JP3355742B2 - 強化樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

強化樹脂組成物およびその成形品

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JP3355742B2 JP33474193A JP33474193A JP3355742B2 JP 3355742 B2 JP3355742 B2 JP 3355742B2 JP 33474193 A JP33474193 A JP 33474193A JP 33474193 A JP33474193 A JP 33474193A JP 3355742 B2 JP3355742 B2 JP 3355742B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた耐熱性、寸法安定
性および低温時の耐衝撃性とりわけ優れた耐面衝撃性を
有する成形品を与え得る強化樹脂組成物に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年プラスチックの高性能化に対する要
求は一層高まりつつあるが、熱可塑性のプラスチック材
料をエンジニアリング部品や構造用材料として使用する
場合の問題点の一つはプラスチック材料が金属材料に比
べ大きな線膨張係数を有することであり、金属材料との
接着、複合化を行なう上で多くの問題を有している。
【0003】線膨張係数の比較的小さい高分子材料とし
て熱硬化性のバルクモールディングコンパウンド(BM
C)やシートモールディングコンパウンド(SMC)が
開発されてはいるが、熱硬化性材料の宿命として、本質
的に脆性材料である点、リサイクルが困難である点など
のために適用範囲が限定されている。
【0004】また、プラスチック材料には室温領域では
比較的良好な耐衝撃性を有しているものもあるが、例え
ば−30℃以下の低温においては靭性を失い、大きな衝
撃が加わった際に脆性破壊するため、金属材料とは異な
った設計上の配慮が必要になるなどの問題がある。
【0005】一方、プラスチック材料の線膨張係数を低
減するための手法としては、無機の充填材を使用した
り、ガラス繊維等の繊維状強化材を使用する方法が提案
されているものの、これらの手法はプラスチック材料の
脆性破壊を助長するものであり、特に低温領域における
耐衝撃性、とりわけ耐面衝撃特性を低下させるため、必
ずしも有用な方法とはいえない。また、一般に低温にお
ける衝撃特性を改良するために、ガラス転移温度の低い
エラストマ成分をブレンドすることが行なわれている
が、一般にこのようなプラスチック材料は耐熱性が十分
ではなく、自動車外装部品等の用途において鋼板製の外
板等とともにオンライン塗装ができないため、別ライン
で塗装を行なう必要があるなどコストアップにつながる
問題があることが指摘されている。これらの問題を解決
するための技術として特公平5−76501号公報に示
される、ポリエステル系エラストマとグリシジル基含有
共重合体を併用する方法は比較的優れてはいる。しかし
ながら、このような方法においても低温時に過大な衝撃
を受けた際に材料が脆性破壊するという問題の解決には
至っていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は上述
の問題を解消し、機械的強度、成形性など熱可塑性エン
ジニアリングプラスチックに求められる諸特性を満足し
た上で、低い線膨張係数、優れた耐熱性、さらに耐衝撃
性とりわけ低温時の耐面衝撃特性に優れ、従来のエンジ
ニアリングプラスチック材料では達成困難であった低温
時の延性破壊性を有する組成物を得ることを課題とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、(1)(A)芳香族
ポリエステル樹脂20〜97重量%、(B)150℃以
上の融点を有するポリエステル系熱可塑性エラストマ1
〜40重量%、(C)−20℃以下のガラス転移温度を
有する熱可塑性エラストマ1〜40重量%および(D)
炭素繊維0.5〜5.0重量%からなる強化熱可塑性樹
脂組成物、ならびに(2)(1)に記載の強化樹脂組成
物を射出成形してなる成形品を提供するものである。
【0009】本発明で使用する芳香族ポリエステル樹脂
(A)とは芳香環を重合体の連鎖単位に有する熱可塑性
のポリエステルで、通常芳香族ジカルボン酸(あるいは
そのエステル形成性誘導体)とジオール(あるいはその
エステル形成性誘導体)とを主成分とする縮合反応によ
り得られる重合体ないしは共重合体である。
【0010】ここでいう芳香族ジカルボン酸としてはテ
レフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−
ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−
ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテ
ルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボ
ン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、
4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、
1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカル
ボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、4,4”
−p−ターフェニレンジカルボン酸、2,5−ピリジン
ジカルボン酸などであり、なかでもテレフタル酸が好ま
しく使用できる。
【0011】これらの芳香族ジカルボン酸は二種以上を
混合して使用してもよい。なお20モル%以下の少量で
あれば、これらの芳香族ジカルボン酸とともにアジピン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸など
の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸な
どの脂環式ジカルボン酸を一種以上混合使用してもよ
い。
【0012】また、ジオール成分としては、エチレング
リコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオ
ール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオ
ール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3
−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチ
レングリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族
ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの
脂環式ジオールおよびこれらの混合物などが挙げられ
る。なお、少量であれば、分子量400〜6000の長
鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−
1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコールなどを一種以上共重合せしめてもよい。本発明
に使用する具体的な好ましい芳香族ポリエステル(A)
としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレ
ンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
ヘキシレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナ
フタレンジカルボキシレート、ポリブチレン−2,6−
ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2
−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシ
レートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレ
フタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレ
ート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキ
シレートなどのような共重合ポリエステルが挙げられ
る。これらのうち、機械的性質、成形性などのバランス
の点でポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレ
フタレートが特に好ましく使用できる。
【0013】本発明に使用する芳香族ポリエステル
(A)の融点は、示差走査熱量分析により測定すること
が可能であり、昇温速度20℃/分で測定した融点のピ
ーク温度が180〜330℃のものが好ましく、200
〜300℃のものがより好ましく使用できる。
【0014】本発明において特に好ましく使用できる芳
香族ポリエステルの内、ポリブチレンテレフタレートは
0.5W/V %のo−クロロフェノール溶液中で25℃に
おいて測定した固有粘度が、0.80〜1.9、特に
1.0〜1.5の範囲ものが好ましく、また、ポリエチ
レンテレフタレートの場合は上記と同条件で測定した固
有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.35
の範囲のものが好ましい。
【0015】本発明の強化樹脂組成物を構成する上記構
成成分のうち(A)芳香族ポリエステル樹脂は成分
(A)〜(D)の合計に対して、20〜97重量%であ
り、40〜90重量%が好ましい。成分(A)の配合量
が20重量%未満では成形性が不良となり、また、97
重量%を越える場合には低温時の衝撃に対して脆性破壊
する傾向が強くなるためいずれも好ましくない。
【0016】次に、本発明で使用する(B)150℃以
上の融点を有するポリエステル系熱可塑性エラストマと
しては、芳香族ポリエステルをハードセグメントとし、
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび/または
脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエー
テルエステルブロック共重合体、ポリエステル・エステ
ルブロック共重合体、ポリエーテルエステル・エステル
共重合体等が一般的に用いられる。ここでハードセグメ
ントを構成する芳香族ポリエステルとは、通常60モル
%以上がテレフタル酸成分であるジカルボン酸成分とジ
オール成分を縮重合して得られる重合体である。テレフ
タル酸以外のジカルボン酸成分およびジオール成分とし
ては前記芳香族ポリエステル樹脂(A)において挙げた
ものを好ましく使用することができる。
【0017】芳香族ポリエステル成分の具体例としては
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレー
ト)、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレー
ト)などが好ましい例として挙げられる。
【0018】また、ここでソフトセグメントを構成する
ポリ(アルキレンオキシド)グリコールおよび脂肪族ポ
リエステルの具体例としては、ポリエチレングリコー
ル、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシ
ド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリ
コール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重
合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合
体、ポリエチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクト
ン、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート
などを好ましい例としてく挙げることができる。
【0019】ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)
のポリエステルハードセグメント対ソフトセグメントの
占める割合は、重量比で95/5〜10/90、特に9
0/10〜30/70であることが好ましい。
【0020】ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)
の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート・ポリ
(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合
体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート・ポ
リ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重
合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチ
レンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブチ
レンテレフタレート/イソフタレート・ポリ(テトラメ
チレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリブ
チレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート・ポ
リ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重
合体、ポリエチレンテレフタレ−ト・ポリ(プロピレン
オキシド/エチレンオキシド)グリコ−ルブロック共重
合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ(プロピレン
オキシド/エチレンオキシド)グリコールブロック共重
合体、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート・
ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキシド)グリコ
ールブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート/
デカンジカルボキシレート・ポリ(プロピレンオキシド
/エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポ
リブチレンテレフタレート・ポリ(エチレンオキシド)
グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレ
ート・ポリ(エチレンオキシド)グリコールブロック共
重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンア
ジペートブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレー
ト・ポリブチレンアジペートブロック共重合体、ポリブ
チレンテレフタレート・ポリブチレンセバケートブロッ
ク共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ−ε−
カプロラクトンブロック共重合体などが好ましく挙げら
れる。
【0021】これらのポリエステル系エラストマ(B)
の中で特にポリエチレンテレフタレート・ポリ(テトラ
メチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリ
ブチレンテレフタレート・ポリ(テトラメチレンオキシ
ド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレフ
タレート/イソフタレート・ポリ(テトラメチレンオキ
シド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレ
フタレ−ト・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキ
シド)グリコ−ルブロック共重合体、ポリブチレンテレ
フタレート・ポリ(プロピレンオキシド/エチレンオキ
シド)グリコールブロック共重合体、ポリブチレンテレ
フタレート/イソフタレート・ポリ(プロピレンオキシ
ド/エチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、
ポリブチレンテレフタレート・ポリブチレンアジペート
ブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリ
−ε−カプロラクトンブロック共重合体を好ましく使用
することができる。
【0022】また、本発明に使用するこれらポリエステ
ル系熱可塑性エラストマの融点は示差走査熱量分析によ
り測定することが可能であり、昇温速度20℃/分で測
定した融点のピーク温度(以下単に融点と記す)が15
0℃以上である必要があり、融点200℃以上がより好
ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)の融
点が150℃未満の場合、組成物の高温特性とりわけ焼
付け塗装温度領域でのクリープが大きいため好ましくな
い。
【0023】また、これらのポリエステル系熱可塑性エ
ラストマ(B)の固有粘度は前記芳香族ポリエステル樹
脂(A)と同様の方法で測定した値で、1.4〜4.0
が好ましく、特に1.6〜3.0の範囲にあるものが好
ましい。
【0024】ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)
は、2種以上併用することも可能である。
【0025】ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)
は成分(A)〜(D)の合計に対して1〜40重量%で
あり、2〜30重量%が好ましい。成分(B)の配合量
が1重量%未満の場合、耐熱性の優れた成形品を得るこ
とが困難であり、40重量%を越える場合も低温時の耐
衝撃性と耐熱性のバランスに優れた成形品が得られない
ため好ましくない。
【0026】次に、本発明に使用する−20℃以下のガ
ラス転移温度を有する熱可塑性エラストマ(C)として
は、ガラス転移温度(ここでは周波数110Hzの動的
粘弾性測定から得られるポリマのβ緩和に対応する損失
弾性率(E”)のピーク温度として定義する)が−20
℃以下である熱可塑性エラストマであり、23℃におけ
る曲げ弾性率が300MPa以下のものが好ましい。好
ましい熱可塑性エラストマ(C)の例としては、前記ポ
リエステル系熱可塑性エラストマ(B)の例として示し
た構造のうちガラス転移温度が−20℃以下のもの、ま
たエチレン系共重合体、共役ジエン系重合体、共役ジエ
ン−芳香族ビニル炭化水素系共重合体などが挙げられ
る。
【0027】ここでいうエチレン系重合体とは、エチレ
ンと他の単量体との共重合体および多元共重合体をさ
し、エチレンと共重合する他の単量体としては炭素数3
以上のα−オレフィン、非共役ジエン、酢酸ビニル、ビ
ニルアルコール、α,β−不飽和カルボン酸およびその
誘導体などの中から選択することができる。
【0028】炭素数3以上のα−オレフィンとはプロピ
レン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン
−1、オクタセン−1などであり、プロピレン、ブテン
−1が好ましく使用できる。非共役ジエンとは5−メチ
リデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノル
ボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペ
ニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノ
ルボルネン、5−クロチル−2−ノルボルネン、5−
(2−メチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、5
−(2−エチル−2−ブテニル)−2−ノルボルネン、
5−メチル−5−ビニルノルボルネンなどのノルボルネ
ン化合物、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロ
インデン、4,7,8,9−テトラヒドロインデン、
1,5−シクロオクタジエン、1,4−ヘキサジエン、
イソプレン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、11
−エチル−1,11−トリデカジエンなどであり、好ま
しくは5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−エチリ
デン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,
4−ヘキサジエンなどである。α,β−不飽和カルボン
酸とはアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロ
トン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコ
ン酸、ブテンジカルボン酸などであり、その誘導体とし
てはアルキルエステル、アリールエステル、グリシジル
エステル、酸無水物、イミドを例として挙げることがで
きる。
【0029】また、共役ジエン系重合体とは1種以上の
共役ジエン単量体に由来する重合体すなわち単一の共役
ジエン例えば1,3−ブタジエンの単独重合体あるいは
2種またはそれ以上の共役ジエン例えば1,3−ブタジ
エン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエ
ン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3
−ペンタジエンの共重合体が挙げられる。これらの重合
体の不飽和結合の一部または全部が水添により還元され
ているものも好ましく使用できる。
【0030】共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共重
合体とは共役ジエンと芳香族ビニル炭化水素の比がさま
ざまのブロック共重合体またはランダム共重合体であ
り、これを構成する共役ジエンの例としては前記の単量
体が挙げられ、特に1,3−ブタジエン、イソプレンが
好ましい。芳香族ビニル炭化水素の例としては、スチレ
ン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メ
チルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフ
タレンなどが挙げられ、中でもスチレンが好ましく使用
できる。また、共役ジエン−芳香族ビニル炭化水素系共
重合体の芳香環以外の二重結合以外の不飽和結合の一部
または全部が水添により還元されているものも好ましく
使用できる。
【0031】これらのエラストマのガラス転移温度は−
20℃以下である必要があり、−30℃以下であること
がより好ましい。−20℃より高い場合は低温時の耐衝
撃性が十分ではなく、本発明の目的を達成することがで
きない。
【0032】上記−20℃以下のガラス転移温度を有す
る熱可塑性エラストマ(C)の一部または全部に、0.
01〜10重量%の範囲で不飽和カルボン酸またはその
誘導体をグラフト反応して得られるエラストマも好まし
く使用することができる。グラフト反応に用いる不飽和
カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、エタク
リル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン
酸、シトラコン酸、ブテンジカルボン酸等が挙げられ
る。また、それらの誘導体としては、アルキルエステ
ル、グリシジルエステル、酸無水物またはイミド等が挙
げられ、これらの中で、グリシジルエステル、酸無水
物、イミドがより好ましい。
【0033】不飽和カルボン酸またはその誘導体の好ま
しい例としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸グ
リシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリ
シジルエステル、シトラコン酸ジグリシジルエステル、
ブテンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ブテンジカ
ルボン酸モノグリシジルエステル、無水マレイン酸、無
水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸イミド、
イタコン酸イミド、シトラコン酸イミド等であり、特に
メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、無水イタコ
ン酸、マレイン酸イミドが好ましく使用できる。これら
の不飽和カルボン酸またはその誘導体は2種以上を併用
してもよい。なお、これら不飽和カルボン酸またはその
誘導体をグラフト反応させる方法については公知の手法
を用いることができる。
【0034】−20℃以下のガラス転移温度を有する熱
可塑性エラストマ(C)は、2種以上併用することも可
能である。
【0035】また、上記150℃以上の融点を有するポ
リエステル系熱可塑性エラストマ(B)の内、ガラス転
移温度が−20℃以下のものを使用する場合は、成分
(C)をポリエステル系熱可塑性エラストマ(B)で代
用することができる。
【0036】−20℃以下のガラス転移温度を有する熱
可塑性エラストマ(C)は成分(A)〜(D)の合計に
対して1〜40重量%であり、2〜30重量%が好まし
い。成分(C)の配合量が1重量%未満の場合、低温時
の対衝撃性に優れた成形品を得ることが困難であり、4
0重量%を越える場合は耐衝撃性と耐熱性のバランスに
優れた成形品が得られないためいずれも好ましくない。
【0037】本発明の強化樹脂組成物を構成するもう一
つの必須成分である炭素繊維(D)は有機繊維を焼成、
炭素化して得られる繊維であり、焼成前の有機繊維の種
類により、ポリアクリロニトリル(PAN)系、セルロ
ース系、ピッチ系などが例示でき、いずれも好ましく使
用することができるが、PAN系炭素繊維がより好まし
い。炭素繊維(D)の引張り弾性率は150GPa以上
のものが好ましく、200GPa以上のものが特に好ま
しい。また、引張り破断強度は1.0GPa以上のもの
が好ましく、2.0GPa以上のものがさらに好まし
い。さらに、炭素繊維(D)の線膨張係数は1×10−
6cm/cm/℃以下のものが好ましく、線膨張係数が負のも
のがより好ましい。炭素繊維(D)の繊維径については
特に限定されるものではないが、3〜15μmが好まし
く、3〜10μmが特に好ましい。
【0038】また、本発明の強化樹脂組成物中の炭素繊
維(D)の分散繊維長は重量平均繊維長で0.2〜3m
mが好ましく、0.25〜2.5mmがさらに好まし
い。また、繊維長分布に関しては重量平均繊維長(L
w)と数平均繊維長(Ln)の比Lw/Lnが1.1〜
2.5のものが好ましく、1.2〜2.0のものがより
好ましい。
【0039】さらに、本発明の強化樹脂組成物を射出成
形してなる成形品については、成形品中における炭素繊
維(D)の分散繊維長は重量平均繊維長で0.15〜
2.0mmが好ましく、0.12〜1.5mmがより好
ましい。また、繊維長分布に関しては重量平均繊維長
(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比Lw/Lnが1.
1〜2.5のものが好ましく、1.2〜2.0のものが
より好ましい。
【0040】本発明の強化樹脂組成物を射出成形により
成形する場合、強化樹脂組成物中の炭素繊維の重量平均
繊維長の50%以上の繊維長を得られた射出成形品中で
保持していることが好ましい。言い換えると、本発明の
強化樹脂組成物として好ましいものは通常行なわれる射
出成形において、その成分として含まれる炭素繊維の繊
維長を50%以上保持でき、逆に本発明の好ましい射出
成形品とは成形前の組成物中の重量平均炭素繊維長を5
0%以上保持しているものであることを意味する。
【0041】本発明の強化樹脂組成物における炭素繊維
(D)の配合量は0.5〜5.0重量%の範囲にある必
要があり、1.0〜3.0重量%がより好ましく、1.
5〜2.5重量%がさらに好ましい。配合量が0.5重
量%未満の場合、組成物の線膨張係数を改良する効果が
十分ではなく、一方、5.0重量%を越える場合は、組
成物を成形してなる成形品が強い衝撃を受けた場合、脆
性破壊する傾向が強くなるため、いずれの場合も好まし
くない。
【0042】また、使用する炭素繊維は、その表面がオ
レフィン系重合体、ポリエステル系重合体などの熱可塑
性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆されて
いてもよく、また、シラン系、チタネート系などのカッ
プリング剤、その他の表面処理剤で処理されていてもよ
い。
【0043】本発明において上記(A)〜(D)の必須
成分の他に少量であればさらに他の無機充填材を添加し
て剛性の向上や表面特性の改質等所望の特性を付与する
ことができる。ただし、その添加量については、本発明
の目的とするように低温時に高い衝撃力を受けた場合に
脆性破壊を生じない添加量にする必要がある。無機充填
材の例としては、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、
石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、
セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、マイカ、タル
ク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビー
ズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレ
ー、ワラステナイト、酸化チタン等の繊維状、粉状、粒
状あるいは板状の無機フィラーが挙げられる。 また、
これらの無機充填材はエチレン/酢酸ビニル共重合体な
どの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で
被覆されていてもよく、また、シラン系、チタネート系
などのカップリング剤、その他の表面処理剤で処理され
ていてもよい。
【0044】本発明の強化樹脂組成物の製造方法は特に
限定されるものではなく、構成各成分を単軸、または二
軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシン
グロールなど通常公知の溶融混合機に供給して溶融混練
する方法などが適している。例えば、好ましい製造方法
の一例として本発明組成物の構成成分(A)〜(D)を
同時あるいは逐次、二軸押出機に供給し、溶融混練する
方法により製造する方法が挙げられる。とりわけ、組成
物中に少量の炭素繊維を効率よく開繊させ、その繊維長
を比較的長く制御できる方法として、例えば、供給口を
2ヶ所以上有する二軸押出機を用いて、第1の供給口よ
り(A)、(B)および(C)成分を供給し、該成分を
予め溶融させた後、第2以降の供給口から集束した炭素
繊維ロービングを連続的に供給し、押出機シリンダ内で
該ロービングを開繊した後、組成物を得る方法などを挙
げることができる。
【0045】なお、本発明の組成物に対して本発明の目
的を損なわない範囲で、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線
吸収剤、難燃剤、滑剤、離型剤、染料および顔料を含む
着色剤、核剤などの通常の添加剤を1種以上添加するこ
とができる。また、少量の他の熱可塑性樹脂を添加する
こともできる。
【0046】本発明の強化熱可塑性組成物は射出成形、
押出成形など通常の方法で容易に成形することが可能で
あり、得られた成形品は低い線膨張係数と耐熱性を有
し、衝撃に対して高い抵抗力を持つ上に、低温でも脆性
的な破壊をすることがないため、種々のエンジニアリン
グ部品、構造材料に適している。特に射出成形された成
形品は低い線膨脹係数、耐熱性、耐衝撃性を活かして、
大型構造部材として、その効果が発揮される。
【0047】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳述す
る。
【0048】合成例1(ポリエステル系熱可塑性エラス
トマ(B−1)の製造) テレフタル酸ジメチル79部、エチレングリコール3
6.3部、数平均分子量1400のポリ(テトラメチレ
ンオキシド)グリコール22.8部およびチタンテトラ
ブトキシド0.05部を撹拌翼、留出管を備えた反応容
器に仕込み、200℃で1.5時間反応を行ない、理論
留出量の約93%のメタノールを系外に留去した後、系
内を徐々に減圧にすると同時に系内温度を270℃に昇
温した。約1時間かけて系内の圧力を0.2mmHgと
し、その条件下で2.5時間反応させ、ポリエステル系
熱可塑性エラストマ(B−1)を得た。このポリマ(B
−1)の融点は224℃、ガラス転移温度は51℃であ
った。
【0049】合成例2(ポリエステル系熱可塑性エラス
トマ(B−2)の製造) テレフタル酸ジメチル80.1部、エチレングリコール
36.3部、数平均分子量1000のポリ(エチレンオ
キシド)グリコール22.1部およびチタンテトラブト
キシド0.05部を用い、合成例1と同様の条件で重合
反応を行ない、ポリエステル系熱可塑性エラストマ(B
−2)を得た。このポリマ(B−2)の融点は236
℃、ガラス転移温度は11℃であった。
【0050】合成例3(ポリエステル系熱可塑性エラス
トマ(B−3)の製造) テレフタル酸ジメチル73.2部、1,4−ブタンジオ
ール49.1部、数平均分子量1400のポリ(テトラ
メチレンオキシド)グリコール18.3部およびモノブ
チルスズオキシド0.05部を用い、合成例1と同様の
条件で重合反応を行ない、ポリエステル系熱可塑性エラ
ストマ(B−3)を得た。このポリマ(B−3)の融点
は217℃、ガラス転移温度は−15℃であった。
【0051】合成例4(熱可塑性エラストマ(C−1)
の製造) テレフタル酸ジメチル45.4部、エチレングリコール
23.9部、数平均分子量1400のポリ(テトラメチ
レンオキシド)グリコール57.5部およびチタンテト
ラブトキシド0.05部を用い、合成例1と同様の条件
で重合反応を行ない、ポリエステル系熱可塑性エラスト
マ(C−4)を得た。このポリマ(C−4)の融点は2
04℃、ガラス転移温度は−62℃であった。
【0052】合成例5(熱可塑性エラストマ(C−2)
の製造) テレフタル酸ジメチル42.9部、1,4−ブタンジオ
ール24.6部、数平均分子量1400のポリ(テトラ
メチレンオキシド)グリコール54.9部およびモノブ
チルスズオキシド0.05部を用い、合成例1と同様の
条件で重合反応を行ない、ポリエステル系熱可塑性エラ
ストマ(C−2)を得た。このポリマ(C−2)の融点
は210℃、ガラス転移温度は−63℃であった。
【0053】なお、上記に加え、−20℃以下のガラス
転移温度を有する熱可塑性エラストマ(C)成分として
下記(C−3)および(C−4)を実施例中で使用し
た。
【0054】(C−3)エチレン/アクリル酸メチル/
メタクリル酸グリシジル(64/30/6重量比)三元
共重合体(ガラス転移温度 −33℃)。
【0055】(C−4)エチレン/プロピレン(83/
17モル比)共重合体に無水マレイン酸1.0重量%を
グラフトしてなる変性エチレン/プロピレン共重合体
(ガラス転移温度−42℃)。
【0056】実施例1 固有粘度1.25のポリブチレンテレフタレート58.
5重量部、合成例1で得たポリエステル系熱可塑性エラ
ストマ(B−1)10重量部、合成例2で得た熱可塑性
エラストマ(C−1)20重量部および熱可塑性エラス
トマ(C−3)10重量部をシリンダ温度250℃の二
軸押出機に供給し、該組成物が完全に溶融する位置に設
けた第2の供給口から炭素繊維ロービング(東レ(株)
製”トレカ”T300)を供給し、ダイから押出し、組
成物ペレットを得た。分析の結果、組成物中の炭素繊維
含有量は1.5重量%であった。
【0057】得られたペレットを乾燥後、射出成形機に
供し、シリンダ温度250℃、金型温度80℃で80m
m×80mm×3mm厚の角板および25mm×150
mm×2mm厚の短冊状試験片、および1/2”×5”
×1/8”厚の棒状試験片を成形した。
【0058】3mm厚の角板を用い、島津製作所(株)
製サーボパルサEHF−U2H−20L型高速面衝撃試
験機を用い、ポンチ先端径5/8”、衝突速度2.5m
/sで試験を行なった。その結果、23℃、−30℃の
いずれの測定温度でも延性破壊が観察され、破壊エネル
ギーはそれぞれ、19J、21Jであった。
【0059】また、耐熱性の評価として、2mm厚の短
冊状試験片の一端を水平に固定し、片持ち梁の状態で1
50℃に加熱し、60分後の自由端の自重による撓み量
を測定したところ、2.2mmであった。
【0060】さらに、棒状試験片を用い、曲げ試験を行
なったところ、曲げ弾性率1400MPa、曲げ強度5
4MPaであった。さらに、棒状試験片から流動方向の
線膨張係数を求めたところ、5.8×10-5cm/cm
/℃と小さいことが分かった。
【0061】実施例2〜11 表1に示した組成で、実施例1に示した方法により組成
物ペレットを得、実施例1と同様の条件で成形した後、
評価を行なった。結果を表2に示す。
【0062】比較例1 固有粘度1.25のポリブチレンテレフタレート58.
5重量部、合成例4で得た熱可塑性エラストマ(C−
1)40重量部および熱可塑性エラストマ(C−3)1
0重量部をシリンダ温度250℃の二軸押出機に供給
し、実施例1と同様の方法により、炭素繊維ロービング
を供給し、ダイから押出し、組成物ペレットを得た。分
析の結果、組成物中の炭素繊維含有量は1.5重量%で
あった。
【0063】得られた組成物ペレットを実施例1と同様
の条件で成形した後、評価を行なった。結果を表2に示
すが、炭素繊維(D)成分を添加しない比較例1は実施
例の組成物に比べ、加熱自重撓み量が大きく耐熱性が劣
っている上、線膨張係数が大きいことが分かった。
【0064】比較例2〜5 表1に示した組成で、実施例1に示した方法により組成
物ペレットを得、実施例1と同様の条件で成形した。成
形品の評価結果を表2に示す。
【0065】炭素繊維(D)の添加量が本発明よりも多
い比較例2においては高速面衝撃時に脆性破壊を生じ、
衝撃を受けた試験片は破壊し、飛散した。また、ポリエ
ステル系熱可塑性エラストマ(B)を使用しない比較例
3の組成物は耐熱性が劣るばかりでなく、低温下におけ
る高速面衝撃時の延性破壊性も損なわれ、脆性破壊が生
じることが分かった。さらに、熱可塑性エラストマ
(C)成分を使用しない比較例4においても低温下にお
ける高速面衝撃時の延性破壊性を発現させることができ
なかった。
【0066】芳香族ポリエステル(A)と炭素繊維
(D)とから実質的に構成される比較例5の組成物にお
いては延性破壊性、線膨張係数の点で本発明の目的を達
し得ないことが分かる。
【0067】
【表1】
【表2】
【0068】
【発明の効果】本発明の強化樹脂組成物は、耐熱性、寸
法安定性に優れ、低温時の被衝撃時にも脆性破壊するこ
とがなく靭性の高い成形品を与える。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 67/00 - 67/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)芳香族ポリエステル樹脂20〜97
    重量%、(B)150℃以上の融点を有するポリエステ
    ル系熱可塑性エラストマ1〜40重量%、(C)−20
    ℃以下のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマ1
    〜40重量%および(D)炭素繊維0.5〜5.0重量
    %からなる強化樹脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の強化樹脂組成物を射出成形
    してなる成形品。
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