JP5006956B2 - 熱可塑性樹脂組成物とその製造方法 - Google Patents
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Description
このリサイクル法は、排出物を粉砕して溶融コンパウンドにして樹脂ペレットとして回収し、射出成形品等に再利用する物理的リサイクル法と、化学的処理を加えるケミカルリサイクル法に大別される。物理的リサイクル法は、リサイクルにかかるエネルギー消費等は、ケミカルリサイクル法よりも有利であるが、回収時に混入する異物の選別及び除去にコストを要し、また、成形品の市場が低付加価値品に制約されるという課題を抱えている。
一方、ケミカルリサイクル法では、この方法の代表例として、粉砕した使用後のペットボトルを解重合して得られるモノマーからペットボトルの原料であるテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルを生成し、使用後のペットボトルから再びペットボトルや繊維を製造することが挙げられる。この場合、前述の異物に関する対策は容易であるが、解重合等に大量のエネルギーを消費するという大きな欠点を有している。このような課題を解決するためにペットボトル等の廃棄物を再利用する技術については様々な検討がなされている。
この特許文献1に開示された発明において、ポリエステル系樹脂組成物の製造方法は、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程と、ポリエステル系樹脂と多価アルコールにポリスチレン系樹脂を加えて250℃以上320℃以下の範囲の温度で混練する工程とを有するものである。
このポリエステル系樹脂組成物では、ポリエステル系樹脂と多価アルコールを加熱下で混練して、ポリエステル系樹脂のエステル基に多価アルコールの水酸基を反応させてポリエステル系樹脂の主鎖を切断して分子量を低下させることにより、生成されるポリエステル系樹脂組成物の溶融時の高流動性を可能にしている。また、多価アルコールがポリエステル系樹脂の主鎖に結合して分岐構造を与えることにより結晶性を低下させるので、結晶化に伴う白濁を防止し、透明性を保持することができる。さらに、ポリスチレン系樹脂を添加して、ポリエステル系樹脂中にポリスチレン系樹脂を微細分散させることによって、低分子量のポリエステル系樹脂に強度を補強し靭性を付与することを可能にしている。また、ポリエステル系樹脂には、バージン樹脂以外にも粉砕したペットボトル等の廃棄物を用いることができる。
この特許文献2に開示された発明は、熱可塑性ポリエステル95〜5重量部と、ポリアミド5〜95重量部と、熱可塑性ポリエステルとポリアミドの合計100重量部に対して相溶化剤を0.3〜10重量部含むものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、特にポリブチレンテレフタレートが好適とされ、その数平均分子量は、8,000以上で、より好ましくは10,000〜50,000の範囲のものであり、一方、ポリアミド樹脂は、ナイロン6が好適であり、その数平均分子量は、8,000以上で、より好ましくは10,000〜50,000の範囲のものであり、さらに、相溶化剤としては、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテルが好適とされている。そして、一般的に公知な方法で製造することができ、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、相溶化剤と、必要に応じて充填剤や添加剤等を、予備混合して、または予備混合せずに単軸又は多軸の押出機やバンバリーミキサー等の通常の溶融混練加工装置に供給して溶融混練する方法が挙げられる。このような配合で製造したポリマーアロイは、相溶性が良好であり、熱可塑性ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とが備える諸特性を維持し、さらに、機械的強度が向上したものとなり、射出成形、押出成形、吹込成形、圧縮成形等により優れた物性を有する成形品を得ることができる。
この特許文献3に開示された発明は、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂からなるポリマーアロイペレットであって、分散ポリマーの平均分散径が1〜50nmであり、ペレットの横断面において、円換算直径が100nm以上である粗大な分散ポリマーの面積比が、ペレット横断面における分散ポリマー全体に対し3%以下であるものである。
また、ポリエステル樹脂にスルホン酸基含有物質やPEGを共重合して、溶解度パラメータをポリアミド樹脂に近づけて、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂の親和性を上げてポリアミド樹脂中にポリエステル樹脂を均一にナノ分散させることを可能としている。そして、ポリアミド/ポリエステルアロイでのゲル化を抑制するために、ポリアミド樹脂のアミン末端を酢酸等で封鎖し、アミン末端基量を5.5×10−5mol当量/g以下、ポリアミド/ポリエステルアロイペレットでのアミン末端基量は6×10−5mol当量/g以下としている。さらに、製造においては、ポリアミド樹脂とポリエステル樹脂を独立に計量及び供給し、二軸押出混練機で溶融混練する際、混練部長がスクリュー有効長の20〜40%とし、高混練することによって、ポリエステル粒子が分散したポリマーアロイを得ることを可能にしている。
この特許文献4に開示された発明は、芯成分と鞘成分で構成され、芯成分は極限粘度0.7〜1.2のポリエチレンテレフタレート、鞘成分には海成分がポリアミド樹脂、島成分が芯成分より低極限粘度のポリエチレンテレフタレートからなるポリマーアロイで形成されるものである。
鞘成分において、海成分のポリアミド樹脂は、製糸の安定性、容易性等からナイロン6及びナイロン66が適しており、島成分は、芯成分より低限粘度のポリエチレンテレフタレートで、島の平均直径が300nm以下であることが必要であり、鞘成分をこのようなポリエチレンテレフタレートを用いた海島構造とすることによって、芯成分との剥離を防止することを可能としている。また、このスクリーン紗用モノフィラメントの製造は、溶融紡糸する際に、芯成分のポリエチレンテレフタレートと、鞘成分で、予めポリアミド樹脂とポリエチレンテレフタレートを溶融混練したポリマーアロイとを別個に溶融してから、紡糸パックに導いて、芯鞘複合口金より紡出することによって製造することができ、特に、エクストルーダーを用いると、鞘成分において、島成分のポリエチレンテレフタレートの平均直径を小さくすることができる。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、多価アルコールで分解されて固有粘度が調整され重量比率が95〜5の範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、重量比率が5〜95の範囲のポリアミド樹脂とが均一に混合した低粘度のものとなり、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂の特性を示すように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1に記載の発明の作用に加えて、固有粘度が0.10〜0.20dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂はポリアミド樹脂とより均一に混合するように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、芳香族ポリエステル樹脂には粉砕したペットボトルの廃棄物等のリサイクル材料を使用するので原料コストを下げるように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、脂肪族ポリアミド樹脂が備える良好な耐熱性を熱可塑性樹脂組成物に付与するように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物では、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発明の作用に加えて、ポリアミド樹脂は多価アルコールによって分解されて低粘度となり、熱可塑性樹脂組成物において芳香族ポリエステル樹脂との相溶性を向上させるように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練すると、多価アルコールが芳香族ポリエステル樹脂を分解して芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度を下げるように作用し、そして芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを加熱混練すると、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が均一に混合した熱可塑性樹脂組成物を生成するように作用し、冷却する工程においては反応を停止するように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、請求項6に記載の発明の作用に加えて、ポリアミド樹脂は多価アルコールを添加して加熱混練することによって粘度数が調整されるように作用する。
上記構成の熱可塑性樹脂組成物の製造方法では、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練すると、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂は分解されて低粘度になるように作用すると同時に、芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂が均一に混合した熱可塑性樹脂組成物を生成するように作用する。そして、冷却工程では、分解及び生成反応を停止するように作用する。
本実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、多価アルコールを用いて分解して生成され、固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂とを加熱混合して生成されるものである。
なお、本願明細書内において、全ての芳香族ポリエステル樹脂に対する固有粘度は、重量比で5対5となるフェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒中、濃度1重量%において30℃で測定した溶液粘度である。また、全てのポリアミド樹脂に対する粘度数は、JIS K6933に準拠して96%硫酸中濃度1%、温度23℃でポリアミド樹脂ペレットに対して測定した値である。
本実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の詳細な製造方法については後述するが、多価アルコールで分解した芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂とを加熱混合すると、溶融した芳香族ポリエステル樹脂中にポリアミド樹脂が微細分散した構造を有し、接着性、靭性、耐熱性及び流動性等が優れた熱可塑性樹脂組成物が形成される。
本願明細書内における芳香族ポリエステル樹脂は、芳香環を重合体の連鎖単位に有するポリエステル樹脂で、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体とを主成分として、これらの縮合反応により得られる重合体又は共重合体である。
なお、これらの芳香族ジカルボン酸は単独で用いてもよいし、複数のものを混合して使用してもよい。また、少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸に加えて、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸や、又はp−オキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸を複数使用することもできる。
また、共重合ポリエステル樹脂において、酸成分であるテレフタル酸とイソフタル酸のモル比率は、テレフタル酸が70〜98の範囲で、イソフタル酸が30〜2の範囲にある共重合体が好適である。ここで、テレフタル酸とイソフタル酸は、それぞれのモル比率を加算して100になるように選定し、例えば、テレフタル酸が70のときイソフタル酸は30となり、テレフタル酸が98のときイソフタル酸は2となる。なお、イソフタル酸を酸成分に加えることにより、ホモのポリエステル樹脂の結晶性が低下し、また、ガラス転移温度も低下するので、接着性は向上するが、一方で、イソフタル酸が多過ぎると、低結晶性、低融点となり、接着後の耐熱性が低下するとともに、接着強度も低下する。
芳香族ポリエステル樹脂の固有粘度は、芳香族ポリエステル樹脂の製造時に調整してもよいし、多価アルコールを用いて加熱下で混練して芳香族ポリエステル樹脂を分解して調整してもよい。芳香族ポリエステル樹脂と多価アルコールの反応は、220〜350℃の温度範囲の加熱下で混練することによって起こり、芳香族ポリエステル樹脂のエステル基に多価アルコールの水酸基が反応して芳香族ポリエステル樹脂の主鎖が切断して分子量が低下するとともに、芳香族ポリエステル樹脂の主鎖に多価アルコールが反応することにより、芳香族ポリエステル樹脂に分岐構造を与える。このような多価アルコールを用いて分解された芳香族ポリエステル樹脂は分岐構造によって結晶化しにくい構造となる。示差走査熱量計測定(昇温速度5℃/分)を行うと、40〜70℃の温度範囲にガラス転移温度、120〜160℃の温度範囲に結晶化ピーク及び180〜210℃の温度範囲に融点ピークが認められ、結晶化度が低く、非晶領域を多く含む構造になっていることがわかる。したがって、接着剤として用いる場合には、融点まで加熱しなくても接着することが可能であり、接着操作時の温度や酸化による変色や劣化を抑えることができる。
なお、芳香族ポリエステル樹脂の多価アルコールによるアルコール分解後の固有粘度は、芳香族ポリエステル樹脂の種類及びアルコール分解前の固有粘度と、多価アルコールの種類及び添加量、アルコール分解時の温度によって変化する。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、必ずしも多価アルコールによるアルコール分解を行わなくてもよく、固有粘度を0.08〜0.25dl/gの範囲になるように調整してあればよいが、低結晶性を得るためには分岐構造を有していることが好ましく、多価アルコールによるアルコール分解を行わない場合は、芳香族ポリエステル樹脂を、テレフタル酸等のジカルボン酸とエチレングリコール等のジオールと少量のグリセリン等の多価アルコールとの共重合により調整し、3価以上の多価アルコールを含有させるとよい。
本願明細書内におけるポリアミド樹脂は、重合可能なω−アミノ酸類もしくはそのラクタム類、好ましくは3員環以上のラクタム、または二塩基酸類とジアミン類等を原料とし、これらの重縮合によって得られるものである。
ω−アミノ酸類もしくはそのラクタム類としては、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸が挙げられる。また、ラクタム類としては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンが挙げられる。
二塩基酸類の具体例としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシリレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。また、アミン類としては、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンが挙げられる。
より好ましくは、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、メタキシリレンジアミン等の芳香族基を含有したモノマーの含有率が10重量%以下の脂肪族ポリアミド樹脂であり、ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミド6/66、ポリアミド6/10、ポリアミド12等が挙げられる。これらの脂肪族ポリアミド樹脂は、耐熱性と高靱性を備えるとともに入手しやすい点で好ましい。
さらに、芳香族ポリエステル樹脂との相溶性を改善するため、ポリアミド樹脂についても、芳香族ポリエステル樹脂と同様の方法で多価アルコールを用いて分解処理を行ったものを使用することが好ましい。多価アルコールの配合比率は、ポリアミド樹脂100重量部に対して2〜30重量部であり、さらに好ましくは5〜25重量部である。
また、芳香族ポリエステル樹脂が95重量%より多く、ポリアミド樹脂が5重量%より少ないと、芳香族ポリエステル樹脂に対して接着強度や靱性の改善効果が認められず、一方、芳香族ポリエステル樹脂が5重量%より少なく、ポリアミド樹脂が95重量%より多いと、流動性が不良で接着強度の改善が認められない。
粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系樹脂、芳香族系樹脂、脂環族系樹脂、クマロン・インデン樹脂等がある。
テルペン系樹脂としては、αピネン、βピネン、ジペンテン、テルペンフェノール、スチレン変性テルペン、及びそれらの水素添加品等が挙げられ、市販品としてはヤスハラケミカル(株)製の商品名YSレジン、YSポリスター、クリアロン等や、アリゾナケミカル社製の商品名ゾナライト、ゾナタック、ナイレッツ等が挙げられる。
脂肪族系樹脂は、ナフサ分解油のイソプレンやシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンのようなC5系留分を重合して得た樹脂とその水素添加品で、市販品としてはトーネックス(株)製の商品名エスコレッツ1000や、日本ゼオン(株)製の商品名クイントンや、丸善石油化学(株)製の商品名マルカレッツや、グッドイヤーケミカル製の商品名ウィングタック等が挙げられる。
脂環族系樹脂は、分子中に芳香族ではない環状の化合物を持ったものであり、市販品として三井化学(株)製の商品名ハイレッツや、荒川化学(株)製の商品名アルコンや、トーネックス(株)製の商品名エスコレッツ5000等が挙げられる。
なお、これらの粘着付与樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、粘着付与樹脂の軟化点は、70〜155℃の温度範囲が好ましく、さらに好ましくは80〜145℃の温度範囲であり、特に好ましくは、100〜140℃の温度範囲である。粘着付与樹脂の軟化点が70℃未満であると得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が実用範囲以下と低くなり、一方、155℃を超えると熱可塑性樹脂組成物の接着性が大きく低下するという懸念がある。また、このような粘着付与樹脂配合量は熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0〜10重量部の範囲内が好ましく、多量に添加すると接着性が低下する。
また、ワックス成分の融点は、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは、60〜120℃、特に好ましくは、65〜105℃の温度範囲である。ワックスの融点が50℃未満であると耐熱性が低下したり冷却時の固化速度が遅くなったりする。一方、140℃を超えると接着性が大幅に低下する。
また、ワックスの配合量は熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して0〜10重量部の範囲内が好ましく、粘着付与樹脂の場合と同様に多量の添加は接着性が阻害される。
さらに、粘着付与樹脂及びワックスのほかにも、酸化防止剤、他の熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム、滑剤、アンチブロッキング剤、着色防止剤、フィラー、可塑剤、増量材等を添加して使用することもできる。
ホットメルト接着剤として利用する場合は、220℃以下の温度で融解が可能であるので操作が容易で、手塗り作業でも接着面に均一に塗布させることができる。
また、充填剤のバインダーとしては、官能基としてカルボキシル基や水酸基を多数有しているので、充填剤への密着性が良好となる。また、高流動性であるので、微粉タイプの充填剤の間隙にも浸透が可能となる。そして、ポリアミド樹脂の種類を選定して低耐熱性とすると、繊維や木粉のような有機充填剤に対しても充填剤の酸化による変色を防止することができる。有効な充填剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、カオリン、水酸化アルミ、アルミナ、ワラストナイト、炭酸カルシウム、フェライト、カーボンブラック、酸化チタン、鉄粉等の無機充填剤や、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、木綿、木粉、竹粉等の有機充填剤等が挙げられる。
また、多価アルコールによる分解前の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いることができるので、近年増加しているプラスチック廃棄物を有効に活用することが可能である。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法を示す概念図である。
図1において、熱可塑性樹脂組成物は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱下で混練し、続いて、ポリアミド樹脂を投入して加熱下で混練し、冷却することによって製造することができる。
次に、ステップS2(多価アルコール添加工程)では、多価アルコールを添加する。多価アルコールの配合量は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜15重量部の範囲がよく、さらには5〜10重量部の範囲であるのが好ましい。
また、このステップS3において、混練機の先端部に好ましくは350メッシュより細かい開度のフィルターを設置し、異物除去工程として加熱・混練工程中に付加すると、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いた場合、リサイクル材料中の異物の除去を容易に行うことができる。
なお、得られる熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度は、例えば、180〜220℃の温度範囲の接着時の溶融温度において、1000〜30000mPa・sの範囲であることが好ましく、さらには2000〜27000mPa・sの範囲であればなおよい。溶融粘度が1000mPa・s未満であると、接着剤としての凝集力に劣りまた靱性が低くなり、30000mPa・sを超えると、塗布性能が低下により接着性が低下する。なお、測定は東機産業(株)製の回転式粘度計により行った。ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を溶融混合すると、反応が起こり顕著な増粘が想定されるが、本実施の形態では、アルコール分解された低い固有粘度の芳香族ポリエステル樹脂を用いているので、低粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂との間で分解、分岐及び結合等の様々な反応が相互作用し、増粘が抑止され、低粘度が保持されると推察される。
また、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂にリサイクル材料を用いることができるので、環境保全に加えて原料コストを下げることが可能である。さらに、リサイクル材料の有用な利用方法となる。
図2において、第2の実施の形態は、図1を用いて説明した第1の実施の形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法のステップS4において投入する低粘度ポリアミド樹脂を、ステップS7乃至ステップS10において調整するものである。本実施の形態においては、ステップS4を除くステップS1乃至ステップS6は、前述の第1の実施の形態におけるステップS1からステップS6の各工程と同様の操作を行うものであり、その詳細な説明は省略する。
まず、ステップS7(高粘度ポリアミド樹脂投入工程)では、高粘度ポリアミド樹脂をラボプラストミル、2軸押出機、バンバリーミキサー及びベッセル等の混練装置に投入する。投入する高粘度ポリアミド樹脂の粘度数は、汎用に入手可能なポリアミド樹脂の粘度数であるものが好ましく、例えば、80〜300ml/gの範囲が挙げられる。
このようにして得られた低粘度のポリアミド樹脂を、ステップS1乃至ステップS3において生成された芳香族ポリエステル樹脂中に、ステップS4において投入し、続いてステップS5で加熱混練、ステップS6で冷却することによって熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
図3において、本第3の実施の形態は、芳香族ポリエステル樹脂の多価アルコールによる分解と、ポリアミド樹脂の多価アルコールによる分解と、さらに、熱可塑性樹脂組成物の生成を同時の工程で行うものである。
なお、各成分の配合比率は、芳香族ポリエステル樹脂が95〜5重量%の範囲であるとき、ポリアミド樹脂が5〜95重量%の範囲、さらには、芳香族ポリエステル樹脂が90〜10重量%の範囲であるとき、ポリアミド樹脂が10〜90重量%の範囲であることが好ましい。
次に、ステップS2(多価アルコール添加工程)では、多価アルコールを添加する。多価アルコールの配合量は、高粘度の芳香族ポリエステル樹脂100重量部に対して、2〜15重量部の範囲がよく、さらには5〜10重量部の範囲であるのが好ましい。
第1の原料として、シート成型工場から排出された共重合ポリエステル樹脂のパージ塊を用いた。この共重合ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.61dl/gでテレフタル酸とイソフタル酸のモル比率が93/7である共重合ポリエステル樹脂(以下、PET/I樹脂という。)であり、樹脂劣化黒点が散見された。
そして、粉砕したPET/I樹脂18.8kgに、多価アルコールとしてのグリセリン1.2kgを2軸押出機に投入した。
2軸押出機において、ホッパー下以外のシリンダー温度を320℃、回転数を250rpmとして、PET/I樹脂とグリセリンを混練した。なお、PET/I樹脂及びグリセリンは連続的に供給され、2軸押出機内部での平均の混練時間は5分である。
混練が終了すると、2軸押出機の出口ノズルから、低粘度の溶融樹脂が排出された。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い無色透明の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、芳香族ポリエステル樹脂となる試料1とした。試料1の固有粘度は0.14dl/gであり、また、2軸押出機の先端に350メッシュのフィルターを設置したので樹脂劣化黒点は目視観察されなかった。この試料1をフライパン上で加熱すると、約100℃で流動性の高い液体となり、再度冷却すると80℃で固体となった。
多価アルコールとしてグリセリンを選定し、このグリセリン2.0kgをリービッヒ冷却管付きセパラブルフラスコにて260℃に昇温した。そこに粉砕したPET樹脂18.0kgを徐々に投入し、褐色の透明溶液になるまで撹拌溶解した。この溶融樹脂を水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると脆い白褐色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、芳香族ポリエステル樹脂となる試料2とした。試料2の固有粘度は0.11dl/gであった。
芳香族ポリエステル樹脂として試料1を100gと、PA−2、PA−3及びPA−4の3種類のポリアミド樹脂100gとを、それぞれ攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃(PA−4の場合は220℃)で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却するとキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料6、試料7及び試料8とした。
芳香族ポリエステル樹脂としての試料2と、PA−2を配合重量比率70/30と50/50で、攪拌機を付した500mlのセパラブルフラスコに投入し、加熱下で攪拌した。240℃で均一な液体となったので、攪拌を中止して、水に浮かべたアルミパンに取り出して冷却すると薄いキャラメル色の固体が得られた。得られた固体を室温で粉砕して粉体とし、熱可塑性樹脂組成物となる試料9及び試料10とした。
(1)溶融粘度
試料1について東機産業(株)製TVC−5型回転粘度計を用いて、200℃において測定した。試料13及び試料3乃至試料5は固化速度が速いため、回転粘度計では測定ができなかった。試料13のポリアミド樹脂については東洋精機製キャピログラフ1B型を用いて240℃、せん断速度100sec−1にて測定した。試料3乃至試料5の熱可塑性樹脂組成物はキャピログラフのシリンダー内壁への付着が激しく試料の充填が困難なため測定することが困難であり、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン製溶融粘弾性測定装置ARESを用いて220℃、周波数1rad/secで測定した。
(2)吸水による引張弾性率の変化率
熱可塑性樹脂組成物、芳香族ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂の粉末またはペレットを240℃に加熱後、2mm厚みの100mm角の平板をプレスにて圧縮成形した。平板より20mm幅の短冊状に切り出した試験片を室温にて10日間水中にて吸水させ、2日間室温で風乾した。吸水前後の試験片に対して、JIS K7161に準拠して引張弾性率を測定した。次式にて引張弾性率の変化率を計算した。
(Y0−Y20)/Y0×100
ここでY20は、吸水後の引張弾性率、Y0は吸水前の引張弾性率である。
(3)軟化温度、木材及びポリアミド樹脂、PBT樹脂への引張剪断接着強度及び引張最大点変位量
木材への接着試験の被接着材として、厚み3mmの木材を選定し、接着面は幅20mm、長さ25mmとした。表2の各試料を200℃で溶融し(試料13と16については220℃)、それぞれ接着面に手塗りで塗布した。なお、試料13については、糸引きが激しく、塗布作業が難しかった。また、試料13及び試料16については溶融粘度が高過ぎ、均一な塗布が不能であった。接着試験片を常温で放冷後、JISK6833−1及びJISK6850に準じて軟化温度、引張剪断接着強度及び引張最大点変位量をそれぞれ測定した。
ポリアミド樹脂、PBT樹脂への接着試験の被接着材として、ポリアミド樹脂(PA−2)またはPBT樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製 商品名NOVADURAN5010R5(良離形グレード))を溶融温度250℃、金型温度90℃で射出成型にて得たISO引張試験片(厚み4mm)の中央部を切断後、メタノールで表面を洗浄し風乾後、120℃で30分乾燥した。切断した試験片の長さ25mmが重なるように、表3の各試料を200℃で溶融し(試料13については220℃)、それぞれ接着面に手塗りで塗布した。接着試験片を常温で放冷後、JISK6850に準じて破壊の状態を観察すると同時に引張剪断接着強度及び引張最大点変位量をそれぞれ測定した。
(4)平板落下試験
表3の各試料100重量部に対してタルク粉末(林化成社製、タルカンパウダーPK−C、平均粒径11μm)200重量部を、2軸押出機を用いて240℃でコンパウンドし、ペレットを得た。このペレットを240℃に加熱後、3mm厚みの100mm角の平板を、プレスを用いて圧縮成形した。この平板を1mの高さからコンクリートの床に落下させて破損の有無を目視した。
Claims (8)
- 多価アルコールを用いて分解して生成され固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と、ポリアミド樹脂と、を加熱混合して生成され、前記芳香族ポリエステル樹脂の重量比率が95〜5の範囲にあり、前記ポリアミド樹脂の重量比率が5〜95の範囲にあることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.10〜0.20dl/gの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記芳香族ポリエステル樹脂は、リサイクル材料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂は、多価アルコールを用いて分解して生成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 高粘度の芳香族ポリエステル樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と、この芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂とを加熱混練して熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記芳香族ポリエステル樹脂を生成する工程と前記熱可塑性樹脂組成物を生成する工程との間に、ポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練して粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成する工程を備えることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 高粘度の芳香族ポリエステル樹脂とポリアミド樹脂に多価アルコールを添加して加熱混練し,固有粘度が0.08〜0.25dl/gの範囲の芳香族ポリエステル樹脂と粘度数を調整したポリアミド樹脂を生成するとともに熱可塑性樹脂組成物を生成する工程と、この熱可塑性樹脂組成物を冷却する工程とを備えることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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