ接着剤、嫌気性接着剤等の通常の接着剤が用いられる。光ディスク21は上述のようにCD、DVD、BD等である。
光源20からの光の入射面内で回折格子11は第1部材13を所定の凹凸形状に形成し、第2部材14がその凹凸形状を充填するように構成している。図4における回折格子25は回折格子11とは逆に、第2部材14を所定の凹凸形状に形成し、第1部材13がその凹凸形状を充填するように構成している。回折格子11と回折格子25との違いは上記のみであり、回折素子10と回折素子24との違いは回折格子11と回折格子25との違いのみである。よって、回折素子24、回折格子25についての説明は、回折素子10、回折格子11についての説明を援用する。
回折格子11において、波長λ1では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とが等しく、波長λ2では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とは異なるように構成した。そのため、波長λ1では第1部材13と第2部材14との間で回折は起こらず、波長λ1の光はそのまま透過することになる。波長λ2では第1部材13と第2部材14との間で屈折率の差の分だけ回折が起こり、波長λ2の光は0次光、±1次光、・・・に分離される。分離された光が所定の分光比で所定の方向に向かうように、波長λ2での第1部材13と第2部材14との間の屈折率の差に応じた凹凸形状の凹凸深さ、間隔、凹凸形状の入射面内の方向等が決定される。なお、波長λ1では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とが異なり、波長λ2では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とは等しいように構成しても構わない。
上記第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率を実現するために、第1部材13は第1樹脂15を備え、第2部材14は染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を備えるようにした。第1樹脂15や第2樹脂16は通常、屈折率の波長依存性が大きくないような材料が選定される。染料17は波長λ1よりも短い波長域に光吸収を持ち且つ波長λ1では光吸収をほとんど持たない。第2部材14の屈折率は染料17による異常分散効果により第2樹脂16単体の屈折率よりも大きく且つ第2部材14と第2樹脂16単体との屈折率の差は光吸収を持つ波長域に近いほど大きい。即ち、第2部材14は屈折率の波長依存性が第2樹脂16単体よりも大きい。従って、第1樹脂15と第2樹脂16と染料17とを組合せることにより、波長λ1では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とが等しく、波長λ2では第1部材13の屈折率と第2部材14の屈折率とは異なるようにすることができる。
第1樹脂15は、波長λ1及び波長λ2で透明である。第1樹脂15は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。例えばEpo−tekの310や320、330等が用いられ、これらの樹脂は熱硬化性樹脂である。
第2樹脂16は、波長λ1及び波長λ2で透明である。染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いた。即ち、第2樹脂16は染料17を分子レベルで溶解させる前に既に重合反応が完了しているので、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り波長λ1や波長λ2の光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子10は長期間に渡り安定した特性を有する。
そのような既に重合反応が完了した高分子材料として熱可塑性樹脂がある。熱可塑性樹脂は材料としては安定しており溶剤22に溶解しやすいものもあり、染料17を分子レベルで溶解させた状態を容易に実現でき、製造しやすい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート等がある。
本発明において、染料17は色が付いて見えるものばかりでなく、紫外線や赤外線の波長域で光吸収の性質を持ち、無色透明のものも含む。染料17は第2樹脂16に分子レベルで溶解するものであり、粒子が樹脂中に分散し浮遊するものである顔料とは区別される。染料17としては、波長λ1がDVDで使われる約650nmの場合、赤色染料である赤色102号や赤色2号等がある。また波長λ1がBD用の約405nmの場合、銅クロロフィリンナトリウム等がある。これらの染料17は波長λ1よりも短波長側の波長域に光吸収を持つ。銅クロロフィリンナトリウムは薄い青色であり、可視光線の波長域の光吸収はほとんど持たず、紫外線の波長域の光吸収が大半である。また、波長λ2よりも長波長側の波長域に光吸収を持つ染料17を用いても良い。波長λ2が約780nmの場合、染料17としては、(株)林原生物化学研究所製のNK−4432、NK−4489、NK−2911等がある。これらは可視光線の波長域の光吸収はほとんど持たず、赤外線の波長域の光吸収が大半であり、無色透明である。
溶剤22は、第2樹脂16と染料17の両方を溶解する性質を持つ。溶剤22としては、メチルエチルケトン、アセトン等がある。
次に、本実施の形態1の回折素子10、24の製造方法について詳細に説明する。回折素子10の製造方法と回折素子24の製造方法の違いは所定の凹凸形状を形成するのが第1部材13で形成するのか第2部材14で形成するのかに起因する違いのみである。従って、回折素子24の製造方法は回折素子10の製造方法の説明を援用する。
図2において、まず透明基板12上に第1樹脂15を均一の厚さに塗布する。塗布する方法にはスピンコート法やスプレー法等がある。次に、第1樹脂15の硬化方法に従って第1樹脂15を硬化する。
次に、所定のパターンになるようなマスクパターンを介して第1樹脂15の表面に紫外線を照射、現像して第1部材15による所定の凹凸形状を形成する。具体的な凹凸形状の製造方法として、例えば以下のような方法がある。1つは、第1樹脂15の上にレジストを塗布し、所定のパターンとなるようにマスクパターンを介して紫外線を照射し、現像後、ドライエッチングを行う方法である。もう1つは、第1樹脂15として感光性材料を使い、所定の均一な厚さに塗布し、所定の凹凸形状となるようにマスクパターンを介して紫外線を照射し、現像を行っても良い。
別途、図3に示すように、溶剤22に第2樹脂16と染料17とを溶解させた溶液23を準備する。溶液23は、例えば、まず溶剤22に既に重合反応が完了した高分子材料である第2樹脂16を溶解させ、次に染料17を溶解させて製造する。溶液23は第2樹脂16と染料17とが均一になるように十分に撹拌する。十分に撹拌された溶液23を図2に示すように第1樹脂15で形成した所定の凹凸形状に充填するように塗布する。塗布する方法は第1樹脂15の場合と同様にスピンコート法やスプレー法等である。
次に、塗布した溶液23中の溶剤22を加熱保持して蒸発させて染料17を分子レベルで溶解した第2樹脂16を得る。
最後に透明基板18を接着剤19で回折格子11と接着する。回折格子11は透明基板12と透明基板18とに挟まれて、傷付きの防止や外部からの湿気やガスの浸入の防止といった外部環境からの保護がなされる。
以上説明した回折素子10、24は、光源20から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子11、25を構成する第1部材13と第2部材14とを備え一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスク21に出射する。
図6は、本実施の形態1の回折素子を応用した回折素子の断面図である。図6において、回折素子30は光源20から出射された光の進行方向に対して直列に配置された第1回折格子31と第2回折格子38とを備える。第1回折格子31は光源20から波長λ1と波長λ2の2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて第1回折格子31を構成する第1部材33と第2部材34とを備える。第1回折格子31は波長λ1の光は透過させ波長λ2の光は分離して第2回折格子38へ出射する。第2回折格子38は第1回折格子31から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて第2回折格子38を構成する第3部材40と第4部材41とを備える。第2回折格子38は波長λ1の光は分離し波長λ2の光は透過させて光ディスク21へ出射する。
第1回折格子31は透明基板32に形成される。また、第2回折格子38は透明基板39に形成される。そして第1回折格子31と第2回折格子38とは接着剤45で接着される。
第1部材33は第1樹脂35を備え2つの波長で所定の屈折率を持つ。第2部材34は染料37を分子レベルで溶解させた第2樹脂36を備えて所定の波長域に光吸収を持つ。第2部材34は波長λ1で第1部材33と同一の屈折率を持ち且つ波長λ2で第1部材33とは異なる屈折率を持つ。
一方、第3部材40は第3樹脂42を備え2つの波長で所定の屈折率を持つ。第4部材41は染料44を分子レベルで溶解させた第4樹脂43を備えて所定の波長域に光吸収を持つ。第4部材41は波長λ1で第3部材40と異なる屈折率を持ち且つ波長λ2で第3部材40とは同一の屈折率を持つ。
ここで第1部材33、第3部材40は第1部材13と同様であるのでその説明を援用する。また、第2部材34、第4部材41は第2部材14と同様であるのでその説明を援用する。このようにして、波長λ1の光と波長λ2の光をそれぞれ独立して回折することができる回折素子30を構成することができる。
そして、染料37を分子レベルで溶解させる第2樹脂36として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とするものであり、染料44を分子レベルで溶解させる第4樹脂43として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とするものである。染料37を分子レベルで溶解させる第2樹脂36や染料44を分子レベルで溶解させる第4樹脂43として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料37や染料44が妨げとなって第2樹脂36や第4樹脂43の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡りレーザ光が照射されて使用が繰り返されても、第1回折格子31も第2回折格子38も体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子30は長期間に渡り安定した特性を有する。
(実施の形態2)
本実施の形態2について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態2の光ピックアップ装置の概要を説明する。図7は、本実施の形態2における光ピックアップ装置の光学系を示す図、図8(a)は、本実施の形態2における光ピックアップ装置のカバーを外した上面図、図8(b)は、光ピックアップ装置の下面図である。
本実施の形態2の光ピックアップ装置50は光源20と実施の形態1で説明した回折素子10とを備える。光源20は実施の形態1で説明した通り、2つの波長λ1、λ2の光を光ディスク21に向けて出射する。回折素子10は、実施の形態1で説明した通り、光源20から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子11を構成する第1部材13と第2部材14とを備える。回折素子10は、一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスク21に出射する。第1部材13は第1樹脂15を備え2つの波長で所定の屈折率を持つ。第2部材14は染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を備えて所定の波長域に光吸収を持ち、一方の波長で第1部材13と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材13とは異なる屈折率を持つ。そして、染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とする。
染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り回折素子10に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子10は、長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子10を搭載する光ピックアップ装置50も長期間に渡り安定した特性を有する。
次に本実施の形態2の光ピックアップ装置50の光学系について図7を用いて詳細に説明する。光源20と回折素子10は実施の形態1で説明した通りであり、その説明を援用する。回折素子10はCDのトラッキング制御に用いられる光を生成する。
集積プリズム51はBK7等の光学ガラスで構成され、内部に回折素子10に近い方から順に3つの斜面51a、51b、51cを有する。斜面51aには偏光分離膜51dが形成されている。偏光分離膜51dは、誘電体膜で構成され、P偏光である光源20からの出射光を透過し、S偏光である光ディスク21からの反射光を反射する。斜面51bには波長選択偏光分離膜51eが形成されている。波長選択偏光分離膜51eは、誘電体膜で構成され、P偏光である出射光を透過し、S偏光である反射光のうち、波長λ1の光を透過し、波長λ2の光を反射する。斜面51cにはホログラム51fが形成されている。ホログラム51fには光ディスク21で反射された波長λ2の光が入射する。ホログラム51fには回折格子が形成されており、ホログラム51fは、光ディスク21からの波長λ2の反射光をホログラム51fに入射する領域に応じてフォーカス制御に用いられる光とトラッキング制御に用いられる光とに分離する。
コリメートレンズ52は、拡散光である光源20からの出射光をほぼ平行光にし、平行光である光ディスク21からの反射光を集束光にする。反射ミラー53は光ピックアップ装置50の大きさをコンパクトにするように光路を反射して折り曲げる。反射ミラー53は光源20からの光の一部を透過する。反射ミラー53を透過した光は受光器58に入射し、光源20を出射する光の光量の制御に用いられる。立上プリズム54は光ディスク21に対してほぼ平行であった光源21からの出射光を光ディスク21に対してほぼ直角な方向に立上げるためのプリズムである。立上プリズム54は立上ミラーとしても良い。
ホログラム素子55は、偏光ホログラム55aと波長板55bとを備える。偏光ホログラム55aは光ディスク21からの反射光のうち波長λ1の光にのみ作用するよう波長選択性のある材料で構成されている。偏光ホログラム55aには回折格子が形成されており、偏光ホログラム55aは、光ディスク21からの波長λ1の反射光を偏光ホログラム55aに入射する領域に応じてフォーカス制御に用いられる光とトラッキング制御に用いられる光とに分離する。波長板55bはP偏光である光源20からの出射光を円偏光に変換し、円偏光である光ディスク21からの反射光をS偏光に変換する。波長板55bは波長λ1と波長λ2の両方の波長に作用するよう屈折率、厚みが設定されている。ホログラム素子55は対物レンズ56とともに対物レンズ駆動装置62に搭載され、対物レンズ56と一緒に光ディスク21に対してフォーカス方向、トラッキング方向に動く。
対物レンズ56は2焦点対物レンズで、光源20から出射された波長λ1の光、波長λ2の光がそれぞれ光ディスク21の記録面で焦点を結ぶように構成されている。2焦点対物レンズとしては、集光レンズ及びフレネルレンズまたはホログラムレンズの組合せ、DVD用集光レンズにCD再生時に開口制限手段を設ける組合せ等を用いることができる。
受光器57は光ディスク21からの反射光を受光して、再生用の電気信号、フォーカス制御用の電気信号、トラッキング制御用の電気信号等に変換して出力する。受光器58は光源20からの出射光を受光して、出射光の出力制御用の電気信号に変換して出力する。
光源20から出射された波長λ1の光は、回折素子10の回折格子11をそのまま透過して集積プリズム51に入射しそのまま透過してコリメートレンズ52に入射する。コリメートレンズ52を透過した出射光は、反射ミラー53、立上プリズム54、ホログラム素子55、対物レンズ56を経由して光ディスク21であるDVDに入射する。光ディスク21で反射された反射光は対物レンズ56を経由してホログラム素子55に入射する。偏光ホログラム55aでフォーカス制御用の光とトラッキング制御用の光に分離された光ディスク21からの反射光は、立上プリズム54、反射ミラー53、コリメートレンズ52を経由して集積プリズム51に入射する。反射光は波長選択偏光分離膜51eを透過し、偏光分離膜51dで反射して、受光器57に入射する。
一方、光源20から出射された波長λ2の光は、回折素子10の回折格子11でトラッキング制御用の光に分離されて透過し、集積プリズム51に入射しそのまま透過してコリメートレンズ52に入射する。コリメートレンズ52を透過した出射光は、反射ミラー53、立上プリズム54、ホログラム素子55、対物レンズ56を経由して光ディスク21であるCDに入射する。光ディスク21で反射された反射光は対物レンズ56を経由してホログラム素子55に入射して分離されずに透過し、立上プリズム54、反射ミラー53、コリメートレンズ52を経由して集積プリズム51に入射する。反射光は波長選択偏光分離膜51eで反射し、ホログラム51fでフォーカス制御用の光とトラッキング制御用の光に分離して、受光器57に入射する。
次に光ピックアップ装置50の構成について説明する。図8において、基台59は光ピックアップ装置50の骨格をなすもので、基台59に各種光学部品を始めとする光ピックアップ装置50を構成する部品が直接または取り付け部材を介して取付けられる。基台59はZn合金、Mg合金等の合金材料あるいは硬質樹脂材料等で形成される。
光源20、回折素子10、集積プリズム51、受光器57は1つの結合部材60上に取付けられて光源モジュール61を構成する。光源モジュール61は結合部材60を介して基台59に取付けられる。また、対物レンズ56とホログラム素子55は対物レンズ駆動装置62に搭載され、対物レンズ駆動装置62が基台59に取付けられる。コリメートレンズ52、反射ミラー53、立上プリズム54、受光器58は、直接または他の部材を介して基台59に取付けられる。
このような構成の光ピックアップ装置50は、トラッキング制御用の光を分離する回折素子10が長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子10を搭載する光ピックアップ装置50も長期間に渡り安定した特性を有する。なお、回折素子10は回折素子24としても構わない。
図9は、本実施の形態2における光ピックアップ装置の別構成の光学系を示す図である。図9における光学系は実施の形態1で説明した回折素子30を備えている。回折素子30と光源20は実施の形態1の説明を援用する。回折素子30は波長λ1の光、波長λ2の光をそれぞれ独立にトラッキング制御に用いられる光に分離する。
集積プリズム71はBK7等の光学ガラスで構成され、回折素子30に近い方から順に内部に斜面71a、71bを備える。斜面71aには偏光分離膜71cが形成される。偏光分離膜71cはP偏光である光源20からの出射光を透過し、S偏光である光ディスク21からの反射光を反射する。斜面71bには非点収差生成素子71dが形成される。非点収差生成素子71dは、光ディスク21からの反射光の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器76の前側と後側となるようにする。この光はフォーカス制御に用いられる。
波長板72は波長板55b、コリメートレンズ73はコリメートレンズ52、立上ミラー74は立上プリズム54、対物レンズ75は対物レンズ56、受光器76は受光器57、受光器77は受光器58とほぼ対応するのでそれらの説明を援用する。但し、反射ミラー53を廃止し、立上ミラー74を透過した出射光が受光器77に入射するようにした。また、光源20、回折素子30、集積プリズム71、受光器76は1つの結合部材78に取付けられ光源モジュール79を構成する。また、対物レンズ75は対物レンズ駆動装置80に搭載される。
光源20からの波長λ1及び波長λ2の出射光は回折素子30に入射し、波長λ1の光は第2回折格子38でトラッキング制御用に分離され、波長λ2の光は第1回折格子31でトラッキング制御用に分離されて光ディスク21に向けて出射される。出射光は波長板72、コリメートレンズ73、立上ミラー74、対物レンズ75を経由して光ディスク21に集束して入射する。光ディスク21で反射された反射光は、対物レンズ75、立上ミラー74、コリメートレンズ73、波長板72を経由して集積プリズム71に入射する。反射光は偏光分離膜71cで反射し、非点収差生成素子71dでフォーカス制御用の光を生成して受光器76に入射する。受光器76、77に入射した光は電気信号に変換されて出力される。
回折素子30は、長期間に渡り回折素子30に光が照射されて使用が繰り返されても、第1回折格子31、第2回折格子38は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子30は、長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子30を搭載する光ピックアップ装置も長期間に渡り安定した特性を有する。
図10は、本実施の形態2における光ピックアップ装置のさらに別構成の光学系を示す図である。この光学系は図9に示した光学系に別の光源81を含む構成が追加された構成である。
この図10の構成において、光源20が出射する光は波長λ1=約650nmのDVD用の光と波長λ2=約780nmのCD用の光とする。また、光源81が出射する光は波長λ3=約405nmのBD用の光とする。
集積プリズム82は、光源81から出射された光を光ディスク21に向かわせ、光ディスク21で反射された反射光を光源81ではなく、受光器84に向かわせるようにビームスプリッタとして働く。非点収差生成素子83は、光ディスク21からの反射光の光軸を含んで互いに直交する2つの断面における焦点位置をそれぞれ受光器84の前側と後側となるようにする。この光はフォーカス制御に用いられる。受光器84は、光ディスク21からの反射光を受光し、BDの再生信号用の電気信号、フォーカス制御用の電気信号、トラッキング制御用の電気信号等に変換して出力する。光源81、集積プリズム82、非点収差生成素子83、受光器84は、結合部材85に取付けられ、光源モジュール86とされる。
ホログラム87は、光源81から出射された光はそのまま透過する。また、ホログラム87は光ディスク21からの反射光を回折してホログラム87に入射した位置によりトラッキング制御に用いられる光とフォーカス制御に用いられる光とに分離する。
ビームスプリッタ88は、内部に斜面を有し、斜面において波長λ1の光と波長λ2の光は光源20からの出射光も光ディスク21からの反射光もそのまま透過する。また、ビームスプリッタ88は、斜面において波長λ3の光は光源81からの出射光も光ディスク21からの反射光も反射する。このようにして、ビームスプリッタ88は、光源20からの出射光と光源81からの出射光とをほぼ1つの光路上に合わせ、光ディスク21からの反射光を受光器76へ向かう光と受光器84へ向かう光とに分離する。
波長板89は3つの波長に対応する反射板である。コリメートレンズ90は3つの波長の光をほぼ平行光にする。
立上ミラー91は、それまで光ディスク21にほぼ平行であった波長λ1の光と波長λ2の光とを反射して光ディスク21にほぼ直角な方向に立上げ、波長λ3の光を透過する。対物レンズ95は、立上ミラー91が立上げた光を集束光に変換して光ディスク21の所定の記録面に集束させる。
立上ミラー92は、それまで光ディスク21にほぼ平行であった波長λ3の光を反射して光ディスク21にほぼ直角な方向に立上げる。対物レンズ94は、立上ミラー92が立上げた光を集束光に変換して光ディスク21の所定の記録面に集束させる。立上ミラー92は波長λ1の光と波長λ2の光とを透過させる。また、立上ミラー92は波長λ3の光の一部を透過させる。
立上ミラー92を透過した光は受光器93に入射する。受光器93に入射した光は光源20からの出射光と光源81からの出射光の出力を制御するのに用いられるように電気信号に変換されて出力される。
対物レンズ駆動装置96は対物レンズ94と対物レンズ95とを1つのホルダ上に配置して対物レンズ94と対物レンズ95とをそれぞれフォーカス方向、トラッキング方向に移動させる。
この図10の構成においても、回折素子30は、長期間に渡り回折素子30に光が照射されて使用が繰り返されても、第1回折格子31、第2回折格子38は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子30は、長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子30を搭載する光ピックアップ装置も長期間に渡り安定した特性を有する。
(実施の形態3)
本実施の形態3について図面を参照しながら説明する。図11は、本実施の形態3における光ピックアップモジュールの構成図、図12は、本実施の形態3における光ディスク装置の構成図、図13は、本実施の形態3における光ディスク装置のサーボの流れを示す図である。本実施の形態3において、光ディスク装置110は回折素子10、光ピックアップ装置50を搭載しているものとして説明するが、図4で説明した回折素子24、図6で説明した回折素子30、図9、図10で説明した光学系を有する光ピックアップ装置を搭載しているものとしても構わない。
図11において、光ディスク21を回転駆動する回転駆動部及び光ピックアップ装置50を回転駆動部に対して近づけたり離したりする移動部を備える光ディスク装置110の駆動機構を光ピックアップモジュール100という。ベース101は光ピックアップモジュール100の骨組みをなすもので、光ピックアップモジュール100はベース101に直接または間接に各構成部品が配置されて構成される。
回転駆動部は光ディスク21を載置するターンテーブル102aを有するスピンドルモータ102を備えている。スピンドルモータ102はベース101に固定される。スピンドルモータ102は光ディスク21を回転させる回転駆動力を生成する。
移動部はフィードモータ103、スクリューシャフト104、メインシャフト105、サブシャフト106を備えている。フィードモータ103はベース101に固定される。フィードモータ103は光ピックアップ装置50が光ディスク21の内周と外周の間を移動するために必要な回転駆動力を生成する。フィードモータ103としてステッピングモータ、DCモータなどが使用される。スクリューシャフト104はらせん状に溝が掘られており、直接または数段のギアを介してフィードモータ103に接続される。本実施の形態3では直接フィードモータ103と接続される。メインシャフト105、サブシャフト106はそれぞれ両端で保持部材を介してベース101に固定される。メインシャフト105、サブシャフト106は光ピックアップ装置50を光ディスク21の半径方向に移動自在に支持する。光ピックアップ装置50はスクリューシャフト104の溝と噛み合うガイド歯を有するラック107を備える。ラック107がスクリューシャフト104に伝達されたフィードモータ103の回転駆動力を直線駆動力に変換するために光ピックアップ装置50は光ディスク21の内周と外周の間を移動することができる。
なお、回転駆動部は光ディスク21を所定の回転速度で回転させることができる構成であれば、本実施の形態3で説明した構成に限るものではない。また移動部は光ピックアップ装置50を光ディスク21の内周と外周の間の所定の位置に移動させることができる構成であれば、本実施の形態3で説明した構成に限るものではない。
光ピックアップ装置50は実施の形態2で説明したもので、図8の構成にカバー63を取付けたものである。本実施の形態3の光ディスク装置110に搭載される光ピックアップ装置50は光源20と実施の形態1で説明した回折素子10とを備える。光源20は実施の形態1で説明した通り、2つの波長λ1、λ2の光を光ディスク21に向けて出射する。回折素子10は、実施の形態1で説明した通り、光源20から2つの波長の光を入射し、光の入射面内で交互に配列されて回折格子11を構成する第1部材13と第2部材14とを備える。回折素子10は、一方の波長の光は透過させ他方の波長の光は分離して光ディスク21に出射する。第1部材13は第1樹脂15を備え2つの波長で所定の屈折率を持つ。第2部材14は染料17を分子レベルで溶解させた第2樹脂16を備えて所定の波長域に光吸収を持ち、一方の波長で第1部材13と同一の屈折率を持ち且つ他方の波長で第1部材13とは異なる屈折率を持つ。そして、染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたことを特徴とする。
染料17を分子レベルで溶解させる第2樹脂16として既に重合反応が完了した高分子材料を用いたため、染料17が妨げとなって第2樹脂16の硬化のための重合反応が完全に終了しないということはない。従って、長期間に渡り回折素子10に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子10は、長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子10を搭載する光ディスク装置110も長期間に渡り安定した特性を有する。
光ピックアップ装置50の対物レンズ56から出射されるレーザ光が光ディスク21に対し直角に入射するように、保持部材を構成する調整機構でメインシャフト105、サブシャフト106の傾きを調整する。
図12において、光ディスク装置110の筐体111は上部筐体111aと下部筐体111bとを組合せてネジなどを用いて互いに固定して構成されている。トレイ112は筐体111に出没自在に設けられている。トレイ112はカバー108を設けた光ピックアップモジュール100を下面側から配置する。カバー108は開口を有し、光ピックアップ装置50の対物レンズ56及びスピンドルモータ102のターンテーブル102aを露出させる。さらに本実施の形態3の場合、フィードモータ103も露出させて、光ピックアップモジュール100の厚さが薄くなるようにしている。トレイ112は開口を有し、対物レンズ56及びターンテーブル102a、カバー108の少なくとも一部を露出させる。ベゼル113はトレイ112の前端面に設けられて、トレイ112が筐体111内に収納された時にトレイ112の出没口を塞ぐように構成されている。ベゼル113にはイジェクトスイッチ114が設けられ、イジェクトスイッチ114を押すことで、筐体111とトレイ112との係合が解除され、トレイ112は筐体111に対し出没が可能な状態となる。レール115はそれぞれトレイ112の両側部及び筐体111の双方に摺動自在に取付けられる。筐体111内部やトレイ112内部には図示していない回路基板があり、信号処理系のICや電源回路などが搭載されている。外部コネクタ116はコンピュータ等の電子機器に設けられた電源/信号ラインと接続される。そして、外部コネクタ116を介して光ディスク装置110内に電力を供給したり、あるいは外部からの電気信号を光ディスク装置110内に導いたり、あるいは光ディスク装置110で生成された電気信号を電子機器などに送出する。
光ピックアップ装置50のフォーカス制御とトラッキング制御の流れを説明する。図13において、光源20から出射されたDVD用の波長λ1の出射光は、回折素子10の回折格子11でそのまま透過して光ディスク21に入射する。光ディスク21で反射した反射光はホログラム素子55の偏光ホログラム55aでフォーカス制御用の光とトラッキング制御用の光とに分離されて受光器57に入射する。光源20から出射されたCD用の波長λ2の出射光は、回折素子10の回折格子11でトラッキング制御に用いられる光に分離され、光ディスク21に入射する。光ディスク21で反射された反射光は集積プリズム51のホログラム51fでフォーカス制御用の光とトラッキング制御用の光とに分離されて受光器57に入射する。
受光器57に入射した波長λ1の光及び波長λ2の光は電気信号に変換され、光ディスク装置110本体の前記図示していない回路基板にあるアナログ信号処理部110aに送られる。
アナログ信号処理部110aは入力された信号に演算・帯域処理を行い、サーボ処理部110bに出力する。サーボ処理部110bはアナログ信号処理部110aからの信号を基にフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを生成してモータ駆動部110cに出力する。モータ駆動部110cは入力されたフォーカスエラー信号FES及びトラッキングエラー信号TESを基に対物レンズ56を搭載する対物レンズ駆動部62を駆動する電流を生成する。これにより光ディスク21に集光した光束の焦点のずれ及びトラックに対するずれが極小になるように制御される。
また、コントローラ110dにはアナログ信号処理部110a、サーボ処理部110b、モータ駆動部110cの各部から送られる信号が入力される。コントローラ110dはこれらの信号の演算処理等を行い、この演算処理の結果(信号)を各部に送出し、各部にて駆動、処理を実行させることで各部の制御を行う。
以上のように、本実施の形態3の光ディスク装置110は実施の形態1の回折素子10を備えている。長期間に渡り回折素子10に光が照射されて使用が繰り返されても、回折格子11は体積変化を起こしにくい。その結果、回折素子10は、長期間に渡り安定した特性を有するため、この回折素子10を搭載する光ディスク装置110も長期間に渡り安定した特性を有する。