JP5017207B2 - 電波透過性装飾部材 - Google Patents
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(i)携帯電話の筐体内部には、電波を送受信するアンテナが配置されている。
(ii)標準電波を受信して誤差を自動修正する機能を持つ電波時計の筐体内部には、電波を受信するアンテナが配置されている。
(iii)障害物の検知、車間距離の測定等を行うレーダ装置を搭載する自動車では、該レーダ装置のアンテナがフロントグリルまたはバンパの近傍に配置されている。
(iv)通信機器等で扱う電波の周波数が100GHz程度の高い周波数帯域にシフトしており、装飾部材によって電波が影響を受けやすく、該機器において機能障害が発生しやすい。
(1)基体上に、インジウム、インジウム合金、スズまたはスズ合金の蒸着膜を有する成形品(特許文献1)。
(2)基材上に、インジウム/酸化インジウム複合蒸着膜を有する転写材(特許文献2)。
(3)基材上に、細片状の光輝材が分散した塗膜を有する装飾製品(特許文献3)。
(4)基材上に、開口部が設けられた反射膜(金属)を有する装飾品(特許文献4)。
また、スズは、酸化、塩化等を起こしやすく、経時的に金属光沢が失われる。一方、インジウムは、たいへん高価である。
(4)の装飾部材は、光反射層の開口部の大きさに対応した特定の周波数の電波しか通過できない。
前記光反射層は、半導体物質の物理的蒸着によって形成された蒸着膜であることが好ましい。
前記光反射層には、前記半導体物質が存在しない間隙が形成されていないことが好ましい。
図1は、本発明の電波透過性装飾部材の一例を示す断面図である。電波透過性装飾部材10は、基体12と、基体12上に設けられた光反射層14とを有する。
基体としては、電波透過性の基体を用いる。電波透過性の基体としては、絶縁性の有機材料または無機材料からなる絶縁性基体が挙げられる。絶縁性とは、表面抵抗率が106Ω以上であることを意味し、表面抵抗率は108Ω以上が好ましい。基体の表面抵抗率は、JIS K7194に記載の4探針法により測定する。
基体の形状としては、フィルム、シート、立体成形体等が挙げられる。
有機材料としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等。)、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66等。)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート等。)、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマー(スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等。)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、飽和ポリオレフィンゴム(エチレン・プロピレン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体等。)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、α−オレフィン−ジエン共重合体、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ポリエーテル系ゴム、アクリルゴム等が挙げられる。
有機材料は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、補強材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、防霧剤、可塑剤、顔料、近赤外吸収剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
無機材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
基体の平均表面粗さは、JIS B0601−2001の算術平均粗さRaである。
光反射層は、半導体物質からなる層である。
半導体物質としては、元素半導体物質または化合物半導体物質が挙げられる。
元素半導体物質としては、シリコン、ゲルマニウムが挙げられ、シリコンとゲルマニウムを同時に用いても構わない。常温で安定的に半導体特性を示し、可視光域の吸収が小さい点から、ゲルマニウムが好ましい。
化合物半導体物質としては、SiGe、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、PbS、PbSe、PbTe等のバンドギャップが赤外線域にある半導体物質が挙げられ、可視光域の吸収が小さいものが好ましい。
半導体物質は、ドーパント(ボロン、リン、砒素、アンチモン等。)をできるだけ含まないことが好ましい。ドーパントの量は1ppm以下が好ましく、10ppb以下がより好ましい。
光反射層の厚さは、光反射層の断面の高分解能顕微鏡像から測定できる。
光反射層の表面抵抗率は、JIS K7194に記載の4探針法により測定する。
光反射層の平均表面粗さは、JIS B0601−2001の算術平均粗さRaである。具体的には、図2に示すように、原子間力顕微鏡により表面形状を測定し、平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、抜き取り部分の平均線から粗さ曲線までの偏差の絶対値を合計し平均した値(算術平均粗さRa)を求める。
物理的蒸着法は、真空にした容器の中で蒸発材料(半導体物質)を何らかの方法で気化させ、気化した蒸発材料を近傍に置いた基体上に堆積させて薄膜を形成する方法であり、蒸発材料の気化方法の違いで、蒸発系とスパッタリング系とに分けられる。蒸発系としては、EB蒸着、イオンプレーティング等が挙げられ、スパッタリング系としては、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、対向ターゲット型マグネトロンスパッタリング等が挙げられる。
図5に示すように、電波透過性装飾部材10は、基体12と光反射層14との間に、白色顔料を含むマスク層16を有していてもよい。
光反射層が薄い場合、光の一部が反射することなく透過するため、基体と光反射層との間に電波透過性のマスク層を設けることで、装飾部材の反射率を調整できる。マスク層の反射率を高めることにより、装飾部材の反射率は向上し、明度の高い金属調光沢が得られる。
マスク層の形成方法としては、白色顔料を含む塗料を塗布する方法;白色顔料を用いた物理的蒸着による方法等が挙げられる。
本発明の電波透過性装飾部材は、基体と光反射層(またはマスク層)との密着性を向上させるため、基体と光反射層(またはマスク層)との間に接着促進層(図示略)を有していてもよい。また、必要に応じて、接着促進層を形成する前に、基体の表面に酸化処理(酸素プラズマ処理等。)を施してもよい。
接着促進層としては、シランカップリング層、金属層、親水層等が挙げられる。
金属層は、厚さ数原子の金属からなる層である。金属としては、ニッケル、クロム、アルミニウム、チタン等、有機材料と親和性のある金属が挙げられ、基体と同様の絶縁性が必要である。
親水層としては、イトロ処理等によって形成された酸化ケイ素膜等が挙げられる。
必要に応じて、光反射層の表面に保護層(図示略)を設けてもよい。
保護層としては、シリカ等からなるトップコート層等が挙げられる。
金属の特徴である自由電子は電気伝導性をもたらす。また、電磁波(光、電波)が金属の中に入ろうとすると、自由電子が動いて強い電子分極が起き、入ってきた電磁波の電界とは逆の電束が誘起されるため、電磁波が金属の中に入りにくく、電磁波は反射し透過できない。また、可視光領域にて高い反射率を有するため、金属光沢と認識される。
一方、半導体物質の場合、わずかな数の自由電子しかなく、金属とは異なり電波は反射されず透過できる。金属調光沢は、自由電子によるものではなく、バンド間の直接遷移による強い吸収が可視光領域に存在することによって、強い電子分極が起き、高い屈折率を持ち、それゆえ高い反射率を持つためと考えられている。
同軸管タイプシールド効果測定システム(キーコム社製、S−39D、ASTM D4935準拠)を用い、外部胴体内径39mmの同軸管内に円盤上試料を置き、同軸管両端に接続されたベクトルネットワークアナライザー(アンリツ社製、37247C)により透過減衰量(S21)および反射減衰量(S11)を求めた。透過減衰量が0dBに近いほど、電波透過性が優れている。
水平方式透過減衰量測定装置(キーコム社製、入射角度調整可)の2つのレンズアンテナ間にサンプルを置き、レンズアンテナに接続されたスカラーネットワークアナライザ(Wiltron54147A(逓倍器使用))により、測定周波数76GHzにおいて、サンプルの角度を調整して−45度から45度の斜入射透過減衰量を求めた。透過減衰量が0dBに近いほど、電波透過性が優れている。
反射率は、JIS Z 8722の条件d(n−D)による、正反射率を含めた拡散反射率を言い、短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmである可視光線領域の平均値であって、積分球を用い光沢成分の正反射光を含めて測定した。
具体的には、装飾部材の反射率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V−570)を用い、積分球を用いて光沢成分の正反射光を含めて測定した。波長380nmから780nmまでの測定点401箇所の平均を求めた。
装飾部材の透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V−570)を用い、積分球を用いて測定した。
透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM―4000EX)を用い、光反射層の断面を観察し、5箇所の光反射層の厚さを測定し、平均した。
走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPA300)を用い、原子間力顕微鏡DFMモードで、光反射層の表面1μm□を走査し、表面形状の像を作成し、平均表面粗さ(算術平均粗さRa)を求めた。
光反射層の表面抵抗率は、抵抗率計(ダイアインスツルメント社製、ロレスタGP MCP−T600型、JIS K7194準拠)を用い、直列4探針プローブ(ASP)を試料上に置き測定した。測定電圧は10Vとした。
厚さ0.3mmのポリカーボネートシート(大きさ100mm角)上に光反射層を形成した後、該シートを定盤の上に載せ、盛り上がったシートの中央部と定盤との隙間を定規で測定した。該隙間を内部応力の指針とした。
光反射層の密着性については、JIS K5400に準じた碁盤目試験にて評価した。
ターゲットとして、ボロンドープされたシリコン(ボロンドープ量:約1ppb)を用意した。
RFスパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、CFS−4ES)のカソードとしてターゲットを装着し、真空チャンバ内を真空にした後、真空チャンバ内にアルゴンガスを導入し、RFスパッタリングにて厚さ0.3mmのポリカーボネートシート上に、ターゲットの半導体物質を物理的に蒸着させ、装飾部材を得た。
また、該装飾部材の透過減衰量(S21)および反射減衰量(S11)のグラフを図6に示す。
また、該装飾部材の反射率のグラフ(マスク層なし)を図7に示し、該装飾部材の透過率のグラフ(マスク層なし)を図8に示す。
光反射層の厚さが表1に示す厚さとなるように、RFスパッタリングの条件を変更した以外は、参考例1と同様にして装飾部材を得た。
該装飾部材について、光反射層の厚さ、平均表面粗さ、1GHzおよび3GHzにおける透過減衰量(S21)、反射率、表面抵抗率、内部応力を測定した。また、該装飾部材の外観を観察した。結果を表1に示す。
ターゲットとして、アルミニウム単体を用いた以外は、参考例1と同様にして装飾部材を得た。
該装飾部材について、光反射層の厚さ、平均表面粗さ、1GHzおよび3GHzにおける透過減衰量(S21)、反射率、表面抵抗率、内部応力を測定した。また、該装飾部材の外観を観察した。結果を表1に示す。
厚さ0.5mmのポリプロピレンシート(有機化モンモリナイトを10質量%含有)を脱脂洗浄した後、表面に酸素プラズマ処理を施し、ついで、クロムを厚さ1.5原子分となるようにスパッタリングし、接着促進層を形成した。
ターゲットとして、GaAs(Asの原子%は50.005%)を用意した。
RFスパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、CFS−4ES)のカソードとしてターゲットを装着し、真空チャンバ内を真空にした後、真空チャンバ内にアルゴンガスを導入し、RFスパッタリングにて接着促進層上に、ターゲットの半導体物質を物理的に蒸着させ、装飾部材を得た。
厚さ0.5mmのポリメチルメタクリレートシートを脱脂洗浄した後、表面に酸素プラズマ処理を施し、ついで、チタンを厚さ1.0原子分となるようにスパッタリングし、接着促進層を形成した。
接着促進層上に、酸化チタン粉を含有した隠蔽性の高い白色アクリル塗料を塗布し、マスク層を形成した。
ターゲットとして、シリコンを用意した。
RFスパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、CFS−4ES)のカソードとしてターゲットを装着し、真空チャンバ内を真空にした後、真空チャンバ内にアルゴンガスを導入し、RFスパッタリングにて接着促進層上に、ターゲットの半導体物質を物理的に蒸着させ、装飾部材を得た。
また、該装飾部材の反射率のグラフ(マスク層あり)を図7に示し、該装飾部材の透過率のグラフ(マスク層あり)を図8に示す。実施例5の装飾部材は、マスク層の効果により、参考例1の装飾部材に比べ、反射率は上がり、透過率はほぼ0となった。その結果、明度の高い金属調光沢を呈した。
ターゲットをボロンドープされたゲルマニウム(ボロンドープ量:約0.1ppb)としたこと以外は、参考例1と同様にして装飾部材を得た。
該装飾部材について、光反射層の厚さ、平均表面粗さ、1GHzおよび3GHzにおける透過減衰量(S21)、反射率、表面抵抗率、内部応力を測定した。また、該装飾部材の外観を観察した。結果を表2に示す。
また、該装飾部材の透過減衰量(S21)および反射減衰量(S11)のグラフを図9に示す。
厚さ2.5mmのポリカーボネートシートを脱脂洗浄した後、表面に酸素プラズマ処理を施し、酸化マグネシウム粉を含有した隠蔽性の高い白色のアクリレート塗料を塗布し、UV照射により硬化させ、マスク層を形成した。
ターゲットとして、ゲルマニウムと銀との焼結合金(銀の割合:0.1体積%)を用意した。
RFスパッタ装置(芝浦メカトロニクス社製、CFS−4ES)のカソードとしてターゲットを装着し、真空チャンバ内を真空にした後、真空チャンバ内にアルゴンガスを導入し、RFスパッタリングにてマスク層上に、ターゲットの合金を物理的に蒸着させ、装飾部材を得た。
実施例7の装飾部材は、76GHzの高周波域において、入射角度を変化させてもその影響は少なく、透過減衰量はほぼ0で良い直進性を示し、明度の高い金属調光沢を呈した。
光反射層の厚さを500nmとしたこと以外は実施例7と同様に装飾部材を作製した。
該装飾部材について、光反射層の厚さ、76GHzにおいて入射角度を−45度から45度に変化させた斜入射透過減衰量、反射率、表面抵抗率を測定した。また、該装飾部材の外観を観察した。結果を表3および該装飾部材の斜入射透過減衰量のグラフを図11に示す。
実施例8の装飾部材は、76GHzの高周波域において、入射角度を変化させてもその影響は少なく、透過減衰量はほぼ0で良い直進性を示し、明度の高い金属調光沢を呈した。
12 基体
14 光反射層
16 マスク層
Claims (5)
- 基体と、
該基体上に設けられた、シリコンまたはゲルマニウムからなる光反射層と、
前記基体と前記光反射層との間に設けられた、白色顔料を含むマスク層と
を有し、
前記基体が、有機材料の成形体である電波透過性装飾部材。 - 前記光反射層が、半導体物質の物理的蒸着によって形成された蒸着膜である、請求項1に記載の電波透過性装飾部材。
- 前記光反射層には、前記半導体物質が存在しない間隙が形成されていない、請求項1または2に記載の電波透過性装飾部材。
- 光反射層の厚さが、10〜500nmである、請求項1〜3のいずれかに記載の電波透過性装飾部材。
- 前記基体と前記光反射層との間に接着促進層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の電波透過性装飾部材。
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