JP5038853B2 - 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents

炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ Download PDF

Info

Publication number
JP5038853B2
JP5038853B2 JP2007281342A JP2007281342A JP5038853B2 JP 5038853 B2 JP5038853 B2 JP 5038853B2 JP 2007281342 A JP2007281342 A JP 2007281342A JP 2007281342 A JP2007281342 A JP 2007281342A JP 5038853 B2 JP5038853 B2 JP 5038853B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
slag
welding
wire
carbon dioxide
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007281342A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009106966A (ja
Inventor
大輔 大村
勇 木本
翔太 芝崎
Original Assignee
日鐵住金溶接工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日鐵住金溶接工業株式会社 filed Critical 日鐵住金溶接工業株式会社
Priority to JP2007281342A priority Critical patent/JP5038853B2/ja
Publication of JP2009106966A publication Critical patent/JP2009106966A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5038853B2 publication Critical patent/JP5038853B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Arc Welding In General (AREA)
  • Nonmetallic Welding Materials (AREA)

Description

本発明は、軟鋼または540N/mm級以下の高張力鋼に使用する炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤに関し、特に大入熱および高パス間温度の溶接施工条件で連続多層盛溶接をしても、スラグ剥離性、溶接作業性および耐溶接割れ性が良好で、かつ溶着金属の機械的性質が優れた炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤに係るものである。
近年、建築鉄骨分野において、溶接施工方法として炭酸ガスを使用したガスシールドアーク溶接が主として使用されている。その理由として、炭酸ガスシールドアーク溶接法は溶着効率が高いということ、アルゴンガスを使用した場合と比較すると炭酸ガスは安価であるということが利点であるためである。
溶接施工のさらなる能率向上を図るため、大入熱および高パス間温度の溶接施工条件に対応する炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが開発され、JIS Z3312 YGW18に規定されている。この炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを使用すると490N/mm級高張力鋼に対して、最大入熱が40kJ/cmでは最高パス間温度を350℃の溶接施工条件が許容される。また520N/mm級高張力鋼に対して、最大入熱が30kJ/cmでは最高パス間温度を250℃の溶接施工条件が許容される。急速に普及している540N/mm級高張力鋼に対しても、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件が許容される。
従来、大入熱・高パス間温度対応の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、所定の機械的性質を有する溶着金属を得るために相対的に多量の合金元素が添加されている。例えば、特開平10−230387号公報(特許文献1)、特開平11−90678号公報(特許文献2)、特開平11−104886号公報(特許文献3)、特開平11−239892号公報(特許文献4)および特開2001−287086号公報(特許文献5)に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、Si、MnやTiの脱酸成分を従来の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤより多く含有し、またMo、B、Crなどを必要に応じて積極的に添加しているのが特徴である。
しかしながら、前述の490N/mm級高張力鋼、520N/mm級高張力鋼または540N/mm級高張力鋼に対する溶接施工は、入熱管理およびパス間温度管理が困難であるため、溶接作業者が溶接トーチを手持ちで使用する半自動溶接法が一般的であった。しかし最近は省人力化、夜間および休日の無人運転化により、コストダウン、納期短縮などの能率向上を目的として、ロボットによる全自動溶接が急速に普及している。
また、従来の大入熱・高パス間温度溶接施工条件対応の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、所定の機械的性質を有する溶着金属を得ることのみを目的に開発されたため、ロボットによる全自動溶接に適用することを考慮して設計されていない。したがって、大入熱・高パス間温度溶接施工条件対応の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、スラグ生成元素であるSi、MnやTiの脱酸成分やMo、Bなどを多く含有しているため、スラグ生成量が多く、かつスラグが溶着金属から剥離しにくいという欠点がある。
このような炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを使用してロボットによる全自動溶接を行い、溶着金属を積層していくと、溶着金属の上にスラグが堆積する。溶着金属の積層のためにこの堆積したスラグ上で再アークスタートを行った場合、炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤの先端と溶着金属との間での通電がスラグにより阻害されることがある。アークスタートができないとロボットがエラーと判定するため、溶接作業停止の原因となる。また多量に堆積したスラグ上で、溶着金属の積層のために溶接作業を行った場合、アーク状態の不安定化、溶込み不足、スラグ巻込みによる溶接欠陥の原因となる。さらに、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件で連続多層盛溶接を行った場合、溶接線の折返し位置などの溶込み深さが大幅に深くなる箇所では、高温割れが発生するという問題もあった。
一方、特開2006−26643号公報(特許文献6)には高入熱および高パス間温度条件で溶接した場合にスラグ生成量が少なく、スラグ剥離性が良好なガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤの開示がある。しかしながら特許文献6に記載のガスシールドアーク溶接用ワイヤはスラグ剥離性は良好であるが、Mn量が少ないので溶着金属の安定した靭性が得られないという問題がある。
特開平10−230387号公報 特開平11−90678号公報 特開平11−104886号公報 特開平11−239892号公報 特開2001−287086号公報 特開2006−26643号公報
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであって、軟鋼または540N/mm級以下の高張力鋼に対して、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件でロボットによる全自動溶接および連続多層盛溶接をしても、スラグ剥離性、溶接作業性および耐溶接割れ性が良好で、かつ溶着金属の強度が確保でき安定した靭性が得られる炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.65〜1.20%、Mn:1.92〜2.20%、S:0.007〜0.020%、Mo:0.10〜0.30%、Cu:0.15〜0.40%、Ti:0.05〜0.16%未満、B:0.0010〜0.0060%、Al:0.020%以下を含有し、P:0.020%以下で、その他はFeおよび不可避的不純物からなり、かつS+10B:0.07%以下で下記(1)式で示すスラグ結晶化度指数Pscが−8〜12であることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤである。
またワイヤ全質量に対する質量%で、Nb、V、CrおよびNiから選択された1種または2種以上の合計を0.30%以下さらに含有することを特徴とする。
Psc=2Mn+145Ti+10Mo−10Si−600S−10Al
−100B−2.6 ・・・・(1)
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤによれば、軟鋼または540N/mm級以下の高張力鋼の溶接において、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件でロボットによる全自動溶接および連続多層盛溶接を行っても、スラグ剥離性、溶接作業性および耐溶接割れ性が良好で、かつ溶着金属の強度および安定した靭性を得ることができる。
本発明者等は、上記の問題点を解決するために、種々の成分を変化させた炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを試作して溶接スラグに関する研究を重ね、スラグ剥離性に及ぼす影響および溶着金属の靭性の安定化に及ぼす影響因子を明確にし、以下に示す知見を得た。
溶接スラグの主成分はSiO、MnOおよびTiOから成る。したがって炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ中の強脱酸成分であるSi、MnおよびTiがスラグ生成量やスラグ剥離性に大きく影響する。スラグ剥離性は、溶着金属表面とスラグとの密着性およびスラグの自己崩壊性が関係する。スラグ密着性は、溶融から凝固後までにおける溶着金属とスラグとの界面エネルギーに密接な関係がある。
溶着金属表面とスラグとの密着性はS含有量が大きく影響しており、S含有量が少ないとスラグと溶着金属の密着性が増加するため、スラグ剥離性が低下する。また、スラグの主成分であるSiO、MnOおよびTiOの比率によってスラグの物理的性質である表面張力、粘性、凝固温度およびスラグと溶着金属表面間のぬれ性の変化に影響するため、Si、MnおよびTiの添加および調整により、スラグ剥離性を良好にする効果を得ることを知見した。
また、スラグの組織は結晶構造(MnSiO、TiSiO)および非晶質(ガラス質)構造からなり、スラグ中の非晶質構造の割合がスラグの自己崩壊性に大きく関係している。スラグ中の結晶構造は、TiおよびS含有量が大きく影響しており、Tiの増加およびSの減少によりスラグの非晶質構造の割合が減少し、スラグの自己崩壊性が低下して、スラグ剥離性が低下するということを知見した。さらに、AlおよびBは、スラグ中の非晶質構造の割合を増加させる傾向があるが、凝固温度および軟化温度を低下させるため、スラグと溶着金属の密着性が増加し、いわゆる焼き付きの状態となり、スラグ剥離性が低下することも知見した。従来の知見として得られている溶着金属表面の凹凸、ワイヤ送給の安定度などもスラグ剥離性への影響因子である。
一方、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件でのロボットによる全自動溶接および連続多層盛溶接における耐溶接割れ性および溶着金属の強度と安定した靭性を得ることについては、C、SおよびB含有量の増加により、高温割れを発生させる原因となる。また、溶着金属の強度と安定した靭性はC、Si、Mn、Ti、Mo、B、Nb、V、CrおよびNiの添加および調整により効果を得ることができることを知見した。
さらに、炭酸ガスシールドアーク溶接の大入熱での溶接施工条件では、アーク状態の低下およびスパッタ発生量の増加という問題があり、これら溶接作業性はSiおよびTiの添加および調整により良好となることを見出した。
以下、本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用ワイヤに含有される成分組成の限定理由について説明する。
[C:0.03〜0.08質量%]
Cは、溶着金属の焼入れ性を高め、強度および靭性を確保するうえで重要な元素である。Cが0.03質量%(以下、%という)未満であると、必要な強度と靭性が得られない。一方、Cが0.08%を超えると溶着金属の割れ感受性が高くなる。したがって、Cは0.03〜0.08%とする。
[Si:0.65〜1.20%]
Siは、主要な脱酸元素であり、溶着金属の酸素量を低下させて靭性の向上に重要な元素である。しかしながら、多くなりすぎると大入熱・高パス間温度での溶接施工条件では溶着金属を脆化させる。また、大入熱・高パス間温度での溶接施工条件ではSiの消耗が多いが、それ以上のSiが溶着金属中に歩留まって強度を確保するうえで必要である。Siが0.65%未満では所定の強度が得られず靭性も低下する。また、アーク状態が不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Siが1.20%を超えると溶着金属の靭性が悪くなる。したがって、Siは0.65〜1.20%とする。
[Mn:1.92〜2.20%]
Mnは、脱酸元素でありバラツキのない安定した靭性を得るために重要な元素である。また、強度面での改善にも有効な元素である。さらに、高融点のMnSを形成して溶着金属の割れを抑制する。反面、多くなりすぎると大入熱・高パス間温度での溶接施工条件では、Siと同様に溶着金属を脆化させる。Mnが1.92%未満では所定の強度と安定した靱性が得られない。一方、Mnが2.20%を超えると溶着金属の靭性が低下する。したがって、Mnは1.92〜2.20%とする。
[S:0.007〜0.020%]
Sは、スラグの溶着金属からの剥離を促進する作用と、スラグの結晶化度を低下する作用があり、スラグ剥離性を向上させる元素である。Sが0.007%未満ではその効果は不十分である。しかしながら、0.020%を超えると溶着金属に割れが発生し、また溶着金属の靭性を低下させる傾向がある。したがって、Sは0.007〜0.020%とする。
[Mo:0.10〜0.30%]
Moは、溶着金属の焼入れ性を高める元素である。特に大入熱・高パス間温度での溶接施工条件では、溶着金属の焼入れ性が不足するので、強度を確保するうえで必須の元素である。Moが0.10%未満であると、必要な強度が得られない。一方、Moを0.30%を超えて添加した場合は強度が高くなり過ぎて靭性が低下する。したがって、Moは0.10〜0.30%とする。
[Cu:0.15〜0.40%]
Cuは、不可避的不純物として鋼中に0.02%程度含有されることがあるが、本発明のCuは主としてワイヤ表面に施した銅めっきをいう。通常、銅めっきはワイヤ送給性と通電性を安定化するのに極めて重要な表面処理方法である。特に大入熱・高パス間温度での溶接施工条件では、銅めっきが薄いと溶接中のチップ磨耗が激しくなり、溶接中にワイヤ送給性と通電性が劣化し、その結果、満足に溶接ができなくなる。Cuが0.15%未満であると、必要なワイヤ送給性と通電性が得られない。一方、Cuが0.40%を超えて添加した場合は、溶接割れ感受性が高くなる。したがって、Cuは0.15〜0.40%とする。なお、ワイヤ表面の銅めっき厚さは0.2〜1.0μmであることが耐チップ磨耗性から好ましい。
[Ti:0.05〜0.16%未満]
Tiは、高電流域での炭酸ガスシールドアーク溶接において、アーク状態を向上させる効果がある。Tiが0.05%未満では、スラグの粘性が高まることおよび表面張力が大きくなることから、スラグが局部的に厚くなることがある。このため連続多層盛溶接ではスラグの再溶融が完全にできないことなどが原因で、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、スラグ剥離性も悪くスラグ巻込みの欠陥を発生させることがあり、さらに、溶接金属の靭性も低下する。一方、Tiは、強力な脱酸元素として作用し、かつその酸化物が溶着金属中に含有することで組織改善に効果がある。強力な脱酸元素であるがゆえに、ほとんどのTiがTiOとしてスラグの主成分となる。Tiが0.16%以上になるとスラグの非晶質構造の割合が減少することにより、スラグの自己崩壊性が低下し、スラグ剥離性が低下する。したがって、Tiは0.05〜0.16%未満とする。
[B:0.0010〜0.0060%]
Bは、Tiとの相乗効果により大入熱・高パス間温度での溶接施工条件での溶着金属の組織を改善して靭性向上に効果がある。Bが0.0010%未満ではその効果は不十分である。一方、0.0060%を超えると、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件での溶接割れ感受性が高くなるため、特に連続多層盛溶接を行った場合、溶接線の折返し位置などの溶込み深さが大幅に深くなる箇所では、高温割れが発生することがある。また、Bにはスラグの非晶質構造の割合を増加させる傾向があるが、スラグの軟化温度を低下させるためスラグと溶着金属表面の密着性を高め、スラグ剥離性を低下させる。したがって、Bは0.0010〜0.0060%とする。
[Al:0.020%以下]
Alは、強力な脱酸元素として作用し、微量の添加で溶着金属の靭性を向上させる。また、スラグの非晶質構造の割合を増加させる傾向がある。しかし、Alが0.020%を超えると、スラグの軟化温度を低下させるため、スラグと溶着金属表面の密着性を高め、スラグ剥離性を低下させる。したがって、Alは0.020%以下とする。
[P:0.020%以下]
Pは、溶着金属の割れ感受性を高める元素であり、0.020%を超えると高温割れをおこす可能性がある。したがって、Pは0.020%以下とする。
[S+10B:0.07%以下]
前述のようにSは、スラグ剥離性を向上させるために必須であるが、Bの含有量によっては高温割れを助長させる。したがって、S+10Bで0.07%以下にする必要がある。
[スラグ結晶化度指数Psc:−8〜12]
スラグの組織はMnSiO、TiSiOなどの結晶構造および非晶質構造からなり、スラグ中の非晶質構造の割合がスラグの自己崩壊性、すなわちスラグ剥離性に大きく関係している。スラグ中の結晶構造であるMnSiOおよびTiSiOの割合、すなわち結晶化度が少なければ、スラグが自己崩壊するため、スラグ剥離性が良好となる。逆に、結晶化度が多ければ、スラグが自己崩壊しないため、スラグ剥離性が不良となる。
各種試作溶接ワイヤの溶接試験後のスラグ剥離性を評価するため溶接終了後、溶接試験体を1時間空冷し、スラグが自己崩壊を起こし、自然に剥離したスラグの質量とスラグの全発生量との割合を調べた。これにより自然に剥離したスラグの質量が全スラグ量に対して30%以上の場合スラグ剥離性が良好で、30%未満では不良と評価した。
また得られたスラグをX線回析装置にて結晶化度を測定した結果、上記自然に剥離したスラグの質量が30%以上のスラグはスラグ結晶化の割合が15%以下であった。そこでスラグ結晶化の割合に対する溶接ワイヤの成分組成の影響を調べるため、上記スラグ剥離性の調査を行った溶接ワイヤの各成分の量(質量%)を独立変数、結晶化の割合を従属変数とする重回帰分析を行い、回帰係数と定数を求めた。これら回帰係数と定数を含めて式として表現したのが下記(1)式であって、この式により溶接ワイヤ成分に基づいて算出されるスラグ結晶化の割合推定値をスラグ結晶化指数Pscと呼ぶことにした。
Psc=2Mn+145Ti+10Mo−10Si−600S−10Al
−100B−2.6 ・・・・(1)
スラグ結晶化度指数Pscが−8未満では、スラグの粘性が高まること、および表面張力が大きくなることから、スラグが局部的に厚くなり、スラグ剥離性が悪くなるとともにアークが不安定になる。一方、スラグ結晶化度指数Pscが12を超えた場合、スラグの結晶化度は大きくなり、スラグ剥離性が低下する。したがって、溶接ワイヤの前述の各成分に基づき(1)式で得られるスラグ結晶化度指数Pscは−8〜12とする。
[Nb、V、CrおよびNiから選択された1種または2種以上の合計:0.30%以下]
Nb、V、CrおよびNiは、溶着金属の強度向上のため必要に応じて添加される元素である。しかし、Nb、V、CrおよびNiから選択された1種または2種以上の合計が0.30%を超えると、溶着金属部の靱性が低下する。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
まず、原料鋼を真空溶解し、鍛造、圧延、伸線、焼鈍そして銅めっきした後、1.4mmの製品径まで伸線して20kgのスプール巻ワイヤとした。試作したワイヤの化学成分を表1および表2に示す。
Figure 0005038853
Figure 0005038853
溶接試験は溶着金属試験、スパッタ発生量測定および溶接割れ試験を行なった。各試験の溶接施工方法を表3に、溶接施工条件を表4に示す。図1は溶着金属試験および溶接割れ試験に用いた試験鋼板の開先形状を示す(a)正面図、および(b)平面図である。図3中、1および2は鋼板、3は裏当金、4はエンドタブ、5は溶着金属試験時のパス間温度測定位置を示す。
Figure 0005038853
Figure 0005038853
溶着金属試験は、図1に示す試験鋼板に表3に示す溶接試験T1の溶接施工方法で、表4の溶接試験T1の大入熱・高パス間温度の溶接施工条件で行った。溶接中に生成したスラグはすべての溶接が終了するまで、スラグ除去作業を実施しないで溶接を行った。溶接中のアーク状態、溶接終了後のスラグ剥離性および溶着金属の機械的性質を評価した。
アーク状態は溶接中の官能試験にて評価し、アークが安定して良好な状況を○、アークが不安定な状況を×と評価した。スラグ剥離性は、溶接後のスラグの自然剥離状況から評価した。溶接終了後、溶接試験体を1時間空冷し、スラグが自己崩壊を起こし、自然に剥離したスラグの質量が全スラグ量の30%以上を○、30%未満を×と評価した。
溶着金属の機械的性質は、引張試験片(JIS Z2201 A1号)およびシャルピー衝撃試験片(JIS Z2202 4号)を鋼板表面から10mmを中心に採取して評価した。引張強さは540N/mm以上、シャルピー衝撃試験は試験温度0℃で各5本行い吸収エネルギーの最低値が100J以上を合格とした。
スパッタ発生量は、銅製の捕集箱を用いて、表3に示す溶接試験T2の溶接施工方法で、表4の溶接試験T2の溶接施工条件で30秒×5回溶接を行い、1分間当りのスパッタ発生量を算出した。1分間当りスパッタ発生量が2.0g以下を良好と評価した。
溶接割れ試験は、図1に示す試験鋼板に溶接による熱変形を防ぐための拘束板を取付けて表3に示す溶接試験T3の溶接施工方法で、表4の溶接試験T3の溶接施工条件で行った。溶接は1層目終了後、アークを切ることなく2層目を折返して溶接した。2層目溶接終了後に、溶接試験体を空冷し室温に低下したところで、1層目と2層目の折返し溶接部の浸透探傷試験で溶接割れの有無を確認した。それらの結果を表5にまとめて示す。
Figure 0005038853
表1、表2および表5中、ワイヤ記号W1〜が本発明例、ワイヤ記号W19は比較例である。
本発明例であるワイヤ記号W1〜は、各成分の含有量が適量で、S+10BおよびPscも適正であるので、スラグ剥離性およびアーク状態が良好で、スパッタ発生量が少なく、溶接割れがなく、溶着金属の引張強さおよび吸収エネルギーもバラツキがなく良好で極めて満足な結果であった。
比較例中、ワイヤ記号Wは、Cが低いので引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、スラグ結晶化指数Pscが高いのでスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W10は、Cが高いので割れが生じた。またNb、VおよびNiの合計が多いので吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W11は、Siが低いので引張強さが低く吸収エネルギーも低値でアークが不安定でスパッタ発生量も多かった。
ワイヤ記号W12は、Siが高いので吸収エネルギーが低値であった。また、Cuが高いので割れが生じた。
ワイヤ記号W13は、Mnが低いので、引張強さが低く吸収エネルギーの最低値も低かった。また、S+10Bが高いので、割れが生じた。
ワイヤ記号W14は、Mnが高いので吸収エネルギーが低かった。また、Alが高いのでスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W15は、Sが低いのでスラグ剥離性が不良であった。また、Cuが低いので通電性が不良でアークが不安定であった。
ワイヤ記号W16は、Sが高いので吸収エネルギーが低く割れも生じた。また、Tiが高いのでスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W17は、Moが低いので引張強さが低かった。また、Tiが低いのでアークが不安定でスパッタ発生量が多く、スラグ剥離性も悪かった。さらに、吸収エネルギーも低値であった。
ワイヤ記号W18は、Moが高いので引張強さが高く吸収エネルギーが低値であった。また、Bが高いのでスラグ剥離性が不良で割れも生じた。
ワイヤ記号W19は、Bが低いので吸収エネルギーが低値であった。また、スラグ結晶化指数Pscが低いのでアークが不安定でスラグ剥離性も不良であった。
本発明の実施例に用いた溶着金属試験および溶接割れ試験の試験鋼板の開先形状を示した(a)正面図、(b)平面図
符号の説明
1 鋼板
2 鋼板
3 裏当金
4 エンドタブ
5 パス間温度測定位置

Claims (2)

  1. ワイヤ全質量に対する質量%で、
    C :0.03〜0.08%、
    Si:0.65〜1.20%、
    Mn:1.92〜2.20%、
    S :0.007〜0.020%、
    Mo:0.10〜0.30%、
    Cu:0.15〜0.40%、
    Ti:0.05〜0.16%未満、
    B :0.0010〜0.0060%、
    Al:0.020%以下
    を含有し、
    P :0.020%以下
    で、その他はFeおよび不可避的不純物からなり、かつ
    S+10B:0.07%以下
    で下記(1)式で示すスラグ結晶化度指数Pscが−8〜12であることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ。
    Psc=2Mn+145Ti+10Mo−10Si−600S−10Al
    −100B−2.6 ・・・・(1)
  2. ワイヤ全質量に対する質量%で、Nb、V、CrおよびNiから選択された1種または2種以上の合計を0.30%以下さらに含有することを特徴とする請求項1記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ。
JP2007281342A 2007-10-30 2007-10-30 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ Active JP5038853B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007281342A JP5038853B2 (ja) 2007-10-30 2007-10-30 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007281342A JP5038853B2 (ja) 2007-10-30 2007-10-30 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009106966A JP2009106966A (ja) 2009-05-21
JP5038853B2 true JP5038853B2 (ja) 2012-10-03

Family

ID=40776071

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007281342A Active JP5038853B2 (ja) 2007-10-30 2007-10-30 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5038853B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5449110B2 (ja) * 2010-11-08 2014-03-19 日鐵住金溶接工業株式会社 Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP2015167991A (ja) * 2014-03-10 2015-09-28 日鐵住金溶接工業株式会社 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP6486844B2 (ja) * 2016-01-28 2019-03-20 日鐵住金溶接工業株式会社 ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
CN112222679B (zh) * 2020-10-20 2022-04-22 天津市永昌焊丝有限公司 一种低镍的高强度高韧性气体保护实心焊丝
CN113275710B (zh) * 2021-05-31 2022-12-02 郑州煤矿机械集团股份有限公司 液压支架用750MPa级高强钢中厚板不预热焊接方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4251844B2 (ja) * 2002-10-01 2009-04-08 株式会社神戸製鋼所 ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP2004195543A (ja) * 2002-12-20 2004-07-15 Jfe Steel Kk ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ
JP2005230906A (ja) * 2004-02-23 2005-09-02 Jfe Steel Kk ガスシールドアーク溶接方法
JP2007301597A (ja) * 2006-05-11 2007-11-22 Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009106966A (ja) 2009-05-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20220281024A1 (en) Flux-cored wire, manufacturing method of welded joint, and welded joint
JP6766866B2 (ja) フラックス入りワイヤ、溶接継手の製造方法、及び溶接継手
JP6766867B2 (ja) フラックス入りワイヤ、溶接継手の製造方法、及び溶接継手
EP2067566A1 (en) Flux-cored wire for submerged arc welding of low-temperature steel and a method for welding using the same
JP5137468B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP5038853B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP4628027B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
WO2019186701A1 (ja) サブマージアーク溶接用Ni基合金ワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP6953789B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ、及び溶接継手の製造方法
JP2004195543A (ja) ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ
CN112621016B (zh) 焊接用材料、焊接金属和电渣焊方法
WO2022050014A1 (ja) アーク溶接方法
JPH05375A (ja) 鋼管のサブマージアーク溶接方法および装置
JP4234481B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用溶接ワイヤ
JP2015167991A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP2007301597A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP4768310B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤ
JP5026002B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ
JP2022157587A (ja) フラックス入りワイヤ及び溶接継手の製造方法
JP3861979B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ
JP2011206828A (ja) 細径多電極サブマージアーク溶接用フラックス入り溶接ワイヤ
JP5480705B2 (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきソリッドワイヤ
JP4673048B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用ワイヤ
JP3718464B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP4204920B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用溶接ワイヤ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090930

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20111116

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111129

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120126

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120703

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120706

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150713

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5038853

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250