JP7092571B2 - メタル系フラックス入りワイヤおよびメタル系フラックス入りワイヤの製造方法 - Google Patents

メタル系フラックス入りワイヤおよびメタル系フラックス入りワイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、メタル系フラックス入りワイヤおよびメタル系フラックス入りワイヤの製造方法に関する。
従来、自動車排気系のホットエンドからコールエンドにわたる部品、エキゾーストマニホールド、コンバータ、マフラーには、耐食性、耐酸化性の向上と軽量化を指向して、JIS規格に規定されるSUS444、429、430J1L、436J1L、SUH409L等のフェライト系ステンレス薄鋼板のプレス成型品やパイプ類が多用されてきた。これらプレス成型品やパイプ類の板厚は1.5mmtや1.0mmt程度であり、近年では0.8mmt、0.5mmt等、薄肉化される傾向にある。
溶接継手は、プレス成型品どうしを重ね合わせた、あるいは重ね合わせたプレス成型品にパイプを差し込んだ、あるいはパイプにパイプを差し込んだ重ねすみ肉継手となり、加工精度のバラツキから板と板の間やパイプとパイプの間にはおよそ0.5mm程度の隙間が生じうる。溶接方法としてはガスシールドアーク溶接、より詳しくはMAG溶接あるいはシールドガスとして不活性ガスに数%以上の活性ガスを混合したMIG溶接が用いられ、溶接用ワイヤには、一般的には、ワイヤ全質量あたり10~19質量%程度のCrを含有した、ワイヤ線径1.2mmφのメタル系フラックス入りワイヤが用いられる。このメタル系フラックス入りワイヤは、近年では、耐食性や耐酸化性の向上を狙って高合金化される傾向にある。
メタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮内にフラックスが充填されたものである。その製造方法は、まず鋼製外皮を構成する鋼帯を準備し、鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールで成形してU字状のオープン管にした後、オープン管の内部に所定の化学組成となるように各種原料を配合したフラックスを充填し、オープン管の断面が円形になるように加工した上でさらに複数回の伸線を経て製品ワイヤ径まで縮径する。なお、ワイヤの製造途中で、焼鈍やベーキングなどの熱処理を行うこともある。メタル系フラックス入りワイヤの使用は、これらスプール品やパック品を溶接ロボットや自動溶接機、あるいは半自動溶接機等の送給装置に据え付けて、ワイヤを引き出して溶接に用いる。
ここで従来技術の課題を述べる。ワイヤの製造時にワイヤに断線や折れが発生すると、該当部分を含めた前後、数メートルから数10メートルのワイヤは廃却するとともに、改めてワイヤを繋ぎ直して製造設備へ線通しを行う復帰作業が発生する。また、溶接時にスプールやパックから引き出されたワイヤに断線や折れが発生すると、溶接されるべき個所に溶接が為されない、必要な溶接ビード長が得られない、といった不良品が作られるため、その手直し作業や、改めてワイヤを送給し直して溶接ラインを再起動する復帰作業が発生する。つまりワイヤの断線や折れは、ワイヤの製造時、溶接時ともに歩留まりの低下、生産性の低下を引き起こすため、その抑制が求められている。
また、溶接継手には、前述のように板と板の間、パイプとパイプの間に隙間が存在する場合がある。このような隙間は、溶接時に溶落ち、具体的には溶融金属が板を貫通し垂れ落ちて穴をあけてしまう原因となり、不良率の増加、手直しの発生など、工程全体の生産性を低下させる。前述のように、薄鋼板自体が一層薄肉化されて溶落ちが発生しやすい環境となっている昨今、溶接用ワイヤには、溶落ちを起こしにくいことがより強く求められている。
さらに、自動車排気系は、内部を排気ガスが流れる構造体であり、そのためパイプの内面溶接等で発生したスラグが剥離して内部に残存すると、排気ガスの流れを阻害し、騒音や排気効率の低下、さらには閉塞の原因となる。また、マフラーなど比較的人目に付きやすい個所では見栄えも重要であり、溶接ビードに疎らにスラグが残っている、あるいは溶接物に多量の溶接スパッタが付着していることは極力避けなければならない。このため溶接用ワイヤには、スラグ発生量が少なくその剥離が少ないこと、スパッタ発生量が少ないことが求められる。
以上の課題に対して、フラックス入りワイヤの製造時の断線の防止を図った方法としては、例えば、特許文献1にワイヤ素線を複数のカセット型ローラダイスユニット群で連続的に伸線し、各カセット型ローラダイスユニット群の減面率を適切に調整するフラックス入りワイヤの製造方法が開示されている。
特許文献2には、鋼製外皮に10~18質量%のCrを含むステンレス鋼を用い、その中にCr、Mn、Siを所定量としたフラックスを所定のフラックス充填率で含有させることで、ワイヤ製造時の断線の抑制を図ったフラックス芯溶接ワイヤなるものが開示されている。
特許文献3には、軟鋼あるいはフェライト系ステンレス鋼を鋼製外皮として用い、所定量のSi、Cr、Al、Ti、N、Fを含有させたフェライト系ステンレス鋼用フラックス入りワイヤが開示されている。特許文献4には、鋼製外皮に軟鋼あるいはステンレス鋼を用い、スラグ造さい剤、Ti、Si、N、Al、フッ化物、アルカリ金属、S、Nbを所定量としたフラックスを所定のフラックス充填率で含有させた、フェライト系ステンレス鋼用フラックス入りワイヤが開示されている。
特開平11-285892号公報 特表2014-524841公報 特開平9-85491号公報 特開平3-243296号公報
しかしながら、特許文献1に記載のフラックス入りワイヤは、フェライト系ステンレス薄鋼板のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤとしては、スラグ発生量とともにスラグの剥離が多かった。また溶着金属がオーステナイト相主体となり、溶接継手としてはフェライト系ステンレス薄鋼板との線膨張係数の違いによる熱疲労が懸念されることがあった。
また、特許文献2に記載のフラックス入りワイヤは、ワイヤ中にフッ化物やアルカリ金属を一切含有しておらず、アーク安定性が悪く耐溶落ち性が劣化するとともにスパッタ発生量が多かった。
また、特許文献3に記載のフラックス入りワイヤは、ビード形状、アーク安定性が不十分で、耐溶落ち性が劣化するとともにスパッタ発生量やスラグ発生量とその剥離が多かった。さらに、特許文献4に記載のフラックス入りワイヤは、フラックス充填率が高いため、ワイヤの製造時と溶接時にワイヤの断線や折れが発生した。
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れを防止するとともに、溶接時に溶落ちしにくく、スラグ発生量とその剥離が少なく、スパッタ発生量の少ないメタル系フラックス入りワイヤ、およびメタル系フラックス入りワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るメタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮にフラックスが充填されたガスシールドアーク溶接用のメタル系フラックス入りワイヤであって、
ワイヤ全質量に対するフラックスの充填率が14.0質量%以上、20.0質量%以下であり、
ワイヤ全質量あたり、フラックス中に
Cr:19.0質量%以下(0質量%含む)、
スラグ造さい剤:0.20質量%以上、1.00質量%以下を含有し、
ワイヤ全質量あたり、鋼製外皮とフラックスの合計で、
Cr:10.0質量%以上、19.0質量%以下、
Si:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
Al:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
Ti:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
N:0.002質量%以上、0.100質量%以下、
アルカリ金属の合計:0.01質量%以上、0.10質量%以下、
フッ化物(F換算値):0.002質量%以上、0.050質量%以下、
Mo:0.002質量%以上、1.30質量%以下、
Nb:0.002質量%以上、0.90質量%以下を含有し、
S:0.040質量%以下(0質量%含む)に規制することを特徴とする。
上記メタル系フラックス入りワイヤは、ワイヤ全質量あたり、鋼製外皮とフラックスの合計で、
Cu:0.30質量%以下(0質量%含む)、
Ni:0.30質量%以下(0質量%含む)に規制することが好ましい。
上記メタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮が、フェライト系ステンレス鋼であることが好ましい。
本発明の一態様に係るメタル系フラックス入りワイヤの製造方法は、上記のいずれか1つに記載のメタル系フラックス入りワイヤの製造方法であって、熱処理を行うことなく、ローラーダイスにより仕上げ伸線加工することを特徴とする。
本発明によれば、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れを防止するとともに、溶接時に溶落ちしにくく、スラグ発生量とその剥離が少なく、スパッタ発生量の少ないメタル系フラックス入りワイヤ、およびメタル系フラックス入りワイヤの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼板に用いられるメタル系フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ製造時と溶接時におけるワイヤの断線や折れ、溶接時の溶け落ち、スラグ量および剥離、スパッタ発生量について、鋭意検討を行った。その結果、以下に知見を見出し、本発明に至った。
<ワイヤの断線や折れ>
本発明者らは、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れには、ワイヤ全質量あたりのフラックスの充填率とフラックス中のCr含有量が関与していることを見出した。具体的には、鋼製外皮の鋼種にかかわらずフラックス充填率が高いほど製品ワイヤ径となったときの鋼製外皮が過度に薄肉化して断線や折れが発生しやすくなること、フラックス中のCr含有量が多いほど鋼製外皮の内面側にフラックス中のCrによる食い込みが増加して断線や折れが発生しやすくなることが分かった。
すなわち、ワイヤ全質量あたりのフラックスの充填率を所定範囲に規定し、かつ、フラックス中のCr含有量を所定量以下に制限するとともに鋼製外皮とフラックスを含むワイヤ全体に占めるCr含有量を所定範囲に規定することが、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れの発生を抑制する上で効果的であることを見出した。ここで、ワイヤ全質量は、鋼製外皮の全質量+フラックスの全質量を指し、フラックスの充填率はフラックス全質量/ワイヤ全質量×100を意味する。
また本発明者らは、ワイヤの製造方法として、ベーキングや焼鈍などの熱処理は行わず、ワイヤ線径の仕上げをローラーダイスによる圧延仕上げ(仕上げ伸線加工)とすることで、製品ワイヤ径となったときの鋼製外皮の過度の薄肉化が緩和され、ワイヤ製造時および溶接時のワイヤの断線や折れをより一層抑制できることを見出した。なお、本実施形態において、ベーキングとは、酸化雰囲気下でワイヤを加熱して、ワイヤの潤滑剤を分解燃焼して除去したり、水分を除去したりする処理のことを意味する。また、焼鈍とは、非酸化性雰囲気下でワイヤを加熱して、ワイヤの加工硬化を緩和したり、水分を除去したりする処理のことを意味する。
<溶落ち>
本発明者らは、溶落ちには、溶滴の移行性が関与していることを見出した。具体的には、溶接時にワイヤ先端に形成された溶滴が速やかかつ均一な頻度で母材に移行する、すなわち溶滴の移行時間が短くかつ均一な場合は、溶着速度が速くなりアークが母材に直接当たることが回避されて溶落ちの発生を抑制できることが分かった。そこで溶滴の移行時間を短くかつ均一化させるべく鋼製外皮、フラックス原料を種々検討した結果、SiとNは溶滴の粒径を細かくして、Alは溶滴の形成を促進して、溶滴の移行時間を短くかつ均一にすること、一方、Moは溶着速度を減少させて溶滴の移行時間を長くかつ不均一にすることが分かった。またアークの安定性も溶滴の移行性に対して重要な因子であり、Tiとアルカリ金属、Fはアークの安定性を高めて溶滴の移行を安定化させることが分かった。すなわちワイヤ全質量あたりに所定量のSi、N、Al、Ti、アルカリ金属、Fを含有させ、さらにMoを制限することが、溶落ちの発生を防止するうえで効果的であることを見出した。
<スラグ発生量と剥離>
本発明者らは、スラグ発生量には、ワイヤ中のスラグ造さい剤とTiが関与していることを見出した。具体的には、スラグ造さい剤が多いほど、Tiが多いほどスラグ発生量が増加することが分かった。Tiは溶接中に酸化されてスラグとなり、これがスラグ発生量を増加させる原因になっていた。また、本発明者らは、ワイヤ中のNbとSがスラグの焼き付きに関与し、剥離に影響を及ぼしていることを見出した。具体的には、Nbはスラグを焼き付かせ、Sはスラグを焼き付かせにくくすることが分かった。すなわちワイヤ全質量あたりのスラグ造さい剤とTiを所定範囲とし、Nbを所定量含有させ、Sを規制することが、スラグ発生量を減らし、わずかに生じたスラグも焼き付かせて剥離を抑制するうえで効果的であることを見出した。
<スパッタ発生量>
本発明者らは、スパッタ発生量には、溶落ちと同様、溶滴の移行性とアークの安定性が関与していることを見出した。具体的には、溶滴の移行時間が短くかつ均一で、アークの安定性が高い場合は、スパッタ発生量が減少することが分かった。鋼製外皮、フラックス原料を種々検討した結果、SiとNは溶滴の粒径を細かくして、Alは溶滴の形成を促進して、溶滴の移行性を安定化させ、アルカリ金属とFはアークの安定性を高めて、スパッタ発生量を減少させることが分かった。さらに、検討の中でNbがスパッタ発生量を減少することも見出した。Nbによるスパッタ低減のメカニズムは、溶接時のワイヤ先端に形成される溶滴と移行中の溶滴のガス放出(炭素や窒素の解離ガス)による破裂が、Nbによって抑制されたためと考えられる。
すなわちワイヤ全質量あたりに所定量のSi、N、Al、アルカリ金属、F、さらにNbを含有させることが、スパッタ発生量を低減するうえで効果的であることを見出した。またCuとNiはアークの安定性を損なう傾向があり、これを制限することでアークの安定性を維持して、結果としてスパッタ発生量の減少を補完することが分かった。
以上の知見から本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤはなされたものである。すわなち、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮にフラックスが充填されたガスシールドアーク溶接用のメタル系フラックス入りワイヤであって、ワイヤ全質量に対するフラックスの充填率が14.0質量%以上、20.0質量%以下であり、ワイヤ全質量あたり、フラックス中にCr:19.0質量%以下、スラグ造さい剤:0.20質量%以上、1.00質量%以下を含有し、ワイヤ全質量あたり、鋼製外皮とフラックスの合計で、Cr:10.0質量%以上、19.0質量%以下、Si:0.1質量%以上、1.0質量%以下、Al:0.1質量%以上、1.0質量%以下、Ti:0.1質量%以上、1.0質量%以下、N:0.002質量%以上、0.100質量%以下、アルカリ金属の合計:0.01質量%以上、0.10質量%以下、フッ化物(F換算値):0.002質量%以上、0.050質量%以下、Mo:1.30質量%以下、Nb:0.002質量%以上、0.90質量%以下を含有し、S:0.040質量%以下に規制することを特徴としている。
また上記ワイヤは、さらにワイヤ製造時および溶接時のワイヤの断線や折れをより一層抑制するために、鋼製外皮をフェライト系ステンレス鋼とすることが好ましく、ワイヤの製造方法としてもベーキングや焼鈍は行わず、ワイヤ線径の仕上げをローラーダイスによる圧延仕上げ(仕上げ伸線加工)とすることが好ましい。
なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤのワイヤ線径は特に限定されるものではないが、溶落ちの発生を防止する効果を有効に発揮する観点から、JIS規格やAWS規格に規定されている例えば1.0mmφ、0.9mmφ等、1.2mmφ以下の製品ワイヤ線径が好適である。また本発明に係るメタル系フラックス入りワイヤは鋼製外皮と、その外皮の内部(内側)に充填されるフラックスとから構成されるが、鋼製外皮には継目があってもなくてもいずれの形態でもよい。
以下、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤの化学成分組成と製造方法について、その数値限定と採用の理由を説明する。
<フラックスの充填率:14.0質量%以上、20.0質量%以下>
本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮にフラックスを充填してなる構造である。ここで、フラックスの充填率が14.0質量%未満であるとフラックス充填の均一性が損なわれてワイヤ中で粗密が生じ、溶接時にアークの安定性が劣化してスパッタ発生量が増加する。
一方、フラックス充填率が20.0質量%を超えると鋼製外皮が薄肉化して延性が低下し、ワイヤ製造時と溶接時にワイヤの断線や折れが発生しやすくなる。したがって、ワイヤ全質量に対するフラックスの充填率は、20.0質量%以下、好ましくは19.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%未満とする。
<ワイヤ全質量あたりのフラックス中のCrの合計:19.0質量%以下(0質量%含む)>
Crは高硬度で粉化しにくいため、フラックス中のCrがワイヤ製造工程中に鋼製外皮の内面に食い込みやすい。鋼製外皮にこのような食い込みが生じると、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れが発生しやすくなる。ワイヤ全質量あたりのフラックス中のCr含有量が19.0質量%超では、鋼製外皮への食い込みが増加してワイヤの製造時と溶接時のワイヤの断線や折れが発生しやすくなる。従ってワイヤ全質量あたりのフラックス中のCr含有量を19.0質量%以下、好ましくは18.0質量%以下、より好ましくは17.4質量%以下とする。
また、Crは、溶着金属の耐食性や耐酸化性を得るために必須な元素でもある。このため、ワイヤ全体として所定量以上のCrを含有する必要がある。溶接後に得られる溶着金属の成分は、鋼製外皮およびフラックスの双方から供給することができるため、フラックス中のCrを制限しても、鋼製外皮中のCr含有量を調整することにより、ワイヤ全体として必要なCr含有量を確保することができる。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるフラックス中のCr源としては、金属Cr、Fe-Cr合金、Fe-Si-Cr合金等があり、これらの金属粉末や合金粉末中のCr含有量の合計をフラックス中のCr含有量として規定する。
<ワイヤ全質量あたりのフラックス中のスラグ造さい剤の合計:0.20質量%以上、1.00質量%以下>
スラグ造さい剤は、溶接時にスラグとなってビード形状を整える効果がある。しかし、0.20質量%未満ではその効果が得られず、1.00質量%を超えるとスラグ発生量が過剰となる。したがって、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のスラグ造さい剤の合計を0.20質量%以上、1.00質量%以下、好ましくは0.90質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤのスラグ造さい剤は、フラックス中の酸化物、炭酸塩、フッ化物を指し、例えばTiO、SiO、Al、ZrO、MgO、MnO、NaO、KO、LiO、CaO、Liフェライトなどの酸化物、LiCO等の炭酸塩、LiF、NaF、KSiFなどのフッ化物があり、本実施形態においては、これら酸化物、炭酸塩、フッ化物の合計を規定する。
<ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のCrの合計:10.0質量%以上、19.0質量%以下>
前述のようにCrは、溶着金属の耐食性や耐酸化性を得るために有効な元素である。ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のCr含有量の合計が10.0質量%未満では、溶着金属の耐食性・耐酸化性の劣化が懸念される。
一方、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックスのCr含有量の合計が19.0質量%超では、溶着金属の延性低下が懸念されるとともに、材料コストが上昇する。また、フラックス中のCr含有量を19.0質量%以下に制限しているため、鋼製外皮およびフラックス全体のCr含有量が19.0質量%超とする場合には、鋼製外皮のCr含有量の割合を高くせざるをえない。その結果、鋼製外皮が高強度となりワイヤの製造性が劣化する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックスのCr含有量の合計を10.0質量%以上、19.0質量%以下、好ましくは18.0質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるCr源は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得る金属Cr、Fe-Cr合金、Fe-Si-Cr合金等があり、本実施形態においては、これらのCr含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のSiの合計:0.1質量%以上、1.0質量%以下>
Siは、溶滴の粒径を細かくして溶滴の移行時間を短くし、溶着速度を速めることで耐溶落ち性を向上する。しかし、0.1質量%未満ではこの効果は得られず、1.0質量%を超えるとスパッタ発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のSi含有量の合計を0.1質量%以上、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるSi源は、鋼製外皮中の合金成分や、フラックスに含まれ得るFe-Si、Fe-Si-Zr等のSi合金等があり、本実施形態においては、これらのSi含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のAlの合計:0.1質量%以上、1.0質量%以下>
Alは、溶滴の形成を促進して溶着速度を速め、溶落ちを防止する効果を有する。しかし、0.1質量%未満では効果が得られず、1.0質量%を超えるとスパッタ発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のAl含有量の合計を0.1質量%以上、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるAl源は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得る金属Al、Fe-Al合金等があり、本実施形態においては、これらのAl含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のTiの合計:0.1質量%以上、1.0質量%以下>
Tiは、アークの安定性を向上させて溶落ちを防止する効果を有する。しかし、0.1質量%未満ではその効果は得られず、1.0質量%を超えるとスラグの発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のTi含有量の合計を0.1質量%以上、1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるTi源は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得るFe-Ti合金等があり、本実施形態においては、これらのTi含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のNの合計:0.002質量%以上、0.100質量%以下>
Nは、溶滴の粒径を細かくして溶滴の移行時間を短くし、溶着速度を高めることで耐溶落ち性を向上させる効果を有する。しかし、0.002質量%未満ではこの効果は得られず、0.100質量%を超えるとスパッタの発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のN含有量の合計を0.002質量%以上、0.100質量%以下、好ましくは0.080質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるN源は、鋼製外皮中の合金成分や、フラックスに含まれうる窒化Cr、窒化Mn等の金属窒化物があり、本実施形態においては、これらの含有量の合計を規定する。
<ワイヤ全質量あたりのフラックス中のアルカリ金属の合計:0.01質量%以上、0.10質量%以下>
アルカリ金属はイオン化しやすく、特に、低電流域でのアークの集中性を高めて溶滴移行を安定化させ耐溶落ち性を向上させる。しかし、0.01質量%未満ではこの効果は得られず、0.10質量%を超えるとアーク安定性が不安定となりスパッタ発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のアルカリ金属の合計を0.01量%以上、0.10質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるアルカリ金属源は、フラックスに含まれ得るLiO、NaO、KO、Liフェライト等の酸化物、LiCO等の炭酸塩があり、本実施形態においては、これらのアルカリ金属の合計を規定する。
<ワイヤ全質量あたりのフラックス中のフッ化物(F換算値)の合計:0.002質量%以上、0.050質量%以下>
Fは、アークの集中性を高め、溶滴移行を安定化させ耐溶落ち性を向上させる。しかし0.002質量%未満ではこの効果は得られず、0.050質量%を超えると、かえってアークの安定性が劣化してスパッタが増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のフッ化物含有量(F換算値)の合計を0.002質量%以上、0.050質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるF源は、フラックスから含有しうる各種フッ化物、例えばLiF、NaF、KSiF、CeF等があり、本実施形態においてはこれらフッ化物のF換算値の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のMoの合計:0.002質量%以上、1.30質量%以下>
Moは溶着金属の耐食性向上に有効である。しかし、Moが1.30質量%を超えると、溶滴の移行時間を長くし溶着速度を低下させて溶落ちを引き起こす。また、溶着金属の延性低下が懸念され、材料コストも上昇する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のMo含有量の合計を0.002質量%以上、1.30質量%以下とする。Mo含有量の上限は、好ましくは0.90質量%以下、より好ましくは0.50質量%以下とする。Mo含有量の下限は、0.010質量%以上であることが好ましい。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるMo源は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得るFe-Mo合金等があり、本実施形態においては、これらのMo含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のNbの合計:0.002質量%以上、0.90質量%以下>
Nbはスラグを焼き付かせて剥離を防止する効果とスパッタ発生量を低減する効果がある。Nbによるスパッタ低減のメカニズムは、溶接時のワイヤ先端に形成される溶滴と移行中の溶滴のガス放出(炭素や窒素の解離ガス)による破裂が、Nbによって抑制されたためと考えられる。しかし、0.002質量%未満ではこれらの効果が得られず、0.90質量%を超えるとアークが不安定となりかえってスパッタ発生量が増加する。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のNbの合計を0.002質量%以上、0.90質量%以下とする。なお、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおけるNb源は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得るFe-Nb合金等があり、本実施形態においては、これらのNb含有量の合計を規定する。
<鋼製外皮とフラックス中のSの合計:0.040質量%以下(0質量%含む)>
Sは、スラグを焼き付かせにくくしてスラグの剥離を引き起こす。Sは鋼製外皮やフラックス原料の不可避不純物として、あるいは溶滴の小粒化によるスパッタ発生量の低減等を企図して含有したとしても所定量以下に抑制すべきである。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックスのS含有量の合計を0.040質量%以下(0質量%含む)に規制する。なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤにおけるS含有量は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得る前述の金属粉末、合金粉末、酸化物、炭酸塩、フッ化物等があり、本実施形態においてはこれらのS含有量の合計を規定する。
<その他の成分>
本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、その他の成分として、C、Mn、Pなどを含む。例えば、C:0.10質量%以下、Mn:1.00質量%以下、P:0.04質量%以下の範囲で含む。好ましくは、C:0.05質量%以下、Mn:0.50質量%以下、である。本実施形態に係るフラックス入りワイヤの残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、本実施形態に係るフラックス入りワイヤは、上記で規定した各化学成分とFeの合計量は、例えば95%以上、好ましくは98%以上であることが好ましい。また、Fe含有量は、例えば、80~90質量%の範囲で任意に設定することができる。
また、本実施形態にフラックス入りワイヤは、必要に応じて、Cu、Niを含んでも良い。
<ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のCuの合計:0.30質量%以下(0質量%含む)、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のNiの合計:0.30質量%以下(0質量%含む)>
CuとNiは、これらを制限することでアークの安定性を維持して、結果としてスパッタ発生量の減少を補完する。0.30質量%以下ではスパッタ発生量を抑制できる。したがって、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックスのCu含有量の合計を0.30質量%以下、Ni含有量の合計を0.30質量%以下に規制すると良い。本実施形態のフラックス入りワイヤにおけるCu含有量、Ni含有量は、鋼製外皮の合金成分や、フラックスに含まれ得る前述の金属粉末、合金粉末があり、本実施形態においてはこれらのCu含有量の合計、Ni含有量の合計をそれぞれ規定する。
<鋼製外皮:フェライト系ステンレス鋼>
鋼製外皮には、特に限定はないが、本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮として、例えばJIS規格やASTM規格、AISI規格等に規定される409、430、436等のフェライト系ステンレス鋼を用いると良い。フェライト系ステンレス鋼を用いることによって、より一層、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れを抑制することができる。
<ワイヤの製造方法>
以下に、本実施形態のメタル系フラックス入りワイヤの製造方法の一例を示す。まず鋼製外皮を構成する鋼帯を準備し、鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールで成形してU字状のオープン管にした後、所定の化学組成となるように各種原料を配合したフラックスをU字状のオープン管に充填する。その後、断面が円形になるように加工した上でさらに複数回の伸線を施して縮径し、例えばワイヤ線径が1.2mmφ、1.0mmφ、0.9mmφ等、JIS規格やAWS規格等に規定されている所定の製品ワイヤ線径とする。
本実施形態においては、焼鈍やベーキングなどの熱処理は行わない。ワイヤ線径の仕上げはローラーダイスによる圧延仕上げ(仕上げ伸線加工)とすることで、製品ワイヤ径となったときの鋼製外皮の過度の薄肉化が緩和されて、より一層、ワイヤ製造時および溶接時のワイヤの断線や折れを抑制できる。ここで、ローラーダイスとしては、例えばカセット型の溝付きローラーダイスを使用することができる。また、仕上げ伸線加工とは、伸線加工時の最終パスのことを意味しており、例えば、仕上げ伸線加工の減面率は、2~10%である。
なお、本実施形態のメタル系フラックス入りワイヤには、U字状オープン管の鋼製外皮の合わせ目を突き合わせて溶接した継ぎ目無しワイヤ、あるいは鋼製外皮の合わせ目をラップさせて溶接せずに継ぎ目ありのまま残すワイヤ、いずれの構造も採用することができる。
以上のような構成とされた本実施形態に係るメタル系フラックス入りワイヤは、ワイヤ製造時と溶接時のワイヤの断線や折れを防止するとともに、溶接時に溶落ちしにくく、スラグ発生量とその剥離が少なく、スパッタ発生量の少ないという、顕著な作用効果を有する。
また、本実施形態に係るフラックス入りワイヤの製造方法において、上記の構成とされたメタル系フラックス入りワイヤをローラーダイスにより仕上げ伸線加工をして製造する構成とする場合は、熱処理なしでも断線することを抑制してワイヤを製造することが可能である。
以下、発明例および比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に示す化学成分組成(残部は、Feおよび不可避的不純物)を有する鋼製外皮を用い、表2に示すフラックス充填率、仕上げ伸線加工、成分組成にて所定ワイヤ線径のフラックス入りワイヤを製造し、スプールに巻き替えた後、試験に供した。本実施例において、ワイヤ線径の仕上げ伸線加工方法は、穴ダイスによる伸線仕上げとローラーダイスによる圧延仕上げの2種の方法を用いている。なお、ワイヤは全て、鋼製外皮の合わせ目をラップさせて溶接せずに継ぎ目ありのまま残すワイヤ(いわゆるワイヤ断面形状がラップと呼ばれるもの)とした。また、仕上げ伸線加工の減面率は約5%とした。なお、フラックス中にCrを19.0質量%超含有するフラックス入りワイヤも製造したが、断線が多発したため、製造を中止した。
Figure 0007092571000001
Figure 0007092571000002
評価として、ワイヤの巻き折れ試験、耐溶落ち性試験を行った。
ワイヤの巻き折れ試験は、直径8mmφのパイプ外面に、5m長のワイヤをスパイラル状に詰めて並列に1層巻き付けてゆき、ワイヤの断線や折れを発生させる試験である。スプールからワイヤを引き出しながら巻き折れ試験を行い、ワイヤの断線や折れの発生個数を評価した。評価基準は、ワイヤの巻き折れ試験はワイヤの断線や折れが50個以上を×(不良)、1個以上、50個未満を〇(良好)、0個を◎(優良)とした。
耐溶落ち性試験は、1.5mmt×50w×300LのSUH409L薄鋼板2枚の間に0.5mmtの隙間を設けた重ねすみ肉継手を溶接して溶落ちの有無を評価するものであり、今回は溶落ちの有無とともにスラグ発生量とその剥離量、スパッタ発生量も官能評価した。
耐溶落ち性試験の溶接条件は、溶接姿勢は下向き、シールドガス組成(流量)は98%Ar+2%O(15L/min.)、溶接電源は市販のパルス電源、チップ/母材間距離は12mm、トーチ角度は前進角/後退角を付けず、溶接電流-電圧-速度は製品ワイヤ径1.2mmφのとき140A(パルス有)-20V-60cm/min.、製品ワイヤ径1.0mmφのとき70A(パルス有)-18V-60cm/min.とした。
耐溶落ち試験は、「溶落ち有り」を×(不良)、「溶落ち無し」を〇(良好)とした。スラグ発生量とその剥離は、「多い」を×(不良)、「少ない」を〇(良好)、スパッタ発生量は、「多い」を×(不良)、「少ない」を〇(良好)とした。
表2に各試験の結果を示す。
本発明例1と本発明例2は、ワイヤ全質量に対するフラックスの充填率と、ワイヤ全質量あたりのフラックス中のCr、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のCr、Si、Al、Ti、N、アルカリ金属、フッ化物(F換算値)、Mo、スラグ造さい剤、Nb、Sの各含有量が所定範囲を満足したため、巻き折れ性は良好あるいは優良、耐溶落ち性は良好、スラグ発生量とその剥離も少ないものであり(良好)、スパッタ発生量も少なかった(良好)。
本発明例2は、鋼製外皮にフェライト系ステンレス鋼を用い、焼鈍やベーキングなどの熱処理は行なわず、ワイヤの仕上げ伸線加工をローラーダイスによる伸線加工としたため、巻き折れ試験でワイヤの断線や折れは全く発生しなかった。
一方、比較例1は、巻き折れ性、耐溶落ち性、スパッタ発生量は良好だったが、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のTiとNbの各含有量が本発明範囲から外れたためスラグ発生量とその剥離が不良となった。
比較例2は、巻き折れ性は良好だったが、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のAl、Ti、アルカリ金属の各含有量とスラグ造さい剤の含有量が本発明範囲から外れていたため、耐溶落ち性、スラグ発生量とその剥離、スパッタ発生量が不良となった。
比較例3は、巻き折れ性、耐溶落ち性、スラグ発生量とスラグの剥離は良好だったが、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のSiの含有量が本発明範囲から外れていたためスパッタ発生量が不良となった。
比較例4は、耐溶落ち性、スラグ発生量とその剥離、スパッタ発生量は良好だったが、フラックスの充填率が本発明範囲から外れていたため巻き折れ試験が不良となった。
比較例5は、耐溶落ち性、スパッタ発生量は良好だったが、フラックスの充填率が本発明範囲から外れていたため巻き折れ試験が不良、ワイヤ全質量あたりの鋼製外皮とフラックス中のTiの各含有量が本発明範囲から外れたためスラグ発生量とその剥離が不良となった。

Claims (3)

  1. 鋼製外皮にフラックスが充填されたガスシールドアーク溶接用のメタル系フラックス入りワイヤであって、
    ワイヤ全質量に対するフラックスの充填率が14.0質量%以上、20.0質量%以下であり、
    ワイヤ全質量あたり、フラックス中に
    Cr:19.0質量%以下(0質量%含む)、
    スラグ造さい剤:0.20質量%以上、1.00質量%以下を含有し、
    ワイヤ全質量あたり、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    Cr:10.0質量%以上、19.0質量%以下、
    Si:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
    Al:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
    Ti:0.1質量%以上、1.0質量%以下、
    N:0.002質量%以上、0.100質量%以下、
    アルカリ金属の合計:0.01質量%以上、0.10質量%以下、
    フッ化物(F換算値):0.002質量%以上、0.050質量%以下、
    Mo:0.002質量%以上、1.30質量%以下、
    Nb:0.002質量%以上、0.90質量%以下を含有し、
    S:0.040質量%以下(0質量%含む)
    Cu:0.30質量%以下(0質量%含む)、
    Ni:0.30質量%以下(0質量%含む)、
    C:0.10質量%以下、
    Mn:1.00質量%以下、
    P:0.04質量%以下に規制し、
    前記Cr、前記スラグ造さい剤、前記Si、前記Al、前記Ti、前記N、前記アルカリ金属の合計、前記フッ化物(F換算値)、前記Mo、前記Nb、前記S、前記C、前記Mn、前記P及びFeの合計量が95質量%以上であることを特徴とするメタル系フラックス入りワイヤ。
  2. 前記鋼製外皮が、フェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載のメタル系フラックス入りワイヤ。
  3. 請求項1または2に記載のメタル系フラックス入りワイヤの製造方法であって、熱処理を行うことなく、ローラーダイスにより仕上げ伸線加工することを特徴とするメタル系フラックス入りワイヤの製造方法。
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