JP3192920B2 - Cuめっきの密着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法 - Google Patents

Cuめっきの密着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法

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JP3192920B2 JP13314695A JP13314695A JP3192920B2 JP 3192920 B2 JP3192920 B2 JP 3192920B2 JP 13314695 A JP13314695 A JP 13314695A JP 13314695 A JP13314695 A JP 13314695A JP 3192920 B2 JP3192920 B2 JP 3192920B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生産性, めっきの密着
性および溶接性に優れたガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤの製造方法に関するものであり、なかでもとくにCuめ
っきの密着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少ない
ガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】送給性の向上とスパッタの低減を目的と
して鋼ワイヤ表層部に粒界酸化層を形成させ、その粒界
酸化物を起点として横割れを発生させ、その横割れをオ
イルポケットとしてワイヤの送給性を向上させるととも
に、粒界酸化により表層部に富化された酸素の作用によ
りアークの安定化を図ったワイヤに関する技術は、例え
ば特公昭63−21595 号公報を始め多数提案されている。
【0003】この種ワイヤの製造において、焼鈍時にお
ける粒界酸化促進のためには、事前に触媒としてアルカ
リ金属あるいはアルカリ土類金属の溶液を塗布するのが
有効であることが知られており、例えば特公平3−6423
9 号公報によればその炭酸塩の、また特公平4−52196
号公報によればその水酸化物の塗布が有効である。ま
た、アルカリ金属はアーク安定化に優れた効果がある
が、沸点が低いため溶鋼中への添加は困難なことから、
特開昭61−126995号公報,特開昭63−108996号公報,特
開昭63−149093号公報などに開示されているように、ア
ルカリ金属(例えばカリウム)をワイヤ表面あるいは表
面の横割れに付着させる方法が考えられている。
【0004】しかしながら、粒界酸化によってワイヤ表
層部に酸素を富化させ、低スパッタ化を図る方法では、
ある程度の効果は得られるが、十分ではない。一方表面
にアルカリ金属を塗布する方法ではアルカリ金属をワイ
ヤ表面に均一に付着させることはできても、ハンドリン
グなどの際にはげ落ちやすく、使用時まで安定に維持す
ることは困難である。
【0005】また、粒界酸化から生じる横溝にカリウム
を付着させる方法(特開昭63−108996号公報または特開
昭63−149093号公報参照)には、次のような問題があ
る。すなわち、伸線により亀裂に進展するのは、発生さ
せた粒界酸化のなかのごく一部である。もし全面的に粒
界に亀裂を発生するような深い粒界酸化を行えば、Cuめ
っきの密着性に問題が生じる。Cuめっきの密着性に問題
が生じない程度の横割れであれば、その横割れに存在す
るカリウム分の間隔は、近年のようにインバーター電源
の発達によりワンパルス・ワンドロップというような微
細な溶滴移行を行わせるには粗すぎる。またカリウムは
吸湿性が強く、水分が少しでも存在すると吸湿してワイ
ヤ表面のCuめっきが錆びて変色し、商品価値を低下させ
るだけでなく、ワイヤ送給性を害し、かえってアークの
不安定化を招くことになるという重大な問題がある。
【0006】この問題解決のため本発明者らは、本発明
に先立ち、中間伸線後のワイヤ素線の表面にシュウ酸カ
リウム等のアルカリ塩を塗布し、アルカリ塩中のアルカ
リ金属が焼鈍時に鋼中に拡散することを利用してアルカ
リ金属を安定的にワイヤ表面に付加することによって、
Cuめっきの亀裂やCuめっき表面の錆が発生することな
く、スパッタ発生量を抑えたガスシールドアーク溶接用
ワイヤおよびその製造方法を発明し、特開平6−218574
号公報に開示した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
6−218574号公報に開示されているシュウ酸,クエン
酸,燐酸等のアルカリ塩あるいはアルカリ金属のハロゲ
ン化合物は、高温において不安定のため、分解して鋼中
にアルカリ金属を拡散させる反面、焼鈍後のワイヤ表面
へ炭化物,ハロゲン化合物,燐酸化合物等の固着残留物
を生じ、これによってCuめっきの密着性を低下させる問
題があった。
【0008】すなわち、Cuめっきの前処理として、スケ
ール等のワイヤ表面の不純物を酸洗によって除去する
が、Cuめっきの密着性を確保するには、酸洗−めっき処
理を連続して行う必要があり、したがって短時間で酸洗
処理を完了する必要がある。それゆえ焼鈍後のワイヤに
は、酸洗処理によって容易に清浄化される特性が要求さ
れる。そのため、ワイヤ焼鈍においては、通常、N2
囲気とし、酸化並びにスケール成長を抑える方法が用い
られている。ところが、焼鈍前にワイヤ表面に塗布され
たアルカリ金属のシュウ酸塩,クエン酸塩,ハロゲン化
合物,燐酸塩等が焼鈍後に残した、炭化物,ハロゲン化
合物,燐酸化合物等の固着残留物は、酸洗によって除去
されにくく、酸洗後でもなおワイヤ表面に残留し、Cuめ
っきの密着性を低下させるのである。
【0009】ところで、アルカリ金属あるいはアルカリ
土類金属の炭酸塩,水酸化物は、それぞれ特公平3−64
239 号公報、特公平4−52196 号公報に示されるように
粒界酸化を促進し、Cuめっき後の仕上げ伸線加工によっ
てCuめっきに亀裂を生じ、その亀裂中に潤滑油を含むこ
とで送給性を改善させるが、その一方でCuめっきの密着
性を低下させるという問題があった。また、アルカリ金
属あるいはアルカリ土類金属の炭酸塩,水酸化物は、高
温・酸化性雰囲気において安定であるために、焼鈍時の
熱拡散によるワイヤ表面へのアルカリ金属の付加が困難
であり、アーク安定性に優れたワイヤの製造に適さない
という問題があった。
【0010】これら従来技術の問題点に鑑み、本発明
は、焼鈍工程を利用してアルカリ金属を鋼中に拡散さ
せ、安定的にワイヤ表面に付加することによってスパッ
タ発生が少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造
方法において、スパッタの発生が少ないままで、前記問
題を解決してCuめっきの密着性をも改善した生産性に優
れたガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法を提供
することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために、鋭意研究を進めた結果、炭酸塩お
よび水酸化物には、酸化性雰囲気において安定でスケー
ル成長を促進するという特公平3−64239 号公報,特公
平4−52196 号公報に開示された性質の他に、前記した
炭化物,ハロゲン化合物,燐酸化合物等のワイヤ表面の
残留物をスケール中に取り込むという性質があること、
そしてさらに、いかに酸に対し溶解しにくいこの残留物
といえども、塩酸水溶液に対する溶解速度が速いスケー
ルに取り込まれてしまえば、スケールとともに容易に剥
離させ得ることを新たに知見した。この知見をもとに実
験を重ね、アルカリ金属のシュウ酸塩,クエン酸塩,ハ
ロゲン化合物,燐酸塩の水溶液に炭酸塩および水酸化物
をある限定された量だけ加えた水溶液を使用すれば、焼
鈍工程を利用して安定的にアルカリ金属をワイヤに付加
できるとともに酸洗後の清浄性が確保でき、しかしてCu
めっきの密着性に優れ、スパッタ発生の極めて少ないガ
スシールドアーク溶接用ワイヤを容易に得ることができ
ることをつきとめた。
【0012】すなわち請求項1記載の本発明は、熱間圧
延後の鋼素線を脱スケールした後、中間伸線、焼鈍、酸
洗、Cuめっき、仕上げ伸線を施すガスシールドアーク溶
接用ワイヤの製造において、アルカリ金属のシュウ酸
塩,クエン酸塩,ハロゲン化合物及び燐酸塩から選ばれ
た1種又は2種以上を第1の溶質としさらに該第1の溶
質に対する重量比で 0.2〜5のアルカリ金属炭酸塩およ
び/またはアルカリ金属水酸化物を第2の溶質とする水
溶液を中間伸線後に塗布し、その後引き続き酸化性雰囲
気中で焼鈍処理を加えることを特徴とするCuめっきの密
着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシー
ルドアーク溶接用ワイヤの製造方法である。
【0013】また請求項2記載の本発明は、中間伸線
後、焼鈍前のワイヤに塗布する水溶液が、石鹸を重量%
にて0.001 %〜1%の範囲で更に含むことを特徴とする
請求項1記載のCuめっきの密着性に優れかつスパッタ発
生量の極めて少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤの
製造方法である。そして請求項3記載の本発明は、酸化
性雰囲気中で加えられる焼鈍処理が、最高加熱温度を 6
80℃〜 900℃、雰囲気組成をN2 ,水蒸気および酸素と
し、該水蒸気の量を 500℃までの加熱途上で 0.2%〜10
%, 500℃以上において 0.2%〜2%とし、前記酸素の
量を0.2ppm〜500ppmとして、連続焼鈍処理により施され
ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のCu
めっきの密着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少な
いガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方法である。
【0014】なお、本発明により製造された溶接用ワイ
ヤに含まれるアルカリ金属は、ワイヤ全体の重量に対し
1ppm 以上であることが好ましい。なお、特に断らない
場合、本発明に記載の%及びppm は、重量%及び重量pp
mを意味し、また数値範囲の上限及び下限は本発明の範
囲に含まれる。
【0015】
【作用】請求項1〜請求項3に記載の本発明によってCu
めっきの密着性に優れかつスパッタ発生量の極めて少な
いガスシールドアーク溶接用ワイヤを得ることができる
理由を以下に述べる。 (請求項1について)焼鈍前にワイヤ表面に塗布される
水溶液中の第1の溶質の要素(アルカリ金属のシュウ酸
塩,クエン酸塩,ハロゲン化合物,燐酸塩をいう。な
お、第1の溶質にはこれら要素からなる集合の部分集合
も含まれる。)は、酸化性雰囲気において不安定であ
り、分解してアルカリ金属が鋼中に拡散し、ワイヤ表層
部に形成される酸化物層の1構成元素として存在する反
面、分解時に炭化物(C,TiC ,SiC など),ハロゲン
化合物(AlF3など),燐酸化合物(P2O5,Ca3(PO4)2
ど)等の残留物を生成し、これらは、Cuめっきの前処理
としての酸洗に使用される塩酸に対し溶解しにくく、ワ
イヤ表面に残留しCuめっきの密着性を低下させる。これ
に対し、前記第1の溶質に対する重量比が 0.2〜5のア
ルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物
を、第2の溶質として前記水溶液に共存させることによ
って、スケールの成長を促進し、ワイヤ表面の前記残留
物をスケール中に取り込み、酸に対し溶解しにくい残留
物もスケールとともに容易に剥離させ、酸洗後の清浄性
を高め、Cuめっきの密着性を高めることができる。
【0016】前記第1の溶質に対する前記第2の溶質の
重量比が 0.2未満では、スケールの成長を促進する効果
並びに前記の分解・生成した炭化物,ハロゲン化合物,
燐酸化合物等の残留物を酸洗によってスケールとともに
容易に剥離させる効果がなく、他方5超えでは、スケー
ルの成長速度がアルカリ金属の鋼中への熱拡散速度を上
回る結果、アルカリ金属を安定して鋼中に保持させるこ
とができないほか、仕上げ伸線によって粒界酸化による
と思われるCuめっき表面の横割れを生じ、Cuめっきの密
着性を低下させる。
【0017】なお前記第1の溶質としての、アルカリ金
属のシュウ酸塩,クエン酸塩,ハロゲン化合物,燐酸塩
にはシュウ化カリウム,クエン酸3カリウム,フッ化リ
チウム,ヨウ化カリウム,リン酸水素カリウム,塩化ナ
トリウムが好適であり、また前記第2の溶質としての、
アルカリ金属炭酸塩,アルカリ金属水酸化物には炭酸カ
リウム,炭酸ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化ナト
リウムが好適である。
【0018】(請求項2について)さらに、前記水溶液
に対し 0.001%〜1%の範囲で石鹸をこの水溶液に更に
加えることによって、その表面張力を下げ、ワイヤ表面
における付着量を均一化することで、Cuめっきの密着性
により優れかつスパッタ発生の極めて少ないガスシール
ドアーク溶接用ワイヤを得ることができる。前記石鹸の
前記水溶液中濃度が0.001%未満では、液の低表面張力
化が十分ではなく、ワイヤ表面を濡らすことができず、
ワイヤ表面における付着量を均一化させる効果が認めら
れない反面、1%超えでは、撹拌によって液が泡だち逆
に塗布量が不均一となってしまい、Cuめっきの密着性に
より優れかつスパッタ発生の極めて少ないガスシールド
アーク溶接用ワイヤを得ることができない。
【0019】なお、前記石鹸としてはカリ石鹸,ナトリ
ウム石鹸が好適である。 (請求項3について)焼鈍処理がバッチ焼鈍の場合に
は、均熱時間が長くとれる(3〜5時間)から、雰囲気
に左右されずに本発明請求項1及び請求項2によるCuめ
っきの密着性に優れかつスパッタ発生の極めて少ないガ
スシールドアーク溶接用ワイヤを得ることができる。し
かし、連続焼鈍設備では処理時間に制限があるため、最
高加熱温度を 680℃〜 900℃、雰囲気組成をN2 ,水蒸
気および酸素とし、該水蒸気の量を 500℃までの加熱途
上で 0.2%〜10%, 500℃以上において 0.2%〜2%と
し、前記酸素の量を0.2ppm〜500ppmとする必要がある。
【0020】すなわち、最高加熱温度が 680℃未満で
は、アルカリ金属の拡散が十分ではなくスパッタ発生の
少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤを得ることがで
きず、900℃超えでは、スパッタ発生の少ないガスシー
ルドアーク溶接用ワイヤを得ることはできるが、炉の損
傷や熱効率を考えると効率的ではない。なお、最適な均
熱温度は 780〜850 ℃である。
【0021】炉内の雰囲気としては、非酸化性ガスであ
ってコスト的に最も有利なN2 と酸化性付与ガスとして
の水蒸気及び酸素との混合雰囲気を採用するのが最も好
ましい。このとき、 500℃までの加熱域における水蒸気
量が 0.2%未満では、十分にスケールが生成しないた
め、Cuめっきの密着性が不十分となり、他方、10%を超
えてしまうとスケールの成長速度がアルカリ金属の鋼中
への熱拡散速度を上回る結果、アルカリ金属を安定して
鋼中に保持させることができない。
【0022】500℃以上の均熱域における水蒸気量 0.2
%〜2%並びに炉内の酸素量0.2ppm〜500ppmの限定理由
は、前記の 500℃までの加熱域における水蒸気量の限定
理由と同じである。(その他の好適条件について)な
お、溶接ワイヤ中に含まれるアルカリ金属は1ppm 以上
が好ましく、1ppm未満ではアークを安定させる効果が
なく、スパッタの発生量を減らすことができない。
【0023】
【実施例】
(実施例1)Ca系潤滑材を用い冷間伸線加工により2.25
mmφとした表1の組成の鋼線を素材として用いてワイヤ
を作製した。これらの鋼線を表2に示した塗布剤液中に
浸漬し、乾燥した後、バッチ炉で焼鈍した。この際、酸
化を起こさせるために、露点を−10〜+20℃に調整した
2 ガスを毎分20〜200 リットル送給した。
【0024】焼鈍後、55℃の10%塩酸水中に15秒間浸漬
し、引き続き厚さ 0.5〜2μm のCuめっきを連続的に施
し、仕上げ伸線加工によって 1.2mmφとした。Cuめっき
の密着性は、直径 2.4mmφの高張力鋼に巻きつけてキン
クさせ、その外観を40倍で観察し、以下に示す基準によ
り10段階評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】Cuめっきに割れ、剥離のまったく無いもの
を10とし,割れ、剥離が認められその面積率が1%未満
のものを9,割れ、剥離の面積率が1%以上、2%未満
のものを8,割れ、剥離の面積率が2%以上、4%未満
のものを7,割れ、剥離の面積率が4%以上、6%未満
のものを6,割れ、剥離の面積率が6%以上、8%未満
のものを5,割れ、剥離の面積率が8%以上、15%未満
のものを4,割れ、剥離の面積率が15%以上、30%未満
のものを3,割れ、剥離の面積率が30%以上、50%未満
のものを2,割れ、剥離の面積率が50%以上、80%未満
のものを1,割れ、剥離の面積率が80%以上のものを0
とし、10段階評価8以上をCuめっきの密着性評価良
(◎),5以上7未満をCuめっきの密着性評価可
(○),4以下をCuめっきの密着性評価否(×)とし
た。
【0028】ワイヤ中のアルカリ金属の含有量は1m毎
に3点サンプリングし、それぞれ原子吸光分析法により
分析し、その平均値を用いた。スパッタ発生量は、CO2
ガスをシールドガスとして20リットル/分流し、CO2
ルス電源を用い、電流: 350A,電圧:34V,溶接速
度:45cm/分に調整して溶接を行い、半径1mに飛散し
たスパッタを回収して測定した。
【0029】スパッタ発生量の目標値は0.35g/分以下
とし、0.25g/分以下を良(◎),0.25g/分超え0.35
g/分以下を可(○),0.35g/分超えを否(×)とし
た。表2にその結果を併せて示す。表2からわかるよう
に、アルカリ金属のシュウ酸塩,クエン酸塩,ハロゲン
化合物及び燐酸塩から選ばれた1種又は2種以上の水溶
液に、該水溶液が含む前記アルカリ金属の塩又は化合物
の合計に対する重量比で 0.2〜5のアルカリ金属炭酸塩
および/またはアルカリ金属水酸化物を加えた液を中間
伸線後に塗布することによって、Cuめっきの密着性に優
れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシールドアー
ク溶接用ワイヤを得ることができた。また、このアルカ
リ水溶液に更に石鹸を 0.001%以上,1%以下加えた溶
液を中間伸線後、焼鈍前に塗布した本発明例2,3,
5,7,10,11,13,16では、更にCuめっきの密着性が
向上しスパッタ発生量が低減した。
【0030】一方、比較例19に示されるように、アルカ
リ金属塩水溶液に炭酸塩,水酸化物のいずれも添加しな
かった場合は、Cuめっきの密着性が悪かった。また、比
較例20,21に示されるように、アルカリ金属塩水溶液に
炭酸塩,水酸化物のいずれもアルカリ金属塩に対し5を
超えて添加した場合は、アルカリ金属量が1ppm 未満と
なり、スパッタ発生量が多くなるとともに、Cuめっき亀
裂によりCuめっきの密着性が劣化した。
【0031】(実施例2)実施例1と同じ鋼線を素材と
して用い、この表面に10%のクエン酸カリウムと10%の
炭酸カリウムを加えた水溶液を中間伸線後、焼鈍前に塗
布し、表3に示した連続焼鈍条件で焼鈍した。 500℃以
上への加熱時間は5分に調節した。なお、本発明例26、
27は10%のクエン酸カリウムと10%の炭酸カリウムを加
えた水溶液に更にカリウム石鹸を 0.1%加えた液を用い
た。
【0032】焼鈍後、45℃の12%塩酸水中に40秒間浸漬
し、引き続き厚さ 0.5〜2μm のCuめっきを連続的に施
し、仕上げ伸線加工によって 1.2mmφとした。Cuめっき
の密着性は実施例1と同様に評価した。アルカリ金属の
含有量についても実施例1と同様に評価した。スパッタ
発生量は、Ar−20%CO2 ガスをシールドガスとして20リ
ットル/分流し、MAG パルス電源を用い、電流: 250
A,電圧:28V,溶接速度:70cm/分に調整し、半径1
mに飛散したスパッタを回収して測定し、実施例1と同
様の評価基準で評価した。
【0033】表3にその結果を併せて示す。
【0034】
【表3】
【0035】連続焼鈍条件を最高加熱温度を 680℃〜 9
00℃とし、炉内雰囲気をN2 雰囲気とし、 500℃までの
加熱における水蒸気量を 0.2〜10%、 500℃以上におけ
る水蒸気量を 0.2〜2%とするとともに、炉内の酸素量
を 0.2〜500ppmとすることによって、Cuめっきの密着性
に優れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシールド
アーク溶接用ワイヤを得ることができた。
【0036】一方、比較例32に示されるように 500℃ま
での加熱における水蒸気量が 0.2%未満の場合、比較例
33に示されるように 500℃以上における水蒸気量が 0.2
%未満の場合、比較例34に示されるように炉内の酸素量
が0.2ppm未満の場合は、いずれもCuめっきの密着性が悪
かった。比較例35に示されるように最高加熱温度を 680
℃以下とすると、ワイヤ中のアルカリ金属量が1ppm 以
下となりスパッタ発生量が多かった。
【0037】比較例36に示されるように 500℃までの加
熱における水蒸気量が10%超えの場合、比較例37に示さ
れるように 500℃以上における水蒸気量が2%超えの場
合、比較例38に示されるように炉内の酸素量が500ppm超
えの場合は、それぞれワイヤ中のアルカリ金属量が1pp
m 以下となりスパッタ発生量が多かった。
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、熱間圧
延後の鋼素線を脱スケール後、中間伸線、焼鈍、酸洗、
Cuめっき、仕上げ伸線を施すガスシールドアーク溶接用
ワイヤの製造において、特定のアルカリ金属塩および/
またはアルカリハライドにアルカリ金属炭酸塩および/
または水酸化物を特定量加えた水溶液を中間伸線後ワイ
ヤに塗布した後、酸化性雰囲気中で焼鈍処理を加え(ア
ルカリ金属をワイヤ全体に対して1ppm 以上含有させ)
ることにより、Cuめっきの密着性及び溶接性(低スパッ
タ性)に優れたガスシールドアーク溶接用ワイヤを得る
ことができ、さらにこの水溶液に、石鹸を重量%で 0.0
01%〜1%加えて付着量を均一化させることにより、前
記特性がより改善されたガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤを得ることができ、また、本発明の焼鈍処理条件を採
用して連続焼鈍を施すことにより、前記すぐれた特性を
有するガスシールドアーク溶接用ワイヤを従来とは格段
の高効率で製造できるという、種々の極めて有益な効果
を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 功一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究所内 (72)発明者 片岡 義弘 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究所内 (56)参考文献 特開 平1−321091(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/40 B23K 35/02 B23K 35/36

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱間圧延後の鋼素線を脱スケールした
    後、中間伸線、焼鈍、酸洗、Cuめっき、仕上げ伸線を施
    すガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造において、ア
    ルカリ金属のシュウ酸塩,クエン酸塩,ハロゲン化合物
    及び燐酸塩から選ばれた1種又は2種以上を第1の溶質
    としさらに該第1の溶質に対する重量比が 0.2〜5のア
    ルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属水酸化物
    を第2の溶質とする水溶液を中間伸線後に塗布し、その
    後引き続き酸化性雰囲気中で焼鈍処理を加えることを特
    徴とするCuめっきの密着性に優れかつスパッタ発生量の
    極めて少ないガスシールドアーク溶接用ワイヤの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 中間伸線後、焼鈍前のワイヤに塗布する
    水溶液が、石鹸を重量%にて0.001 %〜1%の範囲で更
    に含むことを特徴とする請求項1記載のCuめっきの密着
    性に優れかつスパッタ発生量の極めて少ないガスシール
    ドアーク溶接用ワイヤの製造方法。
  3. 【請求項3】 酸化性雰囲気中で加えられる焼鈍処理
    が、最高加熱温度を 680℃〜 900℃、雰囲気組成を
    2 ,水蒸気および酸素とし、該水蒸気の量を 500℃ま
    での加熱途上で 0.2%〜10%, 500℃以上において 0.2
    %〜2%とし、前記酸素の量を0.2ppm〜500ppmとして、
    連続焼鈍処理により施されることを特徴とする請求項1
    または請求項2に記載のCuめっきの密着性に優れかつス
    パッタ発生量の極めて少ないガスシールドアーク溶接用
    ワイヤの製造方法。
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