JP5007644B2 - 液滴吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェットプリンタ等のような液滴吐出装置に関するものである。
従来、往復走査されるキャリッジに設けられたインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出し、用紙等に画像を記録させるインクジェットプリンタが知られている。インクジェットヘッドは、複数枚のプレートが積層された流路ユニットと、該流路ユニット内の液体室に吐出圧力を付与する圧電駆動式のアクチュエータとを備え、該アクチュエータには、その各電極に接続されるフレキシブルフラット配線材が積層されている。そのフレキシブルフラット配線材には、アクチュエータを駆動するための駆動回路がICチップとして設けられ、そのICチップがヒートシンクに対して直接的に接触している(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−80793号公報 特開平10−291300号公報
近年のインクジェットプリンタは、印刷高速化の要求による駆動回路の処理速度の増大や、高解像度化及び装置小型化の要求によるインクジェットヘッドのノズルの増加及び高密度化がなされる傾向にあるため、ICチップやアクチュエータに大きな負荷が掛かって発熱量が増加している。ところが、装置の小型化が進むと必然的にヒートシンクの面積も小さくならざるを得ず、放熱効果は低下してしまうこととなる。ICチップやアクチュエータによる熱がインクに伝達されてインク温度が高温になると、インク粘度が低下して吐出速度が速くなり、用紙への着弾位置のズレや着弾画素径のバラツキが生じて吐出精度が不安定になる。
このような問題への対策として、冷却液を循環させてインクジェットヘッドを適正温度範囲に保つようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、冷却液によりICチップやアクチュエータの放熱を図るための具体的構成が開示されておらず、装置が小型化されても効率的に放熱することのできる構造を開発することが望まれる。
そこで本発明は、放熱効率を向上させるために好適な構造を提供することを目的としている。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る液滴吐出装置は、被記録体に対して走査されるキャリッジに液滴吐出ヘッドが設けられ、記録液供給源からの記録液が前記キャリッジ上の記録液流路を介して液滴吐出ヘッドに供給される液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドに接続されたフレキシブルフラット配線材と、前記フレキシブルフラット配線材に設けられ、前記液滴吐出ヘッドを駆動するICチップと、前記キャリッジ上に設けられ、前記ICチップの近傍を通過する冷却液流路と、前記ICチップと前記冷却液流路との間に介設され、前記冷却液流路を画定する壁の内面の一部を兼ねるように前記冷却液流路に少なくとも一部が露出したヒートシンクと、前記ヒートシンクに向けて前記ICチップを付勢する弾性部材と、を備え、前記内面へ前記ICチップを投影したときの投影領域が、前記内面へ前記ヒートシンクを投影したときの投影領域に包含され、前記キャリッジの内側から外側に向けて、前記弾性部材、前記ICチップ、前記ヒートシンク及び前記冷却液流路がこの順番で並んで配置されていることを特徴とする。
前記構成によれば、ヒートシンクが冷却液に直接触れるので、ヒートシンクがICチップから受けた熱は効率良く冷却液へと放熱される。かつ、冷却液流路の内面へICチップを投影したときの投影領域が、冷却液流路の内面へヒートシンクを投影したときの投影領域に包含されるようにヒートシンクが設けられているので、ICチップが小さくてもヒートシンクへと十分に熱伝達することができる。よって、装置が小型化されても放熱効率を向上することができる。さらに、ヒートシンクは、冷却液流路を画定する壁の一部を兼ねるように設けられているので、装置のコンパクト化にも貢献する。また、ICチップが弾性部材によりヒートシンクに向けて付勢されているので、ICチップからの熱を安定的にヒートシンクに伝えることができる。
前記キャリッジは樹脂からなり、前記ヒートシンクは金属からなり、前記ヒートシンクは、前記キャリッジにインサート成形されていてもよい。
前記構成によれば、ヒートシンクが予めキャリッジにインサート成形されているので、装置組立時にヒートシンクをキャリッジに組み付けずに済み、組立作業性が向上する。また、金属製のヒートシンクがインサートされていることで、樹脂製のキャリッジの剛性が高まるので、キャリッジの肉厚を薄くしてコンパクト化を図ることもできる。
前記ヒートシンクは、前記冷却液流路を画定する壁の外面側には露出せずに前記内面側に露出しており、前記ICチップは、前記冷却液流路を画定する壁の前記外面に接触していてもよい。
前記構成によれば、ICチップと金属製のヒートシンクとの間には、ヒートシンクを被覆するキャリッジの一部である樹脂が介在することとなるので、発熱体の損傷を防ぐことができる。
前記冷却液流路を画定する壁のうち、前記キャリッジの内部側にある内壁部に前記ヒートシンクが設けられ、前記キャリッジの外部側にある外壁部には前記ヒートシンクは設けられておらず、前記冷却液流路の前記ICチップに対応する位置では、前記外壁部が前記キャリッジの最外壁となっていてもよい。
前記構成によれば、ICチップからヒートシンクを介して受熱した冷却液の流路を画定する外壁部がキャリッジの最外壁であるので、その外壁部からも大気中に放熱され、キャリッジ内部に熱がこもるのを抑制することができる。
前記弾性部材は、前記記録液流路及び前記冷却液流路を封止していてもよい。
前記構成によれば性部材がICチップを付勢するとともに流路を封止する部材を兼ねているので、部品点数および組立工数の増大を抑制することもできる。
記弾性部材は、前記記録液流路を形成する壁の一部と前記冷却液流路を形成する壁の一部とを兼ねていてもよい。
前記構成によれば、弾性部材が記録液流路を形成する壁及び冷却液流路を形成する壁を兼ねているので、部品点数および組立工数の増大を抑制することができる。
前記キャリッジ上に設けられる流路形成部材をさらに備え、前記ヒートシンクには、前記流路形成部材とネジ止めされるネジ穴が形成されていてもよい。
前記構成によれば、流路形成部材を金属製のヒートシンクのネジ穴にネジ止めすることで、別途金属部材を用いることなく、キャリッジも流路形成部材に対して安定して固定することが可能となる。
記ICチップは、前記液滴吐出ヘッドの両側に対応する位置に一対設けられており、前記各ICチップに対応するように配置された前記ヒートシンクは一体に形成されていてもよい。
前記構成によれば、一対のICチップに対応するヒートシンクが一体に形成されているので、2つのICチップの発熱量が互いに相違する場合に、発熱量の小さい方のICチップに対応配置されたヒートシンクの部位も、発熱量の大きい方のICチップの放熱に寄与し、全体としてヒートシンクの熱容量を上げることができる。
記液滴吐出ヘッドは、前記複数のノズルの各々に連通して設けられた複数の液体室を有する流路ユニットと、前記複数の液体室の体積を個別に変化させる複数の駆動部が形成されたアクチュエータとを有し、前記冷却液流路は、前記アクチュエータの近傍を通過した後に前記ICチップの近傍を通過するように配置されていてもよい。
前記構成によれば、冷却液がアクチュエータとICチップの両方を冷却する構成としても、冷却液がICチップからの受けた熱を液滴吐出ヘッドへと運ぶことを防止することができ、安定した吐出性能を維持することが可能となる。
前記ICチップが複数設けられており、前記冷却液流路は、前記各ICチップに対応して並列に分岐していてもよい。
前記構成によれば、複数のICチップを均等に冷却することができる。即ち、複数のICチップを冷却する冷却液流路を仮に直列に設けると、下流側のICチップは冷却効果が低下してしまうが、並列分岐させることで1つの冷却液流路でありながらも、各ICチップを均等に冷却することが可能となる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ヒートシンクが冷却液に直接触れるので、ヒートシンクがICチップから受けた熱が効率良く冷却液へと放熱される。かつ、冷却液流路の内面へICチップを投影したときの投影領域が、冷却液流路の内面へヒートシンクを投影したときの投影領域に包含されるようにヒートシンクが設けられているので、ICチップが小さくてもヒートシンクへと十分に熱伝達することができる。よって、装置が小型化されても放熱効率を向上することができる。さらに、ヒートシンクは、冷却液流路を画定する壁の一部を兼ねるように設けられているので、装置のコンパクト化にも貢献する。
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明ではインクジェットヘッドからインクを吐出する方向を下方とし、その反対側を上方とする。
図1は本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ1の要部を示す概略斜視図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1(液滴吐出装置)は、一対のガイドレール2,3が略平行に配設されており、そのガイドレール2,3にヘッドユニット4が走査方向にスライド可能に支持されている。ヘッドユニット4は、一対のプーリー5,6に巻き掛けられたタイミングベルト7に接合されており、タイミングベルト7はガイドレール3の延在方向と略平行に配設されている。一方のプーリー6には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリー6が正逆回転駆動されることでタイミングベルト7が往復移動し、ヘッドユニット4がガイドレール2,3に沿って一方向に往復走査される。
ヘッドユニット4には、4つのインクカートリッジ8(記録液供給源)からの4色のインク(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)を夫々供給する4本の可撓性を有するインク供給チューブ9(記録液供給管)が接続されている。ヘッドユニット4には、インクジェットヘッド33(図4参照)が搭載されており、その下方で走査方向と直角する方向(紙送り方向)に搬送される被記録体(例えば、記録用紙)に向けてインクジェットヘッド33からインク(記録液)が吐出される構成となっている。
また、ヘッドユニット4には、冷却液往路を形成するための可撓性を有する往路チューブ10と、冷却液復路を形成するための可撓性を有する復路チューブ11とが接続されており、往路チューブ10と復路チューブ11とはラジエータタンク12で連結されて互いに循環可能となっている。さらに、ヘッドユニット4には、ヘッドユニット4の流路内にトラップされたエアを抜き出すための可撓性を有する負圧吸引チューブ13の一端が接続されており、その負圧吸引チューブ13の他端は負圧ポンプ14に接続されている。
図2は図1に示すインクジェットプリンタ1のヘッドユニット4の斜視図である。図3は図1に示すインクジェットプリンタ1のヘッドユニット4の平面図である。図4は図1に示すインクジェットプリンタ1のヘッドユニット4の分解斜視図である。なお、図4では流路形成部材22の上面に溶着されるフィルムの図示が省略されている。図2乃至図4に示すように、ヘッドユニット4は、ジョイント20,21、流路形成部材22、逆止弁23〜25,ネジ26、気液分離膜27,29、フラットフィルム28、ダンパーフィルム30、弾性シール部材31、キャリッジ32及びインクジェットヘッド33を備えている。
インク用のジョイント20は、流路形成部材22の上面に取り付けられる基部20aと、基部20aからキャリッジ32の走査方向の一方側(図2中左側)に導出された4本のインク継手管部20b(記録液継手管)とを有している。インク継手管部20bには、インク供給チューブ9が接続されている。ジョイント20は硬質な樹脂(例えば、ポリプロピレン等)からなり、インク供給チューブ9は軟質な樹脂(例えば、ナイロン等)からなり、ジョイント20はインク供給チューブ9よりも硬度が大きくなっている。よって、インク供給チューブ9におけるインク継手管部20bとの接続部分付近は、キャリッジ32の走査方向の一方側(図2中左側)に導出された状態が保たれている。
冷却液用及び負圧吸引用のジョイント21は、流路形成部材22の上面に取り付けられる基部21aと、基部21aからキャリッジ32の走査方向の他方側(図2中右側)に導出された4本の継手管部21b,21c,21d,21eとを有している。4本の継手管部21b,21c,21d,21eのうち2本は、冷却液用の冷却液継手管部21b,21cであり、うち1本は負圧吸引用の負圧継手管部21dであり、残りの1本は不使用の継手管部21eである(部品共用化を図るべくジョイント21はジョイント20と同一構造であるため、使用しない継手管部21eが存在する)。
冷却液継手管部21bには往路チューブ10が接続され、冷却液継手管部21cには復路チューブ11が接続され、負圧用継手管部21dには負圧吸引チューブ13が接続されている。ジョイント21は硬質な樹脂(例えば、ポリプロピレン等)からなり、往路チューブ10、復路チューブ11及び負圧吸引チューブ13は軟質な樹脂(例えば、ナイロン等)からなり、ジョイント21は往路チューブ10、復路チューブ11及び負圧吸引チューブ13よりも硬度が大きくなっている。よって、往路チューブ10、復路チューブ11及び負圧吸引チューブ13における冷却液継手管部21b,21c,21dとの接続部分付近は、キャリッジ32の走査方向の他方側(図2中右側)に導出された状態が保たれている。
流路形成部材22は、略平板状であり、その上下面に複数の溝が形成されており、その溝を封止するように上下面にフィルムを熱溶着することで複数の流路が設けられている。具体的には、流路形成部材22には、紙送り方向の下流側かつ走査方向の他方側の上面に4つのインク流入口22aが設けられている。また、流路形成部材22には、紙送り方向の下流側かつ走査方向の一方側の上面に、冷却液流入口22b、冷却液流出口22c及び負圧吸引口22dが設けられている。そして、流路形成部材22には、インク流入口22aに連通するキャリッジ側インク流路42と、冷却液流入口22b及び冷却液流出口22cに連通する冷却液流路43と、負圧吸引口22dに連通するエア排出流路44とが設けられている。
さらに、冷却液流路43の途中には3つの逆止弁23〜25が配置されている。これら逆止弁23〜25は、冷却液流入口22bから冷却液流出口22cに向けた冷却液の流れを許容する一方、冷却液流出口22cから冷却液流入口22bに向けた冷却液の流れを阻止するものである。より具体的には、冷却液流入口22bから冷却液流出口22cに向けた冷却液の流れが流路形成部材22の下面から上面へ向かう箇所において、冷却液流路43に、下方側の小径流路と、前記小径流路の上方側に連続する大径流路とが設けられており、前記大径流路に止水フィルムが逆止弁23〜25として配置されている。前記逆止弁23〜25は、前記小径流路より大径で前記大径流路よりも小径であり、冷却液よりも比重が大きく浮動自在となっている。これにより、冷却液が冷却液流入口22bから冷却液流出口22cに向かうと逆止弁23〜25が浮いて前記小径流路と前記大径流路とを連通させる一方、冷却液が冷却液流出口22cから冷却液流入口22bに向かうと逆止弁23〜25が沈んで前記小径流路を塞ぐようになっている。また、流路形成部材22の所要箇所には、ネジ26を挿入する貫通孔22hが設けられている。
図5は図4に示すヘッドユニット4の流路形成部材22及びダンパーフィルム30の下方から見た斜視図である。図5に示すように、流路形成部材22の下面に形成された溝をフラットフィルム28で封止して各種流路が形成されている。流路形成部材22の下面には周状リブ22jが下方に向けて突出している。その周状リブ22jの内側には、マッチモールド法により立体的に熱間成形された可撓性を有する単層の薄膜樹脂からなるダンパーフィルム30が熱溶着されている。そして、流路形成部材22の下面とダンパーフィルム30との間で、インク流路の一部分でありインクの圧力変動を緩和する大インクダンパー室40及び小インクダンパー室41が形成されている。
図6は図5に示す流路形成部材22の下方から見た要部拡大斜視図である。図6に示すように、流路形成部材22の下面における周状リブ22jの内側には、ダンパーフィルム30が溶着される大周状隆起部22kが設けられており、その大周状隆起部22kは、4種類のインク毎に平面視で略長方形状の大インクダンパー室40(図5参照)を区画するように流路形成部材22の長手方向(紙送り方向)に並設されている。また、大周状隆起部22kに隣接して小周状隆起部22sが設けられており、4種類のインク毎に平面視で略長方形状の小インクダンパー室41(図5参照)を区画するように流路形成部材22の幅方向(走査方向)に並設されている。
流路形成部材22の下面における大周状隆起部22kの内側には、その長辺方向(走査方向)の両側に流入口22m及び流出口22nが形成されている。流入口22m及び流出口22nは、流路形成部材22の上面のキャリッジ側インク流路42と連通する孔である。流入口22mと流出口22nとの間には、ダンパーフィルム30の後述する大膨出部30b〜e内の大インクダンパー室40に向けて突出する突起部22p,22qが設けられている。これら突起部22p,22qは、後述する大膨出部30b〜eが大気圧中にある状態において大膨出部30b〜eと非接触となるように設けられている。突起部22pと突起部22qとの間には、気液分離膜29(半透膜)が取り付けられる膜取付部22rが平面視で略長方形状に凹設されている。気液分離膜29は、気体を透過させ、液体を透過させないものである。膜取付部22rに取り付けられた気液分離膜29は、後述する大膨出部30b〜eの開口30xに対向する。膜取付部22rには、流路形成部材22の上面のエア排出流路44と連通する孔22x(図9参照)が設けられている。
流路形成部材22の下面における小周状隆起部22sの内側には、その長辺方向(紙送り方向)の両側に流入口22t及び流出口22uが形成されている。流入口22t及び流出口22uは、流路形成部材22の上面のキャリッジ側インク流路42と連通する孔である。流路形成部材22の周状リブ22jには、その流出口22uに流路形成部材22の上面側で連通した4つのインク通路22j1が上下方向に形成されている。そして、流路形成部材22の上面には、インク通路22j1及び流出口22uに対応する位置を覆う気液分離膜27が取り付けられている。気液分離膜27は、気体を透過させ、液体を透過させないものである。
また、流路形成部材22の周状リブ22jの紙送り方向の下流側には、冷却液流路43からの冷却液が下方へ流れる冷却液通路22j2が形成されている。流路形成部材22の周状リブ22jの紙送り方向の奥側における走査方向の両側には、後述する冷却液ダンパー室49からの冷却液が上方へ流れる一対の冷却液通路22j3が形成されている。流路形成部材22の周状リブ22jの外側における冷却液通路22j3の近傍には、冷却液が下方に流れる一対の冷却液通路筒部22vが形成されている。流路形成部材22の周状リブ22jの外側における紙送り方向の下流側には、後述するICチップ冷却通路51からの冷却液が上方に流れる一対の冷却液通路筒部22wが形成されている。また、流路形成部材22の周状リブ22jには、内側の2つのインク通路22j1の間に、後述する冷却液ダンパー室49を気液分離膜27に連通させる冷却液通路22j4が上下方向に形成されている。
図7は図5に示すダンパーフィルム30の上方から見た斜視図である。図7に示すように、ダンパーフィルム30は、流路形成部材22の大周状隆起部22k及び小周状隆起部22s(図6参照)に接合される接合面30aと、接合面30aに形成されて大周状隆起部22k及び小周状隆起部22s(図6参照)より若干小さい略長方形状の開口30x,30yと、開口30x,30yの周縁から流路形成部材22(図5参照)から離反する重力方向に立体的に膨出する大膨出部30b〜e及び小膨出部30f〜iとを有している。よって、ダンパーフィルム30の接合面30aを流路形成部材22に接合して開口30x,30yを塞ぐことで、4つの大膨出部30b〜eの内部空間が4種類のインク流路の一部分である大インクダンパー室40を形成し、4つの小膨出部30f〜iの内部空間が4種類のインク流路の一部分である小インクダンパー室41を形成する。即ち、1種類のインクにつき上流側に大インクダンパー室40が配置され、下流側に小インクダンパー室41が配置され、1つのキャリッジ側インク流路42中にインクダンパー室40,41が複数配置されている。
大膨出部30b〜eは、開口30xの長辺の縁部から重力方向に突出して互いに対向する一対の主平面30j,30k,30q,30rと、開口30xの短辺の縁部から重力方向に突出して互いに対向する一対の副面30m,30n,30s,30tと、主平面30j,30k,30q,30rと副面30m,30n,30s,30tとを互いに接続する副面30p,30uとを有している。つまり、面積の大きい主平面30j,30k,30q,30rが撓んで大膨出部30b〜e内の空間に大きな容積変化が生じうるようにすることで、上方から見た平面視における大膨出部30b〜eの面積が小さくても大きな圧力変動吸収効果を得ることができるようになっている。
大膨出部30bと大膨出部30cとは、互いに重力方向の長さが異なるだけで略同一形状である。大膨出部30d及び大膨出部30eの副面30s,30tには、主平面30q,30rに直交する断面が谷状である谷部30v,30wが設けられている。また、大膨出部30d及び大膨出部30eの副面30uは、主平面30q,30rに直交する断面が山状である山部となっている。つまり、谷状又は山状の副面30s,30t,30uによる蛇腹効果で主平面30q,30rがその法線方向に移動しうるため、平面視における膨出部30d,30eの面積が小さくても、より大きな圧力変動吸収効果を得ることができるようになっている。また、小膨出部30f〜iは、大膨出部30b,30cよりも小さいだけで形状は略同一であるため詳細な説明は省略する。なお、谷部又は山部は、全ての大膨出部30b〜eの副面に設けてもよいし、全く設けなくてもよい。
再び図4に戻ると、弾性シール部材31は、ゴム等の弾性材からなり、平面視で略長方形状の平板部31aを有している。平板部31aの上面中央部分には、ダンパーフィルム30の大膨出部30b〜e及び小膨出部30f〜iに対応するように平面視で長方形状の凹部31bが形成されて薄肉となっている。平板部31aの走査方向の両側端面には、後述するICチップ37に向けて突出する押圧部31hが設けられている。
平板部31aの紙送り方向(長手方向)の上流側には、流路形成部材22の4つのインク通路22j1(図6参照)に液密的に連通する4つのインク孔31cが形成されている。平板部31aの紙送り方向の下流側には、流路形成部材22の冷却液通路22j2(図6参照)に液密的に連通する冷却液孔31dが形成されている。平板部31aのインク孔31cの走査方向の両側には、流路形成部材22の一対の冷却液通路22j3(図6参照)に液密的に連通する一対の冷却液孔31eが形成されている。平板部31aの4つのインク孔31cのうち内側の2つのインク孔の間には、流路形成部材22の冷却液通路22j4(図6参照)に液密的に連通する冷却液孔31fが形成されている。
平板部31aの走査方向の両側上方には、平板部31aと一体的に連続する棒状部31j,31kが平板部31aの長手方向に沿って延在している。棒状部31j,31kの下面には、後述するキャリッジ32の冷却液が流れる溝部32fに上方から圧入して封止する帯状突起部31m,31nが形成されている。棒状部31j,31kの紙送り方向の上流側には、流路形成部材22の一対の冷却液通路筒部22v(図6参照)に液密的に連通する一対の冷却液通路筒部31pが形成されている。棒状部31j,31kの紙送り方向の下流側には、流路形成部材22の一対の冷却液通路筒部22w(図6参照)に液密的に連通する一対の冷却液通路筒部31qが形成されている。以上のように、弾性シール部材31は、インク流路60(図13参照)を形成する壁の一部と冷却液流路61(図14参照)を形成する壁の一部とを兼ねており、インク流路60と冷却液流路61の両方を封止している。
キャリッジ32は、樹脂からなり、凹状部32aと、その凹状部32aの紙送り方向(長手方向)の両側上端からフランジ状に突出してガイドレール2,3(図1参照)に案内されるレールガイド部32bとを有している。レールガイド部32bには、ネジ26が締結されるネジ穴32hが設けられている。凹状部32aは、その底壁部32cの紙送り方向(長手方向)の上流側に、弾性シール部材31のインク孔31cと液密的に連通するインク孔32gが形成されている。凹状部32aの走査方向の両側は、外壁部32d及び内壁部32eを有する二重壁構造となっている。外壁部32dと内壁部32eとの間には、ICチップ冷却通路51となる溝部32fが形成されている。また、内壁部32e及びレールガイド部32bには、アルミニウム等の金属からなるヒートシンク45,46がインサート成形により埋設されている。さらに、内壁部32eよりも内側において底壁部32cには、流路形成部材22の周状リブ22jに対応する位置にシール台部32jが上方に突出している。そのシール台部32jと内壁部32eとの間には、後述するフレキシブルフラット配線材36の延出部36a,36bを下方から上方に挿通させるためのスリット部32kが底壁部32cに設けられている。
インクジェットヘッド33は、キャリッジ32の底壁部32cの下面に取り付けられている。インクジェットヘッド33は、インクを4つのインク流入口34aから多数のノズル(図示せず)まで導く複数のインク室を有する流路ユニット34と、その流路ユニット34の上面に積層されて流路ユニット34内のインクにノズルに向かう吐出圧力を選択的に付与する圧電駆動式のアクチュエータ35とを有している。流路ユニット34のインク流入口34aはフィルタ38で覆われている。インク流入口34aは、キャリッジ32のインク孔32gと液密的に連通している。
アクチュエータ35の上面には、フレキシブルフラット配線材36が接合されている。フレキシブルフラット配線材36は、アクチュエータ35の上面より走査方向の両側に向けて延出する一対の延出部36a,36bを有しており、一対の延出部36a,36bの下面側(一対の延出部36a,36bを上方に向けた状態では外面側)にアクチュエータ駆動用のICチップ37が設けられている。ICチップ37及びアクチュエータ35は、インクジェットヘッド33の吐出動作に伴って発熱する発熱体となる。
図8は図2のV−V線断面図である。図9は図2のVI−VI線断面図である。図8及び図9に示すように、弾性シール部材31の平板部31aが、流路形成部材22の周状リブ22jとキャリッジ32のシール台部32jとの間で挟持されている。そして、弾性シール部材31の下面と、キャリッジ32の底壁部32cの上面と、キャリッジ32のシール台部32jの内周面とで区画された空間に冷却液ダンパー室49が形成されている。この冷却液ダンパー室49は、冷却液流路43の一部をなし、インクジェットヘッド33のアクチュエータ35に対応する位置に設けられており、アクチュエータ35と底壁部32cを介して隣接している。即ち、冷却液ダンパー室49は、アクチュエータ35を冷却するアクチュエータ冷却通路を兼ねている。また、弾性シール部材31の平板部31aの上面と、ダンパーフィルム30の外面と、流路形成部材22の周状リブ22jの内周面とで区画された密封空間に空気層48が形成されている。
インクダンパー室40,41と冷却液ダンパー室49とは、ダンパーフィルム30の膨出部30b〜i、弾性シール部材31の平板部31a及び空気層48により仕切られている。即ち、膨出部30b〜i、平板部31a及び空気層48により、インクダンパー室40,41と冷却液ダンパー室49とが相互に圧力伝達可能とする圧力伝達手段50が形成されている。
図9に示すように、ダンパーフィルム30の膨出部30d内の大インクダンパー室40には、突起部22p,22qが膨出部30dと非接触状態で突出している。流入口22mから大インクダンパー室40に流入したインクは、突起部22pを避けるように迂回して大インクダンパー室40の中央部に流れる。この大インクダンパー室40の中央部にあるインクに含まれる気泡は、浮力で上昇し、気液分離膜29を介してエア排出流路44に導かれる。そして、この大インクダンパー室40の中央部にあるインクは、突起部22qを避けるように迂回して流出口22nへと流れる。
また、キャリッジ32の外壁部32dと内壁部32eとの間に形成された溝部32fには、弾性シール部材31の棒状部31jの帯状突起部31m,31nが上方から圧入され、ICチップ冷却通路51を形成している。このICチップ冷却通路51は、冷却液流路43及び冷却液ダンパー室49に連通している。ヒートシンク45は、ICチップ冷却通路51に露出するように内壁部32eにインサート成形されることで内壁部を兼ねている。つまり、ヒートシンク45は、内壁部32eの内面32p(ICチップ冷却通路51を画定する面)の一部を兼ねるようにICチップ冷却通路51に露出し、内壁部32eの外面32q側には露出していない。
キャリッジ32の内壁部32eと弾性シール部材31の平板部31aとの間には、フレキシブルフラット配線材36の延出部36a,36bが上方に向けて通過しており、ICチップ37が弾性シール部材31の押圧部31hにより内壁部32eに押し付けられている。つまり、ICチップ37は、キャリッジ32の内壁部32eのヒートシンク45を被覆する薄肉の樹脂部分である被覆部32mの外面32q側に当接している。また、ICチップ冷却通路51を画定する外壁部32dには、ヒートシンクは設けられておらず、ICチップ37の近傍を通過するICチップ冷却通路51の外壁部32dがキャリッジ32の最外壁となっている。
図10は図4に示すヘッドユニット4のヒートシンク45,46の斜視図である。図10に示すように、ヒートシンク45,46は、金属板をプレス加工したものである。ヒートシンク45は、キャリッジ32の一方のレールガイド部32b(図4参照)に埋設された平面視矩形状の鍔部45aと、鍔部45aの長辺側の端縁部の中央部分から下方に折り曲げられた垂直部45bと、垂直部45bの下端に連続してキャリッジ32の壁の一部を兼ねる垂直幅広部45cと、垂直幅広部45cの両端からキャリッジ32の各内壁部32e(図4参照)に沿って延出する受熱部45d,45eとを有している。即ち、ヒートシンク45の受熱部45d,45eが、ICチップ冷却通路51に露出するようにキャリッジ32の内壁部32e(図4参照)に埋設されている。そして、一対のICチップ37(図4参照)のうち一方に対応する受熱部45dと、他方に対応する受熱部45eとが、1つのヒートシンク45として一体に形成された状態となっている。
また、ヒートシンク45の鍔部45aには、キャリッジ32のネジ穴32hと合致するネジ穴45fが形成されている。つまり、ネジ26は、流路形成部材22のネジ穴22hと、キャリッジ32のネジ穴32hと、ヒートシンク45のネジ穴45fに挿通して互いを締結している。ヒートシンク46は、キャリッジ32の他方のレールガイド部32b(図4参照)に埋設された平面視矩形状の鍔部46aと、鍔部45aの長辺側の端縁部から下方に折り曲げられた垂直部45bとを有しており、その鍔部46aにはキャリッジ32のネジ穴32hと合致するネジ穴46cが形成されている。
図11は図9のXI矢視方向から見たヒートシンク45,46及びICチップ37に注目した図面である。図11の符号Xで表したハッチング領域は、ICチップ冷却通路51を画定する内壁部32eの内面32p(図9参照)へICチップ37を投影したときの投影領域である。図11の符号Yで表したハッチング領域は、ICチップ冷却通路51を画定する内壁部32eの内面32p(図9参照)へヒートシンク45の受熱部45dを投影したときの投影領域である。なお、投影の方向は、ICチップ37と内壁部32eの内面32pとを最短距離で結ぶラインに沿った方向であり、該ラインを法線とする面が投影面となっている。図11に示すように、ICチップ37の投影領域Xは、ヒートシンク45の受熱部45dの投影領域Yに包含されている。こうすることで、ICチップ37から放たれる熱がヒートシンク45の受熱部45dへと十分に熱伝達されるようになっている。
図12は図4に示すインクジェットヘッド33の要部断面図である。図12に示すように、インクジェットヘッド33は、前述したように流路ユニット34とアクチュエータ35とが積層接着されている。流路ユニット34は、内部にインク流路を構成する開口を有する複数のプレート74〜78が積層接着された構成となっている。最下層のプレート78には、複数のノズル84が下方に向けて開口して列状に配置されている。最上層のプレート74には、複数の圧力室82(液体室)が形成され、複数のノズル84に対応して列状に配置されている。圧力室82の一端部にはノズル84と連通する流出路83が設けられており、圧力室82の他端部には共通液室80に連通する接続流路81が設けられている。共通液室80は、複数の圧力室82に平面視で連続して重なるようにインク色ごとに走査方向に直交する列方向に延在配置されている。共通液室80には、流路ユニット34の上面に開口するインク流入口34a(図4参照)を通してインクが供給される。
アクチュエータ35は、PZT等からなる複数のシート状の圧電体70が積層されており、圧力室82を覆うように配置されている。各圧電体70のうち、下から偶数段目の圧電体70の上面には、圧力室82に対応した箇所に個別電極71が設けられており、下から奇数段目の圧電体70の上面には、複数の圧力室82に対応して連続して形成された共通電極72が設けられている。つまり、個別電極71と共通電極72とは、最下層及び最上層の圧電体を除いて1層の圧電体70を挟むように対向配置されており、この個別電極71と共通電極72とで挟まれた領域がそれぞれ駆動部となっている。そして、フレキシブルフラット配線材36(図4参照)を介してICチップ37(図4参照)によりアクチュエータ35の個別電極71と共通電極72との間に電圧を印加することにより、圧電体70の所要箇所を積層方向に歪ませて所要の圧力室82の容積を変化させ、インクをノズル84から吐出させる構成となっている。
図13は図4に示すヘッドユニット4に形成された4つのキャリッジ側インク流路42のうち1つを表した斜視図である。図2及び図13に示すように、キャリッジ側インク流路42は、ヘッドユニット4から走査方向の一方側に導出された導出部54を有している。この導出部54は、ジョイント20のインク継手管部20bの内部流路と、インク供給チューブ9のインク継手管部20bに接続された部分付近の内部流路とで形成されている。なお、インクカートリッジ8からインクジェットヘッド33までのインク流路60(記録液流路)は、インク供給チューブ9内の流路及びキャリッジ側インク流路42により構成されている。
図14は図4に示すヘッドユニット4に形成された冷却液流路44の斜視図である。図2、図4及び図14に示すように、キャリッジ32上の冷却液流路43は、冷却液流入口22bに接続された冷却液往路55と、冷却液流出口22cに接続された冷却液復路56とに連通している。冷却液往路55は、ジョイント21の冷却液継手管部21bの内部流路と、往路チューブ10の内部流路とで形成されている。冷却液復路56は、ジョイント21の冷却液継手管部21cの内部流路と、復路チューブ11の内部流路とで形成されている。
冷却液復路56の内径は、冷却液往路55の内径よりも大とすることで、冷却液復路56の流路抵抗が冷却液往路55の流路抵抗よりも小となっている。また、往路チューブ10及び復路チューブ11の内径はインク供給チューブ9の内径よりも大であり、往路チューブ10及び復路チューブ11の硬度は、インク供給チューブ9の硬度よりも小となっている。
そして、冷却液往路55及び冷却液復路56は、ヘッドユニット4から走査方向の他方側に導出された導出部57,58を有している。この導出部57,58は、ジョイント21の冷却液継手管部21b,21cの内部流路と、往路チューブ10及び復路チューブ11の冷却液継手管部21b,21cに接続された部分付近の内部流路とで形成されている。冷却液ダンパー室49の上流側で且つ導出部57の下流側には逆止弁23が設けられており、冷却液ダンパー室49の下流側で且つ導出部58の上流側には逆止弁24,25が設けられている。また、冷却液流路43は、一対のICチップ37(図9参照)に対応するICチップ冷却通路51を冷却液ダンパー室49から並列に分岐している。なお、ラジエータタンク12内の流路、往路チューブ10内の流路、ジョイント21内の流路、冷却液流路43、復路チューブ11内の流路により冷却液循環流路61が形成されている。
図15は図14に示す冷却液流路43とICチップ37及びアクチュエータ35との位置関係を説明する斜視図である。図15に示すように、冷却液流路43の冷却液ダンパー室49は、インクジェットヘッド33のアクチュエータ35の近傍である上方に配置されている。また、冷却液流路43の並列した各ICチップ冷却通路51は、フレキシブルフラット配線材36の延出部36aに設けられたICチップ37の近傍である側方にそれぞれ配置されている。よって、冷却液流路43を流れる冷却液は、インクジェットヘッド33のアクチュエータ35の近傍を通過した後に、ICチップ37の近傍を通過するようになっている。
図16は図2に示すヘッドユニット4の右端(他端)におけるターン時を表した模式図である。図16に示すように、ヘッドユニット4が走査方向の右端でターンするとき、ヘッドユニット4が所定の減速度で減速されて右端で停止状態となった後、所定の加速度で加速しながら右方に移動していく。従って、キャリッジ側インク流路42の導出部54にあるインクの慣性力によりキャリッジ側インク流路42に正圧が加わる一方、冷却液復路56の導出部58の冷却液の慣性力により冷却液流路43には負圧が加わる。つまり、冷却液流路43からの冷却液は、逆止弁23により冷却液往路55には逆流しないものの、逆止弁24,25を通過して冷却液復路56へと流出し、冷却液流路43に負圧が生じる。そして、冷却液往路55の導出部57の冷却液にかかる走査方向の右方向への慣性力が無くなると、冷却液流路43の前記負圧により、冷却液往路55の冷却液が逆止弁23を通過して冷却液流路43へと流入する。
図17は図2に示すヘッドユニット4の左端におけるターン時を表した模式図である。図17に示すように、ヘッドユニット4が走査方向の左端でターンするとき、キャリッジ側インク流路42の導出部54にあるインクの慣性力によりキャリッジ側インク流路42に負圧が加わる一方、冷却液往路55の導出部57の冷却液の慣性力により冷却液流路43には正圧が加わる。つまり、冷却液往路55からの冷却液は、逆止弁23を通過して冷却液流路43へと流入するが、冷却液流路43からの冷却液は、逆止弁24,25により冷却液復路56には流出せず、冷却液流路43の正圧が増加する。そして、冷却液復路56の導出部58の冷却液にかかる走査方向の左方向への慣性力が無くなると、冷却液流路43の前記正圧により、冷却液流路43の冷却液が逆止弁24,25を通過して冷却液復路56へと流出する。即ち、冷却液は、電動のポンプ等を使用することなく、ヘッドユニット4の往復移動により冷却液にかかる慣性力を利用して循環するようになっている。
以上に説明した構成によれば、ヒートシンク45が冷却液に直接触れるので、ヒートシンク45がICチップ37などから受けた熱は効率良く冷却液へと放熱される。かつ、ICチップ冷却通路51の内面32pへICチップ37を投影したときの投影領域Xが、ICチップ冷却通路51の内面32pへヒートシンク45を投影したときの投影領域Yに包含されるようにヒートシンク45が設けられているので、ICチップ37が小さくてもヒートシンク45へと十分に熱伝達することができる。よって、装置が小型化されても放熱効率を向上することができる。さらに、ヒートシンク45は、ICチップ冷却通路51を画定する内壁部32eの一部を兼ねるように設けられているので、装置のコンパクト化にも貢献する。
また、ヒートシンク45,46は予めキャリッジ32にインサート成形されているので、装置組立時にヒートシンク45,46をキャリッジ32に組み付けずに済み、組立作業性が向上する。また、金属製のヒートシンク45,46がインサートされていることで、樹脂製のキャリッジ32の剛性が高まるので、キャリッジ32の肉厚を薄くしてコンパクト化を図ることもできる。
また、ICチップ37と金属製のヒートシンク45との間には、ヒートシンク45を樹脂製のキャリッジ32の被覆部32が介在することとなるので、ICチップ37の損傷を防ぐことができる。さらに、ICチップ冷却通路51の外壁部32dにはヒートシンクが設けられておらず、その外壁部32dがキャリッジ32の最外壁となっているので、外壁部からも大気中に放熱され、キャリッジ32内部に熱がこもるのを抑制することができる。
また、ICチップ37は、弾性シール部材31によりヒートシンク45の受熱部45d,45e側に向けて付勢されているので、ICチップ37からの熱を安定的にヒートシンク45に伝達することができる。かつ、弾性シール部材31がICチップ37を付勢する部材を兼ねているので、部品点数および組立工数の増大を抑制することもできる。さらに、弾性シール部材31は、インク流路60を形成する壁と冷却液流路61を形成する壁との両方を兼ねているので、部品点数および組立工数の増大を抑制することができる。
また、一対のICチップ37にそれぞれ対応する受熱部37d,37eが1つのヒートシンク45で一体に形成されているので、各ICチップ37の発熱量が互いに相違する場合に、発熱量の小さい方のICチップ37に対応配置されたヒートシンク45の部位も、発熱量の大きい方のICチップ37の放熱に寄与し、全体としてヒートシンク45の熱容量を上げることができる。
また、冷却液流路61は、アクチュエータ35の近傍を通過した後に、ICチップ37の近傍を通過するように配置されているので、冷却液がICチップ37からの受けた熱をインクジェットヘッド33側へと運ぶことを防止することができ、安定した吐出性能を維持することが可能となる。さらに、冷却液流路61は、各ICチップ37に対応して並列に分岐しているので、各ICチップ37を均等に冷却することができる。
なお、前述した実施形態は本発明をインクジェットプリンタに適用したものであるが、インク以外の液体、例えば着色液を吐出して液晶表示装置のカラーフィルタを製造する装置、導電液を吐出して電気配線を形成する装置などに使用する液滴吐出装置に適用してもよい。
以上のように、本発明に係る液滴吐出装置は、装置が小型化されても放熱効率を向上することができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できるインクジェットプリンタ等に広く適用すると有益である。
本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部を示す概略斜視図である。 図1に示すインクジェットプリンタのヘッドユニットの平面図である。 図1に示すインクジェットプリンタのヘッドユニットの斜視図である。 図1に示すインクジェットプリンタのヘッドユニットの分解斜視図である。 図4に示すヘッドユニットの流路形成部材及びダンパーフィルムの下方から見た斜視図である。 図5に示す流路形成部材の下方から見た要部拡大斜視図である。 図5に示すダンパーフィルムの上方から見た斜視図である。 図2のV−V線断面図である。 図2のVI−VI線断面図である。 図4に示すヘッドユニットのヒートシンクの斜視図である。 図9のXI矢視方向から見たヒートシンク及びICチップに注目した図面である。 図4に示すインクジェットヘッドの要部断面図である。 図4に示すヘッドユニットに形成された4つのインク流路のうち1つを表した斜視図である。 図4に示すヘッドユニットに形成された冷却液流路の斜視図である。 図14に示す冷却液流路とICチップ及びアクチュエータとの位置関係を説明する斜視図である。 図2に示すヘッドユニットの右端におけるターン時を表した模式図である。 図2に示すヘッドユニットの左端におけるターン時を表した模式図である。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)
8 インクカートリッジ(記録液供給源)
22 流路形成部材
32 キャリッジ
32d 外壁部
32e 内壁部
32p 内面
32q 外面
33 インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
34 流路ユニット
35 アクチュエータ(発熱体)
37 ICチップ(発熱体)
42 キャリッジ側インク流路(記録液流路)
43 冷却液流路
45,46 ヒートシンク
45f,46c ネジ穴
X,Y 投影領域

Claims (10)

  1. 被記録体に対して走査されるキャリッジに液滴吐出ヘッドが設けられ、記録液供給源からの記録液が前記キャリッジ上の記録液流路を介して液滴吐出ヘッドに供給される液滴吐出装置であって、
    前記液滴吐出ヘッドに接続されたフレキシブルフラット配線材と、
    前記フレキシブルフラット配線材に設けられ、前記液滴吐出ヘッドを駆動するICチップと、
    前記キャリッジ上に設けられ、前記ICチップの近傍を通過する冷却液流路と、
    前記ICチップと前記冷却液流路との間に介設され、前記冷却液流路を画定する壁の内面の一部を兼ねるように前記冷却液流路に少なくとも一部が露出したヒートシンクと
    前記ヒートシンクに向けて前記ICチップを付勢する弾性部材と、を備え、
    前記内面へ前記ICチップを投影したときの投影領域が、前記内面へ前記ヒートシンクを投影したときの投影領域に包含され
    前記キャリッジの内側から外側に向けて、前記弾性部材、前記ICチップ、前記ヒートシンク及び前記冷却液流路がこの順番で並んで配置されていることを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 前記キャリッジは樹脂からなり、前記ヒートシンクは金属からなり、
    前記ヒートシンクは、前記キャリッジにインサート成形されている請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記ヒートシンクは、前記冷却液流路を画定する壁の外面側には露出せずに前記内面側に露出しており、
    前記ICチップは、前記冷却液流路を画定する壁の前記外面に接触している請求項2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記冷却液流路を画定する壁のうち、前記キャリッジの内部側にある内壁部に前記ヒートシンクが設けられ、前記キャリッジの外部側にある外壁部には前記ヒートシンクは設けられておらず、
    前記冷却液流路の前記ICチップに対応する位置では、前記外壁部が前記キャリッジの最外壁となっている請求項1乃至3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  5. 前記弾性部材は、前記記録液流路及び前記冷却液流路を封止している請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  6. 記弾性部材は、前記記録液流路を形成する壁の一部と前記冷却液流路を形成する壁の一部とを兼ねている請求項1乃至のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  7. 前記キャリッジ上に設けられる流路形成部材をさらに備え、
    前記ヒートシンクには、前記流路形成部材とネジ止めされるネジ穴が形成されている請求項1乃至6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  8. 記ICチップは、前記液滴吐出ヘッドの両側に対応する位置に一対設けられており、
    前記各ICチップに対応するように配置された前記ヒートシンクは一体に形成されている請求項1乃至7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  9. 記液滴吐出ヘッドは、前記複数のノズルの各々に連通して設けられた複数の液体室を有する流路ユニットと、前記複数の液体室の体積を個別に変化させる複数の駆動部が形成されたアクチュエータとを有し、
    前記冷却液流路は、前記アクチュエータの近傍を通過した後に前記ICチップの近傍を通過するように配置されている請求項1乃至8のいずれかに記載の液滴吐出装置。
  10. 前記ICチップが複数設けられており、
    前記冷却液流路は、前記各ICチップに対応して並列に分岐している請求項1乃至9のいずれかに記載の液滴吐出装置。
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