JP2001353592A - 炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ - Google Patents
炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤInfo
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Abstract
スパッタの発生が少ない正極性炭酸ガスシールドアーク
溶接用鋼ワイヤを提供する。 【解決手段】 C:0.20%以下、Si:0.8 〜2.5 %好ま
しくは1.1 〜2.5 %、Mn:0.45〜3.5 %を含み、かつCa
を0.0020%以下に制限し、あるいはさらに、P:0.025
〜0.050 %、S:0.015 〜0.050 %、K:0.0001〜0.01
50%のうちから選ばれた1種または2種以上、を含む組
成とする。あるいはさらにTiを0.30%以下含有してもよ
い。また、ワイヤ表面に、0.5 μm 以上のCuめっきを施
すのが好ましい。
Description
ーク溶接用鋼ワイヤに係り、とくにワイヤを正極(マイ
ナス側)とし、シールドガスをCO2 とする正極性炭酸ガ
スシールドアーク溶接に好適な溶接用鋼ワイヤに関す
る。
ゴンと炭酸ガス、酸素との混合ガスなどの酸化性(活
性)ガスを用いるMAG溶接法は、もっとも普及した溶
接法である。なかでも、炭酸ガスのみを用いる炭酸ガス
シールドアーク溶接法は、安価なガスを用いることから
鉄鋼材料の溶接に広く利用されている。とくに、自動溶
接の急速な普及により、造船、建築、橋梁、自動車、建
設機械等の各分野で広く使用されるようになっている。
造船、建築、橋梁を中心とする分野では厚板の高電流多
層溶接に、一方、自動車、建設機械を中心とする分野で
は薄板の隅肉溶接に、適用されることが多い。
軽量化を目的として、高強度薄鋼板の使用が増加してい
る。被溶接材である鋼板の薄肉化は、被溶接材の厚みに
対するギャップ率の増加を意味し、そのため、溶落ちに
よる欠陥率の増加を招くという問題がある。このような
ことから、被溶接材への熱影響が小さく、耐ギャップ溶
接性に優れた新しい薄鋼板の溶接方法が要望されてい
る。
を含むMAG溶接法では、消耗電極であるワイヤをプラ
ス側(逆極)とする逆極性の直流溶接法が、低電流域か
ら高電流域までアークが安定しており、広く実用化され
ている。逆極性の溶接法では、マイナス側である鋼板側
への熱影響が大きく、鋼板の溶け込みが深いという特徴
があり、厚板の多層溶接に好適である。しかし、薄板の
隅肉溶接に逆極性の溶接法を適用すると、鋼板の溶け込
みが深く熱影響が大きく、溶落ちによる溶接欠陥が発生
しやすいという問題がある。薄板の隅肉溶接では、溶落
ちによる溶接欠陥の防止、効率化(溶接速度の向上)が
とくに重要視されており、逆極性溶接法の薄板隅肉溶接
への適用は問題が残されていた。
ス側とする正極性の直流溶接法では、被溶接材(鋼板
側)の熱影響が少なく溶込みが浅くなり、ワイヤの溶融
速度が速く溶着量が多いという特徴があり、薄板の溶
接、とくに、ギャップを生じた場合の溶接に好適である
と考えられる。しかし、正極性の溶接法では、ワイヤ先
端に懸垂する溶滴が粗大で、アークが不安定となりやす
いという問題がある。さらに、高速溶接においては、溶
接ビードがハンピングしやすい、ビード形状が不揃い等
の問題もあり、正極性の直流溶接法は実際に利用される
ことはなかった。
れた分野で幾つか提案されている。例えば、特開昭58−
84682 号公報には、正極性溶接法を利用した固定管の高
速円周溶接法が提案されている。この溶接法は、固定管
をAr-CO2混合ガスシールド下で円周溶接する際に、初層
から、希土類元素を添加した活性化ワイヤを正極性に使
って下進振分け溶接し、仕上げ層を逆極性で上進振分け
溶接する、溶接方法である。この溶接方法では、希土類
元素を添加した活性化ワイヤを用いることによって、溶
滴が微細化しアークが安定するが、しかし、ワイヤの溶
融速度が小さく、また溶込みも深いといった問題があっ
た。
−138355号公報には、正極性溶接と逆極性溶接では、溶
込み深さと溶融速度が大きく異なることから、正極性溶
接と逆極性溶接の時間割合を制御して溶接する、消耗電
極式ガスシールドアーク溶接方法が提案されている。し
かしながら、これらの溶接方法では、アークの安定性が
まだ不十分であり、またワイヤ組成の検討がなされてい
ない。
性溶接法は、溶込みが浅く、溶着量が多く、薄鋼板溶
接、とくにギャップの大きい継手の溶接に適していると
考えられているが、従来の溶接用鋼ワイヤでは、ワイヤ
先端に粗大な溶滴が不安定に懸垂するため、アークが不
安定となり、スパッタの発生量が多いという問題があっ
た。
決し、正極性溶接に好適で、薄板溶接における溶落ち欠
陥を防止でき、さらにギャップの大きい継手においても
健全な溶接が可能な耐ギャップ溶接性に優れ、さらに、
アークの安定性に優れ、スパッタの発生が少ない炭酸ガ
スシールドアーク溶接用鋼ワイヤを提供することを目的
とする。
接におけるアークの安定性、耐ギャップ溶接性およびビ
ード形状に対するワイヤ組成の影響について鋭意検討し
た。その結果、 Si、Mn含有量、とくにSi含有量を増加することによ
り、正極性溶接において安定した短絡移行が可能とな
り、ワイヤの溶融量が増加し耐ギャップ溶接性が向上す
ること、 正極性溶接においてはCaを0.0020mass%以下と低減す
ることがアークの安定性のうえで重要となること、 正極性溶接においてはP、S、Kがアークの安定性向
上に大きく寄与することを知見した。
されたものである。すなわち、この発明は、正極性炭酸
ガスシールドアーク溶接で用いられる溶接用鋼ワイヤで
あって、mass%で、C:0.20%以下、Si:0.8 〜2.5 %
好ましくは1.1 〜2.5 %、Mn:0.45〜3.5 %を含み、か
つCa:0.0020%以下に制限し、残部が実質的にFeである
組成を有することを特徴とする正極性炭酸ガスシールド
アーク溶接用鋼ワイヤであり、また、この発明では、前
記組成に加えてさらに、mass%で、P:0.025 〜0.050
%、S:0.015 〜0.050 %、K:0.0001〜0.0150%のう
ちから選ばれた1種または2種以上を含有することが好
ましい。また、この発明では、前記各組成に加えてさら
に、mass%で、Ti:0.30%以下、好ましくは0.080 %以
下、を含有することが好ましく、また、この発明では、
前記各組成に加えてさらに、mass%で、Cr:3.0 %以
下、Ni:3.0 %以下、Mo:1.5 %以下、Cu:3.0 %以
下、B:0.005 %以下のうちから選ばれた1種または2
種以上を含有してもよい。また、この発明では、前記各
組成に加えてさらに、mass%で、Al:0.50%以下、およ
び/または、Zr、Nb、Vのうちから選ばれた1種または
2種以上を合計で0.55%以下含有してもよい。
が、表層に、平均厚さ:0.5 μm 以上のCuめっきを有す
ることが好ましい。また、この正極性炭酸ガスアーク溶
接用鋼ワイヤは、mass%で、C:0.20%以下、Si:0.8
〜2.5 %好ましくは1.1 〜2.5 %、Mn:0.45〜3.5 %を
含み、かつCaを0.0020%以下に制限し、好ましくは残部
が実質的にFeである組成を有する鋼素材を熱間加工、あ
るいはさらに冷間加工(伸線)により所定の線径の鋼素
線としたのち、該鋼素線に、カリウム塩溶液を塗布し、
焼鈍、酸洗を施し、必要に応じてCuめっきをした後、冷
間で伸線加工して所定の寸法の鋼ワイヤとする製造方法
で製造されるのが好ましい。また、この発明の溶接用鋼
ワイヤの製造方法では、前記Cuめっきを0.5 μm 以上の
厚さとするのが好ましい。また、この発明の溶接用鋼ワ
イヤの製造方法では、前記組成に加えてさらに、mass%
で、P:0.025〜0.050 %、S:0.015 〜0.050 %、
K:0.0001〜0.0150%のうちから選ばれた1種または2
種以上を含有することが好ましく、また、この発明の溶
接用鋼ワイヤの製造方法では、前記各組成に加えてさら
に、mass%で、Ti:0.30%以下、好ましくはTi:0.080
%以下を含有することが好ましく、また、この発明の溶
接用鋼ワイヤの製造方法では、前記各組成に加えてさら
に、mass%で、Cr:3.0 %以下、Ni:3.0 %以下、Mo:
1.5 %以下、Cu:3.0 %以下、B:0.005 %以下のうち
から選ばれた1種または2種以上を含有することが好ま
しい。また、この発明の溶接用鋼ワイヤの製造方法で
は、前記各組成に加えてさらに、mass%で、Al:0.50%
以下、および/または、Zr、Nb、Vのうちから選ばれた
1種または2種以上を合計で0.55%以下含有することが
好ましい。
鋼ワイヤ組成の限定理由について説明する。なお、以
下、mass%は単に%として記すものとする。 C:0.20%以下 Cは、溶接金属の強度を確保するために重要な元素であ
るが、溶鋼の粘性を低下させ流動性を向上させる作用を
有し、多量に含有すると溶滴および溶融プールの挙動が
不安定となり、スパッタを多発する。このため、Cは0.
20%以下に限定した。なお、好ましくは0.01〜0.10%で
ある。
欠な元素である。さらに、正極性溶接時にはアークの広
がりを抑え、短絡移行回数を増大させる作用を有する。
また、薄鋼板溶接でギャップの大きい継手溶接において
は、アーク熱による溶落ちを抑制する働きもあり、耐ギ
ャップ溶接性を向上させる。このような効果は、0.80%
以上の含有で認められる。より一層の耐ギャップ溶接性
の改善のためには、1.10%以上含有するのが好ましい。
一方、2.5 %を超えて含有すると、溶接金属の靱性が低
下する。このため、Siは0.80〜2.5 %、好ましくは1.1
〜2.5 %に限定した。
ためには不可欠な元素である。0.45%未満では溶融金属
の脱酸が不足し、溶接金属にブロー欠陥が発生する。一
方、3.5 %を超えて含有すると、溶接金属の靱性が低下
する。このため、Mnは0.45〜3.5 %に限定した。なお、
好ましくは1.0 〜2.5 %である。
線加工時の不純物としてワイヤに混入されるが、正極性
溶接においては、アーク不安定を招きスパッタを増大さ
せるため、できるだけ低減するのが好ましい。0.0020%
を超えて含有すると溶滴へのアーク集中によりアーク不
安定を招きスパッタを増大させる。よって、Caは0.0020
%以下に制限した。
0 %、K:0.0001〜0.0150%のうちから選ばれた1種ま
たは2種以上 P、S、Kはいずれも、正極性炭酸ガスアーク溶接でア
ークを安定化する作用を有し、必要に応じ選択して含有
できる。Pは、鋼の融点を低下させるとともに電気抵抗
率を向上させ、溶融効率を向上させ、正極性炭酸ガスア
ーク溶接においてアークを安定化する作用を有する元素
である。このような効果は0.025 %以上の含有で認めら
れる。一方、0.050 %を超えて添加すると、正極性の溶
接においては、溶融金属の粘性を低下させ、アークが不
安定となり、小粒のスパッタが増加する。このため、P
は0.025 〜0.050mass%の範囲とするのが好ましい。な
お、より好ましくは、0.025 〜0.035 %である。
先端に懸垂した溶滴の離脱を助け、正極性炭酸ガスアー
ク溶接においてアークを安定化する。また、Sは、溶融
金属の粘性を低下させて、ビードを平滑にし、上板の溶
落ちを抑制する働きも有する。このような効果は、0.01
5 %以上で認められるが、一方、0.050 %を超えて含有
すると、小粒のスパッタが増すとともに、溶接金属の靭
性が低下する。このため、Sは0.015 〜0.050 %とする
のが好ましい。なお、より好ましくは0.020 〜0.030 %
である。
し)、正極性炭酸ガスアーク溶接におい溶滴の移行をス
ムーズにし、溶滴そのものを微細化する効果を有してい
る。この効果は0.0001%以上の含有で認められる。一
方、0.0150%以上の含有は、アーク長が長くなり、ワイ
ヤ先端に懸垂した溶滴が不安定となり、スパッタの発生
を増す。このため、Kは0.0001〜0.0150%とするのが好
ましい。なお、より好ましくは0.0003〜0.0030%であ
る。
での歩留りが著しく低いため、Kは溶製段階で添加する
よりワイヤ製造中に、ワイヤ表面にカリウム塩溶液を塗
布して焼鈍を行うことにより、ワイヤ内部にKを安定し
て含有させるのが好ましい。 Ti:0.30%以下 Tiは、脱酸剤として作用し、さらに溶接金属を強度増加
する元素であり、本発明では必要に応じ含有できる。こ
のような効果は0.030 %以上の含有で顕著となるが、0.
30%を超えて含有すると、溶滴が粗大となり大粒のスパ
ッタを発生させる。このため、Tiは0.30%以下とするの
が好ましい。より好ましくは0.080 %以下、さらに好ま
しくは0.050 %以下である。
5 %以下、Cu:3.0 %以下、B:0.005 %以下のうちか
ら選ばれた1種または2種以上 Cr、Ni、Mo、Cu、Bは、いずれも溶接金属の強度を増加
させ、また耐候性を向上させる元素であり、必要に応じ
選択して含有できる。しかし、過剰な含有は靭性の低下
を招く。このため、含有する場合は、Crは3.0 %以下、
Niは3.0 %以下、Moは1.50%以下、Cuは3.0 %以下、B
は0.005 %以下とすることが好ましい。なお、好ましく
は、Cr:0.15〜0.70%、Ni:0.40〜0.80%、Mo:0.20〜
0.50%、Cu:0.15〜0.30%、B:0.001 〜0.003 %であ
る。
2種以上を合計で0.55%以下 Zr、Nb、Vは、いずれも溶接金属の強度、靱性、および
アークの安定性を向上させる元素であり、必要に応じ選
択して1種または2種以上を含有できる。しかし、これ
ら元素が合計で0.55%を超えると、靭性の低下を招く。
このため、Zr、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2
種以上を合計で0.55%以下とするのが好ましい。
共に横向き溶接においてアークの安定性を向上させる元
素であり、必要に応じて含有することができる。しか
し、合計で0.50%を超えると、靭性の低下を招く。この
ため、Alは0.50%以下とするのが好ましい。なお、より
好ましくは0.01〜0.30%である。
び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、
P:0.025 %未満、O:0.020 %以下、N:0.010 %以
下が許容できる。なお、Oは、溶製中、あるいはワイヤ
製造中に不可避的に含有される元素であるが、溶滴の移
行形態を微細化するのに効果があり、0.0020%以上、0.
0080%以下、より好ましくは0.0080%未満に調整するの
が好ましい。
方法について説明する。上記の組成の溶鋼を、転炉、電
気炉等の通常公知の溶製方法により溶製し、好ましくは
連続鋳造法により、ビレット等の鋼素材(ビレット)と
する。これら鋼素材を、加熱し、ついで熱間圧延あるい
はさらに乾式による冷間圧延(伸線)を施し鋼素線とす
る。熱間圧延は、所望の寸法形状の鋼素線となる条件で
あればよく、とくに限定されない。
じて焼鈍−酸洗−銅めっきされた後、冷間で伸線加工を
施されて所定の線径の製品(溶接用鋼ワイヤ)とされ
る。この発明の溶接用鋼ワイヤでは、焼鈍前のワイヤ表
面にカリウム塩溶液を塗布したのち、焼鈍を行うのが好
ましい。カリウム塩溶液としては、クエン酸3カリウム
水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等
が挙げられる。塗布溶液のカリウム塩濃度は、K換算
で、0.5 〜10.0%(mass%)とするのが好ましい。より
好ましくは0.5 〜3.0 %である。
を焼鈍することにより、焼鈍中に生成される内部酸化層
中にKが安定に保持させる。表面塗布、Cuめっき中に保
持させる等の方法では、めっきの変色等による問題が発
生しやすく、また、熱的に不安定であることから、Kに
よる低スパッタ化の効果が小さくなる。焼鈍は、ワイヤ
の軟化とKを付与するために行うものであり、温度:65
0 〜950 ℃の範囲内で、水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中
で行うのが好ましい。焼鈍温度が650 ℃未満では、内部
酸化反応の進行が遅く、また950 ℃を超えると、酸化反
応の進行が速すぎて、内部酸化量の調整が困難となる。
なお、より好ましくは650 〜850 ℃である。
pm以下とするのが内部酸化層形成の観点から望ましい。
このような雰囲気中で、表面にカリウム塩含有溶液を塗
布された鋼素線を焼鈍することにより、鋼表面から酸化
が進行し、図1に示すように表層部が内部酸化される。
この内部酸化部にカリウムが、確実に保持される。焼鈍
温度、時間の焼鈍条件は、鋼ワイヤ中のK含有量が好ま
しくは、0.0003〜0.0030mass%、O含有量が0.0020〜0.
0080mass%となるように、線径、およびカリウム塩濃
度、カリウム塩含有溶液の塗布量等の塗布条件と関連し
て決定されるのが望ましい。
鋼ワイヤ表面にCuめっきが施される。鋼ワイヤ表面のCu
めっき厚は0.5 μm 以上の厚さとするのが好ましい。正
極性溶接においては、逆極性の溶接に比べて、給電不
良、給電時の焼付きが発生し易い。しかし、Cuめっき厚
を0.5 μm 以上とすることにより、給電不良、給電時の
焼付きを防止でき、給電チップの損耗を低減できるとい
う効果もある。なお、Cuめっき厚は、より好ましくは0.
80μm 以上である。しかし、鋼ワイヤ中のCu量を含め
て、Cu量が3.0 %を超えると、溶接金属の靭性低下が著
しくなる。このため、Cuめっき厚は、0.80μm 以上、好
ましくはワイヤ中のCu量を含み全体で3.0 %以下となる
ように、Cuめっき厚を調整するのが好ましい。
た不純物を、給電安定化のため、0.01g/ワイヤ10kg以下
に管理するのが好ましい。また、ワイヤの送給性を確保
するため表面に塗布される潤滑油は、0.35〜1.7g/ ワイ
ヤ10kgとするのが好ましい。より好ましくは0.35〜1.4g
/ ワイヤ10kgである。ワイヤの送給性は、ロボット溶接
用として重要である。
を、熱間圧延し、5.5 〜7.0mm φの線材とし、ついで冷
間加工(伸線)により、2.0 〜2.8mm φの鋼素線とし
た。これら鋼素線に、2〜30質量%のクエン酸3カリウ
ム水溶液を塗布した。塗布量は30〜50g/素線kgとした。
ついで、これら鋼素線を露点−2℃以下、酸素200ppm以
下、2酸化炭素0.1 %以下のN2 雰囲気中で焼鈍した。
焼鈍温度は750 〜950 ℃の範囲とした。この際、線径、
カリウム塩濃度、加熱温度と保持時間の調整により、ワ
イヤの内部酸化によるO量とK量を調整した。焼鈍後、
鋼素線に酸洗を施し、ついで、鋼素線表面にCuめっきを
施すか、あるいは施さないで、これら鋼素線に、冷間で
伸線加工を施し、1.2mm φの鋼ワイヤとした。なお、鋼
ワイヤ表面に、ワイヤ10kg当たり0.4 〜1.7gの潤滑油を
塗布した。
を表1に示す。
験を行い、スパッタ発生量、ビード形状、給電チップの
損耗度を評価した。 (1)スパッタ発生量 板厚1.6mm の薄鋼板上にビードオン溶接を行い、Cu製捕
集治具を用いて、スパッタを捕集し、スパッタ発生量を
測定した。溶接時間は1min とした。なお、スパッタ発
生量の目標値は2.0g/min以下とし、スパッタ発生量が1.
0g/min以下を優(◎)、1.0g/min超え1.5g/min以下を良
(○)、1.5g/min超え2.0g/min以下を可(△)、2.0g/m
in超えを不可(×)として、評価した。 (2)ビード形状 板厚1.6mm の薄鋼板を用い、図2に示す要領でギャップ
0.8mm のギャップ重ね隅肉溶接を行い、溶接後、溶接ビ
ードを目視で観察し、溶け落ち、アンダーカットおよび
ハンピングビードが生じた場合を不可(×)、それ以外
を○としてビード形状を評価した。 (3)給電チップの損耗度 直径800mm φの鋼管(肉厚:25mm)を自転させながら、
鋼管外周に連続溶接(30min 間)した。この連続溶接後
に、チップ先端内径を測定し、最大値、最小値を求めチ
ップ内径の楕円化率を算出し、給電チップの損耗度を評
価した。
た。 楕円化率=(チップ先端内径の最大値)/(チップ先端
内径最小値)−1 なお、楕円化率の目標値を5%以下とし、楕円化率が2
%以下を良(○)、2%超え5%以下を可(△)、5%
超えを不可(×)として、給電チップの損耗度を評価し
た。
とおりとした。 シールドガス:CO2 100 %、流量:20l/min 溶接電源 :インバータ電源 極性 :正極性 溶接電流 :250 A 溶接電圧 :27V 溶接速度 :100cm/min これらの試験結果を表2に示す。
0g/min 以下と少なく、スパッタ低減効果が顕著となっ
ている。とくに、P含有量を0.025 %以上0.050 %以
下、S含有量を0.015 %以上0.050 %以下、K含有量を
0.0001%以上0.0150%以下のうち1つ以上を満足するこ
とによって更なる低スパッタ化が達成されている。ま
た、Si含有量を1.1 %以上、また、Ti含有量を0.080 %
以下とすることによっても更なる低スパッタ化が達成さ
れている。
とにより、給電チップの損耗が低減されている。更に、
Cuめっき厚を0.8 μm 以上とすることで給電チップの損
耗がさらに低減されている。 (実施例2)表1に示す組成の鋼ワイヤを用いて、更に
ギャップを広げた溶接試験を行った。
領でギャップ1.6mm のギャップ重ね隅肉溶接を行い、溶
接後、溶接ビードを目視で観察し、ビード形状を評価し
た。溶落ち、アンダーカットおよびハンピングビードが
生じた場合をビード形状不可(×)、それ以外を○とし
た。なお、この溶接試験で用いた溶接条件は下記の通り
とした。
ギャップ1.6mm においても欠陥の無い良好な、ビード形
状を得ることができることがわかる。
スとする正極性炭酸ガスシールドアーク溶接においてア
ークの安定性に優れ、高溶着量と浅溶込みが達成でき、
溶落ち欠陥を防止でき、高ギャップの薄鋼板継手溶接が
安定して可能となる。また、スパッタ量も低減でき、さ
らに給電の安定性に優れ、給電チップの損耗も低減でき
るなど、産業上格段の効果を奏する。
す模式図である。
明図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 正極性炭酸ガスシールドアーク溶接で用
いられる溶接用鋼ワイヤであって、mass%で、 C:0.20%以下、 Si:0.8 〜2.5 %、 Mn:0.45〜3.5 %を含み、かつCaを0.0020%以下に制限
し、残部Feおよび不可避的不純物である組成を有するこ
とを特徴とする正極性炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼
ワイヤ。 - 【請求項2】 前記組成のうち、mass%で、Si含有量が
1.1 〜2.5 %であることを特徴とする請求項1に記載の
正極性炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、mass%で、
P:0.025 〜0.050 %、S:0.015 〜0.050 %、K:0.
0001〜0.0150%のうちから選ばれた1種または2種以上
を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の
正極性炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項4】 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti
を0.30%以下含有することを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の正極性炭酸ガスシールドアーク溶
接用鋼ワイヤ。 - 【請求項5】 前記組成に加えてさらに、mass%で、C
r:3.0 %以下、Ni:3.0 %以下、Mo:1.5 %以下、C
u:3.0 %以下、B :0.005 %以下のうちから選ばれた
1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項
1ないし4のいずれかに記載の正極性炭酸ガスシールド
アーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項6】 前記組成に加えてさらに、mass%で、A
l:0.5 %以下、および/または、Zr、Nb、Vのうちか
ら選ばれた1種または2種以上を合計で0.55%以下含有
することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記
載の正極性炭酸ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤ。 - 【請求項7】 前記溶接用鋼ワイヤが、表層に、平均厚
さ:0.5 μm 以上のCuめっきを有することを特徴とする
請求項1ないし6のいずれかに記載の正極性炭酸ガスシ
ールドアーク溶接用鋼ワイヤ。
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