JP2004223878A - 液体吐出ヘッド及び液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液室内に供給された液体を基板部材の発熱抵抗素子で加熱して液体吐出ノズルから吐出する液体吐出ヘッドにおいて、流路形成部材の熱膨張変形を抑制する。
【解決手段】インク室9の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズル10が設けられたノズル部材2と、上記インク室9の他方の端面を構成すると共に該インク室9内のインクを吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材3と、上記複数個の基板部材3に接着して固定されると共に構造隔壁としてのヘッドフレーム4に接着して固定され上記インク室9内にインクを供給する流路を形成する流路形成部材5と、を備えたプリントヘッド1において、上記流路形成部材5を接着して固定する手段(22,23)は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤である。
【選択図】 図2
【解決手段】インク室9の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズル10が設けられたノズル部材2と、上記インク室9の他方の端面を構成すると共に該インク室9内のインクを吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材3と、上記複数個の基板部材3に接着して固定されると共に構造隔壁としてのヘッドフレーム4に接着して固定され上記インク室9内にインクを供給する流路を形成する流路形成部材5と、を備えたプリントヘッド1において、上記流路形成部材5を接着して固定する手段(22,23)は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液室内に供給された液体を発熱抵抗素子で加熱して液体吐出ノズルから吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関し、特に、上記発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することによって、上記液室内に液体を供給する流路となる流路形成部材の熱膨張変形を低減することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、液室内に供給された液体を発熱抵抗素子で加熱して該液体を液体吐出ノズルから吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置の一例として、インクジェット方式の記録装置が知られている。インクジェット方式の記録装置、例えばインクジェットプリンタは、プリントヘッドのインク吐出ノズルからインク滴を吐出してプリント画像を形成するもので、そのようなプリントヘッドとして、例えば金属板やガラス板等から成る基板上に切削又はエッチング等を施してインク流路となる微細な溝を形成し、このインク流路が形成された基板と、該基板の上面を覆う板状の蓋部材とを接着して形成されたものがあった。
【0003】
また、前記プリントヘッドの他の例として、インクを吐出させるための発熱抵抗素子が形成された基板上にフォトレジストを塗布し、所定のパターニング露光を施してフォトレジストを硬化し、インク吐出ノズルとなる微細な溝を形成し、その上面に平板状の蓋部材を接着して形成されたものがあった。そして、この硬化したフォトレジスト上に平板状の蓋部材を接着する方法として、一般的には接着剤が用いられていた。具体的には、例えばガラス、セラミック、金属、プラスチック等から成る蓋部材にエポキシ樹脂系の接着剤をスピンコートして予備加熱し、該蓋部材を硬化したフォトレジスト上に貼り合わせて接着剤を本硬化して、両者を接着するようになっていた。また、前記硬化したフォトレジスト上に蓋部材を接着する他の方法として、例えばアクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂から成る蓋部材を、接着剤を使わずに硬化したフォトレジスト上に直接熱融着するものもあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、複数個の発熱抵抗体が配列された基板と、該基板から発生する熱を逃がしうる支持体とを備え、該基板は該支持体上に接着剤で固定されたインクジェット記録ヘッドであって、前記接着剤は、シリコーン、ウレタン、ポリイミドまたはエポキシ系接着剤に金属粒子を分散させてなるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭57−43876号公報 (第3頁、第5図)
【特許文献2】
特開平8−132617号公報 (第2〜4頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載された技術は、印画領域の幅よりも小さいプリントヘッドを幅方向に往復移動しながら該プリントヘッドに設けられたインク吐出ノズルからインク滴を吐出してプリント画像を形成するシリアル型のヘッドに適用されたものであって、多数個のインク吐出ノズルが記録媒体の全幅に対応して配列されたライン型のものに適用することは困難であった。すなわち、このライン型のヘッドは、シリアル型のものに対し数倍の長さのインク流路を有しているため、該インク流路を構成する流路形成部材はそれに応じて長く形成されており、またインク吐出手段としての発熱抵抗素子の個数も多い。これにより、ライン型ヘッドのインク吐出ノズルからインクを吐出させるために多数個の発熱抵抗素子が発熱したとき、各発熱抵抗素子から放出された熱によって流路形成部材が加熱され熱膨張変形して反ったり、あるいは歪んだりすることがある。この場合、上記流路形成部材とそれに接着された部材との線膨張係数の違いによって応力が発生し、この応力によって例えば流路形成部材と基板部材との接着面が剥離し、インク漏れなどの不具合が発生する虞がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された技術は、上記基板と支持体とを接着する接着剤によって該基板で発生した熱を支持体に伝え易くして、基板内の温度上昇を抑えてインクの温度上昇を低減しようとするものであって、該支持体に伝わった熱をさらに外部に伝導しようとする手段は備えていない。したがって、上記特許文献2に記載された技術をライン型のヘッドに適用したとしても、インク流路となる流路形成部材が熱膨張変形することを低減することはできず、流路形成部材とヘッドチップとの接着面が剥離し、インク漏れなどの不具合が発生する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、液室内に供給された液体を加熱する発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に放熱することによって、上記液室内に液体を供給する流路となる流路形成部材の熱膨張変形を低減することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材を接着して固定する手段は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤である。
【0010】
このような構成により、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0011】
また、本発明による他の液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0012】
このような構成により、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明による更に他の液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0014】
このような構成により、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0015】
また、本発明による液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備えたものである。
【0016】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0017】
また、本発明による他の液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0018】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0019】
さらに、本発明による更に他の液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0020】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による液体吐出ヘッドの一例としてのプリントヘッドの実施形態を示す横断面図であり、図2は図1に示すプリントヘッドに備えられた1色分のラインヘッドを示す要部拡大図である。このプリントヘッド1は、複数のインク吐出ノズルがその底面の長手方向(紙面の垂直方向)にて記録媒体の全幅に対応して設けられたライン型のもので、ノズル部材2と、ヒータチップ(基板部材)3と、ヘッドフレーム(フレーム部材)4と、流路形成部材5と、端子部材6と、プリント基板7と、インクタンク8(8y,8m,8c,8k)とを備えて成る。
【0022】
図1に示すように、ノズル部材2はプリントヘッド1の底面部に設けられている。このノズル部材2は、図2に示すように、吐出すべきインク(インク)を収容するインク室(液室)9の下端面を構成するものであって、薄いシート状の部材でできており、この部材の所定位置に上記インク室9内に収容されたインクを吐出するためのインク吐出ノズル(液体吐出ノズル)10が紙面の垂直方向に整列して設けられている。なお、このプリントヘッド1はカラー印画用のもので、上記ノズル部材2には、後述する4色のインクタンク8に対応して4グループのインク吐出ノズル10の列が紙面の垂直方向に設けられている。
【0023】
このノズル部材2の上面側にてインク吐出ノズル10が配列された方向、すなわち4グループのインク吐出ノズル10の列(紙面の垂直方向)に沿って、複数個のヒータチップ3が配設されている。このヒータチップ3は、図2に示すように、インク室9の上端面を構成するものであって、シリコン基板でできており、該インク室9内に収容されたインクを加熱して吐出する発熱抵抗素子が形成されている。具体的には、図3に示すように、インク室9内に収容されたインクに気泡を発生させて吐出する発熱抵抗素子11が、上記ノズル部材2に設けられたインク吐出ノズル10に対応して形成されている。なお、図示省略したが、このヒータチップ3は後述する流路形成部材5の下方両側にて左右互い違いに配設される。
【0024】
また、図3において、ノズル部材2とヒータチップ3の間には、バリア層12が設けられている。このバリア層12は、インク室9の側壁を構成するもので、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストから成り、フォトリソプロセスによって不要な部分が除去されることによって形成されている。これにより、図3に示すインク室9は、発熱抵抗素子11を囲むように、ノズル部材2と、ヒータチップ3と、バリア層12とから構成される。そして、図3において、右側前方面にインク室9の開口部を有し、この開口部と後述する流路形成部材5とが連通してインクが供給されるようになっている。
【0025】
そして、この発熱抵抗素子11に短時間、例えば1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、該発熱抵抗素子11が急速に加熱され、その結果、インク室9内に収容されたインクに気泡が発生し、そのインクの気泡の膨張によって所定の体積のインクが押し出される。これにより、この押し出されたインクと同等の体積のインクがインク吐出ノズル10からインク滴13として吐出するようになっている。なお、図2に示すように、4グループの列状に配列されたインク吐出ノズル10に対応して左右互い違いに配置された複数個のヒータチップ3の間の隙間には、該ヒータチップ3と同じ高さを有する複数個のダミーチップ14が配設されている(図2では、ヒータチップ3に対向配置されたダミーチップ14だけが表示されている)。
【0026】
また、図1に示すノズル部材2の上面には、ヘッドフレーム4が接着されている。このヘッドフレーム4は、上記ノズル部材2を支持して補強すると共に構造隔壁となるものであって、例えばセラミックなどの耐熱性、耐食性に優れた絶縁材料でできており、上記ヒータチップ3及びダミーチップ14の配設方向に沿ってフレーム部4aが形成され、各フレーム部4aの間には後述する流路形成部材5が配設されるようになっている。
【0027】
さらに、図1及び図2に示すように、ヒータチップ3及びダミーチップ14の上面にてヘッドフレーム4の間には流路形成部材5が配設されている。この流路形成部材5は、後述するインクタンク8から図3に示すインク室9内にインクを供給する流路を形成するものであって、上記ノズル部材2の液体吐出ノズル10に対応して形成された複数個のヒータチップ3及びダミーチップ14に接着剤22で接着して固定されると共に、該ノズル部材2を支持するヘッドフレーム14に接着剤23で接着して固定されている。この流路形成部材5は、インクに対して耐食性をする金属製の部材でできており、上記インク吐出ノズル10の配列方向(紙面の垂直方向)に沿って長く形成され、図2に示すように、その断面形状が下方に凹状に形成されている。そして、この凹状に形成されたインク流路15がインク室9の開口部(図3参照)に連通されるようになっている。また、流路形成部材5の上部にはインク供給管16が設けられており、このインク供給管16は後述するインクタンク8内に貯留されたインクをインク流路15内に供給するようになっている。
【0028】
また、図1に示すように、上記ヘッドフレーム4の下面に配設された各ヒータチップ3側にて該ヘッドフレーム4と流路形成部材5との間には、端子部材6がそれぞれ配設されている。この端子部材6は、複数個のヒータチップ3と後述するプリント基板7とを電気的に接続するものであって、図2に示すように、導電部材から成るコネクターピン17が介装されている。さらに、図1に示すように、上記ヘッドフレーム4及び流路形成部材5の上面にはプリント基板7が載置されており、該プリント基板7はゴム系の接着剤26によってヘッドフレーム4に接着して固着されている。このプリント基板7は、ヒータチップ3の発熱抵抗素子11(図3参照)を駆動する信号を中継する配線部となるもので、図1に示すように、電線相互を接続するための電気部品18及びフレキシブル基板19を介して図示省略のプリンタ本体から駆動信号を入力するようになっている。
【0029】
さらにまた、図2に示すように、端子部材6に介装されたコネクターピン17の上端部位とプリント基板7とは電気的に接続されており、またコネクターピン17の下端部位とヒータチップ3とは金線20によってワイヤボンディングされている。これにより、図示省略のプリンタ本体の電気回路からの駆動信号は、コネクターピン17及び金線20を介してヒータチップ3に入力し、図3に示す発熱抵抗素子11が発熱するようになっており、インク室9内のインクをインク吐出ノズル10からインク滴13として吐出するようになっている。なお、図2に示すように、金線20は封止剤21で封止されて保護されている。
【0030】
そして、上記プリント基板7の上部には、インクタンク8が設けられている。このインクタンク8は、例えば水系のインクを貯留するものであって、図1に示すように、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの4色のインクタンク8y,8m,8c,8kから成る。そして、各色のインクタンク8y,8m,8c,8kの底部には、上記インク供給管16が設けられており、該インク供給管16がプリント基板7を貫通して上記流路形成部材5のインク流路15にインクを供給するようになっている。
【0031】
ここで、本発明において、上記流路形成部材5を接着して固定する手段は、充填剤として熱伝導体が含有された接着剤とされている。具体的には、図2に示す流路形成部材5を複数個のヒータチップ3及びダミーチップ14に接着して固定する接着剤22は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出された熱を流路形成部材5に伝導するものであって、熱伝導体を充填剤(フィラー)として含有している。この接着剤22は例えばシリコーン系の接着剤であり、該接着剤22に含有される充填剤は、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質である。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を流路形成部材5に効率的に伝導することができる。この接着剤22は、インクが漏れないように密閉するシール部材として機能し、硬化した後にゴム状の弾性体となってインクの漏れを防止するようになっている。なお、上記ヒータチップ3と流路形成部材5とを接着する接着剤22として、例えばGE東芝シリコーン社製のTSE3941Mという商品名のシリコーン系の接着剤が用いられている。
【0032】
また、図2に示す流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤23は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導した熱をヘッドフレーム4に伝導するものであって、上記接着剤22と同様に、充填剤となる熱伝導体として、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質が添加されている。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に効率的に伝導することができる。そして、この接着剤23は、図4に示すように、ヘッドフレーム4に配設された流路形成部材5の長手方向にて左右互い違いに配設された端子部材6の間にて該ヘッドフレーム4と流路形成部材5とを接着して固定している。
【0033】
なお、この接着剤23は、上記接着剤22と同じものに限られず、硬化時間や粘度などの仕様に応じて他の種類のものでもよい。例えば、シール性、接着性、コーティング性や耐薬品性、電気特性などに優れた紫外線硬化樹脂でもよい。これにより、例えば200〜400nmの紫外線を照射すると秒単位で硬化するため、製造工程を自動化、スピード化し、良好な作業環境の保持を図ることができる。
【0034】
図5は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤の他の塗布状態を説明する平面図である。この実施形態は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定するために必要な最少量の接着剤24を用いて互いが固定されており、該流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着面にて接着剤24が塗布されていない部位に、熱伝導体を含有しているグリース25が塗布されたものである。このグリース25は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導した熱をヘッドフレーム4に伝導するものであって、充填剤となる熱伝導体として、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質が添加されており、上記接着剤24よりも高い熱伝導率を有している。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に、より効率的に伝導することができる。
【0035】
図6は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤のさらに他の塗布状態を説明する平面図である。この実施形態は、上記流路形成部材5を接着して固定する手段は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤23であり、該流路形成部材5をフレーム部材4に接着して固定する接着面にて接着剤23が塗布されていない部位に熱伝導体を含有しているグリース25が塗布されたものである。ここで、上記接着剤23は、図4に示して説明したものと同様のものであり、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定するために必要な最少量が用いられている。また、グリース25は、図5に示して説明したものと同様である。これにより、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に、さらに効率的に伝導することができる。
【0036】
次に、このように構成されたプリントヘッド1の動作について説明する。
図1において、プリントヘッド1は、インク吐出前には、各色のインクタンク8y,8m,8c,8kに貯留したインクがインク供給管16を通って対応する流路形成部材5のインク流路15に供給され、インク吐出ノズル10に対応して設けられたインク室9(図3参照)がインクで満たされた状態にある。
【0037】
このような状態において、図示省略のプリンタ本体から駆動信号となる印画信号が入力されると、該印画信号が電線相互を接続するための電気部品18及びフレキシブル基板19を介してプリント基板7に伝えられる。さらに、この印画信号は、図2に示すように、端子部材6に介装されたコネクターピン17及び金線20を介して所定のヒータチップ3に供給され、所定の発熱抵抗素子11(図3参照)を駆動する。これにより、この発熱抵抗素子11は1〜3μ秒の短時間の通電によって約400℃程度に発熱し、該発熱抵抗素子11の表面に気泡を発生させ、それと同等の体積のインク滴13をインク吐出ノズル10から吐出する(図3参照)。
【0038】
また、上記発熱抵抗素子11が形成されたヒータチップ3の上面に接着して固定された流路形成部材5は、放熱板としての機能も兼ねており、1回のインク吐出が終わるごとに発熱抵抗素子11を急速に冷却して気泡を消滅させ、次のインク吐出ができるようになっている。ここで、図3に示すインク吐出ノズル10からインク滴13が吐出されると、図2に示すインクタンク6のインクがインク流路15を通ってインク室9に補充される。このようにして、記録紙を一定速度で送りながら、印画信号に応じて所定の発熱抵抗素子11を発熱させてインク室9内のインクを加熱し、各インク吐出ノズル10から4色のインクを吐出させて記録紙上にプリント画像が形成される。
【0039】
上述したように、本発明のプリントヘッド1によれば、例えば図6に示すように、上記流路形成部材5を固定する手段として用いられる接着剤(22,23)は、熱伝導体を充填剤として含有しており、また流路形成部材5とヘッドフレーム4との接着面にて接着剤23が塗布されていない部位には熱伝導体を充填剤として含有したグリース25が塗布されている。このため、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出された熱は流路形成部材5に伝導し、該流路形成部材5に伝導された熱はヘッドフレーム4に伝導して放熱することができる。これにより、放熱板としての機能も兼ねた流路形成部材5の熱容量より、上記発熱抵抗素子11から放出された熱量が多くなった場合にも、その熱を効率的に放熱することができ、流路形成部材5が急激に温度上昇するのを抑制して、その熱膨張変形を低減することができる。したがって、流路形成部材5とヒータチップ3又はヘッドフレーム4との線膨張係数の違いによって発生する応力が小さくなり、該流路形成部材5の接着面の剥離を防止することができ、インク漏れなどの不具合を防止してインク吐出の信頼性を図ることができる。
【0040】
なお、以上に説明したように、上記流路形成部材5を固定する手段となる接着剤(22,23)や該接着剤が塗布されていない部位に塗布されたグリース25は熱伝導部材として機能するが、これらは例えば金属から成る流路形成部材5自体よりも熱伝導率が低いため、できるだけ薄く塗布することが好ましい。具体的には、これらを均一、かつ薄く塗布し、流路形成部材5とヒータチップ3又はヘッドフレーム4との間に熱の伝導を遮断する空気の層ができないようにするとよい。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。
【0041】
また、上記流路形成部材5を接着固定する接着剤(22,23)やグリース25は、上述したものに限られず、熱伝導率の高いものであればどのようなものでもよく、例えばそのシール性、柔軟性、硬化速度などの特性によって使い分けられる。さらに、これらを塗布する部位は、上述に限られず、他の部位に塗布してもよい。例えば、ヘッドフレーム4とプリント基板7とを接着して固定する接着剤26に熱伝導体を充填剤として含有してもよい。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を効率的に放熱して、流路形成部材5の熱膨張変形を抑制することができる。
【0042】
次に、本発明による液体吐出装置としてのインクジェットプリンタ30の実施形態を、図7及び図8参照して説明する。
図7に示すインクジェットプリンタ30は、上述したプリントヘッド1によって記録媒体の所定位置にインク滴を吐出してドット列又はドットを形成し、プリント画像を形成するもので、プリンタ本体部31と、プリントヘッド1と、記録紙トレイ32とを備えている。
【0043】
プリンタ本体部31は、記録媒体である記録紙に対して適正に印画を行わせるための記録紙搬送機構部や電気回路部を内部に納めたものであり、その上面には上述したプリントヘッド1を収納する収納部33が開口されており、該収納部33の上部には該収納部33を開閉する上蓋34が設けられている。また、プリンタ本体部31の前面下部には、記録紙トレイ32を装着するためのトレイ挿入口35が設けられている。なお、このトレイ挿入口35は記録紙の排紙口も兼ねている。
【0044】
このプリンタ本体部31の収納部33には、プリントヘッド1が着脱可能な状態で矢印Pの方向に収納して保持されるようになっている。このプリントヘッド1は、プリンタ本体部31に固定された状態で記録紙面上にインクを吐出して必要幅の印画を行うライン型のものであり、図1〜図6に示すように構成されている。
【0045】
また、上記プリンタ本体部31のトレイ挿入口35には、記録紙トレイ32が着脱可能状態に装着されている。この記録紙トレイ32は、記録紙を重ねて収納するものであり、その上面部にはプリンタ本体部31から排紙される記録紙の排紙受け部32aが設けられている。
【0046】
図8は、上記プリンタ本体部31の内部構造の具体的な一例を示す断面図で、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。このプリンタ本体部31は、図8(a)に示すように、プリンタ本体部31の下方部で、記録紙トレイ32の挿入方向にてその側端部に対応する上方部位には、ローラーから成る給紙手段36が設けられており、記録紙トレイ32から記録紙37が随時供給できるようになっている。また、記録紙37の供給方向には、分離手段38が設けられており、重ねて収納された記録紙37を1枚づつ分離して給紙できるようになっている。さらに、この分離手段38で分離された記録紙37の搬送方向でプリンタ本体部31の上方部位には、記録紙37の搬送方向を反転する反転ローラー39が設けられている。
【0047】
そして、この反転ローラー39で反転された記録紙37の搬送方向の先にはベルト搬送手段40が設けられており、図8(a)に示すように、印画停止状態においては、排紙方向の端部40aが矢印A方向に下がって、プリントヘッド1の下面との間に大きなギャップを形成している。また、同図(b)に示す印画動作状態においては、上記端部40aが矢印B方向に上昇して水平状態にされ、プリントヘッド1の下面との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成するようにされている。
【0048】
また、印画停止状態において、図8(a)に示すように、プリントヘッド1の下面はキャップ41で閉じられており、インク吐出ノズル10のインクが乾燥して目詰まりするのを防いでいる。また、キャップ41には、クリーニング手段42が設けられており、印画動作開始前に、キャップ41が所定の位置に退避する(同図(b)参照)動作に伴って、インク吐出ノズル10をクリーニングするようになっている。
【0049】
次に、このように構成されたインクジェットプリンタ30の動作について説明する。まず、図7に示すプリンタ本体部31の上面の上蓋34を開いて、プリントヘッド1を収納部33に矢印Pのように収納する。また、プリンタ本体部31の側面部に設けられたトレイ挿入口35に記録紙トレイ32を挿入する。このとき、図8(a)に示すように、プリンタ本体部31の内部は、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がっており、プリントヘッド1の下面がキャップ41で閉じられて印画停止状態となっている。
【0050】
次に、印画開始の制御信号が入力されると、キャップ41が図8(a)の矢印C方向に移動して所定の位置に退避する。このとき、キャップ41の退避動作に伴って、クリーニング手段42がプリントヘッド1のノズル部材2の表面を摺動してインク吐出ノズル10(図2参照)をクリーニングする。
【0051】
また、このキャップ41が所定位置に退避すると、ベルト搬送手段40の端部40aが図8(a)中の矢印B方向に上昇し、水平状態にて該ベルト搬送手段40の搬送用ベルトとプリントヘッド1間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成して停止する(図8(b)参照)。
【0052】
そして、図8(b)に示す印画動作状態において、給紙手段36が駆動し、記録紙トレイ32に重ねて収納された記録紙37が矢印D方向に供給される。この際、分離手段38によって記録紙37は一枚づつに分離されて矢印E方向に随時給紙される。
【0053】
この給紙された記録紙37は、反転ローラー39により搬送方向が反転されて、ベルト搬送手段40まで送られる。そして、該記録紙37は、ベルト搬送手段40によってプリントヘッド1の下方部まで運ばれて行く。
【0054】
さらに、記録紙37が、プリントヘッド1の下方部に達すると、印画信号が入力され、該印画信号に応じてプリントヘッド1の所定の発熱抵抗素子11(図3参照)が駆動される。そして、一定速度で送られる記録紙37に対して、4色のインクに対応するインク吐出ノズル10の列からインク滴13が吐出され、記録紙37上にカラーのプリント画像が形成される。
【0055】
このようにして記録紙37上への印画が全て終了すると、図8(b)に示すように、記録紙37はプリントヘッド1の下方部から矢印F方向に搬送され、排紙口を兼ねたトレイ挿入口35(図7参照)から記録紙トレイ32の排紙受け部32aに排紙される。そして、同図(a)に示すように、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がり、キャップ41がプリントヘッド1の下面を閉じて印画停止状態に復帰し、インクジェットプリンタ30の動作が停止する。
【0056】
なお、以上の説明においては、インクジェットプリンタに適用された例について述べたが、本発明はこれに限らず、液室内に収容された液体を液体吐出ノズルから液滴として吐出するものであればどのようなものでもよい。例えば、記録方式がインクジェット方式のファクシミリ装置や複写機等の画像形成装置についても適用可能である。
【0057】
また、液体吐出ノズル10から吐出される液体はインクに限られず、液室内の液体を吐出してドット列又はドットを形成するものであればどのようなものでもよい。例えば、生体試料を検出するためのDNA含有溶液を吐出するための装置に適用することも可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1及び請求項4に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0059】
また、請求項2及び請求項5に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0060】
さらに、請求項3〜請求項5に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0061】
また、請求項6及び請求項9に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は充填剤として熱伝導体が含有された接着剤であることによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0062】
さらに、請求項7及び請求項10に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材及との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0063】
そして、請求項8〜請求項10に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体吐出ヘッドとしてのプリントヘッドの実施形態を示す横断面図である。
【図2】上記プリントヘッドに備えられた1色分のラインヘッドの断面構造を示す要部拡大図である。
【図3】上記プリントヘッドを構成するノズル部材に設けられたインク吐出ノズルに対応して形成されたインク室の構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤の塗布状態を説明する平面図である。
【図5】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤の他の塗布状態を説明する平面図である。
【図6】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤のさらに他の塗布状態を説明する平面図である。
【図7】本発明による液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す概略斜視図である。
【図8】図7に示すインジェットプリンタの内部構成を示した断面図であり、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。
【符号の説明】
1…プリントヘッド(液体吐出ヘッド)
2…ノズル部材
3…ヒータチップ(基板部材)
4…ヘッドフレーム(フレーム部材)
5…流路形成部材
6…端子部材
7…プリント基板
8…インクタンク
9…インク室(液室)
10…インク吐出ノズル(液体吐出ノズル)
11…発熱抵抗素子
13…インク滴(液体)
14…ダミーチップ
15…インク流路
22,23,24,26…接着剤
25…グリース
30…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
31…プリンタ本体部
32…記録紙トレイ
37…記録紙
【発明の属する技術分野】
本発明は、液室内に供給された液体を発熱抵抗素子で加熱して液体吐出ノズルから吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関し、特に、上記発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することによって、上記液室内に液体を供給する流路となる流路形成部材の熱膨張変形を低減することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、液室内に供給された液体を発熱抵抗素子で加熱して該液体を液体吐出ノズルから吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置の一例として、インクジェット方式の記録装置が知られている。インクジェット方式の記録装置、例えばインクジェットプリンタは、プリントヘッドのインク吐出ノズルからインク滴を吐出してプリント画像を形成するもので、そのようなプリントヘッドとして、例えば金属板やガラス板等から成る基板上に切削又はエッチング等を施してインク流路となる微細な溝を形成し、このインク流路が形成された基板と、該基板の上面を覆う板状の蓋部材とを接着して形成されたものがあった。
【0003】
また、前記プリントヘッドの他の例として、インクを吐出させるための発熱抵抗素子が形成された基板上にフォトレジストを塗布し、所定のパターニング露光を施してフォトレジストを硬化し、インク吐出ノズルとなる微細な溝を形成し、その上面に平板状の蓋部材を接着して形成されたものがあった。そして、この硬化したフォトレジスト上に平板状の蓋部材を接着する方法として、一般的には接着剤が用いられていた。具体的には、例えばガラス、セラミック、金属、プラスチック等から成る蓋部材にエポキシ樹脂系の接着剤をスピンコートして予備加熱し、該蓋部材を硬化したフォトレジスト上に貼り合わせて接着剤を本硬化して、両者を接着するようになっていた。また、前記硬化したフォトレジスト上に蓋部材を接着する他の方法として、例えばアクリル系樹脂、ABS系樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂から成る蓋部材を、接着剤を使わずに硬化したフォトレジスト上に直接熱融着するものもあった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
さらに、複数個の発熱抵抗体が配列された基板と、該基板から発生する熱を逃がしうる支持体とを備え、該基板は該支持体上に接着剤で固定されたインクジェット記録ヘッドであって、前記接着剤は、シリコーン、ウレタン、ポリイミドまたはエポキシ系接着剤に金属粒子を分散させてなるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭57−43876号公報 (第3頁、第5図)
【特許文献2】
特開平8−132617号公報 (第2〜4頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1に記載された技術は、印画領域の幅よりも小さいプリントヘッドを幅方向に往復移動しながら該プリントヘッドに設けられたインク吐出ノズルからインク滴を吐出してプリント画像を形成するシリアル型のヘッドに適用されたものであって、多数個のインク吐出ノズルが記録媒体の全幅に対応して配列されたライン型のものに適用することは困難であった。すなわち、このライン型のヘッドは、シリアル型のものに対し数倍の長さのインク流路を有しているため、該インク流路を構成する流路形成部材はそれに応じて長く形成されており、またインク吐出手段としての発熱抵抗素子の個数も多い。これにより、ライン型ヘッドのインク吐出ノズルからインクを吐出させるために多数個の発熱抵抗素子が発熱したとき、各発熱抵抗素子から放出された熱によって流路形成部材が加熱され熱膨張変形して反ったり、あるいは歪んだりすることがある。この場合、上記流路形成部材とそれに接着された部材との線膨張係数の違いによって応力が発生し、この応力によって例えば流路形成部材と基板部材との接着面が剥離し、インク漏れなどの不具合が発生する虞がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された技術は、上記基板と支持体とを接着する接着剤によって該基板で発生した熱を支持体に伝え易くして、基板内の温度上昇を抑えてインクの温度上昇を低減しようとするものであって、該支持体に伝わった熱をさらに外部に伝導しようとする手段は備えていない。したがって、上記特許文献2に記載された技術をライン型のヘッドに適用したとしても、インク流路となる流路形成部材が熱膨張変形することを低減することはできず、流路形成部材とヘッドチップとの接着面が剥離し、インク漏れなどの不具合が発生する虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、液室内に供給された液体を加熱する発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に放熱することによって、上記液室内に液体を供給する流路となる流路形成部材の熱膨張変形を低減することができる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明による液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材を接着して固定する手段は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤である。
【0010】
このような構成により、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0011】
また、本発明による他の液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0012】
このような構成により、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明による更に他の液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0014】
このような構成により、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0015】
また、本発明による液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備えたものである。
【0016】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0017】
また、本発明による他の液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0018】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0019】
さらに、本発明による更に他の液体吐出装置は、装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものである。
【0020】
このような構成により、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記発熱抵抗素子から放出された熱が効率的に伝導して放熱される。したがって、上記流路形成部材の熱膨張変形が低減し、上記流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面が剥離しなくなり、液体漏れを防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による液体吐出ヘッドの一例としてのプリントヘッドの実施形態を示す横断面図であり、図2は図1に示すプリントヘッドに備えられた1色分のラインヘッドを示す要部拡大図である。このプリントヘッド1は、複数のインク吐出ノズルがその底面の長手方向(紙面の垂直方向)にて記録媒体の全幅に対応して設けられたライン型のもので、ノズル部材2と、ヒータチップ(基板部材)3と、ヘッドフレーム(フレーム部材)4と、流路形成部材5と、端子部材6と、プリント基板7と、インクタンク8(8y,8m,8c,8k)とを備えて成る。
【0022】
図1に示すように、ノズル部材2はプリントヘッド1の底面部に設けられている。このノズル部材2は、図2に示すように、吐出すべきインク(インク)を収容するインク室(液室)9の下端面を構成するものであって、薄いシート状の部材でできており、この部材の所定位置に上記インク室9内に収容されたインクを吐出するためのインク吐出ノズル(液体吐出ノズル)10が紙面の垂直方向に整列して設けられている。なお、このプリントヘッド1はカラー印画用のもので、上記ノズル部材2には、後述する4色のインクタンク8に対応して4グループのインク吐出ノズル10の列が紙面の垂直方向に設けられている。
【0023】
このノズル部材2の上面側にてインク吐出ノズル10が配列された方向、すなわち4グループのインク吐出ノズル10の列(紙面の垂直方向)に沿って、複数個のヒータチップ3が配設されている。このヒータチップ3は、図2に示すように、インク室9の上端面を構成するものであって、シリコン基板でできており、該インク室9内に収容されたインクを加熱して吐出する発熱抵抗素子が形成されている。具体的には、図3に示すように、インク室9内に収容されたインクに気泡を発生させて吐出する発熱抵抗素子11が、上記ノズル部材2に設けられたインク吐出ノズル10に対応して形成されている。なお、図示省略したが、このヒータチップ3は後述する流路形成部材5の下方両側にて左右互い違いに配設される。
【0024】
また、図3において、ノズル部材2とヒータチップ3の間には、バリア層12が設けられている。このバリア層12は、インク室9の側壁を構成するもので、例えば露光硬化型のドライフィルムレジストから成り、フォトリソプロセスによって不要な部分が除去されることによって形成されている。これにより、図3に示すインク室9は、発熱抵抗素子11を囲むように、ノズル部材2と、ヒータチップ3と、バリア層12とから構成される。そして、図3において、右側前方面にインク室9の開口部を有し、この開口部と後述する流路形成部材5とが連通してインクが供給されるようになっている。
【0025】
そして、この発熱抵抗素子11に短時間、例えば1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、該発熱抵抗素子11が急速に加熱され、その結果、インク室9内に収容されたインクに気泡が発生し、そのインクの気泡の膨張によって所定の体積のインクが押し出される。これにより、この押し出されたインクと同等の体積のインクがインク吐出ノズル10からインク滴13として吐出するようになっている。なお、図2に示すように、4グループの列状に配列されたインク吐出ノズル10に対応して左右互い違いに配置された複数個のヒータチップ3の間の隙間には、該ヒータチップ3と同じ高さを有する複数個のダミーチップ14が配設されている(図2では、ヒータチップ3に対向配置されたダミーチップ14だけが表示されている)。
【0026】
また、図1に示すノズル部材2の上面には、ヘッドフレーム4が接着されている。このヘッドフレーム4は、上記ノズル部材2を支持して補強すると共に構造隔壁となるものであって、例えばセラミックなどの耐熱性、耐食性に優れた絶縁材料でできており、上記ヒータチップ3及びダミーチップ14の配設方向に沿ってフレーム部4aが形成され、各フレーム部4aの間には後述する流路形成部材5が配設されるようになっている。
【0027】
さらに、図1及び図2に示すように、ヒータチップ3及びダミーチップ14の上面にてヘッドフレーム4の間には流路形成部材5が配設されている。この流路形成部材5は、後述するインクタンク8から図3に示すインク室9内にインクを供給する流路を形成するものであって、上記ノズル部材2の液体吐出ノズル10に対応して形成された複数個のヒータチップ3及びダミーチップ14に接着剤22で接着して固定されると共に、該ノズル部材2を支持するヘッドフレーム14に接着剤23で接着して固定されている。この流路形成部材5は、インクに対して耐食性をする金属製の部材でできており、上記インク吐出ノズル10の配列方向(紙面の垂直方向)に沿って長く形成され、図2に示すように、その断面形状が下方に凹状に形成されている。そして、この凹状に形成されたインク流路15がインク室9の開口部(図3参照)に連通されるようになっている。また、流路形成部材5の上部にはインク供給管16が設けられており、このインク供給管16は後述するインクタンク8内に貯留されたインクをインク流路15内に供給するようになっている。
【0028】
また、図1に示すように、上記ヘッドフレーム4の下面に配設された各ヒータチップ3側にて該ヘッドフレーム4と流路形成部材5との間には、端子部材6がそれぞれ配設されている。この端子部材6は、複数個のヒータチップ3と後述するプリント基板7とを電気的に接続するものであって、図2に示すように、導電部材から成るコネクターピン17が介装されている。さらに、図1に示すように、上記ヘッドフレーム4及び流路形成部材5の上面にはプリント基板7が載置されており、該プリント基板7はゴム系の接着剤26によってヘッドフレーム4に接着して固着されている。このプリント基板7は、ヒータチップ3の発熱抵抗素子11(図3参照)を駆動する信号を中継する配線部となるもので、図1に示すように、電線相互を接続するための電気部品18及びフレキシブル基板19を介して図示省略のプリンタ本体から駆動信号を入力するようになっている。
【0029】
さらにまた、図2に示すように、端子部材6に介装されたコネクターピン17の上端部位とプリント基板7とは電気的に接続されており、またコネクターピン17の下端部位とヒータチップ3とは金線20によってワイヤボンディングされている。これにより、図示省略のプリンタ本体の電気回路からの駆動信号は、コネクターピン17及び金線20を介してヒータチップ3に入力し、図3に示す発熱抵抗素子11が発熱するようになっており、インク室9内のインクをインク吐出ノズル10からインク滴13として吐出するようになっている。なお、図2に示すように、金線20は封止剤21で封止されて保護されている。
【0030】
そして、上記プリント基板7の上部には、インクタンク8が設けられている。このインクタンク8は、例えば水系のインクを貯留するものであって、図1に示すように、イエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの4色のインクタンク8y,8m,8c,8kから成る。そして、各色のインクタンク8y,8m,8c,8kの底部には、上記インク供給管16が設けられており、該インク供給管16がプリント基板7を貫通して上記流路形成部材5のインク流路15にインクを供給するようになっている。
【0031】
ここで、本発明において、上記流路形成部材5を接着して固定する手段は、充填剤として熱伝導体が含有された接着剤とされている。具体的には、図2に示す流路形成部材5を複数個のヒータチップ3及びダミーチップ14に接着して固定する接着剤22は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出された熱を流路形成部材5に伝導するものであって、熱伝導体を充填剤(フィラー)として含有している。この接着剤22は例えばシリコーン系の接着剤であり、該接着剤22に含有される充填剤は、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質である。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を流路形成部材5に効率的に伝導することができる。この接着剤22は、インクが漏れないように密閉するシール部材として機能し、硬化した後にゴム状の弾性体となってインクの漏れを防止するようになっている。なお、上記ヒータチップ3と流路形成部材5とを接着する接着剤22として、例えばGE東芝シリコーン社製のTSE3941Mという商品名のシリコーン系の接着剤が用いられている。
【0032】
また、図2に示す流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤23は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導した熱をヘッドフレーム4に伝導するものであって、上記接着剤22と同様に、充填剤となる熱伝導体として、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質が添加されている。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に効率的に伝導することができる。そして、この接着剤23は、図4に示すように、ヘッドフレーム4に配設された流路形成部材5の長手方向にて左右互い違いに配設された端子部材6の間にて該ヘッドフレーム4と流路形成部材5とを接着して固定している。
【0033】
なお、この接着剤23は、上記接着剤22と同じものに限られず、硬化時間や粘度などの仕様に応じて他の種類のものでもよい。例えば、シール性、接着性、コーティング性や耐薬品性、電気特性などに優れた紫外線硬化樹脂でもよい。これにより、例えば200〜400nmの紫外線を照射すると秒単位で硬化するため、製造工程を自動化、スピード化し、良好な作業環境の保持を図ることができる。
【0034】
図5は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤の他の塗布状態を説明する平面図である。この実施形態は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定するために必要な最少量の接着剤24を用いて互いが固定されており、該流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着面にて接着剤24が塗布されていない部位に、熱伝導体を含有しているグリース25が塗布されたものである。このグリース25は、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導した熱をヘッドフレーム4に伝導するものであって、充填剤となる熱伝導体として、例えば金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドなどの導電性の高い物質が添加されており、上記接着剤24よりも高い熱伝導率を有している。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に、より効率的に伝導することができる。
【0035】
図6は、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定する接着剤のさらに他の塗布状態を説明する平面図である。この実施形態は、上記流路形成部材5を接着して固定する手段は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤23であり、該流路形成部材5をフレーム部材4に接着して固定する接着面にて接着剤23が塗布されていない部位に熱伝導体を含有しているグリース25が塗布されたものである。ここで、上記接着剤23は、図4に示して説明したものと同様のものであり、上記流路形成部材5をヘッドフレーム4に接着して固定するために必要な最少量が用いられている。また、グリース25は、図5に示して説明したものと同様である。これにより、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出されて流路形成部材5に伝導された熱をヘッドフレーム4側に、さらに効率的に伝導することができる。
【0036】
次に、このように構成されたプリントヘッド1の動作について説明する。
図1において、プリントヘッド1は、インク吐出前には、各色のインクタンク8y,8m,8c,8kに貯留したインクがインク供給管16を通って対応する流路形成部材5のインク流路15に供給され、インク吐出ノズル10に対応して設けられたインク室9(図3参照)がインクで満たされた状態にある。
【0037】
このような状態において、図示省略のプリンタ本体から駆動信号となる印画信号が入力されると、該印画信号が電線相互を接続するための電気部品18及びフレキシブル基板19を介してプリント基板7に伝えられる。さらに、この印画信号は、図2に示すように、端子部材6に介装されたコネクターピン17及び金線20を介して所定のヒータチップ3に供給され、所定の発熱抵抗素子11(図3参照)を駆動する。これにより、この発熱抵抗素子11は1〜3μ秒の短時間の通電によって約400℃程度に発熱し、該発熱抵抗素子11の表面に気泡を発生させ、それと同等の体積のインク滴13をインク吐出ノズル10から吐出する(図3参照)。
【0038】
また、上記発熱抵抗素子11が形成されたヒータチップ3の上面に接着して固定された流路形成部材5は、放熱板としての機能も兼ねており、1回のインク吐出が終わるごとに発熱抵抗素子11を急速に冷却して気泡を消滅させ、次のインク吐出ができるようになっている。ここで、図3に示すインク吐出ノズル10からインク滴13が吐出されると、図2に示すインクタンク6のインクがインク流路15を通ってインク室9に補充される。このようにして、記録紙を一定速度で送りながら、印画信号に応じて所定の発熱抵抗素子11を発熱させてインク室9内のインクを加熱し、各インク吐出ノズル10から4色のインクを吐出させて記録紙上にプリント画像が形成される。
【0039】
上述したように、本発明のプリントヘッド1によれば、例えば図6に示すように、上記流路形成部材5を固定する手段として用いられる接着剤(22,23)は、熱伝導体を充填剤として含有しており、また流路形成部材5とヘッドフレーム4との接着面にて接着剤23が塗布されていない部位には熱伝導体を充填剤として含有したグリース25が塗布されている。このため、上記発熱抵抗素子11(図3参照)から放出された熱は流路形成部材5に伝導し、該流路形成部材5に伝導された熱はヘッドフレーム4に伝導して放熱することができる。これにより、放熱板としての機能も兼ねた流路形成部材5の熱容量より、上記発熱抵抗素子11から放出された熱量が多くなった場合にも、その熱を効率的に放熱することができ、流路形成部材5が急激に温度上昇するのを抑制して、その熱膨張変形を低減することができる。したがって、流路形成部材5とヒータチップ3又はヘッドフレーム4との線膨張係数の違いによって発生する応力が小さくなり、該流路形成部材5の接着面の剥離を防止することができ、インク漏れなどの不具合を防止してインク吐出の信頼性を図ることができる。
【0040】
なお、以上に説明したように、上記流路形成部材5を固定する手段となる接着剤(22,23)や該接着剤が塗布されていない部位に塗布されたグリース25は熱伝導部材として機能するが、これらは例えば金属から成る流路形成部材5自体よりも熱伝導率が低いため、できるだけ薄く塗布することが好ましい。具体的には、これらを均一、かつ薄く塗布し、流路形成部材5とヒータチップ3又はヘッドフレーム4との間に熱の伝導を遮断する空気の層ができないようにするとよい。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。
【0041】
また、上記流路形成部材5を接着固定する接着剤(22,23)やグリース25は、上述したものに限られず、熱伝導率の高いものであればどのようなものでもよく、例えばそのシール性、柔軟性、硬化速度などの特性によって使い分けられる。さらに、これらを塗布する部位は、上述に限られず、他の部位に塗布してもよい。例えば、ヘッドフレーム4とプリント基板7とを接着して固定する接着剤26に熱伝導体を充填剤として含有してもよい。これにより、上記発熱抵抗素子11から放出された熱を効率的に放熱して、流路形成部材5の熱膨張変形を抑制することができる。
【0042】
次に、本発明による液体吐出装置としてのインクジェットプリンタ30の実施形態を、図7及び図8参照して説明する。
図7に示すインクジェットプリンタ30は、上述したプリントヘッド1によって記録媒体の所定位置にインク滴を吐出してドット列又はドットを形成し、プリント画像を形成するもので、プリンタ本体部31と、プリントヘッド1と、記録紙トレイ32とを備えている。
【0043】
プリンタ本体部31は、記録媒体である記録紙に対して適正に印画を行わせるための記録紙搬送機構部や電気回路部を内部に納めたものであり、その上面には上述したプリントヘッド1を収納する収納部33が開口されており、該収納部33の上部には該収納部33を開閉する上蓋34が設けられている。また、プリンタ本体部31の前面下部には、記録紙トレイ32を装着するためのトレイ挿入口35が設けられている。なお、このトレイ挿入口35は記録紙の排紙口も兼ねている。
【0044】
このプリンタ本体部31の収納部33には、プリントヘッド1が着脱可能な状態で矢印Pの方向に収納して保持されるようになっている。このプリントヘッド1は、プリンタ本体部31に固定された状態で記録紙面上にインクを吐出して必要幅の印画を行うライン型のものであり、図1〜図6に示すように構成されている。
【0045】
また、上記プリンタ本体部31のトレイ挿入口35には、記録紙トレイ32が着脱可能状態に装着されている。この記録紙トレイ32は、記録紙を重ねて収納するものであり、その上面部にはプリンタ本体部31から排紙される記録紙の排紙受け部32aが設けられている。
【0046】
図8は、上記プリンタ本体部31の内部構造の具体的な一例を示す断面図で、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。このプリンタ本体部31は、図8(a)に示すように、プリンタ本体部31の下方部で、記録紙トレイ32の挿入方向にてその側端部に対応する上方部位には、ローラーから成る給紙手段36が設けられており、記録紙トレイ32から記録紙37が随時供給できるようになっている。また、記録紙37の供給方向には、分離手段38が設けられており、重ねて収納された記録紙37を1枚づつ分離して給紙できるようになっている。さらに、この分離手段38で分離された記録紙37の搬送方向でプリンタ本体部31の上方部位には、記録紙37の搬送方向を反転する反転ローラー39が設けられている。
【0047】
そして、この反転ローラー39で反転された記録紙37の搬送方向の先にはベルト搬送手段40が設けられており、図8(a)に示すように、印画停止状態においては、排紙方向の端部40aが矢印A方向に下がって、プリントヘッド1の下面との間に大きなギャップを形成している。また、同図(b)に示す印画動作状態においては、上記端部40aが矢印B方向に上昇して水平状態にされ、プリントヘッド1の下面との間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成するようにされている。
【0048】
また、印画停止状態において、図8(a)に示すように、プリントヘッド1の下面はキャップ41で閉じられており、インク吐出ノズル10のインクが乾燥して目詰まりするのを防いでいる。また、キャップ41には、クリーニング手段42が設けられており、印画動作開始前に、キャップ41が所定の位置に退避する(同図(b)参照)動作に伴って、インク吐出ノズル10をクリーニングするようになっている。
【0049】
次に、このように構成されたインクジェットプリンタ30の動作について説明する。まず、図7に示すプリンタ本体部31の上面の上蓋34を開いて、プリントヘッド1を収納部33に矢印Pのように収納する。また、プリンタ本体部31の側面部に設けられたトレイ挿入口35に記録紙トレイ32を挿入する。このとき、図8(a)に示すように、プリンタ本体部31の内部は、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がっており、プリントヘッド1の下面がキャップ41で閉じられて印画停止状態となっている。
【0050】
次に、印画開始の制御信号が入力されると、キャップ41が図8(a)の矢印C方向に移動して所定の位置に退避する。このとき、キャップ41の退避動作に伴って、クリーニング手段42がプリントヘッド1のノズル部材2の表面を摺動してインク吐出ノズル10(図2参照)をクリーニングする。
【0051】
また、このキャップ41が所定位置に退避すると、ベルト搬送手段40の端部40aが図8(a)中の矢印B方向に上昇し、水平状態にて該ベルト搬送手段40の搬送用ベルトとプリントヘッド1間に所定の小さなギャップの記録紙通路を形成して停止する(図8(b)参照)。
【0052】
そして、図8(b)に示す印画動作状態において、給紙手段36が駆動し、記録紙トレイ32に重ねて収納された記録紙37が矢印D方向に供給される。この際、分離手段38によって記録紙37は一枚づつに分離されて矢印E方向に随時給紙される。
【0053】
この給紙された記録紙37は、反転ローラー39により搬送方向が反転されて、ベルト搬送手段40まで送られる。そして、該記録紙37は、ベルト搬送手段40によってプリントヘッド1の下方部まで運ばれて行く。
【0054】
さらに、記録紙37が、プリントヘッド1の下方部に達すると、印画信号が入力され、該印画信号に応じてプリントヘッド1の所定の発熱抵抗素子11(図3参照)が駆動される。そして、一定速度で送られる記録紙37に対して、4色のインクに対応するインク吐出ノズル10の列からインク滴13が吐出され、記録紙37上にカラーのプリント画像が形成される。
【0055】
このようにして記録紙37上への印画が全て終了すると、図8(b)に示すように、記録紙37はプリントヘッド1の下方部から矢印F方向に搬送され、排紙口を兼ねたトレイ挿入口35(図7参照)から記録紙トレイ32の排紙受け部32aに排紙される。そして、同図(a)に示すように、ベルト搬送手段40の端部40aが矢印A方向に下がり、キャップ41がプリントヘッド1の下面を閉じて印画停止状態に復帰し、インクジェットプリンタ30の動作が停止する。
【0056】
なお、以上の説明においては、インクジェットプリンタに適用された例について述べたが、本発明はこれに限らず、液室内に収容された液体を液体吐出ノズルから液滴として吐出するものであればどのようなものでもよい。例えば、記録方式がインクジェット方式のファクシミリ装置や複写機等の画像形成装置についても適用可能である。
【0057】
また、液体吐出ノズル10から吐出される液体はインクに限られず、液室内の液体を吐出してドット列又はドットを形成するものであればどのようなものでもよい。例えば、生体試料を検出するためのDNA含有溶液を吐出するための装置に適用することも可能である。
【0058】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されたので、請求項1及び請求項4に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0059】
また、請求項2及び請求項5に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0060】
さらに、請求項3〜請求項5に係る液体吐出ヘッドによれば、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0061】
また、請求項6及び請求項9に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は充填剤として熱伝導体が含有された接着剤であることによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0062】
さらに、請求項7及び請求項10に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材及との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【0063】
そして、請求項8〜請求項10に係る液体吐出装置によれば、液体吐出装置の装置本体に着脱可能な状態に保持された液体吐出ヘッドにて、液室内に液体を供給する流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことによって、上記液室内の液体を吐出するための発熱抵抗素子から放出された熱を効率的に伝導して放熱することができる。これにより、上記流路形成部材の熱膨張変形を低減することができ、該流路形成部材と基板部材及びフレーム部材との接着面の剥離を防止することができる。したがって、液体漏れなどの不具合を防止して液体吐出の信頼性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による液体吐出ヘッドとしてのプリントヘッドの実施形態を示す横断面図である。
【図2】上記プリントヘッドに備えられた1色分のラインヘッドの断面構造を示す要部拡大図である。
【図3】上記プリントヘッドを構成するノズル部材に設けられたインク吐出ノズルに対応して形成されたインク室の構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤の塗布状態を説明する平面図である。
【図5】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤の他の塗布状態を説明する平面図である。
【図6】図1に示すプリントヘッドを構成する流路形成部材をヘッドフレームに接着して固定する接着剤のさらに他の塗布状態を説明する平面図である。
【図7】本発明による液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの実施形態を示す概略斜視図である。
【図8】図7に示すインジェットプリンタの内部構成を示した断面図であり、(a)は印画停止状態を示し、(b)は印画動作状態を示している。
【符号の説明】
1…プリントヘッド(液体吐出ヘッド)
2…ノズル部材
3…ヒータチップ(基板部材)
4…ヘッドフレーム(フレーム部材)
5…流路形成部材
6…端子部材
7…プリント基板
8…インクタンク
9…インク室(液室)
10…インク吐出ノズル(液体吐出ノズル)
11…発熱抵抗素子
13…インク滴(液体)
14…ダミーチップ
15…インク流路
22,23,24,26…接着剤
25…グリース
30…インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
31…プリンタ本体部
32…記録紙トレイ
37…記録紙
Claims (10)
- 液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、
上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、
上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、
を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
上記流路形成部材を接着して固定する手段は、熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、
上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、
上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、
を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、
上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、
上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、
を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
上記流路形成部材を接着して固定する手段は熱伝導体を充填剤として含有した接着剤であり、該流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 上記接着剤に含有される充填剤は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドであることを特徴とする請求項1又は3記載の液体吐出ヘッド。
- 上記グリースに含有される充填剤は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドであることを特徴とする請求項2又は3記載の液体吐出ヘッド。
- 装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、
上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備えたものであることを特徴とする液体吐出装置。 - 装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、
上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に接着して固定されると共に構造隔壁としてのフレーム部材に接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものであることを特徴とする液体吐出装置。 - 装置本体に液体吐出ヘッドを着脱可能な状態に保持し、該液体吐出ヘッドに設けられた各液体吐出ノズルから液体を吐出してドット列又はドットを形成する液体吐出装置であって、
上記液体吐出ヘッドは、液室の一方の端面を構成すると共に複数の液体吐出ノズルが設けられたノズル部材と、上記液室の他方の端面を構成すると共に該液室内の液体を吐出させるための発熱抵抗素子が形成された複数個の基板部材と、上記複数個の基板部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定されると共に、構造隔壁としてのフレーム部材に対し熱伝導体を充填剤として含有した接着剤で接着して固定され上記液室内に液体を供給する流路を形成する流路形成部材と、を備え、上記流路形成部材をフレーム部材に接着して固定する接着面にて接着剤が塗布されていない部位に、熱伝導体を充填剤として含有したグリースを塗布したものであることを特徴とする液体吐出装置。 - 上記接着剤に含有される充填剤は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドであることを特徴とする請求項6又は8記載の液体吐出装置。
- 上記グリースに含有される充填剤は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミ、シリカ、ダイヤモンドであることを特徴とする請求項7又は8記載の液体吐出装置。
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JP2009083377A (ja) * | 2007-10-01 | 2009-04-23 | Brother Ind Ltd | 液滴吐出装置 |
JP2010120202A (ja) * | 2008-11-18 | 2010-06-03 | Brother Ind Ltd | 液体吐出ヘッド |
-
2003
- 2003-01-23 JP JP2003014292A patent/JP2004223878A/ja active Pending
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