JP7211652B1 - フラックス入りワイヤ - Google Patents

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【課題】低コストで安定した埋もれアーク溶接を実現することのできるフラックス入りワイヤを提供する。【解決手段】埋もれアーク溶接用のフラックス入りワイヤ1は、鋼製外皮6と、鋼製外皮6中に充填されたフラックス5とを有し、フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、金属酸化物からなるスラグ形成剤を0.40~1.20質量%含み、金属粉を13.70質量%以上含み、アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物を、アルカリ金属換算値の合計で0.05~0.50質量%含む。また、フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、フッ化物からなるガス発生剤を0.19~1.00質量%含む。また、フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、金属炭酸塩からなるガス発生剤を0.30~1.00質量%含む。また、フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、Ti又はTi化合物をTi換算値の合計で0.30~0.75質量%含む。【選択図】図1

Description

本発明は、アーク溶接に用いられるフラックス入りワイヤに関する。
ガスアーク溶接の一手法として、埋もれアーク溶接という方法が従来から知られており、例えば、下記特許文献1に開示されている。一般的なアーク溶接では、ワイヤ先端のアーク発生位置が母材表面よりも上方に位置するオープンアーク溶接の状態となり、アーク直下に母材とワイヤが溶融した溶融池が形成される。
一方、埋もれアーク溶接においては、溶接電圧を低下させると共に溶接電流を増加させ、アーク圧力を高くする。これにより、埋もれアーク溶接では、ワイヤ先端のアーク発生位置が母材表面よりも下方に位置するようになり、溶融池の溶け込み深さが深くなって、厚板でも少ない溶接回数で効率良く溶接を行うことができる。
特許第6777969号公報
ところで、埋もれアーク溶接においては、上述したようにアーク発生位置が溶融池内に進入して蛸壺状の深いアークによる窪み(以後アークホールと呼称する)が形成される。その為、ワイヤ先端に形成された溶滴と周囲の溶融金属が接触して短絡することでアークが消弧すると共に、その後に爆発的なアークの再点弧が起きる現象が繰り返される等、アークが安定しないという課題がある。
これに対して、上記特許文献1では、溶接電流を高精度に制御することで、アークを安定して発生させるようにしている。しかし、このような溶接電流を高精度に制御するためには高価な電源装置が必要となり、コストもかかる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、低コストで安定した埋もれアーク溶接を実現することのできるフラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係るフラックス入りワイヤは、鋼製外皮と、前記鋼製外皮中に充填されたフラックスとを有する埋もれアーク溶接用のフラックス入りワイヤにおいて、前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、金属酸化物からなるスラグ形成剤を0.40~1.20質量%含み、金属粉を13.70質量%以上含み、アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物を、アルカリ金属換算値の合計で0.05~0.50質量%含むと共に、前記フラックスの充填率が、ワイヤ全質量に対する質量比で17.5~19.5質量%であることを特徴とする。
本発明に係るフラックス入りワイヤによれば、金属酸化物からなるスラグ形成剤、金属粉、アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物を所定量含むことで、安定した埋もれアーク溶接を実現することができる。
図1は、本発明の実施形態に係るフラックス入りワイヤの模式断面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る埋もれアーク溶接について説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、メタル系のフラックス入りワイヤ(複合ワイヤ)のフラックス成分を調整することで、埋もれアーク溶接を安定させた。図1は、本実施形態に係るフラックス入りワイヤの構成を概略的に示す模式断面図である。同図に示すように、本実施形態に係るフラックス入りワイヤ1は、芯となるフラックス5と、フラックス5の周囲を覆う鋼製外皮6とを備える。
本実施形態では、フラックス入りワイヤ1の構造として、外皮に継ぎ目のあるラップ型を採用しているが、外皮に継ぎ目のないシームレスタイプであっても良く、また、フラックス入りワイヤ1の外皮表面にメッキ等がさらに施されていても良い。なお、本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値又は上限値として含む意味で使用される。
本実施形態では、鋼製外皮6は、鋼製外皮6の全質量に対して、C(炭素):0.023質量%、Si(シリコン):0.01質量%、Mn(マンガン):0.14質量%、P(リン):0.008質量%、S(硫黄):0.006質量%を含み、その他の成分はFe(鉄)と不可避的不純物である。
フラックスワイヤ1のサイズに関して、鋼製外皮6の外径がφ1.6mmである。もちろん、フラックス入りワイヤ1のサイズや、鋼製外皮6のサイズや成分は適宜変更できる。
図2に示すように、埋もれアーク溶接においては、高電流の電磁ピンチ力によるアーク力により溶融金属が押し下げられ、蛸壺状の空間(アークホール)の形成に伴って溶接が進行していくが、溶け込み増を狙って深いアークホールを形成すると、しばしばワイヤ先端の溶融部分と溶融金属とが接触して短絡することでアークがいったん消弧し、アークホールが閉ざされ、その後に爆発的なアークの再点弧が生じる一連の不安定現象が繰り返される。これにより溶接が不安定になって、ビード形状も悪化する。
シールドガスとして用いられる炭酸ガスは、ガスの解離による冷却作用が大きいため、アークの電位傾度が大きく、集中して発生する傾向が強く、埋もれアーク状態になり深いアークホールが形成されると、アークはアークホール下部に集中して発生するようになる。そのため、アーク力はアークホール内全域に作用しなくなり、アークが発生していないアークホール上部は支えを失って縮もうとする結果、ワイヤ先端に形成された溶滴と周囲の溶融金属とが短絡し、アークが消弧してしまうのである。
このような現象が生じるのは、アークホールでは、溶融金属の静水圧と表面張力によって常に閉塞しようとする力が作用しており、これに抗するアーク力によりアークホールが維持されているが、アークホールが深くなるとアーク力をアークホール全体に作用させることが困難となってくるからである。
この現象を回避し、深いアークホールが形成されても不安定現象を抑制する方法を鋭意検討した結果、フラックス入りワイヤ1のフラックス5にアルカリ金属を含むフッ化物や酸化物を適量添加することが有効であることを新たに見出した。アルカリ金属の添加により、埋もれアーク溶接において、アークの発生がアークホール下部に過度に集中することなく、蛸壺形状のアークホール内の広い領域に生じることで、静水圧と表面張力に抗してアークホールが維持できるようになるからである。
また、フラックス5にフッ化物や金属炭酸塩からなるガス発生剤を適量添加することで、さらなるアークホールの安定的維持が可能になることを新たに知見した。これは一方向のみに開口をもつ蛸壺状のアークホールにおいて、開口からの逃避ガス量以上にアークホール内に位置するフラックス入りワイヤ先端からガスが発生すれば、アークホール内の内圧が上昇し、アークホールの閉塞をより安定的に防ぐことができるためである。
以上のような効果により、埋もれアーク溶接の良好な溶け込みやビード外観の実現につながる。これらの現象ならびに効果は、溶融金属に囲まれた埋もれアークという独特な閉塞空間内で生じるアークにおいてのみで生ずるものであり、従来の周囲が解放状態のオープンアークでは得られていない全く新たな知見である。
一方、埋もれアーク溶接において、溶け込み阻害要因も新たに知見した。すなわち、フラックス入りワイヤ中の金属酸化物からなるスラグ形成剤の量が過度になると、アークホール底部に溶融スラグとなって滞留するようになるが、金属酸化物の溶融スラグの電気伝導度は低いため、アークホール底部へのアークの発生、加熱が滞るようになり、スラグ量の増大にともない溶け込み深さは浅くなってしまうのである。
これを防止するには、フラックス入りワイヤ1のフラックス5中のスラグ形成剤の量を適正な量に制限し、それに代わって電気伝導度に優れた金属粉の比率を高める必要があることが判明した。
また、金属酸化物の中でもチタン酸化物は他の金属酸化物に比較して電気伝導度が良く、埋もれアーク溶接において溶け込みの阻害要因とはならないことも知見した。したがって、溶接金属の靭性要求レベルに応じて、必要があればボロン添加と組み合わせて、金属チタンまたはチタン化合物の形態で添加して、ミクロ組織の微細化を図ることができる。
以下、本実施形態のフラックス5の成分に関して、具体的な実施例A1~20及び比較例B1~5を表1に示す。表1において、フラックス5の成分比率は、フラックス入りワイヤ1の全質量に対する各成分の質量比をパーセンテージ(質量%)で示している。
Figure 0007211652000002
表1において、「F.R.」は、フラックス入りワイヤ1におけるフラックス5の充填率を示している。フラックス5の実施例A及び比較例Bは、「メタル(金属)」、「金属炭酸塩」、「スラグ形成剤(アルカリ金属酸化物)」、「フッ化物」、「スラグ形成剤(金属酸化物)」及び「スラグ剥離剤」をそれぞれ所定の成分比(0質量%の場合を含む)で含有している。
実施例A及び比較例Bは、「メタル(金属)」として、単体のFe(鉄)、Mn(マンガン)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)と、Fe-Si合金、Fe-Ti合金、Fe-B合金、Fe-Mn合金、Si-Mn合金の粉末を含有する。
また、実施例A及び比較例Bは、「金属炭酸塩」として、CaCO3(炭酸カルシウム)を含有する。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、ドロマイト等を含めることもできる。
また、実施例A及び比較例Bは、スラグ形成剤として、アルカリ金属酸化物を含む金属酸化物を含有しており、アルカリ金属酸化物のスラグ形成剤としては、Na2O・Al2O3・6SiO2(ソーダ長石)、KAlSi3O8(カリ長石)を含有する。また、実施例A及び比較例Bは、金属酸化物のスラグ形成剤として、TiO2(酸化チタン)、ZrO2(ジルコニア)を含有する。金属酸化物のスラグ形成剤としては、例えば、Fe2O3(酸化鉄)を含めることもできる。
また、実施例A及び比較例Bは、「フッ化物」として、NaF2(フッ化ナトリウム)、K2SiF6(ケイフッ化カリウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、Na3AlF6(氷晶石、ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)を含有する。フッ化物としては、例えば、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム等を含めることもできる。また、実施例A及び比較例Bは、スラグ剥離剤としてBi2O3(酸化ビスマス)を含有する。
続いて、上記実施例A及び比較例Bの評価結果について、表2及び表3を用いて説明する。本実施形態では、実施例A及び比較例Bに対して、CO2ガスシールド下で埋もれアーク溶接を行い、「溶け込み」、「ビード外観」、「ビード形状」、「電流・電圧の安定性」及びこれらの「総合評価」(以上、表2)と、靱性評価(表3)の評価を行った。
Figure 0007211652000003
表2に関して、「溶け込み」及び「ビード形状」の評価は、実施例A及び比較例Bのフラックス入りワイヤ1を使ってビードオンプレート溶接を行った板材の断面のエッチングを行うことで、溶け込んだ形状を観察できるように加工し、撮影したエッチング断面画像から画像処理により、溶け込み深さ(mm)、ビード幅(mm)、余盛高さ(mm)を求め、この算出値に基づいて評価を行った。
「溶け込み」の評価結果は、実施例A1,2,4,6-10,12-17,19が「〇(11.0以上)」、実施例A3,5,11,18,20及び比較例B1が「△(10.0~10.9)」、比較例B2~5が「×(9.9以下))」であった。
「ビード形状(ビード幅)」の評価結果は、実施例A1~6,8~16,18~20及び比較例B1,3が「〇(19.0~23.9)」、実施例A7,17及び比較例B4が「△(24.0以上)」、比較例B2,5が「×(18.9以下)」であった。
「ビード形状(余盛高さ)」の評価結果は、実施例A2~6,8,9,13,14,19,20及び比較例B1,3~5が「〇(6.0以下)」、実施例A1,7,10~12,15~18が「△(6.1~6.9)」、比較例B2が「×(7.0以上)」であった。
「ビード外観」の評価は、目視で外観の評価を行った。「ビード外観」の評価結果は、実施例A1,3,4,6,11,14,15,17~20及び比較例B2,3,5が「〇(良好)」、実施例A2,5,7~10,12,13,16が「△(一部問題あり)」、比較例B1,4が「×(不良)」であった。
「電流・電圧の安定性」の評価結果は、溶接中の電流値及び電圧値をデータロガーに記録し、それぞれの溶接中の標準偏差を算出して評価した。「電圧の安定性」の評価結果は、実施例A2~6,10~12,14,16~20及び比較例B1,3が「〇(1.50以下)」、実施例A1,7~9,13,15が「△(1.51~1.69))」、比較例B4が「×(1.70以上)」であった。
また、「電流の安定性」の評価結果は、実施例A3,9,11~20及び比較例B1,3が「〇(40.0以下)」、実施例A1,2,4~8、10が「△(40.1~59.9))」、比較例B4が「×(60.0以上)」であった。
以上、表2の「溶け込み」、「ビード外観」、「ビード形状」及び「電流・電圧の安定性」の各評価を総合的に評価するために、「総合評価」として、「〇」が5個以上であれば「◎」、「〇」が3~4個であれば「〇」、「〇」が1~2個であれば「△」、「×」が1個でもあれば「×」とする総評結果を表2に示している。
「総合評価」の評価結果として、実施例A3,4,6,14,19,20が「◎」、実施例A1,2,5,8,9,11~13,15~18が「〇」、実施例A7,10が「△」、比較例B1~5が「×」であった。
Figure 0007211652000004
表3に関して、靱性評価は、実施例A及び比較例Bのフラックス入りワイヤ1を使って突き合わせ溶接を行った試験板から衝撃試験片を採取し、試験温度0℃においてシャルピー衝撃試験を3回行い、その衝撃値の平均値に基づき評価を行った。靱性評価は、実施例2,4,6及び比較例B3に対してのみ行った。靱性評価の結果は、実施例A2,6が「〇(60以上)」、実施例A4が「△」、比較例B3が不良「×(60未満)」であった。
続いて、上記実施例A及び比較例Bの評価結果に基づいて、本実施形態に係るフラックス成分の数値範囲の特徴について、表4を参照しながら順に説明する。表4は、下記数値範囲(1)~(8)に関して、各実施例A及び比較例Bの数値を記している。
Figure 0007211652000005
(1)金属酸化物からなるスラグ形成剤:0.40~1.20質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、アルカリ金属酸化物を含む金属酸化物からなるスラグ形成剤(Na2O・Al2O3・6SiO2、KAlSi3O8、TiO2、ZrO2)を合計で0.40~1.20質量%含むのが望ましい。数値範囲(1)については、実施例A1~20の全てが満たしており、比較例B1~5の全てが満たしていない。
スラグ形成剤の含有量が0.40質量%未満となると溶接時にビード表面を覆うスラグ発生量が少なくなり、ビード外観が安定しなくなる。また、スラグ形成剤の含有量が1.20質量%を越えると、アークホール底部に滞留・蓄積されるスラグが増え、アークの発生が阻害されて溶け込み深さが減少する。また、スラグ形成剤の含有量が増えると、上述した金属粉の含有量を増やせなくなる。
(2)金属粉:13.70質量%以上
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、合金を含むメタル(Fe、Mn、Si、Ti、B、Mg、Al)の金属粉を合計で13.70質量%以上含むのが望ましい。数値範囲(2)については、実施例A1~20の全てが満たしており、比較例B2~5が満たしていない。
金属粉の含有量が13.70質量%未満となると、金属粉の量の不足によりアークによって溶融された開先を埋めるのに必要な金属量を確保できないために、アークホールが縮小し、ビード形状等が悪化してしまう。
(3)アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物のアルカリ金属換算値:0.05~0.50質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、アルカリ金属を含むフッ化物(NaF2、K2SiF6、Na3AlF6)又は酸化物(Na2O・Al2O3・6SiO2、KAlSi3O8)をアルカリ金属換算値の合計で0.05~0.50質量%含むのが望ましい。フッ化物のみを含む、酸化物のみを含む、又は、フッ化物及び酸化物の双方を含む、の何れでも良い。数値範囲(3)については、実施例A1~20の全てが満たしており、比較例B5が満たしていない。
アルカリ金属をワイヤ中心部から添加するとワイヤ先端から生じるアークがアークホールの内壁全体に拡がってアーク圧を作用させるため、アークホールが安定する。アルカリ金属の含有量が0.05質量%未満となると、アークの広がりが小さくなり、アークホールが安定しなくなる。また、アルカリ金属の含有量が0.50質量%を越えると、アークホールを拡げすぎてしまうため、溶け込みの浅い溶接となってしまう。
(4)ガス発生剤としてのフッ化物:0.19~1.00質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、ガス発生剤としてのフッ化物(NaF2、K2SiF6、CaF2、Na3AlF6)を合計で0.19~1.00質量%含むのが望ましい。数値範囲(4)については、実施例A2~6,8~10,13~17,19,20が満たしており、比較例B2~5が満たしていない。
従来までの知見として、弗化物を添加することで気孔欠陥や低温割れの原因となる水素を低減させる効果があるが、今回はガス発生剤としてフラックス5に添加した。
フッ化物からなるガス発生剤をフラックス5に添加することで、フラックス入りワイヤ1の先端からガスが発生し、アークホールの内圧を高めることができ、アークホールの閉塞をより安定して防ぐことが出来る。この効果は、アークホール内部まで進入したワイヤ先端がアーク発生位置になるという埋もれアークの独特なアーク発生形態によって初めて得られる効果である。
この効果を得るためには、ガス発生剤としてのフッ化物を0.19質量%以上添加するのが望ましい。また、ガス発生剤としてフッ化物の含有量が1.00質量%を越えると、アークホールの内圧が高くなり過ぎてしまい、オープンアーク溶接の状態となって溶け込みの浅い溶接になると共に、大粒のスパッタが発生して溶接作業性が悪化してしまう。
(5)ガス発生剤としての金属炭酸塩:0.30~1.00質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、ガス発生剤としての金属炭酸塩(Ca2CO3)を0.30~1.00質量%含むのが望ましい。数値範囲(5)については、実施例A3,4,6,13,14,19,20が満たしており、比較例B2~5が満たしていない。
従来までの知見として、金属炭酸塩を添加することでフッ化物と同様に溶接継手中の水素を低減する効果があることに加えて、アークの安定性と集中性を高める効果があるが、今回は、フッ化物と同様にガス発生剤としてフラックス5に添加した。
ガス発生剤としての金属炭酸塩をフラックス5に添加することで、フラックス入りワイヤ1の先端から二酸化炭素(CO2)のガスが発生し、上述したフッ化物のガス発生剤と同様の作用効果を奏する。
このような作用効果を効果的に得るためには、ガス発生剤としての金属炭酸塩を0.3質量%以上含むのが望ましいが、1.00質量%を越えて添加すると、過剰なCO2ガスの発生によって、溶け込みやビード外観の悪化を招くため望ましくない。
(6)Ti又はTi化合物のTi換算値:0.30~0.75質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、Ti又はTi化合物(Fe-Ti、TiO2)をTi換算値の合計で0.30~0.75質量%含むのが望ましい。Tiのみを含む、Ti化合物のみを含む、又はTi及びTi化合物の双方を含む、の何れでも良い。数値範囲(6)については、実施例A1~20の全てが満たし、比較例B1,3~5が満たしていない。
Tiは、強力な脱酸剤であり、溶接金属の酸素含入量を低下させ、靱性値を向上さる効果を有する。また、形成したTi酸化物はスラグとして浮上分離するが、溶接金属中に取り残された微細な粒状のTi酸化物は、溶接金属の冷却途上において、オーステナイトからフェライトへの相変態に際し、変態核生成サイトとなって変態終了後のミクロ組織を微細にし、靱性を高める効果がある。
このような作用効果を効果的に得るためには、Ti又はTi化合物をTi換算値の合計で0.30質量%以上含むのが望ましいが、0.75質量%を越えて添加すると、固溶チタン量を増やすことになり、かえって靱性を劣化させる場合もあるため、0.75質量%以下のとするのが望ましい。
なお、一般に金属酸化物からなるスラグは電気伝導度が悪いため、埋もれアーク溶接において、蛸壺状のアークホール底部にスラグが滞留すると、アークホール底部へのアークの発生を阻害し、溶け込みを減ずる要因となり得るが、TiO2からなるスラグは、他の酸化物と比べて電気伝導度に優れるため、アーク発生を阻害することはない。
(7)B化合物のB換算値:0.0010~0.0085質量%
フラックス5は、ワイヤ全質量に対して、B化合物(Fe-B)をB換算値で0.0010~0.0085質量%含むのが望ましい。数値範囲(7)については、実施例A1,2,6~12,15~18が満たしており、比較例B1,3,5が満たしていない。
B(ホウ素)は、溶接金属のオーステナイト粒界に偏析し、粒界の焼入れ性を高めることで、オーステナイト粒界からの粒界フェライトや上部ベイナイトへの変態を抑制し、オーステナイト粒内に残存するTi酸化物から同時多発的に変態するアシキュラーフェライト主体の微細組織の形成に寄与する。
しかし、0.0085質量%を越えて添加すると、溶接金属全体の焼入れ性を高め過ぎることから、かえって靱性を劣化させる場合がある。よって、本実施形態のように、スラグ形成剤を減らして金属粉末を増やしたメタル系のフラックス入りワイヤ1においては、上記数値範囲(7)でB化合物を添加するのが望ましい。
(8)フラックス充填率:17.5~19.5質量%
フラックス入りワイヤ1は、ワイヤ全質量に対して、フラックス5を17.5~19.5質量%含むのが望ましい。数値範囲(8)については、実施例A1~20の全てが満たしており、比較例B3~5が満たしていない。
従来の一般的な溶接ワイヤのフラックス充填率は10~15質量%であるが、本実施形態では、深溶け込み・高溶着を実現するためにフラックス5の充填率を高くしている。フラックス5の充填率を高くすることで、従来の一般的な溶接ワイヤと比べて、鋼製外皮6の断面積が小さくなり、鋼製外皮6のみに流れる電流の密度が高くなる。
これにより、突き出し部の抵抗発熱が増加するため、フラックス入りワイヤ1が早く溶融することで単位時間当たりのメタル量が増加する。
フラックス5の充填率が17.5質量%を下回ると、溶け込みが浅くなると共に、ビード外観に波打ちが見られるなどの不良が発生する。また、フラックス5の充填率が19.5質量%を上回ると、鋼製外皮6に安定してフラックス5を充填できないといった問題が発生してしまう。よって、フラックス5の充填率は上記数値範囲(8)とするのが望ましい。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本実施形態によれば、金属酸化物からなるスラグ形成剤、金属粉、アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物を所定量含むことで、安定した埋もれアーク溶接を実現することができる。
本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるのもではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内ので、種々の変形が可能である。例えば、フラックス入りワイヤの形状やサイズは適宜変更可能である。
1 フラックス入りワイヤ
5 フラックス
6 鋼製外皮

Claims (5)

  1. 鋼製外皮と、前記鋼製外皮中に充填されたフラックスとを有する埋もれアーク溶接用のフラックス入りワイヤにおいて、
    前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、
    金属酸化物からなるスラグ形成剤を0.40~1.20質量%含み、
    金属粉を13.70質量%以上含み、
    アルカリ金属を含むフッ化物又は酸化物を、アルカリ金属換算値の合計で0.05~0.50質量%含むと共に、
    前記フラックスの充填率が、ワイヤ全質量に対する質量比で17.5~19.5質量%であることを特徴とするフラックス入りワイヤ。
  2. 前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、フッ化物からなるガス発生剤を0.19~1.00質量%含むことを特徴とする請求項1記載のフラックス入りワイヤ。
  3. 前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、金属炭酸塩からなるガス発生剤を0.30~1.00質量%含むことを特徴とする請求項1又は2記載のフラックス入りワイヤ。
  4. 前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、Ti又はTi化合物をTi換算値の合計で0.30~0.75質量%含むことを特徴とする請求項1記載のフラックス入りワイヤ。
  5. 前記フラックスは、ワイヤ全質量に対して、B化合物をB換算値で0.0010~0.0085質量%含むことを特徴とする請求項1記載のフラックス入りワイヤ。
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