JP4881512B2 - セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールドガスを必要としないセルフシールドアーク溶接で用いられるフラックス入り溶接ワイヤに関し、詳細には、横向きや立向き溶接などの全姿勢溶接において良好な溶接作業性を有するとともに、溶接金属の靭性が良好で、且つブローホールなどの気孔欠陥も極めて少ない溶接部を得ることのできるセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルフシールドアーク溶接法は、シールドガスを外部から供給しなくても溶接することができる簡便な溶接法であり、主として、下向き溶接のみならず横向き溶接や立向き溶接などの全姿勢で溶接が行われる屋外での現場施工で採用されている。これは、アークの周囲にシールドガスを発生させる成分(フラックス)を鋼製外皮で囲んだ「セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、「セルフシールドワイヤ」または「ワイヤ」と称する場合がある)」を溶接時に消耗電極として用いることによって、外部からシールドガスを供給する必要がないからである。尚、溶接時にシールドガスが無い場合は、大気中の窒素が溶融金属に固溶してしまい、溶接金属の性能を劣化させてしまう。
【0003】
従来のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、溶接時に溶接金属を被包する様にスラグを形成すると共に、アーク熱によって気化して、アーク雰囲気や溶融池を大気から遮蔽するためのシールド剤として、フッ化物、Li系酸化物、炭酸塩などを多量に含んでいる。従って、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤと比べると、スパッタの発生量が多く、またさらにスラグの凝固が遅く、粘性が低いため、立向や上向では溶接作業性やビード形勢に問題があり、全姿勢溶接が要求される現場施工への適用が困難であった。さらに、同じくシールド剤(より詳しくは、溶接中に侵入した窒素や酸素による溶接金属の気孔の発生を防ぐための脱窒剤や脱酸剤)としてAl、Mg等も多量に含むことから、溶接金属の結晶粒が粗大化し、溶接金属の靱性が劣化した。
【0004】
具体的には、特開昭59-141397号には、金属フッ化物、酸化鉄、Al−Mg合金、Ca−Si合金、Mnの含有量を規定したセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが提案されている。しかし、溶接金属の靭性の改善が十分ではなく、しかも溶接作業性も良好なものではなかった。
【0005】
また、特開平3-118993号や特開平4-13497号には、フラックス中に含有させる金属フッ化物、Al、Mg、Mn、C等の成分値を調整することによって、溶接作業性を改良したセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが提案されている。一方、特公昭58-57280号、特公昭62-25479号、特開平5-393号には、フラックス中に、Li酸化物、塩基性・中性酸化物、鉄系酸化物などを含有させることによって、溶接金属の靭性向上を図ったセルフシールド溶接用フラックス入りワイヤが提案されている。しかしながら、これらの技術は何れも優れた溶接作業性と溶接金属の靭性を兼ね備えたものではなかった。
【0006】
本発明者らは、良好な溶接作業性と溶接金属の靭性を兼ね備えたセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提案すべく種々検討を重ねた。そして、その研究の結果として、特開平10-180487号の様な技術を提案している。この技術では、ワイヤにAlやMgの他にLi−Fe系複合酸化物を添加することによって、溶接作業性の向上、及び、溶接金属の靭性向上が実現できたのであるが、さらなる溶接作業性の向上、及び、溶接金属の靭性向上が望まれているのが実状である。また、この技術では、Li−Fe系複合酸化物を用いているが、これは高価な材料であり、製造コストを低減することができないという問題を生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、優れた溶接作業性を有すると共に、高靭性の溶接金属を得ることができ、しかも、製造コストが低いセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤとは、鋼製外皮内にフラックスを充填したセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対して、
Alを1.5〜9%(「質量%」の意味。以下同じ)、
Mg−Fe系複合酸化物を2.0〜15%、
Mn及び/又はNiを合計で0.1〜5%、
Mgを0.1〜4%(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)、
含有することに要旨を有する。
【0009】
本発明では、必要に応じて上記成分組成範囲を下記(1)〜(4)のいずれかの要件を満足する様に規定することが好ましい。
(1)前記Alが2〜8%、
(2)前記Mg−Fe系複合酸化物が4〜13%、
(3)前記Mn及び/又はNiが合計で0.5〜4%、
(4)前記Mgが0.3〜3.1%(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)。
【0010】
また、本発明では、さらに必要に応じて、
▲1▼Li−Fe系複合酸化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜10%、
▲2▼Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜1.0%、
▲3▼金属フッ化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜5.0%、
▲4▼炭酸化合物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜5%、
などを含有するとさらなる効果を奏することができる。
【0011】
そして、前記金属酸化物がCa−Fe系複合酸化物であることが好ましく、前記Ca−Fe系複合酸化物がCaFe24であると一層好ましい。また、前記炭酸化合物はCaCO3が好ましい。
【0012】
尚、本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを溶接する際の極性はDCEP(=Direct Current Electrode Positive)、DCEN(=Direct Current Electrode Negative)のどちらでも使用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、さらなる溶接作業性の向上と溶接金属の靭性の向上を目指して鋭意検討した。その結果、セルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成を厳密に規定すれば、上記課題を見事解決することができることを見出し、本発明を完成させた。以下本発明の構成およびその作用効果について詳細に説明する。
【0014】
本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮内にフラックスを充填したものであるが、外皮を含めたセルフシールドワイヤ全体の成分組成を規定することが重要である。つまり、アーク溶接では、ワイヤの外皮及びフラックスの両方が溶融するので、ワイヤ全体の成分組成を限定しなければ、本発明の効果を得ることができないのである。そして、本発明者らによると、ワイヤにAl、Mg−Fe系複合酸化物、Mn及び/又はNi、Mg(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)を所定量含有すると、本発明の要件を満足することを見出した。以下にこれらの元素添加による作用効果を説明する。
【0015】
まず、本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、Alを含有する必要がある。Alはアーク溶接時におけるアークを安定化する効果があることは従来から知られているが、これはAlがアーク中でイオン化するからである。よって、セルフシールドワイヤ中のAl量が多いほどアークは安定し、スパッタの発生が少ない良好な溶接作業性を得ことができるのである。しかし、セルフシールドワイヤにAlを多く含有させると、溶接金属の靭性を劣化させることも従来から知られている。つまり、溶接金属に含まれるAl含有量が多くなると、Alが母相中に固溶して、δフェライトが安定となり、冷却過程において粗大なδフエライトがオーステナイトに十分変態しない。よって、粗大なδフェライトが溶接金属中に残存して、溶接金属の靭性が劣化するのである。
【0016】
一方、溶接金属に含まれるAl含有量が少ない場合は、溶接金属の凝固時に粗大なδフェライトが生成し、その後の冷却過程において、一旦、完全にオーステナイトに変態する。その後、オーステナイトは微細なフェライトに変態するので、溶接金属の靭性は良好となる。しかし、この場合は、セルフシールドワイヤに含有させるAlを少なくする必要があり、これによってスパッタが多く発生することとなる。
【0017】
そこで、本発明者らは、セルフシールドワイヤに対するAlの含有量と、溶接作業性の向上及び溶接金属の靭性の向上との関係について検討した。その結果、ワイヤ全体に含まれるAl量を規定すると共に、フラックスにMg−Fe系複合酸化物を混合すれば、溶接作業性を向上させると共に、溶接金属の靭性も向上させることができるという知見を得た。
【0018】
すなわち、スパッタ発生量は、セルフシールドワイヤ中のAl量に依存し、Alが多いほどアークが安定化するので低減するが、溶接金属中のAl量には左右されない。一方、溶接金属の靭性は溶接金属中のAl量に支配され、Al含有量が少ないほど向上させることができる。よって、セルフシールドワイヤに添加するAl量を多くしつつ、溶滴移行後、鉄スラグ反応によって溶接金属中のAlを除去し、溶接金属中のAl量を低減することができれば、溶接作業性を損なうことなく、高靭性の溶接金属を得ることができるのである。
【0019】
従って、フラックスにMg−Fe系複合酸化物を混合すれば、アーク溶接時に溶接金属の上部にスラグを形成し、このスラグと溶接金属の界面でのメタルスラグ反応によって、スラグ中にMgAl24化合物を生成する。これによって、溶接金属中からAlを除去することができるのである。尚、Mg−Fe系複合酸化物をフラックスに添加しても、アークの安定化を阻害することはないので、スパッタ発生量を増加させることはない。
【0020】
上述した通り、セルフシールドワイヤにMg−Fe系複合酸化物を含有させることによって、従来より多くのAlをセルフシールドワイヤに含有させても良好な溶接作業性および溶接金属の靭性を得ることができる。つまり、溶滴移行段階では含有させたAlの効果によって、スパッタ発生量を少なくすることができるので、良好な作業性を保持することができる。さらに、溶接金属凝固段楷では、含有させたMg−Fe系複合酸化物の作用によって、溶接金属中のAl量を低下させることができるので、良好な靭性を実現できる。しかも、Mg−Fe系複合酸化物は比較的低価格のため、コストも低減することができる。
【0021】
このような観点から、本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、Alを1.5〜9%、Mg−Fe系複合酸化物を2.0〜15%含有することが必要である。このように数値範囲を限定した理由を次に示す。
【0022】
Al: 1.5 9
本発明は、ワイヤ全質量に対して、Alの含有量が1.5%未満ではアーク溶接時のアークが不安定となり、スパッタが多量に発生すると共に、溶接金属にピットあるいはブローホールが発生する。一方、Alの含有量が9%を超えると、セルフシールドワイヤにMg−Fe系複合酸化物を含有させても溶接金属中のAl量が増加し、溶接金属の靭性が低下する。よって、本発明では、Alを1.5%以上、9%以下含有させることとした。好ましい下限は2%であり、好ましい上限は8%である。さらに好ましい下限は2.2%であり、さらに好ましい上限は7%である。尚、Alはフラックスに添加しても良いし、鋼製外皮に添加しても良く、その添加形態は特に限定されない。フラックス中には、金属AlあるいはAl−MgやAl−Ni等の合金の形態で含有させることが例示され、鋼製外皮中には、鋼製外皮に含有される成分との合金の形態で含有させることが例示される。
【0023】
Mg−Fe系複合酸化物: 2.0 15
本発明の効果を得る為にはMg−Fe系複合酸化物を、ワイヤ全質量に対して、2.0%以上含有させる必要があるが、含有量が15%を超えると、化合物の分解によるスパッタの発生を無視できなくなり、溶接作業性が悪化する。よって、本発明ではその含有量を2.0〜15%とした。好ましい下限は4%であり、好ましい上限は13%である。さらに好ましい下限は4.2%であり、さらに好ましい上限は12%である。尚、Mg−Fe系複合酸化物は、基本的には外皮に含有させることは無いので、フラックスに含有させる。
【0024】
ここで、Mg−Fe系複合酸化物とはMg、Fe及びOを含む複合酸化物のことであり、具体的には、MgFe24 例示される。また、これら若干組成のはずれたMgFexyを用いても同様の効果を奏することができる。
【0025】
また、本発明では、セルフシールドワイヤにNi及び/又はMnを含有させる必要がある。Ni及びMnは、オーステナイト安定化元素であり、粗大なδフェライトからオーステナイトヘの変態を促進する。そして、微細なδフェライト残存に有効であり、これによって溶接金属の靭性を向上することができる。この観点から、本発明では、Mn及び/又はNiを合計で0.1〜5%含有させる必要がある。
【0026】
Mn及び/又はNi: 0.1 5
Mn及び/又はNiの合計含有量が、0.1%未満では、粗大なδフェライトの生成抑制効果が十分発揮できないので、溶接金属の靭性が低くなる。また、合計含有量が5%を超えると、溶接金属の強度が著しく高くなるため、かえって溶接金属の靭性が劣化する。従って、本発明では、Mn及び/又はNiを0.1〜5%含有させることとする。これらの含有量の好ましい下限は0.5%であり、好ましい上限は4%である。さらに好ましい下限は1.6%であり、さらに好ましい上限は3.4%である。尚、Mn及びNiは、フラックス中に含有させても良いし、鋼製外皮に含有させても良い。その添加形態は特に限定されないが、フラックス中には、金属単体あるいはFe−NiやFe−Mn等の合金形態で含有させることが例示され、鋼製外皮中には、金属単体として含有させることが例示される。
【0027】
さらに、本発明では、セルフシールドワイヤにMgを含有させる必要がある。Mgは脱酸剤であり、溶接金属中の酸素量を低減させ、溶接金属の流動性を下げて、良好な溶接金属表面を形成するのである。また、アーク熱でMgが金属蒸気となって、アーク雰囲気を大気から遮断するので、良好なアーク溶接を実現できる。しかし、上述したMg−Fe系複合酸化物中のMgは、脱酸剤としての効果を奏さないので、本発明ではMg−Fe系複合酸化物中のMgを除いたMgを0.1〜4%含有させる。
【0028】
Mg: 0.1 4 %(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)
Mgの含有量がワイヤ全質量に対して0.1%未満では、シールド性が悪化し、ブローホールやピットが発生する。また、4%を超えると溶接金属の流動性が下がりすぎるため、ビードが広がりすぎ、溶接作業性が悪化する。よって、本発明では、Mgを0.1〜4%含有させる。セルフシールドワイヤにMgを含有させる方法は特に限定されず、フラックスや鋼製外皮のいずれに含有させても良い。また、その形態は脱酸剤として作用するものであれば特に限定されず、フラックスには、金属Mgを添加しても良いし、Al−Mg等の合金としてMgを添加しても良く、鋼製外皮には、鋼製外皮成分との合金の形態で添加すれば良い。好ましい下限は0.3%であり、好ましい上限は3.1%である。さらに好ましい下限は1.6%であり、さらに好ましい上限は3%である。尚、セルフシールドワイヤ中に含有されるMg−Fe系複合酸化物中のMgと、金属Mg又はMg合金中のMgとを区別する方法は後述する。
【0029】
本発明のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおける基本的な化学成分組成は上記の通りであるが、必要によって下記成分を含有することによって、さらに溶接作業性を良好にすると共に、溶接金属の靭性を安定的に高いレベルに維持することができる。
【0030】
本発明では、Mg−Fe系複合酸化物の助剤として、Li−Fe系複合酸化物をワイヤ全質量に対して0.01〜10%含有させることが好ましい。
【0031】
Li−Fe系複合酸化物: 0.01 10
Li−Fe系複合酸化物はMg−Fe系複合酸化物と同様の脱Al効果を奏するが、Mg−Fe系複合酸化物を含有させていない状態では、スラグ融点が高くなりすぎて、良好な溶接ビード外観を得ることが困難である。しかし、Li−Fe系複合酸化物をMg−Fe系複合酸化物の助剤として用いると、Mg−Fe系複合酸化物主体のスラグの流動性を改善し、溶融プールが安定するので、アークの安定性が増し、良好なビード外観を得ることが出来る。しかし、その含有量が0.01%未満では上記の様な効果を得ることができず、また、10%を超えるとスパッタ発生量が増加する。また、Li−Fe系複合酸化物は、比較的高価であるので、過剰に添加するとコスト高となる。好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は5%である。
【0032】
ここで、Li−Fe系複合酸化物とは、Li、Fe及びOを含む複合酸化物のことであり、具体的には、LiFeO2やLiFe58が例示される。また、これらから若干組成のはずれたLiFexyでも同様の効果を奏することができる。そして、この添加方法は特に限定されないが、基本的にはフラックスに添加される。
【0033】
また、本発明では、Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜1.0%含有させることが好ましい。
【0034】
Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物: 0.01 1.0
セルフシールドワイヤに、スラグ形成剤としてMg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物を含有させると、スラグのかぶりを良くすることができるので、溶接ビード形状を整える効果を得ることができる。しかし、0.01%未満ではこの様な効果を得ることができず、また1.0%を超えて含有させるとスパッタ発生量が増加するので、0.01〜1.0%含有させることが推奨される。好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.7%である。尚、その添加方法は特に限定されず、鋼製外皮に添加しても良いし、フラックスに添加しても良い。
【0035】
Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物としては、Fe酸化物(例えば、FeO、Fe23、Fe34など)、Si酸化物(例えば、SiO2)、Ti酸化物(例えば、TiO2)、Ca酸化物(例えば、CaO)、Zr酸化物(例えば、ZrO2)、K酸化物(例えば、K2O)、Na酸化物(例えば、NaO)、Al酸化物(例えば、Al23)、Mg酸化物(例えば、MgO)、Mn酸化物(例えば、Mn23、MnO、MnO2など)、Ce酸化物(例えば、CeO2)、Ba酸化物(例えば、BaO)等の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物が例示される。このような金属酸化物の中でも、アークの安定化を阻害することがないので、Ca−Fe系複合酸化物であることが好ましく、Ca−Fe系複合酸化物がCaFe24であると一層の効果を得ることができる。
【0036】
さらに、本発明では、金属フッ化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜5.0%含有させることが好ましい。
【0037】
金属フッ化物: 0.01 5.0
金属フッ化物を含有させると、スラグの剥離性が向上し、ビード外観を良好にすることができるので、溶接作業性を向上させることができる。しかし、その含有量が0.01%未満では、所期の効果を得ることができず、また5.0%を超えて含有させるとスパッタ発生量が多くなる。好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は3%である。尚、金属フッ化物としては、BaF2、SrF2やCaF2などが例示され、その添加方法は特に限定されないが、基本的にはフラックスに添加される。
【0038】
また、本発明では、炭酸化合物をワイヤ全質量に対して0.01〜5%含有させることが推奨される。
【0039】
炭酸化合物: 0.01 5
スラグ形成剤として炭酸化合物を含有させると、スラグのかぶりが良くなり、溶接ビード形状を整えるので、溶接作業性を向上させることができる。しかし、0.01%未満ではその効果を得られず、また5%を超えて含有させるとスパッタ発生量が増加する。よって、本発明では、炭酸化合物を0.01〜5%含有させることが推奨される。好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は4%である。炭酸化合物としては、CaCO3、BaCO3、MgCO3、LiCO3、K2CO3、MnCO3などが例示され、その添加方法は特に限定されないが、基本的にはフラックスの中に添加される。アークの安定化を阻害しないという観点から、炭酸化合物の中でも最も好ましいのは、CaCO3である。
【0040】
尚、その他のフラックス成分としては当然ながら鉄粉が含まれる。周知のように、鉄粉は流動性が良いので鋼製外皮内へのフラックスの添加を安定になしうる。よって、フラックス充填率(フラックス率)を安定化するとともに、溶接時には溶着速度を高め、且つ、アークを安定にするものである。
【0041】
ここで、本発明における各種成分の含有量の測定方法を説明する。
【0042】
まず、セルフシールドワイヤを鋼製外皮とフラックスとに分離して、夫々に含有する成分を測定する。具体的には、電動ドリル等を用いてワイヤにねじりを加え、ワイヤのシーム部を開いて、内部のフラックスを取り出す。シームが無いワイヤの場合は、ワイヤ表面を研磨して、フープの一部を削り取ってから、シーム有りワイヤと同様にワイヤにねじりを加えてフラックスを取り出す。
【0043】
Mg−Fe系複合酸化物は、ワイヤ外皮に含まれることはないので、フラックス中に含有されているMg−Fe系複合酸化物の量を測定し、これをワイヤ全体に対する割合に換算する。採取したフラックスをEPMA法(X線マイクロアナリシス)で100〜3000倍に拡大して観察し、粒子の大きさが約20〜100μmのものの内部に、MgとFeが同時に観察できるものをMg−Fe系複合酸化物とする。そして、EPMA法によって、Mg及びFeの定量分析を行い、フラックス中のMg−Fe系複合酸化物量を算出し、これに下記式で示すフラックス率を乗じる事によってワイヤ全質量に対するMg−Fe系複合酸化物割合を計算する。
(フラックス率)=(取り出したフラックスの全質量)/(ワイヤの全質量)
次に、金属Mg及びMg合金中のMg量は次に示す方法によってMg−Fe系複合酸化物中のMgと区別して算出する。
【0044】
ワイヤ外皮には、Mg−Fe系複合酸化物が含まれることは無いので、外皮中で観測されたMgは、全て金属Mg又はMg合金中のMgとする。ワイヤブラシでフープ内面のフラックスを取り除き、ICP(Inductively coupling plasma:誘導結合プラズマ)法でMgを定量的に測定する。
【0045】
フラックスには、金属Mg又はMg合金中のMgと、Mg−Fe系複合酸化物中のMgが含まれるのでこれらを区別する必要がある。ワイヤを樹脂に埋めて研磨して、ワイヤ断面を露出させる。このときの断面は、ワイヤ長手方向に対する縦断面でも横断面の何れでもよい。そして、金属MgやMg化合物中のMgは、Mg−Fe系複合酸化物と異なり、MgとFeが同一粒子内に観察されないので区別することができるので、EPMAで金属Mgの部分と、酸化物およびFeを含んだMg化合物の部分を2次元マッピングし、両者の面積比を求める。これを体積比に換算した後、両者の密度データを用いて夫々質量比に換算する。この質量比を各化合物中に含まれるMgの割合をもとに、Mg−Fe系複合酸化物や金属Mg単体、Mg合金中のMgの比に換算する。このMgの比と全Mg量から、金属Mg単体とMg合金中のMg量を決定する[または、ワイヤ全体のMg量から、上記で算出したMg−Fe系複合酸化物中のMg量を引くことによっても、金属Mg単体及びMg合金中のMg量を決定することができる。]。
【0046】
ワイヤ中のAl、Mn、Niの分析は以下の通りである。まず、ワイヤの外皮を機械的に除去し、フラックスと分離する。ワイヤ外皮については、ワイヤブラシでフープ内面のフラックスを取り除き、ICP法でAl、Mn、Ni量を定量的に測定する。フラックスについても同様にICP分析を行い、Al、Mn、Ni量を測定する。その後、両者を併せて、ワイヤ中のAl、Mn、Ni量を算出する。
【0047】
ワイヤ中に含まれているLi−Fe系複合酸化物の量は、次の様に算出する。Li−Fe系複合酸化物がワイヤ外皮に含まれることは基本的に無いので、フラックスに含まれるLi−Fe系複合酸化物の量を測定し、これをワイヤ全質量に対して換算する。検出方法は、Mg−Fe系複合酸化物の場合と同様で、EPMA法(X線マイクロアナリシス)を用いる。
【0048】
Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物は、鋼製外皮及びフラックスをEPMA法(X線マイクロアナリシス)の2次元マッピングで分析し、Oおよび金属成分が同時に検出できる部分を炭酸化合物と同定し、その定量値を測定する。
【0049】
金属フッ化物は、基本的にワイヤ外皮には含まれないので、フラックスのみを分析した。以下、BaF2の場合について測定方法を示すが、他の金属フッ化物についても同様の方法で測定する。
【0050】
まず、フラックスに対してEPMA分析を行い、Ba、O、C、Fe等について面分析を行う。その結果、粒子内にBaだけが測定されたら金属Ba、酸素とBaが測定されたらBaO、酸素とBaとCが測定されたらBaCO3、Baと酸素とFeとOが測定されるならBaフェライトとして各物質を同定する。これらの面積比を測定し、上記Mgの測定と同様に、体積比、質量比、Ba量比を換算した。さらに、全Ba量をICPを用いて測定し、前記Ba量比によって、BaF2等の各化合物の含有量を測定する。
【0051】
炭酸化合物の含有量の算出も同様で、EPMAの2次元マッピングして、C、O、および金属成分が同一粒子内に同時に検出できる部分を炭酸化合物として、その値を測定する。
【0052】
本発明のワイヤ径は特に限定されるものではないが、約1.2〜2.4mmのいわゆる細径とするのが好適である。また、その製造方法も特に限定されず、鋼製外皮中にフラックスを充填したのち、所定のワイヤ径にまで伸線加工して製造する方法が例示される。そして、そのワイヤ断面形状は、図1(a)〜(c)に示すように、鋼製外皮(通常、炭素鋼)を内側に折り込んでなる構造のものが例示される。鋼製外皮を内側に折り込んだ構造のものでは、溶滴のスプレー移行化(細粒状態による溶滴移行)が促進され、またフラックス中のシールド剤の効果が高められるために耐気孔性の向上に効果がある。
【0053】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0054】
【実施例】
表1に示す成分を含む鋼製外皮に、フラックスを充填してワイヤ径が約1.4mmになる様に伸線加工してセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを作成した。鋼製外皮の断面形状は、図1(c)に示すラップタイプ(両端が重なり合うようにつきあわされた円筒状の外皮を形成するもの)とした。フラックス成分が、表2または表3に示す各成分を含む様に配合比率を変化させて各種ワイヤを作成した。
【0055】
【表1】
Figure 0004881512
【0056】
【表2】
Figure 0004881512
【0057】
【表3】
Figure 0004881512
【0058】
作成した各ワイヤの成分分析は次の様に行なった。
【0059】
長さ15cmのワイヤの一端を固定し、もう一端を電動ドリル等を用いてねじり、その後、逆方向にねじり直すことによって、ワイヤのシーム部を開き、内部のフラックスを取り出した。採取したフラックスをEPMA法(X線マイクロアナリシス)にて2000倍に拡大して観察し、一つの粒子内部にMgとFeが同時に観察できるものを、Mg−Fe系複合酸化物とみなした。EPMA法によって、このMg及びFeの定量分析を行い、フラックス中のMg−Fe系複合酸化物量を測定した。これに下記に示すフラックス率を乗じて、ワイヤ全質量に対するMg−Fe系複合酸化物割合を計算した。
(フラックス率)=(取り出したフラックスの全質量)/(ワイヤの全質量)
【0060】
ワイヤ中のAl、Mn、Ni量の分析は以下のように行った。ワイヤ外皮について、ワイヤブラシでフープ内面のフラックスを取り除き、ICP法でAl、Mn、Ni量を測定した。また、取り出したフラックスに対してICP分析を行い、Al、Mn、Ni量を測定した。その後、両者を併せて、Al、Mn、Ni量とした。
【0061】
ワイヤ中のMg量については、Al、Mn、Niと同様にして、ワイヤ全体のMg量を測定した。その後、以下に述べる方法によって、Mg−Fe系複合酸化物中のMgと、金属Mg単体又はMg合金中のMgを分離した。
【0062】
まず、ワイヤを樹脂に埋めて研磨し、ワイヤ断面を露出させた。EPMA法で観察し、金属Mg及びMg合金の部分と、酸化物およびFeを含んだMg−Fe系複合酸化物の部分を2次元マッピングし、両者の面積比を求め、これを体積比に換算した後、両者の密度データを用いて、夫々質量比に換算した。その後、両者の質量比を各化合物中に含まれるMgの割合をもとに、Mg−Fe系複合酸化物と金属単体、合金中等のMgの比に換算した。このMgの比と全Mg量から、金属単体、合金中等のMg量を決定した。
【0063】
Li−Fe系複合酸化物の分析は、Mg−Fe系複合酸化物と同様に、EPMA法(X線マイクロアナリシス)を用いた。
【0064】
金属フッ化物は、ワイヤ外皮には含まれないので、フラックスのみを分析した。以下、BaF2の場合について測定方法を示すが、他の金属フッ化物(SrF2,CaF2)についても同様の方法で測定した。
【0065】
まず、フラックスに対してEPMA分析を行い、Ba、O、C、Fe等について面分析を行う。その結果、粒子内にBaだけが測定されたら金属Ba、酸素とBaが測定されたらBaO、酸素とBaとCが測定されたらBaCO3、Baと酸素とFeとOが測定されるならBaフェライトとして各物質を同定した。これらの面積比を測定し、上記Mgの測定と同様に、体積比、質量比、Ba量比を換算した。さらに、全Ba量をICPを用いて測定し、前記Ba量比によって、BaF2等の各化合物の含有量を測定した。
【0066】
Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物(CaFe24)は、鋼製外皮及びフラックスをEPMA法(X線マイクロアナリシス)の2次元マッピングで分析し、Ca、O、および金属成分が同時に検出できる部分を炭酸化合物と同定し、その定量値を測定した。
【0067】
炭酸化合物(CaCO3)は、基本的には鋼製外皮に含まれていないので、フラックスのみをEPMA法(X線マイクロアナリシス)の2次元マッピングで分析し、C、O、および金属成分が同時に検出できる部分を炭酸化合物と同定し、その定量値を測定した。
【0068】
次に、各種実験方法および評価基準について説明する。
【0069】
[溶接作業性]
溶接作業性は、スパッタ発生量、ビード外観、スラグ剥離性で評価した。
【0070】
表2及び表3に示す成分を含有するフラックスを充填したワイヤを使用して溶接電流が250A、溶接電圧が28V、ワイヤの突き出し25mm、溶接速度が30cm/min、極性がDCEPの溶接条件でビードオンプレート溶接を行い、溶接作業性を評価した。
<スパッタ発生量>
◎:捕集したスパッタ量が700mg/min以下の場合
○:捕集したスパッタ量が700mg/min超〜1000mg/minの場合
△:捕集したスパッタ量が1000 mg/min超〜2000mg/minの場合
×:捕集したスパッタ量が2000mg/min超の場合
<ビード外観>
ビード外観は、目視で判断した
◎:溶接金属表面が金属光沢を呈する場合
○:溶接金属表面がくすんでいる場合
×:ビードの蛇行が見られる場合や表面凹凸が著しい場合やスラグがかみこんでいる場合
<スラグ剥離性>
◎:溶接後のスラグが自然に剥離した場合
○:ワイヤブラシでこすると除去できた場合
×:ワイヤブラシでこすっても除去できない場合
【0071】
[溶接金属特性]
溶接金属特性は、耐気孔性及び靭性で評価した。
<耐気孔性>
耐気孔性は、JI8 G3106 SM490Bに規定される板厚20mm、幅150mm、長さ500mmの板を用い、JIS Z3111に従って溶接し、試験板をJI8 Z3104に従ってX線透過試験を行った。評価基準は次に示す通りである。
○:分類が1種1類のもの
×:上記以外のもの
<靭性>
溶接金属の靭性は、JIS Z2202に基づいてvE0℃を求めて評価した。評価基準は次に示す通りである。
◎:70J以上のもの
○:50J以上、70J未満のもの
×:50J未満のもの
溶接作業性及び溶接金属特性の結果を表4に示す。表1〜表4から以下の様に考察できる。
【0072】
【表4】
Figure 0004881512
【0073】
No.1、No.5、No.6、No.10、No.11、No.15、No.16、No.20は本発明の要件を満足しない比較例である。No.1は、Alが少ないので、アークが不安定となり、スパッタ発生量が多くなった。よって、溶接作業性を向上させることができなかった。No.5は、Alが多いので、スパッタの発生量は少ないが、溶接金属の靭性が低くなった。No.6は、Mg−Fe系複合酸化物が少ないので、溶接金属中に歩留まるAl量が多くなり、溶接金属の靭性が低くなった。No.10は、Mg−Fe系複合酸化物が多すぎるので、スパッタが多量に発生し、溶接作業性を向上させることができなかった。No.11は、Mn及びNiの合計含有量が少ないので、溶接金属の靭性が低くなった。No.15は、Mn及びNiの合計含有量が多すぎるので、強度が高くなり、かえって靭性が低下した。No.16は、Mg量が少ないので、スパッタ発生量が多くなり、溶接作業性が悪く、また、溶接金属に気孔が発生し、溶接金属特性が劣化した。No.20は、Mgが多くビードが広がりすぎてビード外観が悪かった。よって、溶接作業性が悪かった。また、Mg蒸気量が増加したので、スパッタが大量に発生した。
【0074】
一方、No.2〜No.4、No.7〜No.9、No.12〜No.14、No.17〜No.19は、本発明の要件を満足する実施例であり、特にスパッタ発生量が少なく良好な溶接作業性を得ることができると共に、溶接金属の靭性も向上することができた。
【0075】
No.21〜No.40は参考例である。
【0076】
No.21は、Li−Fe系複合酸化物の含有量が少なく、さらなる効果を得ることができなかったが、No.22〜No.24では、適当量のLi−Fe系複合酸化物が含有されているので、ビード外観も向上することができた。しかし、No.25では、その含有量が多く、スパッタ発生量が増加し、溶接作業性がやや悪かった。
【0077】
No.26は、金属フッ化物の含有量が少なく、さらなる効果を得ることができなかったが、No.27〜No.29では、スラグ剥離性を向上することができた。しかし、No.30では、過剰に含有されているので、スパッタ発生量がやや増加した。
【0078】
No.31は、金属酸化物(CaFe24)の含有量が少ないので、その効果を得ることができなかったが、No. 32〜No.34では、ビード外観が良好で、溶接作業性を向上させることができた。しかし、No.36では、その含有量が多く、スパッタがやや増加し、溶接作業性がやや悪くなった。
【0079】
No.36は、炭酸化合物(CaCO3)が少なく、その添加効果を得ることができなかったが、No.37〜No.39では、ビード外観が向上し、溶接作業性が良好であった。しかし、No.40では、スパッタ発生量がやや増加した。
【0080】
No.41〜No.44は比較例である。No.41とNo.42は、ワイヤ中にLi−Fe系複合酸化物が含有されているが、Mg−Fe系複合酸化物は含有されていない例である。よって、スパッタ発生量がやや多く、溶接作業性を向上させることができていない。また、溶接金属の靭性も向上させることができていない。No.43とNo.44は、Mg−Fe系複合酸化物を含有しない例である。よって、ワイヤ中には、Al、Mn、Ni,金属MgまたはMg合金、及び鉄粉は存在するが、Mg−Fe系複合酸化物が含有されていないので、溶接金属にAlが多く歩留まり、靭性を向上させることができなかった。
【0081】
【発明の効果】
上記構成を採用すると、特に溶接時におけるスパッタ発生量を低減することができるので、優れた溶接作業性を得ることができ、且つ、溶接金属の靭性を向上することができるセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することができた。また、従来より安価な物質を用いているので、製造コストを低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの断面形状の例を模式的に示す図である。

Claims (12)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填したセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対して、
    Alを1.5〜9%(「質量%」の意味。以下同じ)、
    Mg、Fe及びOを含むMg−Fe系複合酸化物を2.0〜15%、
    Mn及び/又はNiを合計で0.1〜5%、
    Mgを0.1〜4%(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)、
    含有するものであることを特徴とするセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 前記Alが2〜8%である請求項1に記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 前記Mg−Fe系複合酸化物が4〜13%である請求項1または2に記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. 前記Mn及び/又はNiが合計で0.5〜4%である請求項1〜3のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  5. 前記Mgが0.3〜3.1%(但し、Mg−Fe系複合酸化物中のMgを含まない)である請求項1〜4のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  6. Li−Fe系複合酸化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜10%含有する請求項1〜5のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  7. Mg−Fe系複合酸化物及びLi−Fe系複合酸化物以外の金属酸化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜1.0%含有する請求項1〜6のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  8. 前記金属酸化物がCa−Fe系複合酸化物である請求項7に記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  9. 前記Ca−Fe系複合酸化物がCaFe2O4である請求項8に記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  10. 金属フッ化物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜5.0%含有する請求項1〜9のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  11. 炭酸化合物を、ワイヤ全質量に対して0.01〜5%含有する請求項1〜10のいずれかに記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  12. 前記炭酸化合物がCaCO3である請求項11に記載のセルフシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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