本発明は、LCD(液晶表示素子)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、携帯電話等の表示画面上に設けられる転写用反射防止フィルム並びにそれを用いた転写方法及び表示装置に関するものである。
CRT(ブラウン管)、LCD、PDP、携帯電話、携帯用情報末端等ディスプレイ分野の発展に伴い、高画質、高輝度なディスプレイ本来の機能を発揮させるためには反射防止層を各種ディスプレイ表面に設けることが必要である。そのため、反射防止性能を発揮できるようにディスプレイ前面板に直接蒸着又はコーティングする方法、更には支持フィルム上に反射防止層を載せた反射防止フィルムを貼付けることにより機能付与が行われてきた。しかし、ディスプレイに反射防止フィルムを貼合せる方法では平面的に反射防止機能を付与することしかできない上に、貼り合せの手間がかかるという問題があった。
近年、曲面を有する表面への反射防止処理の方法として転写用反射防止フィルムを用い、効率良く反射防止機能をディスプレイ表面等へ付与する方法が提案されている。例えば、離型性を有するベースフィルム上に、低屈層(低屈折率層)としてフッ素系ハードコート層、高屈層(高低屈折率層)として1〜10μmの膜厚を有する金属酸化物を含有する導電性ハードコート層を有し、更にその上に接着層としてアクリル樹脂を有するディスプレイ前面板用転写材が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、離型性を有する支持フィルム上に、低屈層、高屈層、更にその上にハードコート機能を有する保護層、保護層の更にその上に接着層としてアクリル樹脂を含む低反射層を有する転写箔(転写用反射防止フィルム)及びそれを用いた成形品の製造方法が知られている(例えば、特許文献2を参照)。その低屈層は、屈折率1.3〜1.5、膜厚0.08〜0.15μmの有機ポリマーからなる層である。高屈層は屈折率1.5〜1.9、膜厚0.08〜5μmの有機ポリマーからなる層である。
しかしながら、これらの転写用反射防止フィルムは、ハードコート層と接着層とが別々の層になっているため、両層間の密着性が低下したり、製造工程が増え、製作に手間を要していた。そこで、支持フィルム上に反射防止層を設け、その上にハードコート性と接着性とを有する紫外線硬化性接着剤層を設けた転写用反射防止フィルムが開示されている(例えば、特許文献3を参照)。そして、支持フィルム上に反射防止層を設け、その上に紫外線硬化性樹脂とアクリル系樹脂との混合物を塗布、乾燥して得られた転写用反射防止フィルムを転写対象物に紫外線硬化性接着剤層を介して貼り付けた状態で加熱処理後、紫外線照射によって紫外線硬化性接着剤層を硬化させる。これにより、転写用反射防止フィルムが転写対象物に転写される。
特開平11−288225号公報(第2頁及び第4頁)
国際公開WO01/092006号公報(第2頁及び第12頁)
特開2003−245978号公報(第2頁及び第7頁)
ところが、特許文献3に開示されている転写用反射防止フィルムは、ハードコート性と接着性とを有する紫外線硬化性接着剤層が紫外線硬化性樹脂とアクリル系樹脂との混合物を塗布、乾燥して得られ、その転写用反射防止フィルムが転写対象物に貼着されてから加熱硬化及び紫外線硬化が行われる。このため、転写対象物に転写される前の転写用反射防止フィルムの表面にはタックが生じ、そのタックに起因するベタツキのために取扱いが容易ではなく、作業性が悪いという問題があった。
また、前記加熱温度は例えば70℃であり(特許文献3の第7頁段落0064)、ハードコート性と接着性とを有する紫外線硬化性接着剤層を形成するアクリル系樹脂のガラス転移温度よりも低い温度である。従って、転写対象物に対する密着性を十分に発揮することができないという問題があった。
本発明は、上記の従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。即ち本発明の目的は、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であると共に、転写対象物に対する密着性に優れた転写用反射防止フィルム並びにそれを用いた転写方法及び表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明における第1の発明の転写用反射防止フィルムは、離型性を有する支持フィルム上に反射防止層が設けられ、該反射防止層上に活性エネルギー線硬化性成分が硬化されたハードコート性及び加熱接着性を有する層が設けられ、さらにハードコート性及び加熱接着性を有する層上には、転写対象物との間の密着性を向上させるためのプライマー層が設けられている転写用反射防止フィルムであって、
ハードコート性及び加熱接着性を有する層はメタクリル酸メチルポリマーを含む組成物により形成された層であって、プライマー層はメタクリル酸メチルポリマーを含む組成物により形成された層であることを特徴とするものである。
第2の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第1の発明の転写用反射防止フィルムのプライマー層を転写対象物に密接させて加熱処理を行い、プライマー層をハードコート性及び加熱接着性を有する層と一体化させ、その後に支持フィルムを剥離して反射防止層の転写を行うことを特徴とするものである。
第3の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第1の発明の転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティに保持し、転写用反射防止フィルムのプライマー層に加熱溶融樹脂を射出することによって加熱処理を行い、加熱溶融樹脂から形成される転写対象物に転写用反射防止フィルムを密着させた後、支持フィルムを剥離して反射防止層の転写を行うことを特徴とするものである。
第4の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第2又は第3の発明において、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層は、活性エネルギー線硬化性成分と加熱溶融可能な樹脂とで形成されることを特徴とするものである。
第5の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第4の発明において、前記加熱処理は、加熱溶融可能な樹脂のガラス転移温度より高い温度で行われることを特徴とするものである。
第6の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第2から第5のいずれかの発明において、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層の屈折率(n1)と転写対象物の屈折率(n2)との差が0.05未満であることを特徴とするものである。
第7の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法は、第2から第6のいずれかの発明において、前記反射防止層が活性エネルギー線硬化性組成物から形成されたものであることを特徴とするものである。
第8の発明の表示装置は、第1の発明の転写用反射防止フィルムの反射防止層が表示画面上に転写されて構成されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の転写用反射防止フィルムは、反射防止層上に活性エネルギー線硬化性成分が硬化されたハードコート性及び加熱接着性を有する層が設けられて構成されている。このため、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易である。また、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理することにより、転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性が向上する。さらに、ハードコート性及び加熱接着性を有する層上には、転写対象物との間の密着性を向上させるためのプライマー層が設けられている。従って、プライマー層の作用により転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性を向上させることができる。
第2の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、ハードコート性及び加熱接着性を有する層上には、転写対象物との間の密着性を向上させるためのプライマー層が設けられ、該プライマー層を転写対象物に密接させて加熱処理を行うことにより、プライマー層がハードコート性及び加熱接着性を有する層と一体化される。その後、支持フィルムを剥離して反射防止層の転写が行われる。このため、転写を容易に行うことができると共に、プライマー層の作用により転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性を向上させることができる。
第3の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティに保持し、プライマー層に加熱溶融樹脂を射出することによって加熱処理と転写を行い、転写対象物に転写用反射防止フィルムを転写させた後、支持フィルムを剥離することにより行われる。従って、第1の発明の効果に加えて、転写を容易に行うことができると共に、プライマー層の作用により転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性を向上させることができる。
第4の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、ハードコート性及び加熱接着性を有する層は、活性エネルギー線硬化性成分と加熱溶融可能な樹脂とで形成されている。このため、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化性成分が硬化されて転写用反射防止フィルムが得られ、その表面にタックの発生がなく、取扱いが容易である。一方、転写時に加熱処理を行うことにより、加熱溶融可能な樹脂が加熱溶融されて転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性が向上する。
第5の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、加熱処理が加熱溶融可能な樹脂のガラス転移温度より高い温度で行われる。このため、転写時に加熱溶融可能な樹脂が十分に溶融され、転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性がより向上する。
第6の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、ハードコート性及び加熱接着性を有する層の屈折率(n1)と転写対象物の屈折率(n2)との差が0.05未満である。このため、ハードコート性及び加熱接着性を有する層と転写対象物との屈折率差が小さく、光の干渉むらを抑制することができる。
第7の発明の転写用反射防止フィルムの転写方法では、反射防止層が活性エネルギー線硬化性組成物から形成されたものである。このため、反射防止層とハードコート性及び加熱接着性を有する層との間の密着性を向上させ、転写用反射防止フィルムの硬度を高めることができる。
第8の発明の表示装置は、転写用反射防止フィルムの転写物が表示画面上に設けられて構成されている。従って、表示装置について第1の発明の効果を発揮でき、反射が抑制されて画面の視認性を向上させることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の転写用反射防止フィルムは、離型性を有する支持フィルム上に反射防止層が設けられ、該反射防止層上に活性エネルギー線硬化性成分が硬化されたハードコート性及び加熱接着性を有する層が設けられて構成されている。ここで、ハードコート性とは、表面硬度を上げて(例えば鉛筆硬度4H〜5H)表面に傷が付きにくくする性質を意味する。なお、転写用反射防止フィルムを転写対象物に転写したときには、反射防止層が表面に位置するが、ハードコート性及び加熱接着性を有する層が存在することで、表面硬度を上げることができる。また、加熱接着性とは、加熱する(例えば100〜300℃)ことにより接着性を発現する性質を意味する。
この転写用反射防止フィルムを転写対象物に転写させる場合には、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理と転写を行った後に、支持フィルムを剥離することにより行われる。これにより、加熱プレス転写物が得られる。或は、転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティに保持し、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層に加熱溶融樹脂を射出することによって加熱処理と転写を行い、加熱溶融樹脂から形成される転写対象物に転写用反射防止フィルムを転写させた後、支持フィルムを剥離することにより行われる。これにより、インモールド成形転写物が得られる。
前記離型性を有する支持フィルムは反射防止層を支持するためのもので、その種類は特に限定されず、従来公知の全ての支持フィルムが使用可能である。支持フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ノルボルネンフィルム〔JSR(株)製、アートン等〕等の樹脂フィルム、布、紙等を挙げることができる。これらの中では、軽量性や取り扱い易さの点から樹脂フィルムが好ましい。
前記反射防止層は、その表面で反射される光を抑制するもので、支持フィルム上に低屈折率層だけの単層形態や、低屈折率層及び高屈折率層からなる2層形態や、低屈折率層、高屈折率層及び中屈折率層からなる3層形態等が挙げられる。反射防止層を形成する方法としては、ドライコーティング法又はウエットコーティング法が採用される。
ドライコーティング法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等から適宜選択できる。ウェットコーティング法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、ダイコート法、リバースコート法等が挙げられるが、薄膜塗工性及び経済性の点からグラビアコート法又はリバースコート法が好ましい。ウェットコーティング法では、塗布・乾燥により成膜した後、必要に応じて紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射や加熱により硬化反応を行って層を形成することができる。このうち、活性エネルギー線による硬化反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行うことが好ましい。
前記反射防止層中の低屈折率層の屈折率としては、反射防止層の機能を発揮させるために、形成される層がその層に隣接する層より低屈折率であることを要件とし、その屈折率は1.30〜1.55の範囲にあることが好ましい。この屈折率が1.55を超える場合にはウェットコーティング法で十分な反射防止効果を得ることが困難である。
低屈折率層を構成する材料としては、酸化珪素、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム等の無機物、フッ素を含む化合物(以下、含フッ素化合物と略記する。)の単独又は混合物、含フッ素化合物の重合体を含む組成物、又は無機の微粒子からなる組成物等を用いることができる。また、フッ素を含まない化合物(以下、非フッ素化合物と略記する。)やその重合体をバインダーとして用いることができる。前記非フッ素化合物としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、単官能又は多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の珪素化合物が挙げられる。
含フッ素化合物は特に限定されるものではないが、例えば含フッ素単官能(メタ)アクリレート、含フッ素多官能(メタ)アクリレート、含フッ素イタコン酸エステル、含フッ素マレイン酸エステル、含フッ素珪素化合物等の単量体及びそれらの重合体等が挙げられる。これらの中では、反応性の観点より含フッ素(メタ)アクリレートが好ましく、特に含フッ素多官能(メタ)アクリレートが、硬度、屈折率の点より最も好ましい。
前記含フッ素化合物の重合体又はその他の含フッ素化合物の重合体としては、前記含フッ素化合物の単独重合体、共重合体又は非フッ素化合物との共重合体等の直鎖状重合体、鎖中に炭素環や複素環を含む重合体、環状重合体、櫛型重合体等が挙げられる。
低屈折率層を構成する材料の有機又は無機の微粒子としては、従来公知のものを用いることができる。例えば酸化珪素微粒子、有機樹脂微粒子等が挙げられる。微粒子の平均粒径は層の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.2μm以下であることが好ましい.平均粒径が大きくなると、光の散乱が生じる等、低屈折率層の光学性能が低下するため好ましくない。
また、必要に応じて微粒子表面を各種カップリング剤等により修飾することができる。各種カップリング剤としては例えば、有機基で置換された珪素化合物、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン等の金属のアルコキシド、有機酸塩等が挙げられる。特に表面を(メタ)アクリロイル基等の反応性基で修飾することにより、硬度の高い層を形成することができる。反射防止層が2層構造を有する場合には、高屈折率層は隣接して形成される低屈折率層より屈折率を高くすることが必要であるので、その屈折率は1.60〜1.90の範囲内であることが好ましい。屈折率が1.60未満では十分な反射防止効果を得ることが難しく、またウェットコーティングで1.90を超える層を形成するのは困難である。また、中屈折率層を設けた多層構造とする場合には、積層する高屈折率層より屈折率が低く、低屈折率層より屈折率が高くなるという要件を満たす限り、その屈折率は特に限定されない。
反射防止層の厚みは支持フィルムの種類、形状及び反射防止層の構造によって異なるが、1層あたり可視光波長と同じ厚み又はそれ以下の厚みが好ましい。例えば、可視光線に対して反射防止効果を発揮させる場合には、高屈折率層の光学膜厚nH・dは500≦4nH・d(nm)≦750、及び低屈折率層の光学膜厚nL・dは、400<4nL・d(nm)≦650を満たすように設計される。但し、nH、nLはそれぞれ高屈折率層、低屈折率層の屈折率、dは層の厚みである。
高屈折率層を構成する材料は特に限定されるものではなく、無機材料及び有機材料を用いることができる。無機材料としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(以後、ITOと略す。)等の微粒子が挙げられる。ITO等の導電性微粒子を用いた場合には表面抵抗を下げることができるため、帯電防止能も更に付与することができる。特に導電性の面より酸化錫、ITO、屈折率の点より酸化チタン、酸化セリウム及び酸化亜鉛が好ましい。また、有機材料としては、例えば屈折率が1.60〜1.80であるような重合性単量体を含む組成物を重合硬化したもの等を用いることができる。
無機材料の微粒子を含む高屈折率層は、ウェットコーティング法により形成することができる。その場合には、前記屈折率が1.60〜1.80であるような重合性単量体のみならず、それ以外の重合性単量体及びこれらの重合体を含む組成物をウェットコーティング時のバインダーとして用いることができる。無機材料の微粒子の平均粒径は層の厚みを大きく超えないことが好ましく、特に0.1μm以下であることが好ましい。平均粒径が大きくなると、散乱が生じる等、高屈折率層の光学性能が低下するため好ましくない。また、必要に応じて微粒子表面を各種カップリング剤等により修飾することができる。各種カップリング剤としては例えば、有機基で置換された珪素化合物、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン等の金属のアルコキシド、有機酸塩等が挙げられる。
前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成するための組成物としては、活性エネルギー線照射により硬化可能であって、かつ硬化後の加熱処理により転写用反射防止フィルムを転写対象物に密接させて加熱プレス転写物やインモールド成形転写物を得ることができる限り、全て使用可能である。そのような組成物の好ましい例は、活性エネルギー線硬化性成分と加熱溶融可能な樹脂との混合物である。活性エネルギー線硬化性成分としては、電子線等の強力な活性エネルギー線によって架橋・硬化する場合には活性エネルギー線硬化性単量体単独でよいが、紫外線(UV)等の比較的弱い活性エネルギー線で硬化する場合には活性エネルギー線硬化性単量体と光重合開始剤との混合物を用いることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性単量体としては、紫外線等の活性エネルギー線で硬化性のものであればいずれも使用することができる。アクリルエステル類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。この中では、多官能であるジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。また、ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。このような化合物の市販品としては、例えば、(株)三和ケミカル製商品名:ニカラックMX−302、東亜合成(株)製商品名:アロニックスM−400、M−408、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、M−210、M−215、M−220、M−225、M−233、M−240、M−245、M−260、M−270、M−1100、M−1200、M−210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬(株)製商品名:KAYARADD−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA1Z−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学(株)製商品名:ライトアクリレートPE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。また、高硬度であるものとして、無機微粒子を、分子内に重合性不飽和基を含むシランカップリング剤等で修飾しても良い。修飾される無機微粒子の例を挙げると、ケイ素酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品である。その具体例を挙げると、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカエ業(株)製商品名:E220A、E220、富土シリシア(株)製商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製商品名:SGフレーク等である。
また、前記光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生し、重合を開始させることができるものであれば特に制限されない。光重合開始剤として例えば、チオキサントン系重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤、アントラキノン系重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤として具体的には、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシー1,2−ジフェニルエタンー1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4´−ジメトキシベンゾフェノン、4,4´−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシー2−メチルプロパンー1−オン、2−ヒドロキシー2−メチルー1−フェニルプロパンー1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルー1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノープロパンー1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンー1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニルー(2−ヒドロキシー2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。光重合開始剤の市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ(株)製商品名:イルガキュア184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア1116、1173、BASF社製商品名:ルシリンTPO、UCB杜製商品名:ユベクリルP36、フラテツリ・ランベルティ社製商品名:エザキュア−KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KT046、KIP75/B等を挙げることができる。また、活性エネルギー線硬化性と光重合開始性の両方の機能を含むものとして、SD−318〔大日本インキ化学工業(株)製〕、有機無機ハイブリッドハードコート材料Z7501、Z7503、Z7523、Z7524、Z7521〔いずれもJSR(株)製〕が挙げられる。これらの中では、有機無機ハイブリッドハードコート材料Z7501、Z7503、Z7523、Z7524、Z7521は硬化後、より高強度な層が得られる点から好ましい。
前記加熱溶融可能な樹脂は、加熱処理によって溶融し、接着性等の機能を発現できる樹脂であれば良く、特に制限されるものではない。その例としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂(スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンオキシド−スチレン共重合樹脂等)、ポリオレフイン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、オレフィン−マレイミド系共重合樹脂等が挙げられる。
これらの中では、ガラス転移温度(Tg)が80℃以上の加熱溶融可能な樹脂が好ましく、高温下の環境においても、物性の変化が起こりにくい点からガラス転移温度が100℃以上の加熱溶融可能な樹脂がより好ましい。そのような高いガラス転移温度を有する加熱溶融可能な樹脂として、アクリル系樹脂であるポリメチルメタクリレート(PMMA、Tgは100℃)、ポリカーボネート樹脂(PC、Tgは140℃)又はオレフィン−マレイミド共重合樹脂(Tgは140℃)が挙げられる。
前記活性エネルギー線硬化性成分と加熱溶融可能な樹脂との質量比は、活性エネルギー線硬化性成分/加熱溶融可能な樹脂=7/3〜3/7であることが好ましい。この範囲を外れると、活性エネルギー線硬化性成分及び加熱溶融可能な樹脂の双方の機能をバランス良く発揮することが難しくなる。前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層としては、活性エネルギー線を照射して硬化することによって常温でタック感や流動性のない層となり、かつ活性エネルギー線によって硬化した後、加熱溶融することが可能であるような層構成が好ましい。更に、ハードコート性及び加熱接着性を有する層は活性エネルギー線の照射により硬化した後には、加熱溶融しない限り、非常に高い硬度を示すものが好ましい。そのような観点から、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成する組成物の成分設計がなされる。
また、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層の屈折率(n1)は、転写対象物の屈折率(n2)との差が0.05未満となるように、転写対象物の屈折率に近づけて設計することが好ましい。ハードコート性及び加熱接着性を有する層の屈折率と転写対象物の屈折率との屈折率差が0.05以上になると、ハードコート性及び加熱接着性を有する層と転写対象物との界面で生じる反射光が干渉するため、転写対象物表面が油染みのようになることがある。また、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層の厚みは、0.05〜50μmであることが好ましく、成形加工性の良さ、コストの面から0.05〜20μmであることがより好ましい。
更に、ハードコート性及び加熱接着性を有する層には、顔料、色素等を添加して分散、或は溶解しても良い。顔料としては、シリカ等の公知の耐擦傷性の材料や、彩色のための無機材料から選択することができる。前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層を設けた後、ハードコート性及び加熱接着性を有する層上に、剥離フィルムを付与し、使用時まで表面を保護するように構成しても良い。
前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成する組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、スプレーコート法、リップコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法、押出しコート法、スクリーンコート法等の公知の方法が挙げられる。また乾燥方法としては、温風による乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥、遠赤外線ヒーターを使用した乾燥、或は赤外線ヒーターと温風を併用した乾燥、遠赤外線と温風を併用した乾燥方法等が挙げられる。乾燥温度は塗布する液の希釈溶媒によって適宜選択される。更に、活性エネルギー線としては、電子線、放射線、紫外線、可視光線、赤外線、近赤外線、遠赤外線、X線等が挙げられるが、生産性の高さと強度の高さから紫外線を用いることが好ましい。
転写時における加熱温度が低い場合、加熱時間が短い場合及び転移対象物が曲面である場合等には、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層の表面に、転写対象物に対する密着性を向上させるためのプライマー層を設ける。係るプライマー層としては、加熱処理によって溶融するもので接着性の機能を発現できる樹脂であれば、特に制限されるものではない。そのような樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂(スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンオキシド−スチレン共重合樹脂等)、ポリオレフイン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、オレフィン−マレイミド系共重合樹脂等が挙げられる。この場合、プライマー層を形成する樹脂としては、相溶性を高めるため、前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層に含まれる加熱溶融可能な樹脂と同種の樹脂を用いることが望ましい。さらに、プライマー層を形成する樹脂として、親和性を高めるため転写対象物と同種の樹脂を用いることが望ましい。
そして、転写時には、プライマー層を転写対象物に密接させて加熱処理を行うことにより、プライマー層がハードコート性及び加熱接着性を有する層と一体化される。そのため、プライマー層がハードコート性及び加熱接着性を有する層と一体化された状態でプライマー層を形成する樹脂が転写対象物に優れた密着性を発現することができる。その後、支持フィルムが剥離されて反射防止層の転写が行われる。
前記加熱プレス転写物を得るには、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層側を転写対象物上に密接させた状態で、支持フィルム側又は転写対象物側から熱圧を加えることによりその表面に転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層を接着させ、その後支持フィルムを剥離する。このような操作により、転写対象物の表面に反射防止機能を付与することができる。
前記支持フィルム側からの熱圧は、例えばシリコーンゴムロールを用いて行うことができる。この場合、シリコーンゴムロール表面は100〜300℃程度の温度、及び490〜4900KPa程度の圧力が好ましい。加熱処理温度を250℃以上にすると、離型性を有する支持フィルムとしてのポリエチレンフタレート(PET)フィルムが溶けてしまうため、シリコーンゴムロール表面は250℃以下であることがより好ましい。
次に、前記インモールド成形転写物を得る場合には、転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティ内に保持し、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層側に溶融樹脂を射出することにより、樹脂成形体を形成すると同時に、転写用反射防止フィルムが転写対象物の表面に転写される。その後、支持フィルムを剥離することにより、表面に反射防止層が露出される。溶融樹脂の温度は100〜300℃が好ましい。この温度が100℃未満ではハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成する加熱溶融可能な樹脂を十分に溶融させることができず、300℃を超えると支持フィルムが溶融するおそれがある。
転写対象物は特に限定されるものではなく、種々のものが用いられる。転写対象物として例えば、均一厚みの塗布層を形成しにくい板材や、可撓性に乏しい物体ないしは支持体、ガラスやセラミックスのような物体等が含まれる。またワープロ、コンピュータ、テレビ、ディスプレイパネル、携帯電話等の各種のディスプレイの前面板、液晶表示装置等に用いる導光板の表面、透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度付きめがねレンズ、カメラのファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス、又はインフォメーションパネル等が挙げられる。尚、これらの成形品は、樹脂以外の材料、例えばガラス等により形成されている場合であっても、樹脂と同様の効果を発揮することができる。これらのうち、ディスプレイの前面板、液晶表示装置等の導光板等の表示装置における表示画面であることが、反射防止層の効果を有効に発揮できることから好ましい。
さて、転写用反射防止フィルムを用い、転写対象物に対して加熱プレス転写法によって転写物を得る場合には、まずハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理を行う。ハードコート性及び加熱接着性を有する層は、活性エネルギー線硬化性成分に加えて加熱溶融可能な樹脂が含まれている。前記加熱処理は、加熱溶融可能な樹脂のガラス転移温度より高い温度で行われる。このため、加熱処理によって加熱溶融可能な樹脂が溶融し、転写対象物に密着される。その後、支持フィルムを剥離することにより、転写用反射防止フィルムが転写対象物に転写される。
また、転写用反射防止フィルムを用い、インモールド成形転写法によって転写物を得る場合には、転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティに保持し、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層に加熱溶融樹脂を射出する。このとき、加熱溶融樹脂の温度は、ハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成する加熱溶融可能な樹脂のガラス転移温度より高い温度に設定される。従って、転写用反射防止フィルムの加熱溶融可能な樹脂が溶融し、射出成形用金型のキャビティに射出される加熱溶融樹脂に溶融一体化される。その後、支持フィルムを剥離することにより、転写用反射防止フィルムが転写対象物に転写される。
上記の加熱プレス転写法及びインモールド成形転写法のいずれの場合にも、加熱処理温度は反射防止層の変形温度より低い温度に設定される。従って、加熱処理により反射防止層が変形することがなく、また前記のように反射防止層とハードコート性及び加熱接着性を有する層との密着性を高くでき、剥離するおそれがなく、反射防止層を転写対象物の表面に密着性良く形成させることができる。
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態の転写用反射防止フィルムは、反射防止層上に活性エネルギー線硬化性成分が活性エネルギー線の照射により硬化されたハードコート性及び加熱接着性を有する層が設けられて構成されている。このため、ハードコート性及び加熱接着性を有する層は十分に硬化され、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易になる。しかも、表面に気泡、異物等が混入するのを低減させることができる。加えて、転写用反射防止フィルムを作製する際に、ハードコート性及び加熱接着性を有する層が活性エネルギー線を直接照射することによって形成されると、転写用反射防止フィルムの硬度が向上する。
また、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理を行うことにより、転写対象物に対して転写用反射防止フィルムが密着される。加熱処理によりハードコート性及び加熱接着性を有する層を形成する加熱溶融可能な樹脂が十分に溶融し、転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性が向上する。
・ さらに、ハードコート性及び加熱接着性を有する層上にプライマー層を設け、該プライマー層を転写対象物に密接させて加熱処理を行うことにより、プライマー層をハードコート性及び加熱接着性を有する層と一体化させることができる。従って、プライマー層の作用により転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性を向上させることができる。
・ 転写用反射防止フィルムの転写方法のうち、加熱プレス転写法では、転写用反射防止フィルムのハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に密接させて加熱処理と転写とを行った後に、支持フィルムを剥離することにより行われる。従って、転写を簡単な操作で容易に行うことができる。転写時に活性エネルギー線の照射装置を用意し、活性エネルギー線を照射する操作を必要としないために、生産性を向上させることができる。
・ また、インモールド成形転写法では、転写用反射防止フィルムを射出成形用金型のキャビティに保持し、ハードコート性及び加熱接着性を有する層に加熱溶融樹脂を射出することによって加熱処理と転写とを行い、転写対象物に転写用反射防止フィルムを転写させた後、支持フィルムを剥離することにより行われる。従って、転写を簡単な操作で容易に行うことができる。
・ 加えて、ハードコート性及び加熱接着性を有する層は、活性エネルギー線硬化性成分と加熱溶融可能な樹脂とで形成されている。このため、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化性成分が硬化されて転写用反射防止フィルムが得られ、その表面にタックの発生がなく、取扱いが容易である。一方、転写時に加熱処理を行うことにより、加熱溶融可能な樹脂が加熱溶融されて転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性が向上する。
・ 更に、加熱処理が加熱溶融可能な樹脂のガラス転移温度より高い温度で行われる。このため、転写時に加熱溶融可能な樹脂が十分に溶融され、転写対象物に対する転写用反射防止フィルムの密着性がより向上する。
・ ハードコート性及び加熱接着性を有する層の屈折率(n1)と転写対象物の屈折率(n2)との差を0.05未満に設定することにより、ハードコート性及び加熱接着性を有する層と転写対象物との屈折率差が小さく、光の干渉むらを抑制することができる。
・ 反射防止層を活性エネルギー線硬化性組成物から形成することにより、反射防止層とハードコート性及び加熱接着性を有する層との間の密着性を向上させ、転写用反射防止フィルムの硬度を高めることができる。
・ 表示装置は、転写用反射防止フィルムの転写物が表示画面上に設けられて構成されている。従って、上記に示した転写用反射防止フィルムの効果を発揮できると共に、反射が抑制されて画面の視認性を向上させることができると共に、転写用反射防止フィルムの硬度に優れているため表示画面の表面に傷を付きにくくすることができる。表示装置として、CRT、LCD、PDP、携帯電話、携帯用情報末端等ディスプレイ分野、LCDフロントパネル、ディスプレイ前面板、携帯電話表示装置、PDA画面表示装置、芸術用ショーケース等に適用することができる。
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、反射防止層の転写物及び表示装置についての評価として以下の項目の評価を行った。
分光反射率:反射防止フィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計(「U−best50」、日本分光株式会杜製)により、350〜850nmの分光反射率(5°−5°正反射スペクトル)を測定した。
最小反射率:分光反射率測定で得られた反射スペクトルより、最小反射率を読み取った。反射スペクトルにハードコート性を有する接着層の干渉が見られる場合には上端と下端の中心値を読み取った。
全光線透過率: lNDH2000〔日本電色工業(株)製〕を用いて全光線透過率(%)を測定した。
密着性:JIS K5400に準拠し、一辺が1mmの碁盤目状に100のマス目を作り、粘着テープを全面に付着させた後、粘着テープの一端を転写物に直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残ったマス目の数を調べた。
鉛筆硬度:表面硬度の指標としてJIS K5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。重り台に1kgの重りを載せ、均一な速さで押し出し、反射防止層の転写物が付与された表面上に約1cmの幅を引っ掻いた。1回引っ掻くごとに鉛筆の芯の先端を新たに研いで同一の濃度記号の鉛筆で5回ずつ試験を繰り返した。試験用鉛筆はJIS S6006に規定の2H〜6Hを用いて行った。5回の試験ですり傷が3回以下になる最も高い鉛筆の硬度を記載した。
耐擦傷性:反射防止層の転写物の表面上をスチールウール(#0000)で25kPa(250g/cm2)の圧力にて30往復した後の転写物表面に発生した傷を目視にて観察した。そして、著しい傷のないものを○、傷がついたものを×として評価した。
表面抵抗率:デジタル超絶縁/微少電流計〔東亜DKK(株)製、商品型名:SM8220〕及び平板試料用電極〔東亜DKK(株)製、商品型名:SME−8311〕を用い、測定温度:23℃、湿度:45%RHの条件で表面抵抗率(Ω/cm2)を測定した。
(参考例1)
図1に示すように、支持フィルム11上に反射防止層としての低屈折率層12、導電性金属酸化物を含有する反射防止層としての高屈折率層13並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14をこの順で積層した転写用反射防止フィルム10を作製した。各層の形成及びアクリル樹脂板への反射防止層の転写を以下に示すように行った。
低屈折率層12の形成:ジペンタヘキサアクリレート10質量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにより修飾されたコロイダルシリカ90質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン) 5質量部に、イソプロピルアルコール2000質量部を加え、低屈折率層塗布液とした。この塗布液を50μm厚の離型性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)製の支持フィルム11上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.10μm厚の低屈折率層12を形成した。
導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の形成:平均粒子径が約50nmのITO超微粒子90質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕3質量部からなる固形分を含むイソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール混合溶媒分散液(固形分35質量%)60質量部に、イソプロピルアルコール340質量部を加え、高屈折率層塗布液とした。得られた塗布液を前記低屈折率層12上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.09μm厚の導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13を形成した。
ハードコート性及び加熱接着性を有する層14の形成:紫外線硬化性ハードコート剤(主成分:修飾コロイダルシリカ50質量部、ウレタンアクリレート50質量部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)100質量部に、メタクル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕50質量部とメチルエチルケトン450質量部を加えて、塗布液とした。この塗布液を前記導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の上に塗布、乾燥後、紫外線を直接照射することにより硬化し、5μm厚のハードコート性及び加熱接着性を有する層14を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルム10を得た。得られた転写用反射防止フィルム10は、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
アクリル樹脂板よりなる転写対象物(平面転写物)15への反射防止層の転写:得られた転写用反射防止フィルム10のハードコート性及び加熱接着性を有する層14が転写対象物15に接するようにして表面が鏡面状の図示しないステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルム11を剥がした。このようにして、図2に示すように、転写対象物15の下面にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、低屈折率層12及び高屈折率層13よりなる反射防止層が転写された。
そして、得られた反射防止層の転写物について、全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定した。その結果を表1に示した。
表1に示したように、
参考例1では転写対象物15に対する転写用反射防止フィルム10の密着性に優れており、転写用反射防止フィルム10の硬度も鉛筆硬度で5Hとなり優れていた。更に、耐擦傷性、全光線透過率、表面抵抗率及び最小反射率も良好であった。(
参考例2)
図1に示すように、支持フィルム11上に低屈折率層12、導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13及びハードコート性及び加熱接着性を有する層14をこの順で積層した転写用反射防止フィルム10を作製した。各層の形成及びポリカーボネート樹脂板よりなる転写対象物15への反射防止層の転写を以下に示すように行った。
低屈折率層12の形成:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにより修飾されたコロイダルシリカ50質量部、1,2,9,10−テトラアクリロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン 50質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕 5質量部に、イソプロピルアルコール2000質量部を加え、低屈折率層塗布液とした。この塗布液を50μm厚の離型性を有するPET製の支持フィルム11上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.10μm厚の低屈折率層12を形成した。
導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の形成:平均粒子径が約30nmのITO超微粒子70質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート30質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕 2質量部からなる固形分を含むイソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール混合溶媒分散液(固形分25質量%)60質量部に、イソプロピルアルコール340質量部を加え、高屈折率層塗布液とした。得られた塗布液を前記低屈折率層12上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.09μm厚の導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13を形成した。
ハードコート性及び加熱接着性を有する層14の形成:紫外線硬化性ハードコート剤(主成分:修飾コロイダルシリカ50質量部、ウレタンアクリレート50質量部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)100質量部に、オレフィン・マレイミド共重合体TI−160〔東ソー(株)〕50質量部とメチルエチルケトン450質量部を加えて、塗布液とした。この塗布液を前記導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の上に塗布、乾燥後、紫外線を直接照射することにより硬化し、10μm厚のハードコート性及び加熱接着性を有する層14を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルム10を得た。この転写用反射防止フィルム10は、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
ポリカーボネート樹脂板よりなる転写対象物15への反射防止層の転写:得られた転写用反射防止フィルム10をハードコート性及び加熱接着性を有する層14が転写対象物15に接するようにして、表面が鏡面状のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、170℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、支持フィルム11を剥がした。このようにして、図2に示すように、転写対象物15上にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、低屈折率層12及び高屈折率層13よりなる反射防止層が転写された。そして、得られた反射防止層の転写物について、全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定し、その結果を前記表1に示した。
表1に示したように、参考例2では、転写対象物15に対する転写用反射防止フィルム10の密着性に優れており、転写用反射防止フィルム10の硬度も鉛筆硬度で4Hとなり優れていた。更に、耐擦傷性、全光線透過率、表面抵抗率及び最小反射率も良好であった。
(参考例3)
図3に示すように、支持フィルム11上に低屈折率層12、高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13、導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14をこの順で積層した転写用反射防止フィルム10を作製した。各層の形成及びアクリル樹脂板よりなる転写対象物15への反射防止層の転写を以下に示すように行った。
低屈折率層12の形成:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにより修飾されたコロイダルシリカ80質量部、1,2,9,10−テトラアクリロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン 20質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕 5質量部に、イソプロピルアルコール2000質量部を加え、低屈折率層塗布液とした。この塗布液を50μm厚の離型性を有するPET製の支持フィルム11上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.10μm厚の低屈折率層12を形成した。
高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13の形成:平均粒子径が約50nmの酸化ジルコニウム超微粒子95質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート5質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕 3質量部からなる固形分を含むイソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール混合溶媒分散液(固形分40質量%)60質量部に、イソプロピルアルコール340質量部を加え、高屈折率層塗布液とした。得られた塗布液を前記低屈折率層12上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.08μ厚の高屈折率層13を形成した。
導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16の形成:平均粒子径が約50nmのITO超微粒子80質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20質量部、紫外線重合開始剤Irugacure−907〔2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリンプロパン−1−オン〕 3質量部からなる固形分を含むイソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、エタノール混合溶媒分散液(固形分50質量%)55質量部に、イソプロピルアルコール340質量部を加え、中屈折率層塗布液とした。得られた塗布液を前記高屈折率層13上に塗布、乾燥後、紫外線照射により硬化し、約0.09μm厚の導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16を形成した。
ハードコート性及び加熱接着性を有する層14の形成:紫外線硬化性ハードコート剤(主成分:修飾コロイダルシリカ50質量部、ウレタンアクリレート50質量部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)100質量部に、メタクル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)製〕50質量部とメチルエチルケトン450質量部を加えて、塗布液とした。この塗布液を前記導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16の上に塗布、乾燥後、紫外線を直接照射することにより硬化し、5μm厚のハードコート性及び加熱接着性を有する層14を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルム10を得た。この転写用反射防止フィルム10は、表面にタックの発生がなく、取扱いが容易であった。
アクリル樹脂板よりなる転写対象物15への反射防止層の転写:得られた転写用反射防止フィルム10をハードコート性及び加熱接着性を有する層14が溶融したアクリル樹脂に接するように射出成形金型内のキャビティに保持し、240℃程度の温度で溶融させたアクリル樹脂を、29400kPaにて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に転写するインモールド成形転写法にて反射防止層の転写を行った。その後、支持フィルム11を剥がし、図4に示すように、アクリル樹脂板よりなる転写対象物15上にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、低屈折率層12、高屈折率層13及び中屈折率層16よりなる反射防止層が転写された。得られた反射防止層の転写物について、全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定し、その結果を表1に示した。
表1に示したように、参考例3では、転写対象物15に対する転写用反射防止フィルム10の密着性に優れており、転写用反射防止フィルム10の硬度も鉛筆硬度で5Hとなり優れていた。更に、耐擦傷性、全光線透過率、表面抵抗率及び最小反射率も良好であった。
(参考例4)
図3に示すように、支持フィルム11上に低屈折率層12、高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13、導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14をこの順で積層した転写用反射防止フィルム10を作製した。次に、図5に示すように、アクリル樹脂板よりなり、かつ曲面を有する転写対象物(曲面転写物)17へ反射防止層を下記のようにして転写した。なお、低屈折率層12、高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13、導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14の各層の形成方法は参考例3と同様である。
アクリル樹脂板よりなり、かつ曲面を有する転写対象物17への反射防止層の転写:転写用反射防止フィルム10をハードコート性及び加熱接着性を有する層14が溶融したアクリル樹脂に接するよう曲面を有する射出成形金型内のキャビティに保持し、240℃程度の温度で溶融させたアクリル樹脂を29400kPaにて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に転写するインモールド成形転写法にて反射防止層の転写を行った。その後、支持フィルム11を剥がし、図5に示すように、アクリル樹脂板よりなり、かつ曲面を有する転写対象物17上にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、低屈折率層12、高屈折率層13及び中屈折率層16よりなる反射防止層が転写された。得られた反射防止層の転写物について、全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定し、その結果を表1に示した。
(実施例5)
図6に示すように、支持フィルム11上に低屈折率層12、高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13、導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14、さらにプライマー層18をこの順で積層した転写用反射防止フィルム10を作製した。なお、低屈折率層12、高屈折率の金属酸化物を含有する高屈折率層13、導電性金属酸化物を含有する中屈折率層16並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層14の各層の形成方法は参考例3と同様であり、プライマー層18の形成は以下の方法で行った。
プライマー層18の形成:和光純薬株式会社メタクリル酸メチルポリマー5重量部に、メチルエチルケトン100重量部を加えて、塗布液とした。この塗布液をハードコート性及び加熱接着性を有する層14の上に塗布し、0.5μm厚のプライマー層18を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルム10を得た。また、アクリル樹脂板よりなり、かつ曲面を有する転写対象物17への反射防止層の転写を以下のように行った。
アクリル樹脂板よりなり、かつ曲面を有する転写対象物17への反射防止層の転写:得られた転写用反射防止フィルム10をプライマー層18が溶融したアクリル樹脂に接するように曲面を有する射出成形金型内のキャビティに保持し、240℃程度の温度で溶融させたアクリル樹脂を、29400kPaにて金型内に注入し、放冷した。すなわち、成形と同時に転写するインモールド成形転写法にて反射防止層の転写を行った。このとき、プライマー層18が層14に一体化された。その後、支持フィルム11を剥がし、図7に示すように、アクリル樹脂板よりなる転写対象物17上にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、低屈折率層12、高屈折率層13及び中屈折率層16よりなる反射防止層が転写された。得られた反射防止層の転写物について、全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定し、その結果を表1に示した。なお、参考例1及び2の転写用反射防止フィルム10についても、参考例4と同様にして曲面を有する転写対象物17へ転写し、その転写物について全光線透過率、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、表面抵抗率及び最小反射率を測定し、その結果を表1に示した。
表1の結果から、参考例4では、曲面を有する転写対象物17に対する転写用反射防止フィルム10の密着性が参考例3に比べて劣っていたが、実施例5に示したようにプライマー層18を設けることにより、密着性が向上した。なお、参考例1及び2においても、平面状の転写対象物17に比べて曲面を有する転写対象物17の場合には、転写用反射防止フィルム10の密着性が低下することが明らかになった。
(比較例1)
参考例1と全く同じ手法にて支持フィルム11上に低屈折率層12、導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の作製、ハードコート性及び加熱接着性を有する層14の塗布、乾燥後、図1に示すような転写用反射防止フィルム10を得た。転写用反射防止フィルム10を得るために、ハードコート性及び加熱接着性を有する層14を紫外線硬化しなかったほかは、参考例1と全く同じ手法にて実施した。
ハードコート性及び加熱接着性を有する層14の形成:紫外線硬化性ハードコート剤(主成分:修飾コロイダルシリカ50質量部、ウレタンアクリレート50質量部)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)100質量部に、メタクル酸メチルポリマー〔n≒7000〜7500、東京化成工業(株)〕50質量部とメチルエチルケトン450質量部を加えて、塗布液とした。この塗布液を前記導電性金属酸化物を含有する高屈折率層13の上に塗布、乾燥後、5μm厚のハードコート性及び加熱接着性を有する層14を形成した。以上のようにして転写用反射防止フィルム10を得た。
アクリル樹脂板よりなる転写対象物15への反射防止層の転写:得られた転写用反射防止フィルム10のハードコート性及び加熱接着性を有する層14が転写対象物15に接するようにして、表面が鏡面状態のステンレス鋼板で挟み込んだ。ステンレス鋼板の上から加圧(3923kPa)し、130℃で5分間加熱した。加熱後常温に戻し、紫外線を照射し、ハードコート性及び加熱接着性を有する層14を硬化した。尚、紫外線の照射量は参考例1と同じとした。
支持フィルム11を剥がしたところ、ハードコート性及び加熱接着性を有する層14と転写対象物15とが密着しないため、図2に示すような転写対象物15上にハードコート性及び加熱接着性を有する層14を介して、反射防止層が転写されなかった。
尚、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 転写対象物と同種の成分をハードコート性及び加熱接着性を有する層並びに反射防止層に配合し、転写対象物とハードコート性及び加熱接着性を有する層との間並びにハードコート性及び加熱接着性を有する層と反射防止層との間の密着性を向上させるように構成することができる。
・ 前記ハードコート性及び加熱接着性を有する層に、粘着付与樹脂等の転写対象物に対する接着性を向上させる成分を配合することもできる。
・ 前記プライマー層18を、転写対象物の端部、曲面を有する部分等の転写対象物の一部に設けることも可能である。
更に、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 前記加熱処理の温度は、80℃以上で支持フィルムの溶融温度以下であることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の転写用反射防止フィルムの転写方法。この転写方法によれば、加熱処理によりハードコート性及び加熱接着性を有する層を転写対象物に確実に密着させることができる。
・ 前記加熱溶融可能な樹脂は、転写対象物と同種の樹脂で形成されていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の転写用反射防止フィルムの転写方法。この転写方法によれば、ハードコート性及び加熱接着性を有する層と転写対象物との密着性を向上させることができる。
・ 前記加熱溶融可能な樹脂は、反射防止層を形成する樹脂と同種の樹脂で形成されていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の転写用反射防止フィルムの転写方法。この転写方法によれば、ハードコート性及び加熱接着性を有する層と反射防止層との密着性を向上させることができる。
・ 前記プライマー層は、ハードコート性及び加熱接着性を有する層に含まれる加熱溶融可能な樹脂と同種の樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の転写用反射防止フィルム。このように構成した場合、請求項1に係る発明の効果に加えて、曲面を有する転写対象物に対しても密着性を向上させることができるとともに、ハードコート性及び加熱接着性を有する層とプライマー層との一体化を十分に行うことができる。
本発明の参考例1及び参考例2における転写用反射防止フィルムの構成を示す断面図。
図1の転写用反射防止フィルムを転写対象物に転写させた状態を示す断面図。
参考例3における転写用反射防止フィルムの構成を示す断面図。
図3の転写用反射防止フィルムを転写対象物に転写させた状態を示す断面図。
図3の転写用反射防止フィルムを、曲面を有する転写対象物に転写させた状態を示す断面図。
参考例4における転写用反射防止フィルムの構成を示す断面図。
図6の転写用反射防止フィルムを、曲面を有する転写対象物に転写させた状態を示す断面図。
符号の説明
10…転写用反射防止フィルム、11…支持フィルム、12…反射防止層を構成する低屈折率層、13…反射防止層を構成する高屈折率層、14…ハードコート性及び加熱接着性を有する層、15…転写対象物、16…反射防止層を構成する中屈折率層、17…曲面を有する転写対象物。