JP5007997B2 - 共用封止栓及び血液浄化器 - Google Patents

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Description

本発明は、人工臓器の血液側ポートおよび透析液側ポート用の共用封止栓及びこれを装着した血液浄化器に関する。より具体的には、血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器、及び血液濃縮器等の血液浄化器の血液側ポートおよび透析液側ポートの共用封止栓、ならびにこの共用封止栓を装着した血液浄化器に関する。
内部に体液等の液体が流通される医療用具として、例えば、血液透析器、白血球除去器、血液成分吸着器、血漿分離器等の血液浄化器が知られている。これらは、分離材が収容された容器の外面に体液等の循環のための一個以上の液体ポートを備えており、さらに各液体ポートには、滅菌時や輸送時あるいは使用前後での内部液体の漏出や外部との接触を防止する等の目的で封止栓が装着される。
血液浄化器の中では、血液透析に使用される中空糸膜型血液透析器(以下、ダイアライザーと称する)が、その使用数量や製品仕様の多さから血液浄化器の代表例といえる。以下、ダイアライザーを中心に詳しく説明する。
ダイアライザーは、筒状ケーシング内に複数本の中空糸膜束が装填され、筒状ケーシングの両端部において中空糸膜外周面とケーシング内周面との間がポッティング剤により接着されることによって、各中空糸膜の内部で形成される血液側流路と、中空糸膜の外周面と筒状ケーシングの内面との間および隣接する各中空糸膜間で形成される透析液側流路とを有している。血液側流路の両端には、血液を流通するための血液側ポートを設けたヘッダーが取り付けられている。一方、透析液側流路の両端には、通常は筒状ケーシングに透析液側ポートが設けられている。使用時には、血液側ポートにおいては一方が血液導入口、他方が血液導出口となり、透析液ポートにおいては一方が透析液導入口、他方が透析液導出口となる。
各ポートの形状は標準化されており、血液側ポートの形状については、JIST3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に、透析液側ポートの形状については、同じく4.4.4(透析液側接続部分)または4.4.5(濾液側接続部分)に記載されている規格に基づいてそれぞれ形成されている。各ポートの規格が異なるのは、一つには、透析液側と血液側の回路接続を間違えた場合に誤って接続できないようにするためであり、従って、それぞれの形状、開口径、及び外周径は互いに一致しない。
該血液浄化器を人工腎臓用透析器に使用する場合、使用前に完全な滅菌処理を施す必要がある。該滅菌処理には、ホルマリン、エチレンオキサイドガス、高圧蒸気滅菌あるいはガンマ線、電子線等の放射線滅菌が用いられ、それぞれ特有の効果を発揮している。このうち、エチレンオキサイドガス滅菌法や放射線滅菌法は、被処理物を包装状態のまま処理できるため、好ましい滅菌方法として採用されている。しかしながら、エチレンオキサイドガス滅菌法ではエチレンオキサイドガスの残留が問題となり、毒性を及ぼさないように充分な脱ガスを行う必要があり、さらに、加圧と減圧を繰り返し行うので処理時間が長く、材質によっては性能変化を起こす場合がある等の問題点がある。
従って、エチレンオキサイドガス等のガス滅菌法を実施する際には、中空糸膜内部のガス交換を充分に行う必要がある。
一方、放射線滅菌に代表されるガンマ線滅菌法では、残留ガスや耐熱性の問題が無く、しかも照射線の透過力が高いので、血液浄化装置の滅菌法として非常に優れている。しかし、照射エネルギーにより材料の一部が化学変化を起こすことがよく知られており、例えば、疎水性高分子と親水性高分子からなる中空糸膜においては、主に親水性高分子が変性し、劣化して中空糸膜から溶出したり、架橋により構造変化を起こす結果、膜の透過性能や強度物性あるいは血液適合性が低下してしまうことがあった。
近年では、前記ガンマ線滅菌法のみならず、同じ放射線滅菌法である電子線滅菌法が採用されつつあり、今後さらなる実用化が期待されている。特許文献1〜3に記載されているように、ガンマ線滅菌法と比較し、短時間の滅菌処理が可能である。また、電源を切れば瞬時に照射が停止され、ガンマ線の照射施設のような放射性物質の保管に関する配慮は不要で環境上の安全性が高く、コスト面からも安価である。さらに、ガンマ線照射との大きな違いは、滅菌時に被照射物の温度上昇や材料劣化が小さいことであるが、電子線はガンマ線と比較して物体への透過力が小さいため、電子線を均一に被照射物に照射することは容易ではなく、照射ムラに基づく問題を伴っている。従って、照射基準を最小線量部位に合わせて確実に滅菌しようとすると最大線量位置で過大照射となり、材料の劣化が生じてしまう傾向にある。
つまり、ガンマ線、電子線等の放射線滅菌方法においては、内部空間が充填液で満たされていないドライタイプのダイアライザーの場合は、ガス滅菌同様に、放射線滅菌時の中空糸膜の劣化を抑制するために、包装袋内および中空糸膜内部まで充分に脱酸素状態にすることが必要である。
具体的には、透析液側ポートには気体流通性を持たせる為に封止栓が装着されずに開放状態とし、一方、血液側ポートには汚染防止を目的として封止栓が装着された後(特許文献4、5)、滅菌用の包装袋内に入れた状態で、放射線滅菌、ガス滅菌が施される方法が一般的である。しかしながら、特許文献4においては、滅菌方法に関して記載されておらず、また特許文献5においては、ガス滅菌と蒸気滅菌および真空パックだけに言及し、いずれも放射線滅菌には触れられていない。
一方、ダイアライザーは、透析開始前の準備作業として生理食塩水によりプライミングされ、洗浄と同時にエア抜きや十分な親水化が施される。その際、透析液側ポートからの液漏れを防止するため、該ポートに液密性を有する封止栓が装着されることがある。また、使用後のダイアライザーが廃棄される際には、やはり透析液側流路に残留した透析液が該ポートから外部に漏れるのを防止するため、液密性を有する封止栓が装着される必要がある。このような操作のために、予め透析液側ポートを液密に封止できる封止栓を別途準備することがあったが、仕様の異なる二種類の封止栓を併用すると、ダイアライザーの部品点数が増えるという問題があった。
そこで、一つの封止栓で血液側ポートおよび透析液側ポートに兼用可能な共用封止栓が創案されている。例えば、特許文献4および特許文献5に記載の技術においては、血液側ポートに対しては通気性がある封止部と、透析液側ポートに対しては液密性のある封止部とがそれぞれ天板部を挟んで設けられた構造が開示されており、一端側から血液側ポートに嵌合すると通気性をもって装着されるとともに、他端側から透析液側ポートに嵌合すると液密性をもって装着されるよう構成され、簡便なものとなっていた。
しかしながらこれらの共用封止栓は、透析開始前の準備作業中に、血液側ポートから透析液側ポートに付け替える際に栓体を反転する必要があり、汚染という点で医療用具として無視できない一面があった。すなわち、準備作業中に既に外部に露出しており、容易に手指に接触して菌汚染され易い部分が、反転により透析液側ポートの内部に挿入される構造になっているため、使用前のダイアライザーを汚染してしまう可能性があった。
なお、特許文献5には、反転しなくても透析液側ポートに装着可能な栓体の構造も開示されているが、そのような構造であっても、依然として透析液側ポートの内部に挿入される部分が汚染され得る構造となっており、従って上記の問題点は何ら解決されていなかった。また、特許文献4、5のいずれも、天板部が手指や梱包部材等が引っかかりやすい構造となっているため、取り扱い中や輸送運搬中に栓体が外れやすいという問題点を有していた。
ここまでダイアライザーを例に説明したが、血液濾過器や血漿分離器のような他の血液浄化器においても、ダイアライザーの透析液側ポートに相当する非血液側ポートの汚染は医療用具として好ましいことではなく、同様に改善を要するものである。
以上のように、血液浄化器において、複数の封止栓を準備する必要がある場合には部品点数が増加し、在庫管理や装着作業が煩雑化する一方、従来の共用封止栓を用いる場合には透析液側(非血液側)が汚染し得るという問題があった。
特開平8−275991号公報 特開2000−334028号公報 特開2000−135274号公報 特開平9−10303号公報 特開2002−28233号公報
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、ドライタイプの血液浄化器において、微生物により汚染される原因となる手指の接触を防止することが可能な共用封止栓及び血液浄化器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明に係る共用封止栓及び血液浄化器の代表的な構成は、JIS T 3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に記載の血液側接続部分(以下、血液側ポートと称する)、およびJIST 3250:2005の4.4.4に記載の透析液側接続部分またはJIS T 3250:2005の4.4.5に記載の濾液側接続部分(以下、両者を非血液側ポートと総称する)を有する血液浄化器用の共用封止栓において、前記共用封止栓は、平板状の天板部と、該天板部の外周部から垂下する筒状側面部と、前記天板部から前記筒状側面部の内側に同心円状に垂下し、かつ前記筒状側面部の長さよりも短い筒状栓体と、からなる筒状の封止栓であって、前記封止栓が通気用凸状リブまたは通気用凹状溝を、前記筒状栓体内表面および/または筒状栓体天板部裏面に少なくとも1本以上有していることによって、前記封止栓を前記血液側ポートに装着させた際に、前記血液側ポートのノズル外周面と接触する前記筒状栓体の内周面において、気体流通性を有し、前記筒状栓体の長さが6.5mm以上22.0mm以下であり、かつ前記筒状側面部の長さよりも4.0mm以上10.5mm以下短く、前記封止栓が前記非血液側ポートに装着された際に、該非血液側ポートのノズル内周面と接触する前記筒状栓体の外周面において、前記筒状栓体の外径が前記非血液側ポートのノズル内径よりも0.10mm以上0.20mm以下大きいことによって、液密性を有することを特徴とする、前記血液側ポートと前記非血液側ポートに同一方向から装着可能であることを特徴とする。
本発明によれば、ドライタイプの血液浄化器に使用される際に、非血液側ポートに対して液密に装着可能であって、血液側ポートに対しては気体流通性を有する同一方向から装着可能な共用封止栓を用いて滅菌操作を行うので、これにより、透析開始前の準備作業時において透析液側ポートを封止する筒状栓体に対して、微生物により汚染される原因となる手指の接触を防止することが可能である。さらに、天板が平板構造であるため、手指や梱包部材等の引っかかりもなく滅菌操作することが可能である。
本発明に係る共用封止栓及び血液浄化器の実施形態について、図を用いて説明する。
(中空糸膜型血液浄化器)
本実施形態に係る共用封止栓15が装着される血液浄化器は、例えば図1に示すように、筒状ケーシング1、ヘッダー2を主な外観要素としている。本発明に係る共用封止栓は、ヘッダー2から延出して形成された血液導入口4および血液導出口5と、筒状ケーシング1から延出して形成された透析液導入口6および透析液導出口7とのそれぞれに装着されるものである。
ダイアライザーを例にとって説明すると、筒状ケーシング1はダイアライザーの筐体を成しており、内部の視認性を確保するため、透明又は半透明部材からなるものである。筒状ケーシング1内には、複数本(通常、数百〜数万本)の中空糸膜3が装填されている。この複数本の中空糸膜3は、両端部のポッティング剤8によって筒状ケーシングに一体化され、液密に接着固定されている。
血液側流路は、その両端部の開口が血液導入口4および血液導出口5にそれぞれ連通する多数本の中空糸膜3の中空部内によって形成されるとともに、透析液側流路は、透析液導入口6および透析液導出口7に連通し、中空糸膜3の外周面と筒状ケーシング1の内周面間および隣接する中空糸膜3間に形成される多数の流路によって形成されている。
ここで、血液導入口4および血液導出口5(血液側ポート)と、透析液導入口6および透析液導出口7(非血液側ポート(ここでは、透析液側ポート))とは、これらポートに接続すべき回路を使用者が間違えないように、図2、図3の如くその形状、開口径および外周の径が異なっており、各ポート(4、5、6、7)に対し液密性を保持しつつ装着できるように構成された共用封止栓が装着される。
本発明でいう血液側ポートとは、JIST3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に記載の血液側接続部分のことである。図2にその断面構造を示す。図2の如く、血液側ポート4、5は、二条ネジ9付き外筒10が外周部に、ノズル11が中央部に一体成型されており、血液の導入、導出部としての機能を有している。
また、本発明でいう非血液側ポートとは、JIST3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.4に記載の透析液側接続部分または、JIST3250:2005の4.4.5に記載の濾液側接続部分のことである。透析液が流れるダイアライザーや血液透析ろ過器に限っては透析液側ポートとも称する。図3にその断面構造を示す。図3の如く、非血液側ポート6、7は外径が断続的に変化した円筒状ポートであり、ダイアライザーにおいては透析液の導入、導出部として、血液濾過器や血漿分離器においてはろ液の導出部としての機能を有している。
(共用封止栓)
以下、本実施形態の滅菌方法に用いる共用封止栓について詳細に説明する。
本実施形態に係る滅菌方法に用いる共用封止栓は、前記血液側ポートおよび非血液側ポートに対して同一方向から装着可能であり、透析開始前の準備作業時において前記共用封止栓を使用した場合においても、微生物により汚染される原因となる手指の接触を防止する事が可能であり、更に、非血液側ポートに対して液密に装着可能であって、血液側ポートに対して気体流通性を有する共用封止栓の構造を有していることを特徴としていている。
ここで言う気体流通性とは、共用封止栓を血液側に正常に装着した際に、栓体を介して血液浄化器の内外の気体が互いに流通し、数時間から数日内に内外の気体雰囲気が同等になることを言う。また、ここで言う液密とは、血液浄化器の内部を水で満水に充填した状態で、各前記共用封止栓を非血液側ポートの両端側および血液側ポートの一端側に装着し、血液浄化器の血液側ポートのもう一端側から0.05MPaの圧力で60秒間加圧した時に、60秒後に非血液側ポートの両端側および血液側ポートの一端側からの水漏れおよび脱栓が無いことを言う。この程度の液密性を有していれば、少なくともプライミングや廃棄の際の水漏れ防止として十分である。
前記共用封止栓の形状と装着状態の概略図を図4に示す。図4(a)〜(c)の如く、共用封止栓15は全体として筒状構造であり、平板状の天板部14と、該天板部14の外周部から垂下する筒状側面部13と、該天板部14から筒状側面部13の内側に同心円状に垂下し、かつ該筒状側面部13の長さよりも短い筒状栓体16とから構成されている。そして、共用封止栓15は、図4(e)の如く、血液側ポート4、5に装着され、図4(d)の如く、非血液側ポート6、7に装着される。
本実施形態に係る共用封止栓においては、筒状側面部13は、血液側ポート4、5の二条ネジ9付き外筒10の外径よりも大きな内径を有することが必要である。これにより、血液側ポート4、5だけではなく非血液側ポート6、7も外側から包むように装着でき、各ポートの汚染防止や保護に好ましい。
また、筒状側面部13の内周面には、共用封止栓が血液側ポート4、5に装着された際に該ポート4、5の二条ネジ9付き外筒10の外周面に密着する凸部19が図4(b)の如く設けられていることが好ましい。これにより、共用封止栓15が、血液側ポート4、5に装着された際は勿論、非血液側ポート6、7に装着された際にも、栓体のぐらつきが防止されて安定化し、不意の抜けや液漏れの防止に効果的である。凸部19は、筒状側面体13の内周面に周方向(a−a’)または軸方向(b−b’)の何れに伸展して設けられていても良いが、共用封止栓15の施栓性に優れる点から軸方向に伸展している形状が好ましい。軸方向の場合は1本または2本では、ぐらつきの安定化効果が弱く、略等間隔に離隔して3本以上設けられていると安定化する。
さらに、天板部14から筒状側面部13と筒状栓体16との間に同心円状に突出する筒状リブ17が設けられていることも好ましい。筒状リブ17は筒状栓体16よりも長さが短く、かつ共用封止栓を非血液側ポート6、7に装着した際に該ポート先端部12の外周面に液密に密着するものである。これにより、運搬時の振動や衝撃がかかった状態における非血液側ポート6、7の液密シール性の安定性を向上させることができる。
前記共用封止栓においては、筒状栓体16は筒状側面部13の長さよりも短いことが必要であり、これにより、使用前の準備作業中に筒状栓体に手指が触れ、微生物に汚染される可能性が激減する。
筒状側面部13の長さ13Lは15mm以上26mm以下が好ましく、16mm以上24mm以下が更に好ましい。15mmより短いと、血液側、透析液側(非血液側)の両ポートへの装着安定性が低下し、各ポートから外れやすくなる傾向がある。さらに、透析液側(非血液側)ポート外周部の露出面積が増加するため、不用意に手指が接触する可能性が高くなる傾向がある。一方、26mmより長くなると、透析液側(非血液側)ポートの長さよりも長い寸法となるために、透析液側(非血液側)ポートから外れやすい傾向となる。つまり、前記範囲内において筒状側面部13を出来る限り長く設計する事により、透析開始前の準備作業(プライミング)時における透析液側ポートの外周面への手指の接触による、前記透析液側(非血液側)ポートの微生物汚染を防止する事が可能となる。
筒状栓体16の長さ16Lは6.5mm以上22.0mm以下が好ましく、6.5mm以上20.0mm以下が更に好ましい。6.5mmより短いと、血液側ポート4、5および非血液側ポート6、7に装着された際に、前記筒状栓体と血液側ポート4、5および非血液側ポート6、7の接触面積が小さくなるために、前記共用封止栓が各ポートから外れやすくなる傾向があり、同時に非血液側ポートに装着した際の液密性も低下する傾向がある。一方、血液側ポート4、5のノズル11は先端部に比べて基底部付近で外径が拡大する構造であるので、筒状栓体が22.0mmより長いと、血液側ポート4、5の内筒の傾斜構造角度が緩やかな角度へ変化する屈曲部よりも前記筒状栓体16が長くなる。その結果、血液側ポート4、5に前記共用封止栓15を装着した場合、筒状栓体16とノズル11との間に隙間が生じたり、筒状栓体16の破損や亀裂の発生を引き起こしやすくなる傾向がある。
また、筒状栓体16の長さ16Lは、筒状側面部13の長さ13Lに対して4.0mm以上10.5mm以下短いことが好ましく、8.0mm以上10.5mm以下が更に好ましい。筒状側面部の長さに対して4.0mmより短いと、筒状栓体に手指が触れやすくなるので微生物に汚染され易くなる傾向にあり、10.5mmより長いと、前記共用封止栓が血液側ポート4、5から外れやすい傾向があり、同時に非血液側ポートに装着した際の液密性も低下する傾向となる。
前記共用封止栓において、筒状栓体16は、共用封止栓が血液側ポート4、5に装着された際に該ポートのノズル外周面に装着された際に血液側ポート内部と前記血液側ポート外部との気体流通を可能とするための通気用凸状リブまたは通気用凹状溝を筒状栓体内表面および/または筒状栓体天板部裏面に少なくとも1本以上有している必要がある。通気用凸状リブの高さ、通気用凹状溝の深さは、0.05mm以上0.40mm以下である事が好ましく、0.05mm以上0.20mm以下である事が更に好ましい。高さや深さがこのような範囲にあれば、栓体を介して血液浄化器の内外の気体が互いに流通し、数時間から数日内に内外の気体雰囲気が同等になる。
筒状栓体16は、共用封止栓が非血液側ポート6、7に装着された際に該ポートのノズル内周面と接触する外周面において、筒状栓体16の外径16Tが、前記透析液側ポート6、7のノズル内周面の内径6Sに比べて0.10mm以上0.20mm以下大きいことが好ましく、0.10mm以上0.15mm以下大きく形成されていることが更に好ましい。この様な構成とすることにより、非血液側ポート6、7における液密性が高まる上、施栓性も良好となる。
なお、共用封止栓15の筒状側面部13と一体成型されている天板部14の形状は、円筒形としたが、栓体をテーブル等に置いた場合の転がりや落下を防止するために、八角形、十二角形などの多角形形状を形成することが好ましい。また、円筒状側面部13に転がり防止用リブを立てることも転がり防止上、好ましい。
(中空糸膜型血液浄化器の滅菌方法)
共用封止栓15は、血液側ポート4、5用の封止栓として両側に二個装着され、透析液側ポート6、7には装着されない状態で滅菌されることが一般的な施栓方法である。
本実施形態においては、まず中空糸膜型血液浄化器の少なくとも血液側ポート(血液導入口4および血液導出口5の両方)を共用封止栓15で施栓する。ドライタイプの血液浄化器にあっては、通常は非血液側ポート6、7を施栓する必要はないが、特別な意図がある場合は施栓しても差し支えない。
次に、施栓された血液浄化器を滅菌袋に封入する。本実施形態に係る滅菌方法は、ガス滅菌法、または放射線滅菌法であり、ガス種、放射線種を限定するものではない。ガス滅菌法の場合は、エチレンオキサイド滅菌法が一般的であり、ガス透過性の滅菌袋に封入した後、ガス滅菌を行い、放射線滅菌法の場合は、ガンマ線滅菌法、または電子線滅菌法が一般的であり、酸素不透過性の滅菌袋に封入した後、滅菌袋内を脱酸素して放射線滅菌する事が好ましい。また、その線量は5〜50kGyが好ましく用いられる。より好ましくは15〜30kGyであり、特に好ましくは25kGy付近である。
ガス透過性滅菌袋とは、ガス滅菌または高圧蒸気滅菌用の滅菌袋を用い微生物の透過を阻止するがガスは自由に透過させるシート状の滅菌袋であり、市販のガス滅菌または高圧蒸気滅菌用の滅菌袋を用いることができる。23℃/50%RHにおける酸素透過速度が35cc/m・day・atm以上であることが好ましく、より好ましくは、100cc/m・day・atm以上である滅菌袋が良い。さらに好ましくは、1000cc/m・day・atm以上である滅菌袋が良い。代表例を挙げると、ナイロン/ポリエチレンのラミネートシートが好ましく、不織布を滅菌袋の一部分に一体成型してある、例えばエチレンオキサイド滅菌に代表されるガス滅菌用の滅菌袋を用いることがより好ましい。
該包装袋における密封方法としては、ヒートシール法、インパルスシール法、溶断シール法、フレームシール法、超音波シール法、高周波シール法等が挙げられ、特に限定されるものではない。連続包装によるコストダウンに適する理由から、ヒートシール法が好ましい。
ガス不透過性滅菌袋とは、微生物の透過を阻止するとともに、ガスの透過も実質的に阻止するシート状の滅菌袋である。酸素透過性滅菌袋と同様に市販の滅菌袋用フィルムを用いることができ、放射線滅菌用のラミネートフィルムを使うことができる。酸素の透過も実質的に阻止するとは、23℃/50%RHにおける酸素透過度が20cc/m・day・atm以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5cc/m・day・atm以下であり、さらに好ましくは、1cc/m・day・atm以下であることが好ましい。材料については保存上およびコスト的に有利な袋が好ましく、代表例を挙げると、ポリ塩化ビニリデン製フィルムや、ポリビニルアルコール製フィルム、二軸延伸ポリビニルアルコール製フィルム、ポリ塩化ビニリデンコート二軸延伸ポリアルコール製フィルム、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンのラミネートシート、アルミ箔など容易に密封できる性質のものが好ましい。現在のところポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンのラミネートシート、すなわち外層がポリエステル、中間層がアルミニウム箔またはアルミニウム蒸着、内層がポリエチレンのラミネートシートが最も好ましい酸素不透過性滅菌袋として例示できる。
ガス滅菌に際しては、血液浄化器を袋内に密封した後、エチレンオキサイドガス等の殺菌性ガスで滅菌処理を行い、その後、残留ガスを低減するために脱気と大気開放のパージ操作を何回か繰り返す。一方、放射線滅菌に際しては、例えば、血液浄化器を脱酸素剤と共にガス不透過性包装材で袋内に密封する、または血液浄化器をガス不透過性包装材の袋内に入れ、窒素や不活性ガス等の実質的に酸素を含まないガスで袋内を置換した後に密封する。しかる後、γ線や電子線等の放射線を照射して滅菌処理を行う。前記のガス置換、脱酸素方法以外にも、例えば、ガス透過性包装材の袋内に血液浄化器を封入した後、脱酸素剤と共にガス不透過性の袋内に封入する事で脱酸素を施す方法や、自動包装機を利用して、包装シールされる瞬間の直前に不活性ガスを袋内に封入する事でガス置換を施す方法なども好ましい。本実施形態においては、このような滅菌操作を行う際に、前記形状の共用封止栓を用いる点が特徴であるので、これらの滅菌方法の詳条件や、包装材の性質については特に限定するものではない。
以上述べた構成により、本実施形態に係る共用封止栓15を装着してガス滅菌または放射線滅菌する事で共用封止栓15を反転させることなく血液側ポート4、5および非血液側ポート6、7の封止栓として共用できるため、透析開始前の準備作業(プライミング)時に微生物に汚染される原因となる手指の接触を防止することが可能となる。また、共用封止栓の開口部20(図4(a))を不用意に指の腹部で把持した時においても、手指が前記筒状栓体16に接触して汚染することを防止できる。
次に、共用封止栓の実施例について、図5〜図7を参照しながら詳細に説明する。
(第一実施例)
図5は第一実施例に係る共用封止栓の構成図である。図5において、筒状栓体16の長さ16Lが8.5mmであって、前記筒状栓体16の長さ16Lは、筒状側面部13の長さ13Lに比べて8.45mm短く形成されている。一方、共用封止栓が血液側ポート4、5に装着された際に該ポートのノズル外周面と非接触状態となる通気用凹状溝25が筒状栓体内表面に8本等間隔で0.20mmの深さで形成されている。また、共用封止栓15が非血液側ポート6、7に装着された際に該ポートのノズル内周面と接触する外周面22において、筒状栓体16の外径16Tが、前記透析液側ポート6、7のノズル内周面の内径6Sに比べて0.15mm大きく形成されている。
また、この実施例においては、筒状栓体16は、共用封止栓が非血液側ポート6、7に装着された際に該ポートのノズル内周面と接触する外周面22において、全周型の環状凸条24が2本設けられている。このような構成とすることにより、非血液側ポート6、7における液密性が高まる上、施栓性も良好となる。更に、環状凸条が1本のみ設けられている場合は、成型時、製造取扱時の機械等の接触が原因で傷や凹みが発生した場合、液密性が保てなくなる可能性があるが、2本設ける事でそのリスクを半減させる事が可能となるため、全周型の環状凸条24は2本以上設けられることがより好ましい。
さらに、この実施例においては、前記構成に加えて、筒状リブ17がさらに設けられている。筒状リブ17には、筒状側面部13との溝に筒状リブ補強材18が設けられることもある。
この例では、筒状リブ17の内径17Sは、非血液側ポート6、7の先端部12の外径6Tよりも0.07mm小さくなるように構成しているが、0.00mm以上0.10mm以下小さく形成させる事が好ましく、0.05mm以上0.08mm以下小さく形成させることが更に好ましい。0.10mmよりも小さく形成させると、非血液側ポート6、7の先端部12と前記筒状リブ17の先端の接触部分が増加するために、装着させにくくなる傾向となり、0.00mmよりも大きく形成させると、非血液側ポート6、7の先端部12の外周面との間に隙間が生じるため、運搬時の振動、衝撃がかかった状態における非血液側ポート6、7の液密シール性の安定性が低下する傾向となる。
(第二実施例)
図6は第二実施例に係る共用封止栓の構成図である。図6に示すように、本実施例の共用封止栓35は、血液側ポート4、5に装着した際に、筒状栓体内表面に、0.20mmの高さで形成された通気用凸状リブ26が8本等間隔で血液側ポート4、5のノズル外周面と接触し、通気用凸状リブ26以外の筒状栓体内表面と血液側ポート4、5のノズル外周面は非接触状態となる。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(第三実施例)
図7は第三実施例に係る共用封止栓の構成図である。図7に示すように、本実施例の共用封止栓45は、筒状リブ17を有していない。更に通気用凹状溝25が天板裏から筒状栓体内表面にかけて一体成型させている。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(第四実施例)
図8は第四実施例に係る共用封止栓の構成図である。図8に示すように、本実施例の共用封止栓55は、筒状栓体16の長さ16Lを13.75mmとしたものである。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(第五実施例)
本実施形態に係る滅菌方法に用いる共用封止栓の第五実施例は、本実施例の共用封止栓は、筒状栓体16の長さ16Lを6.5mmとし、筒状栓体16の長さ16Lを筒状側面部13の長さ13Lに比べて10.45mm短く形成したものである。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(第六実施例)
図9は第六実施例に係る共用封止栓の構成図である。図9に示すように、本実施例の共用封止栓65は、栓体天板部14の形状が十二角形としてものである。天板の形状は、転がりにくい形状であれば構わないため、十二角形だけに限定されるものではない。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(第七実施例)
図10は第七実施例に係る共用封止栓の構成図である。図10に示すように、本実施例の共用封止栓75は、筒状側面部13の低部に転がり防止用リブ26を有している。転がり防止用リブの形状、取り付け位置はその目的を達成すれば充分であって、図に示した形状に限定されるものではない。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
なお、本発明の滅菌方法に用いる共用封止栓はこれらの第一〜第七実施例の構造にのみ限定されるものではない。また、各図に記載した各々の好ましい要件を任意に組み合わせることもできる。
共用封止栓を構成する材質としては、ある程度の保形性を備えることが望ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアセタール等の比較的硬い樹脂を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンのような樹脂材料は、密封性や成型し易さの理由から特に好ましい材料となる。
また、共用封止栓は、これらの材質により各部が一体成型されていることが生産性や強度の点から好ましい。
(実験例1〜3)
上記の第一〜第七実施例(実施例1〜7)、下記の比較例1〜4の共用封止栓を装着して滅菌した中空糸膜型血液浄化装置を用いた実験例1〜3について説明する。
実施例1〜7、比較例1〜4に係る共用封止栓は、いずれもポリエチレン(三井化学(株)製、商品名ハイゼックス2100J)を用いた射出成型により一体成型したものである。
(比較例1)
図11は比較例1の共用封止栓115の構成図である。図11に示すように、比較例1の共用封止栓115は、共用封止栓115が非血液側ポート6、7に装着された際に非血液側ポート6、7のノズル内周面と接触する外周面22において、筒状栓体16の外径16Tが、非血液側ポート6、7のノズル内径6Sと同一の径となるように形成している。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(比較例2)
比較例2の共用封止栓(図面は省略)は、図11に記載の共用封止栓115から筒状リブ17を取り除いた形状としたものである。
(比較例3)
図12は比較例3の共用封止栓125の構成図である。図12に示すように、比較例3の共用封止栓125は、筒状栓体16の長さ16Lを13.9mmとし、側面部13の長さ13Lとの差が3.05mmとした。他の構成は、共用封止栓15(図5参照)と同様の形状を成している。
(比較例4)
図13は比較例4の共用封止栓135の構成図である。図13に示すように、比較例4の共用封止栓135は、天板部14の一方に非血液側ポート6、7に装着される突起状栓体23が形成され、他方に血液側ポート4、5に装着される筒状側面部13と筒状栓体16が形成されたものである。
図13(a)に示すように、共用封止栓135は、突起状栓体23が非血液側ポート6、7に装着された際に、非血液側ポート6、7のノズル内周面と接触する外周面22において、突起状栓体23の外径23Tが非血液側ポート6、7のノズル内径6Sに比べて0.15mm大きく形成されており、かつ、血液側ポート4、5に装着された際に非血液側ポート6、7のノズル外周面と非接触状態となる通気用凹状溝25が、筒状栓体内表面に8本等間隔で0.20mmの深さで形成されている。
上記実施例、比較例の共用封止栓を用いて、最も作業性が効率的であると考えられる、以下の滅菌方法で中空糸膜型血液浄化装置を滅菌した。
公知の紡糸方法(例えば、国際公開WO98/52683、WO2005/46763)を参照しつつ作成した10000本の中空糸膜からなる束を、中空糸膜の有効膜面積が1.5m、となるように設計したプラスチック製筒状容器に装填し、かかる両端部をウレタン樹脂で接着固定し、両端面を切断して中空糸膜の開口端を形成した。両端部にヘッダーキャップを取り付けた後、血液流出入側ノズルに各実施例ごとに前記共用封止栓を装着し、脱酸素剤(エージレスSS200(株)三菱ガス化学社製)と共にポリエステル/ナイロン/ポリエチレンのラミネートシートから成る滅菌袋に入れ、20時間以上脱酸素養生を実施した後、ガンマ線を25kGy照射して有効膜面積1.5mの中空糸膜型血液浄化装置を得た。
(実験例1)加圧による水漏れおよび脱栓試験
JIST3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に記載の血液側接続部分、およびJIST3250:2005の4.4.4に記載の透析液側接続部分を有するダイアライザーの内部に水を満水に充填した状態で、実施例1〜7、比較例1〜4の各共用封止栓を透析液側ポート6、7に装着し、脱栓および水漏れについて調査した。すなわち、実施例1〜7、比較例1〜4の各共用封止栓を透析液側ポート6、7の両端側に装着し、血液側ポート4、5の一端側(例えば、血液側ポート4)には、別途、液密性を有する栓体を装着した状態で、血液側ポート4、5のもう一端側(例えば、血液側ポート5)から0.05MPaの圧力で60秒間加圧し、60秒後に透析液側ポート6、7の両端側からの水漏れの有無および脱栓の有無を調べた。結果を表1に示す。
Figure 0005007997
表1の結果のとおり、本発明の各共用封止栓(実施例1〜7)において、透析液側ポート6、7からの水漏れおよび脱栓は見られず、透析液側ポート用の栓体として優れた液密性を示すことが確認された。
(実験例2)手指接触試験
実施例1(図5参照)、実施例4(図8参照)、実施例5および比較例3(図12参照)、比較例4(図13参照)の共用封止栓を試験に用い、透析開始前の準備作業(プライミング)時に、共用封止栓の透析液側ポートを液密に封止する部分及び透析液側ポート6、7の外周面に指が触れた回数をカウントした。液密に封止する部分とは、実施例1、4、5においては、筒状栓体16部分であり、比較例4においては、突起状栓体23部分を指す。
プライミング作業手順は、一般的なドライタイプダイアライザーのプライミング手順に従い、下記の如く実施した。
1.ダイアライザーを、血液導入口を下にして透析装置のダイアライザーホルダーに垂直に取り付ける
2.ダイアライザーの各血液側ポート4、5から共用封止栓を取り外し、これを各透析液側ポート6、7に装着する。この時、図12に示す封止栓は反転させて装着する
3.ダイアライザーの血液側ポート4、5に透析装置の血液回路を接続する(静脈側血液回路と血液導出口を接続し、動脈側血液回路と血液導入口を接続する)
4.イルリガートル台に1000ml以上の生理食塩液の入ったボトルをつるす
5.生理食塩液ボトルに輸液セットを接続する
6.生理食塩液ボトルから輸液セットに生理食塩液を満たす
7.輸液セットに動脈側血液回路を接続する
8.中空糸と血液回路を洗浄するために、血液導入口を経由して100ml/minの流量で生理食塩液1000mlを注ぎ込み、その後動脈側血液回路をクランプする。この時、洗浄中に透析液側に生理食塩液が充分にろ過されないため、透析液導入口の共用封止栓を一旦取り外し、透析液導入口まで生理食塩液の水位が上昇してきた時に、再度、共用封止栓を装着する
9.透析液側ポート6、7から各共用封止栓を取り外し、透析液回路をそれぞれの透析液側ポート6、7に接続する
10.透析液側を洗浄するために、透析液を透析液回路に500ml/minの流量で注ぎ込む
11.輸液セットを生理食塩液ボトルから外し、500ml以上の生理食塩液の入ったボトルに接続する
12.動脈血液回路からクランプを外す
13.ダイアライザーに500ml以上の生理食塩液を100ml/minの流量で注ぎ込み、中空糸および血液回路に生理食塩液を充填する
14.中空糸および血液回路に空気が残っていないことを確認した後、静脈血液回路、動脈血液回路の順にクランプする。
Figure 0005007997
表2の結果のとおり、同一方向からの施栓が可能な実施例1、4、5の共用封止栓15に関しては、プライミング作業中に手指が筒状栓体16に触れることは全くなく、一方、比較例3の13Lと16Lの長さの差が短い栓体に関しては、栓体を手で把持した際に、指の腹が接触してしまった。更に、比較例4の反転タイプの共用封止栓については、透析液側ポート6、7を液密に封止するための突起状栓体23にプライミング作業時に容易に指が触れてしまい、接触を防ぐことはできなかった。また透析液側ポート外周部への接触は、筒状側面部13の長さが長く、完全に透析液側ポート6、7を覆い隠す事が可能な実施例4についてのみ、手指が透析液側ポート外周部に触れる事が全くなかった。
(実験例3)落下衝撃による水漏れおよび脱栓試験
JIST3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に記載の血液側接続部分、およびJIST3250:2005の4.4.4に記載の透析液側接続部分を有するダイアライザーの内部に水を満水に充填した状態で、透析液側ポート6、7の両端側に実施例1〜比較例4の各共用封止栓を装着した。そのダイアライザー11本を緩衝パットの上に並べ、さらに2段重ねとした計12本をダンボール内に梱包した状態で、JIS−Z−0202に基づき、80cmの垂直高さから落下試験を実施し、透析液側ポートの両端側からの脱栓および水漏れについて調査した。結果を表3に示す。
Figure 0005007997
表3の結果のとおり、筒状リブ17及び、全周型環状凸条24が二本形成されている実施例1、2、4、5の共用封止栓では、脱栓および水漏れはなく、筒状リブ17又は全周型環状凸条24のいずれかが又は両方のない実施例3、比較例1〜4の共用封止栓では、脱栓又は水漏れがあった。従って、筒状リブ17が形成されており、全周型環状凸条24のある実施例1、2、4、5の共用封止栓は、筒状リブ17又は全周型環状凸条のいずれかが又は両方のない実施例3、比較例1〜4の共用封止栓に比べて、落下衝撃のような強烈な衝撃に対して施栓の安定性を向上できることが確認できた。
なお、実験例3(落下衝撃試験)では、特に大きな力が加わった際の水漏れを見ているが、本願でいう液密性は、治療中のものではなく、治療終了後の洗浄時に非血液側を仮止めした際、漏れなければ良いという程度のものである。従って、実験例1の試験に合格していれば十分であり、実験例3のように想定外(突発)の衝撃にも耐えるという特性はさらに優れた特性である。
(実験例4)転がり試験
袋から開封した際に栓が転がることを想定し、高さ5cmから45°の角度でステンレス板から滑り下ろした。この時、栓体には勢いを与えず、静かに手を放した。
図4に示した筒状側面部と一体成型されている天板部が円筒状の栓体は、落下点からの移動距離が15〜25cm転がってから停止したのに対して、図9に示した天板部の形状が12角形の栓体の水平移動距離が5〜10cmであったことから、転がりが防止されていることを確認できた。
本発明の共用封止栓及び血液浄化器は、血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器、血液濃縮器等の血液浄化器の滅菌方法有用に用いられる。
共用封止栓が装着される血液浄化器を示す部分断面図である。 共用封止栓を装着する前の血液側ポートの断面図である。 共用封止栓を装着する前の非血液側ポートの断面図である。 (a)は共用封止栓を示す斜視図である。 (b)は共用封止栓のa−a’を示す底部から天板部方向への断面図である。 (c)は共用封止栓のb−b’を示す断面図である。 (d)は共用封止栓を非血液側ポートに装着した際のb−b’を示す断面図である。 (e)は共用封止栓を血液側ポートに装着した際のb−b’を示す断面図である。 (a)実施例1の共用封止栓を非血液側ポートに装着した際の断面透視図である。(b)実施例1の共用封止栓を血液側ポートに装着した際の断面透視図である。(c)実施例1の共用封止栓を示す断面透視図である。(d)実施例1の共用封止栓を示す下面図である。 (a)実施例2の共用封止栓を非血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 (b)実施例2の共用封止栓を血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 (c)実施例2の共用封止栓を示す断面透視図である。 (d)実施例2の共用封止栓を示す下面図である。 (a)実施例3の共用封止栓を血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 (b)実施例3の共用封止栓を非血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 (c)実施例3の共用封止栓を示す断面透視図である。 (d)実施例3の共用封止栓を示す下面図である。 実施例4の共用封止栓を示す断面透視図である。 実施例6の共用封止栓を示す下面図である。 実施例7の共用封止栓を示す下面図である。 比較例1の封止栓を非血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 比較例3の封止栓を示す断面透視図である。 (a)比較例4の封止栓を非血液側ポートに装着した際の断面透視図である。 (b)比較例4の封止栓を血液側ポートに装着した際の断面透視図である。(c)比較例4の封止栓を示す断面透視図である。
符号の説明
1・・・筒状ケーシング
2・・・ヘッダ
3・・・中空糸膜
4・・・血液導入口(血液側ポート)
5・・・血液導出口(血液側ポート)
6・・・透析液導入口(透析液側ポート、非血液側ポート)
7・・・透析液導出口(透析液側ポート、非血液側ポート)
8・・・ポッティング剤
9・・・二条ネジ
10・・・外筒
11・・・ノズル
12・・・透析液ポート先端部
13・・・筒状側面部
14・・・天板部
15・・・共用封止栓
16・・・筒状栓体
17・・・筒状リブ
18・・・筒状リブ補強材
19・・・凸部
20・・・封止栓下面開口部
21・・・血液側ポート外周面と筒状栓体内周面の接触部
22・・・透析液側ポート内周面と筒状栓体外周面の接触部
23・・・突起状栓体
24・・・全周型環状凸状
25・・・通気用凹状溝
26・・・通気用凸状リブ

Claims (10)

  1. JIS T 3250:2005(血液透析器、血液透析ろ(濾)過器、血液ろ(濾)過器及び血液濃縮器)の4.4.3に記載の血液側接続部分(以下、血液側ポートと称する)、およびJIST 3250:2005の4.4.4に記載の透析液側接続部分またはJIS T 3250:2005の4.4.5に記載の濾液側接続部分(以下、両者を非血液側ポートと総称する)を有する血液浄化器用の共用封止栓であって、
    前記共用封止栓は、平板状の天板部と、該天板部の外周部から垂下する筒状側面部と、前記天板部から前記筒状側面部の内側に同心円状に垂下し、かつ前記筒状側面部の長さよりも短い筒状栓体と、からなる筒状の封止栓であって、
    前記封止栓が通気用凸状リブまたは通気用凹状溝を、前記筒状栓体内表面および/または筒状栓体天板部裏面に少なくとも1本以上有していることによって、前記封止栓を前記血液側ポートに装着させた際に、前記血液側ポートのノズル外周面と接触する前記筒状栓体の内周面において、気体流通性を有し、
    前記筒状栓体の長さが6.5mm以上22.0mm以下であり、かつ前記筒状側面部の長さよりも4.0mm以上10.5mm以下短く、
    前記封止栓が前記非血液側ポートに装着された際に、該非血液側ポートのノズル内周面と接触する前記筒状栓体の外周面において、前記筒状栓体の外径が前記非血液側ポートのノズル内径よりも0.10mm以上0.20mm以下大きいことによって、液密性を有することを特徴とする、
    前記血液側ポートと前記非血液側ポートに同一方向から装着可能な共用封止栓。
  2. 前記筒状栓体は、前記封止栓が前記非血液側ポートに装着された際に該非血液側ポートのノズル内周面と接触する外周面において、全周型の環状凸条が2本以上設けられていること特徴とする請求項1に記載の共用封止栓。
  3. 前記筒状側面部の内周面には、前記封止栓が前記血液側ポートに装着された際に該血液側ポートの二条ネジ付き外筒の外周面に密着する凸部、および/または、前記天板部から前記筒状側面部と前記筒状栓体との間に同心円状に突出し、前記筒状栓体よりも長さが短く、かつ前記封止栓が前記非血液側ポートに装着された際に、該非血液側ポート先端部の外周面に密着する筒状リブが設けられたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  4. 前記筒状リブの内径が前記非血液側ポート先端部の外径よりも0.00mm以上0.10mm以下小さいことを特徴とする請求項に記載の共用封止栓
  5. 前記二条ネジ付き外筒の外周面に密着する凸部は、前記筒状側面部の軸線方向に伸展しており、等間隔に離隔して3本以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  6. 前記筒状栓体および前記筒状リブが前記天板に一体成型されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  7. 前記筒状側面部が少なくとも三角形以上の多角形形状を形成していることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  8. 前記筒状側面部に転がり防止用リブが少なくとも1つ以上形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  9. 少なくとも前記筒状栓体の材質がポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の共用封止栓
  10. 血液透析器、血液透析濾過器、血液濾過器、血液濃縮器から選択される何れか一種であって、請求項1乃至9の何れかに記載の共用封止栓が少なくとも2個以上装着されたことを特徴とする血液浄化器
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