JP5006956B2 - 熱可塑性樹脂組成物とその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、特に、接着性と靭性に優れた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法に関する。
従来、熱可塑性の飽和ポリエステル樹脂は、繊維、プラスチックフィルム、プラスチックボトル等に広く使用されている汎用樹脂である。特に、近年、飲料容器分野においては、ポリエチレンテレフタレートを原料とするペットボトルが急速に普及しており、これに伴って、使用後のペットボトルが大量に排出されている。このような使用後のペットボトルは自治体等による回収が定着しつつあるが、回収された使用後のペットボトルは、単に廃棄物処理場に投棄されたり、燃料として燃やされたりしているのが現状である。また、一方で、環境保全の見地からこれらの使用後のペットボトルを再利用する処理技術であるリサイクル法についての開発研究が鋭意多岐に亘って行われている。
このリサイクル法は、排出物を粉砕して溶融コンパウンドにして樹脂ペレットとして回収し、射出成形品等に再利用する物理的リサイクル法と、化学的処理を加えるケミカルリサイクル法に大別される。物理的リサイクル法は、リサイクルにかかるエネルギー消費等は、ケミカルリサイクル法よりも有利であるが、回収時に混入する異物の選別及び除去にコストを要し、また、成形品の市場が低付加価値品に制約されるという課題を抱えている。
一方、ケミカルリサイクル法では、この方法の代表例として、粉砕した使用後のペットボトルを解重合して得られるモノマーからペットボトルの原料であるテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルを生成し、使用後のペットボトルから再びペットボトルや繊維を製造することが挙げられる。この場合、前述の異物に関する対策は容易であるが、解重合等に大量のエネルギーを消費するという大きな欠点を有している。このような課題を解決するためにペットボトル等の廃棄物を再利用する技術については様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、「ポリエステル系樹脂組成物の製造方法と、ポリエステル系樹脂組成物とそのポリエステル系樹脂組成物を用いたバインダー」という名称で、透明性、流動性及び靭性を備えるポリエステル系樹脂組成物の製造方法と、ポリエステル系樹脂組成物とそのポリエステル系樹脂組成物を用いたバインダーに関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示された発明において、ポリエステル系樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程と、ポリエステル系樹脂と多価アルコールにポリスチレン系樹脂を加えて250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程とを有するものである。
このポリエステル系樹脂組成物では、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを加熱下で混練して、ポリエステル系樹脂のエステル基に多価アルコールの水酸基を反応させてポリエステル系樹脂の主鎖を切断して分子量を低下させることにより、生成されるポリエステル系樹脂組成物の溶融時の高流動性を可能にしている。また、多価アルコールがポリエステル系樹脂の主鎖に結合して分岐構造を与えることにより結晶性を低下させるので、結晶化に伴う白濁を防止し、透明性を保持することができる。さらに、ポリスチレン系樹脂を添加して、ポリエステル系樹脂中にポリスチレン系樹脂を微細分散させることによって、低分子量のポリエステル系樹脂に強度を補強し靭性を付与することを可能にしている。また、ポリエステル系樹脂には、バージン樹脂以外にも粉砕したペットボトル等の廃棄物を用いることができる。
また、飽和ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂のポリマーアロイは、射出成形用途や繊維用途に検討されており、例えば、特許文献2には、「ポリマーアロイ」という名称で、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂からなり機械的強度及び形態保持性に優れたポリマーアロイに関する発明が開示されている。
この特許文献2に開示された発明は、熱可塑性ポリエステル95〜5重量部と、ポリアミド5〜95重量部と、熱可塑性ポリエステルとポリアミドの合計100重量部に対して相溶化剤を0.3〜10重量部含むものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特にポリブチレンテレフタレートが好適とされ、その数平均分子量は、8,000以上で、より好ましくは10,000〜50,000の範囲のものであり、一方、ポリアミド樹脂は、ナイロン6が好適であり、その数平均分子量は、8,000以上で、より好ましくは10,000〜50,000の範囲のものであり、さらに、相溶化剤としては、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテルが好適とされている。そして、一般的に公知な方法で製造することができ、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、相溶化剤と、必要に応じて充填剤や添加剤等を、予備混合して、または予備混合せずに単軸又は多軸の押出機やバンバリーミキサー等の通常の溶融混練加工装置に供給して溶融混練する方法が挙げられる。このような配合で製造したポリマーアロイは、相溶性が良好であり、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とが備える諸特性を維持し、さらに、機械的強度が向上したものとなり、射出成形、押出成形、吹込成形、圧縮成形等により優れた物性を有する成形品を得ることができる。
また、特許文献3には、「ペレットおよびその製造方法」という名称で、中空糸やポーラスファイバー用途に適する分散均一性に優れたポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなるポリマーアロイのペレット及びその製造方法に関する発明が開示されている。
この特許文献3に開示された発明は、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなるポリマーアロイペレットであって、分散ポリマーの平均分散径が1〜50nmであり、ペレットの横断面において、円換算直径が100nm以上である粗大な分散ポリマーの面積比が、ペレット横断面における分散ポリマー全体に対し3%以下であるものである。
また、ポリエステル樹脂にスルホン酸基含有物質やPEGを共重合して、溶解度パラメータをポリアミド樹脂に近づけて、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂の親和性を上げてポリアミド樹脂中にポリエステル樹脂を均一にナノ分散させることを可能としている。そして、ポリアミド/ポリエステルアロイでのゲル化を抑制するために、ポリアミド樹脂のアミン末端を酢酸等で封鎖し、アミン末端基量を5.5×10−5mol当量/g以下、ポリアミド/ポリエステルアロイペレットでのアミン末端基量は6×10−5mol当量/g以下としている。さらに、製造においては、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂を独立に計量及び供給し、二軸押出混練機で溶融混練する際、混練部長がスクリュー有効長の20〜40%とし、高混練することによって、ポリエステル粒子が分散したポリマーアロイを得ることを可能にしている。
そして、特許文献4には、「スクリーン紗用モノフィラメント」という名称で、製織時の削れ及びスカム発生が少なく、かつ乳剤との密着性に優れたスクリーン紗用モノフィラメントに関する発明が開示されている。
この特許文献4に開示された発明は、芯成分と鞘成分で構成され、芯成分は極限粘度0.7〜1.2のポリエチレンテレフタレート、鞘成分には海成分がポリアミド樹脂、島成分が芯成分より低極限粘度のポリエチレンテレフタレートからなるポリマーアロイで形成されるものである。
鞘成分において、海成分のポリアミド樹脂は、製糸の安定性、容易性等からナイロン6及びナイロン66が適しており、島成分は、芯成分より低限粘度のポリエチレンテレフタレートで、島の平均直径が300nm以下であることが必要であり、鞘成分をこのようなポリエチレンテレフタレートを用いた海島構造とすることによって、芯成分との剥離を防止することを可能としている。また、このスクリーン紗用モノフィラメントの製造は、溶融紡糸する際に、芯成分のポリエチレンテレフタレートと、鞘成分で、予めポリアミド樹脂とポリエチレンテレフタレートを溶融混練したポリマーアロイとを別個に溶融してから、紡糸パックに導いて、芯鞘複合口金より紡出することによって製造することができ、特に、エクストルーダーを用いると、鞘成分において、島成分のポリエチレンテレフタレートの平均直径を小さくすることができる。
特開2009−29878号公報 特開平7−188535号公報 特開2005−15705号公報 特開2008−184720号公報
しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、ポリエステル系樹脂に粉砕したペットボトルの廃棄物を用いて高流動性のポリエステル系樹脂組成物を得ることができるので、ポリエステル樹脂のリサイクル材料においてフィルターによる異物除去が容易になるという利点を備えているが、このような用途はごく一部であり、リサイクル材料の利用拡大への寄与は小さいという課題があった。
また、特許文献2に記載された従来の技術では、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂に相溶化剤を添加して、両樹脂の相溶性を改善したポリマーアロイを製造しているが、このポリマーアロイは射出成形や押出成形用途であり、接着剤用途における接着特性の改善が期待できないという課題があった。
そして、特許文献3に記載された従来の技術では、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂とのポリマーアロイにおいて、スルホン酸基含有物質やPEGの共重合ポリエステルを用いたり、低アミノ末端基濃度のポリアミド樹脂を用いたりしてゲル化を低減したり低親和性を改善したりしているが、これらの原料ポリマーは高価であり、中空糸等の高級繊維用途においては目的を達成できるであろうが、汎用の接着剤用途には不向きであるという課題があった。
最後に、特許文献4に記載された従来の技術では、スクリーン紗用モノフィラメントにおいて、鞘部分をポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の海島構造のポリマーアロイにすることによって芯部分のポリエステル樹脂との密着性の向上を図っているが、このポリマーアロイ自体を接着剤として用いるものでなく、接着剤用途に関する知見は得られていない。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の汎用樹脂、さらにはこれらのリサイクル材料を用いて接着性と靭性に優れた低粘度の熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である熱可塑性樹脂組成物は、多価アルコールを用いて分解して生成され固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、を加熱混合して生成され、芳香族ポリエステル樹脂の重量比率が95〜5の範囲にあり、ポリアミド樹脂の重量比率が5〜95の範囲にあるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、多価アルコールで分解されて固有粘度が調整され重量比率が95〜5の範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、重量比率が5〜95の範囲のポリアミド樹脂とが均一に混合した低粘度のものとなり、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の特性を示すように作用する。
また、請求項2に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物は、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物において、芳香族ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.10〜0.20dl/gの範囲であるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1に記載の発明の作用に加えて、固有粘度が0.10〜0.20dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂はポリアミド樹脂とより均一に混合するように作用する。
そして、請求項3に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物は、請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物において、芳香族ポリエステル樹脂は、リサイクル材料であるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、芳香族ポリエステル樹脂には粉砕したペットボトルの廃棄物等のリサイクル材料を使用するので原料コストを下げるように作用する。
そして、請求項4に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、脂肪族ポリアミド樹脂が備える良好な耐熱性を熱可塑性樹脂組成物に付与するように作用する。
そして、請求項5に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂は、多価アルコールを用いて分解して生成されるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、ポリアミド樹脂は多価アルコールによって分解されて低粘度となり、熱可塑性樹脂組成物において芳香族ポリエステル樹脂との相溶性を向上させるように作用する。
そして、請求項6に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と、この芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを加熱混練して熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを有するものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練すると、多価アルコールが芳香族ポリエステル樹脂を分解して芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度を下げるように作用し、そして芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを加熱混練すると、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が均一に混合した熱可塑性樹脂組成物を生成するように作用し、冷却する工程においては反応を停止するように作用する。
また、請求項7に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と熱可塑性樹脂組成物を生成する工程との間に、ポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練して粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成する工程を備えるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、請求項6に記載の発明の作用に加えて、ポリアミド樹脂は多価アルコールを添加して加熱混練することによって粘度数が調整されるように作用する。
最後に、請求項8に記載の発明である熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成するとともに熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを備えるものである。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練すると、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂は分解されて低粘度になるように作用すると同時に、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が均一に混合した熱可塑性樹脂組成物を生成するように作用する。そして、冷却工程では、分解及び生成反応を停止するように作用する。
本発明の請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物では、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂は極めて広い範囲の混合比率において相溶性が得られ、均一に溶解した熱可塑性樹脂組成物を生成することができる。また、得られた熱可塑性樹脂組成物は、接着性、靭性及び流動性に優れており、ホットメルト接着剤や充填剤のバインダー分野に有用となる。特に、高流動性であるので接着剤用途においては、手塗り作業も可能で、また、塗布面に均一に塗布することができ、接着強度のばらつきを抑止することができる。
また、本発明の請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物は、さらに特定の範囲内の固有粘度を有する芳香族ポリエステルを用いることにより、溶融時に高流動性を示すと同時に靱性の優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
そして、本発明の請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物では、原料となる芳香族ポリエステル樹脂にとして、粉砕したペットボトルの廃棄物等のリサイクル材料を用いることができるので、近年大量に排出されているポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートの廃棄物の再利用拡大に貢献し、芳香族ポリエステル樹脂のリサイクル技術として有効となるという利点を備えている。
本発明の請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物では、ポリアミド6、ポリアミド6/66共重合樹脂、ポリアミド66等の脂肪族ポリアミド樹脂を用いるので、脂肪族ポリアミド樹脂が備える良好な接着性と高い耐熱性を付与することができ、また、入手が容易でコスト面において有利となる。
本発明の請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物では、多価アルコールにより分解処理されたポリアミド樹脂を使用するので、特に、接着性及び流動性に優れたものとなる。
そして、本発明の請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、多価アルコールを用いて芳香族ポリエステル樹脂を分解して低粘度とし、高流動性の芳香族ポリエステル樹脂中にポリアミド樹脂を添加して加熱混練することによって芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
また、本発明の請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、ポリアミド樹脂を多価アルコールで分解して低粘度化して芳香族ポリエステル樹脂と混練するので、芳香族ポリエステル樹脂との相溶性が向上し、さらに均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を容易に製造することができる。
最後に、本発明の請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して両樹脂の低粘度化と熱可塑性樹脂組成物の生成を同時に行うので、製造装置の簡素化や時間短縮が可能で、製造コストを低減することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。 本発明の第2の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。 本発明の第3の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。
以下に、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の実施の形態を説明する。(特に、請求項1乃至請求項5に対応)
本実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、多価アルコールを用いて分解して生成され、固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂とを加熱混合して生成されるものである。
なお、本願明細書内において、全ての芳香族ポリエステル樹脂に対する固有粘度は、重量比で5対5となるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒中、濃度1重量%において30℃で測定した溶液粘度である。また、全てのポリアミド樹脂に対する粘度数は、JIS K6933に準拠して96%硫酸中濃度1%、温度23℃でポリアミド樹脂ペレットに対して測定した値である。
本実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の詳細な製造方法については後述するが、多価アルコールで分解した芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂とを加熱混合すると、溶融した芳香族ポリエステル樹脂中にポリアミド樹脂が微細分散した構造を有し、接着性、靭性、耐熱性及び流動性等が優れた熱可塑性樹脂組成物が形成される。
次に、芳香族ポリエステル樹脂の詳細について説明する。
本願明細書内における芳香族ポリエステル樹脂は、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分として、これらの縮合反応により得られる重合体又は共重合体である。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アンスラセンジカルボン酸、2,6−アンスラセンジカルボン酸、4,4”−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸等を用いることができ、中でも、テレフタル酸が好適である。
なお、これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよいし、複数のものを混合して使用してもよい。また、少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸に加えて、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸や、又はp−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸を複数使用することもできる。
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオールや、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等や、これらの混合物を用いることができる。なお、少量であれば、分子量が400〜6,000の長鎖ジオールであるポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等や、グリセリン等の3価以上の多価アルコールを使用することもできる。
そして、芳香族ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等や、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレ−ト/ポリテトラメチレングリコール等の共重合ポリエステルが挙げられる。また、これらの芳香族ポリエステル樹脂が酸無水物のグラフト共重合等で変性されていてもよい。
特に、芳香族ポリエステル樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のホモポリエステル樹脂、及び酸成分にテレフタル酸とイソフタル酸を用いた共重合ポリエステル樹脂が好ましい。共重合ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等であり、これらの共重合ポリエステル樹脂を用いると、ホモポリエステル樹脂に比べて、固化速度が遅いため、得られる熱可塑性樹脂組成物の接着操作時に固化速度を調整することが可能になり操作性が向上させることができる。一方、ホモポリエステル樹脂を使用すると、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が向上する。
また、共重合ポリエステル樹脂において、酸成分であるテレフタル酸とイソフタル酸のモル比率は、テレフタル酸が70〜98の範囲で、イソフタル酸が30〜2の範囲にある共重合体が好適である。ここで、テレフタル酸とイソフタル酸は、それぞれのモル比率を加算して100になるように選定し、例えば、テレフタル酸が70のときイソフタル酸は30となり、テレフタル酸が98のときイソフタル酸は2となる。なお、イソフタル酸を酸成分に加えることにより、ホモのポリエステル樹脂の結晶性が低下し、また、ガラス転移温度も低下するので、接着性は向上するが、一方で、イソフタル酸が多過ぎると、低結晶性、低融点となり、接着後の耐熱性が低下するとともに、接着強度も低下する。
次に、固有粘度について説明する。前述の通り、芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は0.08〜0.25dl/gの範囲で、さらに好ましくは、0.10〜0.20dl/gの範囲であればよい。固有粘度が0.08dl/g未満であると低粘度にはなるが、靱性が低く接着剤として特性が不十分となる。また、固有粘度が0.25dl/gより大きいと溶融時の粘度が高くなり接着剤の塗布時の操作性が悪くなる。
芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は、芳香族ポリエステル樹脂の製造時に調整してもよいし、多価アルコールを用いて加熱下で混練して芳香族ポリエステル樹脂を分解して調整してもよい。芳香族ポリエステル樹脂と多価アルコールの反応は、220〜350℃の温度範囲の加熱下で混練することによって起こり、芳香族ポリエステル樹脂のエステル基に多価アルコールの水酸基が反応して芳香族ポリエステル樹脂の主鎖が切断して分子量が低下するとともに、芳香族ポリエステル樹脂の主鎖に多価アルコールが反応することにより、芳香族ポリエステル樹脂に分岐構造を与える。このような多価アルコールを用いて分解された芳香族ポリエステル樹脂は分岐構造によって結晶化しにくい構造となる。示差走査熱量計測定(昇温速度5℃/分)を行うと、40〜70℃の温度範囲にガラス転移温度、120〜160℃の温度範囲に結晶化ピーク及び180〜210℃の温度範囲に融点ピークが認められ、結晶化度が低く、非晶領域を多く含む構造になっていることがわかる。したがって、接着剤として用いる場合には、融点まで加熱しなくても接着することが可能であり、接着操作時の温度や酸化による変色や劣化を抑えることができる。
多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類や、ペンタエリスリトール等の四官能アルコール類や、ソルビトール、シュークロース等の多糖類や、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式アルコールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等の高分子量アルコールを用いることができる。中でも、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3又は4価のアルコールが好ましく、特に、グリセリンは沸点が高いのでハンドリングが容易である。また、配合する割合は、芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、多価アルコールを2〜15重量部添加するとよく、さらには5〜10重量部が好適である。なお、多価アルコールの添加量が少ないと、接着性及び流動性が低下する。逆に、添加量が多すぎると、接着時に気泡が発生して、接着性を低下させる。
なお、芳香族ポリエステル樹脂の多価アルコールによるアルコール分解後の固有粘度は、芳香族ポリエステル樹脂の種類及びアルコール分解前の固有粘度と、多価アルコールの種類及び添加量、アルコール分解時の温度によって変化する。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、必ずしも多価アルコールによるアルコール分解を行わなくてもよく、固有粘度を0.08〜0.25dl/gの範囲になるように調整してあればよいが、低結晶性を得るためには分岐構造を有していることが好ましく、多価アルコールによるアルコール分解を行わない場合は、芳香族ポリエステル樹脂を、テレフタル酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のジオールと少量のグリセリン等の多価アルコールとの共重合により調整し、3価以上の多価アルコールを含有させるとよい。
また、芳香族ポリエステル樹脂は、重合直後のバージンの芳香族ポリエステル樹脂でもよいし、重合工程内や射出又は押出成形工程内等から排出されたペレットやパージ塊等の回収品でもよい。さらには市場にて消費された後の廃棄物でも良く、例えば、ペットボトルや食品トレー等のリサイクル材料を用いることもできる。リサイクル材料を用いる場合には、前述のように多価アルコールを用いて分解処理して固有粘度を調整すればよいので、近年増加しているリサイクル材料を有効に活用することができる。また、リサイクル材料では、樹脂劣化の黒点物や砂等の異物を含有していることが多いが、得られる熱可塑性樹脂組成物は溶融粘度が極めて低いので、製造工程においてフィルターを設置することにより、これらの異物は容易に除去することができる。
次に、ポリアミド樹脂の詳細について説明する。
本願明細書内におけるポリアミド樹脂は、重合可能なω−アミノ酸類もしくはそのラクタム類、好ましくは3員環以上のラクタム、または二塩基酸類とジアミン類等を原料とし、これらの重縮合によって得られるものである。
ω−アミノ酸類もしくはそのラクタム類としては、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸が挙げられる。また、ラクタム類としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンが挙げられる。
二塩基酸類の具体例としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシリレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。また、アミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンが挙げられる。
そして、ポリアミド樹脂として、好ましくは、ε−カプロラクタムまたはε−アミノカプロン酸を主原料とするポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩を主原料とするポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩とε−カプロラクタム又はε−アミノカプロン酸とを主原料とした共重合ポリアミド6/66、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを主原料とするポリアミドMXD6が挙げられ、これらのポリアミド樹脂をブレンドして用いてもよい。
より好ましくは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、メタキシリレンジアミン等の芳香族基を含有したモノマーの含有率が10重量%以下の脂肪族ポリアミド樹脂であり、ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミド6/66、ポリアミド6/10、ポリアミド12等が挙げられる。これらの脂肪族ポリアミド樹脂は、耐熱性と高靱性を備えるとともに入手しやすい点で好ましい。
また、これらの脂肪族ポリアミド樹脂の中でも、アミド基比率(主鎖の結合(−CH−)に対する結合(−CONH−)の比率、すなわち、結合(−CONH−)/結合(−CH−))が1/3〜1/12の範囲にあるものが好ましく、1/4.5〜1/7が更に好ましい。その代表的なものとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体、ポリアミド610が挙げられる。特に、脂肪族ポリアミド樹脂では、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66共重合体が好適であり、これらの樹脂を複数併用してもよい。なお、アミド基比率は1/3に近いほど耐熱性が良好となるが、一方で樹脂のコストも高くなるため、アミド基比率は1/3以下であることが好ましい。また、アミド基比率を1/12以上とすることにより、良好な接着性を維持することができる。
そして、これらのポリアミド樹脂はある範囲内の重合度、すなわち特定の範囲内の粘度数を有するものが好ましい。好ましい粘度数は、前述のJIS K6933に準拠して、40〜200の範囲、より好ましくは50〜150であり、さらに好ましくは70〜120である。粘度数が40より低いと分子量が小さいため機械的強度が低下し、また、粘度数が200より高いと均一溶解が困難になり、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し、接着操作が悪化し、接着用途向けには不適となる。
さらに、芳香族ポリエステル樹脂との相溶性を改善するため、ポリアミド樹脂についても、芳香族ポリエステル樹脂と同様の方法で多価アルコールを用いて分解処理を行ったものを使用することが好ましい。多価アルコールの配合比率は、ポリアミド樹脂100重量部に対して2〜30重量部であり、さらに好ましくは5〜25重量部である。
次に、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の配合比率は、芳香族ポリエステル樹脂が95〜5重量%の範囲で、ポリアミド樹脂が5〜95重量%の範囲、さらには、芳香族ポリエステル樹脂が90〜10重量%の範囲で、ポリアミド樹脂が10〜90重量%の範囲にあることが好ましい。なお、ホットメルト接着剤用途においては、芳香族ポリエステル樹脂が95〜30重量%の範囲で、ポリアミド樹脂が5〜70重量%の範囲にあること、充填剤等のバインダー用途においては、芳香族ポリエステル樹脂が70〜5重量%の範囲で、ポリアミド樹脂が30〜95重量%の範囲にあることが好ましい。
また、芳香族ポリエステル樹脂が95重量%より多く、ポリアミド樹脂が5重量%より少ないと、芳香族ポリエステル樹脂に対して接着強度や靱性の改善効果が認められず、一方、芳香族ポリエステル樹脂が5重量%より少なく、ポリアミド樹脂が95重量%より多いと、流動性が不良で接着強度の改善が認められない。
また、本実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物を接着剤やバインダー用途に用いる場合に、諸特性向上を目的として一般的に添加されている粘着付与樹脂やワックス等を添加することも可能である。
粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系樹脂、芳香族系樹脂、脂環族系樹脂、クマロン・インデン樹脂等がある。
ロジン系樹脂としてはガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、二量化ロジン、ロジンフェノール及びこれらのロジンのグリセリンやペンタエリスリトール等の各種アルコールエステル類が挙げられ、市販品としては、荒川化学(株)製の商品名エステルガム、ハイペール、スーパーエステル、ペンセル、タマノル等や、イーストマンケミカル社製の商品名ポリペール、ダイマレックス、ハーコリン、フォーラル等が挙げられる。
テルペン系樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、テルペンフェノール、スチレン変性テルペン、及びそれらの水素添加品等が挙げられ、市販品としてはヤスハラケミカル(株)製の商品名YSレジン、YSポリスター、クリアロン等や、アリゾナケミカル社製の商品名ゾナライト、ゾナタック、ナイレッツ等が挙げられる。
脂肪族系樹脂は、ナフサ分解油のイソプレンやシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンのようなC5系留分を重合して得た樹脂とその水素添加品で、市販品としてはトーネックス(株)製の商品名エスコレッツ1000や、日本ゼオン(株)製の商品名クイントンや、丸善石油化学(株)製の商品名マルカレッツや、グッドイヤーケミカル製の商品名ウィングタック等が挙げられる。
芳香族系樹脂は、ナフサ分解油のスチレン類やインデン類等のC9系留分を重合したもので、市販品としては東ソー(株)製の商品名ペトコールや、東邦化学(株)製の商品名ハイレジンや、三井化学(株)製の商品名FTRや、イーストマンケミカル社製の商品名クリスタレックス等が挙げられる。
脂環族系樹脂は、分子中に芳香族ではない環状の化合物を持ったものであり、市販品として三井化学(株)製の商品名ハイレッツや、荒川化学(株)製の商品名アルコンや、トーネックス(株)製の商品名エスコレッツ5000等が挙げられる。
なお、これらの粘着付与樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、粘着付与樹脂の軟化点は、70〜155℃の温度範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜145℃の温度範囲であり、特に好ましくは、100〜140℃の温度範囲である。粘着付与樹脂の軟化点が70℃未満であると得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が実用範囲以下と低くなり、一方、155℃を超えると熱可塑性樹脂組成物の接着性が大きく低下するという懸念がある。また、このような粘着付与樹脂配合量は熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0〜10重量部の範囲内が好ましく、多量に添加すると接着性が低下する。
次に、ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスや、更には植物油の水添品であるカスターワックス等がある。これらは、1種を単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、ワックス成分の融点は、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは、60〜120℃、特に好ましくは、65〜105℃の温度範囲である。ワックスの融点が50℃未満であると耐熱性が低下したり冷却時の固化速度が遅くなったりする。一方、140℃を超えると接着性が大幅に低下する。
また、ワックスの配合量は熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0〜10重量部の範囲内が好ましく、粘着付与樹脂の場合と同様に多量の添加は接着性が阻害される。
さらに、粘着付与樹脂及びワックスのほかにも、酸化防止剤、他の熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム、滑剤、アンチブロッキング剤、着色防止剤、フィラー、可塑剤、増量材等を添加して使用することもできる。
このように構成された本実施の形態では、低粘度であるので溶融時には高流動性を示し、そして、接着性、靭性及び耐熱性を備えた熱可塑性樹脂組成物となり、ホットメルト接着剤や充填剤のバインダーとして利用することができる。
ホットメルト接着剤として利用する場合は、220℃以下の温度で融解が可能であるので操作が容易で、手塗り作業でも接着面に均一に塗布させることができる。
また、充填剤のバインダーとしては、官能基としてカルボキシル基や水酸基を多数有しているので、充填剤への密着性が良好となる。また、高流動性であるので、微粉タイプの充填剤の間隙にも浸透が可能となる。そして、ポリアミド樹脂の種類を選定して低耐熱性とすると、繊維や木粉のような有機充填剤に対しても充填剤の酸化による変色を防止することができる。有効な充填剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、カオリン、水酸化アルミ、アルミナ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、フェライト、カーボンブラック、酸化チタン、鉄粉等の無機充填剤や、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、木綿、木粉、竹粉等の有機充填剤等が挙げられる。
また、多価アルコールによる分解前の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いることができるので、近年増加しているプラスチック廃棄物を有効に活用することが可能である。
次に、本発明の第1乃至第3の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法について図1乃至図3を参照しながら説明する。(特に、請求項6乃至請求項8に対応)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。
図1において、熱可塑性樹脂組成物は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱下で混練し、続いて、ポリアミド樹脂を投入して加熱下で混練し、冷却することによって製造することができる。
まず、ステップS1(高粘度ポリエステル樹脂投入工程)では、アルコール分解前の高粘度の芳香族ポリエステル樹脂をラボプラストミル、2軸押出機、バンバリーミキサー及びベッセル等の混練装置に投入する。なお、投入する高粘度の芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.4〜2.0dl/gの範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2dl/gの範囲である。この芳香族ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の汎用樹脂のリサイクル材料を用いることによれば環境保全やコスト削減に寄与することが可能である。
次に、ステップS2(多価アルコール添加工程)では、多価アルコールを添加する。多価アルコールの配合量は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜15重量部の範囲がよく、さらには5〜10重量部の範囲であるのが好ましい。
そして、ステップS3(第1の加熱・混練工程)では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が投入された混練装置を220℃から350℃の温度範囲で加熱して混練する。このステップS3では、芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールが反応し、芳香族ポリエステル樹脂の分子量が低下するとともに、芳香族ポリエステル樹脂の主鎖に分岐構造が形成される。したがって、ステップS3では、最初は高粘度の芳香族ポリエステル樹脂は、徐々に分子量低下に伴って粘度が低下して、最後には液状になる。ここで、加熱混練後の芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は0.08〜0.25dl/gの範囲であることが好ましく、さらには、0.10〜0.20dl/gの範囲であるとなおよい。
また、このステップS3において、混練機の先端部に好ましくは350メッシュより細かい開度のフィルターを設置し、異物除去工程として加熱・混練工程中に付加すると、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いた場合、リサイクル材料中の異物の除去を容易に行うことができる。
続いて、ステップS4(ポリアミド樹脂投入工程)では、ポリアミド樹脂を投入する。投入するポリアミド樹脂の配合比率は、芳香族ポリエステル樹脂が95〜5重量%の範囲であるとき、ポリアミド樹脂が5〜95重量%の範囲、さらには、芳香族ポリエステル樹脂が90〜10重量%の範囲で、ポリアミド樹脂が10〜90重量%の範囲であることが好ましい。
そして、ステップS5(第2の加熱・混練工程)では、各成分が投入された混練装置を150℃から330℃、好ましくは180℃から280℃の温度範囲で加熱して混練する。このステップS5では、200℃付近の温度で混練することによって、ポリアミド樹脂を芳香族ポリエステル樹脂の強力な溶解力によって微細に分散させることができる。なお、ステップS5における混練装置は、攪拌付き反応槽や2軸押出機でもよいが、低温度で溶解が可能な反応槽が好ましい。
最後に、ステップS6は、冷却工程である。このステップS6では、芳香族ポリエステル樹脂中にポリアミド樹脂の一部が反応するとともに微細分散した溶融樹脂を混練装置から外部に取り出して冷却する。そして、冷却後には、熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
なお、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、例えば、180〜220℃の温度範囲の接着時の溶融温度において、1000〜30000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらには2000〜27000mPa・sの範囲であればなおよい。溶融粘度が1000mPa・s未満であると、接着剤としての凝集力に劣りまた靱性が低くなり、30000mPa・sを超えると、塗布性能が低下により接着性が低下する。なお、測定は東機産業(株)製の回転式粘度計により行った。ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を溶融混合すると、反応が起こり顕著な増粘が想定されるが、本実施の形態では、アルコール分解された低い固有粘度の芳香族ポリエステル樹脂を用いているので、低粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との間で分解、分岐及び結合等の様々な反応が相互作用し、増粘が抑止され、低粘度が保持されると推察される。
このように構成された第1の実施の形態においては、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂を多価アルコールを用いて分解して低粘度とし、ポリアミド樹脂を添加して混合するので、芳香族ポリエステル樹脂の強力な溶解力によってポリアミド樹脂を微細に分散させることができる。
また、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いることができるので、環境保全に加えて原料コストを下げることが可能である。さらに、リサイクル材料の有用な利用方法となる。
次に、図2は、本発明の第2の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。
図2において、第2の実施の形態は、図1を用いて説明した第1の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法のステップS4において投入する低粘度ポリアミド樹脂を、ステップS7乃至ステップS10において調整するものである。本実施の形態においては、ステップS4を除くステップS1乃至ステップS6は、前述の第1の実施の形態におけるステップS1からステップS6の各工程と同様の操作を行うものであり、その詳細な説明は省略する。
まず、ステップS7(高粘度ポリアミド樹脂投入工程)では、高粘度ポリアミド樹脂をラボプラストミル、2軸押出機、バンバリーミキサー及びベッセル等の混練装置に投入する。投入する高粘度ポリアミド樹脂の粘度数は、汎用に入手可能なポリアミド樹脂の粘度数であるものが好ましく、例えば、80〜300ml/gの範囲が挙げられる。
次に、ステップS8(多価アルコール添加工程)では、高粘度ポリアミド樹脂が投入された混練装置に多価アルコールを添加する。多価アルコールの添加量は、高粘度ポリアミド樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲がよく、さらには5〜25重量部の範囲であるのが好ましい。
続いて、ステップS9(加熱・混練工程)では、上記の混練装置を、高粘度ポリアミド樹脂の融点の−10℃から+150℃の温度範囲の加熱下で常圧において混練する。この加熱・混練工程では、高粘度ポリアミド樹脂に多価アルコールが反応し、高粘度ポリアミド樹脂が分解して分子鎖が切断されるとともに、高粘度ポリアミド樹脂の主鎖に多価アルコールが共重合成分として取り込まれて分岐構造が形成される。したがって、最初は高粘度である高粘度ポリアミド樹脂は、徐々に分子量が低下して粘度が低下し、最後には液状になり、低粘度ポリアミド樹脂が生成する。生成した低粘度ポリアミド樹脂の粘度数は40〜200ml/gの範囲内であることが好ましく、さらに、50〜150ml/gの範囲内であることが好ましく、特には、70〜120ml/gの範囲内が好適である。
そして、ステップS10(冷却・乾燥工程)では、生成した低粘度ポリアミド樹脂を混練装置から外部に取り出して冷却し、さらに、冷却後の低粘度ポリアミド樹脂が含有する水分及び揮発成分を乾燥して除去する。
このようにして得られた低粘度のポリアミド樹脂を、ステップS1乃至ステップS3において生成された芳香族ポリエステル樹脂中に、ステップS4において投入し、続いてステップS5で加熱混練、ステップS6で冷却することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
このように構成された本実施の形態においては、ポリアミド樹脂を多価アルコールで分解して芳香族ポリエステル樹脂に添加するので、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との相溶性が改善され、両樹脂がより均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
次に、図3は、本発明の第3の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。
図3において、本第3の実施の形態は、芳香族ポリエステル樹脂の多価アルコールによる分解と、ポリアミド樹脂の多価アルコールによる分解と、さらに、熱可塑性樹脂組成物の生成を同時の工程で行うものである。
まず、ステップS1(高粘度ポリエステル樹脂・高粘度ポリアミド樹脂投入工程)では、アルコール分解前の高粘度の芳香族ポリエステル樹脂と、高粘度のポリアミド樹脂をラボプラストミル、2軸押出機、バンバリーミキサー及びベッセル等の混練装置に投入する。なお、投入する高粘度の芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.4〜2.0dl/gの範囲のものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜1.2dl/gの範囲であり、また、ポリアミド樹脂の粘度数は、80〜300ml/gの範囲である。
なお、各成分の配合比率は、芳香族ポリエステル樹脂が95〜5重量%の範囲であるとき、ポリアミド樹脂が5〜95重量%の範囲、さらには、芳香族ポリエステル樹脂が90〜10重量%の範囲であるとき、ポリアミド樹脂が10〜90重量%の範囲であることが好ましい。
次に、ステップS2(多価アルコール添加工程)では、多価アルコールを添加する。多価アルコールの配合量は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜15重量部の範囲がよく、さらには5〜10重量部の範囲であるのが好ましい。
そして、ステップS3(加熱・混練工程)では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂と高粘度のポリアミド樹脂と多価アルコールが投入された混練装置を220℃から350℃の温度範囲で加熱して混練する。このステップS3では、芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールが反応し、芳香族ポリエステル樹脂の分子量が低下するとともに、芳香族ポリエステル樹脂の主鎖に分岐構造が形成される。また、ポリアミド樹脂にも多価アルコールが反応し、ポリアミド樹脂の分子量が低下するとともに、ポリアミド樹脂の主鎖に分岐構造が形成される。さらに、低粘度になった芳香族ポリエステル樹脂と低粘度になったポリアミド樹脂が均一に分散し、熱可塑性樹脂組成物を生成する。
最後に、ステップS4は、冷却工程である。このステップS4では、芳香族ポリエステル樹脂中にポリアミド樹脂の一部が反応するとともに微細分散した熱可塑性樹脂組成物を混練装置から外部に取り出して冷却する。
このように構成された第3の実施の形態においては、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂と高粘度のポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して、低粘度の芳香族ポリエステル樹脂と低粘度のポリアミド樹脂を生成すると同時に、低粘度となった両樹脂を均一に混合して熱可塑性樹脂組成物を生成することができるので、製造工程を簡素化し、製造に要する時間をも短縮し、簡単且つ低コストで、均一に分散した熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
続いて、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物とその製造方法の実施例について説明する。
原料であるアルコール分解前の芳香族ポリエステル樹脂の種類を変更して、2種類の芳香族ポリエステル樹脂を作製した。
第1の原料として、シート成型工場から排出された共重合ポリエステル樹脂のパージ塊を用いた。この共重合ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.61dl/gでテレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が93/7である共重合ポリエステル樹脂(以下、PET/I樹脂という。)であり、樹脂劣化黒点が散見された。
そして、粉砕したPET/I樹脂18.8kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.2kgを2軸押出機に投入した。
2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、PET/I樹脂とグリセリンを混練した。なお、PET/I樹脂及びグリセリンは連続的に供給され、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、芳香族ポリエステル樹脂となる試料1とした。試料1の固有粘度は0.14dl/gであり、また、2軸押出機の先端に350メッシュのフィルターを設置したので樹脂劣化黒点は目視観察されなかった。この試料1をフライパン上で加熱すると、約100℃で流動性の高い液体となり、再度冷却すると80℃で固体となった。
第2の原料として、使用後のペットボトルを粉砕したポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET樹脂という。)を用いた。
多価アルコールとしてグリセリンを選定し、このグリセリン2.0kgをリービッヒ冷却管付きセパラブルフラスコにて260℃に昇温した。そこに粉砕したPET樹脂18.0kgを徐々に投入し、褐色の透明溶液になるまで撹拌溶解した。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い白褐色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、芳香族ポリエステル樹脂となる試料2とした。試料2の固有粘度は0.11dl/gであった。
次に、PET/I樹脂と、ポリアミド樹脂(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン 1010X1、粘度数80ml/g、以下、PA−1という。)を用い、表1に示すように両樹脂の配合比率を変えて、以下の方法で熱可塑性樹脂組成物を作製した。
PET/I樹脂の粉体と、PA−1とを、攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却するとキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料3乃至試料5とした。
続いて、3種類のポリアミド樹脂(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン 1011FB、粘度数120ml/g、以下、PA−2という。)、ポリアミド共重合樹脂(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン 5013B、粘度数135ml/g、以下、PA−3という。)及びポリアミド12樹脂(宇部興産(株)製、商品名UBEナイロン UBESTA3014B、以下、PA−4という。)と、PET/I樹脂を用いて、熱可塑性樹脂組成物を作製した。
芳香族ポリエステル樹脂として試料1を100gと、PA−2、PA−3及びPA−4の3種類のポリアミド樹脂100gとを、それぞれ攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃(PA−4の場合は220℃)で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却するとキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料6、試料7及び試料8とした。
次に、芳香族ポリエステル樹脂として試料2を用いて熱可塑性樹脂組成物を作製した。
芳香族ポリエステル樹脂としての試料2と、PA−2を配合重量比率70/30と50/50で、攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると薄いキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料9及び試料10とした。
芳香族ポリエステル樹脂としての試料2と、PA−3を配合重量比率50/50で、攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると薄いキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料11とした。
アルコール分解前の芳香族ポリエステルとしてPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ノバデュラン5010、以下、PBT樹脂という。)とアルコール分解前のポリアミド樹脂としてPA−3のそれぞれ525gを、2.5リッターのセパラブルフラスコ中の240℃に加熱されたグリセリン150gに同時に投入し、加熱下で攪拌した。240℃で均一な低粘度の液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると黄褐色の固体が得られた。この固体はハンマーで強く叩かないと破断しないほどに強固なものであった。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料12とした。
次に、溶融粘度については、試料1、試料3乃至試料5及び試料13に対して測定した。また試料1乃至試料12、PA−1乃至PA−4のポリアミド樹脂について、軟化温度、引張剪断接着強度、引張最大点変位量ならびに吸水による引張弾性率の変化率の測定及び平板落下試験を行った。
(1)溶融粘度
試料1について東機産業(株)製TVC−5型回転粘度計を用いて、200℃において測定した。試料13及び試料3乃至試料5は固化速度が速いため、回転粘度計では測定ができなかった。試料13のポリアミド樹脂については東洋精機製キャピログラフ1B型を用いて240℃、せん断速度100sec−1にて測定した。試料3乃至試料5の熱可塑性樹脂組成物はキャピログラフのシリンダー内壁への付着が激しく試料の充填が困難なため測定することが困難であり、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン製溶融粘弾性測定装置ARESを用いて220℃、周波数1rad/secで測定した。
(2)吸水による引張弾性率の変化率
熱可塑性樹脂組成物、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂の粉末またはペレットを240℃に加熱後、2mm厚みの100mm角の平板をプレスにて圧縮成形した。平板より20mm幅の短冊状に切り出した試験片を室温にて10日間水中にて吸水させ、2日間室温で風乾した。吸水前後の試験片に対して、JIS K7161に準拠して引張弾性率を測定した。次式にて引張弾性率の変化率を計算した。
(Y0−Y20)/Y0×100
ここでY20は、吸水後の引張弾性率、Y0は吸水前の引張弾性率である。
(3)軟化温度、木材及びポリアミド樹脂、PBT樹脂への引張剪断接着強度及び引張最大点変位量
木材への接着試験の被接着材として、厚み3mmの木材を選定し、接着面は幅20mm、長さ25mmとした。表2の各試料を200℃で溶融し(試料13と16については220℃)、それぞれ接着面に手塗りで塗布した。なお、試料13については、糸引きが激しく、塗布作業が難しかった。また、試料13及び試料16については溶融粘度が高過ぎ、均一な塗布が不能であった。接着試験片を常温で放冷後、JISK6833−1及びJISK6850に準じて軟化温度、引張剪断接着強度及び引張最大点変位量をそれぞれ測定した。
ポリアミド樹脂、PBT樹脂への接着試験の被接着材として、ポリアミド樹脂(PA−2)またはPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 商品名NOVADURAN5010R5(良離形グレード))を溶融温度250℃、金型温度90℃で射出成型にて得たISO引張試験片(厚み4mm)の中央部を切断後、メタノールで表面を洗浄し風乾後、120℃で30分乾燥した。切断した試験片の長さ25mmが重なるように、表3の各試料を200℃で溶融し(試料13については220℃)、それぞれ接着面に手塗りで塗布した。接着試験片を常温で放冷後、JISK6850に準じて破壊の状態を観察すると同時に引張剪断接着強度及び引張最大点変位量をそれぞれ測定した。
(4)平板落下試験
表3の各試料100重量部に対してタルク粉末(林化成社製、タルカンパウダーPK−C、平均粒径11μm)200重量部を、2軸押出機を用いて240℃でコンパウンドし、ペレットを得た。このペレットを240℃に加熱後、3mm厚みの100mm角の平板を、プレスを用いて圧縮成形した。この平板を1mの高さからコンクリートの床に落下させて破損の有無を目視した。
溶融粘度、軟化温度、木材への接着試験、吸水による引張弾性率の変化率についての得られた結果を表2に示す。なお、表2に示した木材への接着試験における破壊のタイプはいずれも凝集破壊であり、接着剤層が破断した。引張最大点変位量と平板の落下強度は靱性の目安となる測定値であり、変位量の数値が大きいほど靱性が高いと判断される。
木材より接着性が悪いポリアミド樹脂及びPBT樹脂への接着試験と平板落下試験の結果を表3に示す。なお、凝集破壊は接着剤層が破断したもので、界面破壊は被接着材面と接着剤の界面で破壊したもので、界面破壊は実際には被接着材への接着性が著しく劣っていることを示している。
以上説明したように、本発明の請求項1乃至請求項8に記載された発明は、リサイクル材料を原料に使用可能で、接着性、靭性、高流動性及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物とその製造方法を提供可能であり、接着剤や充填剤のバインダー等において利用可能である。

Claims (8)

  1. 多価アルコールを用いて分解して生成され固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、を加熱混合して生成され、前記芳香族ポリエステル樹脂の重量比率が95〜5の範囲にあり、前記ポリアミド樹脂の重量比率が5〜95の範囲にあることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記芳香族ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.10〜0.20dl/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記芳香族ポリエステル樹脂は、リサイクル材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミド樹脂は、多価アルコールを用いて分解して生成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と、この芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを加熱混練して熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と前記熱可塑性樹脂組成物を生成する工程との間に、ポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練して粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成する工程を備えることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  8. 高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成するとともに熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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