JP5007013B2 - 選択的に水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を作製する方法 - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は、エチレン性不飽和結合を含む重合体を水素化する方法に関する。本発明は特に、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を選択的に水素化する方法に関する。
【0002】
発明の背景
エチレン性および/または芳香族の不飽和結合を含む化学的化合物を水素化するための触媒および方法は知られており、たとえば、米国特許第3,415,759号および同第5,057,582号に記載されている。より昔の従来技術は、キースラガー(ケイ藻土)などの担体に担持されたニッケルやラネーニッケルなど、不均一系触媒の使用を記載している。より最近、特にエチレン性不飽和か芳香族不飽和かの選択性を有する水素化が求められる場合に、均一系触媒系の使用が報告されている。
【0003】
選択的な水素化に有用な触媒は、1種または複数のVIII族金属カルボキシレート(Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Ptのカルボキシレート)と1種または複数のアルキルアルミニウムを接触させることによって作製される。このような触媒によって、芳香族不飽和結合を水素化せず、エチレン性不飽和結合を高い程度まで選択的に水素化するという優れた結果がもたらされる。
【0004】
ブロック共重合体の水素化は、1960年代から研究されてきた。多くの研究は、様々なVIII族金属カルボン酸塩のアルキルアルミニウム還元によって調製された均一系チーグラー型触媒の使用に焦点を当てている。このような大量の研究では、ニッケルとコバルトがしばしば比較され、同様の活性を有することが報告されている。
【0005】
1960年代および1970年代では、アニオン重合分野で研究者が利用できた反応速度論は、ほとんどもっぱら手計算で行われ、反応は、単に時間によってのみ「完了する」ものとみなされた。この慣行は役に立ち、所望のブロック共重合体を製造できるのであるが、バッチ毎に温度プロファイルが変動する結果として、「ダイアウト」レベルが様々になった。
【0006】
アニオン重合は、リビングポリマー鎖をもたらすと言われている。「アニオン重合は、イオン性部位が活性なままであるので、いわゆる『リビングポリマー』の生成を引き起こす」。Ulrichの「Introduction to Industrial Polymers」、48ページ(1982年)。「ダイアウト」は、リビング鎖がイオン性部位を失い、あるいはそれを不活性にさせたときに起こる。ダイアウトの場合では、鎖が時期尚早に終結し、これには、製造される分子量範囲が幅広くなるなど、いくつかの望ましくない結果が伴うことがある。
【0007】
従来のコンピュータ化された速度論では、ダイアウトが最小になるように、温度プロファイルおよび単量体濃度に応じた単量体転換量が算出される。ゲル透過クロマトグラフィ技術を改良することによって、異なる条件下で製造された重合体間の微妙な差を検出し、定量化する能力が向上したので、更なる精製および重合速度論の細かな調製が可能になる。
【0008】
選択的水素化用触媒の初期の開発では、大幅に過剰のアルコールを使用して、重合を停止させることが非常に一般的であった。リビングポリマーは、水素化を待つ間に架橋する潜在性をもつので、重合体に確実に完全な停止反応を起こすことが標準の手順であった。リチウムで活性化された重合では、アルコール対リチウムのモル比1.3以上、最高で2.0をも使用することがまれでない。
【0009】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの水素化されたブロック共重合体を調製する技術では、残りのアルキル非芳香族不飽和結合を選択的に水素化することが望ましいであろう。このような触媒を用いる選択的水素化を、より迅速におよび効率的に行う条件下で実施するのが、この技術分野では特に望ましいであろう。このより効率的な水素化に必要な触媒および条件が従来の設備およびプロセスに適合するならば、さらにより望ましいであろう。
【0010】
発明の概要
一態様において、本発明は、a)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンをアニオン重合させて、リビング鎖末端を有するブロックコポリマーを得るステップ、b)アルコール、水素、およびこれらの混合物からなる群からのメンバーによって前記リビング鎖末端を終結させて、終端したブロック共重合体を調製するステップ、およびc)コバルトカルボキシレートとアルキルアルミニウムを組み合わせることによって調製した触媒の存在下、温度を20から175℃で、前記終端したブロック共重合体と水素を接触させるステップを含み、(i)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが直鎖アルコールである場合、前記アルコールは、前記アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から1.2となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用し、(ii)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが分岐アルコールである場合、前記アルコールは、前記アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から3.0となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用し、(iii)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが直鎖アルコールと分岐アルコールの混合物である場合、前記直鎖アルコールは、前記直鎖アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から1.2となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用する、選択的に水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を作製する方法である。
【0011】
別の態様では、本発明は、本発明の方法を利用して調製されたブロック共重合体を含む、水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体である。
【0012】
発明の詳細な説明
一実施形態では、本発明は、コバルトカルボキシレートとアルキルアルミニウムを合わせることによって調製したコバルト触媒を使用して、選択的に水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を作製する方法である。このコバルト触媒は、知られている触媒であるが、水素化技術の初期の開発では、研究者は、重合体の水素化におけるコバルト触媒の優れた活性を観察することはできなかった。1960年代の技術では、研究者は、コバルト触媒が最適に機能するのに十分な質のポリマー供給物を再生可能に得られるようにならず、その結果、ニッケル触媒と同様の活性が観察された。
【0013】
他のVIII族金属触媒に勝るCoの利点が観察されなかった他の理由もある。たとえば、過去において、しばしば重合体セメントの試料が得られると、酸化防止剤と共に、またはセメントが大気、たとえば水および酸素に曝される手段で貯蔵された。Shellの研究の範囲では、1960年代および1970年代に行われた研究の多くが、製造プラントで調製された供給物を用いたものであるが、その供給物は、酸化防止剤で処理され、大気中でドラムに貯蔵されていた。この慣行は、1990年代まで続いた。たとえば酸性プロトンを含むこのような材料の存在は、触媒活性を抑制する。したがって、1990年代まで、重合体供給物の質が水素化能の整合にとって重要であることが完全に理解されていなかった。
【0014】
Co触媒の優勢が観察されていない別の理由は、リチウムで活性化する重合では珍しくないが、アルコール対リチウムのモル比1.3以上、最高で2.0がアルコール停止反応に使用されたことである。このような大量のアルコールの使用によって、ニッケル触媒に勝るコバルト触媒の利点が隠された。したがって、1960年代では、2種の触媒に違いがあることが認められず、より費用がかからないことから、商用の用途にはニッケル触媒が選ばれていた。
【0015】
より十分な分析技術が利用できるようになり、重合体供給物の純度が水素化プロセスに及ぼす影響がより理解されてから、コバルト水素化触媒の活性が同様のニッケル触媒よりずっと高いことが判明した。調査された第一の仮説が、アルコールとコバルト触媒の比、すなわちアルコール/コバルトモル比をこの不整合の重大な要因とするものであったことは、確かに論理的である。触媒が被毒することは珍しくなく、アルコールは、ある種の条件下で触媒を被毒させることが知られている。
【0016】
まったく驚くことに、アルコール/コバルトモル比が触媒活性の決定要因でないことが判明した。本発明の方法の実行に関して、何らかの理論に拘泥するものではないが、触媒活性の決定因子は、停止反応用アルコールとリチウム量、すなわち重合体中リビング鎖末端との全体の比であると考えられている。この比が1.2より大きく、アルコールが直鎖第一級アルコールであると、コバルト触媒の活性が悪影響を受ける。1.2以下かつ0以上のいずれかの比では、コバルト触媒によって同様のニッケル触媒より高い活性が得られる。
【0017】
本発明を実施するには、直鎖アルコールを使用してブロック共重合体に停止反応を起こす場合、停止反応用アルコールとリチウム量、すなわち重合体中リビング鎖末端との全体のモル比が、約0.05〜約1.20であることが好ましい。アルコール対Liの比が約0.5〜1.19であることがより好ましく、アルコール対Liの比が約1.00〜約1.10であることが最も好ましい。
【0018】
驚くべき別の観察点は、直鎖第一級アルコールは触媒活性を抑制するが、分岐アルコールは、触媒活性を抑制しない、または少なくとも直鎖第一級アルコールよりずっと少ない程度にしか触媒活性を抑制しないことである。したがって、本発明の方法には、Co触媒の活性を抑制することなく、過剰の分岐アルコールを使用できる。
【0019】
本発明を実施する場合、リビング鎖を有するブロック共重合体にアルコールまたは水素で停止反応を起こす。アルコールは、直鎖でも分岐でもこれらの混合物でもよい。直鎖アルコールは、直鎖かつ第一級のものである。本発明の方法で有用な直鎖アルコールには、メタノール、エタノール、n−イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノールなどのアルコールが含まれるが、直鎖かつ第一級のどんなアルコールも本発明の方法で使用できる。
【0020】
本発明の方法で使用できる分岐アルコールの例には、第三級脂肪族アルコール、β分岐第一級脂肪族アルコール、β,β分岐第一級脂肪族アルコール、β,β分岐第二級脂肪族アルコール、非酸性もしくは立体障害性の置換フェノールおよびベンジルアルコールが含まれる。
【0021】
第三級脂肪族アルコールの例には、2−メチル−2―プロパノール(t−ブタノール)、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、および3,7−ジメチル−3−オクタノールが含まれる。β分岐第一級脂肪族アルコールの例には、2−プロピル−1−ペンタノールおよび2−エチル−1−ヘキサノールが含まれる。β,β分岐第一級脂肪族アルコールの例には、2,2−ジメチル−1−プロパノール(メオペンチルアルコール)および2,2−ジメチル−1−ブタノールが含まれる。β,β分岐第二級脂肪族アルコールの例には、3,3−ジメチル−2−ブタノールおよび2,2−ジメチル−3−ペンタノールが含まれる。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールは、本発明の方法で使用できる非酸性の置換フェノールの例である。
【0022】
本発明のようなリビングポリマーに停止反応を起こす方法は、ブロック共重合体を調製する分野の技術者によく知られており、Gibler他の米国特許第5,143,990号やStevens他の米国特許第5,151,475号などの参照文献で開示されている。水素化前、すなわち望ましくない架橋を触媒することもある水素化触媒と接触させる前に、共重合体に停止反応を起こすことが多くの場合重要である。一般に、本発明のブロック共重合体では、約40℃〜約80℃の温度で、リビング共重合体とアルコールもしくは水素を約15〜約60分間混合することによって停止反応を起こす。活性アニオン性部位を有するリビングポリマーは、Liで触媒されたリビングポリマーが橙色であるなど、通常濃い色が付いている。色がないことを重合体が停止反応を起こした指標として利用できる。
【0023】
本発明は、選択的に水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を作製する方法である。この方法は、1種または複数のCoカルボン酸塩と1種または複数のアルキルアルミニウムを接触させることによって調製した触媒を利用するものである。場合によっては、別のVIII族金属のカルボン酸塩をカルボン酸コバルトと組み合わせて使用してもよい。そのような場合、コバルトは、水素化触媒中に存在する全金属の少なくとも10モルパーセントであり、25〜75モルパーセントが好ましい。この方法を利用すると、エチレン性不飽和および芳香族不飽和の両方を含むブロック共重合体のエチレン性不飽和が選択的に水素化される。
【0024】
本発明の方法に有用な適切なカルボキシレート化合物には、一般式(RCOO)nM[式中、MはVIII族金属であり、Rは、1〜50個の炭素原子、好ましくは5〜30個の炭素原子を有するヒドロカルボニル基であり、nは、金属Mの原子価に等しい数字である]のVIII族金属カルボキシレートが含まれる。最高の活性をもたらすことから、すなわち使用金属1モルあたりの二重結合の転換率が最高になることから、コバルトが求められる。コバルトによって、ブロック共重合体生成物のクリーンアップステップをかなり簡易化することが可能になる。触媒使用量を90%も削減できるので、触媒を除去するための重合体の洗浄を複数回でなく1回だけにすることなどによって、重合体の処理がそれほど多くなくなり、その結果生産コストを削減できる。
【0025】
本発明の触媒を調製するのに有用なカルボキシレートには、脂肪族炭化水素の酸、環状脂肪族炭化水素の酸、および芳香族炭化水素の酸のCo塩および他のVIII族金属塩が含まれる。脂肪族炭化水素の酸の例には、ネオデカン酸、ヘキサン酸、エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ベルサチン酸(versatic acid)、ミリスチン酸、パルミジン酸(palmidic acid)、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、およびロジノイン酸(rhodinoic acid)が含まれるが、本発明にはこのようなどんな酸を使用してもよい。環状脂肪族炭化水素の酸の例には、ナフタン酸(naphthanic acid)、シクロヘキシルカルボン酸、およびアビエチン型樹脂酸が含まれ、本発明にはどんな環状脂肪族の酸を使用してもよい。芳香族炭化水素の酸の例には、安息香酸、およびアルキル置換基が1〜20個の炭素原子を有するアルキル置換された芳香族の酸が含まれる。
【0026】
好ましいCoカルボキシレートには、コバルトステアレート、コバルトオクタノエート、コバルトネオデカノエート、およびコバルトベルサテートが含まれる。コバルトカルボキシレートは、コバルトネオデカノエートであることが最も好ましい。
【0027】
本発明の方法は、触媒混合物を用いて実施することができる。触媒混合物は、コバルト触媒とニッケル触媒の混合物であることが好ましい。Coカルボキシレートと、ニッケルオクタノエート、ニッケルステアレート、ニッケルデカノエート、およびニッケルアセチルアセタエノートからなる群から選択されたカルボン酸ニッケルとを組み合わせることがより好ましい。
【0028】
一般に、本発明の水素化触媒を調製する場合、オレフィン重合触媒の調製に有用であると知られているアルキルアルミニウム化合物のいずれかを、別々に使用しても組み合わせて使用してもよい。米国特許第5,057,582号は、本発明の触媒の調製に有用な幅広い種類のVIII族金属化合物およびアルキルアルミニウムを記載している。使用できるアルキルアルミニウムには、式RnAlX3〜n[式中、Rは、1〜10個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子の炭化水素基であり、Xは水素またはR2であり、R2は、Rとは異なる、1〜10個の炭素原子の炭化水素基であり、nは1、2、または3、好ましくは3である]の有機アルミニウム化合物が含まれる。トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが最も好ましい。
【0029】
本発明を実施する場合、アルキルアルミニウムをコバルトカルボキシレートと共に使用することが好ましい。使用時には、アルミニウム対コバルトのモル比を1:1〜20:1としてアルキルアルミニウムを使用することが好ましい。アルミニウム対コバルトの比が1:1〜5:1であることがより好ましい。アルミニウムとコバルトの比が1:1〜2:1であることが最も好ましい。
【0030】
一般に、実際の水素化触媒は、適切な溶媒中、20〜100℃の温度で、Coカルボン酸塩と1種または複数のアルキルアルミニウムを1〜120分間接触させることによって調製する。別のVIII族金属のカルボン酸塩を使用する場合も、この同じ手順を使用して触媒を調製してよい。
【0031】
触媒の調製に使用する溶媒は、従来技術で不飽和炭化水素重合体に有用であると知られている溶媒のいずれか1種でよい。適切な溶媒には、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど、脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンなど、環状脂肪族炭化水素、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロオクタンなど、アルキル置換された環状脂肪族炭化水素、ベンゼンなど、芳香族炭化水素、デカリン、テトラリンなど、ヒドロ芳香族炭化水素、トルエン、キシレンなど、アルキル置換された芳香族炭化水素が含まれる。
【0032】
本発明の水素化方法および触媒を使用して、エチレン性不飽和、芳香族不飽和、またはエチレン性不飽和と芳香族不飽和の両方を有する炭化水素を水素化してよい。好ましくは、本発明の方法を使用して、エチレン性不飽和だけを含む重合体のエチレン性不飽和結合を水素化する、あるいはエチレン性不飽和と芳香族不飽和の両方を含む重合体のエチレン性不飽和結合だけを選択的に水素化する。本発明の方法は、部分的、完全、または選択的な水素化を可能にする水素化温度、水素分圧、および滞留時間を含む反応条件で使用できる。このような何らかの条件は、重合体を水素化する分野の技術者に重合体の水素化に有用であると知られており、本発明の方法で使用してよい。
【0033】
本発明の方法および触媒は、重合ジオレフィンもしくは重合アルケニル芳香族炭化水素を含む重合体、または重合ジオレフィンと重合アルケニル芳香族炭化水素の両方を含む重合体の水素化に特に有用である。選択的な水素化が最も重要であるのは、後者の場合である。ジオレフィンとアルケニルもしくはビニル芳香族炭化水素のブロックを重合させ、次いで、エチレン性不飽和結合が水素化されても、芳香族不飽和結合が水素化されないように、あるいは少なくとも水素化されたエチレン性不飽和量が水素化された芳香族不飽和量よりかなり多くなるようにこれらを選択的に水素化することによって、非常に有用な重合体が得られるからである。
【0034】
本発明の方法を実施する一実施形態では、リビングポリマー鎖を有する重合体を、アルコール、水素、およびコバルト触媒と接触させる。本発明にはこのようなどんな重合体を使用してもよいが、重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体であることが好ましい。このような重合体は、アニオン重合開始剤を含む溶液中で普通に調製される。一般に、この種の重合体は、適切な溶媒中、−150〜300℃の温度範囲内で、重合させる1種または複数の単量体と有機アルカリ金属化合物を接触させることによって調製されるが、0〜100℃の温度範囲内が好ましい。特に有効なアニオン重合開始剤は、次の一般式
RLi
[式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する脂肪族、環状脂肪族、芳香族、もしくはアルキル置換された芳香族の炭化水素基である]の有機リチウム化合物である。
【0035】
共役ジエンは、アニオン重合を別々に行っても組合せで行ってもよく、これには、1,3−ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエンなど、4〜12個の炭素原子を含むものがある。好ましい共役ジエンは、ブタジエンおよびイソプレンである。適切なビニル芳香族炭化水素単量体には、スチレン、様々なアルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン、アルキル置換ビニルナフタレンなどが含まれる。スチレンが好ましいビニル芳香族炭化水素である。
【0036】
水素化の一般的方法は、水素化重合体を調製する分野の技術者によく知られており、文献にもよく記載されている。たとえば、米国特許第3,415,759号および同第5,057,582号にそのような方法が記載されている。不飽和重合体の水素化は、従来技術で知られているその重合体用のいずれかの溶媒中で実施してよい。具体的な適する溶媒には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが含まれる。一般に、重合体溶液および溶媒は、重合体を1〜30重量パーセント含み、残りが溶媒である。
【0037】
水素化は、通常、20〜175℃の範囲内で、全圧を50〜5000psig(4.52〜352.5kgf/cm2)の範囲内、水素分圧を50〜3000psig(4.52〜211.9kgf/cm2)の範囲内として実施する。本発明は、従来技術による多くの方法とは異なり、これらの範囲の限界がそれほど厳しくない条件下の商業プロセスで利用できる。たとえば、温度が40〜100℃、かつ全圧が50〜1000psig(4.52〜71.3kgf/cm2)の商業プロセスを実行することがまったく可能である。そこで、水素化触媒の存在下、10〜360分、好ましくは30〜200分の範囲内の通常滞留時間の間、重合体と水素を接触させる。
【0038】
水素化混合物中の触媒の全体濃度は、5ppm金属/重合体〜300ppm金属/重合体の範囲でよいが、必要な濃度は、水素化する重合体に応じて変わる。重合体の分子量が大きいほど、より多量の触媒が必要になる傾向がある。一般に、触媒中のアルミニウム対コバルトのモル比は、0.8、好ましくは1.0を超えるべきである。この比によって、通常のプロセス滞留時間に基づく任意の期間である3時間後、重合体中の残存する二重結合の水素化転換率を確実に98パーセント以上にすることができる。
【0039】
本発明の方法の主たる用途は、アルコールで停止反応を起こしたブロック共重合体を水素化することであるが、アルコール、水素、およびこれらの混合物からなる群から選択された重合停止剤を使用しても、ブロック共重合体の終端が可能であることもまた、本発明の方法の範囲内である。本発明の意図では、0.05未満のアルコール:リビング鎖末端モル比で停止反応を起こしたブロック共重合体は、水素で停止反応を起こしたブロック共重合体とする。Co触媒を利用する本発明の方法は、水素で停止反応を起こしたブロック共重合体の水素化についても、従来のNi触媒を使用する方法より優れている。
【0040】
実施例
以下の実施例によって本発明を例示する。この実施例は、本発明の範囲を限定するものでなく、またそのように解釈すべきでない。別段の指示がない限り、各量は、重量部または重量パーセントである。
【0041】
実施例1
線状トリブロック共重合体前駆体溶液のマスターバッチを使用して実験を行う。重合体は、スチレンとエチレン/ブタジエンのトリブロック共重合体、S−E/B−Sであり、結合スチレン含有量が33%、数平均分子量が約181,000である。
【0042】
パイロットプラントの反応器において、シクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液中の重合体濃度が14重量%のマスターバッチを調製し、メタノールで化学量論的に停止反応を起こした。水素化はすべて、4リットル容ZIPPERCLAVE*反応器(セメント装入量1560g)において、75℃、700psig(50.21kgf/cm2)H2、かつ1000rpmで、バッチ方式で行う。触媒濃度は、3ppmM/溶液(21ppmM/重合体、M=CoまたはNi)である。(*ZIPPERCLAVEは、AUTOCLAVE ENGINEERSによる商品名である)。
【0043】
触媒は、NiまたはCo濃度が6000百万分率(ppm)の溶液として調製する。コバルトネオデカノエートおよびNiオクトエートを使用して、シクロヘキサン中にそのCoまたはNiカルボン酸塩を希釈し、次いでAl/M(M=CoまたはNi)モル比が2.0/1に達するようにトリエチルアルミニウムをゆっくりと加えることによって、触媒を調製する。
【0044】
反応器に重合体溶液を装入し、75℃に加熱し、700psig(50.21kgf/cm2)で水素を散布して、溶液を飽和させる。反応器にシクロヘキサン溶液としてのアルコールを高圧注入によって加える。1000rpmで5〜10分間完全に混合した後、溶液の色を確認するが、色がなければ、停止反応の完了を示している。ここでも高圧注入によって触媒溶液を加えると、水素化が始まる。一定の間隔で水素化物の試料を採取し、1H NMRによって分析して、アルキル不飽和の転換の度合いを測定する。測定は、このような測定を行う分野の技術者によく知られている方法を使用して、当該のピークを積分することによって行う。
【0045】
選択した金属、アルコール、アルミニウム/金属比、およびアルコール/Li比は様々であり、表1および表1Aに結果を報告する。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例2
トリブロック共重合体前駆体溶液のマスターバッチを使用して実験を行う。重合体は、端ブロックがポリスチレンであり、中ブロックがゴム状のポリブタジエンである線状S−B−Sトリブロック共重合体である。この重合体の結合スチレン含有量は30%、数平均分子量は50,000である。
【0049】
パイロットプラントの反応器において、シクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液中に重合体が20重量%のマスターバッチを調製し、メタノールで停止反応を起こした。水素化はすべて、4リットル容ZIPPERCLAVE反応器(セメント装入量1560g)において、75℃、700psigH2(50.21kgf/cm2)、1000rpmで、バッチ方式で行う。触媒濃度は、2.5ppmM/重合体溶液(12.5ppmM/重合体、M=CoまたはNi)であった。重合体に停止反応を起こし、触媒を調製し、表で特に言及してあるものを除き、実施例1とほぼ同じく水素化を行う。得られた材料を実施例1のように試験する。
【0050】
選択した金属、アルコール、アルミニウム/金属比、およびアルコール/Li比は様々であり、表2に結果を報告する。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例3
トリブロック共重合体前駆体溶液のマスターバッチを使用して実験を行う。重合体は、端ブロックがポリスチレンであり、中ブロックがゴム状のポリブタジエンである線状S−B−Sトリブロック共重合体である。この重合体の結合スチレン含有量は30%、数平均分子量は67,000である。
【0053】
パイロットプラントの反応器において、ジエトキシプロパンを改質剤として使用して、シクロヘキサン中に重合体が14.3重量%のマスターバッチを調製する。水素化はすべて、1.5リットル容MEDIMEX*オートクレーブ(セメント装入量800g)において、40℃、30バールH2(30.6kgf/cm2)、1200rpmで、バッチ方式で行う(*MEDIMEXは、Medimex Companyによる商品名である)。触媒濃度は、0.4〜1.0ppmCo/溶液である。シクロヘキサン中にCoカルボン酸塩を希釈し、Al/Coモル比が2.2/1に達するようにトリエチルアルミニウムをゆっくりと加えることによって、触媒を500ppmCo/触媒の溶液として調製する。反応器に重合体溶液を装入し、40℃に加熱する。この反応器に、アルコール対Liの比が1.2:1に達するのに必要な量の、シクロヘキサン溶液としてのアルコールを高圧注入によって加える。約30分間完全に混合して、確実に重合体の停止反応を完了するようにした後、触媒溶液を加え、反応器に圧力をかけると、水素化が始まる。水素化物の試料を採取し、1H NMRによって分析して、アルキル不飽和の転換の度合いを測定する。
【0054】
停止反応に使用したアルコールは様々であり、表3に結果を報告する。
【0055】
【表4】
【0056】
実施例4
スチレンとイソプレンのブロック共重合体前駆体溶液のマスターバッチを使用して実験を行う。重合体は、線状S−I−S−Iブロック共重合体である。この重合体の結合スチレン含有量は21%、スチレン分子量(Ms)は103,000である。
【0057】
パイロットプラントの反応器において、シクロヘキサン中に重合体が23重量%のマスターバッチを調製し、MeOH:Li比が1:1のメタノールで重合体に停止反応を起こす。水素化はすべて、4リットル容ZIPPERCLAVE反応器(セメント装入量1560g)において、75℃、700psigH2(50.21kgf/cm2)、1000rpmで、バッチ方式で行う。触媒濃度は、15ppmCo/重合体溶液であり、Al/Co比は2.0である。重合体に停止反応を起こし、触媒を調製し、実施例1とほぼ同じく水素化を行う。試験の結果であるが、60分後に98.8%の不飽和結合が飽和し、120分後に99.6パーセントの不飽和結合が飽和し、さらに180分後には99.8%の不飽和結合が飽和した。
【0058】
実施例5
線状トリブロック共重合体前駆体溶液のマスターバッチを使用して実験を行う。重合体は、スチレンとブタジエンの線状トリブロック共重合体、S−B−Sであり、その結合スチレン含有量は33%、数平均分子量は約181,000である。
【0059】
パイロットプラントの反応器において、シクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液中に重合体が12重量%の濃度のマスターバッチを調製し、水素で、または化学量論的にメタノールで停止反応を起こす。
【0060】
水素化はすべて、4リットル容ZIPPERCLAVE反応器(セメント装入量1560g)において、75℃、700psig(50.21kgf/cm2)H2、1000rpmで、バッチ方式で行い、触媒濃度は、4.5ppmM/溶液(37.5ppmM/重合体、M=CoまたはNi)である。実施例1のように、重合体にアルコールによる停止反応を起こす。リビングポリマー溶液に、30分間または色が消失するまで水素を散布することによって、この重合体に水素による停止反応を起こす。触媒を調製し、表で特に言及してあるものを除き、実施例1とほぼ同じく水素化を行う。得られた材料を実施例1のように試験し、結果を表4に報告する。
【0061】
【表5】
【0062】
実施例の概要
実施例および比較実施例は、水素化ブロック共重合体を得るための従来の方法に対する本発明の方法の利点を示すものである。実施例1では、非常に高分子量の重合体での実験によって、停止反応用アルコール:リビングポリマー中Liのモル比が最高で1.2:1である直鎖アルコールの存在下で、Co触媒がNi触媒より高い活性を有することが示されている。実施例1では、分枝アルコールが触媒活性を抑制しない、または直鎖アルコールよりずっと弱い程度にしか抑制しないことも示されている。実施例2では、本発明の方法の条件下で、より分子量の小さい重合体を用いると、Coのニッケル触媒に対する利点が一層顕著となった。実施例3では、様々な分枝および直鎖アルコールによる触媒活性への影響を例示している。この実施例では、酸性フェノールの触媒活性への影響も示している。実施例4は、本発明の方法を使用して、イソプレンとスチレンのブロック共重合体を水素化した例である。実施例5は、水素で停止反応を起こしたブロック共重合体の水素化について、本発明の方法の利点を例示するものである。
Claims (1)
- a)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンをアニオン重合させて、リビング鎖末端を有するブロックコポリマーを得るステップ、
b)アルコール又は水素とアルコールの混合物からなる群からのメンバーによって前記リビング鎖末端を終結させて、終端したブロック共重合体を調製するステップ、および
c)コバルトカルボキシレートとアルキルアルミニウムを組み合わせることによって調製した触媒の存在下、温度を20から175℃で、前記終端したブロック共重合体と水素を接触させるステップを含み、
(i)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが直鎖アルコールである場合、前記直鎖アルコールは、前記アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から1.2となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用し、
(ii)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが分岐アルコールである場合、前記分岐アルコールは、前記アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から3.0となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用し、
(iii)前記ポリマーがアルコールで終結され、および前記アルコールが直鎖アルコールと分岐アルコールの混合物である場合、前記直鎖アルコールは、前記直鎖アルコール:前記リビング鎖末端モル比が0.05から1.2となる量で、前記リビング鎖末端を終結させるために使用し、
前記分岐アルコールは、2−メチル−2―プロパノール(t−ブタノール)、2−メチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2,6−ジメチル−2−ヘプタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール)、2,2−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及びシクロヘキサノールからなる群から選択される、
選択的に水素化された、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのブロック共重合体を作製する方法。
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