JP5207899B2 - 電磁波透過性加飾基板および筐体 - Google Patents
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本発明の発明者らは、カーナビゲーションの筐体等として用いることが可能な電磁波透過性加飾基板の研究を進めた結果、基板上に2種類の半導体層(または半金属層)を積層した積層半導体層を加飾層として設けることで、アンテナ特性を損なうことなく(透過損を所定値以下に抑えながら)、半導体層単層では得られない、表面における高い可視光反射率を得られることを見出して本発明に至った。
図1は本発明の実施の形態1の電磁波透過性加飾基板の断面図である。電磁波透過性加
飾基板は、例えば、カーナビゲーションの筐体を構成する部品として用いられるものであり、電磁波透過性の基板、その基板の表面に形成された加飾層となる半導体層を備え、その半導体層は、Si層とGe層の積層体によりなることを特徴としている。図1に示すように、ガラス基板1上に、膜厚5nm〜30nmのSi層2が設けられており、Si層2上に、さらに膜厚1nm〜35nmのGe層3が形成されている。Si層2とGe層3の積層体が半導体層(積層半導体層)に相当している。なお、Ge層3側が筐体表面側であり、ガラス基板1側が筐体内部側に位置する。
ここで、ガラス基板1を構成する材料としては、例えば、BK7、白板ガラス、青板ガラスが挙げられる。また、ガラス以外に、電磁波透過性の基板として、樹脂材料等を用いることも可能である。なお、基板材料は、基板上に半導体層を形成するのに十分な硬度と加工容易性を兼ね備えたものとする必要があることは言うまでもない。
図2は基板をガラスとした場合のGe層(単層)の電磁波透過率特性を示す図で、波長550nmにおける透過率の高いほうから各々Ge膜厚1nm、3nm、5nm、10nm、20nm、40nm、100nmのデータを示している。横軸は電磁波の波長(nm)、縦軸は透過率(T%)である。
なお、可視域が波長400〜800nmという幅を持っているため、その波長領域全体での透過率または反射率は、「平均透過率」または「平均反射率」として現している。
によれば、Ge膜厚が、1nmと3nmでは十分な光沢が得られず、Ge膜厚5nm程度から弱い金属調の光沢を呈し始め、Ge膜厚が100nmではっきりとした金属調光沢を呈するようになる。よって、金属調光沢を呈する加飾としては波長400nm〜800nmの可視域での平均反射率が20%以上の場合に実現され、好ましくは40%程度以上で良好な金属調光沢が得られることが分かる。
までは膜厚の増加とともに徐々に反射率は上昇するが、Si膜厚40nmでは波長430nm付近に谷のピークを持ち、Si膜厚100nmでは逆に波長430nm付近に山のピークを持つ。さらに、Si膜厚400nmになると全可視域においてほぼ均一な反射スペクトル(反射率が約30〜50%の範囲であり、変化が小さくなる。)を示し、それ以上膜厚が増加しても反射率特性はほとんど一定となる。
図6は基板をガラスとした場合の反射率特性を示す図で、図中データの波長800nmにおける反射率の高いほうから各々Ge膜厚32.61nm/Si膜厚7.45nm/ガラス基板(ガラス基板上にSi層、Ge層の順に積層された加飾基板であり、半導体層の膜厚は前記の通りである。)、Ge膜厚32.61nm/ガラス基板、Ge膜厚14.67
nm/Si膜厚19.78nm/ガラス基板、Ge膜厚10.0nm/Si膜厚22.71
nm/ガラス基板である。横軸は電磁波の波長(nm)、縦軸は反射率(R%)である。Ge
層単層で最も高い反射率が得られるGe膜厚32.61nm/ガラス基板よりも、所定の
膜厚のSiを下地に形成し、Ge/Si/ガラス基板の構成とした場合のほうが高い反射率が得られることが分かる。最も高い反射率が得られるGe膜厚14.67nm/Si膜
厚19.78nm/ガラス基板の場合で、Ge層単層の場合に比して平均で約10%程度
の反射率向上が実現される。
Si膜厚19.78nm/ガラス基板の構成の方が可視域全域に渡りフラットな反射率特
性を示す。このことは金属調の光沢の観点から見ると好ましい。すなわち、Ge単層の場合に比して、Ge膜厚14.67nm/Si膜厚19.78nm/ガラス基板の構成の方が色を持たない、よりクリアで明るい金属調光沢が実現されることになる。発明者らの調査により、これらGe/Si/ガラス基板の構成がGe層単層に比して反射率特性的に効果的であるのは、Ge層の膜厚がほぼ35nm以下の場合に限られ、Ge層の膜厚が35nmを超えるとGe膜厚32.61nm/ガラス基板よりも高い反射率が得られなくなるこ
とが分かっている。
また、Ge膜厚が1nm以下になると短波長域と長波長域での反射率特性のバランスがくずれ、可視域全域においてはむしろ反射率が下がることが確認されている。
られなくなることが分かっている。以上の結果、発明者らは、ガラス基板上に5nm〜30nmのSi層を形成し、その後、1nm〜35nmのGe層を形成することにより、波長400nm〜800nmの光を55%以上反射させることが可能となり、Ge層単層に比して、クリアな金属調の光沢を呈する加飾基板を実現できることを見出した。
また、ここで、図5のデータにあるように、Si膜厚20nmで約43〜77%程度の、他のデータと比べると比較的安定した高反射率が得られる。そのため、加飾層の下地層として膜厚20nm程度のSi層2が適していると言える。
層の厚さは100nmとした。なお、誘電率εrは1、16、50の場合について求めた
が、透過損Tに対してほとんど影響しない。通信に必要な電磁波を十分に透過し、カーナビゲーションとしての機能を満足する透過損Tのしきい値を−0.1dB以下とすると、半導体に求められる導電率は約103S/m以下であることが分かる。本実施の形態で説明したGe層3、Si層2の導電率はそれぞれ2.1S/m(at 300K)、3.16×10−4S/m(at 300K)であり、いずれも103S/mよりはるかに低い。さらに、Si膜厚、Ge膜厚とも100nm以下であり、アンテナ特性を低下させることはない。
また、ガラス基板1を構成する材料としてBK7、白板ガラス、青板ガラスを挙げたが、ガラス基板1は上記に挙げたガラス材料に限らず、その他のガラス材料でも特に問題はなく、同様の効果を奏することはいうまでもない。基板材料を樹脂とした場合も同様である。
さらに、Si層2、Ge層3の成膜方法として真空蒸着法を用いた方法につき説明したが、Si層2、Ge層3の製法としてはこれに限られることはなく、スパッタ法、イオンプレーティング法、スピンコート法などの物理的方法や、CVD法、メッキ法などの化学的方法を用いることも可能である。
さらに、上記の例では、カーナビゲーションの筐体への適用例を示したが、本発明にか
かる電磁波透過性加飾基板の適用はかかる例に留まることはなく、例えば携帯電話、カメラ、携帯用音楽再生機、携帯用ゲーム機、携帯用の通信機、ラジオ、テレビ、ノート型パソコン、ノート型ワープロ、ビデオカメラ、電子手帳、各種の赤外線式または無線式リモートコントローラ、電卓、自動車用電子制御機器など、各種電磁波を送受信する電子機器の筐体として適用することも可能である。
以上、本発明に係る構成とすることで、アンテナ特性を確保すべく通信に必要となる波長の電磁波を遮断することなく、可視光をより高い反射率で反射させて金属調の光沢を得、デザイン性を高めることが可能な電磁波透過性加飾基板を、低コストかつ容易に実現することが可能となる。
図10は本発明にかかる電磁波透過性加飾基板の他の実施の形態を示す断面図で、ガラス基板1の上にSi層2、Ge層3が順に積層され、Ge層3の上には、Ge層3を保護する保護層4が設けられている。他の構成は実施の形態1にて示した場合と同様である。
ここで保護層4は、エポキシ樹脂層等の透明かつある一定の硬さを備えた層であり、通常はスプレーによる塗布で樹脂膜を形成し、その後UV硬化(UV硬化型樹脂の場合)若しくは熱硬化(熱硬化型樹脂の場合)により硬化処理がなされて得られる。なお、保護層4は、通信に必要な電磁波を透過する性質を持ち、アンテナ特性を劣化させるものではなく、下層の半導体層によって得られる金属調の光沢によるデザイン性を損なうものではない。
本発明に係る構成とすることで、実施の形態1にて示した効果に加え、下層に位置するGe層3の損傷を防ぐことが可能な電磁波透過性加飾基板を実現することができる。
図1に示した本発明にかかる電磁波透過性加飾基板は、例えば、携帯電話のディスプレイのカバーまたはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)のカバーを構成する
部品として用いることができる。この部品はいわゆるハーフミラーと呼ばれるもので、ディスプレイまたはLEDが発光すると、この光が部品を透過して表面に画像等が現れるが、発光していない場合はミラー状の意匠を構成する。なお、従来のハーフミラーは金属膜(例えばAl)を薄く形成して構成されたものであったため、アンテナ特性が十分ではなかった。
基板、Si膜厚20.0nm/ガラス基板のデータを示している。
均透過率を有し、光の反射と透過の特性を同時に利用している。ただし、ハーフミラーで最も重要なのは透過率である。透過率が高い場合はカバーの内側にあるディスプレイ基板やLED素子が透けて見えるために、意匠上好ましくなく、逆に透過率が低い場合は、透過光量が低下するためにディスプレイやLEDの視認性が悪くなる問題が発生する。発明者らは、様々な試作品を作製した結果、平均透過率が2%以上65%以下であれば、隠蔽性と視認性を併せ持つハーフミラーが得られることを確認している。
なお、基板は、ディスプレイの表示画面を構成するガラス基板や樹脂基板であっても良く、また表示画面等とは別の基板を用いて、ハーフミラーシートを形成しておき、発光素子等に貼り合わせて用いることも可能である。
本発明に係る構成とすることで、実施の形態1にて示した効果に加え、ハーフミラーとしての特性を備えた電磁波透過性加飾基板を実現することができる。
また、上述の実施の形態1で、図4、図5を用いて説明したように、Si層は、特定の膜厚である場合に、可視域での電磁波透過率、反射率が特定波長でピークを持つという特徴があって、Ge層のものよりも波長や膜厚に依存した色調変化が大きかった。
上述の実施の形態1〜3では、基板1上に設ける半導体層として、Si層2を下地とし、Ge層3をその上層に積層した積層体を形成することを例示したが、逆の積層順とし、Ge層3を基板1の表面に積層し、Ge層3上にSi層2を積層して、下地がGe層、表面がSi層の半導体層を形成することも可能である。上述したように、Si層2の表面において、特定膜厚の場合に、特定波長で反射率がピークを持つ特性があるため、可視域内の電磁波の波長変化に基づく、色調変化が求められるデザインのための加飾として用いることが可能であり、また、平均反射率が大きく、可視域での反射率変化が小さいSi膜厚を選択すれば、色調が整った光沢を得ることも可能である。また、下地にGe層3を形成しているため、Si層2を単層のみで形成した場合よりも、可視域の全体で、反射率を向上させることが可能である。このように、一つのデザインとして、基板1上に、Ge層、Si層の順に積層した半導体層の積層体を形成することは有効である。また、Si層の表面を上述した保護層4で被覆することで、加飾層の損傷低減が可能である。
3 Ge層 4 保護層。
Claims (5)
- 電磁波透過性の基板、上記基板の表面に形成された半導体層を備え、上記半導体層は、Si層とGe層の積層体よりなり、上記Si層は上記基板の表面に積層され、上記Ge層は上記Si層の表面に積層され、上記Si層は、膜厚が5nm〜30nmであり、上記Ge層は、膜厚が1nm〜35nmであり、上記半導体層は、波長400〜800nmの可視域において55%以上の平均反射率を有することを特徴とする電磁波透過性加飾基板。
- 上記Ge層は、表面に照射される波長400〜800nmの光を55%以上反射させることを特徴とする請求項1記載の電磁波透過性加飾基板。
- 上記半導体層上に形成された電磁波透過性の保護層を備えてなる請求項1または請求項2記載の電磁波透過性加飾基板。
- 上記基板は、発光素子を覆うカバーを構成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の電磁波透過性加飾基板。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の電磁波透過性加飾基板によって構成され、電磁波を受信または送受信する機器を内部に収納することを特徴とする筐体。
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