JP5016545B2 - ソリッドワイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車部品等のアーク溶接に使用されるソリッドワイヤの製造方法に関するものである。
従来、ソリッドワイヤ(溶接用ワイヤ)を用いたアーク溶接においては、スパッタの発生によって溶接作業性が悪化するという問題がある。そして、アルカリ金属がスパッタの発生を低減させるのに有効であることが明らかとなり、ワイヤ中にアルカリ金属を含有させた種々の構成の溶接用ワイヤが検討されている。
例えば、特許文献1には、アルカリ金属(NaおよびKのうちの1種または2種)を鋳包み延伸片にしてワイヤ中に添加した溶接用ワイヤが記載されている。特許文献2または特許文献3には、ワイヤ表面に溝または亀裂を作り、溝または亀裂内にアルカリ金属(K化合物、または、Kを含む潤滑剤)を保持した溶接用ワイヤが記載されている。特許文献4には、ワイヤ表面に施される銅めっき中にアルカリ金属(Na)を保持した溶接用ワイヤが記載されている。特許文献5または特許文献6には、ワイヤ表面にアルカリ金属(K)を含有した表面潤滑剤、または、アルカリ金属化合物を含有した表面処理油を塗布した溶接用ワイヤが記載されている。特許文献7または特許文献8には、鋼素線にカリウム塩(水溶液)を塗布し、その後、焼鈍、伸線加工を行うことによって、鋼素線中に所定量のカリウムを含浸させた溶接用ワイヤが記載されている。なお、特許文献7では、カリウム塩として、炭酸カリウム、水酸化カリウムが記載されている。
特開平4−118195号公報 特開平7−223087号公報 特開平7−47490号公報 特開2006−326680号公報 特開2006−102799号公報 特開2006−15403号公報 特開2000−246485号公報 特開2004−195542号公報
しかしながら、特許文献1の溶接用ワイヤにおいては、工業的に大型の溶解炉を用いた場合には、添加される延伸片(アルカリ金属)の歩留まり管理ができないことから、アルカリ金属濃度の管理が不可能である。また、アルカリ金属は非常に高い活性を有するため、溶解の際に延伸片(アルカル金属)が酸化され、ワイヤ中に添加されるアルカリ金属の添加量が僅かなものとなり、ワイヤ中に十分量のアルカリ金属を添加することが工業的に困難である。したがって、特許文献1の溶接用ワイヤでは、アーク溶接において、スパッタの発生を低減できず、溶接作業性が悪化するという問題が解決できない。
特許文献2または特許文献3の溶接用ワイヤにおいては、ワイヤ送給の際に、溝内または亀裂内に保持したアルカリ金属化合物が脱落して、溶接電極チップ、コンジットチューブ等の内部での詰りの原因となる。また、アルカリ金属化合物の脱落によって、ワイヤ表面に十分量のアルカリ金属を保持することができない。したがって、特許文献2または特許文献3の溶接用ワイヤでは、アーク溶接において、スパッタの発生を低減できず、溶接作業性が悪化するという問題が解決できない。
特許文献4の溶接用ワイヤにおいては、十分量のアルカリ金属を安定して添加するには、めっき浴の管理が非常に煩雑となるため、工業的には実施が困難である。したがって、特許文献4の溶接用ワイヤでは、アーク溶接において、スパッタの発生を低減できず、溶接作業性が悪化する問題が解決できない。
特許文献5または特許文献6の溶接用ワイヤにおいては、ワイヤ送給の際に、表面潤滑剤または表面処理油が脱落して、溶接チップ、コンジットチューブ等の内部での詰まりの原因となる。また、表面潤滑剤または表面処理油の脱落によって、ワイヤ表面に十分量のアルカリ金属を保持することができない。したがって、特許文献5または特許文献6の溶接用ワイヤでは、アーク溶接において、スパッタの発生を低減できず、溶接作業性が悪化するという問題が解決できない。
特許文献7または特許文献8の溶接用ワイヤにおいては、以下に示す問題がある。なお、図5は従来の溶接用ワイヤ(ソリッドワイヤ)の製造において、アルカリ金属含浸部が形成される過程を模式的に示す説明図、図6は従来のソリッドワイヤの断面組織を示すSEM写真である。
図5に示すように、鋼素線11aの表面に塗布されたカリウム塩(水溶液)は、焼鈍の際の熱で分解し、細かい固体状態のカリウム塩12(例えば、炭酸カリウムKCO)となる。そして、細かい固体状態のカリウム塩12と鋼素線11aの表面との接触は部分的である(接触面積が小さい)ため、鋼素線11a中に形成されるアルカリ金属含浸部13も小さくなる。その結果、ワイヤ11中にアルカリ金属(K)を高濃度に保持せることが困難になる。
また、カリウム塩12と鋼素線11aとの接触が部分的になるため、焼鈍時の雰囲気ガス(O)と鋼素線が直接接触(反応)し、カリウム含浸時に鋼素線11aの表面近傍で過剰な粒界酸化が生じる(図6参照)。そして、粒界酸化された結晶粒は、ワイヤ送給の際に脱落して、溶接電極チップ、コンジットチューブ等(図示せず)の内部での詰まりの原因となると共に、ワイヤの表面に被覆されるCu等のめっき密着性にも悪影響を及ぼす。さらに、結晶粒の脱落によって、ワイヤ11中に保持されるカリウム量も少なくなる。
したがって、特許文献7または特許文献8の溶接用ワイヤでは、アーク溶接において、スパッタの発生を低減できず、溶接作業性が悪化するという問題が解決できない。
なお、水酸化カリウムは、炭酸カリウムと比較して融点が低く、焼鈍過程で分解することはない。しかしながら、水酸化カリウムは、強アルカリであるためその扱いが煩雑であり、焼鈍設備への腐食等の悪影響が生じる。
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、アーク溶接時のスパッタの発生を低減でき、優れた溶接作業性を有する溶接用ワイヤとしてのソリッドワイヤの製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明に係るソリッドワイヤの製造方法は、鋼合金材から作製された素線を用いて、前記素線の表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する塗布工程と、前記混合物が塗布された素線に630〜1000℃の焼鈍温度で軟化焼鈍を施す焼鈍工程と、前記焼鈍工程で軟化焼鈍された素線に1回以上の伸線加工を施してワイヤを作製する伸線加工工程とを含み、かつ、前記塗布工程における混合物の融点が、前記焼鈍工程における焼鈍温度未満であること特徴とする。
前記手順によれば、塗布工程を含み、その塗布工程において、素線の表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布することによって、その混合物の融点が低いものとなる。そして、焼鈍工程を含み、前記混合物の融点を焼鈍工程の焼鈍温度未満とすることによって、焼鈍工程において、素線の表面に塗布された混合物が、焼鈍工程の軟化焼鈍によって溶融し、液体状態の溶融塩層を形成する。そして、液体状態の溶融塩層の形成によって、アルカリ金属と素線表面との接触面積が増加し、素線中に含浸するアルカリ金属量が増加する。その結果、スパッタの発生を抑制するのに十分量のアルカリ金属が素線中に保持される。また、溶融塩層は、素線の表面と雰囲気ガス(O)との直接接触を遮断するため、過剰な粒界酸化を抑制し、結晶粒の脱落を防止し、素線中に保持されたアルカリ金属の脱落(低減)を防止する。さらに、素線中に保持された十分量のアルカリ金属は、素線の表面酸化物を還元して、素線の最表面に鉄単独層を形成させる。この鉄単独層は、めっき前のワイヤ表面が金属のみからなる状態にできるもので、従来のワイヤにおいては認められないものである。そして、この鉄単独層の形成によって、めっき密着性の確保や過剰な粒界酸化が抑制され、アルカリ金属を含む結晶粒の脱落を防止でき、安定したアルカリ金属の含浸が得られる。
また、本発明に係るソリッドワイヤの製造方法は、鋼合金材から作製された素線を用いて、前記素線に1回以上の伸線加工を施して所定径の素線を作製する第1伸線加工工程と、前記第1伸線加工工程で作製された素線の表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する塗布工程と、前記混合物が塗布された素線に630〜1000℃の焼鈍温度で軟化焼鈍を施す焼鈍工程と、前記焼鈍工程で軟化焼鈍された素線に1回以上の伸線加工を施してワイヤを作製する第2伸線加工工程とを含み、かつ、前記塗布工程における混合物の融点が、前記焼鈍工程における焼鈍温度未満であることを特徴とする。
前記手順によれば、第1伸線加工工程と、第2伸線加工工程とを含むことによって、素線を縮径する伸線加工が施される伸線加工工程が2工程で行われることとなり、素線からワイヤへの縮径が効率よく行われる。また、塗布工程および焼鈍工程の作用については、請求項2の製造方法と同様である。
本発明に係るソリッドワイヤの製造方法によれば、アルカリ金属の接触面積を増加させると共に、過剰の粒界酸化を抑制し、ワイヤ中に十分量のアルカリ金属を含浸できるため、アーク溶接時のスパッタの発生を低減でき、優れた溶接作業性を有するソリッドワイヤを製造できる。また、素線最表面に鉄単独層が形成されることによって、優れためっき密着性を有するソリッドワイヤを製造できる。さらに、ソリッドワイヤを容易に製造できる。
まず、本発明に係るソリッドワイヤの製造方法によって製造されるソリッドワイヤについて、図1、図2を参照して詳細に説明する。なお、図1はソリッドワイヤの構成を示すもので、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、図2はソリッドワイヤの断面組織を示すSEM写真である。
<ソリッドワイヤ>
図1、図2に示すように、ソリッドワイヤ(以下、ワイヤと称することがある)1は、素線1a、1bからなり、素線1a、1b中の表面近傍にアルカリ金属(例えば、K+Na+Li)が含浸したアルカリ金属含浸部3を有する。なお、図示しないが、ワイヤ1は、その最表面、すなわち、アルカリ金属含浸部3の上にCu等からなるめっき層を有してもよい。
(素線)
素線1a、1bは、鋼合金からなるものであれば、その組成は特に限定されないが、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.2〜1.2質量%、Mn:0.5〜2.5質量%、P:0.03質量%以下、S:0.001〜0.03質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であることが好ましい。
前記C、Si、MnまたはSは、アーク溶接におけるスパッタの発生をより一層低減する目的で添加されるものである。そして、前記C、Si、MnまたはSの数値範囲の限定理由は、以下のとおりである。C、Si、MnまたはSの含有量が下限値未満であると、溶滴の表面張力が小さくなり、スパッタの発生を低減する効果が小さくなりやすい。また、C、Si、MnまたはSの含有量が上限値を超えるものであると、溶滴の表面張力が大きくなり、ワイヤ先端の溶滴がアーク力によって反発され、スパッタが飛散しやすくなり、スパッタの発生が増加しやすくなる。また、Pの含有量が上限値を超えると、溶接部(溶接金属)の耐割れ性が劣化しやすくなる。なお、Sの含有量が上限値を超えると、スパッタの発生が増加しやすくなると共に、Pと同様に耐割れ性が劣化しやすくなる。
不可避的不純物としては、O、N等を含有することが考えられるが、本発明の効果を妨げない範囲においてこれらを含有することが許容され、O:0.02質量%以下、N:0.01質量%以下が好ましい。
また、素線1a、1bは、前記組成に加えて、Ti:0.30質量%以下を含有するものがさらに好ましい。そして、Tiは、アーク溶接におけるスパッタの発生をより一層低減させる目的で添加されるもので、その含有量が0.30質量%を超えると、溶滴の表面張力が大きくなり、ワイヤ先端の溶滴がアーク力によって反発され、スパッタが飛散しやすくなり、スパッタの発生が増加しやすくなる。また、Tiは、低スパッタと共に、幅広い電流域(200〜350A)でアークを安定化する効果を有する。
(アルカリ金属含浸部)
アルカリ金属含浸部3は、素線1a、1b中の表面近傍に形成された、2種類以上のアルカリ金属が含浸した領域である。ここで、アルカリ金属としては、素線1a、1bへの含浸速度が速い点、または、工業的に安価である点を考慮して、K、NaまたはLiが好ましい。また、アルカリ金属含浸部3の深さは、ワイヤ径(素線径)にもよるが、例えば、5〜30μmである。
ここで、アルカリ金属含浸部3に含浸されたアルカリ金属が2種類以上であることによって、後記するワイヤ1の製造において、素線1a、1b中へのアルカリ金属の含浸が、素線1a、1bの表面に濡れ広がった低融点のアルカリ金属塩混合物の溶融塩層2(液体状態)によって行われることとなる(図4参照)。それにより、アルカリ金属と素線1a、1b表面との接触面積が増加し、素線1a、1b中に含浸するアルカリ金属量が増加し、アーク溶接時のスパッタの発生を抑制するのに十分な高濃度のアルカリ金属が素線1a、1b(ワイヤ1)中に含浸、保持される。
アルカリ金属含浸部3におけるアルカリ金属の合計濃度は、ワイヤ1の全質量に対して1.5質量ppm以上である必要がある。好ましくは5質量ppm以上、さらに好ましくは10質量ppm以上である。合計濃度が1.5質量ppm未満であると、スパッタの発生を低減することができない。また、アルカリ金属の合計濃度は、ワイヤ1を矯正加工した後に測定した濃度であることが好ましい。すなわち、アルカリ金属の合計濃度の測定を、コンジットチューブ(図示せず)の内部へのワイヤ送給に相当する矯正加工を行った後に行うことにより、ワイヤ送給の際に脱落せずにワイヤ中に保持されるアルカリ金属の合計濃度を正確に測定することができる。
また、図2に示すように、アルカリ金属の合計濃度が1.5質量ppm以上であることによって、素線1a、1bの表面酸化物が還元されて、素線1a、1bの最表面に鉄単独層が形成される。この鉄単独層は、素線1a、1b(ワイヤ1)にCu等からなるめっき層を設けた際に、表面酸化物に起因するめっき層の密着性の劣化を抑制することができる。
<ソリッドワイヤの製造方法>
次に、本発明に係るソリッドワイヤの製造方法について、図3(a)、(b)、図4を参照して詳細に説明する。図3(a)、(b)はソリッドワイヤの製造方法を示す工程図、図4は、ソリッドワイヤの製造において、アルカリ金属含浸部が形成される過程を模式的に示す説明図である。なお、ワイヤの構成については、図1(a)、(b)、図2を参照して説明する。
図3(a)に示すように、ソリッドワイヤ1の第1の製造方法は、塗布工程S1と、焼鈍工程S2と、伸線加工工程S3とを含むものである。以下、各工程について説明する。
(塗布工程:S1)
塗布工程S1は、鋼合金材から作製された素線1aを用いて、素線1aの表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する工程である。
また、鋼合金材はビレット等の形状を有し、前記組成の溶鋼を転炉、電気炉等を使用して通常の溶製方法で溶製し、その溶鋼を鋳造することによって作製される。そして、鋼合金材に、熱間圧延、その後、必要に応じて冷間圧延を施すことによって、所定径(例えば、5〜9mm)の素線1aが作製される。また、必要に応じて、所定径の素線1aを購入等により調達してもよい。
さらに、混合物の融点が次工程(焼鈍工程S2)の焼鈍温度未満となるように、2種類以上のアルカリ金属炭酸塩を混合する。融点が焼鈍温度以上であると、焼鈍工程S2において、素線1aの表面に混合物の溶融塩層2(図4参照)が形成されず、従来のワイヤのように固体状態のアルカリ金属炭酸塩(例えば、カリウム塩12、図5参照)が形成されるため、素線1a中へのアルカリ金属の含浸量が少なくなる。
また、アルカリ金属炭酸塩の混合物の塗布は、従来公知のハケ塗り、スプレー塗布、浸漬塗布等で行う。なお、本発明の混合物には、2種類以上のアルカリ炭酸塩を直接混合したものの他に、アルカリ金属炭酸塩の水溶液としたものも含まれる。
(焼鈍工程:S2)
焼鈍工程S2は、前記塗布工程S1において、2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物が塗布された素線1aに630〜1000℃の焼鈍温度で軟化焼鈍を施す工程である。ここで、焼鈍温度が630℃未満であると、素線1aが軟化せず、次工程(伸線加工工程S3)における伸線加工が困難となる。また、焼鈍温度が1000℃を超えると、軟化状態が飽和すると共に、経済的とはいえなくなる。また、焼鈍時間については、素線1aが十分に軟化するのに必要な時間を、焼鈍温度に応じて、適宜設定し、例えば、焼鈍温度が830℃のとき、焼鈍時間は30分である。
焼鈍工程S2では、図4に示すように、2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物が溶融し、液体状態である溶融塩層2(例えば、KCO+NaCO+LiCO)を形成し、素線1aの表面を濡れ広がる。それにより、アルカリ金属塩と素線1aの表面との広い接触面積が確保される。そして、アルカリ金属が効果的に素線1a中に含浸し、広いアルカリ金属含浸部3が形成され、ワイヤ1(素線1a)中に高濃度のアルカリ金属(例えば、K+Na+Li)を保持することができる。また、濡れ広がった溶融塩層2は、雰囲気ガス(O)と素線1aとの接触を遮断することで、従来のワイヤで発生していた過剰な粒界酸化(図6参照)を抑制し、表面近傍結晶粒の脱落が発生しないため、高濃度に含浸したアルカリ金属の脱落(低減)が防止できる。その結果、アーク溶接において、ワイヤ送給後も高濃度のアルカリ金属をワイヤ中に保持できるため、スパッタの発生が低減でき、溶接作業性を向上させることができる。
また、アルカリ金属含浸部3に保持された高濃度のアルカリ金属は、図2に示すように、素線1aに形成される表面酸化物を還元して、素線1aの最表面に鉄単独層を形成する。この鉄単独層の形成によって、ワイヤ(素線1a)表面にCu等からなるめっき層(図示せず)を設けた際、このめっき層の密着性を向上させることができる。
(伸線加工工程:S3)
伸線加工工程S3は、前記焼鈍工程S2で軟化焼鈍された素線1aに1回以上の伸線加工を施してワイヤ1を作製する工程である。すなわち、素線径(5〜9mm)を所定のワイヤ径(1〜8mm)まで縮径する工程である。また、伸線加工の回数は、素線径とワイヤ径とによって、適宜設定する。なお、伸線加工は、乾式または湿式孔ダイス等を用いた従来公知の加工方法で行う。
図3(b)に示すように、本発明に係るソリッドワイヤの第2の製造方法は、第1伸線加工工程S1aと、塗布工程S2aと、焼鈍工程S3aと、第2伸線加工工程S4aとを含むものである。そして、前記第1の製造方法が、伸線加工工程S3の前に、塗布工程S1および焼鈍工程S2を含むのに対して、第2の製造方法は、2回の伸線加工工程(第1伸線加工工程S1a、第2伸線加工工程S4a)の間に、塗布工程S2aおよび焼鈍工程S3aを含むものである。
(第1伸線加工工程:S1a)
第1伸線加工工程S1aは、鋼合金材から作製された素線1aに1回以上の伸線加工を施して所定径の素線1bを作製する工程である。すなわち、素線径を、例えば、5〜9mmから2〜3mmまで縮径する工程である。また、縮径率、および、伸線加工の回数については、ワイヤ1の製造における作業効率を考慮して適宜設定する。なお、伸線加工は、乾式または湿式孔ダイス等を用いた従来公知の加工方法で行う。また、素線1aの作製方法は前記第1の製造方法と同様である。
(塗布工程:S2a)、(焼鈍工程S3a)
塗布工程S2aにおいて、アルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する素線として、前記第1伸線加工工程S1aで作製された素線1bを使用すること、焼鈍工程S3aにおいて、混合物が塗布された素線として、素線1bを使用すること以外は、前記第1の製造方法(塗布工程S1、焼鈍工程S2)と同様であるので、説明を省略する。
(第2伸線加工工程:S4a)
前記焼鈍工程S3aで軟化焼鈍された素線1bに1回以上の伸線加工を施してワイヤ1を作製する工程である。すなわち、素線径(2〜3mm)を所定のワイヤ径(1〜2mm)まで縮径する工程である。また、伸線加工の回数については、素線径とワイヤ径とによって、適宜設定する。なお、伸線加工は、乾式または湿式孔ダイス等を用いた従来公知の加工方法で行う。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例(No.1〜12))
鋼合金(C:0.04質量%、Si:0.8質量%、Mn:1.2質量%、P:0.010質量%、S:0.010質量%、Ti:0.24質量%、残部がFeおよび不可避的不純物)を用いて、溶解、鋳造、熱間圧延にてφ5.5mmのソリッドワイヤ用の素線を作製した。そして、素線を乾式孔ダイスでφ2.4mmまで伸線加工した(伸線加工工程)。次に、この伸線加工された素線に、表1に示す混合量で混合された2種類以上のアルカル金属炭酸塩の混合物を塗布した(塗布工程)。そして、混合物が塗布された素線に、830℃×30分の軟化焼鈍を施した(焼鈍工程)。次に、軟化焼鈍された素線を乾式孔ダイスでφ1.2mmまで伸線加工して、ソリッドワイヤを作製した(伸線加工工程)。
ここで、アルカリ金属炭酸塩の混合状態としては、2種類以上のアルカリ金属炭酸塩を固体状態で直接混合した場合(実施例(No.1、3、5、7、9、11))、および、2種類以上のアルカリ金属炭酸塩を約5質量%の水溶液状態で混合した場合(実施例(No.2、4、6、8、10、12))の2つの状態で行った。また、塗布方法としては、アルカリ金属炭酸塩を固体状態で直接混合した場合には、加熱して溶融塩とし、この溶融塩に素線を浸漬した。アルカリ金属炭酸塩を水溶液状態で混合した場合には、この水溶液に素線を浸漬した。
(比較例(No.13〜18))
比較例(No.13〜16)は、1種類のアルカリ金属炭酸塩を使用すること以外は実施例(No.1またはNo.2)と同様にして、ソリッドワイヤを作製した。また、比較例(No.17〜18)は、600℃×30分の軟化焼鈍を施すこと以外は実施例(No.7またはNo.8)と同様にして、ソリッドワイヤを作製した。
作製されたソリッドワイヤ(実施例(No.1〜12)、比較例(No.13〜18))について、以下の条件で矯正加工を行い、その後、アルカリ金属濃度の化学分析を行った。その結果を表1に示す。なお、アルカリ金属濃度は、ソリッドワイヤの質量全体に対するアルカリ金属の質量濃度として算出した。その結果を表1に示す。
(矯正加工条件)
ソリッドワイヤを半径30mmのローラに沿う形で曲げ、その後、戻す加工(曲げ戻し加工)を4回繰り返し行った。
また、矯正加工後のソリッドワイヤ(実施例(No.1〜12)、比較例(No.13〜18)について、断面SEM観察を行い、アルカリ金属の含浸状況の確認を行った。なお、実施例(No.1)については、SEM写真を図2に示す。
次に、矯正加工後のソリッドワイヤ(実施例(No.1〜12)、比較例(No.13〜18))について、以下の溶接条件でアーク溶接を行い、スパッタの発生量について評価した。評価方法としては、アーク点の周りに飛散するスパッタを肉眼で観察し、その発生量を官能評価した。その結果を表1に示す。表1において、スパッタの発生量が少ないものを(○)で良好、スパッタの発生量が多いものを(×)で不良とした。
(溶接条件)
・供試鋼板:JIS G 3106 SM490B
・シールドガス:100%CO(流量20リットル/min)
・溶接電流:280A
・溶接電圧:32V
・溶接速度:40cm/min
・ワイヤ突き出し長さ:25mm
・溶接極性:DCEP
・溶接姿勢:下向きビードオンプレート溶接
以上の結果から、実施例(No.1〜12)のソリッドワイヤは、2種類以上アルカリ金属炭酸塩の混合物を用いたため、混合物の融点が焼鈍温度未満となり、SEM写真によって、ソリッドワイヤの表面近傍にアルカリ金属含浸部が確認され、そのアルカリ金属含浸部のアルカリ金属の合計濃度が1.5質量ppm以上となった。その結果、実施例(No.1〜12)のソリッドワイヤを用いてアーク溶接を行った時、スパッタの発生量が少なかった。
具体的には、実施例(No.1〜8)のソリッドワイヤは、アルカリ金属の合計濃度が10質量ppm以上であるため、5分以上の溶接を行っても大粒のスパッタは全く発生しなかった。実施例(No.9〜10)のソリッドワイヤは、アルカリ金属の合計濃度が5質量ppm以上10質量ppm未満であるため、5分の溶接で3粒以下の大粒のスパッタの発生にとどまった。実施例(No.11〜12)のソリッドワイヤは、アルカリ金属の合計濃度が1.5質量ppm以上5質量ppm未満であるため、5分の溶接で3粒を超え5粒以下の大粒のスパッタの発生にとどまった。
これに対し、比較例(No.13〜16)のソリッドワイヤは、1種類のアルカリ金属炭酸塩を用いたため、アルカリ金属炭酸塩の融点が焼鈍温度以上となり、SEM写真によって、ソリッドワイヤの表面近傍にアルカリ金属含浸部が確認されたが、アルカリ金属の濃度が1.5質量ppm未満となった。その結果、比較例(No.13〜16)のソリッドワイヤは、1分のアーク溶接で10粒以上の大粒のスパッタが発生した。なお、比較例(No.13〜16)のソリッドワイヤは、実施例に比べ過剰な粒界酸化が生じ、矯正加工によってアルカリ金属を含む表面結晶粒が脱落したため、アルカリ金属の合計濃度が低くなった。
また、比較例(No.17〜18)のソリッドワイヤは、2種類のアルカリ金属炭酸塩の混合物を用いたが、焼鈍温度を下限値未満としたため、混合物の融点が焼鈍温度以上となり、SEM写真によって、ソリッドワイヤの表面近傍にアルカリ金属含浸部が確認されたが、アルカリ金属の濃度が1.5質量ppm未満となった。その結果、比較例(No.17〜18)のソリッドワイヤは、1分のアーク溶接で10粒以上の大粒のスパッタが発生した。また、比較例(No.17〜18)のソリッドワイヤは、焼鈍温度が低いため、伸線加工の途中でワイヤの一部が断線した。前記アーク溶接は、断線を生じなかった部分で行ったものである。
本発明に係るソリッドワイヤの製造方法によって製造されるソリッドワイヤ 構成を示すもので、(a)は軸方向に沿った断面図、(b)は(a)のA−A線に沿 った断面図である。 本発明に係るソリッドワイヤの製造方法によって製造されるソリッドワイヤ 断面組織を示すSEM写真である。 (a)、(b)は、本発明に係るソリッドワイヤの製造方法を示す工程図であ る。 本発明に係るソリッドワイヤの製造において、アルカリ金属含浸部が形成さ れる過程を模式的に示す説明図である。 従来の溶接用ワイヤ(ソリッドワイヤ)の製造において、アルカリ金属含浸 部が形成される過程を模式的に示す説明図である。 従来のソリッドワイヤの断面組織を示すSEM写真である。
符号の説明
1 ソリッドワイヤ(ワイヤ)
1a、1b 素線
2 溶融塩層
3 アルカリ金属含浸部
S1 塗布工程
S2 焼鈍工程
S3 伸線加工工程
S1a 第1伸線加工工程
S2a 塗布工程
S3a 焼鈍工程
S4a 第2伸線加工工程

Claims (2)

  1. 鋼合金材から作製された素線を用いて、前記素線の表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する塗布工程と、
    前記混合物が塗布された素線に630〜1000℃の焼鈍温度で軟化焼鈍を施す焼鈍工程と、
    前記焼鈍工程で軟化焼鈍された素線に1回以上の伸線加工を施してワイヤを作製する伸線加工工程とを含み、かつ、
    前記塗布工程における混合物の融点が、前記焼鈍工程における焼鈍温度未満であること特徴とするソリッドワイヤの製造方法。
  2. 鋼合金材から作製された素線を用いて、前記素線に1回以上の伸線加工を施して所定径の素線を作製する第1伸線加工工程と、
    前記第1伸線加工工程で作製された素線の表面に2種類以上のアルカリ金属炭酸塩の混合物を塗布する塗布工程と、
    前記混合物が塗布された素線に630〜1000℃の焼鈍温度で軟化焼鈍を施す焼鈍工程と、
    前記焼鈍工程で軟化焼鈍された素線に1回以上の伸線加工を施してワイヤを作製する第2伸線加工工程とを含み、かつ、
    前記塗布工程における混合物の融点が、前記焼鈍工程における焼鈍温度未満であることを特徴とするソリッドワイヤの製造方法。
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