JPH044904B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （技術の分野） 本発明は高圧蒸気滅菌人工臓器に関する。さら
に詳しくは血液ポート、血漿ポート又は透析液ポ
ートの少なくとも一箇所に、その一部に気体は透
過するが液体は遮断する多孔膜を装着した、所定
容積の空間部を有する部材を取り付けた高圧蒸気
滅菌人工臓器に関する。

（従来の技術） 人工じん臓、血漿分離器等の人工臓器の滅菌方
法としては、これら人工臓器内にホルマリン等の
殺菌入り水溶液を充填する方法、人工臓器内に、
エチレンオキサイドガス等の滅菌ガスを充填し、
実質上乾燥状態で滅菌する方法が知られている。
しかし、このような従来の方法では滅菌剤が人体
に有害であるため、使用時に人工臓器内を洗浄す
る必要があり、洗浄によつても滅菌剤を完全に除
去することが困難で、その一部が残留するため好
ましい方法ではない。そのため、このような滅菌
剤を使用せずに人工臓器内に生理食塩水又は無菌
水を充満させ、オートクレーブにより加圧、加熱
する高圧蒸気滅菌する方法が知られている。

この、場合、充填された生理食塩水や内部の空
気の熱膨張等による人工臓器のひび割れ、破壊及
び変形のおそれがある。この改善法として、人工
臓器の血漿ポート、あるいは透析液、又は血漿ポ
ートに変形可能な緩衝装置（特開昭53−84394号、
特開昭57−75656号、及び特開昭53−101890号公
報参照）や液圧緩和管体（特開昭55−118757号、
特開昭57−49465号公報参照）、や水又は水溶液に
導管を接続する方法（特開昭53−59296号広報参
照）等が提案されている。

しかし、従来の方法は、人工臓器に高圧蒸気滅
菌後、気泡が入らないよう、あらかじめ完全に脱
気する必要がある。特に、中空糸型透析器や多孔
質中空糸型血漿分離器を生理食塩水又は無菌水を
充填したまま高圧蒸気滅菌を行うためには、完全
脱気を行う必要があり、完全脱気を行うには、減
圧脱気を行つても、相当の時間を必要とする。

（課題を解決する手段） 本発明は上気の問題点を鑑えみてなされたもの
であつて、人工臓器を高圧蒸気滅菌するに際し、
該人工臓器の血液ポート又は他の血漿ポート、透
析液ポートの少なくとも一箇所に、その一部に気
体を透過するが液体は遮断する多孔膜を装着し
た、所定容積の空間部を有する部材を取り付ける
ことにより、人工臓器内の脱気泡を行ない、かつ
加熱滅菌時の人工臓器内の液体（生理食塩水又は
無菌水等）の熱膨張を吸収させることを特徴とす
る高圧蒸気滅菌人工臓器内に関するものである。

人工臓器内の液体である生理食塩水又は無菌水
等の熱膨張を吸収する所定容積を有する空間部を
形成する材料の材質は、高圧蒸気滅菌に耐えるも
のであればよく例えば、ポリプロピレン、ポリカ
ーボネート、ガラス等が好ましいが、必ずしも剛
体である必要はなく、例えばシリコンゴム、天然
ゴム、合成ゴム等の膨張性のあるもの、あるいは
蛇腹形のように構造的に膨張性のあるものでも差
支えない。その空間部の容積は人工臓器内の液体
の実質的な熱膨張（人工臓器の熱膨張と人工臓内
の液体の熱膨張との差）を吸収できる容積以上で
あればよい。またその形状は人工臓器の血液ポー
ト、血漿ポート又は透析ポートの少なくとも一箇
所に廉潔でき、その一部に多孔膜が装着できるも
のであればよい。

また、気体は透過するが液体は遮断する多孔膜
としては熱滅菌に耐える疎水性の微多孔膜が使用
される。例えばポリプロピレン多孔膜、ナイロン
多孔膜等のように疎水性で融点が熱滅菌温度以上
の樹脂で作られた多孔膜が好ましい。それら多孔
膜の孔径は気体の透過性及び液体の遮断性点から
鑑みて、0.01〜2μの径を有しているものが好まし
い。

疎水性微多孔膜を使用した場合、熱滅菌する際
に該多孔膜が位置的に最も高い状態になるように
配慮するだけで、他の位置関係には特に配慮する
必要がないという点、及び高圧蒸気滅菌処理中あ
るいは処理後において人工臓器内の液体が外部へ
液漏れのおそれがないという点において有利であ
る。しかしながら、人工臓器内の脱気という観点
からは疎水性微多孔膜に限定されるものではな
い。微地孔膜の形状としては平膜、中空糸膜のい
ずれでも使用することができる。この脱器用多孔
膜を具備した液体熱膨張吸収体（特許請求の範囲
の記載中の部材に相当する）を、無菌下人工臓器
から取りはずし、蜜栓を取り付け包装することも
可能である。

また連結部を融着又は融着切断し包装してもよ
い。血液ポート、血漿ポート又は透析液ポートの
封止用栓を有する脱気用多孔膜を具備した液体熱
膨張吸収体を使用する場合、該液体熱膨張吸収体
を人工臓器に装着した後、ポート封止用栓を開き
高圧蒸気滅菌に耐える包装体に密着包装し、高圧
蒸気滅菌を行ない、包装体の外部から栓を閉め
る。この方法では包装したまま熱滅菌できるの
で、液体熱膨張吸収体をはずす後工程や再汚染の
恐れもなく、衛生安全性および製造工程上、極め
て有利となる。

血液ポート、血漿ポート、又は透析液ポート封
止用栓は人工臓器本体と脱気用孔膜を具備した液
体熱膨張吸収体との連結部に活栓又は押込み型封
止栓として設けてもよく、また該ポートの孔部に
押込み型の封止栓として設けることもできる。

（実施例） 本発明を図面により説明する。

第１図は、多孔質ポリプロピレン中空糸型血漿
分離器１の血漿ポート２に、該ポートと該ポート
を封止するための栓８を有し、連結部３により連
結された脱気用の多孔質ポリプロピレン中空糸膜
部４を他端に具備した液体熱膨張吸収部５を装置
した例である。第２図及び第３図は多孔膜部４を
具備した液体熱膨張吸収部５を装備した異なる連
結例及びポート封止用栓の例（９、10）を示した
ものである。

多孔質ポリプロピレン中空糸型血漿分離器１の
多孔質ポリプロピレン中空糸膜をアルコールで親
水化した後、生理食塩水を血漿分離器内に充填
し、該血漿ポート２に図示するように多孔質ポリ
プロピレン中空糸膜（この中空糸膜は親水化され
ていない）を具備した液体熱膨張吸収部５を連結
し、高圧蒸気滅菌に耐える包装体で高圧蒸気滅菌
により包装体内の空気の熱膨張で包装体が破裂し
ない程度密着的に包装し、多孔膜体が最も高い位
置にくるようにして121℃、20分間の熱滅菌を行
なつた。その後、包装体の外部から連結部３のポ
ート封止用栓を閉めた。得られた多孔質ポリプロ
ピレン中空糸型血漿分離器１は、ひび割れや変形
をおこしておらず、熱膨張した生理食塩水は再び
血漿分離器本体にもどつていた。しかも、内部に
充填された生理食塩水には気泡は含まれていなか
つた。

本発明に係わる人工臓器は、特に脱気に配慮す
ることなく生理食塩水又は無菌水を充填するだけ
で、完全に脱気することができる高圧蒸気滅菌人
工臓器である。

なお上気の高圧上気滅菌された多孔質ポリプロ
ピレン中空糸型血漿分離器を包装体より取り出
し、各血液ポートに生理食塩水の循環装置をつな
ぎ、生理食塩水の循環実験を行なつたが、その循
環液には目視できるような気泡は認められなかつ
た。

本発明は例示した図面に限定されるものではな
く、これ以外の多孔膜の形状、連結方法、ポート
封止栓の種類の組合せは当然含まれる。

【図面の簡単な説明】

第１〜３図は本発明に係る高圧蒸気滅菌人工臓
器の一例である血漿分離器を示す。記号１〜１１
はそれぞれ次の部分を示す。 １……多孔質ポリプロピレン中空糸型血漿分離
器、２……血漿ポート、３……連結部、４……脱
気用多孔膜部（中空糸膜又は平膜）、５……液体
熱膨張吸収部、６……血液ポート、７……密栓、
８……ポート封止栓（押込型）、９……連結部封
止栓（活栓型）、１０……連結部封止栓（押込
型）、１１……中空糸型脱気用多孔膜ポツテイン
グ部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 血液ポート、血漿ポート又は透析液ポートの
   少なくとも一箇所に、その一部に気体は透過する
   が液体は遮断する多孔膜を装着した、所定容積の
   空間部を有する部材を取り付けた人工臓器。 ２ 血液ポート、血漿ポート又は透析液ポートの
   少なくとも一箇所に、該ポート封止用栓を具備
   し、その一部に気体は透過するが液体は遮断する
   多孔膜を装着した、所定容積の空間部を有する部
   材を取り付けた人工臓器。 ３ 該多孔膜が孔径0.01〜2μの多孔質ポリプロピ
   レン中空糸である特許請求の範囲第１項記載の人
   工臓器。 ４ 該多孔膜が孔径0.01〜2μの多孔質ポリプロピ
   レン中空糸である特許請求の範囲第２項記載の人
   工臓器。 ５ 該多孔膜が孔径0.01〜2μの多孔質ポリプロピ
   レンフイルムである特許請求の範囲第１項記載の
   人工臓器。 ６ 該多孔膜が孔径0.01〜2μの多孔質ポリプロピ
   レンフイルムである特許請求の範囲第２項記載の
   人工臓器。